JP2007246579A - 新規なベンゾジチオフェン重合体 - Google Patents

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【課題】優れた発光特性を有すると共に耐久性に優れた有機薄膜EL素子用の高分子材料として、また有機トランジスタの半導体層用材料として有用な新規なπ共役系重合体を提供すること。
【解決手段】下記一般式(I)で表わされる繰り返し単位を含有することを特徴とする重合体;
Figure 2007246579

(式中、Arは置換あるいは無置換の二価の芳香族炭素水素基あるいは芳香族複素環基を表わし、R,R,R,およびRは水素原子、置換または無置換のアルキル基あるいはアルコキシ基を表わし、x及びyはそれぞれ独立に0または1を表わす。)
【選択図】図1

Description

本発明は新規なベンゾジチオフェン重合体に関するものであり、得られるπ共役系重合体は有機エレクトロニクス用素材として極めて有用である。
有機材料の発光特性や電荷輸送特性を利用して、有機エレクトロルミネッセンス素子や、有機トランジスタ素子が提案されている。これらの素子に有機材料を用いることにより、軽量、安価、低製造コスト、フレキシブル等の利点が期待される。
有機薄膜EL素子用の材料としては、低分子系および高分子系の様々な材料が報告されている。低分子系においては、種々の積層構造の採用により高効率化の実現が、またドーピング法をうまくコントロールすることにより耐久性の向上が報告されている。しかし、低分子集合体の場合には、長時間における経時での膜状態の変化が生じることが報告されており、膜の安定性に関して本質的な問題点を抱えている。一方、高分子系材料においては、これまで、主にPPV(poly-p-phenylenevinylene)系列やpoly-thiophene等のπ共役系高分子について精力的に検討が行なわれてきた。しかしながら、これらの材料系は純度を上げることが困難であることや、本質的に蛍光量子収率が低いことが問題点として挙げられ、高性能なEL素子は得られていないのが現状であり、この分野でさらなる改良が行なわれている。
一方、有機薄膜トランジスタ(TFT)素子の半導体材料においても、低分子系および高分子系の様々な材料が報告されている。例えば、低分子材料ではペンタセン、フタロシアニン、フラーレン、アントラジチオフェン、チオフェンオリゴマー、ビスジチエノチオフェンなどが、また高分子材料ではベンゾジチオフェンポリマー(特許文献1:特開2004−2407号公報、特許文献2:特開2005−206750号公報等参照)、ポリチオフェン(非特許文献1参照)、ポリチエニレンビニレン(非特許文献2参照)などの幾つかの材料が挙げられる。
しかし、上記の材料においても、低分子系では膜の安定性に関する問題が、高分子系では電荷輸送特性の問題があり、さらなる改良が望まれている。
特開2004−2407号公報 特開2005−206750号公報 Appl.Phys.Lett.,69,4108,1996. Appl.Phys.Lett.,63,1372,1993.
本発明は上記従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、優れた発光特性を有すると共に耐久性に優れた有機薄膜EL素子用の高分子材料として、また有機トランジスタの半導体層用材料として有用な新規なπ共役系重合体を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討した結果、繰り返し単位としてベンゾジチオフェン構造を含有する新規なアリレンエチニレン重合体が上記課題に対して有効であることを見い出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の(1)〜(3)によって解決される。
(1)「下記一般式(I)で表わされる繰り返し単位を含有することを特徴とする重合体;
Figure 2007246579
(式中、Arは置換あるいは無置換の二価の芳香族炭素水素基あるいは芳香族複素環基を表わし、R,R,R,およびRは水素原子、置換または無置換のアルキル基あるいはアルコキシ基を表わし、x及びyはそれぞれ独立に0または1を表わす。)」、
(2)「下記一般式(II)で表わされる繰り返し単位を含有することを特徴とする重合体;
Figure 2007246579
(式中、Arは置換あるいは無置換の二価の芳香族炭素水素基あるいは芳香族複素環基を表わし、R,R,R,およびRは水素原子、置換または無置換のアルキル基あるいはアルコキシ基を表わす。)」、
(3)「下記一般式(III)で表わされる繰り返し単位を含有することを特徴とする重合体;
Figure 2007246579
(式中、R,R,R,RおよびRは水素原子、置換または無置換のアルキル基あるいはアルコキシ基を表わし、zは0または1以上4以下の整数であり、zが2以上の場合、複数個のRはそれぞれ異なっていてもよい。)」
本発明により、優れた発光特性を有すると共に耐久性に優れた有機薄膜EL素子用の高分子材料として、また有機トランジスタ用の半導体層用材料として非常に有用な新規なアリレンエチニレン型ベンゾジチオフェン重合体が提供される。
以下に、本発明を更に詳細に説明する。
まず本発明のベンゾジチオフェン重合体の製造法について説明する。
本発明の一般式(I)で表わされるベンゾジチオフェン重合体は、下記反応式に例示するように、パラジウム触媒を用い、アミン存在下銅塩(CuI、CuBr、CuClなど)を用いた、ベンゾジチオフェンのジハロゲン化合物とアセチレン化合物(ジアルキン化合物)のクロスカップリング反応(一般に薗頭反応と呼ばれる)により得られる。(K.Sonogashira,J.Organomet.Chem.,653,46(2002))
Figure 2007246579
(式中、Xはハロゲン基を、Aは二価のベンゾジチオフェン残基、Bは芳香族炭化水素構造部分あるいは芳香族複素環構造部分を含む二価の基を表わす。)
すなわち前記反応式で示されるジハロゲン化合物と前記ジアルキン化合物との反応により本発明の一般式(I)で表わされる重合体を得ることができる。
ここでパラジウム触媒として例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、塩化ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、塩化ビス(ベンゾニトリル)パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム、塩化パラジウム、酢酸パラジウムなどが挙げられる。ホスフィン配位子も反応に著しい影響を与えることが明らかになっており、例えば、トリ(t−ブチル)ホスフィン、トリ(オルトトリル)ホスフィン等も用いることができる。
アミンとしては例えば、n−BuNH、EtNH、EtN、ジイソプロピルアミンまたはピペリジンなどが用いられる。
なお、反応の際の雰囲気は、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
前記反応式で示されるジハロゲン化合物の反応性は、ハロゲン原子がよう素>臭素>塩素の順であり、用いるジハロゲン化合物の反応性に応じて反応温度が設定される。
本クロスカップリング反応では、前記反応式中に示されるアルキン化合物において末端が水素である場合が一般的であるが、末端がトリメチルシリル基である場合も反応の活性化剤として酸化銀を用いることで、一般式(I)で表わされる重合体を得ることができ(A.Mori et al.Chmistry Letters 286(2001))、特に一般式(I)中、xが0の場合にこのような方法が有効である。
一般式(I)で表わされる重合体を得るためには、ベンゾジチオフェンのジハロゲン化物と、アルキン化合物を反応させても良いし、ベンゾジチオフェンのアルキン化合物と、ジハロゲン化合物を反応させても良い。また一般的に、前記反応式に示したモノマーとなるジアルキン化合物もまた、薗頭反応によりジハロゲン化合物から誘導される。
また、以上の重合操作において分子量を調節するために分子量調節剤、または末端修飾基として重合体の末端を封止するための封止剤を反応途中に添加することも可能であり、反応開始時に添加しておくことも可能である。従って、本発明におけるアリールアミン重合体の末端には停止剤に基づく置換基が結合してもよい。
分子量調節剤、末端封止剤としては、フェニルアセチレン、ヨードベンゼン等をはじめとする、反応活性基を1個有する化合物が挙げられる。
このようにして得られる一般式(I)、(II)及び(III)で表わされるベンゾジチオフェン重合体についてさらに説明する。
前記一般式(I)中、Arは置換または無置換の芳香族炭素水素あるいは芳香族複素環の2価基を表わし、具体的には一例として以下のものを挙げることができる。
ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ターフェニル、ピレン、フルオレン、9,9−ジメチルフルオレン、アズレン、アントラセン、トリフェニレン、クリセン、9−ベンジリデンフルオレン、5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン、トリフェニルアミン、チオフェン、ビチオフェン、オリゴチオフェン、ベンゾチオフェン、フラン、ベンゾフラン、カルバゾール等由来の2価基が挙げられ、これらは置換もしくは無置換のアルキル基およびアルコキシ基を置換基として有していてもよい。
一般式(I)、(II)、あるいは一般式(I)、(II)を製造する際のモノマーであるジアルキン化合物の原料となるジハロゲン化物の好ましい具体例を以下に示す。
Figure 2007246579
Figure 2007246579
本発明における置換もしくは無置換のアルキル基とは、炭素数が1〜25の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基であり、これらのアルキル基は更にフッ素原子、シアノ基、フェニル基又はハロゲン原子もしくは直鎖又は分岐鎖のアルキル基で置換されたフェニル基を含有してもよい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ブチル基、i−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、2−エチルヘキシル基、トリフルオロメチル基、2−シアノエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
また置換もしくは無置換のアルコキシ基である場合は、上記アルキル基の結合位に酸素原子を挿入してアルコキシ基としたものが具体例として挙げられる。
一般式(II)および(III)におけるR、R、R、Rが、置換もしくは無置換のアルキル基およびアルコキシ基である場合は上記の定義と同様である。また、一般式(III)におけるRが、置換もしくは無置換のアルキル基およびアルコキシ基である場合も同様である。
これら置換基は同一のものを複数導入してもよいし、異なるものを複数導入してもよい。また、これらのアルキル基、及びアルコキシ基はさらにハロゲン原子、シアノ基、アリール基、ヒドロキシル基、カルボキシル基または、炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖もしくは環状のアルキル基、アルコキシ基あるいはアルキルチオ基で置換されたアリール基を含有していてもよい。
本発明の重合体の好ましい分子量はポリスチレン換算数平均分子量で1000〜1000000であり、より好ましくは2000〜500000である。分子量が小さすぎる場合にはクラックの発生等成膜性が悪化し実用性に乏しくなる。また分子量が大きすぎる場合には、一般の有機溶媒への溶解性が悪くなり、溶液の粘度が高くなって塗工が困難になり、やはり実用性上問題になる。また、このような分子量を調節は、例えば、前記分子量調節剤または封止剤の添加量及び添加時期を調節することにより達成できる。
また、機械的特性を改良するために重合時に分岐化剤を少量加えることもできる。使用される分岐化剤は、重合反応活性基を3つ以上(同種でも異種でもよい)有する化合物である。これらの分岐化剤は単独で使用してもよく、また複数併用してもよい。
以上のようにして得られたベンゾジチオフェン重合体は、重合に使用した塩基、未反応モノマー、末端停止剤、又、重合中に発生した無機塩等の不純物を除去して使用される。これら精製操作は再沈澱、抽出、ソックスレー抽出、限外濾過、透析等をはじめとする従来公知の方法を使用できる。
上記製造方法により得られた本発明の重合体は、スピンコート法、キャスト法、ディップ法、インクジェット法、ドクターブレード法、スクリーン印刷法、スプレー塗工等の公知の成膜方法により、クラックがなく、強度、靭性、耐久性等に優れた良好な薄膜を作製することが可能であり、各種有機エレクトロニクスデバイスの材料として好適に用いることが可能である。
本発明の重合体は、アルキル基やアルコキシ基の存在により、溶媒への溶解性が向上する。これら重合体において溶媒への溶解性を向上させることは、有機エレクトロニクスデバイス製造の際の、湿式成膜過程の製造許容範囲が大きくなることから重要である。溶解性の向上により、例えば塗工溶媒の選択肢、溶液調製時の温度範囲、並びに、溶媒の乾燥時の温度範囲及び圧力範囲を拡大することができ、これらプロセッシビリティーの高さにより、結果的に高純度で均一性の高い高品質な薄膜が得られる。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これら実施例によって制限されるものではない。
(合成例1)
ベンゾジチオフェンモノマー1の合成
Figure 2007246579
化合物(1)(Macromolecules, 1994, 27, 7478.に従って合成した)1.25g(3.32mmol)及び亜リン酸トリエチル25mLをフラスコに入れ、150℃で5時間攪拌した。室温まで放冷した後、析出した結晶を濾取し、ヘキサンで洗浄した後乾燥し、化合物(2)を1.52g(3.09mmol)得た。無色結晶、融点218−222℃。
上記操作で得られた化合物(2)0.70g(1.43mmol)をフラスコに入れ、系内を窒素置換した。テトラヒドロフラン13mlを入れた後0℃に冷却し、カリウムt−ブトキシドの1.0Mテトラヒドロフラン溶液3.1ml(3.1mmol)を滴下して40分攪拌した。n−ドデカナール1.10mL(5.0mmol)を加え、室温で15時間撹拌した。希塩酸を加えた後、酢酸エチルで抽出した。溶媒を減圧留去した後、乾燥し特に精製することなく次の反応に用いた。
上記操作で得られた化合物(3)1.11gをフラスコに入れ、エタノール4mL、テトラヒドロフラン11mLおよび、10%パラジウム/カーボンを0.12g加えた。この溶液を水素ガス雰囲気下11時間攪拌した。吸引濾過して触媒を除いた後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)にて精製し化合物(4)を0.46g(0.829mmol)得た。無色結晶、融点82.5−83.5℃。
上記操作で得られた化合物(4)0.44g(0.79mmol)をフラスコに入れ、系内を窒素置換した。テトラヒドロフラン21mlを入れた後−70℃に冷却し、n−ブチルリチウムの1.58Mヘキサン溶液を1.05ml(1.66mmol)を加え、室温にして2時間攪拌した。再び−70℃に冷却し、ヨウ素0.42g(1.66mmo)のテトラヒドロフラン4ml溶液を滴下し、室温にして2時間攪拌した。反応溶液にトルエンを加えた後、塩化アンモニウム水溶液、チオ硫酸ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順に洗浄した。溶媒を減圧留去した後、ヘキサンから再結晶し、ベンゾジチオフェンモノマー1を0.43g(0.529mmol)得た。無色結晶、融点110−112℃。
1H NMR (400MHz, CDCl3, TMS) δ/ppm 0.88 (6H, t, J=6.83Hz), 1.2-1.5 (40H, m), 1.73 (4H, quint, J=7.63Hz), 3.01 (4H, t, J=7.93Hz), 7.61 (2H, s).
IRスペクトル(KBr)を図1に示した。
実施例1(重合体1の合成)
Figure 2007246579
合成例で得られた化合物(5)0.420g(0.521mmol)及び、1,4−ジエチニルベンゼン(アルドリッチ社製、製品番号632090−5G)0.065g(0.521mmol)及びトルエン23mlをフラスコに入れ、系内を窒素置換した。50℃に加熱し、テトラキストリフェニルフォスフィンパラジウム6.0mg、ヨウ化銅(I)2mg及び、トリエチルアミン0.5mlを加えて4時間撹拌した。フェニルアセチレン5.3mgを加えて1時間撹拌し、更にヨードベンゼンを加えて1時間撹拌した。放冷した後、トルエンを加えて希釈し、この溶液を希塩酸、水の順に洗浄した。パラジウムスカベンジャーレジン(アルドリッチ社製、製品番号53808−6)で処理した後、溶媒を留去して重合体1を0.23g得た。GPCにより求めたポリスチレン換算の重量平均分子量は11000であった。
元素分析値(%)実測値(計算値)は、C:81.60(81.33)、H:8.93(9.01)、S:9.47(9.25)。
IRスペクトル(NaClキャスト膜)を図2に示した。
CC三重結合伸縮2194cm−1
合成例で得られたベンゾジチオフェンモノマー1の赤外吸収スペクトルである。 実施例1で得られた本発明のベンゾジチオフェン重合体1の赤外吸収スペクトルである。

Claims (3)

  1. 下記一般式(I)で表わされる繰り返し単位を含有することを特徴とする重合体。
    Figure 2007246579
    (式中、Arは置換あるいは無置換の二価の芳香族炭素水素基あるいは芳香族複素環基を表わし、R,R,R,およびRは水素原子、置換または無置換のアルキル基あるいはアルコキシ基を表わし、x及びyはそれぞれ独立に0または1を表わす。)
  2. 下記一般式(II)で表わされる繰り返し単位を含有することを特徴とする重合体。
    Figure 2007246579
    (式中、Arは置換あるいは無置換の二価の芳香族炭素水素基あるいは芳香族複素環基を表わし、R,R,R,およびRは水素原子、置換または無置換のアルキル基あるいはアルコキシ基を表わす。)
  3. 下記一般式(III)で表わされる繰り返し単位を含有することを特徴とする重合体。
    Figure 2007246579
    (式中、R,R,R,RおよびRは水素原子、置換または無置換のアルキル基あるいはアルコキシ基を表わし、zは0または1以上4以下の整数であり、zが2以上の場合、複数個のRはそれぞれ異なっていてもよい。)
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