JP4275369B2 - 多層プリント配線板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、多層プリント配線板に関し、特に、充填材の硬化収縮を抑制してスルーホールとバイアホールの接続信頼性を確保した多層プリント配線板について提案する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ICチップを実装するパッケージ基板は、電子工業の進歩に伴う電子機器の小型化あるいは高速化に対応し、ファインパターンによる高密度化および信頼性の高いものが求められている。
【0003】
このようなパッケージ基板として、例えば、特開平5−243728号公報には、めっきスルーホールに導電ペーストを充填し、この導電ペーストを被覆する導体層を形成したものが開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上掲の従来技術に係るパッケージ基板では、導電ペーストを使用しているので、樹脂を硬化収縮させて導電性を生じさせる必要があった。このため、かかるパッケージ基板では、充填材の硬化収縮に起因した隙間が導電ペーストとスルーホール内壁の導体との間に生じやすく、高温、多湿条件下に曝すと、導電ペーストを被覆する導体層が剥離したり、スルーホールとバイアホールと間で断線が発生するといった問題が生じた。
【0005】
そこで、本発明は、充填材の硬化収縮を抑制してスルーホールとバイアホールの接続信頼性を確保したプリント配線板を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、上記目的の実現に向け鋭意研究した結果、下記内容を要旨構成とする発明に想到した。
本発明の多層プリント配線板は、導体層を有する基板上に、層間樹脂絶縁層と導体層を交互に積層して内外層の導体層どうしをバイアホールにて接続したビルドアップ配線層が形成されている多層プリント配線板において、
前記基板には、表面および裏面を電気的に接続するスルーホールが形成され、そのスルーホールには金属粒子、樹脂および平均粒径が1〜1000nmの無機超微粉末からなる非導電性の充填材が充填され、さらにその充填材のスルーホールからの露出面は研磨処理により平坦化され、その平坦化された表面から前記金属粒子の一部が突出した状態で、前記充填材表面を覆う導体層がめっきにより形成され、その突出した金属粒子と前記導体層とが一体化されており、さらに、前記導体層の側面を含んだ表面に粗化層が形成されていることを特徴とする。
本発明の多層プリント配線板においては、スルーホール内壁の導体表面には粗化層が形成されていることが好ましく、また、充填材を覆う導体層は、無電解めっき膜と、その無電解めっき膜上に形成された電解めっき膜とから形成されていることが好ましい。
【0007】
なお、上記多層プリント配線板において、充填材を覆う前記導体層にはバイアホールが接続されていることが好ましく、また、前記充填材は、比抵抗が1MΩ・cm以上、より望ましくは1×108 Ω・cm以上であり、前記金属粒子は、その平均粒径が 0.1〜30μmであることが好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】
このような本発明の多層プリント配線板は、スルーホールを埋める材料として金属粒子を含む充填材を使用しているので、充填材とその充填材を覆う導体層との密着性に優れ、また非導電性の充填材を使用しているので、金属粒子を含む充填材に導電性をもたせるための硬化収縮を付与する必要がなく、スルーホール内壁導体からの充填材の剥離を防止することができる。このような剥離が存在すると、高温多湿条件下では水が溜り、この水が揮発する際に導体層を押し上げて剥離させてしまうからである。
【0009】
特に本発明では、充填材として、金属粒子、樹脂、および平均粒径が好ましくは1〜1000nm(より好ましくは2〜100nm)の無機超微粉末からなる組成物を用いることが望ましい。この理由は、無機超微粉末の分子間力によって形成される網目状構造が金属粒子をトラップし、その金属粒子は沈降することがない。このため、充填材表面に金属粒子が突出し、この金属粒子とそれを被覆する導体層が一体化してその密着性を向上させることができるからである。
これにより、充填材とスルーホール導体層との剥離を防止し、高温多湿条件下でも充填材とこの充填材を被覆する導体層との剥離が発生しなくなる。
【0010】
ここで、前記充填材を構成する金属粒子としては、銅、金、銀、アルミニウム、ニッケル、チタン、クロム、すず/鉛、パラジウムなどが使用できる。この金属粒子は、樹脂との密着性を改善するために、その表面に錯化剤などの金属表面改質剤などを付与してもよい。
この金属粒子は、その平均粒径が 0.1〜30μmであることが好ましい。この理由は、充填材を被覆する導体層との密着性を確保できる範囲だからである。
また、この金属粒子の配合量は、充填材の全固形分に対して30〜90重量%とすることが望ましい。この理由は、密着性および印刷性を同時に確保できる範囲だからである。
【0011】
また、前記充填材を構成するマトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂を用いることができる。
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂から選ばれるいずれか少なくとも1種の樹脂がよい。
熱可塑性樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、4フッ化エチレン6フッ化プロピレン共重合体(FEP)、4フッ化エチレンパーフロロアルコキシ共重合体(PFA)等のフッ素樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスルフォン(PSF)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、熱可塑型ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンスルフォン(PPES)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリオレフィン系樹脂から選ばれるいずれか少なくとも1種がよい。
【0012】
特に、充填材に用いられる最適樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂およびノボラック型エポキシ樹脂から選ばれるいずれか少なくとも1種がよい。この理由は、ビスフェノール型エポキシ樹脂は、A型、F型などの樹脂を適宜選択することにより、希釈溶媒を使用しなくともその粘度を調整でき、またノボラック型エポキシ樹脂は、高強度で耐熱性や耐薬品性に優れ、無電解めっき液のような強塩基性溶液中でも分解せず、また熱分解しないからである。
前記ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂から選ばれるいずれか少なくとも1種を用いることが望ましい。なかでも、ビスフェノールF型エポキシ樹脂は、低粘度で無溶剤で使用することができるため有利である。
前記ノボラック型エポキシ樹脂としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂から選ばれるいずれか少なくとも1種を用いることが望ましい。
このような樹脂の中で、ノボラック型エポキシ樹脂とビスフェノール型エポキシ樹脂を配合して用いる場合、その配合割合は、重量比で1/1〜1/100 が望ましい。この理由は、粘度の上昇を抑制しつつ、金属粒子の沈降を防止できる範囲だからである。
【0013】
前記充填材を構成する無機超微粒子としては、シリカ、アルミナ、炭化珪素、ムライトを用いることが望ましい。なかでもシリカが最適である。
この無機超微粒子の平均粒径は、1〜1000nm、より好ましくは2〜100nm とする。この理由は、粒子径が微細であるため、スルーホールの充填性を損なうことなく、また水素結合と推定される結合を網目状に形成でき、粒子状物質をトラップできる範囲だからである。
この無機超微粉末の配合量は、充填材の全固形分に対して 0.1〜5重量%とすることが望ましい。この理由は、充填性を損なうことなく、硬化収縮を防止できる範囲だからである。
【0014】
なお、このような樹脂組成物に使用される硬化剤としては、イミダゾール系硬化剤、酸無水物硬化剤、アミン系硬化剤が望ましい。硬化収縮が小さいからである。硬化収縮を抑制することにより、充填材とそれを被覆する導体層との一体化してその密着性を向上させることができる。
【0015】
また、このような硬化前の樹脂組成物は、必要に応じて溶剤で希釈することができる。この溶剤としては、NMP(ノルマルメチルピロリドン)、DMDG(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、グリセリン、水、1−又は2−又は3−のシクロヘキサノール、シクロヘキサノン、メチルセルソルブ、メチルセルソルブアセテート、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノールなどがある。
【0016】
本発明では、充填材の比抵抗を、106 Ω・cm以上、より好ましくは108 Ω・cm以上とし、非導電性とする。この理由は、充填材を導電性にすると、その樹脂組成物を硬化したのち研磨する際に、研磨くずが導体回路間に付着し、ショートの原因となるからである。また、上記樹脂組成物は、導電性を付与するには硬化収縮させる必要があるが、硬化収縮させることは充填材を被覆する導体層との剥離を招くことになるので好ましくないからである。
【0017】
本発明では、スルーホールおよび充填材を覆う導体層上にバイアホールが接続されていてもよい。この理由は、スルーホールによるデッドスペースを無くすことができるからである。
【0018】
本発明では、配線密度を高くするために、基板の内層に導体層が形成されていることが望ましい。このとき、基板は、導体層とプリプレグを交互に積層して形成されてなる。例えば、基板は、ガラス繊維やアラミド繊維の布あるいは不織布に樹脂を含浸させてBステージとしたプリプレグを、銅箔や回路基板と交互に積層し、加熱プレスして一体化することにより形成される。
【0019】
本発明では、充填材が充填されるスルーホールの内壁導体表面に粗化層が形成されていることが望ましい。この理由は、充填材とスルーホールとが粗化層を介して密着し隙間が発生しないからである。もし、充填材とスルーホールとの間に空隙が存在すると、その直上に電解めっきで形成される導体層は、平坦なものとならなかったり、空隙中の空気が熱膨張してクラックや剥離を引き起こしたりし、また一方で、空隙に水が溜まってマイグレーションやクラックの原因となったりする。この点、粗化層が形成されているとこのような不良発生を防止することができる。
【0020】
また、本発明において、充填材を覆う導体層の表面には、スルーホール内壁の導体表面に形成した粗化層と同様の粗化層が形成されていることが有利である。この理由は、粗化層により層間樹脂絶縁層やバイアホールとの密着性を改善することができるからである。特に、導体層の側面に粗化層が形成されていると、導体層側面と層間樹脂絶縁層との密着不足によってこれらの界面を起点として層間樹脂絶縁層に向けて発生するクラックを抑制することができる。
【0021】
このようなスルーホール内壁や導体層の表面に形成される粗化層の厚さは、0.1〜10μmがよい。この理由は、厚すぎると層間ショートの原因となり、薄すぎると被着体との密着力が低くなるからである。この粗化層としては、スルーホール内壁の導体あるいは導体層の表面を、酸化(黒化)−還元処理して形成したもの、有機酸と第二銅錯体の混合水溶液で処理して形成したもの、あるいは銅−ニッケル−リン針状合金のめっき処理にて形成したものがよい。
【0022】
これらの処理のうち、酸化(黒化)−還元処理による方法では、NaOH(20g/l)、NaClO2(50g/l)、Na3PO4(15.0g/l)を酸化浴(黒化浴)、NaOH(2.7g/l)、NaBH4 ( 1.0g/l)を還元浴とする。
【0023】
また、有機酸−第二銅錯体の水溶液を用いた処理では、スプレーやバブリングなどの酸素共存条件下で次のように作用し、導体回路である銅などの金属箔を溶解させる。
Cu+Cu(II)An →2Cu(I)An/2
2Cu(I)An/2 +n/4O2 +nAH(エアレーション)→2Cu(II)An +n/2H2 O
Aは錯化剤(キレート剤として作用)、nは配位数である。
【0024】
この処理で用いられる第二銅錯体は、アゾール類の第二銅錯体がよい。このアゾール類の第二銅錯体は、金属銅などを酸化するための酸化剤として作用する。アゾール類としては、ジアゾール、トリアゾール、テトラゾールがよい。なかでもイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾールなどがよい。
このアゾール類の第二銅錯体の含有量は、1〜15重量%がよい。この範囲内にあれば、溶解性および安定性に優れるからである。
【0025】
また、有機酸は、酸化銅を溶解させるために配合させるものである。具体例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、アクリル酸、クロトン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、安息香酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、スルファミン酸から選ばれるいずれか少なくとも1種がよい。
この有機酸の含有量は、 0.1〜30重量%がよい。酸化された銅の溶解性を維持し、かつ溶解安定性を確保するためである。
なお、発生した第一銅錯体は、酸の作用で溶解し、酸素と結合して第二銅錯体となって、再び銅の酸化に寄与する。また、有機酸に加えて、ホウフッ酸、塩酸、硫酸などの無機酸を添加してもよい。
【0026】
この有機酸−第二銅錯体からなるエッチング液には、銅の溶解やアゾール類の酸化作用を補助するために、ハロゲンイオン、例えば、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオンなどを加えてもよい。このハロゲンイオンは、塩酸、塩化ナトリウムなどを添加して供給できる。
ハロゲンイオン量は、0.01〜20重量%がよい。この範囲内にあれば、形成された粗化層は層間樹脂絶縁層との密着性に優れるからである。
【0027】
この有機酸−第二銅錯体からなるエッチング液は、アゾール類の第二銅錯体および有機酸(必要に応じてハロゲンイオン)を、水に溶解して調製する。
【0028】
また、銅−ニッケル−リンからなる針状合金のめっき処理では、硫酸銅1〜40g/l、硫酸ニッケル 0.1〜6.0 g/l、クエン酸10〜20g/l、次亜リン酸塩10〜100 g/l、ホウ酸10〜40g/l、界面活性剤0.01〜10g/lからなる液組成のめっき浴を用いることが望ましい。
【0029】
本発明において、ビルドアップ配線層で使用される層間樹脂絶縁層としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、あるいは熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の複合体を用いることができる。
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、熱硬化性ポリフェニレンエーテル(PPE)などが使用できる。熱可塑性樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、4フッ化エチレン6フッ化プロピレン共重合体(FEP)、4フッ化エチレンパーフロロアルコキシ共重合体(PFA)等のフッ素樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスルフォン(PSF)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、熱可塑型ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンスルフォン(PPES)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリオレフィン系樹脂などを使用できる。
熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の複合体としては、エポキシ樹脂−PES、エポキシ樹脂−PSF、エポキシ樹脂−PPS、エポキシ樹脂−PPESなどが使用できる。
【0030】
本発明では、層間樹脂絶縁層としてガラスクロス含浸樹脂複合体を用いることができる。このガラスクロス含浸樹脂複合体としては、ガラスクロス含浸エポキシ、ガラスクロス含浸ビスマレイミドトリアジン、ガラスクロス含浸PTFE、ガラスクロス含浸PPE、ガラスクロス含浸ポリイミドなどがある。
【0031】
また本発明において、層間樹脂絶縁層としては、無電解めっき用接着剤を用いることができる。
この無電解めっき用接着剤としては、硬化処理された酸あるいは酸化剤に可溶性の耐熱性樹脂粒子が、硬化処理によって酸あるいは酸化剤に難溶性となる未硬化の耐熱性樹脂中に分散されてなるものが最適である。この理由は、酸や酸化剤で処理することにより、耐熱性樹脂粒子が溶解除去されて、表面に蛸つぼ状のアンカーからなる粗化面を形成できるからである。粗化面の深さは、0.01〜20μmがよい。密着性を確保するためである。また、セミアディティブプロセスにおいては、0.1〜5μmがよい。密着性を確保しつつ、無電解めっき膜を除去できる範囲だからである。
【0032】
上記無電解めっき用接着剤において、特に硬化処理された前記耐熱性樹脂粒子としては、▲1▼平均粒径が10μm以下の耐熱性樹脂粉末、▲2▼平均粒径が2μm以下の耐熱性樹脂粉末を凝集させた凝集粒子、▲3▼平均粒径が2〜10μmの耐熱性樹脂粉末と平均粒径が2μm以下の耐熱性樹脂粉末との混合物、▲4▼平均粒径が2〜10μmの耐熱性樹脂粉末の表面に平均粒径が2μm以下の耐熱性樹脂粉末または無機粉末のいずれか少なくとも1種を付着させてなる疑似粒子、▲5▼平均粒径が 0.1〜0.8 μmの耐熱性樹脂粉末と平均粒径が 0.8μmを超え2μm未満の耐熱性樹脂粉末との混合物、▲6▼平均粒径が 0.1〜1.0 μmの耐熱性樹脂粉末、から選ばれるいずれか少なくとも1種を用いることが望ましい。これらは、より複雑なアンカーを形成できるからである。
この無電解めっき用接着剤で使用される耐熱性樹脂は、前述の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の複合体を使用できる。
【0033】
本発明において、基板上に形成された導体層(スルーホールに充填された充填材を覆うものを含む)と層間樹脂絶縁層上に形成された導体回路は、バイアホールで接続することができる。この場合、バイアホールは、めっき膜や導電ペーストで充填されたものがよい。
【0034】
次に、本発明の多層プリント配線板を製造する方法について一例を挙げて具体的に説明する。なお、以下に述べる方法は、セミアディティブ法による多層プリント配線板の製造方法に関するものであるが、本発明における多層プリント配線板の製造方法では、フルアディティブ法やマルチラミネーション法、ピンラミネーション法を採用することができる。
【0035】
(1) まず、基板にドリルで貫通孔を明け、貫通孔の内壁面を含む基板表面に無電解めっきを施してスルーホールを形成する。
基板としては、ガラスエポキシ基板やポリイミド基板、ビスマレイミド−トリアジン樹脂基板、フッ素樹脂基板などの樹脂基板、あるいはこれらの樹脂の銅張積層板、セラミック基板、金属基板などを用いることができる。特に、誘電率を考慮する場合は、両面銅張フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン等)基板を用いることが好ましい。この基板は、片面が粗化された銅箔をフッ素樹脂基板に熱圧着したものである。
無電解めっきとしては銅めっきがよい。フッ素樹脂基板のようにめっきのつきまわりが悪い基板の場合は、有機酸などからなる前処理液(商品名:テトラエッチ)を用いた処理、プラズマ処理などの表面改質を行う。
【0036】
(2) 次に、厚付けのために電解めっきを行う。この電解めっきとしては銅めっきがよい。
そしてさらに、スルーホール内壁および電解めっき膜表面を粗化処理して粗化層を設けてもよい。この粗化層には、酸化(黒化)−還元処理によるもの、有機酸と第二銅錯体の混合水溶液をスプレー処理(エッチング処理)して形成したもの、あるいは銅−ニッケル−リン針状合金めっきによるものがある。
【0037】
これらの処理のなかで、無電解めっきにより粗化層を形成する場合は、銅イオン濃度、ニッケルイオン濃度、次亜リン酸イオン濃度が、それぞれ 2.2×10-2〜4.1×10-2 mol/l、 2.2×10-3〜4.1 ×10-3 mol/l、0.20〜0.25 mol/lである組成のめっき水溶液を用いることが望ましい。この範囲で析出する被膜の結晶構造は針状構造になり、アンカー効果に優れるからである。
この無電解めっき水溶液には、上記化合物に加えて錯化剤や添加剤を加えてもよい。また、0.01〜10g/lの界面活性剤を加えてもよい。この界面活性剤としては、例えば、日信化学工業製のサーフィノール440 、465 、485 などのアセチレン含有ポリオキシエチレン系界面活性剤を用いることが望ましい。
即ち、無電解めっきにより粗化層を形成する場合は、硫酸銅1〜40g/l、硫酸ニッケル 0.1〜6.0 g/l、クエン酸10〜20g/l、次亜リン酸塩10〜100 g/l、ホウ酸10〜40g/l、界面活性剤0.01〜10g/lからなる液組成のめっき水溶液を用いることが望ましい。
【0038】
酸化還元処理により粗化層を形成する場合は、NaOH(20g/l)、NaClO2(50g/l)、Na3PO4(15.0g/l)を酸化浴とし、NaOH( 2.7g/l)、NaBH4 (1.0g/l)を還元浴とすることが望ましい。
【0039】
有機酸と第二銅錯体の混合水溶液を用いるエッチング処理により粗化層を形成する場合は、メック(株)製のCZ8100液に代表されるが、液中に含まれる2価の銅の酸化力を利用して銅表面を凹凸にする。
【0040】
粗化層は、イオン化傾向が銅より大きくチタン以下である金属あるいは貴金属の層で被覆されていてもよい。この理由は、前記金属あるいは貴金属の層は、粗化層を被覆し、層間絶縁層を粗化処理する際に導体回路の局部電極反応を防止してその導体回路の溶解を防止するからである。この層の厚さは0.01〜2μmがよい。
このような金属としては、チタン、アルミニウム、亜鉛、鉄、インジウム、タリウム、コバルト、ニッケル、スズ、鉛、ビスマスから選ばれる少なくとも1種がある。また、貴金属としては、金、銀、白金、パラジウムがある。なかでも、スズは、無電解置換めっきにより薄い層を形成でき、粗化層に追従できるため有利である。このスズの場合は、ホウフッ化スズ−チオ尿素、塩化スズ−チオ尿素液を使用し、Cu−Snの置換反応により0.01〜2μm程度のSn層が形成される。一方、貴金属の場合は、スパッタや蒸着などの方法が採用される。
【0041】
(3) 次に、スルーホール内に、前述した構成の充填材を充填する。
具体的には、充填材は、スルーホール部分に開口を設けたマスクを載置した基板上に、印刷法にて塗布することによりスルーホール内に充填され、充填後、乾燥、硬化される。硬化条件としては、50〜160 ℃で 0.5〜5時間であることが望ましい。
【0042】
さらに、スルーホールからはみ出した充填材および基板の電解めっき膜表面の粗化層を研磨により除去して、基板表面を平坦化する。この研磨は、ベルトサンダーやバフ研磨がよい。この研磨により、金属粒子の一部が表面に露出し、この露出した部分の金属粒子と導体層のめっき皮膜が一体化して、良好な密着性が発現する。
【0043】
(4) 前記(3) で平坦化した基板の表面に触媒核を付与した後、無電解めっきを施し、厚さ 0.1〜5μm程度の無電解めっき膜を形成し、さらに必要に応じて電解めっきを施し、厚さ5〜25μmの電解めっき膜を設ける。次に、めっき膜の表面に、感光性のドライフィルムを加熱プレスによりラミネートし、パターンが描画されたフォトマスクフィルム(ガラス製がよい)を載置し、露光した後、現像液で現像してエッチングレジストを設ける。そして、エッチングレジスト非形成部分の導体をエッチング液で溶解除去することにより、導体回路部分および充填材を覆う導体層部分を形成する。
そのエッチング液としては、硫酸−過酸化水素の水溶液、過硫酸アンモニウムや過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩水溶液、塩化第二鉄や塩化第二銅の水溶液がよい。
【0044】
(5) そして、エッチングレジストを剥離して、独立した導体回路および導体層とした後、その導体回路および導体層の表面に、粗化層を形成する。
導体回路および充填材を覆う導体層の表面に粗化層を形成すると、その導体は、層間樹脂絶縁層との密着性に優れるので、導体回路および充填材を覆う導体層の側面と樹脂絶縁層との界面を起点とするクラックが発生しない。また一方で、充填材を覆う導体層は、電気的に接続されるバイアホールとの密着性が改善される。
この粗化層の形成方法は、前述したとおりであり、酸化(黒化)−還元処理、針状合金めっき、あるいはエッチングして形成する方法などがある。
さらに、粗化後に、導体回路間に樹脂を充填し、表面を研磨して平滑化してもよい。この場合、研磨後に、導体回路表面を粗化することが望ましい。このときの充填樹脂としては、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、イミダゾール硬化剤および平均粒子径 0.1〜30μmの無機粒子からなる組成物がよい。
【0045】
(6) このようにして作製した配線基板の上に、層間樹脂絶縁層を形成する。層間樹脂絶縁層としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、あるいは熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の複合体を使用できる。また、本発明では、層間樹脂絶縁材として前述した無電解めっき用接着剤を用いることができる。
層間樹脂絶縁層は、これらの樹脂の未硬化液をロールコータやカーテンコータなどを用いて塗布したり、フィルム状の樹脂を熱圧着してラミネートすることにより形成される。なお、この状態では、導体回路パターン上の層間樹脂絶縁層の厚さが薄く、大面積を持つ導体回路上の層間樹脂絶縁層の厚さが厚くなり凹凸が発生していることが多いため、金属板や金属ロールを用い、加熱しながら押圧して、層間樹脂絶縁層の表面を平坦化することが望ましい。
【0046】
(7) 次に、この層間樹脂絶縁層に被覆される下層の導体回路(スルーホール)との電気的接続を確保するために層間樹脂絶縁層に開口を設ける。
この開口の穿孔は、層間樹脂絶縁層が感光性樹脂からなる場合は、露光、現像処理にて行い、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂からなる場合は、レーザ光にて行う。このとき、使用されるレーザ光としては、炭酸ガスレーザ、紫外線レーザ、エキシマレーザなどがある。レーザ光にて孔明けした場合は、デスミア処理を行ってもよい。このデスミア処理は、クロム酸、過マンガン酸塩などの水溶液からなる酸化剤を使用して行うことができ、また酸素プラズマ、酸素およびCF4 の混合ガスプラズマなどで処理してもよい。
【0047】
(8) 開口を形成した層間樹脂絶縁層の表面を必要に応じて粗化する。
上述した無電解めっき用接着剤を層間樹脂絶縁層として使用した場合は、その絶縁層の表面を酸や酸化剤で処理して耐熱性樹脂粒子のみを選択的に溶解または分解除去して粗化する。酸としては、リン酸、塩酸、硫酸、あるいは蟻酸や酢酸などの有機酸があるが、特に有機酸を用いることが望ましい。粗化処理した場合に、バイアホールから露出する金属導体層を腐食させにくいからである。酸化剤としては、クロム酸、過マンガン酸塩(過マンガン酸カリウムなど)を用いることが望ましい。
また、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を使用した場合でも、クロム酸、過マンガン酸塩などの水溶液から選ばれる酸化剤による表面粗化処理が有効である。なお、酸化剤では粗化されないフッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン等)などの樹脂の場合は、プラズマ処理やテトラエッチ(潤工社製の金属ナフタレン化合物)などにより表面を粗化する。
【0048】
(9) 次に、前記層間樹脂絶縁層の粗化面に無電解めっき用の触媒核を付与する。
一般に触媒核は、パラジウム−スズコロイドであり、この溶液に基板を浸漬、乾燥、加熱処理して樹脂表面に触媒核を固定する。また、金属核をCVD、スパッタ、プラズマにより樹脂表面に打ち込んで触媒核とすることができる。この場合、樹脂表面に金属核が埋め込まれることになり、この金属核を中心にめっきが析出して導体回路が形成されるため、粗化しにくい樹脂やフッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン等)のように樹脂と導体回路との密着が悪い樹脂でも、密着性を確保できる。この金属核としては、パラジウム、銀、金、白金、チタン、銅およびニッケルから選ばれるいずれか少なくとも1種以上がよい。なお、金属核の量は、20μg/cm2 以下がよい。この量を超えると金属核を除去しなければならないからである。
【0049】
(10)次に、層間樹脂絶縁層の粗化面に無電解めっきを施し、全面に無電解めっき膜を形成する。この無電解めっき膜の厚みは 0.1〜5μm、より望ましくは 0.5〜3μmである。
無電解めっきは、無電解銅めっきがよい。そのめっき液としては、常法のものを使用でき、例えば、29g/lの硫酸銅、25g/lの炭酸ナトリウム、 140g/lの酒石酸塩、40g/lの水酸化ナトリウム、37%ホルムアルデヒド 150ml、pH=11.5からなる組成のものがよい。
【0050】
(11)前記(10)で形成した無電解めっき膜上に、めっきレジストを形成する。めっきレジストは、前述のように、感光性樹脂フィルム(ドライフィルム)をラミネートし、露光、現像処理することにより形成される。
【0051】
(12)さらに、めっきレジスト非形成部分に電解めっきを施し、導体回路部分(バイアホール部分を含む)を厚付けする。
ここで、上記電解めっきとしては、銅めっきを用いることが望ましく、その厚みは、5〜30μmがよい。
また、前記バイアホール内には、電解めっき膜を充填していわゆるフィルドビアを形成することが望ましい。この理由は、層間樹脂絶縁層の平坦性を確保できるからである。
さらに、前記バイアホールは、基板に設けたスルーホールの直上に形成されていてもよい。高密度化のためである。
【0052】
(13)めっきレジストを剥離した後、そのめっきレジスト下の無電解めっき膜を、硫酸と過酸化水素の混合水溶液、過硫酸ナトリウムや過硫酸アンモニウムや過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩水溶液、塩化第二鉄や塩化第二銅の水溶液などのエッチング液で溶解除去し、独立した導体回路(バイアホールを含む)とする。さらに、露出した粗化面上のパラジウム触媒核をクロム酸などで溶解除去する。
【0053】
(14)そして、この基板上に前述の工程を繰り返してさらに上層の導体回路を設けることができる。
以下、実施例をもとに説明する。
【0054】
【実施例】
(実施例1)
(1) 厚さ 0.8mmのBT(ビスマレイミドトリアジン)樹脂基板1に片面粗化された18μmの銅箔2がラミネートされている銅張積層板を出発材料とした(図1(a) 参照)。まず、この銅張積層板をドリル削孔し(図1(b) 参照)、ついでパラジウム−スズコロイドを付着させ、下記組成および条件にて無電解めっきを施した。
〔無電解めっき水溶液〕
EDTA 150 g/l
硫酸銅 20 g/l
HCHO 30 ml/l
NaOH 40 g/l
α、α’−ビピリジル 80 mg/l
PEG 0.1 g/l
〔無電解めっき条件〕
70℃の液温度で30分
【0055】
ついで、以下の条件で電解銅めっきを施し、厚さ15μmの電解銅めっき膜を形成した(図1(c) 参照)。
〔電解めっき水溶液〕
硫酸 180 g/l
硫酸銅 80 g/l
添加剤(アトテックジャパン製、商品名:カパラシドGL)1 ml/l
〔電解めっき条件〕
電流密度 1A/dm2
時間 30分
温度 室温
【0056】
(2) 全面に無電解銅めっき膜と電解銅めっき膜からなる導体(スルーホールを含む)を形成した基板を、水洗いし、乾燥した後、NaOH(20g/l)、NaClO2(50g/l)、Na3PO4(15.0g/l)を酸化浴(黒化浴)、NaOH( 2.7g/l)、NaBH4 ( 1.0g/l)を還元浴とする酸化還元処理に供し、そのスルーホール3を含む導体の全表面に粗化層4を設けた(図1(d) 参照)。
【0057】
〔スルーホール用充填材の調製〕
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(油化シェル製、エピコート152) 3.5重量部、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(油化シェル製、エピコート807 )14.1重量部、平均粒子径14nmのシリカ超微粉末(アエロジルR202 ) 1.0重量部を3本ローラにて混練し、さらに、イミダゾール硬化剤(四国化成製、2E4MZ-CN) 1.2重量部、平均粒子径15μmの銅粉 100重量部を加えて3本ローラにて混練し、これらの混合物の粘度を22±1℃で 200〜1000Pa・sに調整して、スルーホール用充填材5を調製した。
【0058】
(3) 調製した充填材5を、スルーホール3内にスクリーン印刷によって充填し、乾燥した後、80℃, 100 ℃でそれぞれ1時間づつ、さらに 150℃で1時間の加熱により硬化させた。
そして、導体上面の粗化面およびスルーホール3からはみ出した充填材5を、#400 のベルト研磨紙(三共理化学製)を用いたベルトサンダー研磨により除去し、さらに、このベルトサンダー研磨による傷を取り除くために、アルミナ砥粒やSiC砥粒によるバフ研磨を行い、基板表面を平坦化した(図1(e) 参照)。
【0059】
(4) 前記(3) で平坦化した基板表面に、パラジウム触媒(アトテック製)を付与し、前記(1) と同じ条件で無電解銅めっきを施すことにより、厚さ 0.6μmの無電解銅めっき膜6を形成した(図1(f) 参照)。
【0060】
(5) ついで、前記(1) と同じ条件で電解銅めっきを施し、厚さ15μmの電解銅めっき膜7を形成し、導体回路9となる部分の厚付け、およびスルーホール3に充填された充填材5を覆う導体層(円形のスルーホールランド)10となる部分を形成した。
【0061】
(6) 導体回路9および導体層10となる部分を形成した基板の両面に、市販の感光性ドライフィルムを張りつけ、マスクを載置して、 100mJ/cm2 で露光、 0.8%炭酸ナトリウム水溶液で現像処理し、厚さ15μmのエッチングレジスト8を形成した(図2(a) 参照)。
【0062】
(7) エッチングレジスト8を形成してない部分のめっき膜を、硫酸と過酸化水素の混合液を用いるエッチング液で溶解除去して、さらにエッチングレジスト8を5%KOHで剥離除去して、独立した導体回路9および充填材5を覆う導体層10を形成した(図2(b) 参照)。さらに、酸化還元処理して側面を含む導体表面を前記(2) と同様にして粗化処理した。
【0063】
〔樹脂充填剤の調製〕
▲1▼.ビスフェノールF型エポキシモノマー(油化シェル製、分子量310,YL983U)100重量部、表面にシランカップリング剤がコーティングされた平均粒径 1.6μmでSiO2 球状粒子(アドマテック製、CRS 1101−CE、ここで、最大粒子の大きさは後述する内層銅パターンの厚み(15μm)以下とする) 170重量部、レベリング剤(サンノプコ製、ペレノールS4) 1.5重量部を3本ロールにて混練して、その混合物の粘度を23±1℃で45,000〜49,000cps に調整した。
▲2▼.イミダゾール硬化剤(四国化成製、2E4MZ-CN)6.5 重量部。これらを混合して樹脂充填剤12aを調製した。
【0064】
(8) 調製した樹脂充填剤12aを、基板の片面にスクリーン印刷にて塗布することにより、導体回路9または導体層10の間に充填し、70℃, 20分間で乾燥させ、他方の面についても同様にして樹脂充填剤12aを導体回路9または導体層10の間に充填し、70℃, 20分間で乾燥させた。即ち、この工程により、樹脂充填剤12aが内層銅パターン間に充填される。
【0065】
(9) 前記(8) の処理を終えた基板の片面を、#400 のベルト研磨紙(三共理化学製)を用いたベルトサンダー研磨により、内層銅パターン9,10の表面に樹脂充填剤12aが残らないように研磨し、次いで、前記ベルトサンダー研磨による傷を取り除くためのバフ研磨を行った。このような一連の研磨を基板の他方の面についても同様に行った。次いで、 100℃で1時間、 120℃で3時間、 150℃で1時間、 180℃で7時間の加熱処理を行って樹脂充填剤12aを硬化した。
【0066】
このようにして、導体回路9または導体層10の間に充填された樹脂充填剤12aの表層部および導体回路9または導体層10上面の粗化層11を除去して基板両面を平滑化し、樹脂充填剤12aと導体回路9または導体層10の側面とが粗化層11を介して強固に密着した基板を得た。即ち、この工程により、樹脂充填剤12aの表面と内層銅パターンの表面が同一平面となる。ここで、充填した硬化樹脂のTg点は155.6 ℃、線熱膨張係数は44.5×10-6/℃であった。
【0067】
(10)次に、導体回路9および充填材5の表面を覆う導体層10の表面にCu−Ni−P合金からなる厚さ 2.5μmの粗化層(凹凸層)11を形成し、さらにこの粗化層11の表面に厚さ 0.3μmのSn層を形成した(図2(c) 参照、Sn層については図示しない)。
その形成方法は以下のようである。即ち、基板を酸性脱脂してソフトエッチングし、次いで、塩化パラジウムと有機酸からなる触媒溶液で処理して、Pd触媒を付与し、この触媒を活性化した後、硫酸銅8g/l、硫酸ニッケル 0.6g/l、クエン酸15g/l、次亜リン酸ナトリウム29g/l、ホウ酸31g/l、界面活性剤 0.1g/l、pH=9からなる無電解めっき浴にてめっきを施し、銅導体回路の表面にCu−Ni−P合金からなる厚さ 2.5μmの粗化層11を形成した。さらに、0.1 mol/lホウフッ化スズ− 1.0 mol/lチオ尿素液からなるpH=1.2 の無電解スズ置換めっき浴に、温度50℃で1時間浸漬してCu−Sn置換反応させ、前記粗化層の表面に厚さ 0.3μmのSn層を設けた(Sn層については図示しない)。
【0068】
(11)無電解めっき用接着剤A、Bを次のように調製した。
A.上層用の無電解めっき用接着剤の調製
▲1▼.クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬製、分子量2500)の25%アクリル化物を35重量部、感光性モノマー(東亜合成製、アロニックスM315 )3.15重量部、消泡剤(サンノプコ製、S−65) 0.5重量部、NMPを 3.6重量部を攪拌混合した。
▲2▼.ポリエーテルスルフォン(PES)12重量部、エポキシ樹脂粒子(三洋化成製、ポリマーポール)の平均粒径 1.0μmを 7.2重量部、平均粒径 0.5μmのものを3.09重量部、を混合した後、さらにNMP30重量部を添加し、ビーズミルで攪拌混合した。
▲3▼.イミダゾール硬化剤(四国化成製、2E4MZ-CN)2重量部、光開始剤(関東化学製、ベンゾフェノン)2重量部、光増感剤(保土ヶ谷化学製、 EAB) 0.2 重量部、NMP 1.5重量部を攪拌混合した。これらを混合して上層用の無電解めっき用接着剤を得た。
【0069】
B.下層用の無電解めっき用接着剤の調製
▲1▼.クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬製、分子量2500)の25%アクリル化物を35重量部、感光性モノマー(東亜合成製、アロニックスM315 )4重量部、消泡剤(サンノプコ製、S−65) 0.5重量部、NMPを 3.6重量部を攪拌混合した。
▲2▼.ポリエーテルスルフォン(PES)12重量部、エポキシ樹脂粒子(三洋化成製、ポリマーポール)の平均粒径 0.5μmのものを 14.49重量部、を混合した後、さらにNMP30重量部を添加し、ビーズミルで攪拌混合した。
▲3▼.イミダゾール硬化剤(四国化成製、2E4MZ-CN)2重量部、光開始剤(チバガイギー製、イルガキュア I−907 )2重量部、光増感剤(日本化薬製、DETX-S) 0.2重量部、NMP 1.5重量部を攪拌混合した。これらを混合して下層用の無電解めっき用接着剤を得た。
【0070】
(12)前記(11)で調製した無電解めっき用接着剤B(粘度 1.5〜3.2 Pa・s) と無電解めっき用接着剤A(粘度5〜20Pa・s) を、基板の両面に、順次ロールコータを用いて塗布し、水平状態で20分間放置してから、60℃で30分間の乾燥を行い、厚さ40μmの接着剤層12b(2層構造)を形成した(図2(d) 参照)。さらに、この接着剤層12b上に粘着剤を介してポリエチレンテレフタレートフィルムを貼付した。
【0071】
(13)前記接着剤層12bを形成した基板の両面に、85μmφの黒円が印刷されたフォトマスクフィルムを密着させ、超高圧水銀灯により 500mJ/cm2 で露光した。これをDMDG溶液でスプレー現像することにより、接着剤層12bに85μmφのバイアホールとなる開口を形成した。さらに、当該基板を超高圧水銀灯にて3000mJ/cm2 で露光し、100 ℃で1時間、その後 150℃で5時間の加熱処理をすることにより、フォトマスクフィルムに相当する寸法精度に優れた開口(バイアホール形成用開口13)を有する厚さ35μmの接着剤層(層間樹脂絶縁層)12bを形成した(図2(e) 参照)。なお、バイアホールとなる開口には、粗化層を部分的に露出させる。
【0072】
(14)バイアホール形成用開口13を形成した基板を、クロム酸に19分間浸漬し、接着剤層表面に存在するエポキシ樹脂粒子を溶解除去して、当該接着剤層の表面を粗化し、その後、中和溶液(シプレイ社製)に浸漬してから水洗した。
【0073】
(15)粗面化処理(粗化深さ3μm)を行った基板に対し、パラジウム触媒(アトテック製)を付与することにより、接着剤層12bおよびバイアホール用開口13の表面に触媒核を付与した。
【0074】
(16)この基板に、前記(1) と同様にして無電解銅めっきを施し、粗面全体に厚さ0.6μmの無電解銅めっき膜を形成した(図3(a) 参照)。このとき、めっき膜が薄いため無電解めっき膜表面には凹凸が観察された。
【0075】
(17)市販の感光性樹脂フィルム(ドライフィルム)を無電解銅めっき膜14に張り付け、マスクを載置して、 100mJ/cm2 で露光し、 0.8%炭酸ナトリウムで現像処理し、厚さ15μmのめっきレジスト16を設けた(図3(b) 参照)。
【0076】
(18)次に、前記(1) と同様にして電解銅めっきを施し、厚さ15μmの電解銅めっき膜15を形成し、導体回路部分およびバイアホール部分の厚付けを行った(図3(c) 参照)。
【0077】
(19)めっきレジスト16を5%KOHで剥離除去した後、そのめっきレジスト16下の無電解めっき膜14を硫酸と過酸化水素の混合液でエッチング処理して溶解除去し、無電解銅めっき膜14と電解銅めっき膜15からなる厚さ16μmの導体回路9(バイアホール17を含む)を形成した(図3(d) 参照)。
【0078】
(20)前記(19)で導体回路9(バイアホール17を含む)を形成した基板を、硫酸銅8g/l、硫酸ニッケル 0.6g/l、クエン酸15g/l、次亜リン酸ナトリウム29g/l、ホウ酸31g/l、界面活性剤 0.1g/lからなるpH=9の無電解めっき液に浸漬し、該導体回路の表面に厚さ3μmの銅−ニッケル−リンからなる粗化層11を形成した。このとき、粗化層11をEPMA(蛍光X線分析)で分析したところ、Cu 98mol%、Ni 1.5mol %、P 0.5 mol%の組成比を示した。そしてさらに、その基板を水洗いし、0.1mol/lホウふっ化スズ−1.0mol/lチオ尿素液からなる無電解スズ置換めっき浴に50℃で1時間浸漬し、前記粗化層11の表面に厚さ0.05μmのスズ置換めっき層を形成した(但し、スズ置換めっき層については図示しない)。
【0079】
(21) 前記(12)〜(20)の工程を繰り返すことにより、さらに上層の層間樹脂絶縁層12bと導体回路9(バイアホール17を含む)を1層積層し、多層配線基板を得た(図4(a) 参照)。なお、ここでは、導体回路の表面に銅−ニッケル−リンからなる粗化層11を設けるが、この粗化層11表面にはスズ置換めっき層を形成しない。
【0080】
(22)一方、DMDGに溶解させた60重量%のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬製)のエポキシ基50%をアクリル化した感光性付与のオリゴマー(分子量4000)を 46.67重量部、メチルエチルケトンに溶解させた80重量%のビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェル製、エピコート1001)14.121重量部、イミダゾール硬化剤(四国化成製、2E4MZ-CN)1.6 重量部、感光性モノマーである多価アクリルモノマー(日本化薬製、R604 )1.5 重量部、同じく多価アクリルモノマー(共栄社化学製、DPE6A ) 3.0重量部、アクリル酸エステル重合物からなるレベリング剤(共栄社製、ポリフローNo.75 )0.36重量部を混合し、この混合物に対して光開始剤としてのイルガキュアI-907(チバガイギー製) 2.0重量部、光増感剤としてのDETX-S(日本化薬製) 0.2重量部を加え、さらにDMDG(ジエチレングリコールジメチルエーテル)1.0 重量部を加えて、粘度を25℃で1.4±0.3 Pa・sに調整したソルダーレジスト組成物を得た。なお、粘度測定は、B型粘度計(東京計器、 DVL-B型)で 60rpmの場合はローターNo.4、6rpm の場合はローターNo.4によった。
【0081】
(23)前記(21)で得られた多層配線基板の両面に、上記ソルダーレジスト組成物を20μmの厚さで塗布した。次いで、70℃で20分間、70℃で30分間の乾燥処理を行った後、クロム層によってソルダーレジスト開口部の円パターン(マスクパターン)が描画された厚さ5mmのソーダライムガラス基板を、クロム層が形成された側をソルダーレジスト層に密着させて1000mJ/cm2 の紫外線で露光し、DMTG現像処理した。さらに、80℃で1時間、 100℃で1時間、 120℃で1時間、 150℃で3時間の条件で加熱処理し、パッド部分が開口した(開口径 200μm)ソルダーレジスト層18(厚み20μm)を形成した。
【0082】
(24)次に、ソルダーレジスト層18を形成した基板を、塩化ニッケル30g/l、次亜リン酸ナトリウム10g/l、クエン酸ナトリウム10g/lからなるpH=5の無電解ニッケルめっき液に20分間浸漬して、開口部に厚さ5μmのニッケルめっき層19を形成した。さらに、その基板を、シアン化金カリウム2g/l、塩化アンモニウム75g/l、クエン酸ナトリウム50g/l、次亜リン酸ナトリウム10g/lからなる無電解金めっき液に93℃の条件で23秒間浸漬して、ニッケルめっき層19上に厚さ0.03μmの金めっき層20を形成した。
【0083】
(25)そして、ソルダーレジスト層18の開口部に、はんだペーストを印刷して 200℃でリフローすることによりはんだバンプ(はんだ体)21を形成し、はんだバンプ21を有する多層プリント配線板を製造した(図4(b) 参照)。なお、はんだとしては、スズ−銀、スズ−インジウム、スズ−亜鉛、スズ−ビスマスなどが使用できる。
【0084】
(比較例1)
スルーホールに導電ペースト(タツタ電線製、DDペースト XAE1209 )をスクリーン印刷して硬化させたこと以外は、実施例1と同様にしてはんだバンプを有する多層プリント配線板を製造した。
【0085】
このようにして製造した実施例1と比較例1の多層プリント配線板について、湿度 100%、温度 121℃、2気圧の条件で 200時間放置するPCT(プレッシャークッカーテスト)試験を実施し、バイアホールとスルーホールとの断線の有無を確認した。その結果、実施例1の配線板では、導体層とスルーホールとの間で断線が観察されなかったのに対し、比較例1の配線板では、その断線が見られた。これは、比較例1の配線板をスルーホール部でクロスカットして光学顕微鏡で観察したところ、導電ペーストが硬化収縮しており、スルーホールとその導電ペーストの硬化体との間に隙間が発生し、ここに水が溜まって、加熱により気体となってスルーホール上の導体層を押し上げ、断線に及んだと推定される。
【0086】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、充填材の硬化収縮を抑制してスルーホールとバイアホールの接続信頼性を確保したプリント配線板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(f) は、本発明の多層プリント配線板を製造する工程の一部を示す図である。
【図2】(a)〜(e) は、本発明の多層プリント配線板を製造する工程の一部を示す図である。
【図3】(a)〜(d) は、本発明の多層プリント配線板を製造する工程の一部を示す図である。
【図4】(a),(b) は、本発明の多層プリント配線板を製造する工程の一部を示す図である。
【符号の説明】
1 基板
2 銅箔
3 スルーホール
4 粗化層
5 充填材
6 無電解めっき膜
7 電解めっき膜
8 エッチングレジスト
9 導体回路
10 導体層
11 粗化層
12a 樹脂充填剤
12b 層間樹脂絶縁層(接着剤層)
13 バイアホール用開口
14 無電解めっき膜
15 電解めっき膜
16 めっきレジスト
17 バイアホール
18 ソルダーレジスト層
19 ニッケルめっき層
20 金めっき層
21 はんだバンプ(はんだ体)
Claims (6)
- 導体層を有する基板上に、層間樹脂絶縁層と導体層を交互に積層して内外層の導体層どうしをバイアホールにて接続したビルドアップ配線層が形成されている多層プリント配線板において、
前記基板には、表面および裏面を電気的に接続するスルーホールが形成され、そのスルーホールには金属粒子、樹脂および平均粒径が1〜1000nmの無機超微粉末からなる非導電性の充填材が充填され、さらにその充填材のスルーホールからの露出面は研磨処理により平坦化され、その平坦化された表面から前記金属粒子の一部が突出した状態で、前記充填材表面を覆う導体層がめっきにより形成され、その突出した金属粒子と前記導体層とが一体化されており、さらに、前記導体層の側面を含んだ表面に粗化層が形成されていることを特徴とする多層プリント配線板。 - 前記スルーホール内壁の導体表面には粗化層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の多層プリント配線板。
- 前記充填材を覆う導体層は、無電解めっき膜と、その無電解めっき膜上に形成された電解めっき膜とから形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の多層プリント配線板。
- 充填材を覆う前記導体層にはバイアホールが接続されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の多層プリント配線板。
- 前記充填材は、比抵抗が1MΩ・cm以上であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の多層プリント配線板。
- 前記金属粒子は、平均粒径が0.1〜30μmであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の多層プリント配線板。
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