JP4702974B2 - 加工性に優れた合金化溶融亜鉛めっき高張力鋼板及びその製造方法 - Google Patents

加工性に優れた合金化溶融亜鉛めっき高張力鋼板及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、加工性に優れた合金化溶融亜鉛めっき高張力鋼板及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、耐食性,塗装性,塗装後密着性,溶接性に優れていることから、家電製品,自動車用車体を始めとする種々の分野で防錆鋼板として汎用されている。このような用途では、通常プレス成形により必要形状に加工して使用されることから,耐食性に加えて加工性に優れていることも重要である。
合金化溶融亜鉛めっき鋼板は,溶融めっきラインで鋼板をガス還元した後、過度の合金化処理を抑制するためにAlを0.13〜0.15質量%添加した浴温450〜470℃の溶融亜鉛めっき浴にインレット温度470〜500℃で浸漬して溶融亜鉛めっきした後、ガスワイピングノズルでめっき付着量を調整し、加熱合金化処理することにより製造されている。加熱合金化処理には、一般にバーナ加熱方式,高周波誘導加熱方式,両者を併用する加熱方式等を採用した合金化処理炉が使用されている。
【0003】
めっき直後に加熱合金化処理を施すと、合金化反応の進行と共にめっき層ではη−Zn相が消失し、ζ相(FeZn13),δ1相(FeZn7),Γ1相(Fe5Zn21),Γ相(Fe3Zn10)等が順次生成する。合金化溶融亜鉛めっき鋼板の加工性は,このめっき層構造に大きく影響される。具体的には、めっき層表層に軟質のζ相が厚く残存すると、プレス成形時に金型との摺動抵抗が大きくなり、板破断やめっき層が鱗片状に剥離するフレーキング現象が発生する。逆に、ζ相が消失し、めっき層と下地鋼板との界面に硬く脆いΓ相が厚く生成すると、めっき層が粉状に剥離するパウダリング現象が発生し、剥離しためっき層の粉末が金型に蓄積されて金型やめっき層を損傷させる原因となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
フレーキング現象やパウダリング現象によるめっき層剥離が著しいと、プレス成形作業に悪影響を及ぼすばかりでなく、剥離部分を起点として腐食が進行するため耐食性も低下する。このようなことから、加工度の高い用途への使用が予定される合金化溶融亜鉛めっき鋼板ではζ相の残存量及びΓ相の生成量を極力少なくする必要がある。
特に、自動車車体を軽量化するため多用されるようになってきた合金化溶融亜鉛めっき高張力鋼板では、延性の小さな高張力鋼をめっき原板に使用していることから、プレス成形性に及ぼすめっき層表面の摺動性の影響が大きく、多量のζ相が残存するとフレーキング現象だけでなく、板破断が発生し、プレス成形ができなくなることがある。
【0005】
しかし、従来の溶融亜鉛めっき後に加熱合金化処理する製造法では、溶融めっき条件及び加熱合金化処理条件とζ相の生成・消失挙動及びΓ相の生成・成長挙動との関係が十分に解明されていない。その結果、ζ相を消失させる条件下ではΓ相が厚く生成し、Γ相の成長を抑制する条件下ではζ相の残存量が多くなりがちとなり、加工性に優れた合金化溶融亜鉛めっき高張力鋼板の安定的な製造が困難であった。
しかも、Si,Mn,Pを添加した高張力鋼では、易酸化性元素であるSi,Mnが多量に含まれるとガス還元焼鈍時に選択酸化されて鋼板表面に濃化し、めっき性を著しく阻害する。また、Si,Mn,Pの添加量が多くなると合金化反応が遅延し、高温・長時間の合金化処理が必要になるため、製造コストの上昇及び生産性低下の原因になる。そのため、めっき原板に使用される高張力鋼板では、Si,Mn,Pの添加量に制約が加わる。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、めっき原板の組成,前処理条件,めっき条件を及びめっき後のワイピング条件,合金化処理条件及び冷却条件を総合的に管理することにより、Γ相の生成・成長及びζ相の残存を抑制し、加工性に優れた合金化溶融亜鉛めっき高張力鋼板を高い生産性で製造することを目的とする。
【0007】
本発明の合金化溶融亜鉛めっき高張力鋼板は、その目的を達成するため、C:0.3質量%以下,Si:0.005〜2.0質量%,Mn:0.05〜3.0質量%,Al:0.005〜0.10質量%,P:0.01〜0.20質量%を含み残部が実質的にFeの組成をもつ鋼板を基材とし、δ1相,Γ1相及び層厚1μm以下のΓ相からなるめっき層が片面当り付着量30〜90g/m2で基材表面に形成されていることを特徴とする。基材としての鋼板は、更にTi:0.005〜0.10質量%,Nb:0.005〜0.10質量%,Cu:0.01〜1.5質量%,Mo:0.005〜0.50質量%,B:0.0001〜0.01質量%の1種又は2種以上を含むことができる。
【0008】
この合金化溶融亜鉛めっき高張力鋼板は、所定組成に調整された鋼板の表面に実質的にFeからなる層を形成した後、ガス還元焼鈍し、Al:0.1〜0.2質量%を含む浴温490〜550℃の溶融亜鉛めっき浴にインレット温度490〜600℃で浸漬して溶融亜鉛めっきし、溶融亜鉛めっき浴から引き上げられた鋼板をガスワイピングしてめっき付着量を片面当り30〜90g/m2に調整し、490〜550℃に5〜60秒加熱する合金化処理を施した後、板温が400℃以下になるまで冷却速度5〜15℃/秒で冷却することにより製造される。
【0009】
実質的にFeからなる層は、鋼板表面に膜厚50〜1000nmの酸化鉄皮膜を形成した後、水素3〜25体積%を含む窒素雰囲気中でガス還元焼鈍する方法,片面当り付着量0.5〜15g/m2でFe系プレめっきを施す方法等により形成される。
【0010】
【作用】
本発明者等は、合金化速度が大きな極低炭素Ti添加鋼又はTi−Nb複合添加鋼をめっき原板に使用し、Al:0.1〜0.2質量%を含む溶融亜鉛めっき浴の浴温及びインレット温度をζ相の包晶点490℃以上に設定して溶融亜鉛めっきし、めっき後に冷却速度5〜15℃/秒で冷却するとき、ζ相の生成及びΓ相の成長を抑制した合金化溶融亜鉛めっき鋼板が得られることを特願平11−360424号で提案した。本発明者等のその後の研究によると、この方法は高張力鋼にも適用でき、めっき原板の組成,溶融亜鉛めっき浴のAl濃度,浴温,インレット温度,めっき付着量,めっき後の合金化処理条件,合金化処理後の冷却速度を制御するとき,ζ相の生成及びΓ相の成長が抑制され、耐フレーキング性及び耐パウダリング性の双方を満足する加工性に優れた合金化溶融亜鉛めっき高張力鋼板が製造できることを見出した。
【0011】
Fe−Zn系の平衡状態図(図1)をみると、ζ相の包晶点が約530℃であることから、熱力学的にはこの包晶点以上の温度でζ相は安定的に存在しない。すなわち、溶融亜鉛めっき浴の浴温及びめっき原板のインレット温度を包晶点以上に設定すると、ζ相の生成が抑制されることが判る。また、本発明者等の研究結果から、溶融亜鉛めっき浴にAlを0.1〜0.2質量%添加するとき包晶点が約490℃まで低下することが判明している。また、高張力鋼板の表面に酸化鉄皮膜を予め形成しておくとガス還元焼鈍時にSi,Mnの濃化が抑制されてめっき性が向上すること,及びFe系プレめっきを施すことによりめっき性の向上に加えて合金化反応速度が大きくなることも判明している。
【0012】
本発明者等は、このような前提に基づき、めっき性及び合金化挙動に及ぼす酸化鉄皮膜の膜厚,Fe系プレめっき条件,溶融亜鉛めっき条件,加熱合金化処理条件等の影響を種々調査検討した。その結果、前掲した組成をもつ高張力鋼板をめっき原板とし、めっき原板の表面に実質的にFeからなる層を形成しておくと、めっき性が向上し、合金化反応速度も大きくなることを見出した。また、Al:0.1〜0.2質量%を含む溶融亜鉛めっき浴を使用し、溶融亜鉛めっき時の浴温,インレット温度及び溶融亜鉛めっき後の加熱合金化処理温度をζ相の包晶点490℃以上に設定すると、ζ相の生成が抑制されることを見出した。このようにして得られる合金化溶融亜鉛めっき高張力鋼板は、めっき層全体が合金化処理されているため耐フレーキング性及び耐パウダリング性双方の品質特性を満足する。
【0013】
【実施の形態】
本発明で使用するめっき原板は、C:0.3質量%以下,Si:0.005〜2.0質量%,Mn:0.05〜3.0質量%,Al:0.005〜0.10質量%,P:0.01〜0.20質量%を含み、更に必要に応じてTi:0.005〜0.10質量%,Nb:0.005〜0.10質量%,Cu:0.01〜1.5質量%,Mo:0.005〜0.50質量%,B:0.0001〜0.01質量%の1種又は2種以上を含んでいる。
【0014】
Cは強度向上に有効であるが、0.3質量%を超える過剰量のCが含まれると絞り成形性が低下するため、特に高加工用途ではC含有量を可能な限り低くすることが好ましい。Si,Mn,Pは鋼板の高強度化に有効であるが、Si:2.0質量%,Mn:3.0質量%,P:0.20質量%を超えて添加しても効果が飽和する。Alは、固溶Nを固定し時効防止作用を呈するが、0.10質量%以上添加しても効果が飽和するので、Al:0.005〜0.10質量%の範囲に設定した。C,Si,Mn,Pに加えてTi,Nb,Cu,Moの1種又は2種以上を添加すると更に強度が向上するが、規定範囲を超えて多量に添加しても増量に見合った強度向上効果は見られない。また、Bは、脆化防止作用を呈し絞り成形性の向上に有効な合金成分であるが、0.01質量%以上添加しても効果が飽和するので、0.0001〜0.01質量%の範囲にB含有量を定めた。
【0015】
所定の成分・組成に調整されためっき原板は、ガス還元焼鈍炉で還元焼鈍されるが、易酸化性元素であるSi,Mnがガス還元焼鈍時に選択酸化され鋼板表面に濃化しやすい。Si,Mnの濃化はSi:約0.2質量%以上,Mn:約1.8質量%以上で顕著になる。鋼板表面に濃化したSi,Mnは不めっきの原因となり、また鋼板に多量に含まれるSi,Mnは合金化反応を遅延させる原因となる。そこで、本発明においては、ガス還元焼鈍に先立って実質的にFeからなる層を鋼板表面に形成することにより、Si,Mnの表面濃化を抑えると共に、合金化反応に適した表面に改質している。
【0016】
実質的にFeからなる層を酸化鉄皮膜から形成する場合、ガス還元焼鈍前の鋼板表面に膜厚50〜1000nmの酸化鉄皮膜を形成し、水素3〜25体積%を含む窒素雰囲気中でガス還元焼鈍する。酸化鉄皮膜の膜厚が50nm未満では、ガス還元焼鈍時にSi,Mnの濃化を抑制できず、不めっきが発生しやすくなる。逆に1000nmを超える膜厚では、還元不充分に起因した不めっきが発生しやすくなる。酸化鉄皮膜は、50〜1000nmの膜厚が得られる限り形成方法に特段の制約を受けるものではない。たとえば、シーラス炉又は無酸化炉方式の溶融めっきラインに付設されている予熱炉で燃焼雰囲気を用いて弱酸化処理するとき、鋼板の酸化及びガス還元焼鈍前の予熱が同時に行えるので好適である。
【0017】
所定膜厚の酸化鉄皮膜が形成された鋼板をガス還元焼鈍すると、鋼板表面の酸化鉄皮膜がFeに還元されて活性になり、めっき性に優れた表面状態に改質される。また、鋼板表面が金属Feになるため、合金化反応速度も大きくなる。しかし、ガス還元焼鈍時の水素濃度が3体積%未満では、酸化鉄皮膜が完全に還元されずに残留し、不めっきの原因になる。しかし、水素濃度が25体積%を超えると還元過多になり、Si,Mnが選択酸化されて鋼板表面に濃化しやすく、不めっきの原因になる。
【0018】
予熱炉のないオールラジアントチューブ方式の溶融めっきラインでは、Fe系プレめっきが好適である。Fe系プレめっきは、Si,Mnの濃化を抑制すると共に、合金化反応を促進させる。このような効果は、片面当り0.5〜15g/m2の付着量でFe系プレめっきを施すとき顕著となる。付着量が0.5〜15g/m2に満たないと、ガス還元焼鈍時にSi,Mnが濃化して不めっきが発生しやすくなる。逆に、15g/m2を超える付着量では、めっき後の合金化処理でFeが過剰になり,Γ相が厚く成長する。
【0019】
Fe系プレめっき層としては、純Feの他に、Fe−B,Fe−C,Fe−P,Fe−N,Fe−O等のプレめっき層が使用できる。Fe系プレめっき層に含まれる微量のB,C,P,N,Oは、Si,Mnの濃化を抑制する作用を呈する。
Fe系プレめっき層は、電気めっき法で形成されるが、片面当り0.5〜15g/m2の付着量が得られる限り電気めっき液の種類,浴組成,めっき条件等に特段の制約が加わるものではない。Fe系プレめっきは、電気めっきラインで実施できるが、溶融めっきラインのガス還元焼鈍炉の前に電気めっき設備を付設してFe系プレめっき及び溶融亜鉛めっきを連続化することが生産性,コスト的に有利である。
【0020】
ガス還元焼鈍時の加熱温度及び加熱時間は,めっき原板の組成や目標とする合金化溶融亜鉛めっき高張力鋼板の機械的性質を考慮して適宜設定される。
ガス還元焼鈍しためっき原板は、Alを0.1〜0.2質量%添加した溶融亜鉛めっき浴に導入される。溶融亜鉛めっき浴は、Alの添加によって包晶点が490℃まで下げられている。Al添加量が0.1質量%未満では、包晶点が490℃まで下がらず、合金化反応速度も大きくなるため、Γ相が成長しやすくなる。逆に、0.2質量%を超える過剰量のAlを添加すると、合金化反応速度が遅延し、高温・長時間の合金化処理が必要になり、製造コストの上昇及び生産性の低下を招く。
【0021】
本発明では、ζ相の生成を抑制すると共に合金化反応を促進させるため、溶融亜鉛めっき浴の浴温を下限490℃に設定しているが、Γ相の厚い成長を抑制するために上限を550℃に設定する。浴温が550℃を超えるとΓ相が厚く成長し、溶融亜鉛めっき浴の高温保持に要するエネルギーコストも高くなる。また、浴温変動を抑制し、Γ相の成長を抑制するため、インレット温度を490〜600℃の範囲に設定する。
【0022】
溶融亜鉛めっき浴から引き上げられためっき原板に付着している溶融めっき金属の片面当りめっき付着量を30〜90g/m2に調整する。めっき付着量が多すぎると本発明で規定した条件下でも合金化反応が進行せず、めっき層表面にη−Zn相が残存するので、ガスワイピングでめっき付着量を90g/m2以下にすることが必要である。めっき付着量の調整に採用されるガスワイピング法では絞れる下限が30g/m2である。
【0023】
ガスワイピング後、鋼板を490〜550℃に5〜60秒加熱することにより合金化反応を進行させる。加熱温度が490℃未満ではζ相生成し、550℃を超えるとΓ相が成長する。また、5秒に達しない加熱時間ではη−Zn相が残存し、60秒を超える長時間加熱ではΓ相が成長する。490〜550℃×5〜60秒の加熱条件が満足される限り、加熱方式は特に制約されるものではなく、バーナー加熱方式,高周波誘導加熱方式,両者を併用した加熱方式等を採用した合金化処理炉が使用される。
合金化処理された鋼板は、板温が400℃に到達するまで鋼板を5〜15℃/秒の冷却速度で冷却する。15℃/秒を超える大きな冷却速度では、合金化反応が十分に進行せず、めっき層表層にη−Zn相が残存しやすくなる。逆に5℃/秒未満の冷却速度では、Γ相が成長しやすくなる。鋼板温度が400℃を下回ると合金化反応の進行に及ぼす冷却速度の影響はほとんど無視できるので、鋼板温度400℃以下の温度域では適宜の冷却速度で鋼板を冷却する。
【0024】
【実施例】
表1に示した組成をもつ低炭素鋼を溶製し、熱延,酸洗,冷延工程を経て板厚0.7mm,板幅1000mmの冷延鋼板を製造した。
【0025】
Figure 0004702974
【0026】
この高張力冷延鋼板をめっき原板とし、ガス還元焼鈍前に実質的にFeからなる層を鋼板表面に形成した。
酸化鉄皮膜から実質的にFeからなる層を形成する方法では、ラインスピード100m/分でシーラス炉方式の予熱炉を付設した溶融めっきラインに通板し、予熱炉で弱酸化処理して表2に示す膜厚の酸化鉄皮膜を形成した後、ガス還元焼鈍し,溶融亜鉛めっき及び加熱合金化処理を施した。
【0027】
Figure 0004702974
【0028】
電気めっきラインで実質的にFeからなる層を形成する方法では、表3の条件下でFe系プレめっき層を電気めっきしためっき原板を溶融亜鉛めっきラインに通板した。この場合には、予熱炉での弱酸化処理は施さなかった。
【0029】
Figure 0004702974
【0030】
ガス還元焼鈍,溶融亜鉛めっき条件及び合金化処理条件は、表4に掲げた範囲から選択した。なお、合金化処理にはバーナー加熱方式の合金化処理炉を使用した。
【0031】
Figure 0004702974
【0032】
めっき性に及ぼすめっき原板の成分,前処理条件及びガス還元焼鈍時の水素濃度の影響を調査した。めっき原板には表1に示した試験番号A〜Cの3種類の鋼板を使用した。溶融亜鉛めっき浴のAl濃度を0.15質量%,浴温を530℃,インレット温度を530℃,めっき付着量を60g/m2とし、酸化鉄皮膜の膜厚,Fe系プレめっき層の付着量及びガス還元焼鈍時の水素濃度をそれぞれ表5の条件とした。溶融亜鉛めっき後、合金化処理を施すことなくそのまま冷却し、めっき層表面を目視観察することにより不めっきの有無を調査した。
【0033】
表5の試験番号1〜3にみられるように、弱酸化処理及びFe系プレめっきを施さない場合、Si:0.010質量%、Mn:0.529質量%のめっき原板Aでは不めっきが発生せず、めっき性が良好であった。しかし、Si:0.259質量%のめっき原板B及びSi:1.985質量%、Mn:2.990質量%のめっき原板Cでは、ガス還元焼鈍時にSi、Mnが選択酸化されて鋼板表面に濃化したため、不めっきが発生した。
めっき原板B,Cを弱酸化処理して本発明で規定した膜厚の酸化鉄皮膜を形成したところ、試験番号4〜7にみられるように、不めっきが発生せず、めっき性が良好であった。しかし、酸化鉄皮膜の膜厚及びガス還元焼鈍時の水素濃度が本発明で規定した範囲を外れると、試験番号8〜15にみられるように、Si,Mnの濃化,鋼板表面の過酸化,還元不足,還元過多等に起因して不めっきが発生した。
【0034】
めっき原板B,CにFe系プレめっきを施した後で溶融亜鉛めっきしたものでは,Fe系プレめっきの付着量が本発明で規定した範囲にあるとき、試験番号16〜19にみられるように、不めっきが発生せず、めっき性が良好であった。しかし、Fe系プレめっきの付着量が本発明で規定した範囲を外れる試験番号20,21では、Si、Mnの鋼板表面への濃化が抑制できず、不めっきが発生した。
以上の結果から、酸化鉄皮膜及びFe系プレめっきの付着量が本発明で規定した範囲にあるとき、Si:0.259質量%のめっき原板B及びSi:1.985質量%、Mn:2.990質量%のめっき原板Cでも良好なめっき性が得られることが確認される。
【0035】
Figure 0004702974
【0036】
次いで、めっき原板A〜Hを使用し、合金化溶融亜鉛めっき高張力鋼板を製造し、めっき層の構造及び加工性を調査した。なお、表5の結果から、めっき原板Aでは弱酸化処理及びFe系プレめっきを省略し、表6の条件下で溶融亜鉛めっきした。A以外のめっき原板については、表7に示すように本発明で規定した条件を満足する酸化鉄皮膜及びFe系プレめっき層を形成した。
【0037】
Figure 0004702974
【0038】
Figure 0004702974
【0039】
製造された各合金化溶融亜鉛めっき高張力鋼板から試験片を切り出し,めっき層の層構成を観察すると共に、耐パウダリングし嫌悪及び耐フレーキング試験に供した。
めっき層の層構成:
走査型電子顕微鏡を用いて幅10mm,長さ20mmの試験片の表面組織及び断面組織を倍率5000倍で観察し、η−Zn相,ζ相の有無及びΓ相の厚みを測定した。観察結果を次のように分類した。
η−Zn残存:めっき層表層まで合金化せずη−Zn相が残存している層構成
ζ+δ1+Γ1:ζ相が残存しΓ相が観察されなかった層構成
δ1+Γ1:ζ相が観察されず、Γ相の厚みが1μm以下の層構成
δ1+Γ1+Γ:ζ相が観察されず、Γ相の厚みが1μm以上の層構成
【0040】
耐パウダリング試験:
板厚×6の直径の円弧が試験面に形成されるように幅20mm,長さ50mmの試験片を試験面を内側にして180度曲げした後、試験片を平板状に曲げ戻した。曲げ・曲げ戻しを受けた部分に感圧接着テープを貼り付けた後、感圧接着テープを引き剥がし、感圧接着テープに付着しためっき層の量を目視観察した。観察結果を次のように分類した。評点3以上であれば、品質特性に問題がないものといえる。
Figure 0004702974
【0041】
耐フレーキング試験:
幅25mm,長さ250mmの試験片に防錆油を塗布し、図2に示すように金型に挟み、ドロービード試験した。次いで、試験片に感圧接着テープを貼り付け、引き剥がした後、感圧接着テープに付着しためっき層の量を化学分析法で測定した。めっき層の付着量が5g/m2以下であれば、耐フレーキング性が良好で品質特性に問題がないといえる。
本発明で規定した条件下で得られた試験番号101〜127の合金化溶融亜鉛めっき高張力鋼板は、何れもζ相が生成しておらず、Γ相の厚みも1μm以下であった。また、パウダリング評点3以上,フレーキング剥離量5g/m2以下と、耐パウダリング試験及び耐フレーキング試験の双方共に試験結果が良好で、加工性に優れていた。
【0042】
【比較例】
各条件が加工性に及ぼす影響を調査するため、鋼種A〜Hのめっき原板を使用し、本発明で規定した範囲から外れる溶融亜鉛めっき条件及び加熱合金化処理条件(表8,9)で合金化溶融亜鉛めっき高張力鋼板を製造した。
【0043】
Figure 0004702974
【0044】
Figure 0004702974
【0045】
製造された合金化溶融亜鉛めっき高張力鋼板から試験片を切り出し、実施例と同様に溶融亜鉛めっき層の層構成を観察すると共に、耐フレーキング性及び耐パウダリング性を調査した。表10,11の調査結果にみられるように、溶融亜鉛めっき条件及び加熱合金化条件が本発明で規定した範囲を外れる試験番号128〜130,140〜142,152〜154では、フレーキング剥離量が5g/m2以上と多く、ζ相の残存に起因して耐フレーキング性が低下した。Fe系プレめっきの付着量、溶融亜鉛めっき条件、合金化処理条件が本発明で規定した範囲を外れる試験番号131〜136,143〜148,155〜161では、Γ相が1μm以上に厚く成長しているためパウダリング評点が2以下になり、耐パウダリング性が低下した。また、Al濃度,めっき付着量,合金化処理時の保持時間が本発明で規定した範囲を外れる試験番号137〜139,149〜151,162〜164では、溶融亜鉛めっき層の表層まで合金化反応が進行せず、η−Zn相が残存していたので、パウダリング試験及びフレーキング試験に供さなかった。
【0046】
Figure 0004702974
【0047】
Figure 0004702974
【0048】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明においては、めっき原板の組成,前処理条件,溶融亜鉛めっき条件,ワイピング条件,冷却条件及び加熱合金化処理条件を総合的に制御することにより、ζ相の残存及びΓ相の成長を抑制し、加工性を向上させた合金化溶融亜鉛めっき高張力鋼板が製造される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 Fe−Zn二元状態図の一部
【図2】 ドロービード試験の説明図

Claims (4)

  1. C:0.3質量%以下,Si:0.005〜2.0質量%,Mn:0.05〜3.0質量%,Al:0.005〜0.10質量%,P:0.01〜0.20質量%を含み、Fe及び不可避的不純物からなる組成をもつ鋼板の表面に実質的にFeからなる層を形成した後、ガス還元焼鈍し、Al:0.1〜0.2質量%を含む浴温490〜550℃の溶融亜鉛めっき浴にインレット温度490〜600℃で浸漬して溶融亜鉛めっきし、溶融亜鉛めっき浴から引き上げられた鋼板をガスワイピングしてめっき付着量を片面当り30〜90g/m2に調整し、490〜550℃に5〜60秒加熱する合金化処理を施した後、板温が400℃以下になるまで冷却速度5〜15℃/秒で冷却することを特徴とする加工性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  2. 更にTi:0.005〜0.10質量%,Nb:0.005〜0.10質量%,Cu:0.01〜1.5質量%,Mo:0.005〜0.50質量%,B:0.0001〜0.01質量%の1種又は2種以上を含む鋼板を使用する請求項記載の製造方法。
  3. 鋼板表面に膜厚50〜1000nmの酸化鉄皮膜を形成した後、水素3〜25体積%を含む窒素雰囲気中でガス還元焼鈍することにより、実質的にFeからなる層を形成する請求項又は記載の製造方法。
  4. 片面当り付着量0.5〜15g/m2でFe系プレめっきを施すことにより実質的にFeからなる層を形成する請求項又は記載の製造方法。
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