JP2007235165A - 多層プリント配線板 - Google Patents

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Abstract

【課題】配線の高密度化を容易に実現でき、しかも剥離やクラックの発生の抑制、充填材中の金属イオンの拡散防止、レーザ光による充填材の浸食防止を有利に実現できる多層プリント配線板を提供すること。
【解決手段】基板上に、層間樹脂絶縁層を介して導体回路が形成されてなり、該基板にはスルーホールが設けられ、そのスルーホールには充填材が充填された構造を有する多層プリント配線板において、前記層間樹脂絶縁層は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、および熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との複合体よりなる群から選択されるいずれか1種からなり、
前記スルーホールの直上には、充填材のスルーホールからの露出面を覆う導体層が形成されてなるとともに、前記スルーホールの内壁には、粗化層が形成されていることを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、多層プリント配線板に関し、特に、配線の高密度化が容易に実現でき、しかもヒートサイクルなどでスルーホール部分にクラック等が発生しない多層プリント配線板について提案する。
一般に、両面多層プリント配線板におけるコア基板には、表面と裏面を電気的に接続するためのスルーホールが形成される。ところが、このスルーホールがデッドスペースとなり、配線の高密度化が著しく阻害される。
これに対し従来、このデッドスペースを少なくするために、例えば、特許文献1には、スルーホールに樹脂を充填し、この樹脂の表面を粗化してその粗化面に実装パッドをめっきで形成する技術が開示されている。
また、特許文献2には、スルーホールに導電ペーストを充填し、スルーホールを覆う電着膜を溶解除去してランドレススルーホールを形成する技術が開示されている。
また、特許文献3には、貫通孔内に導電ペーストを充填し、銅めっきを施してペーストを覆うめっき膜を形成する技術が開示されている。
さらに、特許文献4には、スルーホールの内壁を含む基板表面全域に無電解めっきにより、例えば銅めっき膜を形成した後に、そのスルーホールに導電性材料(導電ペースト)を充填し、その導電性材料をスルーホールに封じるように銅めっき膜で被覆する技術が開示されている。
特開平9−8424号公報 特開平2−196494 特開平1−143292号公報 特開平4−92496 号公報
しかしながら、特許文献1に記載されているような両面多層プリント配線板では、スルーホールに充填された樹脂と実装パッドとの密着を確保するために、その樹脂表面を粗化処理しなければならず、また樹脂と金属では熱膨張率が異なるため、ヒートサイクルによって、スルーホール上の導体層が剥離したり、クラックが発生したりするという問題があった。
また、特許文献2に記載の技術では、層間樹脂絶縁層のスルーホール直上の位置にレーザ光でバイアホール用開口を形成しようとすると、その開口から導電ペーストが露出するため、導電ペースト中の樹脂成分まで浸食されるという問題があった。
また、特許文献3に記載されているようなプリント配線板では、導電ペーストが樹脂基板の貫通孔内壁に直接接触しているので、吸湿した場合に、金属イオンが壁面から基板内部に拡散しやすく、その金属イオンの拡散(マイグレーション)が原因となって、導体(スルーホール)間のショートを引き起こすという問題があった。
さらに、特許文献4に記載されているようなプリント配線板では、スルーホールの導体膜と導電材料との密着が悪いために、これらの間に空隙が存在しやすい。そのため、導電性材料とスルーホールの間に空隙が存在すると、高温多湿条件下において、空隙中の空気や水が起因して、スルーホール上の導体層が剥離したり、クラックが発生したりするという問題があった。
本発明は、従来技術が抱える上記課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、配線の高密度化を容易に実現でき、しかも剥離やクラックの発生の抑制、導電ペースト(充填材)中の金属イオンの拡散防止、レーザ光による導電ペースト(充填材)の浸食防止を有利に実現できる多層プリント配線板を提供することにある。本発明の他の目的は、このような多層プリント配線板を有利に製造できる方法を提案することにある。
発明者らは、上記目的の実現に向け鋭意研究した。その結果、発明者らが想到した発明の要旨構成は以下のとおりである。
基板上に、層間樹脂絶縁層を介して導体回路が形成されてなり、該基板にはスルーホールが設けられ、そのスルーホールには充填材が充填された構造を有する多層プリント配線板において、
前記層間樹脂絶縁層は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、および熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との複合体よりなる群から選択されるいずれか1種からなり、
前記スルーホールの直上には、充填材のスルーホールからの露出面を覆う導体層が形成されてなるとともに、前記スルーホールの内壁には、粗化層が形成されていることを特徴とする多層プリント配線板である。
なお、上記多層プリント配線板において、前記層間樹脂絶縁層のスルーホール直上に位置する部分には、バイアホールが形成されていることが好ましい。また、前記スルーホール直上の導体層には粗化層が形成されていることが好ましい。さらに、前記充填材は、金属粒子と、熱硬化性または熱可塑性の樹脂からなることが好ましい。
本発明によれば、配線の高密度化を容易に実現でき、しかも剥離やクラックの発生を抑制したり、充填材中の金属イオンの拡散を防止でき、さらに、スルーホールに充填した充填材上に導体層を形成することにより、レーザ光による充填材の浸食を防止できる、多層プリント配線板を提供することができる。
本発明の多層プリント配線板は、充填材が充填されたスルーホールの内壁導体表面に粗化層が形成され、さらに望ましくは、このスルーホールに充填された充填材上にはスルーホールからの露出面を覆う導体層が形成されている点に特徴がある。このような本発明の構成によれば、スルーホール直上にバイアホールを形成することができるので、デッドスペースを無くして配線の高密度化を容易に実現することができる。
本発明において、スルーホール内壁の導体表面に粗化層が形成されるのは、充填材とスルーホールとが粗化層を介して密着し隙間が発生しないからである。もし、充填材とスルーホールとの間に空隙が存在すると、その直上に電解めっきで形成される導体層は、平坦なものとならなかったり、空隙中の空気が熱膨張してクラックや剥離を引き起こしたりし、また一方で、空隙に水が溜まってマイグレーションやクラックの原因となったりする。この点、粗化層が形成されているとこのような不良発生を防止することができる。
また本発明において、スルーホールに充填された充填材上に導体層が形成されるのは、層間樹脂絶縁層中のスルーホール直上の位置にレーザ光でバイアホール用開口を形成する際に、前記導体層が、充填材中の樹脂成分まで浸食されるのを防止するからである。
本発明において、充填材のスルーホールからの露出面を覆う上記導体層の表面には、スルーホール内壁の導体表面に形成した粗化層と同様の粗化層が形成されていることが有利である。この理由は、粗化層により層間樹脂絶縁層やバイアホールとの密着性を改善することができるからである。特に、導体層の側面に粗化層が形成されていると、導体層側面と層間樹脂絶縁層との密着不足によってこれらの界面を起点として層間樹脂絶縁層に向けて発生するクラックを抑制することができる。
このような粗化層の厚さは、 0.1〜10μmがよい。この理由は、厚すぎると層間ショートの原因となり、薄すぎると被着体との密着力が低くなるからである。この粗化層としては、スルーホール内壁の導体あるいは導体層の表面を、酸化(黒化)−還元処理して形成したもの、有機酸と第二銅錯体の混合水溶液で処理して形成したもの、あるいは銅−ニッケル−リン針状合金のめっき処理にて形成したものがよい。
これらの処理のうち、酸化(黒化)−還元処理による方法では、NaOH(10g/l)、NaClO2(40g/l)、Na3PO4(6g/l)を酸化浴(黒化浴)、NaOH(10g/l)、NaBH4
(6g/l)を還元浴とする。
また、有機酸−第二銅錯体の混合水溶液を用いた処理では、スプレーやバブリングなどの酸素共存条件下で次のように作用し、導体回路である銅などの金属箔を溶解させる。
Cu+Cu(II)An→2Cu(I)An/2
2Cu(I)An/2+n/4O2+nAH(エアレーション)
→2Cu(II)An +n/2H2
Aは錯化剤(キレート剤として作用)、nは配位数である。
この処理で用いられる第二銅錯体は、アゾール類の第二銅錯体がよい。このアゾール類の第二銅錯体は、金属銅などを酸化するための酸化剤として作用する。アゾール類としては、ジアゾール、トリアゾール、テトラゾールがよい。なかでもイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾールなどがよい。
このアゾール類の第二銅錯体の含有量は、1〜15重量%がよい。この範囲内にあれば、溶解性および安定性に優れるからである。
また、有機酸は、酸化銅を溶解させるために配合させるものである。
具体例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、アクリル酸、クロトン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、安息香酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、スルファミン酸から選ばれるいずれか少なくとも1種がよい。
この有機酸の含有量は、0.1〜30重量%がよい。酸化された銅の溶解性を維持し、かつ溶解安定性を確保するためである。
なお、発生した第一銅錯体は、酸の作用で溶解し、酸素と結合して第二銅錯体となって、再び銅の酸化に寄与する。
この有機酸−第二銅錯体からなるエッチング液には、銅の溶解やアゾール類の酸化作用を補助するために、ハロゲンイオン、例えば、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオンなどを加えてもよい。このハロゲンイオンは、塩酸、塩化ナトリウムなどを添加して供給できる。
ハロゲンイオン量は、0.01〜20重量%がよい。この範囲内にあれば、形成された粗化層は層間樹脂絶縁層との密着性に優れるからである。
この有機酸−第二銅錯体からなるエッチング液は、アゾール類の第二銅錯体および有機酸(必要に応じてハロゲンイオン)を、水に溶解して調製する。
また、銅−ニッケル−リンからなる針状合金のめっき処理では、硫酸銅1〜40g/l、硫酸ニッケル0.1〜6.0g/l、クエン酸10〜20g/l、次亜リン酸塩10〜100g/l、ホウ酸10〜40g/l、界面活性剤0.01〜10g/lからなる液組成のめっき浴を用いることが望ましい。
本発明において、充填材は、金属粒子、熱硬化性の樹脂および硬化剤からなるか、あるいは金属粒子および熱可塑性の樹脂からなることが好ましく、必要に応じて溶剤を添加してもよい。このような充填材は、金属粒子が含まれていると、その表面を研磨することにより金属粒子が露出し、この露出した金属粒子を介してその上に形成されるめっき膜と一体化するため、PCT(pressure cooker test)のような過酷な高温多湿条件下でも導体層との界面で剥離が発生しにくくなる。また、この充填材は、壁面に金属膜が形成されたスルーホールに充填されるので、金属イオンのマイグレーションが発生しない。
金属粒子としては、銅、金、銀、アルミニウム、ニッケル、チタン、クロム、すず/鉛、パラジウム、プラチナなどが使用できる。なお、この金属粒子の粒子径は、0.1〜50μmがよい。この理由は、0.1μm未満であると、銅表面が酸化して樹脂に対する濡れ性が悪くなり、50μmを超えると、印刷性が悪くなるからである。また、この金属粒子の配合量は、全体量に対して30〜90wt%がよい。この理由は、30wt%より少ないと、スルーホールから露出する充填材を覆う導体層の密着性が悪くなり、90wt%を超えると、印刷性が悪化するからである。
使用される樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、ビスマレイミドトリアジン(BT)樹脂、FEP、PFA、PPS、PEN、PES、ナイロン、アラミド、PEEK、PEKK、PETなどが使用できる。
硬化剤としては、イミダゾール系、フェノール系、アミン系などの硬化剤が使用できる。
溶剤としては、NMP(ノルマルメチルピロリドン)、DMDG(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、グリセリン、水、1−又は2−又は3−のシクロヘキサノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール、ビスフェノールA型エポキシなどが使用できる。
特に、この充填材の最適組成としては、重量比で6:4〜9:1のCu粉とビスフェノールF型の無溶剤エポキシ(油化シェル製、商品名:E-807)の混合物と硬化剤の組合せ、あるいは重量比で8:2:3のCu粉とPPSとNMPの組合せが好ましい。
この充填材は、非導電性(比抵抗108Ω・cm以上)であることが望ましい。非導電性の方が硬化収縮が小さく、導体層やバイアホールとの剥離が起こりにくいからである。
本発明において、層間樹脂絶縁層としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、あるいは熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の複合体を用いることができる。
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、熱硬化性ポリフェニレンエーテル(PPE)などが使用できる。
熱可塑性樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスルフォン(PSF)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、熱可塑型ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンスルフォン(PPES)、4フッ化エチレン6フッ化プロピレン共重合体(FEP)、4フッ化エチレンパーフロロアルコキシ共重合体(PFA)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリオレフィン系樹脂などが使用できる。
熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の複合体としては、エポキシ樹脂−PES、エポキシ樹脂−PSF、エポキシ樹脂−PPS、エポキシ樹脂−PPESなどが使用できる。
本発明では、層間樹脂絶縁層としてガラスクロス含浸樹脂複合体を用いることができる。このガラスクロス含浸樹脂複合体としては、ガラスクロス含浸エポキシ、ガラスクロス含浸ビスマレイミドトリアジン、ガラスクロス含浸PTFE、ガラスクロス含浸PPE、ガラスクロス含浸ポリイミドなどがある。
また本発明において、層間樹脂絶縁層としては、無電解めっき用接着剤を用いることができる。
この無電解めっき用接着剤としては、硬化処理された酸あるいは酸化剤に可溶性の耐熱性樹脂粒子が、硬化処理によって酸あるいは酸化剤に難溶性となる未硬化の耐熱性樹脂中に分散されてなるものが最適である。この理由は、酸や酸化剤で処理することにより、耐熱性樹脂粒子が溶解除去されて、表面に蛸つぼ状のアンカーからなる粗化面が形成できるからである。
上記無電解めっき用接着剤において、特に硬化処理された前記耐熱性樹脂粒子としては、(i)平均粒径が10μm以下の耐熱性樹脂粉末、(ii)平均粒径が2μm以下の耐熱性樹脂粉末を凝集させた凝集粒子、(iii)平均粒径が2〜10μmの耐熱性樹脂粉末と平均粒径が2μm以下の耐熱性樹脂粉末との混合物、(iv)平均粒径が2〜10μmの耐熱性樹脂粉末の表面に平均粒径が2μm以下の耐熱性樹脂粉末または無機粉末のいずれか少なくとも1種を付着させてなる疑似粒子、(v)平均粒径が0.1〜0.8μmの耐熱性樹脂粉末と平均粒径が
0.8μmを超え2μm未満の耐熱性樹脂粉末との混合物、(vi)平均粒径が0.1〜1.0μmの耐熱性樹脂粉末、から選ばれるいずれか少なくとも1種を用いることが望ましい。これらは、より複雑なアンカーを形成できるからである。この無電解めっき用接着剤で使用される耐熱性樹脂は、前述の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の複合体を使用できる。
本発明において、基板上に形成された導体層(スルーホールに充填された充填材を覆うものを含む)と層間樹脂絶縁層上に形成された導体回路は、バイアホールで接続することができる。この場合、バイアホールは、めっき膜や充填材で充填してもよい。
以下、本発明の多層プリント配線板を製造する方法について一例を挙げて具体的に説明する。なお、以下に述べる方法は、セミアディティブ法による多層プリント配線板の製造方法に関するものであるが、本発明における多層プリント配線板の製造方法では、フルアディティブ法やマルチラミネーション法、ピンラミネーション法を採用することができる。
(1) スルーホールの形成
(i).まず、基板にドリルで貫通孔を明け、貫通孔の壁面および銅箔表面に無電解めっきを施してスルーホールを形成する。
基板としては、ガラスエポキシ基板やポリイミド基板、ビスマレイミド−トリアジン樹脂基板、フッ素樹脂基板などの樹脂基板、あるいはこれらの樹脂基板の銅張積層板、セラミック基板、金属基板などを用いることができる。特に、誘電率を考慮する場合は、両面銅張フッ素樹脂基板を用いることが好ましい。この基板は、片面が粗化された銅箔をポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂基板に熱圧着したものである。無電解めっきとしては銅めっきがよい。フッ素樹脂基板のようにめっきのつきまわりが悪い基板の場合は、有機金属ナトリウムからなる前処理剤(商品名:潤工社製:テトラエッチ)、プラズマ処理などの表面改質を行う。
(ii).次に、厚付けのために電解めっきを行う。この電解めっきとしては銅めっきがよい。
(iii).そしてさらに、スルーホール内壁および電解めっき膜表面を粗化処理して粗化層を設ける。この粗化層には、黒化(酸化)−還元処理によるもの、有機酸と第二銅錯体の混合水溶液をスプレー処理して形成したもの、あるいは銅−ニッケル−リン針状合金めっきによるものがある。
(2) 充填材の充填
(i).前記(1)で形成したスルーホールに充填材を充填する。具体的には、充填材は、スルーホール部分に開口を設けたマスクを載置した基板上に、印刷法にて塗布することによりスルーホールに充填され、充填後、乾燥、硬化させる。
この充填材には、金属粉と樹脂の密着力を上げるために、シランカップリング剤などの金属表面改質剤を添加してもよい。また、その他の添加剤として、アクリル系消泡剤やシリコン系消泡剤などの消泡剤、シリカやアルミナ、タルクなどの無機充填剤を添加してもよい。また、金属粒子の表面には、シランカップリング剤を付着させてもよい。
このような充填材は、例えば、以下の条件にて印刷される。即ち、テトロン製メッシュ版の印刷マスク版と45℃の角スキージを用い、Cuペースト粘度: 120Pa・s、スキージ速度:13mm/min、スキージ押込み量:1mmの条件で印刷する。
(ii).スルーホールからはみ出した充填材および基板の電解めっき膜表面の粗化層を研磨により除去して、基板表面を平坦化する。研磨は、ベルトサンダーやバフ研磨がよい。
(3)導体層の形成(なお、請求項1または6に記載の発明では、この工程を経ずに直接、工程(4)が実施される。)
(i).前記(2)で平坦化した基板の表面に触媒核を付与した後、無電解めっき、電解めっきを施し、さらにエッチングレジストを形成し、レジスト非形成部分をエッチングすることにより、導体回路部分および充填材を覆う導体層部分を形成する。そのエッチング液としては、硫酸−過酸化水素の水溶液、過硫酸アンモニウムや過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩水溶液、塩化第二鉄や塩化第二銅の水溶液がよい。
(ii).そして、エッチングレジストを剥離して、独立した導体回路および導体層とした後、その導体回路および導体層の表面に、粗化層を形成する。導体回路および充填材を覆う導体層の表面に粗化層を形成すると、その導体は、層間樹脂絶縁層との密着性に優れるので、導体回路および充填材を覆う導体層の側面と樹脂絶縁層との界面を起点とするクラックが発生しない。また一方で、充填材を覆う導体層は、電気的に接続されるバイアホールとの密着性が改善される。
この粗化層の形成方法は、前述したとおりであり、黒化(酸化)−還元処理、針状合金めっき、あるいはエッチングして形成する方法などがある。
さらに、粗化後に、基板表面の導体層に起因する凹凸を無くすため、導体回路間に樹脂を塗布して充填し、これを硬化し、表面を導体が露出するまで研磨して平坦化することが望ましい。
樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、イミダゾール硬化剤および無機粒子からなる樹脂を使用することが望ましい。ビスフェノール型エポキシ樹脂は、粘度が低く、塗布しやすいからである。特に、ビスフェノールF型エポキシ樹脂は、溶剤を使用しなくてもよいため、加熱硬化時に溶剤が揮発することに起因するクラックや剥離を防止でき、有利である。
そしてさらに、研磨後に導体層表面に粗化層を設けることが望ましい。
なお、導体層の形成方法として、以下の工程を採用することができる。
即ち、前記(1),(2)の工程を終えた基板にめっきレジストを形成し、次いで、レジスト非形成部分に電解めっきを施して導体回路および導体層部分を形成し、これらの導体上に、ホウフッ化スズ、ホウフッ化鉛、ホウフッ化水素酸、ペプトンからなる電解半田めっき液を用いて半田めっき膜を形成した後、めっきレジストを除去し、そのめっきレジスト下の無電解めっき膜および銅箔をエッチング除去して独立パターンを形成し、さらに、半田めっき膜をホウフッ酸水溶液で溶解除去して導体層を形成する。
(4)層間樹脂絶縁層および導体回路の形成
(i).このようにして作製した配線基板の上に、層間樹脂絶縁層を形成する。層間樹脂絶縁層としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、あるいは熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の複合体を使用できる。また、本発明では、層間樹脂絶縁材として前述した無電解めっき用接着剤を用いることができる。
層間樹脂絶縁層は、これらの樹脂の未硬化液を塗布したり、フィルム状の樹脂を熱圧着してラミネートすることにより形成される。
(ii).次に、この層間樹脂絶縁層に被覆される下層の導体回路との電気的接続を確保するために層間樹脂絶縁層に開口を設ける。
この開口の穿孔は、層間樹脂絶縁層が感光性樹脂からなる場合は、露光、現像処理にて行い、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂からなる場合は、レーザ光にて行う。このとき、使用されるレーザ光としては、炭酸ガスレーザ、紫外線レーザ、エキシマレーザなどがある。レーザ光にて孔明けした場合は、デスミア処理を行ってもよい。このデスミア処理は、クロム酸、過マンガン酸塩などの水溶液からなる酸化剤を使用して行うことができ、また酸素プラズマなどで処理してもよい。
(iii).開口を有する層間樹脂絶縁層を形成した後、必要に応じてその表面を粗化する。
上述した無電解めっき用接着剤を層間樹脂絶縁層として使用した場合は、表面を酸化剤で処理して耐熱性樹脂粒子のみを選択的に除去して粗化する。また、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を使用した場合でも、クロム酸、過マンガン酸塩などの水溶液から選ばれる酸化剤による表面粗化処理が有効である。なお、酸化剤では粗化されないフッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン等)などの樹脂の場合は、プラズマ処理やテトラエッチなどにより表面を粗化する。
(iv).次に、無電解めっき用の触媒核を付与する。
一般に触媒核は、パラジウム−スズコロイドであり、この溶液に基板を浸漬、乾燥、加熱処理して樹脂表面に触媒核を固定する。また、金属核をCVD、スパッタ、プラズマにより樹脂表面に打ち込んで触媒核とすることができる。この場合、樹脂表面に金属核が埋め込まれることになり、この金属核を中心にめっきが析出して導体回路が形成されるため、粗化しにくい樹脂やフッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン等)のように樹脂と導体回路との密着が悪い樹脂でも、密着性を確保できる。この金属核としては、パラジウム、銀、金、白金、チタン、銅およびニッケルから選ばれる少なくとも1種以上がよい。なお、金属核の量は、20μg/cm2以下がよい。この量を超えると金属核を除去しなければならないからである。
(v).次に、層間樹脂絶縁層の表面に無電解めっきを施し、全面に無電解めっき膜を形成する。無電解めっき膜の厚みは0.1〜5μm、より望ましくは0.5〜3μmである。
(vi).そして、無電解めっき膜上にめっきレジストを形成する。めっきレジストは、前述のように感光性ドライフィルムをラミネートして露光、現像処理して形成される。
(vii).さらに、電解めっきを行い、導体回路部分を厚付けする。電解めっき膜は、5〜30μmがよい。
(viii).そしてさらに、めっきレジストを剥離した後、そのめっきレジスト下の無電解めっき膜をエッチングにて溶解除去し、独立した導体回路(バイアホールを含む)を形成する。エッチング液としては、硫酸−過酸化水素の水溶液、過硫酸アンモニウムや過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩水溶液、塩化第二鉄や塩化第二銅の水溶液がよい。以下、実施例をもとに説明する。
(実施例1)
(1)厚さ0.8mmのポリテトラフルオロエチレン樹脂(以下、商品名:テフロンと略記する)基板1に、基板側の片面が粗化された18μmの銅箔2がラミネートされてなる銅張積層板(松下電工製のガラスフッ素樹脂基板、商品名:R4737)を出発材料とした(図1(a)
参照)。まず、この銅張積層板をドリル削孔し、内壁面を有機酸からなる改質剤(潤工社製、商品名:テトラエッチ)で処理して表面の濡れ性を改善した(図1(b)参照)。
次に、パラジウム−スズコロイドを付着させ、下記組成で無電解めっきを施して、基板全面に2μmの無電解めっき膜を形成した。
〔無電解めっき水溶液〕
EDTA 150g/l
硫酸銅 20g/l
HCHO 30ml/l
NaOH 40g/l
α、α’−ビピリジル 80mg/l
PEG 0.1g/l
〔無電解めっき条件〕
70℃の液温度で30分
さらに、以下の条件で電解銅めっきを施し、厚さ15μmの電解銅めっき膜を形成した(図1(c)参照)。
〔電解めっき水溶液〕
硫酸 180 g/l
硫酸銅 80 g/l
添加剤(アトテックジャパン製、商品名:カパラシドGL)
1 ml/l
〔電解めっき条件〕
電流密度 1A/dm2
時間 30分
温度 室温
(2)全面に無電解銅めっき膜と電解銅めっき膜からなる導体(スルーホール3を含む)を形成した基板を、水洗いし、乾燥した後、NaOH(10g/l)、NaClO2(40g/l)、Na3PO4(6g/l)を酸化浴(黒化浴)、NaOH(10g/l)、NaBH4(6g/l)を還元浴とする酸化還元処理に供し、そのスルーホール3を含む導体の全表面に粗化層4を設けた(図1(d)参照)。
(3)次に、平均粒径10μmの銅粒子を含む充填材5(タツタ電線製の非導電性穴埋め銅ペースト、商品名:DDペースト)を、スルーホール3にスクリーン印刷によって充填し、乾燥、硬化させた。そして、導体上面の粗化層4およびスルーホール3からはみ出した充填材5を、#600のベルト研磨紙(三共理化学製)を用いたベルトサンダー研磨により除去し、さらにこのベルトサンダー研磨による傷を取り除くためのバフ研磨を行い、基板表面を平坦化した(図1(e)参照)。
(4)前記(3)で平坦化した基板表面に、パラジウム触媒(アトテック製)を付与し、常法に従って無電解銅めっきを施すことにより、厚さ0.6μmの無電解銅めっき膜6を形成した(図1(f)参照)。
(5)ついで、以下の条件で電解銅めっきを施し、厚さ15μmの電解銅めっき膜7を形成し、導体回路9となる部分の厚付け、およびスルーホール3に充填された充填材5を覆う導体層10となる部分を形成した。
〔電解めっき水溶液〕
硫酸 180g/l
硫酸銅 80g/l
添加剤(アトテックジャパン製、商品名:カパラシドGL)
1ml/l
〔電解めっき条件〕
電流密度 1A/dm2
時間 30分
温度 室温
(6)導体回路9および導体層10となる部分を形成した基板の両面に、市販の感光性ドライフィルムを張り付け、マスク載置して、100mJ/cm2で露光、0.8%炭酸ナトリウムで現像処理し、厚さ15μmのエッチングレジスト8を形成した(図2(a)参照)。
(7)そして、エッチングレジスト8を形成してない部分のめっき膜を、硫酸と過酸化水素の混合液を用いるエッチングにて溶解除去し、さらに、エッチングレジスト8を5%KOHで剥離除去して、独立した導体回路9および充填材5を覆う導体層10を形成した(図2(b)参照)。
(8)次に、導体回路9および充填材5を覆う導体層10の表面にCu−Ni−P合金からなる厚さ2.5μmの粗化層(凹凸層)11を形成し、さらにこの粗化層11の表面に厚さ0.3μmのSn層を形成した(図2(c)参照、Sn層については図示しない)。
その形成方法は以下のようである。即ち、基板を酸性脱脂してソフトエッチングし、次いで、塩化パラジウムと有機酸からなる触媒溶液で処理して、Pd触媒を付与し、この触媒を活性化した後、硫酸銅8g/l、硫酸ニッケル 0.6g/l、クエン酸15g/l、次亜リン酸ナトリウム29g/l、ホウ酸31g/l、界面活性剤0.1g/l、pH=9からなる無電解めっき浴にてめっきを施し、導体回路7および充填材5を覆う導体層8の表面にCu−Ni−P合金の粗化層10を設けた。ついで、ホウフッ化スズ0.1mol/l、チオ尿素1.0mol/l、温度50℃、pH=1.2の条件でCu−Sn置換反応させ、粗化層10の表面に厚さ0.3μmのSn層を設けた(Sn層については図示しない)。
(9)基板の両面に、厚さ25μmのテフロンシート(デュポン製のFEPフィルム、商品名:テフロンRFEP)を温度200℃、圧力20kg/cm2で積層した後、290℃でアニーリングして層間樹脂絶縁層12を設けた(図2(d)参照)。
(10)波長10.6μmの紫外線レーザにて、テフロン樹脂絶縁層12に直径25μmのバイアホール用開口13を設けた(図2(e)参照)。さらに、テフロン樹脂絶縁層12の表面をプラズマ処理して粗化した。プラズマ処理条件は、500W,500mTorr,10分である。
(11)Pdをターゲットにしたスパッタリングを、気圧0.6Pa、温度100℃、電圧200W、時間1分間の条件で行い、Pd核をテフロン樹脂絶縁層12の表面に打ち込んだ。このとき、スパッタリングのための装置は、日本真空技術(株)製のSV−4540を使用した。
打ち込まれるPd量は、20μg/cm2以下とした。このPd量は、基板を6N塩酸水溶液に浸漬し、溶出した総Pd量を原子吸光法にて測定し、その総Pd量を露出面積で除して求めた。
(12)前記(11)の処理を終えた基板に対して前記(1)の無電解めっきを施し、厚さ0.7μmの無電解めっき膜14をテフロン樹脂絶縁層12の表面に形成した(図3(a)参照)。
(13)前記(12)で無電解めっき膜14を形成した基板の両面に、市販の感光性ドライフィルムを張り付け、フォトマスクフィルムを載置して、100mJ/cm2で露光、0.8%炭酸ナトリウムで現像処理し、厚さ15μmのめっきレジスト16を設けた(図3(b)参照)。
(14)さらに、前記(1)の電解めっきを施して、厚さ15μmの電解めっき膜15を形成し、導体回路9の部分の厚付け、およびバイアホール17の部分のめっき充填を行った(図3(c)参照)。
(15)そしてさらに、めっきレジスト16を5%KOHで剥離除去した後、そのめっきレジスト16下の無電解めっき膜14を硫酸と過酸化水素の混合液を用いるエッチングにて溶解除去し、無電解銅めっき膜14と電解銅めっき膜15からなる厚さ16μmの導体回路9(バイアホール17を含む)を形成して、多層プリント配線板を製造した(図3(d)参照)。
(実施例2)
スルーホールに銅ペーストを充填したが、その銅ペーストのスルーホールからの露出面を覆う導体層を設けなかったこと以外は、実施例1と同様にして多層プリント配線板を製造した。この方法では、レーザ光で樹脂絶縁層に開口を設ける際に、銅ペーストの表面まで除去されやすく、窪みが発生する場合があった。
(実施例3)
充填剤として下記の組成物を使用したこと以外は、実施例1と同様にして多層プリント配線板を製造した。
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(油化シェル製、E−807) 100重量部
イミダゾール硬化剤(四国化成製、2E4MZ-CN) 5重量部
粒子径15μm以下の銅粉(福田金属箔粉工業製、SCR-Cu-15) 735重量部
アエロジル(#200) 10重量部
消泡剤(サンノプコ製、ペレノールS4) 0.5重量部
(比較例1)
基板に貫通孔を設け、その貫通孔に直接銅ペーストを充填したこと以外は、実施例1と同様にして多層プリント配線板を製造した。
(比較例2)
スルーホールにエポキシ樹脂を充填し、そのスルーホールから露出したエポキシ樹脂表面をクロム酸で粗化した後に導体層で被覆したこと以外は、実施例1と同様にして多層プリント配線板を製造した。
(比較例3)
スルーホール内壁の導体表面に粗化層を設けなかったこと以外は、実施例1と同様にして多層プリント配線板を製造した。
このようにして製造した実施例および比較例の多層プリント配線板について、−55℃×15分、常温×10分、125℃×15分で1000回のヒートサイクル試験を実施した。
また、湿度100%、温度121℃、圧力2気圧の条件下で200時間のPCT試験(pressure
cooker test)を実施し、スルーホール間の銅マイグレーションの有無を観察した。
その結果、実施例の多層プリント配線板によれば、スルーホールの直上にバイアホールを形成できるので容易に高密度化を実現でき、しかもヒートサイクル試験やPCT試験によるクラックおよびマイグレーションは観察されなかった。これに対し、比較例1の多層プリント配線板では、テフロン基板中のガラスクロスに沿って銅の拡散(マイグレーション)が観察された。また、比較例2および3の多層プリント配線板では、スルーホール付近に被覆した導体層の剥離が観察された。
(a)〜(f) は、本発明にかかる多層プリント配線板の製造工程の一部を示す図である。 (a)〜(e) は、本発明にかかる多層プリント配線板の製造工程の一部を示す図である。 (a)〜(d) は、本発明にかかる多層プリント配線板の製造工程の一部を示す図である。
符号の説明
1 基板
2 銅箔
3 スルーホール
4,11 粗化層
5 充填材
6,14 無電解めっき膜
7,15 電解めっき膜
8 エッチングレジスト
9 導体回路
10 導体層
12 層間樹脂絶縁層(テフロン樹脂絶縁層)
13 バイアホール用開口
16 めっきレジスト
17 バイアホール

Claims (4)

  1. 基板上に、層間樹脂絶縁層を介して導体回路が形成されてなり、該基板にはスルーホールが設けられ、そのスルーホールには充填材が充填された構造を有する多層プリント配線板において、
    前記層間樹脂絶縁層は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、および熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との複合体よりなる群から選択されるいずれか1種からなり、
    前記スルーホールの直上には、充填材のスルーホールからの露出面を覆う導体層が形成されてなるとともに、前記スルーホールの内壁には、粗化層が形成されていることを特徴とする多層プリント配線板。
  2. 前記層間樹脂絶縁層の前記スルーホール直上に位置する部分には、バイアホールが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の多層プリント配線板。
  3. 前記スルーホール直上の導体層には、粗化層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の多層プリント配線板。
  4. 前記充填材は、金属粒子と、熱硬化性または熱可塑性の樹脂からなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の多層プリント配線板。
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