JP2007236322A - ゲル組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐熱性を有する硬いゲル状であって、流動状〜固体状の様々な物性の食品生地に対して混合可能で、添加した食品生地を加熱して得られた加工食品の食感を改善することができるゲル組成物、及び、該ゲル組成物を簡単に安定して製造することのできる製造方法を提供すること。
【解決手段】下記成分(A)を0.1〜10.0質量%、下記成分(B)を0.1〜10.0質量%、下記成分(C)を含有し、それらの含有量の比が質量基準で、0.001≦(C)/((A)+(B))≦0.1、且つ(A):(B)=99:1〜20:80であり、水分含量が20〜98質量%であることを特徴とするゲル組成物。
(A)高粘性アルギン酸及び/又は高粘性アルギン酸塩
(B)低粘性アルギン酸、低粘性アルギン酸塩又はアルギン酸エステルのうちの1種
又は2種以上
(C)カルシウム
【選択図】なし

Description

本発明は食品の食感改良剤として好適に使用されるゲル組成物及びその製造方法に関する。
アルギン酸、アルギン酸塩、アルギン酸エステル等のアルギン酸類は、二価金属イオンと反応して熱不可逆性の硬いゲルを形成する。そのためアルギン酸類はプディングやゼリーなどのゲル状食品のゲル化剤として、あるいは、食品の食感改良の目的で各種食品生地に添加して使用されてきた。
しかし、アルギン酸類と二価金属イオンの反応は極めて速く、瞬時にゲルを生成するため、アルギン酸類を粉末の状態で食品生地中に均質に分散させてからゲル化させるのは難しく、そのため、アルギン酸類をゲル化したもの (以下、アルギン酸類ゲルという)を食品生地に添加する方法が行なわれるようになってきた。
一般にアルギン酸類は分子量の大きなものほど、その水溶液の粘度は高く、得られるゲルはゲル強度が高く、耐熱性も高い。そこで、耐熱性の高い食品を得るために、分子量の大きなアルギン酸類(高粘性アルギン酸類)を用いたり、アルギン酸類の添加量を増やすと、アルギン酸類ゲルの硬さが硬くなりすぎてしまい、アルギン酸類ゲルをそのまま食するゲル状食品の場合は口中分散性が悪く、また食品生地に添加する場合は、特に軟らかい生地などでは生地中に均一に混ざり難いという問題があった。これとは逆に、口中分散性を良くするため、又は、他の食品生地中に混ざり易くするために、分子量の小さなアルギン酸類(低粘性アルギン酸類)を用いたり、アルギン酸類の添加量を減じたり、ゲル化を阻害する物質を多く添加すると、ゲル化しなかったり、食感の改良効果が著しく弱くなるという問題があった。
また、上述のとおり、アルギン酸類と二価金属イオンの反応は極めて速く、瞬時にゲルを生成するため、均質なアルギン酸類ゲルの製造は難しかった。
このような扱いにくいアルギン酸類ゲルを簡単な方法で製造し、食品に使用した例としては、いったんゲル化したアルギン酸類ゲルをホモミキサー等でせん断加工した流動ゲルを使用する方法(例えば特許文献1参照)や、アルギン酸ナトリウムを塩析した後、カルシウムイオン存在下に破砕、ゲル化した水中油型乳化型食品(例えば特許文献2参照)などがある。
しかし、特許文献1に記載の方法は、ゲルが極めて微細にせん断加工されているため、食品に添加する際にさらに微細化して練り込まれてしまい、耐熱性を付与することができない上に、製造工程がゲル化と破砕の2段階必要なため製造が煩雑で時間がかかる問題があった。また、特許文献2に記載の方法は、塩析によりゲル強度は極めて弱いものとなっているため、これを他の食品に添加したとしても耐熱性を付与できるものではなかった。さらに、塩析に多量の食塩が必要であるため塩味の強い食品にしか使用できない問題もあった。
一方、低粘性のアルギン酸類を食品の改良剤として使用した例としては、金属イオン封鎖剤を低粘性アルギン酸塩類で代替し、HTST殺菌やUHT殺菌(超高温瞬間殺菌)処理時に生じるタンパク質の熱変性による凝集や焦げ付きを抑制して風味を改善する方法(たとえば特許文献3参照)、低粘性アルギン酸塩類や中粘性アルギン酸塩類を使用してpHを特定範囲とした水中油型乳化物(例えば特許文献4参照)などがあった。
しかし、特許文献3、4に記載の食品は、水中油型乳化食品の製造と、低粘性アルギン酸類のゲル化を同時に行なうものであるため、広く一般的な食品に適用できるものではなく、また、低粘性アルギン酸類のゲル強度は極めて低いため、他の食品に添加したとしても耐熱性を付与できるものではなかった。さらに特許文献3は、金属イオン封鎖剤に由来する苦味や嫌味を低減することで食品の風味を改良するものであり、特許文献4に記載の水中油型乳化物も、製造時や保管時の物性の安定化を目的としたもので、食感を改良するものではなかった。
ところで、ローカストビーンガムとキサンタンガムを併用したゲルの特性が注目されて以来、増粘剤やゲル化剤を組み合わせた組成物を、食感改良剤として食品生地に添加し、食品の食感を改善する試みが多く行なわれており、例えば、特定の乳タンパクと2種のゲル化剤と増粘剤と水からなる複合体を添加したホットケーキ(例えば特許文献5参照)、特定の2種のゲル化剤を添加した澱粉ゲル食品(例えば特許文献6参照)、ジェランガムとタマリンド種子多糖類を使用した食品等の増粘・ゲル化法(例えば特許文献7参照)などが紹介されている。
しかし、特許文献5に記載の複合体は、流動性の高いバッター生地であるホットケーキ生地と物性を揃えるため、流動状〜ペースト状の物性であり、食品に添加する際にさらに微細化して練り込まれてしまうものであり、また、パンなどの粘弾性を有する食品生地には極めて混合しにくいものであった。また、特許文献6に記載のゲル化剤は粉末状で添加するため、食品生地中でダマになって残ってしまうため、混合性が極めて悪く、さらに特許文献7に記載のゲルは、2つの低粘度の溶液を混合してゲル化しつつせん断した流動ゲルであるため、食品に添加する際にさらに微細化して練り込まれてしまうものであった。このように、特許文献5〜7の方法のように、流動状〜ペースト状、あるいは粉末状の形態の食感改良剤では、十分な食感改良効果が得られないものであった。
すなわち、上記特許文献1〜7の各種の組成物は、各種の硬さや物性を示す広範な食品生地への十分な混合性を有するものではなく、また、十分な食感改良効果を食品に付与するものではなかった。
特開平5−3767号公報 特開平7−51023号公報 特開2001−321075号公報 特開2004−357699号公報 特開2005−304373号公報 特開2000−83590号公報 特開平01−266179号公報
従って本発明の目的は、耐熱性を有する硬いゲル状であって、流動状〜固体状の様々な物性の食品生地に対して混合可能で、添加した食品生地を調理して得られた加工食品の食感を改善することができるゲル組成物、及び該ゲル組成物を簡単に安定して製造することのできる製造方法を提供することにある。
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、従来のように、食品生地物性に合致した物性のゲル組成物とするのではなく、硬い物性のゲルであっても食品生地に混合した際の崩れやすさ、すなわち解れ性を良好なものとすることで、食品生地に添加した際にゲル組成物が溶解することなく、また、練り込まれてしまうことなく、微細なゲル小片として食品生地中に均一に分散させることにより、上記目的を解決可能であることを見出した。
すなわち、下記成分(A)を0.1〜10.0質量%、下記成分(B)を0.1〜10.0質量%、下記成分(C)を含有し、それらの含有量の比が質量基準で、0.001≦(C)/((A)+(B))≦0.1、且つ(A):(B)=99:1〜20:80であり、水分含量が20〜98質量%であることを特徴とするゲル組成物を提供することにより、上記目的を達成したものである。
(A)高粘性アルギン酸及び/又は高粘性アルギン酸塩
(B)低粘性アルギン酸、低粘性アルギン酸塩又はアルギン酸エステルのうちの1種
又は2種以上
(C)カルシウム
また、本発明は、上記ゲル組成物からなる食感改良剤を提供することにより、上記目的を達成したものである。
また、本発明は、上記食感改良剤を含有する食品生地を提供することにより、上記目的を達成したものである。
また、本発明は、上記食品生地を調理した食品を提供することにより、上記目的を達成したものである。
また、本発明は、下記成分(A)を0.1〜10.0質量%、下記成分(B)を0.1〜10.0質量%、下記成分(C)を含有し、それらの含有量の比が質量基準で、0.001≦(C)/((A)+(B))≦0.1、且つ(A):(B)=99:1〜20:80であり、水分含量が20〜98質量%である混合液を、均質化することを特徴とするゲル組成物の製造方法を提供することにより、上記目的を達成したものである。
(A)高粘性アルギン酸及び/又は高粘性アルギン酸塩
(B)低粘性アルギン酸、低粘性アルギン酸塩又はアルギン酸エステルのうちの1種
又は2種以上
(C)カルシウム
本発明のゲル組成物は、十分な耐熱性とゲル強度を有しながら、食品生地に添加混合した際には、生地中に溶解せず均一に分散し、添加した食品生地を調理して得られた加工食品の食感をソフトに、ジューシーに、歯切れよく、しとりをつよく、口溶けがよくなる、などの効果をそれぞれ、あるいは複合的に発揮して食感を改良することができる。
以下、本発明のゲル組成物の好ましい実施形態についての詳述する。
本発明のゲル組成物は、下記成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含有する。
(A)高粘性アルギン酸及び/又は高粘性アルギン酸塩
(B)低粘性アルギン酸、低粘性アルギン酸塩又はアルギン酸エステルのうちの1種又は2種以上
(C)カルシウム
本発明で使用する上記(A)高粘性アルギン酸及び/又は高粘性アルギン酸塩(以下高粘性アルギン酸類ということもある)とは、B型粘度計で、pH7、25℃及び30rpmの条件下で測定したとき、上記(A)高粘性アルギン酸及び/又は高粘性アルギン酸塩の1質量%水溶液の粘度が、好ましくは10mPa・sを超えるもの、さらに好ましくは100mPa・sを超えるものである。
ここで、上記高粘性アルギン酸としては、コンブやワカメに代表される褐藻類から抽出された多糖類があげられ、上記高粘性アルギン酸塩としては、該高粘性アルギン酸の塩であって、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、さらには鉄、スズ等の金属塩などが可能であるが、食品に用いることから食品添加物である塩を選んで使用し、好ましくは、水への溶解度が高いこと、下記ナトリウムの給源としても使用可能な点から、ナトリウム塩が好ましい。
なお、本発明においては、上記(A)高粘性アルギン酸類の1質量%水溶液の粘度が、10〜70mPa・sのものと、上記(A)高粘性アルギン酸類の1質量%水溶液の粘度が、100mPa・sを超えるものとを、前者:後者が好ましくは10:90〜90:10、より好ましくは50:50〜20:80の質量比となるように組み合わせて使用することが、離水の少ないゲルを得ることができる点で好ましい。
本発明において、上記(A)高粘性アルギン酸類の含有量は、本発明のゲル組成物中、0.1〜10.0%、好ましくは0.2〜5.0質量%、さらに好ましくは0.5〜3.0質量%である。
本発明で使用する上記(B)低粘性アルギン酸、低粘性アルギン酸塩及びアルギン酸エステル(以下低粘性アルギン酸類ということもある)とは、B型粘度計で、pH7、25℃及び30rpmの条件下で測定したとき、上記(B)低粘性アルギン酸類の10質量%水溶液の粘度が、好ましくは1〜700mPa・s、さらに好ましくは1〜100mPa・s、最も好ましくは1〜60mPa・sのものである。
また上記と同じ条件下で粘度を測定したとき、上記(B)低粘性アルギン酸類の1質量%水溶液の粘度が、好ましくは1mPa・s以上10mPa・s未満、さらに好ましくは1mPa・s以上8mPa・s以下、最も好ましくは1mPa・s以上7mPa・s以下のものである。
ここで、上記低粘性アルギン酸としては、高粘性アルギン酸より分子量の少ないアルギン酸や、構成糖類においてグルロン酸よりマンニュロン酸の比率が高いアルギン酸があげられ、上記低粘性アルギン酸塩としては、低粘性アルギン酸の塩であって、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、さらには鉄、スズ等の金属塩などが可能であるが、食品に用いることから食品添加物である塩を選んで使用し、好ましくは、水への溶解度が高いこと、下に記すナトリウムの給源としても使用可能な点から、ナトリウム塩が好ましい。
上記アルギン酸エステルとしては、アルギン酸を構成するカルボキシル基の少なくとも一部がエステルとなっていればよく、エステル化度の制限は特にない。このようなアルギン酸エステルの例としては、アルギン酸プロピレングリコールなどが挙げられる。
なお、低粘性アルギン酸類のみでゲルを形成することは極めて困難であり、たとえ得られたとしても、得られるゲルは耐熱性が無いか、あるいは極めて弱いものである。
本発明において、上記(B)低粘性アルギン酸類の含有量は、本発明のゲル組成物中、0.1〜10.0質量%、好ましくは 0.2〜5.0 質量%、さらに好ましくは0.3〜3.0質量%である。
本発明で使用する(C)カルシウムとしては、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、クエン酸カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、パントテン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、グルタミン酸ンカルシウム等の各種カルシウム製剤のほか、牛乳、脱脂乳、脱脂粉乳、全粉乳、カゼイン、ホエイ、ホエイパウダー、ホエイ蛋白質濃縮物、蛋白質濃縮ホエイパウダー、ミルクカルシウム、乳清ミネラル等のカルシウムを含有する乳製品や、鶏卵殻粉末等の、カルシウムを含有する食品が挙げられる。
本発明では、上記の中でも、カルシウムの徐放性の点から、製造時の混合液の増粘を考慮することなく、より上記(A)高粘性アルギン酸類を多く配合することが可能であり、結果として、より耐熱性の高いゲル組成物を得ることが可能な点で、カルシウムを含有する食品を使用することが好ましく、特に、風味が良好である点で、牛乳、脱脂乳、脱脂粉乳、全粉乳、カゼイン、ホエイ、ホエイパウダー、ホエイ蛋白質濃縮物、蛋白質濃縮ホエイパウダー、ミルクカルシウム、乳清ミネラル等の、カルシウムを含有する乳製品を使用することが好ましい。
本発明のゲル組成物において(C)カルシウムの含有量は、(A)と(B)の含有量と密接な関係があり、質量基準で0.001≦(C)/((A)+(B))≦0.1、好ましくは0.005≦(C)/((A)+(B))≦0.08、さらに好ましくは0.01≦(C)/((A)+(B))≦0.05である。(C)/((A)+(B))が0.001より少ないとゲルが形成されず、また0.1より多いと均質なゲルとならないため、共に耐熱保形性のあるゲル組成物が得られない。
なお、上記(C)カルシウムの含有量は、下記乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料としてカルシウムを含有するものを用いた場合は、これらに含有されるカルシウムを含むものである。さらに、その他の原料に含まれるカルシウム分も含めて算出する。
本発明のゲル組成物において上記(A)高粘性アルギン酸類と、上記(B)低粘性アルギン酸類の質量比率は、(A):(B)=99:1〜20:80、好ましくは99:1〜30:70、さらに好ましくは 99:1〜50:50とする。(A):(B)において(B)の質量比率が1よりも少ないとゲル組成物が硬くなりすぎ、(A):(B)において(B)の質量比率が80よりも多いとゲル組成物の強度が低下して、共に解れ性が良好なゲル組成物とならず、また、食品生地に混合した際に、結果として得られる食品の食感の改善が為されない。
本発明で使用する(D)ナトリウムとしては、アルギン酸ナトリウムや、乳酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、パントテン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム等の各種ナトリウム製剤のほか、牛乳、脱脂粉乳、全粉乳、カゼイン、ホエイ、ホエイパウダー、ホエイ蛋白質濃縮物、蛋白質濃縮ホエイパウダー、乳清ミネラル、その他乳製品、また、食塩、岩塩、その他ナトリウムを含有する食品素材等が挙げられる。本発明では、好ましくはアルギン酸ナトリウムと食塩を併用することが、風味が良好であり、広く各種食品に適用可能な点で好ましい。
本発明のゲル組成物において、(D)ナトリウムの含有量は、質量基準で、好ましくは0.01≦ (D)/((A)+(B))≦1.0、より好ましくは0.03≦ (D)/((A)+(B))≦0.8、さらに好ましくは0.05≦ (D)/((A)+(B))≦0.5である。
(D)/((A)+(B))の値が0.01より少ないと十分な硬さのゲルが得られない恐れがあり、また1.0より多いと均質なゲルとならない恐れがある。
本発明のゲル組成物では、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が該固形分を基準として2質量%以上である乳原料を使用すると、より良好な解れ性を有するゲル組成物が得られる点で好ましい。なお該乳原料としては、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が、該固形分を基準として、3質量%以上である乳原料を使用することが好ましく、さらに好ましくは4質量%以上、最も好ましくは5〜40質量%である乳原料を使用する。
上記乳由来の固形分中のリン脂質とは、乳由来の固形分中に含まれる乳由来のリン脂質のことを指す。
また、上記乳原料は、液体状でも、粉末状でも、濃縮物でも構わない。但し、溶剤を用いて乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上となるように濃縮した乳原料は、風味上の問題から、本発明のゲル組成物においては、上記乳原料として用いないのが好ましい。
乳由来のリン脂質を含有する乳原料の固形分中のリン脂質の定量方法としては、例えば下記の定量方法が挙げられる。但し、抽出方法等については乳原料の形態等によって適正な方法が異なるため、下記の定量方法に限定されるものではない。
まず、乳由来のリン脂質を含有する乳原料の脂質をFolch法を用いて抽出する。〔図1〕にFolch法のフローを示す。次いで、抽出した脂質溶液を湿式分解法(日本薬学会編、衛生試験法・注解2000 2.1食品成分試験法に記載の湿式分解法に準じる)にて分解した後、モリブデンブルー吸光度法(日本薬学会編、衛生試験法・注解2000 2.1食品成分試験法に記載のリンのモリブデン酸による定量に準じる)によりリン量を求める。求められたリン量から、以下の計算式を用いて、乳由来のリン脂質を含有する乳原料の固形分100g中のリン脂質の含有量(g)を求める。
リン脂質(g/100g)=〔リン量(μg)/(乳由来のリン脂質を含有する乳原料−乳由来のリン脂質を含有する乳原料の水分(g))×25.4×(0.1/1000)
上記乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が該固形分を基準として2質量%以上である乳原料としては、例えば、クリーム又はバターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分が挙げられる。該クリーム又はバターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分は、通常のクリームからバターを製造する際に生じるいわゆるバターミルクとは組成が大きく異なり、リン脂質を多量に含有しているという特徴がある。バターミルクは、その製法の違いによって大きく異なるが、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が、通常0.5〜1.5質量%程度であるのに対して、上記クリーム又はバターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分は、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が、大凡2〜15質量%であり、多量のリン脂質を含有している。
本発明のゲル組成物では、上記乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料として、通常のクリームからバターを製造する際に生じるいわゆるバターミルクそのものを用いることはできないが、バターミルクを乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上となるように濃縮した濃縮物、あるいはその乾燥物を用いることは可能である。
上記クリーム又はバターからバターオイルを製造する際に生じる上記水相成分の製造方法の一例を以下に説明する。
上記クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の製造方法は、例えば以下の通りである。
先ず、牛乳を遠心分離して得られる脂肪濃度30〜40質量%のクリームをプレートで加温し、遠心分離機によってクリームの脂肪濃度を70〜95質量%まで高める。次いで、乳化破壊機で乳化を破壊し、再び遠心分離機で処理することによってバターオイルが得られる。本発明のゲル組成物で用いることができる上記水相成分は、最後の遠心分離の工程でバターオイルの副産物として発生するものである。
一方、上記バターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の製造方法は、例えば以下の通りである。
先ず、バターを溶解機で溶解し、熱交換機で加温する。これを遠心分離機で分離することによってバターオイルが得られる。本発明のゲル組成物で用いることができる上記水相成分は、遠心分離の工程でバターオイルの副産物として発生するものである。該バターオイルの製造に用いられるバターとしては、通常のものが用いられる。
本発明のゲル組成物で用いることができる上記水相成分としては、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が該固形分を基準として2質量%以上であれば、上記クリーム又はバターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分をそのまま用いてもよく、また、噴霧乾燥、濃縮、冷凍等の処理を施したものを用いてもよい。
但し、乳由来のリン脂質は、高温加熱するとその機能が低下するため、上記加温処理や上記濃縮処理中あるいは殺菌等により加熱する際の温度は、100℃未満であることが好ましい。
また、本発明のゲル組成物では、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が該固形分を基準として2質量%以上である乳原料として、上記乳原料中のリン脂質の一部又は全部がリゾ化されたリゾ化物を使用することもできる。該リゾ化物は、上記乳原料をそのままリゾ化したものであってもよく、また上記乳原料を濃縮した後にリゾ化したものであってもよい。また、得られたリゾ化物に、さらに濃縮あるいは噴霧乾燥処理等を施してもよい。
上記乳原料の一部又は全部として、上記リゾ化物を本発明のゲル組成物に用いることにより、乳化安定性がよく、オーブンなどにより加熱しても油分離が生じにくく、配合する食品の食感をべとつかない食感を与えるゲル組成物とすることができる。
乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が該固形分を基準として2質量%以上である乳原料中のリン脂質をリゾ化するには、ホスホリパーゼAで処理すればよい。ホスホリパーゼAは、リン脂質分子のグリセロール部分と脂肪酸残基とを結びつけている結合を切断し、この脂肪酸残基を水酸基で置換する作用を有する酵素である。ホスホリパーゼAは、作用する部位の違いによってホスホリパーゼA1とホスホリパーゼA2とに分かれるが、ホスホリパーゼA2が好ましい。ホスホリパーゼA2の場合、リン脂質分子のグリセロール部分の2位の脂肪酸残基が選択的に切り離される。
本発明のゲル組成物では、上記乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が該固形分を基準として2質量%以上である乳原料を、固形分として、好ましくは0.1〜8質量%、さらに好ましくは0.5〜7質量%、最も好ましくは1〜4質量%含有する。
尚、上記乳原料の起源となる乳としては、牛乳、ヤギ乳、ヒツジ乳、人乳等の乳を例示することができるが、特に牛乳が好ましい。
本発明のゲル組成物では、油脂を、好ましくは1〜60質量%、さらに好ましくは5〜30質量%、最も好ましくは10〜25質量%含有する。油脂を含有することにより、より良好な解れ性を有するゲル組成物が得られる。
本発明のゲル組成物で用いることのできる油脂としては特に限定されないが、例えばパーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、カカオ油、サフラワー油、乳脂、牛脂、豚脂、魚油、鯨油等の各種の植物油脂、動物油脂およびこれらの水素添加、分別およびエステル交換処理から一または二以上の処理を行った加工油脂や、MCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、全脂粉乳、加糖全脂粉乳等の油脂を含有する食品素材があげられる。本発明ではこれらの油脂の中から選ばれた1種または2種以上を使用することができる。
特に本発明のゲル組成物においては、解れ性が良好であることから、常温で固体である油脂を使用することが好ましく、また、ゲル組成物を長期間保管する場合は、ゲル組成物の物性の変化が少ない点で、ランダムエステル交換油脂を使用することが好ましく、中でもパーム油、パーム軟部油などのパーム系油脂のランダムエステル交換油脂を使用することが特に好ましい。
なお、本発明のゲル組成物では、油脂を含有する場合、水中油型乳化の形態で含有することが好ましく、その際の油脂粒径は、油滴の体積基準のメディアン径が好ましくは10マイクロメートル以下、更に好ましくは5マイクロメートル以下、より好ましくは3マイクロメートルである。10以上であると、良好な解れ性が得られないおそれがある。
なお、本発明のゲル組成物の水分含量は、ゲル組成物中、20〜98質量%、好ましくは35〜90質量%、さらに好ましくは40〜90質量%である。ゲル組成物の水分含量が20質量%より少ないか、98質量%より多いと、十分な強度のゲル組成物を得られない。また、水分含量が98質量%より多いと、保存中に水分離が生じやすくなる問題もある。なお、ここでいう水とは、水道水や天然水などの配合水に加え、牛乳、液糖などの各種原料に含まれる水分も含めたものとする。
本発明のゲル組成物では、必要に応じ、上記(A)高粘性アルギン酸類及び(B)低粘性アルギン酸以外の安定剤、乳化剤、金属イオン封鎖剤、糖類・甘味料、澱粉類、上記乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が該固形分を基準として2質量%以上である乳原料以外の乳や乳製品、卵製品、穀類、無機塩、有機酸塩、キモシン等の蛋白質分解酵素、トランスグルタミナーゼ、ラクターゼ(β−ガラクトシダーゼ)、α―アミラーゼ、グルコアミラーゼ等の糖質分解酵素、ジグリセライド、植物ステロール、植物ステロールエステル、果汁、濃縮果汁、果汁パウダー、乾燥果実、果肉、野菜、野菜汁、香辛料、香辛料抽出物、ハーブ、直鎖デキストリン・分枝デキストン・環状デキストン等のデキストリン類、乳製品、カカオ及びカカオ製品、コーヒー及びコーヒー製品、その他各種食品素材、着香料、苦味料、調味料等の呈味成分、着色料、保存料、酸化防止剤、pH調整剤、強化剤等を配合してもよい。
上記(A)高粘性アルギン酸類及び(B)低粘性アルギン酸以外の安定剤としては、特に制限はないが、ペクチン、LMペクチン、HMペクチン、海藻抽出物、海藻エキス、寒天、グルコマンナン、ローカストビーンガム、グアーガム、ジェランガム、タラガントガム、キサンタンガム、カラギーナン、カードラン、タマリンドシードガム、カラヤガム、タラガム、トラガントガム、アラビアガム、カシアガムの中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。
上記(A)高粘性アルギン酸類及び(B)低粘性アルギン酸以外の安定剤の含有量は、本発明のゲル組成物中、好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下とする。ゲル組成物中の上記アルギン酸類以外の安定剤の含有量が4質量%よりも多いと、ゲル強度が低下したり、良好な耐熱性が得られなかったり、更には、ゲル組成物を添加した食品が粘性を呈したりするなど食感に違和感を呈しやすいので好ましくない。
上記乳化剤は、ゲル組成物が油脂を含有する場合や、また、本発明のゲル組成物を食感改良剤として使用する際に、食品に老化防止やソフト性などの効果を付加するために必要に応じ添加するものであり、その具体例としては、レシチン、酵素処理レシチンなどの天然乳化剤、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等の合成乳化剤が挙げられる。本発明のゲル組成物では、風味や、消費者の間に広まっている天然志向に応える観点から、上記乳化剤のうち、合成乳化剤を用いないことが好ましく、さらに好ましくは上記の天然乳化剤や合成乳化剤などの乳化剤を用いないのが望ましい。
上記金属イオン封鎖剤は、一般にアルギン酸ゲルを製造する際に、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、鉄イオン等の二価の金属イオンを封鎖するために添加するものであり、本発明では(C)カルシウムを被包して、アルギン酸類との反応を制御するために、必要に応じ使用するものである。その具体例としては、ピロリン酸四ナトリウム、ピロリン酸二水素二ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、ウルトラポリリン酸ナトリウム、第三リン酸カリウム等の各種リン酸塩、並びにクエン酸、酒石酸等の有機酸塩類、及び炭酸塩等の無機塩類、さらには、これらの金属イオン封鎖剤を含有する食品素材が挙げられる。
本発明のゲル組成物では、これらの各種金属イオン封鎖剤の中から選ばれた1種又は2種以上を、目的に応じて用いることができる。
しかし、本発明のゲル組成物は、(A)高粘性アルギン酸及び/又は高粘性アルギン酸塩と(B)低粘性アルギン酸、低粘性アルギン酸塩又はアルギン酸エステルのうちの1種又は2種以上を併用することで、上記金属イオン封鎖剤を含有せずとも安定してゲル組成物を製造可能であり、上記金属イオン封鎖剤を使用すると、十分な硬さのゲル組成物が得られないおそれがあること、及びゲル組成物の風味が悪くなるため、上記金属イオン封鎖剤の使用量は極力控えることが好ましく、本発明のゲル組成物中、好ましくは0〜1質量%、より好ましくは含有しないことが好ましい。
上記pH調整剤は、(C)カルシウムとして、カルシウムを含有する食品を用いた場合などに、カルシウムを水相中に溶出させるために、必要に応じ使用するものであり、その具体例としては、クエン酸、乳酸、グルコン酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、酢酸、氷酢酸、フィチン酸、アジピン酸、コハク酸、グルコノデルタラクトン、アスコルビン酸が挙げられ、これらを単独で用いるか、又は二種以上を組み合わせて用いる。また、これらのpH調整剤を含有する食品素材の形で本発明のゲル組成物に含有させてもよい。本発明のゲル組成物では、これらの各種pH調整剤の中から選ばれた1種又は2種以上を、目的に応じて用いることができる。
上記pH調整剤の含有量は、本発明のゲル組成物中、好ましくは0〜1質量%である。
上記糖類は、ゲル組成物に甘味を付与する場合や、また、本発明のゲル組成物を食感改良剤として使用する際に、食品に老化防止やソフト性などの効果を付加するために必要に応じ添加するものであり、その具体例としては、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、酵素糖化水飴、乳糖、還元澱粉糖化物、異性化液糖、ショ糖結合水飴、オリゴ糖、還元糖ポリデキストロース、ソルビトール、還元乳糖、トレハロース、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖等が挙げられる。また、上記甘味料としては、スクラロース、アセスルファムカリウム、ステビア、アスパルテーム等が挙げられる。これらの糖類及び甘味料は、単独で用いることもでき、又は二種以上を組み合わせて用いることもできる。
上記糖類及び上記甘味料の含有量は、本発明のゲル組成物中、固形分として好ましくは0〜50質量%、さらに好ましくは0〜30質量%、最も好ましくは0〜20質量%である。
なお、上記その他の原料は、本発明のゲル組成物中、合計として、好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、最も好ましくは20質量%以下とする。30質量%を超えると、ゲル強度が著しく低下し、食品に添加した際に、十分な食感改良効果を付与することができなくなる恐れがあるからである。
上記のようにして得られた本発明のゲル組成物は、耐熱性を有する硬いゲルでありながら、解れ性が良好であるという特徴を有する。
本発明のゲル組成物の5℃における好ましい硬さは、一辺が70mmの立方体のゲル組成物を、不動工業株式会社製のレオメーターで、プランジャーとしてφ2cmの円盤を使用し、侵入速度2cm/minでゲルの圧縮応力測定した時の、降伏点での応力が、好ましくは15〜300g/cm2、より好ましくは20〜200g/cm2となるものである。
なお、ゲルの圧縮応力測定における降伏点とは、上記測定を行なった場合、一定距離まではプランジャーの侵入距離に比例して応力が上昇し極大点に達し、そこで応力が著しく減少する点であり、それ以降は、侵入距離が増しても応力は増さず、いわゆる、塑性変形と呼ばれる永久変形を示すものである。
すなわち、ペースト状組成物や流動状組成物、さらには流動ゲル組成物などの、降伏点をもたない組成物は真正なゲルではないため、本発明のゲル組成物とは異なるものである。
また、本発明のゲル組成物は耐熱性を有するものであるが、この場合の耐熱性とは、一辺が30mmの立方体のゲル組成物を、200℃の固定オーブン中で10分間加熱した場合に、高さが15mm以上であることを指すものとする。
また、本発明のゲル組成物は良好な解れ性を有するものであるが、この場合の解れ性とは、水や温水に溶けずに均一に分散するものであり、水に溶けてしまうものはゾルであるから、本発明のゲル組成物には含まれない。
なお、本発明のゲル組成物のpHは、好ましくは2.5〜7.5、さらに好ましくは2.8〜7.2、最も好ましくは3〜6.8である。
次に、本発明のゲル組成物の製造方法について述べる。
本発明のゲル組成物の製造方法は、下記成分(A)を0.1〜10.0質量%、下記成分(B)を0.1〜10.0質量%、下記成分(C)を含有し、それらの含有量の比が質量基準で、0.001≦(C)/((A)+(B))≦0.1、且つ(A):(B)=99:1〜20:80であり、水分含量が20〜98質量%である混合液を、均質化することによりゲル組成物を製造する方法である。
(A)高粘性アルギン酸及び/又は高粘性アルギン酸塩
(B)低粘性アルギン酸、低粘性アルギン酸塩又はアルギン酸エステルのうちの1種又は2種以上
(C)カルシウム
ここで、油脂を含有するゲル組成物を製造する場合には、上記混合液に、油相を添加して、水中油型に乳化して使用する。この場合上記成分(A)及び(B)のアルギン酸類は油相中に分散させてから添加することが、ダマにならず均一に分散する点、及びより解れ性の良好なゲル組成物が得られる点で好ましい。なお、上記水中油型とは水中油中水型を含むものである。
また、pH調整剤や(D)ナトリウムを使用する場合は、上記成分(A)及び(B)のアルギン酸類を添加する前の水相にあらかじめ溶解しておくことが好ましい。上記pH調整剤や上記(D)ナトリウムを、上記成分(A)及び(B)のアルギン酸類を含有する水相に後から添加すると、最終的に得られるゲル組成物のゲル強度が低く、耐熱性が乏しいゲル組成物となるおそれがある。
さらに、上記混合液は、均質化前に必要に応じて加熱殺菌を行なうことができる。該加熱殺菌の方法としては、インジェクション式、インフュージョン式、マイクロ波等の直接加熱方式、又は、バッチ式、プレート式、チューブラー式、掻き取り式等の間接加熱方式があり、UHT、HTST、LTLT等の60〜160℃の加熱処理を行なえば良い。
上記均質化において、使用する均質化機としては、例えば、ケトル型チーズ乳化釜、ステファンミキサーの様な高速せん断乳化釜、スタティックミキサー、インラインミキサー、ホモゲナイザー、コロイドミル、ディスパーミル等が挙げられ、好ましくは1〜200MPa、さらに好ましくは5〜150MPa、最も好ましくは10〜100MPaの均質化圧力にて均質化を行なう。この均質化処理は、2段バルブ式ホモゲナイザーを用いて、例えば、1段目10〜100MPa、2段目0〜10MPaの均質化圧力にて行なっても良い。
また、得られた本発明のゲル組成物は、必要に応じて冷却しても良い。冷却方法は、例えば、適当な容器に充填した後に、水浴、氷浴、冷蔵庫、冷凍庫等で冷却する方法も挙げられる。
このようにして得られた本発明のゲル組成物は、耐熱性を有する硬いゲルでありながら、解れ性が良好であるため、口中分散性が高く、そのため、そのまま口溶けが良好であるプディングやゼリーなどのゲル状食品としても食することが可能であり、また、解れ性が良好であることから一般的な油脂代替品としても使用することも可能である。
しかし、本発明のゲル組成物は、好ましくは、食品の食感改良の目的で、すなわち、食感改良剤として各種食品生地に添加して使用することが好ましい。
上述のように、従来の各種食感改良剤は、粉末形態であるかペースト状であるため、食品生地に添加した際に、ダマとなって均一に分散しなかったり、生地中に練り込まれてしまい、また、従来のアルギン酸類ゲルは強固なゲルであるため、食品生地に添加した際に、巨大なゲル片として残存してしまう。
これに対し、本発明のゲル組成物は硬いゲルでありながら、解れ性が良好であるため、食品生地に添加した際に、微細なゲル小片となって分散する。そのため、本発明の食感改良剤はゲルのまま添加することが可能であり、そのため、アルギン酸類ゲルのもつ耐熱性の効果が高く発揮されるというものである。
なお、食品生地が油脂を含有するものである場合は、本発明のゲル組成物を、食感改良と油脂代替の2つの目的で、食品生地の油脂の一部又は全部を置換して添加することも、もちろん可能である。
次に、本発明の食品生地について述べる。
本発明の食品生地は、上記食感改良剤を好ましくは0.1質量%〜30質量%、さらに好ましくは0.5質量%〜15質量%、最も好ましくは0.5質量%〜12質量%含有する食品生地である。
上記の食品生地としては、例えばハンバーグ、ミートボール、肉団子、ミートローフ、ミートパテ、チキンナゲット、ミートコロッケ、メンチカツ、つくね、ハム、ソーセージ、ウインナーなどの畜肉加工生地、食パン、菓子パン、デニッシュ・ペストリー、バラエティーブレッド、バターロール、ソフトロール、ハードロール、スイートロール、米菓、蒸しパン、蒸しケーキ、パイ、どら焼、今川焼き、ホットケーキ、クレープ、バターケーキ、スポンジケーキ、クッキー、ビスケット、クッキー、クラッカー、乾パン、プレッツエル、カットパン、ウェハース、サブレ、マカロン、シュー、ドーナツ、ワッフル、スコーン、発酵菓子、ピザ生地、中華饅頭等などのベーカリー生地、うどん、中華麺、そば、そうめん、冷麦、冷麺、ビーフン、きしめん、ちゃんぽん、にゅう麺、マカロニ、パスタ、スパゲッティーなどの麺類生地、餃子の皮、しゅうまいの皮、ラビオリの皮、ワンタンの皮、春巻きの皮などの惣菜生地、餅、求肥、団子などの餅生地があげられ、なかでも、本発明のゲル組成物は耐熱性を有することから、加熱調理する食品において特に効果を発揮するため、上記食品生地中でも、特に畜肉加工食品生地、ベーカリー生地、麺類生地、惣菜生地であることが特に高い食感改良効果が得られる点で好ましい。
なお、上記の加熱調理とは、焼成、薫蒸、茹で、フライ、オーブンやオーブントースター、電子レンジ加熱、スチーム加熱などの調理を指す。
なお、上記ゲル組成物の食品生地への添加方法及び混合方法は、特に限定されず、ゲルの硬さなどの物性にあわせ適宜選択することができるが、混合時間は短い方が好ましい。
次に、本発明の食品について述べる。
本発明の食品は、上記食品生地を調理、好ましくは加熱調理した、食感が改良された食品である。さらにはこれらの冷凍食品やレトルト食品、チルド食品などがあげられる。
なお、改良される食感とは、具体的には下記のようなものである。
畜肉加工生地を加熱調理した畜肉加工食品の場合は、ソフト性、歯切れの良さ、ジューシー感、解れ感が増強され、ドリップが解消されたものである。
また、ベーカリー生地を加熱調理したベーカリー食品では、ソフト性、しとり、口溶けの良さ、歯切れの良さが増強され、ねちゃつき感や油性感が解消されたものである。また電子レンジ、オーブントースターで再加熱した際のソフト性、歯切れの良さも増強されたものとなる。
また、麺類生地を加熱調理した麺類食品では、ソフト性、解れ感、歯切れの良さ、コシ、のどごしの良さが増強されたものとなる。
また、惣菜生地を加熱調理した惣菜食品では、カリカリ感、ソフト性、口溶けの良さ、歯切れの良さが増強されたものとなる。
また、餅生地を加熱調理した焼き餅類では、コシ、伸び、口溶けの良さ、のどごしの良さが増強されたものとなる。
次に、実施例及び比較例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、これらは本発明を何ら制限するものではない。
尚、実施例は、本発明のゲル組成物の製造及び該ゲル組成物を食感改良剤として使用した食品(食パン、バターケーキ、ケーキドーナツ、ハンバーグ、うどん及び焼き餅)の製造を示す。比較例は、比較組成物の製造及び該比較組成物を食感改良剤として使用した比較食品(食パン、バターケーキ、ケーキドーナツ、ハンバーグ、うどん及び焼き餅)の製造を示す。また、製造した各食品及び各比較食品について、それぞれパネルテストによる食感の評価を行い、それらの評価結果を〔表1〕〜〔表10〕に示した。
<ゲル組成物の製造>
〔実施例1〕
塩化カルシウム(カルシウム含量27質量%)0.2質量部、ホエイパウダー(カルシウム含量0.6質量%、ナトリウム含量0.4質量%)3質量部、クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮物(固形8質量%、固形分中のリン脂質の含有量4.89質量%、カルシウム含量0.35質量%、ナトリウム含量0.2質量%)5.5質量部を水67質量部に溶解した。さらに乳酸0.1質量部、食塩(ナトリウム含量39質量%)0.5質量部、乳糖10質量部を添加し、十分に撹拌して混合液を得た。
一方、パーム油12質量部に、高粘性アルギン酸ナトリウム(B型粘度計でpH7、25℃、30rpmの条件下で測定したときの1質量%水溶液の粘度が、150mPa・s、ナトリウム含量9.7質量%)0.5質量部、高粘性アルギン酸(B型粘度計でpH7、25℃、30rpmの条件下で測定したときの1質量%水溶液の粘度が、50mPa・s)0.3質量部、低粘性アルギン酸ナトリウム(B型粘度計でpH7、25℃、30rpmの条件下で測定したときの1質量%水溶液の粘度が、50mPa・s、且つ、10質量%水溶液の粘度が500mPa・s、ナトリウム含量9.7質量%)0.5質量部、低粘性アルギン酸(B型粘度計でpH7、25℃、30rpmの条件下で測定したときの1質量%水溶液の粘度が、50mPa・s、且つ、10質量%水溶液の粘度が500mPa・s)0.4質量部を添加、分散し、油相を調製した。
上記混合液に、上記油相を添加、乳化し水中油型組成物とし、これを掻取式熱交換器にて90℃で1分間加熱殺菌し、掻取式熱交換器にて60℃に冷却した。次いでイズミフードマシナリー製2段式ホモゲナイザーにて均質化後、ポリエチレン袋に密封し、20℃まで24時間かけて冷却し、(C)カルシウムとして、カルシウム製剤とカルシウムを含有する食品を併用し、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が該固形分を基準として2質量%以上である乳原料を5.5質量%含有し、油脂を12質量%含有し、水分を70.5質量%含有し、金属イオン封鎖剤を含有しない本発明のゲル組成物を得た。
得られた本発明のゲル組成物は、(A)を0.8質量%、(B)を0.9質量%、(C)カルシウムを0.092質量%、(D)ナトリウムを0.319質量%含有し、且つ、その含有量の比が質量基準で、(A):(B)=47:53、(C)/((A)+(B))=0.054、(D)/((A)+(B))=0.188であった。
また、成分(A)において、(A)高粘性アルギン酸類の1質量%水溶液の粘度が、10〜70mPa・sのものと、(A)高粘性アルギン酸類の1質量%水溶液の粘度が、100mPa・sを超えるものとの比は、前者:後者=63:37の質量比であった。
得られた本発明のゲル組成物を一辺が30mmの立方体のゲル組成物として5℃に調温し、不動工業株式会社製のレオメーターにて、プランジャーφ2cmの円盤を使用し、侵入速度2cm/minでゲルの圧縮応力測定したところ、降伏点での応力は72g/cm2であった。また、一辺が30mmの立方体のゲル組成物を、200℃のオーブン中で10分間加熱すると、高さは27mmであり、優れた耐熱性を有している事が分かった。
〔実施例2〕
実施例1で使用したパーム油に代えて菜種液状油を使用した以外は、実施例1と同様の配合・製法で本発明のゲル組成物を得た。
得られた本発明のゲル組成物を、実施例1と同様の方法でゲルの圧縮応力測定したところ、降伏点での応力は55g/cm2であった。
また、一辺が30mmの立方体のゲル組成物を、200℃のオーブン中で10分間加熱すると、高さは27mmであり、優れた耐熱性を有している事が分かった。
〔実施例3〕
塩化カルシウム0.4質量部、ホエイパウダー3質量部、クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮物(固形8質量%、固形分中のリン脂質の含有量4.89質量%)5.5質量部を水67.8質量部に溶解した。さらに乳酸0.1質量部、食塩0.5質量部、乳糖10質量部、クエン酸3ナトリウム (ナトリウム含量23.5質量%)1.0質量部を添加し、十分に撹拌して混合液を得た。
一方、菜種液状油10質量部に、高粘性アルギン酸ナトリウム(B型粘度計でpH7、25℃、30rpmの条件下で測定したときの1質量%水溶液の粘度が、150mPa・s)0.5質量部、高粘性アルギン酸(B型粘度計でpH7、25℃、30rpmの条件下で測定したときの1質量%水溶液の粘度が、50mPa・s)0.3質量部、低粘性アルギン酸ナトリウム(B型粘度計でpH7、25℃、30rpmの条件下で測定したときの1質量%水溶液の粘度が、50mPa・s、且つ、10質量%水溶液の粘度が500mPa・s)0.5質量部、低粘性アルギン酸(B型粘度計でpH7、25℃、30rpmの条件下で測定したときの1質量%水溶液の粘度が、50mPa・s、且つ、10質量%水溶液の粘度が500mPa・s)0.4質量部を添加、分散し、油相を調製した。
上記混合液に、上記油相を添加、乳化し水中油型組成物とし、これを掻取式熱交換器にて90℃で1分間加熱殺菌し、掻取式熱交換器にて60℃に冷却した。次いでイズミフードマシナリー製2段式ホモゲナイザーにて均質化後、ポリエチレン袋に密封し、20℃まで24時間かけて冷却し、(C)カルシウムとして、カルシウム製剤とカルシウムを含有する食品を併用し、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が該固形分を基準として2質量%以上である乳原料を5.5質量%含有し、油脂を10質量%、水分を71.3質量%含有し、金属イオン封鎖剤を1質量%含有する本発明のゲル組成物を得た。
得られた本発明のゲル組成物は、(A)を0.8質量%、(B)を0.9質量%、(C)カルシウムを0.146質量%、(D)ナトリウムを0.554質量%含有し、且つ、その含有量の比が質量基準で、(A):(B)=47:53、(C)/((A)+(B))=0.086、(D)/((A)+(B))=0.326であった。
また、(A)において、(A)高粘性アルギン酸類の1質量%水溶液の粘度が、10〜70mPa・sのものと、(A)高粘性アルギン酸類の1質量%水溶液の粘度が、100mPa・sを超えるものとの比は、前者:後者=63:37の質量比であった。
得られた本発明のゲル組成物を、実施例1と同様の方法でゲルの圧縮応力測定したところ、降伏点での応力は43g/cm2であった。
また、一辺が30mmの立方体のゲル組成物を、200℃のオーブン中で10分間加熱すると、若干崩れたものの高さは27mmであり、耐熱性を有している事が分かった。
〔比較例1〕
アルギン酸類として、高粘性アルギン酸ナトリウム(B型粘度計でpH7、25℃及び30rpmの条件下で測定したときの1質量%水溶液の粘度が、150mPa・s)1.5質量部のみを使用し、水を69.2質量部とした以外は、実施例2と同様の配合、製法で、比較例1のゲル組成物を得た。
得られた比較例1のゲル組成物は、(A)を1.5質量%、(B)を0質量%、(C)カルシウムを0.092質量%、(D)ナトリウムを0.364質量%含有し、且つ、その含有量の比が質量基準で、(C)/((A)+(B))=0.061、(D)/((A)+(B))=0.242であった。なお、水分含量は72.7質量%であった。
得られた本発明のゲル組成物を、実施例1と同様の方法でゲルの圧縮応力測定したところ、降伏点での応力は77g/cm2であった。
また、一辺が30mmの立方体のゲル組成物を、200℃のオーブン中で10分間加熱すると、高さは28mmであり、優れた耐熱性を有している事が分かった。
〔比較例2〕
比較例1で得られたゲル組成物を、ホモジナイザーを用いて、高速2分破砕し、流動状である比較例2の破砕ゲル組成物を得た。
得られた破砕ゲル組成物を、実施例1と同様の方法でゲルの圧縮応力測定を試みたが流動状で測定不能であった。
また、比較例2の破砕ゲル組成物40gを、200℃のオーブン中で10分間加熱すると、完全に流れ高さは10mmであり、耐熱性を有していない事が分かった。
〔比較例3〕
アルギン酸類として、低粘性アルギン酸ナトリウム(B型粘度計でpH7、25℃、30rpmの条件下で測定したときの1質量%水溶液の粘度が、50mPa・s、且つ、10質量%水溶液の粘度が500mPa・s)1.5質量部のみを使用し、水を69.2質量部とした以外は、実施例2と同様の配合、製法で、比較例3のクリーム状組成物を得た。
得られた比較例3のクリーム状組成物は、(A)を0質量%、(B)を1.5質量%、(C)カルシウムを0.092質量%、(D)ナトリウムを0.364質量%含有し、且つ、その含有量の比が質量基準で、(C)/((A)+(B))=0.061、(D)/((A)+(B))=0.242であった。なお、水分含量は72.7質量%であった。
得られた比較例3のクリーム状組成物を、実施例1と同様の方法でゲルの圧縮応力測定を試みたが降伏点が検出されず、ゲルでないことがわかった。
また、比較例3のクリーム状組成物40gを、200℃のオーブン中で10分間加熱すると、高さは2mmであり、耐熱性を有していない事が分かった。
上記実施例1〜3のゲル組成物並びに比較例1のゲル組成物、比較例2の流動ゲル及び比較例3のクリーム状組成物を使用して、下記の配合・製法で、食パン、バターケーキ、ケーキドーナツ、ハンバーグ、うどん及び焼き餅をそれぞれ試作し、食感の評価を行なった。
<食パンの製造>
〔実施例4〕
強力粉70質量部、生イースト2.2質量部、イーストフード0.1質量部、水40質量部をミキサーボウルに投入し、縦型ミキサーにフックをセットし、低速2分、中速1分ミキシングして中種生地を得た。捏ね上げ温度は24℃であった。この中種生地を生地ボックスに入れ、温度28℃、相対湿度85%の恒温室で、4時間中種醗酵をおこなった。終点温度は29℃であった。
この中種醗酵の終了した生地を再びミキサーボウルに投入し、さらに、強力粉30質量部、食塩1.8質量部、上白糖8質量部、水23質量部を添加し、低速3分、中速3分ミキシングした。ここで練込油脂(マーガリン)5質量部、実施例1で得られたゲル組成物4質量部を投入し、フックを使用し、低速3分、中速2分、高速1分ミキシングをおこない、食パン生地である本発明の食品生地を得た。なお、該食パン生地は上記ゲル組成物を2.2質量%含有するものであった。
得られた食パン生地はフロアタイムを30分とった後、380gに分割・丸目をおこなった。分割・丸目時の生地はべたつかず作業性は良好であった。次いでベンチタイムを20分とった後、モルダーを使用し、ワンローフ成形し、ワンロ―フ型に入れ、38℃、相対湿度85%、40分ホイロをとった後、200℃に設定した固定窯に入れ40分焼成し実施例4の食パンを製造した。
〔実施例5〕
実施例1で得られたゲル組成物に代えて実施例2で得られたゲル組成物を使用したほかは実施例4と同様の配合と製法により実施例5の食パン生地、及び食パンを得た。
なお、分割・丸目時の生地はべたつかず作業性は良好であった。
〔実施例6〕
実施例1で得られたゲル組成物に代えて実施例3で得られたゲル組成物を使用したほかは実施例4と同様の配合と製法により実施例6の食パン生地、及び食パンを得た。
なお、分割・丸目時の生地はべたつかず作業性は良好であった。
〔実施例7〕
練込油脂(マーガリン)5質量部を無添加としたほかは実施例4と同様の配合と製法により実施例7の食パン生地、及び食パンを得た。
なお、該食パン生地は上記ゲル組成物を2.2質量%含有するものであった。なお、分割・丸目時の生地はべたつかず作業性は良好であった。
〔実施例8〕
練込油脂(マーガリン)5質量部を無添加とし、ゲル組成物の添加量を8質量部としたほかは実施例4と同様の配合と製法により実施例8の食パン生地、及び食パンを得た。なお、該食パン生地は上記ゲル組成物を4.3質量%含有するものであった。なお、分割・丸目時の生地はべたつかず作業性は良好であった。
〔比較例4〕
実施例1で得られたゲル組成物に代えて比較例1で得られたゲル組成物を使用したほかは実施例4と同様の配合と製法により比較例4の食パン生地、及び食パンを得た。
なお、分割・丸目時の生地はべたつかず作業性は良好であった。
〔比較例5〕
実施例1で得られたゲル組成物に代えて比較例2で得られた破砕ゲル組成物を使用したほかは実施例4と同様の配合と製法により比較例5の食パン生地、及び食パンを得た。
なお、分割・丸目時の生地はべたつかず作業性は良好であった。
〔比較例6〕
実施例1で得られたゲル組成物に代えて比較例3で得られたクリーム状組成物を使用したほかは実施例4と同様の配合と製法により、ゲル組成物を含有しない比較例6の食パン生地、及び食パンを得た。
なお、分割・丸目時の生地はややべたつき、作業性はやや不良であった。
〔比較例7〕
また、実施例1で得られたゲル組成物を添加せず、本捏時の、水23質量部を水26質量部に変更した他は実施例4と同様の配合と製法により、ゲル組成物を含有しない比較例7の食パン生地、及び食パンを得た。
なお、分割・丸目時の生地はべたつかず作業性は良好であった。
<食パンのパネルテスト1>
上記実施例4〜6、比較例4〜7で得られた6種の食パンを袋に詰めて25℃で3日静置したのち、厚さ15mmにスライスし、食感についてパネルテストを行ないその結果を〔表1〕に記した。
なお、パネルテストは、50人のパネラーに食パンを試食させ、食パンのソフト性、しとり感、口溶けの良さ、歯切れの良さ及びねちゃつき感のなさの5項目について、一番優れていると感じた食パンを選択させ、一番優れているとして選択した人数をその評価点数とした。
また、これらの5種の食パンを袋に詰めて25℃で3日静置したのち、厚さ15mmにスライスしたものを、オーブントースターで2分加熱したものについても、同様にソフト性及び歯切れの良さについてパネルテストを行ない、その結果を〔表2〕に記した。
さらに、これらの5種の食パンを袋に詰めて25℃で3日静置したのち、厚さ15mmにスライスしたものを、500Wの電子レンジで15秒加熱し、25℃5分放冷した後の食パンについても、同様にソフト性及び歯切れの良さについてパネルテストを行ない、その結果を〔表3〕に記した。
<食パンのパネルテスト2>
上記実施例4、7、8で得られた3種の食パンを袋に詰めて25℃で3日静置したのち、厚さ15mmにスライスし、食感についてパネルテストを行ないその結果を〔表4〕に記した。
なお、パネルテストは、50人のパネラーに食パンを試食させ、食パンのソフト性及び歯切れの良さの2項目について、一番優れていると感じた食パンを選択させ、一番優れているとして選択した人数をその評価点数とした。
Figure 2007236322
Figure 2007236322
Figure 2007236322
〔表1〕〜〔表3〕の結果からわかるとおり、本発明のゲル組成物を使用して得られた食パンはソフト性、歯切れ及び口溶けが良好で、ねちゃつきがなく、食感に優れて、さらにトーストした食パンや、電子レンジ加熱した食パンでは、さらにソフト性及び歯切れの良さが改良されることがわかる。また、実施例4、実施例5で、食感の評価の差が少ないことから、液状油を使用した場合に比べ、固形脂を使用した場合でも、ほぼ同様の食感改良効果を有していることがわかる。また、実施例5、実施例6で、若干実施例5の方が良好な評価であることから、金属イオン封鎖剤を使用しない方が、若干、良好な食感改良効果を有していることがわかる。
Figure 2007236322
〔表4〕の結果からわかるとおり、実施例4、実施例7で食感の評価の差が少ないことから、油脂代替品としての機能もあり、更にゲル組成物の添加量を増量した実施例8の評価もまた、実施例4の評価との差が少ないことから、油脂代替品と食感改良効果を併せ持っていることもわかる。
<バターケーキの製造>
〔実施例9〕
バター100質量部、及び、上白糖100質量部をミキサーボウルに投入し、卓上ミキサーでビーターを使用して低速1分、高速5分クリーミングした。次いで低速でミキシングしながら、全卵(正味)100質量部を2分かけてゆっくり加え、さらに低速1分ミキシングし、ここに、薄力粉100質量部とベーキングパウダー1質量部、及び、実施例1で得られたゲル組成物20質量部を添加、低速1分混合し、実施例9のバターケーキ生地を得た。なお、該バターケーキ生地は上記ゲル組成物を4.8質量%含有するものであった。
得られたバターケーキ生地は、敷紙を敷き、側紙を巻いたパウンド型に流し込み、上火180℃、下火170℃で35分間焼成しバターケーキを得た。
〔比較例8〕
実施例1で得られたゲル組成物に代えて比較例1で得られたゲル組成物を使用したほかは実施例7と同様の配合と製法により比較例8のバターケーキ生地及びバターケーキを得た。
〔比較例9〕
ゲル組成物を全く用いないほかは実施例6と同様の配合と製法によりゲル組成物を含有しない比較例9のバターケーキ生地、及びバターケーキを得た。
<バターケーキのパネルテスト>
これら3種のバターケーキを袋に詰めて25℃で7日静置したのち、厚さ15mmにスライスし、食感についてパネルテストを行ないその結果を〔表5〕に記した。
なお、パネルテストは、50人のパネラーにバターケーキを試食させ、バターケーキのソフト性、しとり感、口溶けの良さ及び歯切れの良さ4項目について、一番優れていると感じたバターケーキを選択させ、一番優れているとして選択した人数をその評価点数とした。
Figure 2007236322
〔表5〕の結果からわかるとおり、本発明のゲル組成物を使用して得られたバターケーキはソフト性、歯切れ及び口溶けが良好で、ねちゃつきがなく、食感に優れていることがわかる。
<ケーキドーナツの製造>
〔実施例10〕
薄力粉100質量部、ベーキングパウダー3質量部、グラニュー糖40質量部、食塩1.5質量部、全卵(正味)30質量部、脱脂粉乳4質量部、ショートニング8質量部、牛乳6質量部をミキサーボウルに投入し、卓上ミキサーでビーターを使用して低速1分、高速3分ミキシングした。次いで低速でミキシングしながら、実施例1で得られたゲル組成物5質量部を1分かけてゆっくり加え、さらに低速1分混合し、実施例10のケーキドーナツ生地を得た。なお、該ケーキドーナツ生地は上記ゲル組成物を2.5質量%含有するものであった。
得られたケーキドーナツ生地は、フロアタイム10分とった後、リング状に成形し、180℃で4分間フライしドーナツを得た。
〔比較例10〕
実施例1で得られたゲル組成物に代えて比較例1で得られたゲル組成物を使用したほかは実施例10と同様の配合と製法により比較例8のケーキドーナツ生地及びケーキドーナツを得た。
〔比較例11〕
ゲル組成物を全く用いないほかは実施例10と同様の配合と製法によりゲル組成物を含有しない比較例11のケーキドーナツ生地、及びケーキドーナツを得た。
<ケーキドーナツのパネルテスト>
これらの4種のケーキドーナツを袋に詰めて25℃で3日静置したのち、食感についてパネルテストを行ないその結果を〔表6〕に記した。
なお、パネルテストは、50人のパネラーにケーキドーナツを試食させ、ケーキドーナツのソフト性、しとり感、口溶けの良さ、歯切れの良さ、ねちゃつき感のなさ及び油性感のなさの6項目について、一番優れていると感じたケーキドーナツを選択させ、一番優れているとして選択した人数をその評価点数とした。
Figure 2007236322
〔表6〕の結果からわかるとおり、本発明のゲル組成物を使用して得られたケーキドーナツは、長時間保管後でも、ソフト性、歯切れ及び口溶けが良好で、ねちゃつきや油性感がなく、食感に優れていることがわかる。
<ハンバーグの製造>
〔実施例11〕
ひき肉(牛:豚=2:3)55質量部を食塩0.5質量部、胡椒0.05質量部、ナツメグ0.05質量部、醤油2.5質量部、上白糖1.5質量部で下味をつけておいてから、上記のものに牛乳でしとらせたパン粉11.5質量部とオニオンソテー(みじん切り)14.1質量部、植物タンパク質1.0質量部、全卵5.8質量部、ラード3質量部をミキサーボウルに投入し、ビーターを使用して、キッチンエイドミキサーで低速1分混合後、実施例1で得られたゲル組成物を5質量部添加して、更に30秒ミキシングを行ない、ハンバーグ生地である実施例11の食品生地を得た。
なお、該ハンバーグ生地は上記ゲル組成物を5質量%含有するものであった。
得られたハンバーグ生地は30gに分割し、小判型に成形し、固定オーブンで190℃、10分間焼成し、ハンバーグを得た。
〔比較例12〕
実施例1で得られたゲル組成物に代えて比較例1で得られたゲル組成物を使用したほかは実施例11と同様の配合と製法により比較例12のハンバーグ生地及びハンバーグを得た。
〔比較例13〕
ゲル組成物を全く用いないほかは実施例11と同様の配合と製法によりゲル組成物を含有しない比較例13のハンバーグ生地、及びハンバーグを得た。
<ハンバーグのパネルテスト>
これらの3種のハンバーグを−20℃で3日間冷凍したのち、600Wの電子レンジで再加熱(5個/2分間)し、25℃で2時間放冷後に、食感についてパネルテストを行ないその結果を〔表7〕に記した。
なお、パネルテストは、50人のパネラーにハンバーグを試食させ、ハンバーグのソフト性、歯切れの良さ、ジューシー感及び解れ感の4項目について、一番優れていると感じたハンバーグを選択させ、一番優れているとして選択した人数をその評価点数とした。また、焼成時のドリップの量について、下記4段階で評価をおこない、結果を〔表8〕に記載した。
Figure 2007236322
Figure 2007236322
〔表7〕の結果からわかるとおり、本発明のゲル組成物を使用して得られたハンバーグは、ソフト性、歯切れ、ジューシー感及び解れ感が良好で、食感に優れていることがわかる。また、〔表8〕の結果からわかるとおり、本発明のゲル組成物を使用して得られたハンバーグは焼成時のドリップの量が少ないことがわかる。
<うどんの製造>
〔実施例12〕
中力粉(日本製粉製:麺たくみ)1kg、食塩30g、水500ml、さらに実施例1で得られたゲル組成物100gをミキサーボウルに投入し、縦型ミキサーでフックを使用して十分にミキシングし、うどん生地である実施例12の食品生地を得た。
なお、該うどん生地は上記ゲル組成物を6.1質量%含有するものであった。
得られたうどん生地は、厚さ2mm、幅3mmに製麺し、100℃の湯で10分間茹で上げてうどんを得た。
〔比較例14〕
実施例1で得られたゲル組成物に代えて比較例1で得られたゲル組成物を使用したほかは実施例12と同様の配合と製法により比較例14のうどん生地及びうどんを得た。
〔比較例15〕
ゲル組成物を全く用いず、水の添加量を560mlに変更した以外は実施例12と同様の配合と製法によりゲル組成物を含有しない比較例13のうどん生地及びうどんを得た。
Figure 2007236322
<うどんのパネルテスト>
これらの3種のうどんを食感についてパネルテストを行ないその結果を〔表9〕に記した。
なお、パネルテストは、50人のパネラーにうどんを試食させ、うどんのコシ、歯切れの良さ及びのど越しの良さ3項目について、一番優れていると感じたうどんを選択させ、一番優れているとして選択した人数をその評価点数とした。
〔表9〕の結果からわかるとおり、本発明のゲル組成物を使用して得られたうどんはコシ、歯切れ及びのど越しが良好で、食感に優れていることがわかる。
<焼き餅の製造>
〔実施例13〕
家庭用の餅つき機「もちっ子(東芝製)」を使用して下記のように餅を製造した。餅米1400gを洗米し、浸し容器に移し30分間水に浸した後、容器ごと本体にセットし1時間水に浸した。ザルで30分間水切りをした後、臼に移し35分間蒸した。蒸し米に実施例1で得られたゲル組成物210gを少量ずつ加えながら搗きあげ、餅生地である本発明の食品生地を得た。
なお、該餅生地は上記ゲル組成物を13質量%含有するものであった。
得られた餅生地は、厚さ2mm、縦80mm、横80mmにカットし、ガスコンロに餅焼き網を載せた上で焼成し、焼き餅とした。
〔比較例16〕
実施例1で得られたゲル組成物に代えて比較例1で得られたゲル組成物を使用したほかは実施例13と同様の配合と製法により比較例16の餅生地及び焼き餅を得た。
〔比較例17〕
ゲル組成物を全く用いず、代わりに水を135g加えながら搗きあげたほかは実施例13と同様の配合と製法によりゲル組成物を含有しない比較例15の餅生地及び焼き餅を得た。
<焼き餅のパネルテスト>
この3種の焼き餅を、食感についてパネルテストを行ないその結果を〔表10〕に記した。
なお、パネルテストは、50人のパネラーに醤油をつけた焼き餅を試食させ、焼き餅のコシ、伸び、口溶けの良さ及びのど越しの良さの4項目について、一番優れていると感じた焼き餅を選択させ、一番優れているとして選択した人数をその評価点数とした。
Figure 2007236322
〔表10〕の結果からわかるとおり、本発明のゲル組成物を使用して得られた焼き餅はコシ、伸び、口溶け、のど越しが良好で、食感に優れていることがわかる。
Folch法のフローを示した図である。

Claims (10)

  1. 下記成分(A)を0.1〜10.0質量%、下記成分(B)を0.1〜10.0質量%、下記成分(C)を含有し、それらの含有量の比が質量基準で、0.001≦(C)/((A)+(B))≦0.1、且つ(A):(B)=99:1〜20:80であり、水分含量が20〜98質量%であることを特徴とするゲル組成物。
    (A)高粘性アルギン酸及び/又は高粘性アルギン酸塩
    (B)低粘性アルギン酸、低粘性アルギン酸塩又はアルギン酸エステルのうちの1種
    又は2種以上
    (C)カルシウム
  2. さらに、(D)ナトリウムを含有し、それらの含有量の比が質量基準で0.01≦(D)/((A)+(B))≦1.0であることを特徴とする請求項1記載のゲル組成物。
  3. さらに、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が該固形分を基準として2質量%以上である乳原料を、固形分として0.1〜8質量%含有することを特徴とする請求項1又は2記載のゲル組成物。
  4. (C)カルシウムとして、カルシウムを含有する食品を使用することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のゲル組成物。
  5. さらに、油脂を1〜60質量%含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のゲル組成物。
  6. 金属イオン封鎖剤を含有しないことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のゲル組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載のゲル組成物からなる食感改良剤。
  8. 請求項7記載の食感改良剤を含有する食品生地。
  9. 請求項8記載の食品生地を調理した食品。
  10. 下記成分(A)を0.1〜10.0質量%、下記成分(B)を0.1〜10.0質量%、下記成分(C)を含有し、それらの含有量の比が質量基準で、0.001≦(C)/((A)+(B))≦0.1、且つ(A):(B)=99:1〜20:80であり、水分含量が20〜98質量%である混合液を、均質化することを特徴とするゲル組成物の製造方法。
    (A)高粘性アルギン酸及び/又は高粘性アルギン酸塩
    (B)低粘性アルギン酸、低粘性アルギン酸塩又はアルギン酸エステルのうちの1種
    又は2種以上
    (C)カルシウム

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