JP4480236B2 - 電解めっき液、その液を用いた多層プリント配線板の製造方法および多層プリント配線板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、多層プリント配線板の製造に用いる電解めっき液、該電解めっき液を用いた多層プリント配線板の製造方法、および、多層プリント配線板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
いわゆる多層ビルドアップ配線基板と呼ばれる多層プリント配線板は、セミアディティブ法等により製造されており、コアと呼ばれる0.5〜1.5mm程度のガラスクロス等で補強された樹脂基板の上に、銅等による導体回路と層間樹脂絶縁層とを交互に積層することにより作製される。この多層プリント配線板の層間樹脂絶縁層を介した導体回路間の接続は、バイアホールにより行われている。
【0003】
従来、ビルドアップ多層プリント配線板は、例えば、特開平9−130050号公報等に開示された方法により製造されている。
すなわち、まず、銅箔が貼り付けられた銅貼積層板に貫通孔を形成し、続いて無電解銅めっき処理を施すことによりスルーホールを形成する。続いて、基板の表面を導体パターン状にエッチング処理して導体回路を形成し、この導体回路の表面に、無電解めっきやエッチング等により粗化面を形成する。そして、この粗化面を有する導体回路上に樹脂絶縁層を形成した後、露光および現像処理等を行ってバイアホール用開口部を形成し、その後、UV硬化、本硬化を経て層間樹脂絶縁層を形成する。
【0004】
さらに、層間樹脂絶縁層に酸や酸化剤などにより粗化処理を施した後、薄い金属層を形成し、この金属層上にめっきレジストを形成した後、電解めっきにより厚付けを行い、めっきレジスト剥離後にエッチングを行って、下層の導体回路とバイアホールにより接続された導体回路を形成する。
この工程を繰り返した後、最後に導体回路を保護するためのソルダーレジスト層を形成し、ICチップ等の電子部品やマザーボード等との接続のために開口部を露出させた部分にめっき等を施した後、半田ペーストを印刷して半田バンプを形成することにより、ビルドアップ多層プリント配線板の製造を完了する。
【0005】
このようなビルドアップ多層プリント配線板の製造において、無電解めっきと電解メッキとを行うことにより下層の導体回路とバイアホールにより接続された導体回路を形成する場合、バイアホール用開口部は金属で完全に充填されておらず、図25に示すように、バイアホール周辺部には凹部が形成されていた。なお、図25は、従来の多層プリント配線板のバイアホールの断面を示す断面図である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来のビルドアップ多層プリント配線板では、導体回路上面、特にバイアホール周辺が平坦では無かったため、導体回路上面に層間樹脂絶縁層を形成した場合、該層間樹脂絶縁層にうねりが生じてしまい、層間樹脂絶縁層の剥離やクラックの原因となったり、層間樹脂絶縁層の上層に形成する導体回路に断線を引き起こす原因となることがあった。
【0007】
また、プリント配線板の高速化、ファイン化のため、配線距離を短縮するビルドアップ多層プリント配線板の構造として、スタックビア構造(バイアホールの直上にバイアホールを形成する構造、図1参照)が要求されている。しかしながら、上述したように従来の方法で製造されたビルドアップ多層プリント配線板は、バイアホール用開口部が金属で完全に充填されていないため、スタックビア構造をとることが難しかった。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題に鑑みて鋭意研究した結果、特定のレベリング剤と光沢剤とからなる添加剤を特定の割合で含む電解めっき液を用いることにより、バイアホール用開口部を完全に金属で充填することができ、同一層におけるバイアホールの上面と導体回路の上面とを略同一平面にすることができることを見いだし、以下に示す内容を要旨構成とする発明に到達した。
【0009】
即ち、本発明の電解めっき液は、導体回路が設けられた基板上に、樹脂絶縁層と導体回路とが順次積層された多層プリント配線板の製造に用いる電解めっき液であって、50〜300g/lの硫酸銅、30〜200g/lの硫酸、25〜90mg/lの塩素イオン、および、レベリング剤と光沢剤とからなる1〜1000mg/lの添加剤を含有しており、
上記レベリング剤の配合量と上記光沢剤の配合量との配合比率は、2:1〜10:1であり、
上記レベリング剤は、ポリエチレン、その誘導体、ゼラチンおよびその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種からなり、
上記光沢剤は、ビスジスルフィド及びスルホン酸アミドのうちの少なくとも1種からなることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の多層プリント配線板の製造方法は、少なくとも下記の工程(a)〜(e)、即ち、
(a)露光および現像処理、もしくは、レーザ処理を行うことによりバイアホール用開口部を有する樹脂絶縁層を形成する工程、
(b)樹脂絶縁層およびバイアホール用開口部の表面に、Cu、Ni、P、Pd、CoおよびWからなる群より選択される少なくとも1種からなる金属層を形成する工程、
(c)上記金属層上にめっきレジストを形成する工程、
(d)本発明の電解めっき液を用いて、上記めっきレジスト非形成部に電解めっき膜を形成する工程、
(e)上記めっきレジストを剥離した後、上記めっきレジストの下に存在する金属層をエッチングすることにより導体回路を形成する工程、
を含むことを特徴とする。
【0012】
上記本発明の多層プリント配線板の製造方法において、(b)の工程では、金属層は、スパッタリング、めっき、もしくは、スパッタリングおよびめっきを行うことにより形成することが望ましい。
また、上記樹脂絶縁層は、フッ素樹脂、ポリオレフィン系樹脂およびポリフェニレン系樹脂からなる群より選択される少なくとも一種であるか、または、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とを含む樹脂複合体であることが望ましい。
【0014】
また、本発明の多層プリント配線板は、導体回路が設けられた基板上に、樹脂絶縁層と導体回路とが順次積層され、上下に隣り合う導体回路がフィールドビアにより接続された多層プリント配線板であって、上記フィールドビアは、バイアホール用開口部に金属が充填されることにより構成されており、同一層における上記フィールドビアの上面と上記導体回路の上面との上記基板からの高さの差は1μm以下であり、かつ、上記フィールドビアの底面から上面までの距離が上記導体回路の厚さの2〜7倍であることを特徴とする。
【0015】
上記多層プリント配線板において、上記樹脂絶縁層は、1GHzにおける誘電率が3.0以下であることが望ましい。
また、上記多層プリント配線板は、本発明の多層プリント配線板の製造方法を用いて製造されることが望ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の電解めっき液について説明する。
本発明の電解めっき液は、導体回路が設けられた基板上に、樹脂絶縁層と導体回路とが順次積層された多層プリント配線板の製造に用いる電解めっき液であって、50〜300g/lの硫酸銅、30〜200g/lの硫酸、25〜90mg/lの塩素イオン、および、レベリング剤と光沢剤とからなる1〜1000mg/lの添加剤を含有しており、
上記レベリング剤の配合量と上記光沢剤の配合量との配合比率は、2:1〜10:1であり、
上記レベリング剤は、ポリエチレン、その誘導体、ゼラチンおよびその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種からなり、
上記光沢剤は、ビスジスルフィド及びスルホン酸アミドのうちの少なくとも1種からなることを特徴とする。
【0017】
本発明の電解めっき液によれば、該電解めっき液を用いて多層プリント配線板を製造することにより、バイアホール用開口部が金属で完全に充填され、同一層におけるバイアホールの上面と導体回路の上面とが略同一平面にあるバイアホール(以下、このようなバイアホールをフィールドビアともいう)を形成することができる。即ち、本発明の電解めっき液は、フィールドビア用電解めっき液に最適である。
【0018】
上記電解めっき液は、50〜300g/lの硫酸銅、30〜200g/lの硫酸、25〜90mg/lの塩素イオン、および、少なくともレベリング剤と光沢剤とからなる1〜1000mg/lの添加剤を含有する。
【0019】
上記電解めっき液において、硫酸銅の濃度が50g/l未満では、フィールドビアが形成できず、300g/lを超えると、めっき膜厚のバラツキが大きくなる。
また、硫酸の濃度が30g/l未満では、液抵抗が大きくなるため、めっき析出がされにくくなり、200g/lを超えると、硫酸銅が結晶になりやすい。
また、塩素イオンの濃度が25mg/l未満では、めっき膜の光沢が低下し、90mg/lを超えるとアノードが溶解しにくくなる。
【0020】
このような組成の電解めっき液を用いることにより、バイアホールの開口径、樹脂絶縁層の材質や厚さ、樹脂絶縁層の粗化面の有無等に関係なく、フィールドビアを形成することができる。
【0021】
また、多層プリント配線板を製造する際に、上記電解めっき液を用いると、該電解めっき液が銅イオンを高濃度で含有していることから、バイアホール用開口部に銅イオンを充分に供給し、バイアホール用開口部をめっき速度40〜100μm/時間でめっきすることができ、電解めっき工程の高速化を図ることもできる。
【0022】
また、上記電解めっき液は、硫酸を高濃度で含有しているため、めっき時の液抵抗を下げることができる。そのため、電流密度が高くなり、バイアホール用開口部でのめっき膜の成育も妨げられず、フィールドビア構造の形成に適している。
【0023】
上記電解めっき液の望ましい組成は、100〜250g/lの硫酸銅、50〜150g/lの硫酸、30〜70mg/lの塩素イオン、および、少なくともレベリング剤と光沢剤とからなる1〜600mg/lの添加剤を含有する組成である。
【0025】
上記レベリング剤としては、例えば、ポリエチレン、その誘導体、ゼラチンおよびその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種を用いることが望ましい。
【0026】
上記ポリエチレン誘導体としては特に限定されず、例えば、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンイミン、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールエステル、ポリエチレングリコールエーテル、ポリエチレンスルフィド、ポリエーテル等を挙げることができる。
これらのなかでは、ポリエチレングリコールまたはゼラチンを用いることが望ましい。汎用性が高く、樹脂絶縁層や金属膜への損傷がないからである。
【0027】
また、上記光沢剤としては、例えば、酸化物硫黄、その関連化合物、硫化水素、その関連化合物およびその他の硫黄化合物からなる群から選択される少なくとも1種を用いることが望ましい。
【0028】
上記酸化物硫黄およびその関連化合物としては特に限定されず、例えば、スルホン酸系化合物、スルホン系化合物、亜硫酸系化合物およびその他の酸化物硫黄化合物等が挙げられる。
【0029】
上記スルホン酸系化合物としては特に限定されず、例えば、スルホ安息香酸、スルホ安息香酸塩、スルホアントラキノン、スルホメタン、スルホエタン、スルホカルバミド、スルホ琥珀酸、スルホ琥珀酸エステル、スルホ酢酸、スルホサリチル酸、スルホシアヌル酸、スルホシアン、スルホシアン酸エステル、スルホニン、スルホビン酸、スルホフタル酸、スルホン酸アミド、スルホン酸イミド等、および、スルホカルボアニリド等のスルホカルボニル系化合物等を挙げることができる。
【0030】
上記スルホン系化合物としては特に限定されず、例えば、スルホナール、スルホニルジ酢酸、スルホニルジフェニルメタン、スルホキシル酸、スルホキシル酸塩、スルホンアミド、スルホンイミド等、および、スルホニルクロリド系化合物等を挙げることができる。
【0031】
上記亜硫酸系化合物としては特に限定されず、例えば、亜硫酸、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸ジエチル、亜硫酸ジメチル、亜硫酸水素ナトリウムおよび亜硫酸エステル化合物等を挙げることができる。
【0032】
上記その他の酸化物硫黄化合物としては特に限定されず、例えば、スルホキシド等を挙げることができる。
【0033】
上記硫化水素、その関連化合物としては特に限定されず、例えば、スルホニウム化合物、および、スルホニウム塩等を挙げることができる。
上記その他の硫黄化合物としては特に限定されず、例えば、ビスジスルフィド等を挙げることができる。
【0034】
本発明の電解めっき液は、さらに、上記光沢剤を含有することにより、多層プリント配線板を製造する際にバイアホール用開口部を金属で完全に充填することができ、上記レベリング剤を含有することにより、同一層におけるバイアホールの上面と導体回路の上面とを略同一平面に形成することができる。
【0035】
これは、上記光沢剤がバイアホール用開口部の低電流部分を活性化することにより、バイアホール用開口部へのめっき析出を加速させ、上記レベリング剤が導体回路表面に吸着することにより、導体回路表面でのめっきの析出を抑制するからである。
【0036】
上記レベリング剤の配合量は、1〜1000mg/lが望ましく、上記光沢剤の配合量は、0.1〜100mg/lが望ましい。また、両者の配合比率は、2:1〜10:1が望ましい。
【0037】
上記レベリング剤の配合量が少なすぎると、導体回路表面へのレベリング剤の吸着量が少なく、導体回路へのめっき析出が速くなる。一方、レベリング剤の配合量が多すぎると、バイアホール用開口部底部へのレベリング剤の吸着量が多く、バイアホール用開口部へのめっき析出が遅くなる。
【0038】
また、上記光沢剤の配合量が少なすぎると、バイアホール用開口部の底部の活性化ができなくなり、めっきによりバイアホール用開口部を金属で完全に充填することができない。一方、多すぎると、導体回路部分のめっきの析出が速くなり、導体回路上面とバイアホール上面に段差が生じてしまう。
【0039】
このような構成の電解めっき液を用いる電解めっき法としては特に限定されず、以下に示す電解めっき法等を用いることができる。
即ち、一般的な電解めっき法である直流電解めっき法(DCめっき法)や、カソード電流の供給および中断を交互に繰り返すことにより、電流を矩形波のパルス電流に制御する方法(PCめっき法)、カソード電流の供給とアノード電流の供給とを交互に反転させて繰り返すことにより、周期的逆転波を用いて電流を制御するパルス−リバース電気めっき法(PRめっき法)、カソード電流として高密度電流パルスと低密度電流パルスとを交互に印加する方法等を用いることができる。
これらのなかでは、多層プリント配線板を製造する際に、フィールドビアを形成するのに適しており、また、高価な電源装置や制御装置を必要としない点から直流電解めっき法が望ましい。
【0040】
次に、本発明の多層プリント配線板の製造方法について説明する。
本発明の多層プリント配線板の製造方法は、少なくとも下記の工程(a)〜(e)、即ち、
(a)露光および現像処理、もしくは、レーザ処理を行うことによりバイアホール用開口部を有する樹脂絶縁層を形成する工程、
(b)樹脂絶縁層およびバイアホール用開口部の表面に、Cu、Ni、P、Pd、CoおよびWからなる群より選択される少なくとも1種からなる金属層を形成する工程、
(c)上記金属層上にめっきレジストを形成する工程、
(d)本発明の電解めっき液を用いて、上記めっきレジスト非形成部に電解めっき膜を形成する工程、
(e)上記めっきレジストを剥離した後、上記めっきレジストの下に存在する金属層をエッチングすることにより導体回路を形成する工程、
を含むことを特徴とする。
【0041】
以下に、上記本発明の多層プリント配線板の製造方法について、工程順に説明する。
(1) 本発明のプリント配線板の製造方法においては、まず、絶縁性基板の表面に導体回路が形成された基板を作製する。
【0042】
絶縁性基板としては、樹脂基板が望ましく、具体的には、例えば、ガラスエポキシ基板、ポリイミド基板、ビスマレイミドトリアジン樹脂基板、フッ素樹脂基板、セラミック基板、銅貼積層板などが挙げられる。
本発明の多層プリント配線板の製造方法では、この絶縁性基板にドリル等で貫通孔を設け、該貫通孔の壁面および銅箔表面に無電解めっきを施して表面導電膜およびスルーホールを形成する。無電解めっきとしては銅めっきが好ましい。
【0043】
この無電解めっきの後、通常、スルーホール内壁および無電解めっき膜表面の粗化面形成処理を行う。粗化処理方法としては、例えば、黒化(酸化)−還元処理、有機酸と第二銅錯体の混合水溶液によるスプレー処理、Cu−Ni−P針状合金めっきによる処理などが挙げられる。
【0044】
(2) 次に、無電解めっきが施された基板上に導体回路形状のエッチングレジストを形成し、エッチングを行うことにより導体回路を形成する。次に、この導体回路が形成された基板表面に樹脂充填剤を塗布、乾燥させて半硬化状態とした後、研摩を行い、樹脂充填材の層を研削するとともに、導体回路の上部も研削し、基板の両主面を平坦化する。この後、樹脂充填材の層を完全硬化する。
なお、樹脂充填材の層を形成する際、導体回路非形成部分に開口が形成されたマスクを用い、エッチングにより凹部が形成された導体回路非形成部分のみを樹脂充填剤で充填し、その後、上記した研磨処理等を行ってもよい。
【0045】
(3) 次に、導体回路上に、必要により、粗化層または粗化面(以下、粗化層ともいう)を形成する。粗化処理方法としては、例えば、黒化(酸化)−還元処理、有機酸と第二銅錯体の混合水溶液によるスプレー処理、Cu−Ni−P合金めっきによる処理などが挙げられる。
【0046】
(4) ついで、形成された粗化層表面に、必要により、スズ、亜鉛、銅、ニッケル、コバルト、タリウム、鉛等からなる被覆層を無電解めっき、蒸着などにより形成する。上記被覆層を0.01〜2μmの範囲で析出させることにより、樹脂絶縁層から露出した導体回路を粗化液やエッチング液から保護し、内層パターンの変色、溶解を確実に防止することができるからである。
【0047】
(5) この後、粗化層が形成された導体回路上に、後工程を経て樹脂絶縁層となる未硬化の樹脂層を形成する。
上記樹脂絶縁層の材料としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の一部を感光化した樹脂またはこれらの複合樹脂を使用することができる。
上記未硬化の樹脂層は、未硬化の樹脂を塗布して形成してもよく、また、未硬化の樹脂フィルムを熱圧着して形成してもよい。さらに、未硬化の樹脂フィルムの片面に銅箔などの金属層が形成された樹脂フィルムを貼付してもよい。このような樹脂フィルムを使用する場合は、バイアホール形成部分の金属層をエッチングした後、レーザ光を照射して開口部を設ける。金属層が形成された樹脂フィルムとしては、樹脂付き銅箔などを使用することができる。
【0048】
これらの樹脂絶縁層の材料のなかでは、ポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレン系樹脂(PPE、PPO等)、フッ素系樹脂等が望ましい。低誘電率の樹脂絶縁層を形成するのに適しているからである。
上記ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、上記ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、これらの樹脂の共重合体等が挙げられ、上記フッ素系樹脂としては、例えば、エチル/テトラフルオロエチレン共重合樹脂(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)等が挙げられる。
【0049】
また、上記樹脂絶縁層の材料としては、上記熱可塑性樹脂と上記熱硬化性樹脂とを含む樹脂複合体も使用することができる。
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリスルフォン(PSF)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリフェニレンスルフォン(PPS)、ポリフェニレンサルファイド(PPES)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリエーテルイミド(PI)、フェノキシ樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。
これらのなかでは、ポリスルフォン(PSF)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PI)および/またはフェノキシ樹脂が望ましい。耐熱性、絶縁性に優れるとともに、高い靱性値を有するため、耐クラック性、形状保持性に優れる樹脂絶縁層を形成するのに特に適しているからである。
【0050】
上記熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。また、上記熱硬化性樹脂は、感光化した樹脂であってもよく、具体的には、例えば、メタクリル酸やアクリル酸等と熱硬化基とをアクリル化反応させたもの等が挙げられる。特に、エポキシ樹脂をアクリレート化したものが望ましい。これらのなかでは、1分子中に、2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂がより望ましい。
【0051】
上記エポキシ樹脂としては、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、トリグリシジルイソシアヌレート、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。それにより、耐熱性等に優れるものとなる。
【0052】
上記樹脂複合体における熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との混合割合は、熱硬化性樹脂/熱可塑性樹脂=95/5〜50/50が望ましい。耐熱性を損なうことなく、高い靱性値を確保することができるからである。
また、上記樹脂複合体は、感光性の付与された感光性樹脂であってもよい。感光性樹脂を用いる場合、露光・現像処理にてバイアホール用開口部を形成することができる。
【0053】
上記樹脂複合体の具体例としては、例えば、酸または酸化剤に可溶性の粒子(以下、可溶性粒子という)が酸または酸化剤に難溶性の樹脂(以下、難溶性樹脂という)中に分散した粗化面形成用樹脂組成物等が挙げられる。
なお、上記「難溶性」および「可溶性」という語は、同一の粗化液に同一時間浸漬した場合に、相対的に溶解速度の早いものを便宜上「可溶性」といい、相対的に溶解速度の遅いものを便宜上「難溶性」と呼ぶ。
【0054】
上記可溶性粒子としては、例えば、酸または酸化剤に可溶性の樹脂粒子(以下、可溶性樹脂粒子)、酸または酸化剤に可溶性の無機粒子(以下、可溶性無機粒子)、酸または酸化剤に可溶性の金属粒子(以下、可溶性金属粒子)等が挙げられる。これらの可溶性粒子は、単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0055】
上記可溶性粒子の形状は特に限定されず、球状、破砕状等が挙げられる。また、上記可溶性粒子の形状は、一様な形状であることが望ましい。均一な粗さの凹凸を有する粗化面を形成することができるからである。
【0056】
上記可溶性粒子の平均粒径としては、0.1〜10μmが望ましい。この粒径の範囲であれば、2種類以上の異なる粒径ものを含有してもよい。すなわち、平均粒径が0.1〜0.5μmの可溶性粒子と平均粒径が1〜3μmの可溶性粒子とのを含有する等である。これにより、より複雑な粗化面を形成することができ、導体回路との密着性にも優れる。なお、本明細書において、可溶性粒子の粒径とは、可溶性粒子の一番長い部分の長さである。
【0057】
上記可溶性樹脂粒子としては、酸あるいは酸化剤からなる溶液に浸漬した場合に、上記難溶性樹脂よりも溶解速度が速いものであれば特に限定されず、その具体例としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、アミノ樹脂(メラミン樹脂、尿素樹脂、グアナミン樹脂)等からなるものが挙げられ、これらの樹脂の一種からなるものであってもよいし、2種以上の樹脂の混合物からなるものであってもよい。
【0058】
これらの可溶性樹脂粒子としては、(a) 平均粒径が10μm以下の可溶性樹脂粉末、(b) 平均粒径が2μm以下の可溶性樹脂粉末を凝集させた凝集粒子、(c) 平均粒径が2〜10μmの可溶性樹脂粉末と平均粒径が2μm以下の可溶性樹脂粉末との混合物、(d) 平均粒径が2〜10μmの可溶性樹脂粉末の表面に平均粒径が2μm以下の可溶性樹脂粉末または無機粉末のいずれか少なくとも1種を付着させてなる疑似粒子、(e) 平均粒径が0.1〜0.8μmの可溶性樹脂粉末と平均粒径が0.8μmを超え、2μm未満の可溶性樹脂粉末との混合物、(f) 平均粒径が0.1〜1.0μmの可溶性樹脂粉末を用いることが望ましい。これらは、より複雑なアンカーを形成することができるからである。
【0059】
また、上記可溶性樹脂粒子としては、ゴムからなる樹脂粒子を用いることもできる。上記ゴムとしては、例えば、ポリブタジエンゴム、エポキシ変性、ウレタン変性、(メタ)アクリロニトリル変性等の各種変性ポリブタジエンゴム、カルボキシル基を含有した(メタ)アクリロニトリル・ブタジエンゴム等が挙げられる。これらのゴムを使用することにより、可溶性樹脂粒子が酸あるいは酸化剤に溶解しやすくなる。つまり、酸を用いて可溶性樹脂粒子を溶解する際には、強酸以外の酸でも溶解することができ、酸化剤を用いて可溶性樹脂粒子を溶解する際には、比較的酸化力の弱い過マンガン酸でも溶解することができる。また、クロム酸を用いた場合でも、低濃度で溶解することができる。そのため、酸や酸化剤が樹脂表面に残留することがなく、後述するように、粗化面形成後、塩化パラジウム等の触媒を付与する際に、触媒が付与されなかったり、触媒が酸化されたりすることがない。
【0060】
上記可溶性無機粒子としては、例えば、アルミニウム化合物、カルシウム化合物、カリウム化合物、マグネシウム化合物およびケイ素化合物からなる群より選択される少なくとも一種からなる粒子等が挙げられる。
【0061】
上記アルミニウム化合物としては、例えば、アルミナ、水酸化アルミニウム等が挙げられ、上記カルシウム化合物としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム等が挙げられ、上記カリウム化合物としては、例えば、炭酸カリウム等が挙げられ、上記マグネシウム化合物としては、例えば、マグネシア、ドロマイト、塩基性炭酸マグネシウム等が挙げられ、上記ケイ素化合物としては、例えば、シリカ、ゼオライト等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0062】
上記可溶性金属粒子としては、例えば、銅、ニッケル、鉄、亜鉛、鉛、金、銀、アルミニウム、マグネシウム、カルシウムおよびケイ素からなる群より選択される少なくとも一種からなる粒子等が挙げられる。また、これらの可溶性金属粒子は、絶縁性を確保するために、表層が樹脂等により被覆されていてもよい。
【0063】
上記可溶性粒子を、2種以上混合して用いる場合、混合する2種の可溶性粒子の組み合わせとしては、樹脂粒子と無機粒子との組み合わせが望ましい。両者とも導電性が低くいため上下の導体回路間の絶縁性を確保することができるとともに、難溶性樹脂との間で熱膨張の調整が図りやすく、樹脂絶縁層にクラックが発生せず、樹脂絶縁層と導体回路との間で剥離が発生しないからである。
【0064】
上記難溶性樹脂としては、樹脂絶縁層に酸または酸化剤を用いて粗化面を形成する際に、粗化面の形状を保持できるものであればよく、上記熱可塑性樹脂と上記熱硬化性樹脂との混合物を用いることができる。
【0065】
上記樹脂複合体として、粗化面形成用樹脂組成物を用いる場合、上記可溶性粒子は、上記難溶性樹脂中にほぼ均一に分散されていることが望ましい。均一な粗さの凹凸を有する粗化面を形成することができ、バイアホールを含む導体回路との密着性を確保することができるからである。
また、粗化面を形成する表層部だけに可溶性粒子を含有するフィルムを用いてもよい。この場合、フィルムの表層部以外は、酸または酸化剤にさらされることがないため、樹脂絶縁層を介した導体回路間の絶縁性が確実に保たれる。
【0066】
上記可溶性粒子の混合重量比は、難溶性樹脂の固形分に対して5〜50重量%が望ましく、10〜40重量%がさらに望ましい。
可溶性粒子の混合重量比が5重量%未満では、充分な粗さの粗化面を形成することができない場合があり、50重量%を超えると、酸または酸化剤を用いて可溶性粒子を溶解して粗化面を形成する際に、樹脂絶縁層の深部まで溶解してしまい、樹脂絶縁層を介した上下の導体回路間の絶縁性を確保することができず、短絡の原因となる場合がある。
【0067】
上記粗化面形成用樹脂組成物は、上記熱可塑性樹脂および上記熱硬化性樹脂以外に、硬化剤、その他の成分等を含有していることが望ましい。
上記硬化剤としては、例えば、イミダゾール系硬化剤、アミン系硬化剤、グアニジン系硬化剤、これらの硬化剤のエポキシアダクトやこれらの硬化剤をマイクロカプセル化したもの、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスフォニウム・テトラフェニルボレート等の有機ホスフィン系化合物等が挙げられる。
【0068】
上記硬化剤の含有量は、粗化面形成用樹脂組成物に対して、0.05〜10重量%であることが望ましい。0.05重量%未満では、樹脂絶縁層を形成する際に、樹脂複合体が充分に硬化せず、酸や酸化剤を用いて樹脂絶縁層表面に粗化面を形成し、酸等が樹脂フィルムに侵入する度合いが大きくなり、樹脂絶縁層の絶縁性が損なわれることがある。一方、10重量%を超えると過剰な硬化剤成分が樹脂の組成を変成させることがあり、信頼性の低下を招いてしまうことがある。
【0069】
上記その他の成分としては、例えば、粗化面の形成に影響しない無機化合物や樹脂等のフィラーが挙げられる。
上記無機化合物としては、例えば、シリカ、アルミナ、ドロマイト等が挙げられ、上記樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレン樹脂、メラニン樹脂、オレフィン系樹脂等が挙げられる。これらのフィラーを含有させることにより、熱膨張係数の整合や耐熱性、耐薬品性の向上等を図り、多層プリント配線板の性能をより向上させることができる。
【0070】
また、上記粗化面形成用樹脂組成物は、溶剤を含有していてもよい。上記溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテートやトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0071】
上述した樹脂複合体を用いて樹脂絶縁層を形成することにより、この樹脂絶縁層に容易に粗化面を形成することができ、また、この粗化面が形成された樹脂絶縁層の上に、本発明の電解めっき液を用いてめっき層を形成した際、このめっき層には余り大きな応力が発生せず、該応力が緩和されているため、樹脂絶縁層にクラックや剥離が発生することがない。特に、フィールドビア周縁部において好適な効果が得られる。
【0072】
(6) 次に、露光および現像処理、もしくは、レーザ処理を行うことによりバイアホール用開口部を有する樹脂絶縁層を形成する。
バイアホール用開口部の形成は、樹脂複合体の樹脂マトリックスが熱硬化性樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シクロオレフィン系樹脂等の場合は、レーザ光や酸素プラズマ等を用いて行い、感光性樹脂である場合には、露光現像処理にて行うかまたはレーザ処理により行う。上記露光現像処理は、未硬化の感光性樹脂層を硬化する前に行う。また、上記レーザ処理は、熱硬化や光硬化の前後を問わず行うことができる。
また、露光現像処理は、バイアホール用開口部形成のための円パターンが描画されたフォトマスク(ガラス基板がよい)を、円パターン側を感光性の樹脂絶縁層の上に密着させて載置した後、露光し、現像処理液に浸漬するか、現像処理液をスプレーすることにより行う。
充分な凹凸形状の粗化面を有する導体回路上に形成された未硬化の樹脂層を硬化させることにより、導体回路との密着性に優れた樹脂絶縁層を形成することができる。
【0073】
上記レーザ光を用いて、バイアホール用開口部を設ける場合、使用するレーザ光としては、例えば、炭酸ガス(CO2 )レーザ、紫外線レーザ、エキシマレーザ、YAGレーザ等が挙げられる。これらのなかでは、エキシマレーザや短パルスの炭酸ガスレーザが好ましい。
【0074】
エキシマレーザは、後述するように、バイアホール用開口部を形成する部分に貫通光が形成されたマスク等を用いることにより、一度に多数のバイアホール用開口部を形成することができ、また、短パルスの炭酸ガスレーザは、開口部内の樹脂残りが少なく、開口部周縁の樹脂に対するダメージが小さいからである。
【0075】
また、エキシマレーザのなかでも、ホログラム方式のエキシマレーザを用いることが望ましい。ホログラム方式とは、レーザ光をホログラム、集光レンズ、レーザマスク、転写レンズ等を介して目的物に照射する方式であり、この方式を用いることにより、一度の照射で多数の開口部を効率的に形成することができる。
【0076】
また、炭酸ガスレーザを用いる場合、そのパルス間隔は、10-4〜10-8秒であることが望ましい。また、開口部を形成するためのレーザを照射する時間は、10〜500μ秒であることが望ましい。
エキシマレーザを用いる場合、バイアホール用開孔を形成する部分に貫通孔が形成されたマスクの貫通孔は、レーザ光のスポット形状を真円にするために、真円である必要があり、上記貫通孔の径は、0.1〜2mm程度が望ましい。
【0077】
レーザ光にて開口部を形成した場合、特に炭酸ガスレーザを用いた場合には、デスミア処理を行うことが望ましい。上記デスミア処理は、クロム酸、過マンガン酸塩等の水溶液からなる酸化剤を使用して行うことができる。また、酸素プラズマ、CF4 と酸素の混合プラズマやコロナ放電等で処理してもよい。また、低圧水銀ランプを用いて紫外線を照射することにより、表面改質することもできる。
【0078】
(7) 次に、必要に応じてバイアホール用開口部を設けた樹脂絶縁層の表面を粗化する。上記粗化は、例えば、樹脂絶縁層の材料として粗化面形成用樹脂組成物を用いた場合、樹脂絶縁層の表面に存在する可溶性樹脂粒子を酸または酸化剤で溶解除去することにより行う。
酸処理等により形成する粗化面の高さは、Rmax=0.01〜20μmが望ましい。導体回路との密着性を確保するためである。特にセミアディティブ法では、0.1〜5μmが望ましい。密着性を確保しつつ、金属層を除去することができるからである。
【0079】
上記酸処理を行う際には、リン酸、塩酸、硫酸、または、蟻酸や酢酸などの有機酸を用いることができ、特に有機酸を用いるのが望ましい。粗化形成処理した場合に、バイアホールから露出する金属導体層を腐食させにくいからである。
上記酸化処理は、クロム酸、過マンガン酸塩(過マンガン酸カリウム等)を用いることが望ましい。
【0080】
(8) 次に、樹脂絶縁層およびバイアホール用開口部の表面にCu、Ni、P、Pd、CoおよびWからなる群より選択される少なく一種からなる薄付けの金属層を形成する。
この金属層の厚さは、0.1〜5μmが望ましく、0.5〜2μmがより望ましい。上記金属層は、スパッタリング、めっき、もしくは、スパッタリングおよびめっきを行うことにより形成することが望ましい。
【0081】
(9) 次いで、上記(8) で形成した金属層上にめっきレジストを形成する。
上記めっきレジストとしては、市販の感光性ドライフィルムや液状レジストを使用することができる。
また、上記めっきレジストは、感光性ドライフィルムを貼り付けたり、液状レジストを塗布した後、紫外線露光処理を行い、アルカリ水溶液で現像処理することにより形成することができる。
【0082】
(10)次いで、本発明の電解めっき液を用いて、(9) で形成しためっきレジスト非形成部に電解めっき膜を形成する。これは、上記電解めっき液に上記金属層およびめっきレジストを形成した基板を浸漬することにより行う。また、上記電解めっき液に含有されるレベリング剤としては、ポリエチレン、その誘導体、ゼラチンおよびその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を用いることが望ましく、また、上記電解めっき液に含有される光沢剤としては、酸化物硫黄、その関連化合物、硫化水素、その関連化合物およびその他の硫黄化合物からなる群から選択される少なくとも1種を用いることが望ましい。
電解めっきとしては、電解銅めっきが望ましく、その厚さは、バイアホール以外の導体回路部分では、3〜25μmが望ましい。厚さが3μm未満では、同一層におけるバイアホールの上面と導体回路上面とが略同一平面にならないことがあり、25μmを超える厚さの導体回路を形成しようとすると、めっきレジストの厚さが厚くなり、めっきレジスト非形成部に電解めっき液が入りこみにくくなることがある。より望ましくは、5〜15μmである。また、形成されたバイアホールの底面から上面までの距離が、上記導体回路部分の厚さの2〜7倍であることが望ましい。
上記電解めっきの方法としては特に限定されないが、上述したように、直流電解めっき法を用いることが望ましい。
【0083】
(11)次いで、上記めっきレジストを強アルカリ水溶液等で剥離した後、その下に存在する金属層をエッチングすることにより、上層導体回路およびバイアホールを独立パターンとする。
上記エッチングは、硫酸/過酸化水素水溶液、塩化第二鉄、塩化第二銅、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩の水溶液等をエッチング液として用いた化学エッチング、イオンビームエッチング等による物理エッチング等が使用される。
なお、非導体回路部分に露出したパラジウム触媒核は、クロム酸、硫酸、過酸化水素等により溶解除去する。
【0084】
(12)必要により、(3) 〜(11)の工程を繰り返し、最上層の導体回路に上記(3) の工程と同様の条件で無電解めっきやエッチング等を施し、最上層の導体回路上に粗化層または粗化面を形成する。
【0085】
次に、最上層の導体回路を含む基板面にソルダーレジスト層を形成する。上記ソルダーレジスト層としては、例えば、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、熱可塑性エラストマー、ソルダーレジスト樹脂組成物等からなるものが挙げられる。
上記ソルダーレジスト層は、未硬化の樹脂(樹脂組成物)をロールコータ法等により塗布し、上述した開口処理、硬化処理等を行うことにより形成する。
【0086】
上記ソルダーレジスト樹脂組成物としては、例えば、ノボラック型エポキシ樹脂の(メタ)アクリレート、イミダゾール硬化剤、2官能性(メタ)アクリル酸エステルモノマー、分子量500〜5000程度の(メタ)アクリル酸エステルの重合体、ビスフェノール型エステル樹脂等からなる熱硬化性樹脂、多価アクリル系モノマー等の感光性モノマー、グリコールエーテル系溶剤等を含むペースト状の流動体等が挙げられ、その粘度は25℃で1〜10Pa・sに調整されていることが望ましい。
【0087】
上記ノボラック型エポキシ樹脂の(メタ)アクリレートとしては、例えば、フェノールノボラックやクレゾールノボラックのグリシジルエーテルをアクリル酸やメタクリル酸等と反応させたエポキシ樹脂等が挙げられる。
また、上記2官能性(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては特に限定されず、例えば、各種ジオール類やアクリル酸やメタクリル酸のエステル等が挙げられる。
【0088】
そしてこの後、上記ソルダーレジスト層の開口部分に半田バンプを形成することにより本発明の多層プリント配線板の製造を終了する。
なお、製品認識文字などを形成するための文字印刷工程やソルダーレジスト層の改質のために、酸素や四塩化炭素などのプラズマ処理を適時行ってもよい。
【0089】
図1は、本発明の多層プリント配線板の一断面を示す断面図であるが、このような本発明の多層プリント配線板の製造方法によれば、図1に示すようにバイアホール用開口部が金属で完全に充填され、同一層におけるバイアホール7の上面と導体回路4、5の上面とが略同一平面にあるプリント配線板を製造することができ、さらには、スタックビア構造を有するプリント配線板を製造することができる。なお、上記スタックビア構造とは、バイアホール7の直上に、上層のバイアホール7が設けられた構造のことである。
【0090】
上記多層プリント配線板は、上述の方法とは別の製造方法によっても製造することができる。
この他の多層プリント配線板の製造方法は、少なくとも下記の工程(a)〜(d)、即ち、
(a)露光および現像処理、もしくは、レーザ処理を行うことによりバイアホール用開口部を有する樹脂絶縁層を形成する工程、
(b)樹脂絶縁層およびバイアホール用開口部の表面に、Cu、Ni、P、Pd、CoおよびWからなる群より選択される少なくとも1種からなる金属層を形成する工程、
(c)本発明の電解めっき液を用いて、上記金属層上に電解めっき膜を形成する工程、
(d)上記電解めっき膜上にエッチングレジストを形成した後、エッチングを行うことにより導体回路を形成する工程を含む。
【0091】
以下に、上記他の多層プリント配線板の製造方法(以下、他の製造方法ともいう)について、工程順に説明する。
なお、上記他の多層プリント配線板の製造方法は、上記(c)および(d)の工程が、本発明の多層プリント配線板の製造方法と異なるのみであり、上記(c)および(d)以外の工程は、本発明の多層プリント配線板の製造方法と同様の方法を用いて行うことができる。従って、ここでは、上記別の製造方法の(c)および(d)の工程について、主に説明することにする。
【0092】
(1) まず、本発明の多層プリント配線板の製造方法の(1) 〜(8) の工程と同様にして、上記絶縁層およびバイアホール用開口部に薄付けの金属層を形成する。
【0093】
(2) 次いで、本発明の電解めっき液を用いて、(1) で形成した金属層上に電解めっき膜を形成する。これは、上記電解めっき液に上記金属層を形成した基板を浸漬することにより行う。また、上記電解めっき液に含有されるレベリング剤として、ポリエチレン、その誘導体、ゼラチンおよびその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を用いることが望ましく、また、上記電解めっき液に含有される光沢剤として、酸化物硫黄、その関連化合物、硫化水素、その関連化合物およびその他の硫黄化合物からなる群から選択される少なくとも1種を用いることが望ましい。
電解めっきとしては、電解銅めっきが望ましく、その厚さは、バイアホール以外の導体回路部分では、3〜25μmが望ましい。厚さが3μm未満では、同一層におけるバイアホールの上面と導体回路上面とが略同一平面にならなかったり、エッチング時に導体回路の断線が発生することがあり、25μmを超えるとエッチングにより、電解めっき層や金属層が完全に除去されない場合がある。より望ましくは、5〜15μmである。また、形成されたバイアホールの底面から上面までの距離が、上記導体回路部分の厚さの2〜7倍であることが望ましい。
上記電解めっきの方法としては特に限定されないが、上述したように、直流電解めっき法を用いることが望ましい。
【0094】
(3) さらに、この電解めっき膜上にエッチングレジストを形成した後、エッチングを行うことにより導体回路を形成する。
上記エッチングレジストとしては、市販の感光性ドライフィルムや液状レジストを使用することができる。
そして、感光性ドライフィルムを貼り付けたり、液状レジストを塗布した後、紫外線露光処理を行い、アルカリ水溶液で現像処理する。
【0095】
(4) 次いで、非導体回路形成部の金属層および電解めっき層をエッチングすることにより除去した後、エッチングレジストを強アルカリ水溶液で剥離することにより、上層導体回路およびバイアホールを独立パターンとする。
上記エッチングは、硫酸/過酸化水素水溶液、塩化第二鉄、塩化第二銅、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩の水溶液等をエッチング液として用いた化学エッチング、イオンビームエッチング等による物理エッチング等が使用される。
なお、非導体回路部分に露出したパラジウム触媒核は、クロム酸、硫酸、過酸化水素等により溶解除去する。
【0096】
(5) さらに、必要により、本発明の多層プリント配線板の製造方法と同様、導体回路表面に粗化層を形成する工程から、導体回路を形成する工程(上記(4) の工程)までを繰り返し、その後、最上層の導体回路上に粗化層または粗化面を形成する。
【0097】
次に、本発明の多層プリント配線板の製造方法と同様にして、ソルダーレジスト層を形成し、このソルダーレジスト層の開口部分に半田バンプを形成することにより、他の製造方法に係る多層プリント配線板の製造を終了する。
【0098】
次に、本発明の多層プリント配線板について説明する。
本発明の多層プリント配線板は、導体回路が設けられた基板上に、樹脂絶縁層と導体回路とが順次積層され、上下に隣り合う導体回路がフィールドビアにより接続された多層プリント配線板であって、上記フィールドビアは、バイアホール用開口部に金属が充填されることにより構成されており、同一層における上記フィールドビアの上面と上記導体回路の上面との上記基板からの高さの差は1μm以下であり、かつ、上記フィールドビアの底面から上面までの距離が上記導体回路の厚さの2〜7倍であることを特徴とする。
なお、以下の説明では、フィールドビアのことを、単にバイアホールともいう。
【0099】
本発明の多層プリント配線板によれば、バイアホール用開口部に金属が完全に充填され、同一層における上記バイアホールの上面と前記導体回路の上面とが略同一平面にあるため、バイアホールを含む導体回路と樹脂絶縁層との間で剥離やクラックが発生したり、該導体回路の上層の導体回路が断線したりすることがない。また、上記多層プリント配線板は、プリント配線板の高速化およびファイン化を達成するために配線距離を短縮したスタックビア構造をとることもできる。
【0100】
本発明の多層プリント配線板としては、例えば、図1に示すような構成のものを挙げることができる。
本発明の多層プリント配線板においては、バイアホールの底面から上面までの距離が、導体回路の厚さの2〜7倍である。
バイアホールの底面から上面までの距離が、導体回路の厚さの7倍を超えるものは、バイアホール用開口部を金属で完全に充填しにくいため、同一層におけるバイアホールの上面と導体回路の上面とが略同一平面にならないことがあり、スタックビア構造を形成しにくい。一方、バイアホール用開口部の深さが浅いほどフィールドビア構造を形成し易いが、バイアホールの底面から上面までの距離が、導体回路の厚さの2倍未満のものは、バイアホールの上面が導体回路の上面より高くなったり、エッチングを行った場合に、導体回路で断線が発生することがある。
【0101】
上記多層プリント配線板の樹脂絶縁層は、1GHzにおける誘電率が3.0以下であることが望ましい。
誘電率が3.0以下の樹脂絶縁層を用いることにより、1GHz以上の高周波帯域で使用した際にも電子信号に関する遅延やエラーを防止することができる。
上記樹脂絶縁層に用いる樹脂としては、本発明の多層プリント配線板の製造方法で用いる樹脂と同様の樹脂が挙げられる。
【0102】
このような本発明の多層プリント配線板は、本発明の多層プリント配線板の製造方法を用いて製造することが望ましい。
【0103】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
(実施例1)
A.樹脂複合体の調製(上層用接着剤)
(i) クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製、分子量:2500)の25%アクリル化物を80重量%の濃度でジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)に溶解させた樹脂液35重量部、感光性モノマー(東亜合成社製、アロニックスM315)3.15重量部、消泡剤(サンノプコ社製 S−65)0.5重量部およびN−メチルピロリドン(NMP)3.6重量部を容器にとり、攪拌混合することにより混合組成物を調製した。
【0104】
(ii)ポリエーテルスルフォン(PES)12重量部、エポキシ樹脂粒子(三洋化成社製、ポリマーポール)の平均粒径1.0μmのもの7.2重量部および平均粒径0.5μmのもの3.09重量部を別の容器にとり、攪拌混合した後、さらにNMP30重量部を添加し、ビーズミルで攪拌混合し、別の混合組成物を調製した。
【0105】
(iii) イミダゾール硬化剤(四国化成社製、2E4MZ−CN)2重量部、光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、イルガキュアー I−907)2重量部、光増感剤(日本化薬社製、DETX−S)0.2重量部およびNMP1.5重量部をさらに別の容器にとり、攪拌混合することにより混合組成物を調製した。
そして、(i) 、(ii)および(iii) で調製した混合組成物を混合することにより樹脂複合体を得た。
【0106】
B.樹脂複合体の調製(下層用接着剤)
(i) クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製、分子量:2500)の25%アクリル化物を80重量%の濃度でジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)に溶解させた樹脂液35重量部、感光性モノマー(東亜合成社製、アロニックスM315)4重量部、消泡剤(サンノプコ社製 S−65)0.5重量部およびN−メチルピロリドン(NMP)3.6重量部を容器にとり、攪拌混合することにより混合組成物を調製した。
【0107】
(ii)ポリエーテルスルフォン(PES)12重量部、および、エポキシ樹脂粒子(三洋化成社製、ポリマーポール)の平均粒径0.5μmのもの14.49重量部を別の容器にとり、攪拌混合した後、さらにNMP30重量部を添加し、ビーズミルで攪拌混合し、別の混合組成物を調製した。
【0108】
(iii) イミダゾール硬化剤(四国化成社製、2E4MZ−CN)2重量部、光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、イルガキュアー I−907)2重量部、光増感剤(日本化薬社製、DETX−S)0.2重量部およびNMP1.5重量部をさらに別の容器にとり、攪拌混合することにより混合組成物を調製した。
そして、(i) 、(ii)および(iii) で調製した混合組成物を混合することにより樹脂複合体を得た。
【0109】
C.樹脂充填材の調製
(i) ビスフェノールF型エポキシモノマー(油化シェル社製、分子量:310、YL983U)100重量部、表面にシランカップリング剤がコーティングされた平均粒径が1.6μmで、最大粒子の直径が15μm以下のSiO2 球状粒子(アドマテックス社製、CRS 1101−CE)170重量部およびレベリング剤(サンノプコ社製 ペレノールS4)1.5重量部を容器にとり、攪拌混合することにより、その粘度が23±1℃で40〜50Pa・sの樹脂充填材を調製した。
なお、硬化剤として、イミダゾール硬化剤(四国化成社製、2E4MZ−CN)6.5重量部を用いた。
【0110】
D.プリント配線板の製造方法
(1) 厚さ1mmのガラスエポキシ樹脂またはBT(ビスマレイミドトリアジン)樹脂からなる基板1の両面に18μmの銅箔8がラミネートされている銅貼積層板を出発材料とした(図2(a)参照)。まず、この銅貼積層板をドリル削孔し、無電解めっき処理を施し、パターン状にエッチングすることにより、基板1の両面に下層導体回路4とスルーホール9を形成した。
【0111】
(2) スルーホール9および下層導体回路4を形成した基板を水洗いし、乾燥した後、NaOH(10g/l)、NaClO2 (40g/l)、Na3 PO4 (6g/l)を含む水溶液を黒化浴(酸化浴)とする黒化処理、および、NaOH(10g/l)、NaBH4 (6g/l)を含む水溶液を還元浴とする還元処理を行い、そのスルーホール9を含む下層導体回路4の全表面に粗化面4a、9aを形成した(図2(b)参照)。
【0112】
(3) 上記Cに記載した樹脂充填材を調製した後、下記の方法により調製後24時間以内にスルホール9内、および、基板1の片面の導体回路非成形部と導体回路4の外縁部とに樹脂充填材10の層を形成した。
すなわち、まず、スキージを用いてスルーホール内に樹脂充填材を押しこんだ後、100℃、20分の条件で乾燥させた。次に、導体回路非形成部に相当する部分が開口したマスクを基板上に載置し、スキージを用いて、凹部となっている導体回路非形成部に樹脂充填材10の層を形成し、100℃、20分の条件で乾燥させた(図2(c)参照)。
【0113】
(4) 上記(3) の処理を終えた基板の片面を、#600のベルト研磨紙(三共理化学社製)を用いたベルトサンダー研磨により、導体回路外縁部に形成された樹脂充填材10の層や導体回路非形成部に形成された樹脂充填材10の層の上部を研磨し、ついで、上記ベルトサンダー研磨による傷を取り除くためのバフ研磨を行った。このような一連の研磨を基板の他方の面についても同様に行った。
なお、必要に応じて、研摩の前後にエッチングを行い、スルーホール9のランド9aおよび下層導体回路4に形成された粗化面4aを平坦化してもよい。
この後、100℃で1時間、150℃で1時間の加熱処理を行い、樹脂充填材の層を完全に硬化させた。
【0114】
このようにして、スルーホール9や導体回路非形成部に形成された樹脂充填材10の表層部および下層導体回路4の表面を平坦化し、樹脂充填材10と下層導体回路4の側面4aとが粗化面を介して強固に密着し、またスルーホール9の内壁面9aと樹脂充填材10とが粗化面を介して強固に密着した絶縁性基板を得た(図2(d)参照)。すなわち、この工程により、樹脂充填剤の表面と内層銅パターンとの表面が同一平面となる。
【0115】
(5) 上記基板を水洗、酸性脱脂した後、ソフトエッチングし、次いで、エッチング液を基板の両面にスプレイで吹きつけた後、搬送ロールで送ることで下層導体回路4の表面とスルーホール9のランド表面と内壁とをエッチングすることにより、下層導体回路4の全表面に厚さ3μmの粗化面4a、9aを形成した(図3(a)参照)。エッチング液として、イミダゾール銅 (II)錯体10重量部、グリコール酸7重量部、塩化カリウム5重量部からなるエッチング液(メック社製、メックエッチボンド)を使用した。
【0116】
(6) 基板の両面に、上記Bにおいて記載した下層用の樹脂複合体(粘度:1.5Pa・s)を調製後24時間以内にロールコータを用いて塗布し、水平状態で20分間放置してから、60℃で30分の乾燥(プリベーク)を行った。次いで、上記Aにおいて記載した上層用の樹脂複合体(粘度:7Pa・s)を調製後24時間以内にロールコータを用いて塗布し、同様に水平状態で20分間放置してから、60℃で30分の乾燥(プリベーク)を行い、厚さ35μmの樹脂複合体の層2a、2bを形成した(図3(b)参照)。
【0117】
(7) 上記(6) で樹脂複合体の層を形成した基板の両面に、直径85μmの黒円が印刷されたフォトマスクフィルムを密着させ、超高圧水銀灯により500mJ/cm2 強度で露光した後、DMDG溶液でスプレー現像した。この後、さらに、この基板を超高圧水銀灯により3000mJ/cm2 強度で露光し、100℃で1時間、120℃で1時間、150℃で3時間の加熱処理を施し、フォトマスクフィルムに相当する寸法精度に優れた直径85μmのバイアホール用開口部6を有する厚さ35μmの樹脂絶縁層2を形成した(図3(c)参照)。なお、バイアホールとなる開口部には、下層導体回路4の粗化面を露出させた。
【0118】
(8) バイアホール用開口部6を形成した基板を、クロム酸水溶液(7500g/l)に19分間浸漬し、樹脂絶縁層の表面に存在するエポキシ樹脂粒子を溶解除去してその表面を粗化し、粗化面を得た。その後、中和溶液(シプレイ社製)に浸漬してから水洗いをした(図3(d)参照)。
さらに、粗面化処理した該基板の表面に、パラジウム触媒(アトテック社製)を付与することにより、絶縁材層の表面およびバイアホール用開口部の内壁面に触媒核を付着させた。
【0119】
(9) 次に、以下の組成の無電解銅めっき水溶液中に基板を浸漬して、粗面全体に厚さ0.6〜1.2μmの無電解銅めっき膜12を形成した(図4(a)参照)。
〔無電解めっき水溶液〕
CuSO4 ・5H2 O 10g/l
HCHO 8g/l
NaOH 8g/l
ロッシェル塩 45g/l
添加剤 30ml/l
〔無電解めっき条件〕
35℃の液温度で25分
【0120】
(10)ついで、無電解銅めっき膜上の全面に以下の条件で電解めっきを施し、厚さ7.5μmの電解めっき膜13を形成した(図4(b)参照)。
〔電解めっき水溶液〕
CuSO4 ・5H2 O 210g/l
硫酸 150g/l
Cl- 40mg/l
ポリエチレングリコール 300mg/l
ビスジスルフィド 100mg/l
〔電解めっき条件〕
電流密度 1.0A/dm2
時間 35 分
温度 25 ℃
【0121】
(11)市販の感光性ドライフィルムを電解銅めっき膜13に貼り付け、マスクを載置して、100mJ/cm2 で露光し、0.8%炭酸ナトリウム水溶液で現像処理することにより、厚さ15μmのエッチングレジスト3を設けた(図4(c)参照)。
【0122】
(12)さらに、硫酸−過酸化水素水溶液を用いたスプレーエッチングにより導体回路以外の部分をエッチングした。続いて、50℃の40g/lNaOH水溶液中でレジストフィルムを剥離除去した。その後、基板に150℃で1時間熱処理を施し、金属層と電解銅めっき膜とからなる厚さ15μmの導体回路とフィールドビアとを形成した(図4(d)参照)。
【0123】
(13)導体回路を形成した基板に対し、上記(5) と同様の処理を行い、フィールドビアを含む導体回路の表面に粗化面を形成した(図5(a)参照)。
(14)続いて、上記 (6)〜(13)の工程を、繰り返すことにより、さらに上層の導体回路を形成し、8層の多層プリント配線板を得た。なお、図中では、構造を理解しやすいように6層のものを示している(図5(b)〜図6(c)参照)。
【0124】
(15)次に、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)に60重量%の濃度になるように溶解させた、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製)のエポキシ基50%をアクリル化した感光性付与のオリゴマー(分子量:4000)46.67重量部、メチルエチルケトンに溶解させた80重量%のビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェル社製、商品名:エピコート1001)15重量部、イミダゾール硬化剤(四国化成社製、商品名:2E4MZ−CN)1.6重量部、感光性モノマーである多価アクリルモノマー(日本化薬社製、商品名:R604)3重量部、同じく多価アクリルモノマー(共栄化学社製、商品名:DPE6A)1.5重量部、分散系消泡剤(サンノプコ社製、商品名:S−65)0.71重量部を容器にとり、攪拌混合することにより混合組成物を調製し、この混合組成物に対して光重合開始剤としてのベンゾフェノン(関東化学社製)2.0重量部、光増感剤としてのミヒラーケトン(関東化学社製)0.2重量部を加えて、粘度を25℃で2.0Pa・sに調製したソルダーレジスト樹脂組成物を得た。
なお、粘度測定は、B型粘度計(東京計器社製、DVL−B型)で60min-1(60rpm)の場合はローターNo.4、6min-1(6rpm)の場合はローターNo.3によった。
【0125】
(16)次に、多層配線基板の両面に、上記(15)に記載したソルダーレジスト樹脂組成物を調製した後、これを20μmの厚さで塗布し、70℃で20分間、70℃で30分間の条件で乾燥処理を行った後、ソルダーレジスト開口部のパターンが描画された厚さ5mmのフォトマスクをソルダーレジスト層に密着させて1000mJ/cm2 の紫外線で露光し、DMTG溶液で現像処理し、200μmの直径の開口を形成した。
そして、さらに、80℃で1時間、100℃で1時間、120℃で1時間、150℃で3時間の条件でそれぞれ加熱処理を行ってソルダーレジスト層を硬化させ、開口径200μmの半田パッド部分(バイアホールとそのランド部分とを含む)が開口した、その厚さが20μmのソルダーレジスト層(有機樹脂絶縁層)14を形成した。
【0126】
(17)次に、ソルダーレジスト層(有機樹脂絶縁層)14を形成した基板を、塩化ニッケル(2.3×10-1mol/l)、次亜リン酸ナトリウム(2.8×10-1mol/l)、クエン酸ナトリウム(1.6×10-1mol/l)を含むpH=4.5の無電解ニッケルめっき液に20分間浸漬して、開口部に厚さ5μmのニッケルめっき層15を形成した。さらに、その基板をシアン化金カリウム(7.6×10-3mol/l)、塩化アンモニウム(1.9×10-1mol/l)、クエン酸ナトリウム(1.2×10-1mol/l)、次亜リン酸ナトリウム(1.7×10-1mol/l)を含む無電解めっき液に80℃の条件で7.5分間浸漬して、ニッケルめっき層15上に、厚さ0.03μmの金めっき層16を形成した。
【0127】
(18)この後、ソルダーレジスト層14の開口に半田ペーストを印刷して、200℃でリフローすることにより半田バンプ17を形成し、半田バンプ17を有する多層配線プリント基板を製造した(図7(a)参照)。
【0128】
(実施例2)
A.プリント配線板の製造方法
(1) 厚さ0.8mmのガラスエポキシ樹脂またはBT(ビスマレイミドトリアジン)樹脂からなる基板1の両面に18μmの銅箔8がラミネートされている銅貼積層板を出発材料とした(図8(a)参照)。まず、この銅貼積層板をドリル削孔し、無電解めっき処理を施し、パターン状にエッチングすることにより、基板1の両面に下層導体回路4とスルーホール9を形成した。
【0129】
(2) スルーホール9および下層導体回路4を形成した基板を水洗いし、乾燥した後、下記のエッチング液を基板の両面にスプレイで吹き付けて、下層導体回路4とスルーホール9のランド表面および内壁をエッチングすることにより、スルーホール9を含む下層導体回路4の全表面に粗化面4a、9aを形成した(図8(b)参照)。エッチング液としては、イミダゾール銅(II)錯体10重量部、グリコール酸7重量部、塩化カリウム5重量部およびイオン交換水78重量部を混合したものを使用した。
【0130】
(3) 次に、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂充填剤を、基板の両面に印刷機を用いて塗布することにより下層導体回路4間およびスルーホール9内に充填し、加熱乾燥をおこなった(図8(c)参照)。すなわち、この工程により、樹脂充填剤10が下層導体回路4間およびスルーホール9内に充填される。
【0131】
(4) 上記(3) の処理を終えた基板の片面を、#600のベルト研磨紙(三共理化学社製)を用いたベルトサンダー研磨により、導体回路外縁部に形成された樹脂充填材10の層や導体回路非形成部に形成された樹脂充填材10の層の上部を研磨し、ついで、上記ベルトサンダー研磨による傷を取り除くためのバフ研磨を行った。このような一連の研磨を基板の他方の面についても同様に行った。
なお、必要に応じて、研摩の前後にエッチングを行い、スルーホール9のランド9aおよび下層導体回路4に形成された粗化面4aを平坦化してもよい。
この後、100℃で1時間、150℃で1時間の加熱処理を行い、樹脂充填材の層を完全に硬化させた。
【0132】
このようにして、スルーホール9や導体回路非形成部に形成された樹脂充填材10の表層部および下層導体回路4の表面を平坦化し、樹脂充填材10と下層導体回路4の側面4aとが粗化面を介して強固に密着し、またスルーホール9の内壁面9aと樹脂充填材10とが粗化面を介して強固に密着した絶縁性基板を得た(図8(d)参照)。
【0133】
(5) 上記基板を水洗、酸性脱脂した後、ソフトエッチングし、次いで、エッチング液を基板の両面にスプレイで吹きつけた後、搬送ロールで送ることで下層導体回路4の表面とスルーホール9のランド表面とをエッチングすることにより、下層導体回路4の全表面に厚さ3μmの粗化面4a、9aを形成した。エッチング液としては、上記(2) の工程で用いたものと同様のものを用いた。
【0134】
(6) 基板の両面に、厚さ50μmの熱硬化型ポリオレフィン系樹脂シートを温度を50〜150℃まで昇温しながら圧力0.5MPa(5kgf/cm2 )で真空ラミネートし、ポリオレフィン系樹脂からなる樹脂絶縁層を設けた。なお、真空圧着時の真空度は、1330Pa(10mmHg)とした(図9(a)参照)。
【0135】
(7) 樹脂絶縁層を設けた基板の両面に、炭酸(CO2 )ガスレーザを用いて、ビーム径5mm、トップハットモード、パルス幅50μ秒、マスクの穴径0.5mm、3ショットの条件で直径80μmのバイアホール用開口部6を設けた。(図9(b)参照)。この後、酸素プラズマを用いてデスミア処理を行った。
【0136】
(8) バイアホール用開口部6を形成した基板にプラズマ処理を施し、樹脂絶縁層の表層を粗化した(図9(c)参照)。この際、不活性ガスとしてアルゴンガスを使用し、電力200W、ガス圧0.6Pa、温度70℃の条件で、日本真空技術株式会社製のSV−4540を用い、2分間プラズマ処理を実施した。
【0137】
(9) 次に、樹脂絶縁層の表層を粗化した基板に、日本真空技術株式会社製のSV−4540を用い、NiとCuとの合金をターゲットにしたスパッタリングを、気圧0.6Pa、温度80℃、電力200W、時間5分間の条件で行い、Ni−Cu合金層12を樹脂絶縁層2の表面に形成した(図9(d)参照)。このとき、形成されたNi−Cu合金層の厚さは0.2μmであった。
さらに、基板をコンデショニングし、アルカリ触媒中で触媒付与を5分間行った。
【0138】
(10)ついで、Ni−Cu合金層12上の全面に以下の条件で電解めっきを施し、厚さ5μmの電解めっき膜13を形成した(図10(a)参照)。
〔電解めっき水溶液〕
CuSO4 ・5H2 O 140g/l
硫酸 120g/l
Cl- 50mg/l
ゼラチン 300mg/l
スルホン酸アミド 100mg/l
〔電解めっき条件〕
電流密度 0.8A/dm2
時間 30 分
温度 25 ℃
【0139】
(11)市販の感光性ドライフィルムを電解銅めっき膜13に貼り付け、マスクを載置して、100mJ/cm2 で露光し、0.8%炭酸ナトリウム水溶液で現像処理することにより、厚さ20μmのエッチングレジスト3を設けた(図10(b)参照)。
【0140】
(12)さらに、硫酸−過酸化水素水溶液を用いたスプレーエッチングにより導体回路以外の部分をエッチングした。続いて、50℃の40g/lNaOH水溶液中でレジストフィルムを剥離除去した。その後、基板に150℃で1時間熱処理を施し、金属層と電解銅めっき膜とからなる厚さ15μmの導体回路5とフィールドビア7とを形成した。形成された導体回路の上面とフィールドビアの上面との樹脂基板1からの高さの差は1μm以下と、略同一平面にあり、また、バイアホールの上面に凹部は形成されていなかった(図10(c)参照)。
【0141】
(13)続いて、上記 (7)〜(13)の工程を、繰り返すことにより、さらに上層の導体回路を形成し、8層の多層プリント配線板を得た。なお、図中では、構造を理解しやすいように6層のものを示している(図11(a)〜図13(a)参照)。なお、表層の導体回路にも上記(2) の工程で用いたエッチング液と同様のものを用いてエッチングを行い、粗化面を形成した。
【0142】
(14)次に、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)に60重量%の濃度になるように溶解させた、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製)のエポキシ基50%をアクリル化した感光性付与のオリゴマー(分子量:4000)46.67重量部、メチルエチルケトンに溶解させた80重量%のビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェル社製、商品名:エピコート1001)15重量部、イミダゾール硬化剤(四国化成社製、商品名:2E4MZ−CN)1.6重量部、感光性モノマーである多価アクリルモノマー(日本化薬社製、商品名:R604)3重量部、同じく多価アクリルモノマー(共栄化学社製、商品名:DPE6A)1.5重量部、分散系消泡剤(サンノプコ社製、商品名:S−65)0.71重量部を容器にとり、攪拌混合することにより混合組成物を調製し、この混合組成物に対して光重合開始剤としてのベンゾフェノン(関東化学社製)2.0重量部、光増感剤としてのミヒラーケトン(関東化学社製)0.2重量部を加えて、粘度を25℃で2.0Pa・sに調製したソルダーレジスト樹脂組成物を得た。
なお、粘度測定は、B型粘度計(東京計器社製、DVL−B型)で60min-1(60rpm)の場合はローターNo.4、6min-1(6rpm)の場合はローターNo.3によった。
【0143】
(15)次に、多層配線基板の両面に、上記(15)に記載したソルダーレジスト樹脂組成物を調製した後、これを20μmの厚さで塗布し、70℃で20分間、70℃で30分間の条件で乾燥処理を行った後、ソルダーレジスト開口部のパターンが描画された厚さ5mmのフォトマスクをソルダーレジスト層に密着させて1000mJ/cm2 の紫外線で露光し、DMTG溶液で現像処理し、200μmの直径の開口を形成した。
そして、さらに、80℃で1時間、100℃で1時間、120℃で1時間、150℃で3時間の条件でそれぞれ加熱処理を行ってソルダーレジスト層を硬化させ、開口径200μmの半田パッド部分(バイアホールとそのランド部分とを含む)が開口した、その厚さが20μmのソルダーレジスト層(有機樹脂絶縁層)14を形成した。
【0144】
(16)次に、ソルダーレジスト層(有機樹脂絶縁層)14を形成した基板を、塩化ニッケル(2.3×10-1mol/l)、次亜リン酸ナトリウム(2.8×10-1mol/l)、クエン酸ナトリウム(1.6×10-1mol/l)を含むpH=4.5の無電解ニッケルめっき液に20分間浸漬して、開口部に厚さ5μmのニッケルめっき層15を形成した。さらに、その基板をシアン化金カリウム(7.6×10-3mol/l)、塩化アンモニウム(1.9×10-1mol/l)、クエン酸ナトリウム(1.2×10-1mol/l)、次亜リン酸ナトリウム(1.7×10-1mol/l)を含む無電解めっき液に80℃の条件で7.5分間浸漬して、ニッケルめっき層15上に、厚さ0.03μmの金めっき層16を形成した。
【0145】
(17)この後、ソルダーレジスト層14の開口に半田ペーストを印刷して、200℃でリフローすることにより半田バンプ17を形成し、半田バンプ17を有する多層配線プリント基板を製造した(図13(b)参照)。
【0146】
(実施例3)
A.プリント配線板の製造方法
(1) 実施例1の(1) 〜(8) の工程と同様にして、導体回路4と樹脂絶縁層2の形成された基板を作製し、その後、実施例1の(9) の工程と同様にして無電解銅めっき膜12を形成した(図14(a)〜図16(a)参照)。
【0147】
(2) 市販の感光性ドライフィルムを無電解銅めっき膜12に貼り付け、マスクを載置して、100mJ/cm2 で露光し、0.8%炭酸ナトリウム水溶液で現像処理することにより、厚さ15μmのめっきレジスト23を設けた(図16(b)参照)。
【0148】
(3) 次に、めっきレジスト23の非形成部に以下の条件で電解めっきを施し、厚さ7.5μmの電解めっき膜13を形成した(図16(c)参照)。
〔電解めっき水溶液〕
CuSO4 ・5H2 O 210g/l
硫酸 150g/l
Cl- 40mg/l
ポリエチレングリコール 300mg/l
ビスジスルフィド 100mg/l
〔電解めっき条件〕
電流密度 1.0A/dm2
時間 35 分
温度 25 ℃
【0149】
続いて、50℃の40g/lNaOH水溶液中でめっきレジストを剥離除去した。その後、基板に150℃で1時間熱処理を施し、硫酸−過酸化水素水溶液等のエッチング液を用いて、導体回路以外の金属を除去し、金属層と電解銅めっき膜とからなる厚さ8μmの導体回路とフィールドビアとを形成した(図16(d)参照)。
【0150】
(4) その後、実施例1の(13)〜(18)と同様の工程を施し、半田バンプ17を有する多層配線プリント基板を製造した(図17〜図18参照)。
【0151】
(実施例4)
A.樹脂複合体からなるフィルムの作製
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量469、油化シェルエポキシ社製 エピコート1001)30重量部、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量215、大日本インキ化学工業社製 エピクロンN−673)40重量部、トリアジン構造含有フェノールノボラック樹脂(フェノール性水酸基当量120、大日本インキ化学工業社製 フェノライトKA−7052)30重量部をエチルジグリコールアセテート20重量部、ソルベントナフサ20重量部に攪拌しながら加熱溶解させ、そこへ末端エポキシ化ポリブタジエンゴム(ナガセ化成工業社製 デナレックスR−45EPT)15重量部と2−フェニル−4、5−ビス(ヒドロキシメチル)イミダゾール粉砕品1.5重量部、微粉砕シリカ2重量部、シリコン系消泡剤0.5重量部を添加し樹脂複合体の溶液を得た。
得られた樹脂複合体の溶液を厚さ38μmのPETフィルム上に乾燥後の厚さが50μmとなるようにロールコーターを用いて塗布した後、80〜120℃で10分間乾燥させることにより、樹脂複合体のフィルムを作製した。
【0152】
B.プリント配線板の製造方法
(1) 実施例1の(1) 〜(4) の工程と同様にして、スルーホール9および導体回路非形成部に樹脂充填剤10の層が形成された基板を作製し、その後、実施例1の(5) の工程と同様にして下層導体回路4の表面とスルーホール9のランド表面とをエッチングすることにより、下層導体回路4の表面全体に厚さ3μmの粗化面4a、9aを形成した(図19(a)〜図20(a)参照)。
【0153】
(2) 上記基板の両面に、上記Aにおいて記載した樹脂複合体フィルムを、以下の方法により真空ラミネータ装置を用いて張り付けることにより樹脂複合体フィルム層を形成し、その後、熱硬化させて、樹脂絶縁層20とした(図20(b)参照)。即ち、上記樹脂複合体フィルムの張り付けは、真空度75Pa、圧力0.4MPa、温度80℃、圧着時間60秒の条件で行い、上記熱硬化は、100℃で30分、150℃で1時間の条件で行った。
【0154】
(3) 次に、樹脂絶縁層20上に、貫通孔が形成されたマスクを介して、波長10.4μmのCO2 ガスレーザにて、ビーム径4.0mm、トップハットモード、パルス幅8.0μ秒、マスクの貫通孔の径1.0mm、2ショットの条件で樹脂絶縁層20に、直径60μmのバイアホール用開口部6を形成した(図20(c)参照)。この後、酸素プラズマを用いてデスミア処理を行った。なお、バイアホール用開口部6には、下層導体回路4の粗化面を露出させた。
【0155】
(4) バイアホール用開口部6を形成した基板を、クロム酸水溶液(7500g/l)に19分間浸漬し、樹脂絶縁層の表面に存在するエポキシ樹脂粒子を溶解除去してその表面を粗化し、粗化面を得た。その後、中和溶液(シプレイ社製)に浸漬してから水洗いをした(図20(d)参照)。
さらに、粗面化処理した該基板の表面に、パラジウム触媒(アトテック社製)を付与することにより、絶縁材層の表面およびバイアホール用開口部6の内壁面に触媒核を付着させた。
【0156】
(5) 次に、以下の組成の無電解銅めっき水溶液中に基板を浸漬して、粗面全体に厚さ0.6〜1.2μmの無電解銅めっき膜12を形成した(図21(a)参照)。
〔無電解めっき水溶液〕
CuSO4 ・5H2 O 10g/l
HCHO 8g/l
NaOH 8g/l
ロッシェル塩 45g/l
添加剤 30ml/l
〔無電解めっき条件〕
35℃の液温度で25分
【0157】
(6) 市販の感光性ドライフィルムを電解銅めっき膜12に貼り付け、マスクを載置して、100mJ/cm2 で露光し、0.8%炭酸ナトリウム水溶液で現像処理することにより、厚さ20μmのめっきレジスト23を設けた(図21(b)参照)。
【0158】
(7) 次に、めっきレジスト23の非形成部に以下の条件で電解めっきを施し、厚さ15μmの電解めっき膜13を形成した(図21(c)参照)。
〔電解めっき水溶液〕
CuSO4 ・5H2 O 210g/l
硫酸 150g/l
Cl- 40mg/l
ポリエチレングリコール 300mg/l
ビスジスルフィド 100mg/l
〔電解めっき条件〕
電流密度 1.0A/dm2
時間 60 分
温度 25 ℃
【0159】
続いて、50℃の40g/lNaOH水溶液中でめっきレジスト23を剥離除去した。その後、基板に150℃で1時間熱処理を施し、硫酸−過酸化水素水溶液等のエッチング液を用いて、導体回路以外の金属を除去し、金属層と電解銅めっき膜とからなる厚さ15μmの導体回路とフィールドビアとを形成した(図21(d)参照)。
【0160】
(8) 導体回路を形成した基板に対し、上記(1) と同様の処理を行い、フィールドビアを含む導体回路の表面に粗化面を形成した(図22(a)参照)。
(9) 続いて、上記(2) 〜(8) の工程を、繰り返すことにより、さらに上層の樹脂絶縁層と導体回路とを形成し、多層プリント配線板を得た(図22(b)〜図23(b)参照)。
【0161】
(10)その後、実施例1の(15)〜(18)と同様の工程を施し、半田バンプ17を有する多層配線プリント基板を製造した(図23(c)参照)。
【0162】
(実施例5)
樹脂複合体からなるフィルムとして、エポキシ樹脂(熱硬化性樹脂)とフェノキシ樹脂(熱可塑性樹脂)の樹脂複合体によって形成されたものを用いた以外は、実施例4とほぼ同様にして多層プリント配線板を製造した。
【0163】
(実施例6)
電解めっき液の添加剤として、ゼラチン400mg/l、ビスジスルフィド150ml/lを用いた以外は、実施例1とほぼ同様にして多層プリント配線板を製造した。
【0164】
(実施例7)
電解めっき液の添加剤として、ゼラチン400mg/l、ビスジスルフィド150ml/lを用いた以外は、実施例2とほぼ同様にして多層プリント配線板を製造した。
【0165】
(実施例8)
電解めっき液の添加剤として、ゼラチン400mg/l、ビスジスルフィド150ml/lを用いた以外は、実施例3とほぼ同様にして多層プリント配線板を製造した。
【0166】
(実施例9)
電解めっき液の添加剤として、ポリエチレングリコール400mg/l、スルホン酸アミド150ml/lを用いた以外は、実施例1とほぼ同様にして多層プリント配線板を製造した。
【0167】
(実施例10)
電解めっき液の添加剤として、ポリエチレングリコール400mg/l、スルホン酸アミド150ml/lを用いた以外は、実施例2とほぼ同様にして多層プリント配線板を製造した。
【0168】
(実施例11)
電解めっき液の添加剤として、ポリエチレングリコール400mg/l、スルホン酸アミド150ml/lを用いた以外は、実施例3とほぼ同様にして多層プリント配線板を製造した。
【0169】
(実施例12)
電解めっき液の添加剤として、ゼラチン400mg/l、ビスジスルフィド150ml/lを用いた以外は、実施例5とほぼ同様にして多層プリント配線板を製造した。
【0170】
(実施例13)
電解めっき液の添加剤として、ポリエチレングリコール400mg/l、スルホン酸アミド150ml/lを用いた以外は、実施例5とほぼ同様にして多層プリント配線板を製造した。
【0171】
(比較例1)
A.樹脂複合体の調製(上層用接着剤)、樹脂複合体の調製(下層用接着剤)、および、樹脂充填材の調製は実施例1と同様に行った。
【0172】
B.プリント配線板の製造方法
(1) 厚さ0.6mmのガラスエポキシ樹脂またはBT(ビスマレイミドトリアジン)樹脂からなる基板を用いた以外は、実施例1の(1) 〜(6) と同様にして厚さ35μmの樹脂複合体の層を形成した(図2(a)〜図3(b)参照)。
【0173】
(2) 次に、樹脂複合体の層を形成した基板の両面に、直径90μmの黒円が印刷されたフォトマスクフィルムを密着させた以外は、実施例1の(7) と同様にして、直径90μmのバイアホール用開口部を有する厚さ35μmの樹脂絶縁層を形成した(図3(c)参照)。なお、バイアホールとなる開口部には、下層導体回路の粗化面を露出させた。
【0174】
(3) さらに、バイアホール用開口部を形成した基板をコンデイショニングし、アルカリ触媒中で触媒付与を5分間行った後、基板を活性化し、以下の組成の無電解銅めっき水溶液中に基板を浸漬して、粗面全体に厚さ1.1μmの無電解銅めっき膜を形成した。
〔無電解めっき水溶液〕
CuSO4 ・5H2 O 10g/l
HCHO 8g/l
NaOH 8g/l
ロッシェル塩 45g/l
添加剤 30ml/l
〔無電解めっき条件〕
34℃の液温度で25分
【0175】
(4) ついで、無電解銅めっき膜上の全面に以下の条件で電解めっきを施し、厚さ11μmの電解めっき膜13を形成した。
〔電解めっき水溶液〕
CuSO4 ・5H2 O 80g/l
硫酸 180g/l
Cl- 40mg/l
添加剤 0.5ml/l
〔電解めっき条件〕
電流密度 1.0A/dm2
時間 50 分
温度 27 ℃
【0176】
(5) 市販の感光性ドライフィルムを電解銅めっき膜に貼り付け、マスクを載置して、100mJ/cm2 で露光し、0.8%炭酸ナトリウム水溶液で現像処理することにより、厚さ20μm、L/S=20/10μmのめっきレジストを設けた。
【0177】
(6) さらに、硫酸−過酸化水素水溶液を用いたスプレーエッチングにより導体回路以外の部分をエッチングした。続いて、50℃の40g/lNaOH水溶液中でレジストフィルムをを剥離除去した。その後、基板に150℃で1時間熱処理を施し、金属層と電解銅めっき膜とからなる導体回路とフィールドビアとを形成した。
【0178】
(7) 導体回路を形成した基板に対し、上記(5) と同様の処理を行い、フィールドビアを含む導体回路の表面に厚さ2μmの粗化面をを形成した。
(8) 続いて、上記 (1)の樹脂複合体の層を形成する工程〔実施例1の(1) 〜(7) の工程〕を、繰り返すことにより、さらに上層の導体回路を形成し、8層の多層プリント配線板を得た。
【0179】
(9) 次に、実施例1の(15)と同様にしてソルダーレジスト樹脂組成物を得た。
さらに、実施例1の(16)〜(18)と同様にして、半田バンプを有する多層配線プリント基板を製造した。
【0180】
実施例および比較例で得られた半田バンプを有する多層配線プリント基板をカッターで切断し、その断面を顕微鏡で観察したところ、実施例に係る多層プリント配線板をカッターで切断し、その断面を顕微鏡で観察したところ、導体回路の上面とフィールドビアの上面との樹脂基板からの高さの差は、1μm以下と略同一平面にあり、また、バイアホールの上面に凹部は形成されていなかった。一方、比較例に係る多層プリント配線板は、バイアホール用開口部が金属で完全に充填されておらず、バイアホール上面に凹部が形成されていた。
【0181】
また、実施例に係る多層配線プリント基板は、スタックビア構造を有しており、導通試験等の結果、このスタックビア構造部分でも導通はとれていた。一方、比較例に係る多層プリント配線板では、導通試験等の結果、スタックビア構造の部分では導通がとれていなかった。
【0182】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明の電解めっき液によれば、この電解めっき液を用いて多層プリント配線板を製造することにより、バイアホール用開口部に金属が完全に充填され、同一層におけるバイアホールの上面と導体回路の上面とが略同一平面にあるバイアホールを形成することができる。
【0183】
また、本発明の多層プリント配線板の製造方法によれば、バイアホール用開口部に金属が完全に充填され、同一層におけるバイアホールの上面と導体回路の上面とが略同一平面にあるバイアホールを形成することができ、さらには、スタックビア構造を有する多層プリント配線板を製造することができる。
【0184】
また、本発明の多層プリント配線板によれば、バイアホール用開口部に金属が完全に充填され、同一層におけるバイアホールの上面と導体回路の上面とが略同一平面にあるため、バイアホールを含む導体回路と樹脂絶縁層との間で剥離やクラックが発生したり、該導体回路の上層の導体回路が断線したりすることがなく、接続信頼性を向上させることができる。また、上記多層プリント配線板は、プリント配線板の高速化およびファイン化を達成するために配線距離を短縮したスタックビア構造をとることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の多層プリント配線板の一断面を示す断面図である。
【図2】(a)〜(d)は、他の多層プリント配線板の製造工程の一部を示す断面図である。
【図3】(a)〜(d)は、他の多層プリント配線板の製造工程の一部を示す断面図である。
【図4】(a)〜(d)は、他の多層プリント配線板の製造工程の一部を示す断面図である。
【図5】(a)〜(c)は、他の多層プリント配線板の製造工程の一部を示す断面図である。
【図6】(a)〜(c)は、他の多層プリント配線板の製造工程の一部を示す断面図である。
【図7】(a)は、他の多層プリント配線板の製造工程の一部を示す断面図である。
【図8】(a)〜(d)は、他の多層プリント配線板の別の一例の製造工程の一部を示す断面図である。
【図9】(a)〜(d)は、他の多層プリント配線板の別の一例の製造工程の一部を示す断面図である。
【図10】(a)〜(c)は、他の多層プリント配線板の別の一例の製造工程の一部を示す断面図である。
【図11】(a)〜(c)は、他の多層プリント配線板の別の一例の製造工程の一部を示す断面図である。
【図12】(a)〜(c)は、他の多層プリント配線板の別の一例の製造工程の一部を示す断面図である。
【図13】(a)〜(b)は、他の多層プリント配線板の別の一例の製造工程の一部を示す断面図である。
【図14】(a)〜(d)は、本発明の多層プリント配線板の製造工程の一部を示す断面図である。
【図15】(a)〜(d)は、本発明の多層プリント配線板の製造工程の一部を示す断面図である。
【図16】(a)〜(d)は、本発明の多層プリント配線板の製造工程の一部を示す断面図である。
【図17】(a)〜(c)は、本発明の多層プリント配線板の製造工程の一部を示す断面図である。
【図18】(a)〜(c)は、本発明の多層プリント配線板の製造工程の一部を示す断面図である。
【図19】(a)〜(d)は、本発明の多層プリント配線板の別の一例の製造工程の一部を示す断面図である。
【図20】(a)〜(d)は、本発明の多層プリント配線板の別の一例の製造工程の一部を示す断面図である。
【図21】(a)〜(d)は、本発明の多層プリント配線板の別の一例の製造工程の一部を示す断面図である。
【図22】(a)〜(c)は、本発明の多層プリント配線板の別の一例の製造工程の一部を示す断面図である。
【図23】(a)〜(c)は、本発明の多層プリント配線板の別の一例の製造工程の一部を示す断面図である。
【図24】本発明の多層プリント配線板のバイアホールの断面を示す顕微鏡写真である。
【図25】従来の多層プリント配線板のバイアホールの断面を示す顕微鏡写真である。
【符号の説明】
1 基板
2a、2b 樹脂複合体
2 樹脂絶縁層
4 下層導体回路
4a 粗化面
5 上層導体回路
6 バイアホール用開口部
7 バイアホール
8 銅箔
9 スルーホール
9a 粗化面
10 樹脂充填材
11 粗化層
12 Ni−Cu合金層
13 電解めっき層
14 ソルダーレジスト層
15 ニッケルめっき膜
16 金めっき膜
17 ハンダバンプ
Claims (9)
- 導体回路が設けられた基板上に、樹脂絶縁層と導体回路とが順次積層された多層プリント配線板の製造に用いる電解めっき液であって、50〜300g/lの硫酸銅、30〜200g/lの硫酸、25〜90mg/lの塩素イオン、および、レベリング剤と光沢剤とからなる1〜1000mg/lの添加剤を含有しており、
前記レベリング剤の配合量と前記光沢剤の配合量との配合比率は、2:1〜10:1であり、
前記レベリング剤は、ポリエチレン、その誘導体、ゼラチンおよびその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種からなり、
前記光沢剤は、ビスジスルフィド及びスルホン酸アミドのうちの少なくとも1種からなることを特徴とする電解めっき液。 - 140〜210g/lの硫酸銅、120〜150/lの硫酸、40〜50mg/lの塩素イオン、および、レベリング剤と光沢剤とからなる400〜550mg/lの添加剤を含有しており、
前記レベリング剤の配合量と前記光沢剤の配合量との配合比率は、2.7:1〜3:1である請求項1に記載の電解めっき液。 - 少なくとも下記の工程(a)〜(e)、即ち(a)露光および現像処理、もしくは、レーザ処理を行うことによりバイアホール用開口部を有する樹脂絶縁層を形成する工程、(b)樹脂絶縁層およびバイアホール用開口部の表面に、Cu、Ni、P、Pd、CoおよびWからなる群より選択される少なくとも1種からなる金属層を形成する工程、(c)前記金属層上にめっきレジストを形成する工程、(d)請求項1又は2記載の電解めっき液を用いて、前記めっきレジスト非形成部に電解めっき膜を形成する工程、(e)前記めっきレジストを剥離した後、前記めっきレジストの下に存在する金属層をエッチングすることにより導体回路を形成する工程、を含むことを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。
- 前記(b)の工程において、金属層は、スパッタリング、めっき、もしくは、スパッタリングおよびめっきを行うことにより形成する請求項3に記載の多層プリント配線板の製造方法。
- 前記樹脂絶縁層は、フッ素樹脂、ポリオレフィン系樹脂およびポリフェニレン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種からなる請求項3または4に記載の多層プリント配線板の製造方法。
- 前記樹脂絶縁層は、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とを含む樹脂複合体からなる請求項3または4に記載の多層プリント配線板の製造方法。
- 導体回路が設けられた基板上に、樹脂絶縁層と導体回路とが順次積層され、上下に隣り合う導体回路がフィールドビアにより接続された多層プリント配線板であって、前記フィールドビアは、バイアホール用開口部に金属が充填されることにより構成されており、同一層における前記フィールドビアの上面と前記導体回路の上面との前記基板からの高さの差は1μm以下であり、かつ、前記フィールドビアの底面から上面までの距離が前記導体回路の厚さの2〜7倍であることを特徴とする多層プリント配線板。
- 前記樹脂絶縁層は、1GHzにおける誘電率が3.0以下である請求項7に記載の多層プリント配線板。
- 請求項3〜6のいずれか1に記載の多層プリント配線板の製造方法を用いて製造される請求項7または8に記載の多層プリント配線板。
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