JP2007262463A - 溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】mass%で、C≦0.25%、Si:0.1〜3.0%、Mn:0.5〜5.0%、Al:0.005〜3.0%を含有する鋼板に、まず、その鋼板表面にFe,Ni,C,S、Cu、Coからなる群から選ばれた少なくとも1種の成分を含む前めっき処理を施す。次いで、O2≧0.1%を含有する雰囲気中で酸化処理した後、還元性雰囲気中で、700〜900℃の温度で還元処理し、次いで、冷却し、溶融亜鉛めっき処理、場合によっては合金化処理を施す。この時、冷却時のめっき前の鋼板温度が600℃以下の領域での雰囲気中のO2は100ppm以下となるようにする。
【選択図】なし
Description
一般的に、溶融亜鉛めっき鋼板は、以下の方法にて製造される。まず、スラブを熱延、冷延あるいは熱処理した薄鋼板を用いて、母材鋼板表面を前処理工程にて脱脂および/または酸洗して洗浄するか、あるいは前処理工程を省略して予熱炉内で母材鋼板表面の油分を燃焼除去した後、非酸化性雰囲気中あるいは還元性雰囲気中で加熱することで再結晶焼鈍を行う。その後、非酸化性雰囲気中あるいは還元性雰囲気中で鋼板をめっきに適した温度まで冷却して、大気に触れることなく微量Al(0.1〜0.2%程度)を添加した溶融亜鉛浴中に浸漬する。
また合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、溶融亜鉛めっき後、引き続き、鋼板を合金化炉内で熱処理することで製造される。
ところで、近年、素材鋼板の高性能化とともに軽量化が推進され、素材鋼板の高強度化が求められてきており、防錆性を兼ね備えた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の使用量が増加している。
鋼板の高強度化にはSi、Mn、P等の固溶強化元素の添加が行われる。中でもSiは鋼の延性を損なわずに高強度化できる利点があり、Si含有鋼板は高強度鋼板として有望である。しかし、Siを多量に含有する高強度鋼板を母材とし溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造しようとする場合、以下の問題がある。
前述のように溶融亜鉛めっき鋼板は還元雰囲気中で600〜900℃程度の温度で加熱焼鈍を行った後に、溶融亜鉛めっき処理を行う。しかし、鋼中のSiは易酸化性元素であり、一般的に用いられる還元雰囲気中でも選択表面酸化されて表面に濃化し、酸化物を形成する。このような酸化物はめっき処理時の溶融亜鉛との濡れ性を低下させて不めっきを生じさせるので、鋼中Si濃度の増加とともに濡れ性が急激に低下し不めっきが多発する。また、不めっきに至らなかった場合でも、めっき密着性に劣るという問題がある。
さらに鋼中のSiが選択表面酸化されて表面に濃化すると、溶融亜鉛めっき後の合金化過程において著しい合金化遅延が生じる。その結果、生産性を著しく阻害する。生産性を確保するために過剰に高温で合金化処理しようとすると、耐パウダリング性の劣化を招くという問題もあり、高い生産性と良好な耐パウダリング性を両立させることは困難である。
このような問題に対して、いくつかの技術が開示されている。
予め酸化性雰囲気中で鋼板を加熱して表面に酸化鉄を形成した後加熱し還元焼鈍を行うことで、溶融亜鉛との濡れ性を改善する技術が特許文献1に開示されている。
溶融めっき処理に先立って、硫黄または硫黄化合物を鋼板表面にS量として0.1〜1000mg/m2付着させた後、予熱工程を弱酸化性雰囲気で行い、その後、水素を含む非酸化性雰囲気中で焼鈍する方法が特許文献2に開示されている。
また、鋼板表面に予め付着量:0.01〜5g/m2のFe系めっきを施した後、金属Feとして0.3〜5g/m2酸化させてから還元性雰囲気中で加熱する方法が特許文献3に開示されている。
特許文献2は、鋼板表面に形成させた硫化物層により溶融亜鉛との濡れ性を改善する技術である。しかしながら、鋼中Si濃度の高い鋼板に適用した場合、硫化物層による効果のみではSi表面濃化を充分抑制できないため、溶融亜鉛との濡れ性を改善することはできず不めっきが発生したり、著しい合金化遅延が生じるという問題が依然としてある。また、予熱工程を弱酸化性雰囲気で行った場合についても、鋼中Si濃度の高い鋼板に適用した場合、溶融亜鉛との濡れ性を充分に改善することはできず、不めっき、合金化遅延を完全に解消するには至っていない。
さらに、硫黄または硫黄化合物を鋼板に付着させたのみでは、鋼板搬送中に付着させた硫黄または硫黄化合物が脱落し、過度に脱落した場合にはロールピックアップや炉内汚染等を引き起こす。そのため、ロール手入れや炉内清掃等を頻繁に行う必要がありメンテナンス費が増大するので実用化に至っていないのが現状である。
特許文献3は、鋼板表面にFe系めっきを施すので、前記した付着物の脱落による問題はない。しかしながら、Fe系めっきを行った後、酸化処理、還元性雰囲気で加熱(還元処理)をした場合、鋼板表面が非常に活性な還元Feで覆われるため、溶融亜鉛めっき直前の鋼板温度が比較的低温の領域において鋼板表面が微酸化され、溶融亜鉛との濡れ性が低下するという問題があり、不めっきが発生するようになる。また、不めっきに至らなかった場合でも、めっき密着性が悪いという問題がある。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、高Si含有鋼板を母材とした場合でも不めっきのない美麗な表面外観を有しめっき密着性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板、および、不めっきのない美麗な表面外観を有し耐パウダリング性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造する方法を提供することを目的とする。
そこで、発明者らは、鋼中Si濃度の高い鋼板について不めっきを抑制し、併せて、めっき層の合金化の促進を図るための手段について鋭意検討を重ねた。その結果、めっき処理に先立ち、予め鋼板表面に前めっき処理を施し鋼板の酸化を促進させることで、鋼中Si濃度の高い鋼板の場合においてSi表面濃化を抑制することができることを見出した。
さらには、溶融亜鉛めっき直前の鋼板温度が比較的低温の領域において鋼板表面が微酸化され、溶融亜鉛との濡れ性が低下するという問題に対しては、冷却時のめっき前の条件を規定することで、鋼板表面が微酸化されるのを防止し、不めっき発生を回避することが可能となることを見出した。
本発明は、以上の知見に基づきなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
[1]mass%で、C≦0.25%、Si:0.1〜3.0%、Mn:0.5〜5.0%、Al:0.005〜3.0%を含有する鋼板に溶融亜鉛めっき処理を施すに際し、まず、Fe,Ni,C,S、Cu、Coからなる群から選ばれた少なくとも1種の成分を含む前めっき処理を該鋼板表面に施し、次いで、前記前めっき処理後の鋼板をO2≧0.1%を含有する雰囲気中で酸化処理した後、還元性雰囲気中で、700〜900℃の温度で還元処理し、次いで、鋼板温度が600℃以下の領域での雰囲気中のO2が100ppm以下となるように冷却し、次いで、溶融亜鉛めっき処理を施すことを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
[2]mass%で、C≦0.25%、Si:0.1〜3.0%、Mn:0.5〜5.0%、Al:0.005〜3.0%を含有する鋼板に溶融亜鉛めっき処理を施すに際し、まず、Fe,Ni,C,S、Cu、Coからなる群から選ばれた少なくとも1種の成分を含む前めっき処理を該鋼板表面に施し、次いで、前記前めっき処理後の鋼板をO2≧0.1%を含有する雰囲気中で酸化処理した後、還元性雰囲気中で、700〜900℃の温度で還元処理し、次いで、鋼板温度が600℃以下の領域での雰囲気中のO2が100ppm以下となるように冷却し、次いで、溶融亜鉛めっき処理を施した後、合金化処理を施すことを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
まず、本発明に使用される鋼板について説明する。本発明の鋼板の成分組成は以下の通りである。
C:0.25%以下
Cは鋼中に含有される元素であり、0.0001〜0.25%の範囲で一般的に含有される。本発明においても下地鋼鈑中にこの範囲でCを含有することができる。また、Cは、高強度化に対して有用なだけでなく、強度−延性バランスを向上させるために残留オーステナイトを生成させる等、組織制御を行う場合に有用な元素である。これらの作用を発現させるには、0.05%以上含有されていることが好ましい。しかしながら、含有量が0.25%を超えると、溶接性が劣化する。以上より、0.25%以下、好ましくは0.05%以上0.25%以下とする。
Mn:0.5〜5.0%
Mnは、鋼の高強度化に有用な元素であり、5.0%以下の範囲で通常鋼中に含有される。本発明においても下地鋼鈑中にこの範囲でMnを含有することができる。特に、0.5%以上含有させることによってその効果を発揮することができる。しかしながら、Mnも、Siと同様に、焼鈍時に酸化膜を形成する元素であり、その含有量が5.0%を超えて多量に含有されるとめっき密着性が劣化する傾向がある。また、溶接性や強度−延性バランスの確保にも悪影響を及ぼす。よって、Mnは0.5%以上5.0%以下とする。
Al:0.005〜3.0%
Alは、Siと補完的に添加される元素であり、0.005%以上含有させることが好ましい。しかしながら、3.0%を超えるとめっき密着性が劣化する傾向がある。また、溶接性や強度−延性バランスの確保にも悪影響を及ぼす。よって、Alは0.005%以上3.0%以下とする。
Ti(1%以下)、Nb(1%以下)、V(1%以下)、Cr(3%以下)、S(0.1%以下)、Mo(1%以下)、Cu(3%以下)、Ni(3%以下)、B(0.1%以下)、Ca(0.1%以下)、N(0.1%以下)、O(0.1%以下)、P(1%以下)、Sb(0.5%以下)を添加することができる。なお、上記以外の残部はFeおよび不可避的不純物である。
上記化学成分範囲に調整された鋼板に溶融亜鉛めっきを施す。なお、本発明においては、溶融亜鉛めっき処理を施す前に、Fe、Ni、C、S、Cu、Coからなる群から選ばれた少なくとも1種の成分を含む前めっき処理を鋼板表面に施し、次いで、鋼板にO2≧0.1%を含有する雰囲気中で酸化処理した後、還元性雰囲気中で、700〜900℃の温度で還元処理する。そして、鋼板を冷却した後めっき処理を施す際には、鋼板温度が600℃以下の領域では雰囲気中のO2が100ppm以下となるように冷却する。このように前めっき処理およびめっき処理前の冷却時の条件制御は本発明において重要な要件である。前めっき処理を行うことで鋼板の酸化を促進する。また、めっき処理前の冷却時の条件制御を行うことで、めっき処理前の鋼板温度が比較的低温の領域においての鋼板表面における微酸化を防止する。その結果、不めっきのなく美麗な表面外観を有しめっき密着性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板が得られることになる。
本発明では下地鋼板の表面に、Fe、Ni、C、S、Cu、Coからなる群から選ばれた少なくとも1種の成分を含む溶液前めっき処理することで、酸化処理時、良好かつ必要量の酸化鉄が鋼板表面に形成される。前述したように、高Si含有鋼板を母材とした場合に、鋼中のSi濃度の増加に伴い鋼板表面における酸化速度が大きく低下するため、従来技術による酸化手段のみでは酸化が進まず、Si表面濃化を抑制するために必要な量の酸化鉄を得ることが困難である。高Si含有鋼板の場合、酸化過程で酸化鉄/地鉄界面にSi酸化物が層状に形成し、これがバリヤー層となって地鉄からのFe外方拡散を抑制するため酸化が進まないものと考えられる。一方、前めっき処理を行った後酸化処理した場合、前記酸化鉄/地鉄界面での層状のSi酸化物の形成が抑制され、その結果、Fe外方拡散が促進されて酸化が促進するものと考えられる。
前めっき処理方法について説明する。特許文献2に記載のように、例えば、化合物を水または有機溶剤に溶解して鋼板表面に物理的に付着させた場合、鋼板搬送中に付着物が脱落し、ロールピックアップや炉内汚染の原因となり問題となる場合がある。そこで、本発明では、このように鋼板搬送中に脱落しないような方法にて前めっき処理を行うことが重要である。具体的には、電気めっき法、置換めっき法、無電解めっき等の前めっき処理法が好適である。
また、前めっきの組成としては、Fe、Ni、C、S、Cu、Coからなる群から選ばれた少なくとも1種の成分を含むこととする。なお、成分が異なる複数のめっきを前めっき処理として行い、複数回の前めっき処理を施してもよい。また、複数成分を複合してなる溶液で前めっき処理を施してもよい。また、不可避的に含有される程度の量で、B、N、O、F、Na、Mg、Al、Si、P、Cl、K、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Zn、Nb、Mo、Sn、Sb、Pb、Bi等の成分が前めっき処理によるめっき層中に含まれていても本発明の効果は変わらない。
また、前めっき処理を行う前に必要に応じて脱脂や酸洗等の従来から用いられている前処理を施してもよい。
前めっき処理によるめっき付着量は、0.01〜10g/m2が好ましい。0.01g/m2未満では酸化促進効果が不充分で、鋼中Si濃度の高い鋼板の場合にSi表面濃化を抑制することができない。一方、10g/m2超えでは、本発明の効果が飽和して経済的に不利になる場合がある。より好ましくは0.1〜5g/m2である。
酸化処理
ここでは鋼板を積極的に酸化させ鋼板表面に酸化鉄を形成させる。よって、O2は酸化を行うのに十分な量が必要であり0.1%以上とする。0.1%未満では鋼板表面への酸素の供給が律速するので酸化鉄量がばらついたり、あるいは酸化鉄量が不充分で、鋼中Si濃度の高い鋼板の場合にSi表面濃化を抑制することができない。一方、上限は特に限定するものではないが、経済的な理由から大気レベルの21%が好ましい。その他、不可避的に含まれるH2O等の成分が含まれていても本発明の効果を得ることができるが、H2O≧1%であると酸化鉄量が安定するので好適である。酸化性雰囲気として酸素を使用するのは、経済的だからである。大気中には約21%の酸素が含まれており、大気を希釈して使用すれば大規模な設備を導入することもなく酸化性雰囲気を得ることができるからである。
鋼板温度は特に限定しない。例えば鋼中Si濃度に応じて必要充分な酸化鉄量が得られるように選定すればよい。好ましくは500〜900℃である。500℃以下では酸化鉄量が不充分で、鋼中Si濃度の高い鋼板の場合にSi表面濃化を抑制することができない場合がある。一方、上限は特に限定するものではないが、経済的には900℃以下が好ましい。
鋼板を酸化させる手段は、特に限定しない。酸化手段の違いは本発明の効果を妨げるものではなく、鋼板を酸化することができる手段であればよい。例えば、酸化性雰囲気中で鋼板を加熱することで容易に達成することができる。
鋼板を加熱する手段としては、バーナー加熱、誘導加熱、放射加熱、通電加熱等の従来から使用されている加熱方式でよく、特に限定するものではない。
前記により得られた酸化鉄は、酸素量として0.01〜5g/m2の酸化鉄であることが好適である。この酸素量が0.01g/m2未満の場合、酸化鉄量が不足してSiの表面濃化を抑制することが難しくなり、一方酸素量が5g/m2を超えると、Si表面濃化抑制効果が飽和する一方で、焼鈍時の還元を充分行うことができないために、未還元酸化皮膜として残存する結果、めっき後の合金化処理過程で著しい合金化遅延を引き起こすおそれがある。
酸化処理後、還元処理を行う。雰囲気は還元性雰囲気とする。還元方法は従来から使用されている方法に準じて行えばよく、特に限定するものではない。例えば放射加熱方式の焼鈍炉で水素:1〜50%を含む還元性雰囲気中で700〜900℃の温度で還元処理すると好適である。
加熱温度は、700℃以上900℃以下とする。700℃未満では酸化鉄の還元が不充分となる場合があり、未還元酸化皮膜として残存する結果、めっき後の合金化処理過程で著しい合金化遅延を引き起こすおそれがある。また、700℃未満では再結晶焼鈍が不充分なため、伸びやr値の低下を引き起こし所望の機械的特性が得られないという問題がある。
一方、上限は900℃とする。これ以上では本発明の効果が飽和するので経済的に不利である。
めっきに適した温度まで鋼板を冷却し、めっき浴中に浸漬してめっき処理する。この際に、本発明においては、冷却時のめっき処理前の鋼板温度が600℃以下の領域での雰囲気中のO2が100ppm以下となるよう条件を制御する。本発明では酸化処理を施した後還元処理を行うので、還元処理後の鋼板表面には活性な還元Feが形成される。このような場合、鋼板温度600℃以下の低温領域では鋼板表面が微酸化され、溶融亜鉛との濡れ性の低下を引き起こすことが考えられる。そのため、鋼板温度600℃以下の低温領域での雰囲気中のO2濃度は極力低減することが好ましく、100ppm以下とする。好ましくは50ppm以下である。しかし、O2濃度を過度に低くするためには設備費が増大する。また、溶融亜鉛が蒸発・凝縮しやすくなり、めっき直前の鋼板表面に付着して欠陥を引き起こす場合がある。よって、下限のO2濃度は好ましくは5ppm以上、より好ましくは10ppm以上に管理する。鋼板を冷却する方法は従来から使用されている方法に準じて行えばよく、特に限定するものではない。例えば、水素を含む還元性雰囲気を用いたガス冷却によりめっき浴温とほぼ同等の温度まで鋼板を冷却すると好適である。
溶融亜鉛めっき処理は従来から行われている方法に従えばよい。例えば、めっき浴温は440〜520℃程度、鋼板のめっき浴浸漬温度はほぼめっき浴温に等しくし、亜鉛めっき浴中のAl濃度は0.1〜0.2%とするのが一般的ではあるが、特に限定するものではない。
あるいは、製品の使用用途によってはめっき温度、めっき浴組成等の上記めっき条件を変更する場合があるが、めっき条件の違いは本発明の効果を害するものではなく、特に限定するものではない。例えば、めっき浴中にAl以外にPb、Sb、Fe、Mg、Mn、Ni、Ca、Ti、V、Cr、Co、Sn等の元素が混入していても本発明の効果は何ら変わらない。
さらに、めっき後のめっき層の厚さを調整する方法についても、特に限定するものではないが、一般的にはガスワイピングが使用され、ガスワイピングのガス圧、ワイピングノズル/鋼板間距離等を調節することによって、めっき層の厚さを調整する。このとき、めっき層の厚さは特に限定されるものではないが、3〜15μm程度とするのが好ましい。3μm未満では十分な防錆性が得られず、一方、15μm超えでは防錆性が飽和するだけでなく、加工性や経済性が損なわれる場合があるからである。但し、めっき層の厚さの違いは本発明の効果を妨げるものではなく、特に限定するものではない。
次いで、上記供試材を酸化性雰囲気の加熱炉で加熱する酸化処理を施し、一旦取り出した後、溶融めっきシミュレーターで焼鈍(還元処理)、めっき処理を行った。また、比較として酸化処理を行わず焼鈍、めっき処理するものも実施した。なお、酸化条件は酸素+窒素雰囲気中(H2O:2%)で酸素濃度を変化させ、鋼板温度:650℃とした。また、保持時間は1秒とし、その後窒素ガスにて急冷した。還元焼鈍条件は5%水素+窒素雰囲気中(露点:-35℃)で加熱し、鋼板温度を変化させ、45秒保持した。めっき処理条件はAlを0.13%含む(Fe飽和)460℃の亜鉛めっき浴を用い、侵入板温:460℃、浸漬時間:1秒でめっきし、めっき後の表面外観を評価した。また、溶融亜鉛浴直上の雰囲気は5%水素+窒素(露点:-35℃)を主成分とし、雰囲気中酸素濃度を変化させた。めっき後、窒素ガスワイパーで付着量を片面45g/m2に調整した。次いで、通電加熱炉にて保持時間:10秒の合金化処理(昇温速度:40℃/秒)を行い、めっき層中Fe含有率が10%±0.5%が得られる合金化温度により合金化速度を比較した。
JIS 2241に記載の方法にて全伸び(El)を測定し、焼鈍時の鋼板温度:800℃での測定値に対する変化率(当該El/鋼板温度:800℃でのEl)を求めた。
×:変化率<0.9
<めっき外観>
目視および光学顕微鏡にて外観観察を行い、不めっきが全くなく、かつその他表面欠陥のない場合を良好とし、目視にて不めっきが観察できる場合、あるいはその他表面欠陥のある場合を不合格とした。
○:良好
×:不合格
<めっき密着性>
合金化溶融亜鉛めっき鋼板から幅:25mm、長さ:80mmの試験片を2枚切り出し供試材とした。供試材を接着剤を塗布した重なり部の長さが20mmになるように重ね合わせる。接着剤はE−56(サンライズ MSI製)を使用し、スペーサー(φ0.15mmのSUS304ワイヤー)を使用して接着剤厚さを試験片毎で一定に保つようにした。接着剤塗布後、乾燥炉で170℃の熱処理を20分実施した後、オートグラフで引張り試験を実施し、引張剪断強度および剥離形態を測定して、下記の基準に応じて評価した。なお、引張剪断強度は、同じ鋼成分、サイズを有する冷延鋼板を用いて上記引張り試験を実施した際の強度に対する比率で評価した。
・引張剪断強度
○:良好(強度:70%超え)
×:不良(強度:70%以下)
・剥離形態
○:良好(接着剤内凝集剥離)
×:不良(一部または全面めっき層/鋼板界面剥離)
なお、ここで言うめっき層/鋼板界面剥離とは、めっき層と鋼板の界面で剥離することであるが、剥離形態によっては均一にめっき層/鋼板界面で剥離しない場合もあるので、めっき層/鋼板界面からめっき層側に2μm以下、あるいはめっき層/鋼板界面から鋼板側に2μm以下の範囲内で剥離した場合もめっき層/鋼板界面剥離とする。
また、溶融亜鉛めっき鋼板を用い、デュポン衝撃試験(1/2インチ、1.8kgf錘、1m高さ)を行い、テープ剥離した際のめっき剥離状態を評価した。
○:めっき剥離・亀裂なし
×:めっき剥離あり、あるいは亀裂あり
<合金化速度>
合金化完了温度を測定し、下記の基準により評価した。
○:合金化温度:520℃以下で合金化完了
×:合金化温度:520℃超で合金化完了
<耐パウダリング性>
合金化溶融亜鉛めっき鋼板から幅:25mm、長さ:40mmの試験片を切出し、セロハンテープ(商標登録)(ニチバン製、幅:24mm)を長さ:20mmの位置に貼り、テープ面を90°内側に曲げた後、曲げ戻しを行ってセロハンテープ(商標登録)(ニチバン製、幅:24mm)を剥がした時に付着したZn量を蛍光X線によりカウント数として測定した。測定したZnカウント数を試験片幅:単位長さ(1m)当りのカウント数に補正して、下記の基準に応じて評価した。
○:良好(カウント数:0〜5000)
×:不良(カウント数:5000以上)
結果を表3に示す。
Claims (2)
- mass%で、C≦0.25%、Si:0.1〜3.0%、Mn:0.5〜5.0%、Al:0.005〜3.0%を含有する鋼板に溶融亜鉛めっき処理を施すに際し、
まず、Fe,Ni,C,S、Cu、Coからなる群から選ばれた少なくとも1種の成分を含む前めっき処理を該鋼板表面に施し、
次いで、前記前めっき処理後の鋼板を
O2≧0.1%を含有する雰囲気中で酸化処理した後、
還元性雰囲気中で、700〜900℃の温度で還元処理し、
次いで、鋼板温度が600℃以下の領域での雰囲気中のO2が100ppm以下となるように冷却し、
次いで、溶融亜鉛めっき処理を施すことを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。 - mass%で、C≦0.25%、Si:0.1〜3.0%、Mn:0.5〜5.0%、Al:0.005〜3.0%を含有する鋼板に溶融亜鉛めっき処理を施すに際し、
まず、Fe,Ni,C,S、Cu、Coからなる群から選ばれた少なくとも1種の成分を含む前めっき処理を該鋼板表面に施し、
次いで、前記前めっき処理後の鋼板を
O2≧0.1%を含有する雰囲気中で酸化処理した後、
還元性雰囲気中で、700〜900℃の温度で還元処理し、
次いで、鋼板温度が600℃以下の領域での雰囲気中のO2が100ppm以下となるように冷却し、
次いで、溶融亜鉛めっき処理を施した後、合金化処理を施すことを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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