しかしながら、特許文献1に開示された図10に示す樹脂パイプの締結構造では、樹脂パイプ230と樹脂製の接続管体220とから構成されているので、高温となる使用環境では樹脂パイプ230と樹脂製の接続管体220との樹脂のもつクリープ特性を超え変形する可能性があり、そうなると、樹脂パイプ230と樹脂製の接続管体220との締結構造部分より水素ガスが漏れる可能性がある。また、樹脂パイプ230は、内層231と、外層233との間に耐水素透過性をもつバリア層232を設けて積層する構成を採っているので、構造自体が複雑であるため、樹脂パイプ30の製造工程も煩雑にならざるを得ない。
また、特許文献2に開示された図11に示すコルゲイト管304を接続するための継手本体301では、コルゲイト管304は金属製(ステンレス鋼SUS304)であるために、このコルゲイト管304からの水素ガスの漏れはなくなる。しかしながら、コルゲイト管304の先端の数山342を継手本体301の気密面の耐熱ガスケット312に押し付けて潰して、コルゲイト管304と継手本体301とを接続した接続継手部分から水素ガスの漏れが生じ実用には適しない。つまり、特許文献2では、コルゲイト管304の先端の数山342を耐熱ガスケット312に押し当てて、コルゲイト管304の先端の山342を押し潰して気密を保つ構造であるが、耐熱ガスケット312自身は耐水素透過性の性能がない。そのために、この接続継手部分の耐熱ガスケット312を透過して水素ガスが漏れるという問題がある。
さらに、特許文献3に開示された図12に示すフレキシブルチューブ用継手では、金属製のチューブ本体426の先端端部をリテーナ416の爪部421と筒状本体401の当接面405との間で圧潰し、この圧潰部分の端面が筒状本体401の当接面405に密接されるという金属同士の圧潰である。しかしながら、チューブ本体426は薄板を溶接して得た管体をコルゲーション加工して蛇腹状に成形するので溶接跡が残っている。
そして、切断されたチューブ本体426の突出端部の部分にも溶接跡部分が残ることになる。この溶接跡部分は他の部分より少し盛り上がった状態にあり、この少し盛り上がった状態にある溶接跡部分を有するチューブ本体426の突出端部をリテーナ416の爪部421と筒状本体401の当接面405との間で圧潰しても圧潰部分が完全な平坦にはならない。この場合、一般のガス漏れには影響を与えにくいが、水素ガスのように透過性の高いものでは水素ガスの漏れの要因になる。この場合、継手本体である筒状本体401側の当接面405の面精度を高くしても溶接跡部分から漏れが生じる危険性があった。チューブ本体426は金属製であり、このように、金属製のチューブ本体426を折り曲げて圧潰しても水素ガスの漏れに対しては対応できないという問題がある。
本発明は、上記の事情に鑑みなされたものであり、水素ガスの漏れを抑制することができる水素ガスの配管に適した金属フレキシブル管用継手を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、奧壁を内部に有する継手本体と、該継手本体に移動可能に挿入されるナットと、該ナットの端部に一方側の端部が係合し、他方側の端部は金属フレキシブル管の端部の谷部に係合する爪部を有するリテーナとを備え、前記ナットに挿通される前記金属フレキシブル管の端部を前記リテーナの他方側の端部から突出させた状態で前記ナットを前記継手本体に挿入することにより、前記リテーナが係合した前記金属フレキシブル管の端部を前記リテーナの爪部と前記継手本体の奧壁との間で押し潰すようにした金属フレキシブル管用継手において、前記継手本体の奧壁に環状凹溝を設け、この環状凹溝内に耐水素透過性を有するシール部材を装着し、前記環状凹溝の開口部に前記金属フレキシブル管の最先端部である谷部を係止させると共に、該谷部に隣り合う山部を前記シール部材側に押し付けて潰すようにしたことを特徴とする。
従って、請求項1に記載の発明によれば、継手本体の環状凹溝の開口部に金属フレキシブル管の端部から突出したコルゲイト管(以下、金属フレキシブル管の一例としてコルゲイト管を用いている。コルゲイト管にはアニュラー形(蛇腹状)とスパイラル形(螺旋状)がある。)の谷部を係止させるとともに、その谷部に隣り合う、金属フレキシブル管の先端から突出したコルゲイト管の山部を、環状凹部内の耐水素透過性を有するシール部材へ押し付けて潰すので、その谷部に隣り合う山部はコルゲイト管の溶接跡部分を含め、シール部材内に入り込んで密封されるため、金属フレキシブル管のコルゲイト管を継手本体へ押し付けて潰したところからの水素ガス漏れの防止を可能にする。尚、上記では押付けて潰すと表現しているが、その程度は言及されるものではなく原形状に対して変化していればその要件に入るものである。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記リテーナの外周面が対向する継手本体の内周面には、前記奧壁に向かって縮径するテーパ内面を有し、且つ少なくとも前記金属フレキシブル管の最先端部である谷部が係止する前記環状凹溝の開口部は、当該環状凹溝内に向かって縮径するテーパ外面としたことを特徴とする。
従って、請求項2に記載の発明によれば、継手本体の内周面には、奧壁に向かって縮径するテーパ内面を有し、且つ環状凹溝の少なくとも内径側の開口部は環状凹溝内に向かって縮径するテーパ外面としているため、リテーナの爪部の押圧面の外端部がテーパ内面に当接し、テーパ内面に沿ってテーパ内面の縮径方向(耐火膨張パッキン)へ移動することで、リテーナの爪部を含めたリテーナ本体部を水平方向から環状凹部(シール部材)へ傾斜させ、金属フレキシブル管の端部(コルゲイト管の先端の谷部)が継手本体の環状凹部の開口部に設けたテーパ外面へ向い易くする(テーパ外面へ案内し易くする)ことを可能にする。
また、金属フレキシブル管の最先端部(コルゲイト管の先端の谷部)が継手本体の前記テーパ外面に当接し、テーパ外面の当接した位置に押圧が加わっても、金属フレキシブル管の最先端部(コルゲイト管の先端の谷部)とテーパ外面との摩擦、さらには押圧方向がテーパ外面が環状凹溝に対して縮径する傾斜(上る傾斜)となっているため、金属フレキシブル管の最先端部(コルゲイト管の先端の谷部)がテーパ外面の当接した位置から移動し難い状態になり、この当接した位置を支点としてテーパ外面方向に沿って前記最先端部である谷部に隣り合う山部(第1の山部)をより確実に環状凹部(シール部材9)側へ傾き易くすることを可能にする。
さらに、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の構成に加え、前記リテーナの他方側の端部から突出する前記金属フレキシブル管の端部は、一組の、前記金属フレキシブル管の最先端部である谷部と隣り合う山部であることを特徴とする。
本発明においてリテーナの端部から突出させて押し潰す山は複数山でも構わない。しかし、請求項3に記載の発明によれば、リテーナの他方側の端部から突出する金属フレキシブル管の端部は、金属フレキシブル管内のコルゲイト管の一組の、谷部と隣り合う山部であるために、テーパ外面で谷部を支点に谷部に隣り合う山部をリテーナの爪部で環状凹部(シール部材)側へ押し付けて潰すと、押し付けて潰された山部が一山分であるために、漏れを引き起こす可能性のある部位が最少で済み、これがシール部材内へ食い込みシール部材内に入り込むので高いシール性能を得ることが可能になる。
さらに、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の構成に加え、前記リテーナが前記テーパ内面に沿って移動しつつ、前記リテーナの他方側の端部から突出する前記金属フレキシブル管の最先端部が前記テーパ外面に当接し、当接した前記金属フレキシブル管の最先端部を支点に、前記リテーナの爪部が前記金属フレキシブル管の前記最先端部と隣り合って連続する山部を前記環状凹溝内のシール部材に押し付けて潰すようにしたことを特徴とする。
従って、請求項4に記載の発明によれば、リテーナがテーパ内面に沿って移動しつつ、金属フレキシブル管の最先端部である谷部がテーパ外面に当接し、当接した金属フレキシブル管の最先端部を支点に、リテーナの爪部が金属フレキシブル管の最先端部である谷部と隣り合って連続する山部を折り畳んで環状凹溝内の前記シール部材に押し付けて潰すので、折り畳んだ山部がシール部材内に食い込み、コルゲイト管の溶接跡部分を含めた山部がより確実にシール部材に入り込むので水素ガス漏れを防止する水素ガスに対しての高いシール性能を得ることが可能になる。
また、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の構成に加え、前記リテーナの爪部が押し付けて潰した前記金属フレキシブル管の端部は、前記テーパ外面に当接した前記金属フレキシブル管の最先端部を支点に、前記環状凹部の方向へ、前記テーパ外面に対して鋭角となることを特徴とする。
従って、請求項5に記載の発明によれば、リテーナの爪部が押し付けて潰した金属フレキシブル管の最先端部の外周である谷部と隣り合って連続する山部は、テーパ外面に当接した金属フレキシブル管の最先端部を支点に、前記環状凹部の方向へ、前記テーパ外面に対して鋭角となるため、環状凹部内により入り込み易くなり、環状凹部内のシール部材に食い込むことが可能になる。
また、請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の構成に加え、前記シール部材は水素透過係数が1.4×10−13mol・m・m−2・s−1・Pa−1以下の部材であることを特徴とする。
従って、請求項6に記載の発明によれば、耐水素透過性について適切な水素透過係数に設定しているので、耐熱ガスケット等では満足できない耐水素透過性能を発揮し所定のシール性能を得ることが可能である。
さらに、請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の構成に加え、前記金属フレキシブル管の端部を押し付けて潰したときの前記シール部材の潰れ代を30%から45%としたことを特徴とする。
従って、請求項7に記載の発明によれば、金属フレキシブル管の最先端部に隣り合って連続する山部を押し潰したときのシール部材の潰れ代を30%から45%と適切な範囲に設定しているので、長期に亘って耐水素透過性能を高めることを可能にしている。
また、請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7のいずれに記載の構成に加え、前記シール部材は、Hs硬度45°から95°の合成ゴム部材であることを特徴とする。
従って、請求項8に記載の発明によれば、シール部材は合成ゴム部材であり、そのHs硬度45°から95°と適切な範囲に設定しているので、長期に亘って耐水素透過性能を高めることを可能にしている。
本発明によれば、コルゲイト管の溶接跡部分を含めた端部が耐水素透過性の高いシール部材内へ押し付けて潰すので密封性が高く保たれ、水素ガス漏れを防止することができる。
ここで、継手本体の内面は、奧壁に向かって縮径するテーパ内面を有し、且つ環状凹溝の開口部は環状凹溝内に向かって縮径するテーパ外面としているため、リテーナがテーパ内面に沿って移動し金属フレキシブル管の端部から突出したコルゲイト管の先端の谷部を環状凹溝のテーパ外面(環状凹溝の開口部)へ向かわせて(案内して)テーパ外面に当接し易くすることができる。
また、テーパ外面は環状凹溝内に向かって縮径しているので、金属フレキシブル管の最先端部(コルゲイト管の先端の谷部(の外周))がテーパ外面に当接した後、リテーナの爪部の押圧により、この当接した位置で金属フレキシブル管の最先端部(コルゲイト管の先端の谷部)を支点に、その谷部と隣り合って連続する山部をテーパ外面に沿って確実にシール部材側へ傾かせることができる。その結果、その山部を折り畳んで環状凹溝内のシール部材に押し付け、押し付けて潰した山部はシール部材内に食い込み、コルゲイト管の溶接跡部分を含めた山部がシール部材内に入り込んで密封されるので水素ガスに対しての高いシール性能を得ることができる。
さらに、水素ガスの漏れ量に対して、水素透過係数、潰れ代及びHs硬度の適切な設定に基づくシール部材の選定を行っているので、継手本体へのコルゲイト管の連結の位置(シール部材)での耐水素透過性能を高めることができる。
以下、本発明を実施するための一実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示す、本発明である金属フレキシブル管用継手100の継手本体1の一方の端部16側は水素ガス用の管体に接続できるように例えば雄ねじを備えている。尚、雄ねじに限るものではなく他の接続構造や栓等の機能部材を備えていても良い。継手本体1内の奧壁10には、略円環状の当接面7が形成され、その略円環状の当接面7の外周を囲むように環状凹溝12が設けられている。この環状凹溝12には、水素ガスの漏れを抑えることが可能な水素透過係数が1.4×10−13mol・m・m−2 ・s−1・Pa−1以下のシール部材9が装着されている。この環状凹溝12の開口部の内径側は、環状凹溝12に向かって縮径するテーパ外面11が形成されており、環状凹溝12内に向かって縮径している。また、同じく開口部の外形側は、環状凹部溝12に向かって縮径するテーパ外面11bが形成されており、環状凹溝12内に向かって縮径している。但し、外径側は必ずしもテーパ面とする必要はない。
テーパ外面11から継手本体1の内周面18に向かって、テーパ外面11から連続して断面略円弧状の溝部15が形成されており、溝部15にはOリング状の耐火膨張パッキン17が嵌装されている。継手本体1の内周面18では、溝部15からは平坦部14に続き、平坦部14と隣り合って、テーパ内面21が形成されている。このテーパ内面21は、図1に示すように、平坦部14に向かって縮径して(奧壁10に向かって縮径して)形成されている。このテーパ内面21と隣り合って、継手本体1の内周面18に凹部19が形成され、この凹部19が継手本体1の他方の端部13側の雌ねじ部23につながっている。
この雌ねじ部23と螺合するためにナット3が設けられている。ナット3は、図1に示すように、段部42を境に大径部分36と小径部分37からなっている。ナット3の小径部分37である一方の端部側に雄ねじ部31が設けられており、継手本体1の雌ねじ部23がナット3の雄ねじ部31と螺合している。そして、ナット3には、図1に示すように、ナット3の長手方向に沿って、ナット3の中央部には開孔32が設けられている。ナット3の大径部分36の開孔32の内周面には凹部43が設けられており、断面略E字状のパッキン40が組み込まれている。
また、ナット3の段部42には、Oリング41が組み込まれている。これら断面略E字状のパッキン40及びOリング41を組み込むことにより、継手本体1を含めた金属フレキシブル管用継手100内への水分の侵入を防いでいる。さらに、図1に示すように、Oリング41に隣接するように、継手本体1の端面25とナット3の端面35との間にはスペーサ5が挟み込まれており、継手本体1に対するナット3の位置決めを行っている。スペーサ5は、合成樹脂製の略C字状の部材であり、ナット3の、段部37から雄ねじ部31にかけての外周に着脱可能になっている。
このスペーサ5は、図示しない切り欠き部が設けられており、切り欠き部を拡径することにより、ナット3の、Oリング41近傍から雄ねじ部31にかけての外周を囲むようにスペーサ5自身の弾力性によりOリング41の近傍上に取り付けることが可能になっている。また、ナット3を強く締め付けると、スペーサ5は切り欠き部で割れて、継手本体1の端面25とナット3の端面35との間から外れて継手本体1の外周に取り付くことになる。また、切り欠き部を利用して継手本体1の端面25とナット3の端面35との間からスペーサ5を人の手で外すことも可能である。
ナット3の雄ねじ部31の端部の開孔32側には内周溝33が設けられている。この内周溝33の縁部34とリテーナ6の突出部61とが回転自在に係止しており、リテーナ6の突出部61は、ナット3の内周溝33内を移動でき、内周溝33の縁部34と、継手本体1とナット3との螺合関係により、係止したり、離れたりすることが可能になっている。そして、この内周溝33の縁部34とリテーナ6の突出部61との係止は、ナット3に対してリテーナ6が通孔20方向に離れるのを防止している。
リテーナ6は、図1に示すように、継手本体1の内周面18に対向するリング状の外周面68を有する部材であり、図示していないがリテーナ6のナット3側の突出部61は一体のリングになっており、反対側は通孔20方向のスリットによって複数のセグメントに分かれており、セグメントの先端、継手本体1の環状凹部12(シール部材9)に対向する部分には、雄ねじ部31の内部である開孔32の径方向に向かって爪部62が突出している。この爪部62が作る円は、挿入されるコルゲイト管81の山部81b、81d等の径よりも小さく、谷部81a、81cの径よりも大きくなっている。
リテーナ6を構成する突出部61及び爪部62は、樹脂製であり弾力性に富むものであり、爪部62がリテーナ本体部63を支点にして弾性的なピボット運動が可能であり、拡縮可能になっている。ここで、弾性的なピボット運動とは、突出部61側を支点として爪部62が弾性的に拡径してコルゲイト管81の山部81bを乗り越えるような運動をいう。また、リテーナ6の外周部分には、図示していないが、剛性を高める部材(例えば、黄銅板)が埋設されている。さらに、リテーナ6の爪部62には、ナット3の開孔32に挿入される金属フレキシブル管8のコルゲイト管81に押圧を加えるための押圧面64が継手本体1の環状凹部(シール部材9)12に対向して形成されている。
ナット3の開孔32に挿入される金属フレキシブル管8は、図1に示すように、ステンレス(SUS304)製のコルゲイト管81とその外面に被覆した塩ビ製の合成樹脂層82とからなる。そして、このコルゲイト管81は約0.2mm程度のステンレスフープ材を連続的にコルゲーション加工して屈曲自在なフレキシブルな管に成形し、その後、樹脂被覆工程において、外面に約0.75mm程度の合成樹脂層82を連続的に被覆し、外面樹脂被覆層を成形したものである。
本例ではステンレス鋼SUS304のコルゲイト管81を用いているが、コルゲイト管81の材質は、特に、ステンレス鋼SUS304に限定されるものではなく、例えば、ステンレス鋼SUS304L、304LN、SUS316、SUS316LN、SUS317、SUS317L、317LN、SUS309S、SUS310S等の水素ガス用に適した金属配管材料あるいはフッ素樹脂、ポリアミド樹脂等の合成樹脂配管材料を用いることが可能である。
つぎに、本発明である金属フレキシブル管用継手の継手本体の当接面7におけるコルゲイト管81の圧潰のシール構造、施工方法について説明する。本発明は特にシール形態とその周辺構造に特徴があり、継手本体やナット、リテーナ等の構造は従来公知の構造を採用して差し支えない。この実施の形態で取り上げた継手構造も一例である。
この金属フレキシブル管8は、金属フレキシブル管8の端部である自由端側では、合成樹脂層82をコルゲイト管81の数山分(図1では4山分)に対応するだけ取り除き、金属フレキシブル管8の端部である、コルゲイト管81の先端が谷部81aの状態でナット3の開孔32内に矢印方向より挿入する(挿通する)。金属フレキシブル管8をナット3の開孔32へ挿入し、金属フレキシブル管8を継手本体1の通孔20方向へ移動する。金属フレキシブル管8の端部であるコルゲイト管81の先端の谷部81aが、リテーナ6の爪部62に当接する。具体的には、図1に示すコルゲイト管81では、コルゲイト管81の谷部81aの端面(外周)がリテーナ6の爪部62に当接する。
コルゲイト管81の谷部81aがリテーナ6の爪部62に当接することで、リテーナ6の突出部61は、ナット3の内周溝33内を移動し、内周溝33の縁部34に当接する。当接することで、リテーナ6の突出部61はナット3の内周溝33内で最大限移動したことになり、図1に示すスペーサ5を継手本体1とナット3との間に挟んだ状態では、リテーナ6の爪部62が環状凹部(シール部材9)12に最も近づく。さらに、金属フレキシブル管8をナット3の開孔32内に挿入すると、リテーナ6の爪部62には、コルゲイト管81の先端の(外周である)谷部81aの(通孔20方向に向かう)力が加わる。
その結果、リテーナ6の爪部62は、突出部61を支点にして、リテーナ6自身の弾力性により、弾性的なピボット運動をして、リテーナ6の爪部62がリテーナ6の径方向に拡径して開く。リテーナ6の爪部62がリテーナ6の径方向に拡径して開くことで、コルゲイト管81の山部81bを乗り越えて、リテーナ6自身の弾力性により、コルゲイト管81の外周である谷部81cに入り谷部81cに係合する。
本例では、図1に示すように、リテーナ6の爪部62が一つの山部81bを乗り越えて、つぎの谷部81cに入ったところで継手本体11の環状凹部(シール部材9)12とコルゲイト管81の先端の谷部81aとの隙間が、コルゲイト管81の一つの山部81d(一山分)に満たないように設定されている。そのために、金属フレキシブル管8を、さらにナット3の開孔32内に挿入しても、リテーナ6の爪部62がコルゲイト管81の山部81dを乗り越えることができない。
つぎに、図1に示す状態から継手本体1の端面25とナット3の端面35との間にあるスペーサ5を取り外し、ナット3を回転してナット3の雄ねじ部31が継手本体1の雌ねじ部23に沿って締めていく(螺進していく)。つまり、ナット3の内周溝33の縁部34の端面39は、リテーナ6のリテーナ本体部63の端面65に向かって進み、ナット3の内周溝33の縁部34は、リテーナ6の突出部61から離れていく。その際、ナット3の端面35が継手本体1の端面25に向かって進む。ナット3の端面39がリテーナ6の端面65に当接し、さらにナット3の端面35が継手本体1の端面25に向かい、環状凹部(シール部材9)12方向に、リテーナ6の爪部62がコルゲイト管81の山部81bを移動させる。
さらに、ナット3を回転してナット3の雄ねじ部31が継手本体1の雌ねじ部23に沿って締めていくと(螺進していくと)、リテーナ6の爪部62の押圧面64の端部66がテーパ内面21に当接し、テーパ内面21に沿ってテーパ内面21の縮径方向(耐火膨張パッキン17)へ移動する。このように、テーパ内面21に沿ってテーパ内面21の縮径方向(耐火膨張パッキン17)へ移動することで、リテーナ6の爪部61を含めたリテーナ本体部63が水平方向から環状凹部12(シール部材9)へ傾斜し、コルゲイト管81の先端の谷部81aが継手本体1のテーパ外面11に向う(案内される)。
そして、リテーナ6の爪部62の押圧面64の端部66が耐火膨張パッキン17に当接し、押圧面64の端部66が耐火膨張パッキン17を抉るように移動する。その結果、図2及び図3に示すように、継手本体1の溝部15に沿って、耐火膨張パッキン17が変形する。具体的には、押圧面64の端部66が環状凹部(シール部材9)12へ向かうのに追従して、図2及び図3に示すように、耐火膨張パッキン17の一部分17aが溝部15に沿ってテーパ外面11に向かって延びる。
リテーナ6の爪部62がコルゲイト管81の外周の谷部81cに係合し、爪部62の押圧面64が山部81bに当接した状態で、環状凹溝12内のシール部材9に向かって移動する。そして、コルゲイト管81の先端の谷部81aが継手本体1のテーパ外面11に当接する。コルゲイト管81の先端の谷部81aが継手本体1のテーパ外面11に当接すると、テーパ外面11の当接した位置に押圧が加わる。テーパ外面11の当接した位置に押圧が加わっても、図2及び図3に示すように、コルゲイト管81の先端の谷部81aとテーパ外面11との摩擦、さらには押圧方向(矢印F方向)がテーパ外面11が環状凹溝12に対して縮径する傾斜(上る傾斜)となっているため、コルゲイト管81の先端の谷部81aがテーパ外面11の当接した位置から移動し難い状態になる。
その結果、テーパ外面11に当接したコルゲイト管81の先端の(外周である)谷部81aがテーパ外面11の当接した位置を支点として、コルゲイト管81の山部81bの線状部分81a1がテーパ外面11の環状凹溝12に対する縮径する傾斜(上る傾斜)に沿って傾く。具体的には、図2及び図3に示すように、コルゲイト管81の先端の谷部81aがテーパ外面11の当接した位置を支点として、リテーナ6の押圧面64による押圧がコルゲイト管81の谷部81aに隣り合う山部81bの線状部分81b1に加わる。
そのため、線状部分81b1がシール部材9側へ傾き線状部分81a1に接近し、線状部分81a1がテーパ外面11の環状凹溝12内に対する縮径する傾斜(上る傾斜)に沿って傾く。つまり、線状部分81a1は、コルゲイト管81の先端の谷部81aがテーパ外面11の当接した位置を支点として、環状凹部12内に向い、テーパ外面11に対して鋭角αに向かって傾く。
また、ナット3を回転してナット3の雄ねじ部31が継手本体1の雌ねじ部23に沿って締め(螺進すると)、リテーナ6の押圧面64より押圧が加わると、図2及び図3に示すように、リテーナ6の押圧面64より山部81bの線状部分81b1に押圧が加わり、山部81bの線状部分81b1と線状部分81a1が重なり合うような状態になる(潰されるような状態になる)。
そして、コルゲイト管81の先端の谷部81aがテーパ外面11の当接した位置を支点として、山部81bの線状部分81b1と線状部分81a1が重なり合うような状態で(潰されるような状態で)テーパ外面11の縮径方向に沿って傾く。つまり、山部81bの線状部分81b1と線状部分81a1が重なり合うような状態で(潰されるような状態)、コルゲイト管81の先端の谷部81aがテーパ外面11の当接した位置を支点として、さらに環状凹部12内に向い、テーパ外面11に対して鋭角αに向かって傾く。
山部81bの線状部分81b1と線状部分81a1が重なり合うような状態(潰されるような状態)でテーパ外面11の縮径方向に沿って傾くと、線状部分81b1と線状部分81a1とが環状凹溝12内のシール部材9に押圧を加えつつ食い込む。最終的には、ナット3の端面35を継手本体1の端面25に当接するまで、ナット3を継手本体1に螺合させる。そして、山部81bの線状部分81b1と線状部分81a1が重なり合うような状態(潰されるような状態)でテーパ外面11に対して鋭角αに傾いて、シール部材9内に入り込む。そして、シール部材9の、山部81bの線状部分81b1と線状部分81a1が入り込まれた部分はシール部材から見て凹部9aを形成することになる。
その結果、シール部材9の、線状部分81b1と線状部分81a1とで凹部9aを形成することで押し出されたシール部材9の一部部分9bは、押圧面64に沿い、テーパ外面11に向かって移動する。以上のようにして、リテーナ6の押圧面64よりコルゲイト管81の山部81b及び谷部81aを構成する線状部分81a1、81b1をシール部材9方向へ押圧を加え、線状部分81a1と線状部分81b1を重なり合わせて(潰して)、シール部材9へ傾けさせ、シール部材9へ食い込ませて、シール部材9内へ入り込ませることで、山部81bはコルゲイト管81の溶接跡部分を含め、シール部材9内に入り込むことになる。
以上が、金属フレキシブル管を継手本体1へ連結するために、金属フレキシブル管8の端部のコルゲイト管81の先端の谷部81aに隣り合う山部81bを継手本体1の奧壁10の環状凹部(シール部材9)12へ押し付けて潰す施工方法である。このように、水素ガスの漏れを抑えることが可能なシール部材9内に、コルゲイト管81の溶接跡部分を含めたコルゲイト管81の山部81bを入り込ましているので、金属フレキシブル管8の端部と継手本体1との連結する部分での水素ガスの漏れを抑えることを可能にしている。
なお、本例では、水素ガスの漏れを抑えることが可能な水素透過係数が1.4×10−13mol・m・m−2・s−1・Pa−1以下のシール部材9を用いたが、さらに、水素ガスの漏れを抑え、且つ現実的な材料やコスト面を考慮すると、水素透過係数が、3.7×10−20mol・m・m−2・s−1・Pa−1以上、1.4×10−13mol・m・m−2・s−1・Pa−1以下(3.7×10−20mol・m・m−2・s−1・Pa−1から1.4×10−13mol・m・m−2・s−1・Pa−1)のシール部材9が望ましい。
また、本例では、図1に示すように、ナット3の外周面に貫通孔38が設けられており、この貫通孔38に選択透過性部材70が組み込まれている。本例で用いている選択透過性部材70は、四フッ化エチレン樹脂粉を押し固めたのち、延伸加工して成形した連続多孔質膜を含むシート材からなり、0.1から5μmの連続した微細孔を有し、空気や水蒸気のような気体は通すが、水などの液体ははじくという特性を備えているものである。一方、金属フレキシブル管8を被覆する合成樹脂層82の内周には管軸方向に延びる凹溝(点線で図示)を周方向に複数本設け、この凹溝と合わせて金属フレキシブル管8と合成樹脂層82との間を連通する通気溝72となしている。
また、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルアクリレート、ポリスチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、四フッ化エチレン重合体等の熱可塑性樹脂粉体から成形した連続気孔を有する多孔質体であるとか、また、ポリビニルアルコールとホルムアルデヒドを酸触媒と共に反応させることで成形した連続気孔を有する多孔質シート材を用いてもよい。
そして、例えば、配管等の施工時に誤って金属フレキシブル管8に釘等を打ち込んでしまったり、誤って折り曲げてしまったりして金属フレキシブル管8内のコルゲイト管81を傷つけてしまった場合、金属フレキシブル管8内のコルゲイト管81の気密性は失われるが、合成樹脂層82の気密性は保たれたままとなることがある。そのような場合、金属フレキシブル管8から漏れた気体である水素ガスは合成樹脂層82とコルゲイト管81との間の通気溝72等を通り、合成樹脂層82とナット3の内面との間の空間を通り貫通孔38から外部に漏れ出る。そのため、貫通孔38に組み込まれた選択透過性部材70により施工後の漏れ検査時には漏れありを検知することができる。
本例では選択透過性部材70を組み込むための貫通孔38をナット3の外周面30から開孔32へ貫通するようにナット3側に設けたが、ナット3側に限定されるものではなく、継手本体1側に設けることも可能である。例えば、継手本体1の外周面22から凹部19へ貫通する貫通孔を設ける構造にすることも可能である。また、継手本体1とナット3の突き当たり面、ちょうどOリング41の部位にOリング41の代わりに環状の選択透過性部材70を挟み込んでおく構造をとることもできる。
以上のように、本願の金属フレキシブル管用継手100における水素ガスの漏れを抑制するために、コルゲイト管81の先端の谷部81aに連続する山部81bを折り畳み、折り畳んだ山部81bを継手本体1の環状凹部(シール部材9)12に押し付けて潰し、シール部材9へ食い込ませて入り込ます構造に、選択透過性部材70を用いる構造を加えることでより水素ガスの漏れ防止と安全性を可能にする。
また、本発明は分子構造がもっとも小さく透過し易い水素ガスに対してシール性を有するものである。従って、水素ガス以外のガスに用いても充分な性能、つまりガスに対する耐透過性を発揮できることは言うまでもなく、水素ガス以外のガスでも本発明によればガス漏れの抑制を図ることが可能である。
(実験例)
つぎに、本願の金属フレキシブル管用継手の継手本体1の環状凹部12に嵌装される適切なシール部材9の条件を設定するために下記の実験を行った。試料一覧表である表1に示すA、CからLのシール部材9を順次、試料である本願の金属フレキシブル管用継手100に組み込み、図5に示す要領でA、CからLのシール部材9の水素ガスの漏れ量の測定を行った。
ただし、Bのシール部材9については、本願の金属フレキシブル管用継手100ではなく、従来の構造(図11に示す特許2686237号)の金属フレキシブル管用継手300を用いて水素ガスをヘリウムガスで代替した水素ガスの漏れ量に関しての実験を行った。具体的には、図11に示す耐熱ガスケット312の代わりにBのシール部材9を組み込んで実験を行った。なお、表1(試料一覧表)で示すノンアスシートとは、ノンアスベストシートを略した表記である。
実験の概要としては、図5に示すように、まず、真空ポンプ等101を利用して試料である金属フレキシブル管用継手100(或いは金属フレキシブル管用継手300)より排気を行い、金属フレキシブル管用継手100(或いは金属フレキシブル管用継手300)内を真空にする。つぎに、金属フレキシブル管用継手100(或いは金属フレキシブル管用継手300)内の真空度を確認し、金属フレキシブル管用継手100(或いは金属フレキシブル管用継手300)を容器等102内に入れ密閉する。本例では、容器等102として例えばポリアミド製袋102を用いている。
そして、金属フレキシブル管用継手100(或いは金属フレキシブル管用継手300)を入れて密閉した容器等102である袋102内にヘリウムガスを注入し、金属フレキシブル管用継手100(或いは金属フレキシブル管用継手300)の周囲にヘリウムガスを充満、或いは吹きかける。定常状態になったところで金属フレキシブル管用継手100(或いは金属フレキシブル管用継手300)の真空度を確認する。つまり、図示しないヘリウムリークディテクタを用いて、金属フレキシブル管用継手100(或いは金属フレキシブル管用継手300)の圧力量を測定する。その際、圧力量が上がっていくものはヘリウムガスの漏れ量があらわれたとして不合格とし、圧力量が上がらないものはヘリウムガスの漏れ量があらわれないとして合格としている。
図6から図8までは、本願の金属フレキシブル管用継手100、或いは従来の構造(図11に示す特許2686237号)においてAからLのシール部材9を用いた場合に水素ガスをヘリウムガスで代替した水素ガスの漏れ量に関しての実験結果を示すグラフ図である。ただし、本実験では、ヘリウムリークディテクタを用いて漏れ量の測定を行っているため、水素ガスの漏れ量をヘリウムガスの漏れ量で代替している。
図6から図8のグラフ図において、○は合格品であることを示し、△は基準を変えれば合格品であることを示し、×は不合格品であることを示している。即ち、○の合格基準の漏れ量は10−11mol・m・m−2・s−1・Pa−1以下であり、許容できる範囲で基準を変えた△は10−8mol・m・m−2・s−1・Pa−1程度である。また、図6から図8のグラフ図における近似直線は、AからLのシール部材9の各データの傾向を示すものである。
図6では、AからLのシール部材9毎の、水素透過係数を横軸にとって、水素ガス(ヘリウムガス)の漏れ量を縦軸にとってある。図6に示すグラフ図から明らかなように、図6のグラフ図に示す限界ラインSに基づく矢印方向では、水素ガス(ヘリウムガス)の漏れ量の合格品(○)が数多くあり、矢印方向とは逆方向では、基準を変えれば合格品(△)、或いは不合格品(×)が出ている。従って、○と△の略中間領域を限界ラインSとしている。ここで限界ラインSが示しているのは1.4×10−13mol・m・m−2・s−1・Pa−1以下であり、この水素透過係数を満足するシール部材9を本願の金属フレキシブル管用継手100で用いれば、水素ガスの漏れを抑えることが可能になる。
また、本願の金属フレキシブル管用継手100では、シール部材9の水素透過係数が低ければ低いほど望ましく、水素ガス(ヘリウムガス)の漏れが少ないということになる。水素透過係数が低く、かつシール部材として利用可能な材質としてアルミニウムがあり、アルミニウムの水素透過係数は3.7×10−20mol・m・m−2・s−1・Pa−1である。そのため、本願の金属フレキシブル管用継手100に用いるシール部材9の水素透過係数は、3.7×10−20mol・m・m−2・s−1・Pa−1以上、1.4×10−13mol・m・m−2・s−1・Pa−1以下がさらに望ましい。また、入手のし易さやコスト的な面を考慮すると合成ゴム系の部材であり、4.0×10−16mol・m・m−2・s−1・Pa−1以上、1.4×10−13mol・m・m−2・s−1・Pa−1以下が望ましいと言える。
また、図7では、AからLのシール部材9毎の、潰れ代(%)を横軸にとって、水素ガス(ヘリウムガス)の漏れ量を縦軸にとってある。本実験例では、シール部材9の潰れ代は、以下の(1)式で定義している。
(潰し前の厚み(a)−潰し後の厚み(b))/潰し後の厚み(b)×100(%)・・・(1)
(1)式中のa、bは、図4におけるシール部材9の潰し前の厚みaと潰し後の厚みbを示している。
図7のグラフ図に示すように、潰れ代が高い方が水素ガス(ヘリウムガス)の漏れ量が少なくなっている。特に、図7のグラフ図における限界ラインSの30%と限界ラインTの45%との間では水素ガス(ヘリウムガス)の漏れ量の合格品(○)が集中しており、潰し代30〜45%のシール部材9を本願の金属フレキシブル管用継手100に用いれば水素ガスの漏れを効果的に抑えることが可能になる。30%以下で直ちに濡れ性能が満足できないと言うものではないが、30%以下ではコルゲイト管81の先端の山部81bを折り畳み押し潰すことが不完全になる可能性がある。一方、45%を超えるとシール部材の劣化が心配され長期寿命を保てない可能性が出てくる。
さらに、図8では、AからLのシール部材9毎の、Hs硬度を横軸にとって、水素ガス(ヘリウムガス)の漏れ量を縦軸にとってある。図8のグラフ図に示すように、図8のグラフ図における限界ラインSのHs硬度45°と限界ラインTのHs硬度95°との間では水素ガス(ヘリウムガス)の漏れ量の合格品(○)が集中しており、Hs硬度45゜〜95゜のシール部材9を本願の金属フレキシブル管用継手100に用いれば水素ガスの漏れを抑えることが可能になる。硬度についてもHs硬度45°以下ではコルゲイト管81の先端の山部81bを折り畳み押し潰すことが不完全になる可能性がある。また、Hs硬度95°を超えると密封性の関与が考えられ濡れ量を保証することが出来なくなる。
なお、本実験で用いた、Bのシール部材9とCのシール部材9は実質的に同じノンアスシートであり、上記の通りBのシール部材9は、従来の構造(図10に示す特許2686237号)の金属フレキシブル管用継手300に組み込まれており、Cのシール部材9は、本願の金属フレキシブル管用継手100に組み込まれている。そのため、従来の構造(図10に示す特許2686237号)の金属フレキシブル管用継手300と本願の金属フレキシブル管用継手100との構造上の違いだけによる水素ガス(ヘリウムガス)の漏れ量に対する水素透過係数、潰れ代及びHs硬度の比較を行うことができる。
比較結果は、図6から図8に示すように、図6から図8のいずれのグラフ図においても従来の構造(図11に示す特許2686237号)の金属フレキシブル管用継手300比べ本願の金属フレキシブル管用継手100の方が水素ガス(ヘリウムガス)の漏れ量が少なく、構造としても従来の構造(図11に示す特許2686237号)の金属フレキシブル管用継手300比べ本願の金属フレキシブル管用継手100の方が水素ガス(ヘリウムガス)が漏れ難い傾向があるということが示されている。
なお、上記の実験では、ステンレス鋼SUS304のコルゲイト管81を用いているが、コルゲイト管81の材質を、特に、ステンレス鋼SUS304に限定されるものではなく、例えば、ステンレス鋼SUS304L、ステンレス鋼SUS316、ステンレス鋼SUS316等の水素ガス用に適した金属配管材料であればどれでも用いることは可能であり、上記の実験でステンレス鋼SUS304L、ステンレス鋼SUS316等の水素ガス用に適した金属配管材料を用いても何ら不都合を生じさせることはない。
図9は本発明を実施した他の金属フレキシブル管用継手の断面図を示す。
この継手の例では、奥壁を有する継手本体51に螺合状態で挿入されるナット53と、ナット53の端面に押されるように係合し、ナット53の前進に伴って奥側へ移動するリテーナ56を備えている。リテーナ56は半割状になっておりコルゲイト管81の谷部と山部に係合する爪部57を有しており、予めコルゲイト管81の最先端部の谷部とそれに隣り合う山部を残して爪部57が装着される。ナット53も予めコルゲイト管81に挿通しておき、このナット53を継手本体51にねじ込んで前進させることにより、継手本体51の内周面には奥壁に向かって縮径するテーパ内面52を形成しているので、コルゲイト管81の最先端部の谷部81aは環状凹溝12の方向に向かって進みテーパ外面11に接触し、上述した例と同様にシール部材9に先端山部81b1が押し潰されるように密封されてシール性能を発揮する。このときの形態は上記実施態様と同様であるので、以下詳細な説明は省略する。
上記した例ではナットを継手本体に螺合して継手本体内を移動可能としているが、継手本体内のナットの移動は螺合関係に限られるものではない。例えばナットの外周面と継手本体の内周面に夫々凹溝を形成し、ここに拡縮自在のスナップリングを嵌合して係合関係を保ちナットの押し込み動作によってリテーナを前進移動させる構造としても良い。この場合もナットの前進移動に伴いナットの端部に係合するリテーナが内部に押し込まれコルゲイト管の端部を継手本体の奥壁の当接面に押付けることができる。また、図12に示した金属フレキシブル管用継手の構造に本発明を適用することも出来る。
1…継手本体、3…ナット、31…雄ねじ部、32…開孔、33…内周溝、5…スペーサ、6…リテーナ、62…爪部、64…押圧面、8…金属フレキシブル管、81…コルゲイト管、82…合成樹脂層、81a、81c…コルゲイト管の谷部、81b、81d…コルゲイト管の山部、9…シール部材、10…奧壁、11…テーパ外面、12…環状凹溝、17…耐火膨張パッキン、20…通孔、21…テーパ内面、23…雌ねじ部、70…選択透過性部材、100…金属フレキシブル管用継手