(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体ウェーハの部分外観図である。第1の実施の形態に係る半導体ウェーハは、ウェーハ11と、ウェーハ11の外周部に形成されたベベル部12と、ウェーハ11上に形成された製造物15と、ベベル部12に付されたIDマーク(14a〜d)とを具備する。ここで、IDマーク(14a〜d)は、製造物15、製造物15の製造条件、及び製造物15についての検査結果を少なくとも示す。ここで、製造物15、製造物15の製造条件、及び製造物15についての検査結果を、「製造物に関する情報」と定義する。IDマーク(14a〜d)は、各製造物のそれぞれの製造工程時にその都度、必要な回数、マーキングされる。なお、「製造物に関する情報」には、ウェーハ上に形成された製造物のロット番号もしくは製造順番、製造物の機能、及び製造工程の検査結果が含まれる。
ウェーハ11の外周部とは、半導体集積回路が形成されないウェーハ11の表面の外周部分、ウェーハ11の側面、及びウェーハ11の裏面の外周部分を含む意である。また、製造物15とは、ウェハ11の表面に所望の半導体集積回路を形成する為の一連の半導体製造工程において製造される総ての製造物を含む意である。具体的には、製造物15には、ウェーハ11の表面に形成されたn型或いはp型の半導体領域、ウェーハ11上に堆積された絶縁物、半導体、導電体からなる膜、及びこれらの膜を選択的に除去して所望の形状に加工されたパターンが含まれる。
より具体的には、高温で清浄な雰囲気でウェーハ11を熱酸化して形成された熱酸化膜、ウェーハ11上にCVD法などにより堆積された酸化膜や窒化膜等の絶縁膜、塗布/キュアされたレジスト膜、レジスト膜の露光/現像により形成されたレジストパターン、レジストパターンをマスクとして絶縁膜を選択的にエッチングして形成された絶縁物からなるパターン、不純物元素のイオン注入や熱拡散等により形成される所定の導電型及び導電率を有する半導体領域、半導体膜が、ここで言う製造物15に含まれる。即ち、製造物15には、ウェーハ11上にトランジスタ、キャパシタ、或いはこれらの素子間を接続する金属配線を形成するために繰り替えされる膜の堆積、不純物の添加、パターニング、エッチングにおいて形成される製造物を示す。
更に、IDマーク14が示す情報には、ウェーハ11そのものに関する情報が含まれる。具体的には、IDマーク14には、単結晶インゴットの製造からスライス加工及びラッピング加工を経て製造されるウェーハの製造履歴及び製造条件、ウェーハ11自身の属性、特性を示すものが含まれる。また、IDマークは、ウェーハ上の特定の部分に付することにより、ウェーハ主面内の結晶方位を示すための基準となるマーク(以後、「基準IDマーク」という)となる。基準IDマークについては、第6乃至第11の実施の形態において詳細に述べる。
IDマーク14は、英数字、1次元コード、または2次元コードのうちの何れであっても構わない。本発明の実施の形態では、特に指定しない限り、2次元コードである場合について説明する。2次元コードは、複数のドットマークから構成される。ドットマークの形状は、例えば、幅約5um、高さ約0.5umの凸形状を有する。2次元コードは、縦に8個及び横に32個や、縦16個及び横16個等のマトリックス状に配置された複数のドットマークからなり、製造物15に関する情報を有する。2次元コードの大きさは、一般に、横100〜200μm、縦50〜100μm程度と極めて微細である。よって、人間の目で読み取ることは勿論不可能である。したがって、実施の形態においてIDマーク14は専用の読み取り機を用いて読み取られる。
IDマーク14を刻印し、また読み取るためには、ウェーハ11内での基準位置が必要である。基準位置としてノッチ13を用いることができる。ノッチ13はウェーハ11の結晶方位を示すために形成された基準物であり、ウェーハ11の外周部に形成されている。また、IDマーク14はウェーハ11のベベル部12に刻印されているため、複数のウェーハ11のIDマーク14を、ウェーハカセットに入った状態において連続的に読み取ることが可能である。
次に、図1に示す半導体ウェーハを用いて製造される半導体装置の製造方法を説明する。
(イ)まず、一連の半導体製造工程の最初に、ウェーハ11自身の認識符号(IDマーク)14aをウェーハ11の外周部に形成されたベベル部12に刻印する。IDマーク14aは、製造物に関する情報の他に、製品の種類、製造場所、製造開始日、使用する製造プロセス、及び製造担当者に関する情報を有し、ウェーハ11のノッチ部分13を基準にして右側に基板端部より例えば100um位の位置に刻印される。IDマーク14aを構成する複数のドットマークは、連続パルスレーザビームを光学系を介してベベル部12に照射して、ベベル部12表面を局所的に溶融することにより形成される。
(ロ)そして、IDマーク14aを基にして一連の半導体製造工程が開始される。例えば、まず酸化工程に始まり、パターン形成のマスクとなる化学的気相成長(CVD)工程に引継がれる。ここで、バッチ内の各ウェーハ11に対して、ウェーハ11上に形成されたマスク材の膜厚を計測する。膜厚の測定値は、個々のウェーハ11の膜厚値としてホストコンピュータに収集されると同時に、膜種および膜厚の測定値を示すIDマーク14bとして、IDマーク14aの隣に追記される。
なお、従来技術においては、1つのバッチの中から選ばれたテストピースの膜厚が計測されていた。そして、テストピースの膜厚値が、バッチの典型的な膜厚としてホストコンピュータに収集されていた。テストピースの膜厚値は、グルーピングされた複数のウェーハ11を代表する膜厚値として扱われるため、各ウェーハ11の膜厚値はテストピースの膜厚値に対してバラツキを持っている。そこで、次の製造工程における製造条件が、各ウェーハ11の膜厚値のバラツキを考慮して経験的に設定されていた。
(ハ)その後、マスク材はレジストを用いてパターニングされ、ドライエッチング工程に送られて加工される。その際、ドライエッチング装置内に装備された、IDマークの読み取り装置によって、IDマーク14aが読み取られる。そして、パターン情報や膜種、膜厚情報等がドライエッチング装置に与えられ、個々のウェーハ11に対して最適なエッチングプロセス条件が選択される。
(ニ)そして、種々の洗浄工程を経た後に、ウェーハ11の第1主面を選択的にエッチングし、形成したシリコン基板の溝のCVD膜を埋め込み、素子分離を形成する。
次に、イオン注入によりウェルを形成した後にトランジスタ工程へと進む。ゲート絶縁膜を形成した後にゲート電極を形成する。ゲート電極を形成する工程においても、先のマスク工程と同様に、CVD法により形成した電極膜の膜厚情報を表すIDマーク14cがマーク14bの隣に追記される。電極膜の膜厚情報が、ドライエッチングプロセスにフィードバックされることにより、オーバーエッチング時間を個々のウェーハ11において制御することが可能となる。
(ホ)さらに、ソース・ドレインの形成工程においては、カバー膜となる酸化膜の膜厚情報を示すIDマーク14dをIDマーク14cの隣に追記する。IDマーク14dによって、個々のウェーハ11に対して最適なイオン注入条件が調整され、トランジスタ特性のバラツキが低減される。
(へ)また、枚葉式のウェットエッチング工程においても、ドライエッチング工程と同様に、膜厚情報を示すIDマークがベベル部12に追記される。膜厚情報を示すIDマークによって、エッチング時間が個々のウェーハ11において設定され、仕上がり形状を一定にすることができる。
このように、各製造工程において形成される製造物に関する情報を表す複数個のIDマーク(14a〜d)を、ウェーハ11の外周部に形成されたベベル部12に順に追記していく。例えば、個々のIDマーク(14a〜d)を連続的にある一定の距離、例えば100umおきに刻印する。読み取り装置は、IDマーク(14a〜d)の規則的な配置情報によりノッチ13を基準にして1番右端に位置する最新の情報にアクセスすることができる。
個々のウェーハ11に直接IDマーク14を刻印する。その後の製造工程において、ウェーハ11に刻印したIDマーク14を読み取り、ウェーハ11ごとに製造条件を設定する。ホストコンピュータヘアクセスすることなく、個々のウェーハ11に最適なプロセス条件を選択することが可能となり、バッチ内のウェーハ間で発生する製造バラツキを抑制することができる。なお、IDマーク(14a〜d)の刻印位置は、規則性を持たせていれば、ノッチ13に対して、45度の位置、90度、或いは180度の位置に刻印するように設定しても構わない。
また、1つの認識符号(IDマーク)14により非常に膨大な工程情報が管理され、製造工程中に必要な情報の読み出しに非常に時間がかかっていた。これに対して、ベベル部12に個々の製造工程の工程情報をそれぞれ刻印するため、必要な情報を短時間に読み出すことが可能となる。
さらに、各半導体製造装置でIDマーク(14a〜d)の読み取りを行う。これにより、短時間に個々のウェーハ11の工程情報を次工程にフィードフォワードし、各製造工程の揺らぎに応じたプロセスを組むことができる。したがって、IDマーク(14a〜d)が付された半導体ウェーハによって製造される半導体装置の性能バラツキを抑えることが可能となる。特に、技術開発段階にある製造プロセスのように未成熟なプロセスであっても個々に製造条件を設定できるため、いち早く生産ラインでの適用が可能となる。
(第1の実施の形態の変形例1)
第1の実施の形態では、製造物に関する情報を、製造物15ごとにIDマーク(14a〜d)として次々と追記してゆき、個々の製造工程において必要な情報を有するIDマーク(14a〜d)を選択的に読み出す場合について示した。しかしながら、一連の半導体製造工程を通して、初期のIDマーク14aに含まれる情報を、その後の製造工程において付されるIDマーク(14b〜d)にも含ませることにより、既製の製造物15の認識を1つのIDマークとして上流から下流へと更新していくこともできる。即ち、先に付されたIDマークに隣接して、当該IDマークが付された後に形成された製造物に関する情報及び先に付されたIDマークが示す情報を含む新たなIDマークを付することもできる。
例えば、図1において、まず製造物認識符号(IDマーク)14aをノッチ13の右に刻印する。次に所望の工程を経た後に、得られた膜厚情報を初期のIDマーク14aを含めた新たなIDマーク14bを、初期の製造物認識符号(IDマーク)14aの右に刻印する。半導体製造装置はベベル部12の1番右端にあるIDマーク14bが最新の情報として認識する。
第1の実施の形態では、個々の情報が個々のIDマーク(14a〜d)に分割されているので、容量の小さなマトリックスで刻印することが可能であるという利点を持つ。これに対して、第1の実施の形態の変形例1では、すべての情報を新たに刻印し直すので、マトリックスの容量が大きくなるが、1つのIDマーク(14a〜d)からすべての工程情報を一度に引き出すことができる利点を持つ。
(第1の実施の形態の変形例2)
種々の製品を混載した半導体ウェハを製造ラインへ流す場合に対して、第1の実施の形態を適用した例を説明する。LSIの製造工程は、通常、まずShallow Trench Isolation(STI)などによる素子分離工程を行い、次にゲート形成工程、コンタクト形成工程及びキャパシタ形成工程を経て、配線形成工程を行う。
個々のモジュール毎にウェーハを管理する方法について述べる。図1に示したように、最初に、ウェーハ11に認識番号を表すIDマーク14aを刻印する。そして、酸化工程、CVD工程を経てSTIのマスク形成工程へと進む。この際に第1の実施の形態でも述べたように、マスク膜厚等のプロセス条件を表すIDマーク14bがウェーハ11に刻印される。そして、個々のIDマーク14bが反応性イオンエッチング(RIE)装置において読み取られることにより、個々の半導体ウェーハ11に対する最適条件が設定され、マスク加工が行われる。
引き続き、Siエッチング工程、酸化工程、埋め込み工程を経て、STI用の溝に絶縁膜が埋め込まれる。次に、化学的機械的研磨(CMP)工程へと進む前に、研磨すべき酸化膜厚は計測され、その値を表すIDマーク14cがウェーハ11に刻印されている。IDマーク14cを基にしてCMPのポリッシング時間が個々のウェーハ11毎に最適化される。
その後、洗浄工程を経て、STIによる素子分離が完成するが、この際に、どのようなマスクやプロセスを経て形成された素子分離基板であるかを示すIDマーク14dをウェーハ11のベベル部12に刻印しておく。そして、素子分離を形成したウェーハ11を作りだめしておき、製品の需要に応じて次工程へと進める。ウェーハ11はこの刻印されたIDマーク14dによって管理される。
また、ゲート形成後においても同様に、ゲート形成までのマスク、プロセス条件、検査結果等を含む情報を表すIDマーク14dをゲート形成完了時に刻印し、IDマーク14dによりウェーハを管理する。このようにウェーハ11を管理することにより、製品需要にフレキシブルに対応できる生産体系を採ることができる。
(第1の実施の形態の変形例3)
ウェーハ工程が終了し、アッセンブリ工程へと進む際のチップの管理方法に適用した例を示す。ウェーハ工程が終了した後のチップ検査工程において、半導体ウェハ上の半導体集積回路装置は、良品チップと不良品チップとに振り分けられる。第1実施形態及びその変形例1、2に示したIDマーク(14a〜d)に含まれているプロセス情報や、ウェーハ11上の半導体チップの位置情報、検査結果を含む新たなIDマークを半導体チップ毎に付する。
ウェーハ11を切断して半導体チップを形成した後においては、ウェーハのプロセス情報、ウェーハ上でのチップの位置情報、及びチップ毎の検査結果を、半導体チップごとにまとめておくことは一般的に困難である。このことは、半導体チップとなってしまってからの不良解析を困難にしている。
これらの情報を一括管理できるIDマークを半導体チップに施し、このIDマークを用いて半導体チップを管理することにより、半導体チップの不良解析を容易にすることができる。また、市場に出ていった半導体チップに不良が発生した場合においても、半導体チップに刻印したIDマークに全ての情報が含まれているので、故障解析を容易にすることができる。
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態においては、半導体ウェーハへIDマークを付する方法について説明する。図2(a)〜(c)は、本発明の第2実施形態に係る半導体ウェーハのマーキング方法を示すフローチャートである。
(イ)第2の実施の形態に係るドットマークの形成方法は、半導体装置の製造工程の最初に実行される。まず図2(a)に示すように、使用するウェーハ16は、ベベル部の表面が素子形成領域に比較してラフネスが大きいものであり、具体的にはベベル部にサイズ0.2μm、段差0.2μmの凹凸17を有する。
(ロ)このウェーハ16に対して、図2(b)に示すように、例えばガウシアン形状のエネルギー密度分布を持つHe−Neレーザ光18の結像をベベル部表面からずらした状態でベベル部の一部を走査する。これによって、レーザ光18が照射されたベベル部表面の凹凸17が溶融、再結晶化する過程で、レーザ照射面が平滑化される。
(ハ)次に、図2(c)に示すように、例えばガウシアン形状のエネルギー密度分布を持つHe−Neレーザ光19をベベル部表面で結像した状態で照射する。これによって、ウェーハ16表面が溶融、再結晶化される過程で、例えばサイズ5μm、段差0.5μmの微小突起部からなるドットマーク20が刻印される。複数のドットマーク20を刻印することにより、二次元コード(IDマーク)を形成することができる。二次元コードは、縦8ケ×横32ケあるいは縦16ケ×横16ケのドットマークで構成される。
ウェーハ16のベベル部に照明を当てながら、反射される光の光量をCCDカメラでモニターする。反射光量が最大となる位置をドットマーク20が形成された領域として直接検知する。このようにしてドットマーク20を読み取る。
なお、関連する技術においては、ドットマークの読み取りを容易にするために、ドットマークはウェーハのノッチを基準に形成していた。このため、ドットマークの読み取りを行う際には、半導体レーザ等を使用してウェーハのノッチ位置を探した後、このノッチ位置を基準にドットマークの形成領域をカメラ位置に移動して読み取りを行っていた。ウェーハ自体に基準となるノッチがない場合ではドットマークの形成領域を探し出せなかった。
しかし、第2の実施の形態では、ドットマーク20の形成を行う前にマーク形成領域を平滑化するため、ウェーハ16のベベル部に形成した微小なドットマーク20の位置検出が高速となる。また、半導体製造工程中で凹凸が生じたウェーハ表面に対しても、認識率の高いドットマーク20の追加書き込みが実現可能になる。また、ウェーハ16自体に基準位置となるノッチがない場合においても、ドットマーク20の高速読み取りが可能となる。第2の実施の形態に係る半導体ウェーハのマーキング方法によれば、ウェーハ自体に予め基準位置がない半導体ウェーハにおいても、ドットマーク20の高速読み取りが可能となる。したがって、半導体製造工程中にIDマークを読み取る時間を短縮することができる。
(第2実施形態の変形例)
第2の実施の形態では、半導体装置の製造工程の最初におけるドットマークの形成方法について示した。第2実施形態の変形例では、半導体装置の製造工程の途中でドットマークを書き加える方法について説明する。
図2(a)乃至(c)において、半導体装置の製造工程の途中で、シリコン基板(ウェーハ)16をエッチングすることにより、ウェーハ16表面にサイズ2μm、段差0.2μmの凹凸17を形成する。凹凸17が形成されたウェーハ16表面に対して、第2実施形態と同様に、結像をウェーハ16表面からずらしたレーザ18を照射及び走査する。そして、ウェーハ16表面に結像されたレーザ19により微小突起部で構成されるドットマーク20を形成する。
このように、ドットマーク20の形成を行う前にマーク形成領域の平滑化を行っておくことにより、半導体装置の製造工程途中であっても認識性の高いドットマーク20の書き加えが可能となる。
(第3の実施の形態)
第1及び第2の実施の形態及びそれらの変形例において、IDマーク14は、ベベル部のどの位置に刻印するかについては特定していない。しかしながら、IDマーク14を、ベベル部の中のウェハ最外周部分に刻印しなければならない場合がある。ベベル部の中の製造物25が形成されるウェーハ表面に近い部位にIDマークが刻印されていると、最近の半導体製造工程で多用されるCMP工程で消失してしまう可能性が高いからである。そこで、第3の実施の形態においては、ベベル部内におけるIDマーク14の刻印位置及びIDマーク14の数について説明する。
図3は、第3の実施の形態に係る半導体ウェーハの部分外観図である。第3の実施の形態に係る半導体ウェーハは、ウェハ21の外周部に形成されたノッチ23を基準にして、ウェーハ21の外周部22に同一内容の3つのIDマーク(24a〜c)が刻印されている。1つのIDマーク24は30μm×140μm角の長方形である。3つのIDマーク(24a〜c)は、縦方向及び横方向にそれぞれ30μmずらして刻印されている。ウェーハ21の表面近傍に刻印されたIDマーク24cがCMP工程で仮に消滅しても、ベベル部22のウェーハ裏面に近い部分に刻印されたIDマーク24aは残存し読み取ることができる。
また、第3の実施の形態では、例えばレーザ変位計または光の反射を利用して、ウェーハ外周部22上のマーキングすべき領域を大雑把に検出する。すなわち、ノッチ23を見つけた後にウェーハ外周部22のベベル部の形状を精密に計測しない。従って、図4に示すように、僅か2秒でウェーハ外周部22上のマーキングすべき最初の領域を検出することができる。このマーキングすべき領域を基準として、複数の同一内容のIDマーク(24a〜c)を横方向に位置を変えることは元より、ウェーハ厚み方向にある程度の距離を取って3箇所刻印する。刻印に要する時間は全部で20秒を要する。しかし、ウェーハ1枚の刻印を行うのに要する時間は36秒である。
このように第3の実施の形態によれば、ウェーハ21のベベル部の形状を精密に計測することが不要であり、その分だけマーク刻印のスループットの向上を図ることが可能である。以下に示す比較例に比して、半分以下の所要時間によって、マーク刻印を行うことができる。
(第3の実施の形態の比較例)
CMP工程でIDマークが消失しないようにするために、ベベル部でもウェーハ表面からできるだけ離れたウェハ側面に近い部位に刻印することが求められる。そのために、ウェーハのベベル部を精密に計測し、ウェーハ端部に近い部分を狙ってレーザを照射する。
具体的には、まず、ウェーハを移載してノッチを検出する。そして、図5に示すように、ウェーハ26のベベル部27に光を照射して反射光を捕らえることによりベベル部27の形状を求める。次に、近似的に平面とみなすことができる領域28を探す。平面とみなせる領域28を探すためには、ベベル部27の計測が精密でなければならず、そのために長い時間を要する。例えば、図4に示すように、IDマークを刻印する時間自体は6秒であるのに対し、ベベル部27の形状の計測(平面とみなせる領域の探索を含む)に60秒を要している。検査とウェーハの移載にそれぞれ2秒と4秒を要し、1枚のウェーハにIDマークを刻印するのに要する合計時間は80秒となっている。このうちの大半をこのベベル部27の形状の計測が占めていることになる。
このように、第3の実施の形態によれば、高度な技術及び装置を必要とせず、簡便な方法によってベベル部の形状を計測することにより、IDマークのマーキングのスループットを向上させることができる。
(第3実施形態の変形例1)
第3実施形態の変形例1では、刻印するIDマークの数を2つにした例を説明する。IDマークの数を2つにすることにより、ウェーハ1枚の処理に要する時間は、36秒(IDマークの数を3つにした場合)から30秒へ減少する。この時の懸念点は、十分な確度でIDマークを読み取ることができるか否かである。これを確認する為に、ウェーハ24枚のうち12枚に対して3箇所の刻印し、残りの12枚に2箇所だけ刻印した。
この際、それぞれのIDマークは、3箇所刻印する場合には縦方向及び横方向に30μmづつ間隔を取って刻印し、2箇所刻印する場合には縦方向及び横方向に50μmの間隔を取って刻印した。
これらのウェーハを用いてトレンチ型DRAMを作成し、ビット線形成工程が終了した段階でウェーハを抜き取り、IDマークの読み取り試験を行った。その結果を図6に示す。
「読み取り結果」の欄には、IDマークを読み取れた場合には○印、読み取れなかった場合には×印を付けている。「読み取れた位置」の欄は、ウェーハ外周部から見ていくつ目のIDマークで読み取れたかを示し、“1”は外周部に最も近いIDマークで、数字が大きくなるほど外周部から離れウェーハ表面部に近くなる。ウェーハ番号1〜12のウェーハには3つのIDマークが付され、ウェーハ番号13〜24のウェーハには2つのIDマークが付されている。
図6に示すように、ほとんどの場合、外周部に最も近い位置のIDマークを読み取ることができる。この結果は、IDマークは、ベベル部を精密に計測して正確な位置に刻印しなくても、十分読み取ることが可能なことを示している。大雑把にウェーハ外周の形状を検出し、複数個のIDマークを刻印しておけば、どれかが生き残り、どの工程でも何れかのIDマークを読み取ることができる。
(第3実施形態の変形例2)
図7は、第3の実施の形態の変形例2に係る半導体ウェーハの部分断面図である。図7に示すように、ベベル部32は、ウェーハ31の第1主面29の側に位置する第1ベベル部32aと、第1主面29に対向する第2主面30の側に位置する第2ベベル部32bとを具備する。同一内容を示すIDマーク(33a、33b)が、第1ベベル部32a及び第2ベベル部32bにそれぞれ付されている。即ち、変形例2では、同一内容のIDマーク(33a,33b)がウェーハ31の表面側外周部と裏面側外周部にそれぞれ刻印されている。なお、ここでは、第1主面29は、製造物を形成することで半導体集積回路が製造されるウェーハ31の表面を示し、第2主面30をウェーハ31の裏面を示す。
このようにベベル部32をウェーハ31の厚さ方向に幾つかの領域に区分して、各区分に同一内容を示すIDマーク(33a,33b)を刻印する。ウェーハ31の表面29側外周部に刻印されたIDマーク33aがCMP工程で仮に消滅しても、ウェーハ31の裏面30に近い部分に刻印されたIDマーク33bは残存し読み取ることができる。結果的に、IDマークの刻印、及び読み取りの時間が短縮され、スループットの向上を図ることができる。
(第4の実施の形態)
図8は、第4の実施の形態に係る半導体ウェーハの部分外観図である。図8に示すように、IDマーク(37、38)は、ベベル部35内に形成された基準位置36の両側にそれぞれ付されている。基準位置36は、ウェーハ34の結晶方位を示す基準物または基準記号である。基準物または基準記号には、ウェーハのオリエンテーションフラット、ノッチまたは微細刻印などが含まれる。ここでは、ウェーハメーカーで刻印した製造番号を示すIDマーク37、及びデバイスメーカーで刻印したIDマーク38がノッチ(基準位置)36を境にして左右に分けて刻印されている。
一方、比較例として、図9に示すように、ノッチ36の端部を基準にして、ウェーハメーカーとデバイスメーカーとが同じ右側に並べてIDマーク(39、40)をそれぞれ刻印する場合がある。
この比較例と較べて、第4の実施の形態に係る半導体ウェーハのマーキング方法は、以下に示す理由から、IDマーク37、38の読み取りに要する時間を短縮することが可能である。
図9に示すように、ノッチ36の端部を基準にして、ウェーハメーカーとデバイスメーカーとが同じ右側にIDマーク(ここでは、二次元コードを示す)39,40を並べて刻印する。―つの二次元コードのサイズは、縦約50μm、横約150μmである。二次元コードを2つ並べると、刻印時と刻印装置が異なるために2つのIDマーク39、40は不連続となる。また、読み取り装置の視野はおよそ300μmのため、2つ目のIDマーク40はノッチ36を基準にした視野から外れる。そのため、2番目のIDマーク40を読み取るためには、読み取り装置のカメラを僅かに移動しなければならない。
1番目のIDマーク39と2番目のIDマーク40の読み取りに要する時間を比較した結果を図10に示す。1番目のIDマーク39の読み取りは、ウェーハセットから始まって、基準位置36の検出時間と、読み取り時間とから成る。一方、2番目のIDマーク40を読み取る場合には、カメラの移動時間(100msec)が加わるために読み取りに要するまでの時間が非常に長くなることが分かる。
もし半導体製造工程中にIDマークが消失して新たなIDマークを刻印した場合には、3番目のIDマークとなるために、カメラはさらに移動しなければならず、さらに多くの時間を要することになる。
図8に示すように、ウェーハメーカーのIDマーク37とデバイスメーカーのIDマーク38を基準位置(ノッチ)36に対して左右に分けて刻印しておけば、少なくともカメラの移動を1回削減することが可能である。従って、その分だけ読み取りに要する時間を短縮することが可能である。
第4の実施の形態によれば、半導体製造工程中にIDマークを読み取る時間を短縮でき、生産性を高めることが可能となる。IDマークの読み取り機の視野を調整する作業を短縮して、作業効率を向上させることができる。また、読み取り機はまず基準位置を見つけ、その位置から見て最初見えるIDマークは読み取らず、その次にあるIDマークを読み取ることもある。この場合においても視野を調整する作業を少なくして生産性を向上させることができる。
なおここでは、左右への分け方を、刻印する者がウェーハメーカーであるかデバイスメーカーであるかによって区別した場合について示した。しかし、これに限られるものではなく、例えば、IDマークを、基準位置の一方側に付されたウェーハの製造履歴を示すウェーハIDマークと、基準位置の他方側に付された製造物の製造履歴を示す製造物IDマークとに分けても構わない。
(第4実施形態の変形例)
第4の実施の形態と同様な効果は、図8に示したウェーハメーカーのIDマーク37とデバイスメーカーのIDマーク38をウェーハの表裏両面に分けてマーキングしても期待することができる。特に、ウェーハ裏面側のベベル部にウェーハメーカーが刻印し、表面側ベベルにデバイスメーカーが刻印した場合には、別の新たな効果を期待することができる。
最近の半導体製造プロセスではCMP工程を多用する。CMP工程を経ると、表面側ベベル部に刻印したIDマークは消失しやすい。消失すれば改めて刻印すれば良いのであるが、刻印すべきIDマークが消失しているため、何を刻印すれば良いのか分からなくなってしまっている。
そこで、ウェーハメーカーのIDマークをCMP工程でも消失しない裏面側ベベル部に刻印し、デバイスメーカーのIDマークを表面側ベベル部に刻印する。また、ウェーハメーカー及びデバイスメーカーのIDマークに含まれるウェハ及び製造物に関する情報を、ホストコンピュータに保存する。この様にすることで、製造工程途中にデバイスメーカーのIDマークが消失してしまっても、ウェーハメーカーのIDマークを読み取って、それに対応したデバイスメーカーのIDマークをホストコンピュータからダウンロードして再度刻印することが可能である。
IDマークの消失に対する対策としては、ウェーハ表裏両面のベベル部にデバイスメーカーの製造番号を刻印するという方法も考えられる。しかし、同じIDマークを2つ刻印するということは、刻印に2倍の時間を要するということであり、生産性を考慮すると好ましくはない。ウェーハメーカーで刻印してくるIDマークを用いる方が、生産効率上は有利である。
(第5の実施の形態)
図11は、第5の実施の形態に係る半導体ウェーハの全体平面図であり、図12はその要部斜視断面図である。図11及び図12に示すように、第5の実施の形態に係る半導体ウェーハは、単結晶シリコンからなる基体ウェーハ42と、基体ウェーハ42の主面上に配置された絶縁層45と、絶縁層45の上に配置された単結晶シリコンからなる単結晶シリコン層41と、単結晶シリコン層41上に形成された製造物46と、基体ウェーハ42に付され、製造物46、製造物46の製造条件、及び製造物46についての検査結果を少なくとも示すIDマーク44と、基体ウェーハ42の外周部に形成されたノッチ43とを具備するSilicon on Insulator(SOI)ウェーハである。ここでは、絶縁層45として埋め込み酸化膜を用いる。また、単結晶シリコン層をSOI層41を呼ぶ。埋め込み酸化膜45及びSOI層41は、基体ウェーハ42の外周部を除いた、基体シリコンウェーハ42の内側部分に配置されている。したがって、基体ウェーハ42の主面の外周部は露出している。ノッチ43が形成されている部分には、比較的広い領域の基体ウェーハ42が露出している。IDマーク44は、ノッチ43が形成されている部分の基体ウェーハ42の主面上に付されている。一連の半導体製造工程において、様々な製造物46をSOI層41の上に形成することにより、SOIウェーハの上に半導体集積回路を製造することができる。
次に、第5の実施の形態に係るSOIウェーハにおけるIDマークのマーキング方法を説明する。まず、200mmφのSOIウェーハを用意する。用意されたSOIウェーハにおいて、基体ウェーハ42、埋め込み酸化膜45、及びSOI層41は同一の平面形状を有している。フォトリソグラフィ法を用いてSOI層41の上に、図11に示すSOI層41と同一形状を有するレジストパターンを形成する。このレジストパターンをマスクとして、ウェーハ外周部のSOI層41をKOH水溶液でエッチングして、ウェーハ外周部の埋め込み酸化膜45を選択的に露出させる。
続いて、埋め込み酸化膜45をHF水溶液によりエッチングして除去して、IDマーク44を付す領域を含む基体ウェーハ42の外周部を選択的に露出させる。レジストパターンを除去した後に、基体ウェーハ42のノッチ43周辺に、YAGレーザを用いて深さ5um、直径30umのドットマークを複数刻印してIDマーク44を形成する。
IDマーク44を読み取ったところ、認識率はバルクウェーハと差異はなく、また、基体シリコンウェーハ42上にIDマーク44を付すことでドット部の異常は全く発生しない。
なおここでは、SOIウェーハの一部のSOI層41及び埋め込み酸化膜45をエッチングにより除去した。しかし、SOIウェーハの作成段階で異なる面積のウェーハを貼り合わせることで、面積差に相当する部分は基体ウェーハ42が露出する。したがって、この部分にIDマーク44を付しても構わない。ウェーハを貼り合わせる方法として、例えば、ノッチウェーハを基体ウェーハ42側、オリフラウェーハをSOI層41側に貼り合わせる方法がある。また、SIMOX法では、酸素イオン注入時にマーキングを施す所に遮蔽板を設置することで、基体ウェーハ42の露出部分を形成し、この部分にマーキングしても構わない。
このように第5の実施の形態では、SOIウェーハにおいて基体ウェーハ42の表面(SOI層41及び埋め込み酸化膜45の無い領域)にレーザにより複数のドットマークを刻印してIDマーク44を形成した。この様にして、SOIウェーハであっても通常のバルクウェーハと同様にマーキングが可能となる。
(第5の実施の形態の比較例)
比較例として、SOI層にレーザを照射してドットマークを形成する場合を示す。SOIウェーハは、図13に示すように、基体ウェーハ47、埋め込み酸化膜48、及びSOI層49が順番に積層された構成を有する。SOI層49の厚さはデバイスにより異なるが、高速MOSトランジスタを作成する場合は1um以下が一般的である。SOI層49に対してレーザを照射した場合、入射したレーザは、埋め込み酸化膜48の所で拡散してしまい、埋め込み酸化膜48下に比較的大きなドット50を形成してしまう。大きなドット50は、埋め込み酸化膜48の剥がれ、後のデバイス工程におけるダスト51の発生などの原因になるおそれがある。
第5の実施の形態では、基体ウェーハ42に対してレーザを照射するため、上記の問題が生じることがない。また、比較例の製造方法に比べ付加工程を付けることなく、コストアップ無しに工業的に安価に提供することができる。
以上説明したように、第5の実施の形態によれば、SOIウェーハにおいても、埋め込み酸化膜48の剥がれ、デバイス工程でのダスト51の発生を抑えて、通常ウェーハと同様にマーキングを行うことができる。
(第5実施形態の変形例)
図14は、第5の実施の形態の変形例に係る半導体ウェーハの要部外観図である。ここでは、200mmφのSOIウェーハ52を用意し、基体ウェーハの外周部に形成されたベベル部53aにYAGレーザを用いて深さ0.5um、直径5umのドットマークを複数形成してIDマーク54が付されている。IDマーク54を読み取ったところ、認識率はバルクウェーハと差異がなく、ドットマーク部の異常は全く発生しなかった。なお、SOIウェーハの製造方法は、SIMOX法でもあるいは貼り合わせ法でも構わない。
(ノッチレスウェーハの実施例)
第1乃至第5の実施の形態では、製造物に関する情報を示すIDマークの刻印及び読み取りは、半導体ウェーハの基準位置であるノッチを基準にして行っていた。
しかし、ノッチ或いはオリエンテーションフラットは、半導体ウェーハの形状的な観点からプロセス制御性を低下させ、製品の性能を落してしまうおそれがある。例えば、リソグラフィー工程において、レジスト塗布膜厚の不均一性に伴うレジストパターン寸法のばらつきが発生する。また、スピンエッチング装置において、エッチング量の不均一性に伴う絶縁膜の残存を招く。更に、酸化/LP−CVD装置において、ウェーハボートにウェーハを搬送する際にウェーハボートの固定爪に対してノッチ或いはオリエンテーションフラット部分からずらす必要がある。したがって、あらかじめ基準位置合わせを行わなければならない。即ち、ノッチ或いはオリエンテーションフラットが存在するが故に製造装置側に基準位置合わせ機構を付加させざるを得なくなり、製造装置のコストアップに繋がる。その他に、ノッチは特異点となるため均熱性が悪くなる。デバイス評価の結果、ノッチ近傍に不良チップが集中する場合がある。
ウェーハ表面及びベベル部に比べてノッチ部分(凹部分)には、製造工程中にレジスト剤のような堆積物が付着しやすく、この付着物を除去するのが難しい。したがって、後の工程中にノッチから遊離した付着物がパーティクルとしてウェーハを汚染する可能性が高い。また、オリエンテーションフラット、ノッチがあるために、その部分にデバイスを作ることが制限され、ウェーハ1枚当たり取れる総チップ数(Gross)を低下させていた。ノッチ或いはオリエンテーションフラットがウェーハに存在するが故に、以上示したような製造上の不具合を生じることがある。
しかし一方、結晶方位によってキャリアの移動度、エッチング速度、エピタキシャル成長層の成長速度などが異なる。従って、プロセス制御性向上の観点により、半導体ウェーハからノッチ或いはオリエンテーションフラットを無くした場合、ウェーハの結晶方位を制御することが困難となる。このことにより、例えば、イオン注入工程における不純物プロファイルのばらつき、またはトランジスタにおける移動度のばらつきを招き、製品の動作不良をもたらす。
そこで、第6乃至第11の実施の形態では、ウェーハの基準位置としてウェーハの結晶方位を認知するための基準IDマークが形成されたウェーハであって、ノッチ或いはオリエンテーションフラットが存在しない、ウェーハの外周が円形である半導体ウェーハについて説明する。
(第6の実施の形態)
図15は、第6の実施の形態に係わる半導体ウェーハの第1主面全体を示す平面図である。ウェーハ60の外周部にはノッチ或いはオリエンテーションフラットが存在せず、ウェーハ60外周の形状は円形である。ウェーハ60の外周部にはベベル部が形成されている。ベベル部の内側には、製造物が形成されるウェーハ60の第1主面が配置されている。ウェーハ60の第1主面の形状も円形である。ウェーハ60の第1主面の面方位は、(100)である。したがって、ウェーハ60の第1主面内には[011] 方位線が存在する。[011] 方位線上のベベル部に、ウェーハ60の第1主面内の結晶方位を認知する為の基準IDマーク61が1ヶ形成されている。基準IDマーク61は、英数字、バーコード、二次元コードの何れであっても構わない。例えば、マトリックス式の二次元コードであれば、縦8ヶ×横32ヶ、あるいは縦16ヶ×横16ヶのドットマークで構成される。ここでは、基準IDマーク61が二次元コードである場合について説明を続ける。
図16は、基準IDマーク61が形成されたベベル部を部分的に拡大した平面図である。基準IDマーク61は、L字ガイドセル62を含むマトリックス式の2次元コードからなる。L字ガイドセル62の位置を基準にして、第1主面(100)内の結晶方位線(例えば、 [011] 方位線)を特定する。ここでは、L字ガイドセル62は、 [011] 方位線に対して±1.0度の範囲に配置されている。即ち、L字ガイドセル62は結晶方位線にほぼ一致するように配置されている。
図17は、L字ガイドセル62を含むマトリックス式の2次元コード61を示す拡大平面図である。2次元コード61は、16×16のドットマークから構成されるデータマトリックスコードである。方形状の2次元コード61の一辺の長さは、例えば100μmである。L字ガイドセル62は、2次元コード61の互いに垂直に交わる2辺上に形成された31個のドットマークからなる。L字ガイドセル62を [011] 方位線上に配置することにより、[011] 方位線が特定される。
ドットマークは、以下のようにして形成される。例えば、ガウシアン形状のエネルギー密度分布を持つHe−Neレーザ光をウェーハ表面で結像した状態で照射する。これにより、ウェーハ表面が溶融、再結晶化する過程で、例えばサイズ5μm、段差0.5μmの微小突起部(ドットマーク)が形成される。複数のドットマークからなる基準IDマーク61は、露光装置、およびイオン注入装置等に装備された読み取り装置によって検出することができる。
以上述べたように、ウェーハ60の基準位置となるIDマーク61を形成することにより、ノッチ或いはオリエンテーションフラットが存在しない円形のウェーハを使用して、ウェーハ間の製造ばらつきを抑制することが可能となる。したがって、ウェーハ60間の性能バラツキが少なく、スループットの高い半導体装置を製造することが可能となる。
さらに、例えば、酸化/LP−CVD装置ではウェーハ搬送する際の基準位置合わせを省略することが可能となり、製造装置のコストダウンが実現できる。
(第6の実施の形態の変形例1)
図18は、第6の実施の形態の変形例1に係わる半導体ウェーハの外観図である。図18に示すように、ウェーハ60は、ノッチ或いはオリエンテーションフラットが存在しない円形の面方位(100)が表出したウェーハである。ウェーハ外周部に形成されたベベル部に、ウェーハ60の結晶方位を認知する為の基準IDマーク(63a〜63d)が複数箇所に形成されている。具体的には、 [011] 方位線上のベベル部に2つの基準IDマーク(63b、63d)が形成され、[011] 方位線上のベベル部に2つの基準IDマーク(63a、63c)が形成されている。
複数の基準IDマークを形成することにより、仮にCMPなどにより一部の基準IDマークが消失されてしまっても、残りの基準IDマークを使用することができる。また、形成する基準IDマークの数を増やすことにより、結晶方位をより高精度に認知できるようになる。
なお、図18においては、基準IDマーク(63a、63c)を総て結晶方位線上に形成した場合を示したが、これに限定されるものではない。例えば、図19に示すように、互いに直交する結晶方位線の間に、基準IDマーク(64a、64c)を形成しても構わない。この場合、基準IDマーク(64a、64c)には、結晶方位線とL字ガイドセルとの位置関係を示す情報が含まれている。
(第6の実施の形態の変形例2)
図20は、第6の実施の形態の変形例2に係わる半導体ウェーハの外観図である。ウェーハ60には、 [011] 方位線上からずれた位置に基準IDマーク65が形成されている。基準IDマーク65には、結晶方位線に対する位置座標に関する情報が含まれている。ここでは、基準IDマーク65は、[011] 方位線から反時計方向に5°ずれた位置に形成されている。
図21は、基準IDマーク65が形成されたウェーハ60の外周部を拡大した平面図である。基準IDマーク65は、「011+5829TAC3」という英数字からなる。英数字の中の「011」は、 [011] 方位線を示す。「+5」は、 [011] 方位線から反時計方向に5°ずれた位置に「+」のマークが形成されていることを示す。
(第6の実施の形態の変形例3)
第3の実施の形態の変形例2と同様にして、ベベル部をウェーハの厚さ方向に幾つかの領域に区分して、各区分に同一内容を示す基準IDマークをそれぞれ刻印しても構わない。
図7に示したように、ベベル部32は、ウェーハ31の第1主面29の側に位置する第1ベベル部32aと、第1主面29に対向する第2主面30の側に位置する第2ベベル部32bとを具備する。同一内容を示す基準IDマーク(33a、33b)が、第1ベベル部32a及び第2ベベル部32bにそれぞれ付されている。即ち、同一内容の基準IDマーク33a,33bがウェーハ31の表面側外周部と裏面側外周部にそれぞれ刻印されている。
このようにベベル部32をウェーハ31の厚さ方向に幾つかの領域に区分して、各区分に同一内容を示す基準IDマークを刻印する。ウェーハ31の表面29側外周部に刻印された基準IDマーク33aがCMP工程で仮に消滅しても、ウェーハ31の裏面30に近い部分に刻印された基準IDマーク33bは残存し読み取ることができる。結果的に、基準IDマークの刻印、及び読み取りの時間が短縮され、スループットの向上を図ることができる。
(第7の実施の形態)
第7の実施の形態では、ウェーハの第1主面に表出した結晶方位面に対して垂直な結晶方位線を測定し,基準IDマークをウェーハ上の所望の位置に付与する半導体ウェーハの製造装置及び半導体ウェーハの製造方法について説明する。第7の実施の形態に係る半導体ウェーハの製造装置は、ウェーハの結晶方位を測定する方位測定系と、そのウェーハの結晶方位の測定結果を基にしてウェーハの所望の位置に基準IDマークを付与するマーキング系とを具備する。
図22は、第7の実施の形態に係る半導体ウェーハの製造装置の構成を示すブロック図である。半導体ウェーハの製造装置は、ウェーハ71の第1主面に対向する第2主面にX線72を照射するX線管80と、ウェーハ71によって散乱されたX線74を検出する2次元のX線検出器75と、ウェーハ71によって散乱されたX線74によって形成される2次元像(ラウエ像)を表示するモニタ76と、ウェーハ71の外周部にレーザ光78を照射して基準IDマークを形成するためのレーザ光源77及びミラー79と、レーザ光78の照射位置と結晶方位線との間のずれ角度を測定する測定系と、ウェーハ或いはレーザーマーカを回転する回転系とを有する。X線管80、X線検出器75、及びモニタ76が方位測定系に相当する。レーザ光源77及びミラー79からなるレーザマーカ、測定系及び回転系がマーキング系に相当する。ここでは、X線検出器75は、ウェーハ71の第1主面側に配置され、ウェーハ71を透過し、且つウェーハ71によって散乱されたX線74を検出する。
X線検出器75の一部には、X線ダイレクトビームストッパー73が配置されている。X線ダイレクトビームストッパー73は、ウェーハ71によって散乱されずにそのまま透過したX線72が蛍光板及びCCDカメラ75へ入射することを防止する。なお、ウェーハ71は、基準位置及び結晶方位を認知するためのノッチ或いはオリエンテーションフラットが存在しない円形の半導体ウェーハである。X線検出器75は、ウェーハ71と平行に配置された蛍光板及びCCDカメラからなる。蛍光板は、X線が照射されることで蛍光を発する。CCDカメラはこの蛍光を検知して電気信号へ変換する。
図23は、図22に示した半導体ウェーハの製造装置を用いた半導体ウェーハの製造方法を示すフローチャートである。また、図24乃至図26は、主要な製造工程におけるウェーハ71の回転角度及びモニタ76上に表示されたラウエ像を示す。
(イ)S01段階において、ウェーハ主面に(100)結晶方位面が表出した、直径300mmのウェーハ71を、製造装置内に搬送する。このとき、ウェーハステージに対してウェーハ71のノッチ或いはオリエンテーションフラットの位置合わせを行う必要はない。
(ロ)S02段階において、ウェーハ71の中心が回転機構を備えたウェーハステージの回転中心と一致するように、ウェーハステージ上でのウェーハ71の位置を調整する。S03段階において、モリブデン(Mo)ターゲットを備えたX線管80から、電圧40kV、電流30mAの条件で連続X線72をウェーハ71の第2主面に対して照射する。X線72は、ウェーハ71によって散乱されて蛍光板へ導かれる。
(ハ)S04段階において、X線74による蛍光板の蛍光をCCDカメラで撮像したラウエ像を取得して、モニタ76上に表示する。このラウエ像からウェーハ71の結晶方位線を検知することができる。この時のウェーハ71の回転角度とラウエ像との関係を、図24(a)及び図24(b)に示す。
(ニ)S05段階において、このラウエ像を基づいて、レーザーマーカ(77、79)のレーザ照射スポットとウェーハ71の [011]方位線とのずれ角度(θ)を算出する。S06段階において、ウェーハ71の[011]方位線とレーザーマーカ(77、79)のレーザ照射スポットとが重なるようにウェーハ71を回転させる。
(ホ)ウェーハ71に再度X線を照射し(S07)、ラウエ像を取得する(S08)ことで、[011]方位線上とレーザーマーカ(77、79)のレーザ照射スポットの重なりを評価する(S09)。回転後のウェーハ71の位置とラウエ像との関係を、図25(a)及び図25(b)に示す。なお、ウェーハ71を回転させる代わりに、レーザマーカ(77、79)を回転させても構わない。そして、S10段階において、ずれ角度が1°以上あれば、S06段階(ウェーハ回転)に戻る。ずれ角度が1°未満ならば、S11段階へ進む。
(ヘ)S11段階において、基準IDマークを形成する位置を検出する。S12段階において、図26に示すように、[011]方位線上のウェーハ71の端から2mmの位置にレーザーマーカ(77、79)を用いて、複数のドットマークから成る基準IDマーク81を刻印する。ドットマークは、ウェーハ71の一部分を溶解して形成される凹部から成る。複数のドットマークの配列によって数式を表す基準IDマーク81が形成される。
(ト)その後、ウェーハ71を製造装置外に搬出する。ウェーハ71の装置内への搬送(S01)から処理後の搬出(S13)までに要する時間はウェーハ一枚あたり9秒であった。
以上説明したように、ウェーハにX線を照射して得られるラウエ像に基づいて、結晶方位線を測定してウェーハの端部に基準IDマークを付与する。従って、ノッチ或いはオリエンテーションフラットを備えない円形のウェーハを半導体製造プロセスに投入することが可能となる。各種プロセスをウェーハに施した際に,ノッチ或いはオリエンテーションフラットを備えるウェーハに比べて、第7の実施の形態に係るウェーハを用いた場合の方が、エッチング速度・成膜の成長速度・CMPの研摩速度等のウェーハ面内の均一性が向上する。また、ウェーハの結晶方位を調整する必要があるプロセス,例えばリソグラフィープロセス等では、基準IDマークを基準にして方位合わせをすることができる。
(第7の実施の形態の変形例1)
第7の実施の形態の変形例1では、ウェーハ71によって反射されたX線74によって形成されるラウエ像に基づいてウェーハ71の結晶方位線を測定する場合について説明する。
図27は、第7の実施の形態の変形例1に係る半導体ウェーハの製造装置の構成を示すブロック図である。図27に示す製造装置において、X線検出器82は、ウェーハ71に対してX線入射側(第2主面側)と同じ側にウェーハ71と平行に配置され、ウェーハ71によって反射されたX線74を検出する。X線管80はタングステン(W)ターゲットを備える。また、X線検出器82はX線撮像管を備えるが、ダイレクトビームストッパーは備えない。その他の構成は、図22に示した製造装置とほぼ同一である。図27に示した装置構成においても、上述した第7の実施の形態と同様な作用効果を得ることができる。
(第7の実施の形態の変形例2)
第7の実施の形態の変形例2では、レーザ光を反射させるミラー79を二軸方向に傾けることで、レーザ光の照射スポット位置を微調整する場合について説明する。
図28の各分図は、第7の実施の形態に係る半導体ウェーハの製造装置が具備するマーキング系を示す。第7の実施の形態の変形例2では、ミラー79を [011]方位線に対して平行にチルトさせることができる。従って、ウェーハ71の端部から所望の位置にレーザ光78を照射することができる。よって、基準IDマークを、 [011]方位線上の所望の位置に形成することができる。なお、図28(b)は、ミラー79によってレーザ光78が垂直に反射される場合を示している。
図29の各分図は、ミラー79及びウェーハ71をレーザ光源77側から見たときの斜視図である。ミラー79は、 [011]方位線に対して垂直にチルトさせることもできる。従って、ウェーハ71の[011]方位線から所望の位置にレーザ光78を照射することができる。よって、基準IDマークを、ウェーハ71の外周部において所望の位置に形成することができる。図29(b)は、レーザ光78がウェーハ71に垂直に入射される場合を示している。
図23に示したフローチャートにおいて、方位ずれ角を算出し(S05)、ウェーハを回転させた(S06)後、レーザ光78を反射させるミラー79を二軸方向に傾けることで、照射スポット位置を微調整することができる。従って、ウェーハの回転(S06)から方位ずれの判定(S10)までを繰り返し行って、ウェーハの回転角度をレーザの照射位置へ高精度に合わせ込む必要がなくなる。一度、ラウエ像を取得して(S08)、方位ずれ角を算出(S09)すれば、その後、ミラーの角度を調整することで方位ずれ角のすれを修正することができる。
(第7の実施の形態の変形例3)
第7の実施の形態の変形例3では、レーザ光78を照射するウェーハ71上の位置がウェーハ71の端面である場合について説明する。
図30は、第7の実施の形態の変形例3に係る半導体ウェーハの製造装置が具備するマーキング系を示す。レーザ光源77から出射されるレーザ光78は、ウェーハ71の主面に垂直な方向に出射される。レーザ光78は、ミラー79によってほぼ垂直に反射されて、ウェーハ71の側面に照射される。
図31及び図32は、図30に示したマーキング系によってウェーハ71側面に形成された基準IDマークの例を示す。図31は、基準IDマークが二次元ドットマトリックスである場合を示し、図32は、基準IDマークが特に意味を持たない凹形状である場合を示す。
以上説明した第7の実施の形態、及びその変形例1乃至3において、X線管のターゲットはMo、Wに限るものではなく,銅(Cu)であっても良い。X線検出器は、蛍光板およびX線撮像管に限るものではなく,例えばX線CCDカメラ、ポジション・センシティブ・プロポーショナル・カウンター(PSPC)、チャンネル・プレート等を用いても良い。ウェーハに基準IDマークを形成する方法は,特定のレーザーマーカに限らず、その他の方法であっても構わない。基準IDマークは、二次元ドットマトリックス、特定の意味を持たない凹形状限らず、英数字、バーコードであっても良く、ウェーハ71の結晶方位線を認識する為の符号として機能すれるものであればよい。
(第8の実施の形態)
第8の実施の形態においては、半導体ウェーハに対して異方性のエッチング処理を施して形成されるエッチピットによる光散乱を検出することによって、半導体ウェーハの結晶方位を決める半導体ウェーハの製造方法について述べる。
図35に示すように、第8の実施の形態に係る半導体ウェーハは、半導体素子が形成される第1主面95が円形であるウェーハ91と、ウェーハ91の外周部に形成されたベベル部92と、ベベル部92の一部分に形成され、底面は第1主面95に対して傾斜している凹部94と、凹部94の底面に形成され、ウェーハ91の研磨処理後も残留するエッチピットと、ベベル部92に付され、ウェーハ91の結晶方位線を示す基準IDマークとを具備する。エッチピットは、ウェーハ91の第1主面95に表出した第1結晶面とは異なる第2結晶面によって囲まれている。ここでは、第1結晶面は(100)面を示し、第2結晶面には(111)面が含まれる。勿論、結晶面はこれらに限られるものではなく、他の結晶面であっても構わない。
第8の実施の形態に係る半導体ウェーハの製造方法を図33を参照して以下に示す。
(イ)まず、S21段階において、シリコン単結晶インゴット(ボロンドープp型(100)結晶、抵抗率5−10Ωcm)を引上げる。そして、ブロック加工(S23)を施し、シリコン単結晶インゴットをスライスしてウェーハ状に切り出す(S24)。なお、シリコン単結晶インゴットの結晶方位の測定、及びオリエンテーションフラット或いはノッチの形成は行わない。切り出されたウェーハの主面には(100)面が表出している。
(ロ)その後、S25段階において、切り出した面の端部の面取り加工(ベベル加工)を施す。そして、S26段階において、図35に示すように、ベベル部92の一部分に、凹部(以後、「方位判定領域」という)94を形成する。
具体的には、図34に示すように、棒状の治具93を回転させながらベベル部92の一部分に押し当て、ウェーハ91円周の一部分を削り取る。削り取った後には、図35に示すように、ベベル部92の一部分に方位判定領域94が形成される。図36(a)に示すように、方位判定領域94の底面は、半導体素子が形成されるウェーハの第1主面95に対して傾斜している。方位判定領域94の底面の角度αは20〜60°の範囲に設定する。図36(b)に示すように、ウェーハ91の第1主面95には、凹形状の溝からなる方位判定領域94が形成されている。また、方位判定領域94の大きさは、例えばA×B=0.3mm×0.2mmとした。方位判定領域94は、ベベル部の表面に形成される場合に限らず、ウェーハ91の裏面、或いは側面に形成しても構わない。
(ハ)次に、ウェーハ91をラップした(S27)後、S28段階において、ウェーハ91の第1主面95の大きなうねりを除去して高平坦度化を図ることを主要な目的の一つとして、アルカリ溶液を用いて異方性のエッチング処理を施す。ここで、異方性のエッチング処理とは、ウェーハ91の結晶方位によりエッチング速度が異なるエッチング処理である。アルカリ溶液としては、KOH、NaOHを用いることができる。NaOHを用いた場合、例えば、20%のNaOH溶液を85〜90℃の温度において8分間のエッチング処理を施す。
図37(a)に示すように、異方性のエッチング処理によって、(100)面が表出したウェーハ91の第1主面には、(111)面を含む第2結晶面で囲まれたエッチピットが出現する。第2結晶面が相互に交差する線と(100)面との成す角は、125.26°である。また、図37(b)に示すように、(100)面上に形成されたエッチピットは点対称な形状を有し、各第2結晶面96a〜dは、実質的に同一な形状を有する。
一方、図38に示すように、エッチピット97は、ウェーハ91の第1主面95だけに限らず、ベベル部92、及び方位形成領域94の底面にも形成される。方位形成領域94の底面は(100)面に対して傾斜しているため、第2結晶面で囲まれているエッチピット97の形状は点対称ではない。
(ニ)次に、ウェーハのベベル部92にミラー加工を施す(S30)。そして、両面ミラー機を用いてウェーハの第1及び第2主面にミラー加工を施す(S31)。方位判定領域94の底面に形成されたエッチピット97はベベル部92の研磨処理後も残留する。即ち、ベベルミラー加工(S30)及びミラー加工(S31)において、第1及び第2主面及びベベル部92の表面に形成されたエッチピットは消失してしまう。しかし、方位形成領域94の底面は研磨されず、エッチピット97は残留する。
(ホ)次に、図39に示す半導体ウェーハの製造装置を用いて、ウェーハ91に方位情報を付与する(S32)。図39に示す製造装置は、ウェーハ91を載置するウェーハステージと、ウェーハ91の中心を軸としてウェーハステージを回転させる第1回転駆動部103と、方位判定領域94に光99を照射する光源98と、エッチピット97によって散乱された光(反射光)100を検出するディテクタ101と、光99が照射されている方位判定領域94を中心軸としてウェーハステージを回転させる第2回転駆動部104と、ディテクタ101によって検出された散乱光100の回転角度依存性を評価する計算機(PC)102と、ウェーハ91の全周囲に渡って取得したエッチピット97による散乱光強度の回転角度依存性を登録したデータベース106と、ウェーハ91裏面の外周部に基準IDマークを刻印するレーザマーカ105とを有する。
光源98、ディテクタ101、第2回転駆動部104、計算機(PC)102、及びデータベース106が方位測定系に相当し、レーザマーカ105がマーキング系に相当する。ここでは、方位判定領域94に照射される光99が白色光である場合について説明する。また、白色光99の照射範囲が1mm2以下に絞られている場合について説明する。
ウェーハ91をウェーハステージ上にチャッキングする。第1回転駆動部103を回転させる。ベベル部の一部分に形成された方位判定領域94に光源98からの白色光99が照射された位置で、第1回転駆動部103の回転を停止する。このとき、白色光99は方位判定領域94内に形成されたエッチピット97に対しても照射されている。そして、第2回転可動部104を回転させながら、ディテクタ101を用いてエッチピット97によって散乱された光の強度を検出する。第2回転可動部104を回転させることで、第1回転駆動部103、ウェーハステージ、及びウェーハ91が、方位判定領域94を中心として回転する。この様にして、エッチピット97内の第2結晶面によって反射される光の強度の回転角度依存性を評価する。即ち、散乱光強度の第2回転可動部104の回転角度依存性に関するデータを取得する。
方位判定領域94の底面は(100)面に対し傾斜しているため、方位判定領域94がウェーハ91の外周部のどの個所に形成されているかによって、図40に示すように、方位判定領域(94a〜94c)の底面に存在するエッチピット(97a〜97c)の形状が異なる。そのため、散乱光強度の回転角度依存性はエッチピット(97a〜97c)の形状によって、様々なプロファイルを形成することになる。
(ヘ)次に、回転角度依存性に関するデータとデータベース106内のデータとを比較することにより、方位判定領域94の結晶方位を決定する。データベース106内には、ウェーハ91の全周囲に渡って形成されたエッチピットについて取得した回転角度依存性に関するデータが登録されている。データベース106内のデータは、予め実験あるいはシミュレーションにより作成したものである。
具体的には、図40に示した散乱光強度の回転角度依存性を示すプロファイルを用いて比較検討して、誤差が極小になるデータベース106に登録された結晶方位を求める。データベース106に収納された全周囲に係るプロファイルの内で、測定したプロファイルに最も近似したものを選出し、そのプロファイルの結晶方位が測定対象のエッチピットが存在する結晶方位であると特定する。したがって、実験あるいはシミュレーションにおける方位判定領域94の底面の傾斜角度と、S26段階において加工する方位判定領域94の底面の傾斜角度との整合性が取られていることが必要である。
(ト)次に、方位判定領域94の結晶方位に基づいて、ウェーハ91の結晶方位情報を示す基準IDマークをウェーハ91の裏面(方位判定領域94を加工した面の反対側の面)のベベル部に刻印する。基準IDマークは、例えばYAG高出力レーザからなるレーザマーカ105を用いて刻印される。基準IDマークは、ウェーハ裏面に限らず、ウェーハ表面、ベベル部に刻印することも可能である。
(チ)最後に、半導体装置作製工程中、少なくとも最初のリソグラフィー工程において、基準IDマークを基準として、ウェーハ91の結晶方位を合わせ(S34)、露光(S35)を行うことができる。
以上説明したように、ノッチ或いはオリエンテーションフラットが存在しない円形の半導体ウェーハ91に対して、異方性のエッチング処理(S28)及び鏡面研磨処理(S30、S31)の前に、方位判定領域(凹部)94をあらかじめ形成しておく。このことによって、ウェーハ91の鏡面研磨後であっても、光散乱による手法を用いて方位判定領域(凹部)94内のエッチピットから結晶方位情報を検出することが可能となる。エッチピットから結晶方位情報を用いて、ウェーハ91上に結晶方位を示す基準IDマークを付与することができる。
X線回折法を用いてウェーハの結晶方位を求める場合、ウェーハ1枚当たり数分から数10分の測定時間が必要であり、スループット上問題がある。現在の半導体装置の製造コストを考えると少なくとも1枚当たり1分程度のスループットが必要である。また、短時間化のためX線源を強力にすると、人体への影響、電力消費が多大になる。これに対して、第8の実施の形態によれば、結晶方位を検出するために可視光の散乱を用いているため、検出速度が向上し、スループット1分/枚が可能となる。また、X線による検出に較べ、人体への影響はほとんど無く、電力消費も少ない。即ち、安全な手法で結晶方位を素早く、高精度に評価することができる。
なお、図41に示すように、X線回折によりウェーハ方位を検出する方法(比較例)に対して、スループットが約5〜10倍向上した。また、第8の実施の形態に係る半導体ウェーハを用いてダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(DRAM)を作成したところ歩留まりが向上した。
また、アルカリエッチング処理(S28)の直後にウェーハの全表面に現れるエッチピットから同様な手法で結晶方位を検出して、結晶方位情報をレーザマーキングすることも考えられる。しかし、そうした場合、10μm以上の比較的深いマークを形成しなければ、この後のミラー加工(S30、S31)において消失してしまう。
更に、第8の実施の形態においては、10μm以下の比較的浅いソフトレーザマークで十分である。また、半導体装置製造工程中の最初のパターン露光工程の際、結晶方位合わせを兼ねて行うことが可能である。
また更に、半導体ウェーハのベベル部にウェーハ認識情報(IDマーク)をマーキングする際、マーキング個所を他のベベル形状と異なる形状に作成できるため、マーキングの精度が向上した。また、マークの読み取りの認識率が向上した。
(第8の実施の形態の変形例1)
第8の実施の形態の変形例1においては、エッチピット97によって反射される光の強度をウェーハ91を回転させることなく一度に測定する場合について説明する。
図42は、第8の実施の形態の変形例1に係る半導体ウェーハの製造装置の構成を示すブロック図である。半導体ウェーハの製造装置は、エッチピット内の第2結晶面によって四方に反射される光100の強度を測定するディテクタ108を有する。ディテクタ108は、光源98から入射される白色光99の全周囲を取り囲むように配置された検出面を有し、図37(a)に示したエッチピットを形成する総ての第2結晶面によって反射される光100を同時に検出することができる。
ディテクタ108の検出面は、球面状の形状を有し、その中央部には白色光99を通過させるための穴が形成されている。エッチピットによって反射された光100を効率良く検出することができる。したがって、白色光99が照射された方位判定領域94を中心軸としてウェーハ91を回転させる必要がない。半導体ウェーハの製造装置は図39の第2回転駆動部104を具備せず、第1回転駆動部103及びXYステージ107を有する。半導体ウェーハの製造装置のその他の構成、及び半導体ウェーハの製造方法は、第8の実施の形態と同様であり、説明を省略する。
ウェーハ91をウェーハステージ上に載置して第1回転駆動部103を回転させる。ベベル部の一部分に形成された方位判定領域94に光源98からの白色光99が照射された位置で、第1回転駆動部103の回転を停止する。このとき、白色光99は方位判定領域94内に形成されたエッチピット97に対しても照射されている。そして、ディテクタ108を用いてエッチピット97によって散乱された光の強度を方位判定領域94の全周囲に渡って同時に検出する。このとき、第1回転駆動部103、ウェーハステージ、及びウェーハ91を回転することはない。
以上説明したように、第8の実施の形態の変形例1によれば、第8の実施の形態と同様な作用効果を得ることができる。また、方位判定領域94の全周囲に渡ってディテクタ108を配置することで、ウェーハ91などを回転させることなく、エッチピットによって四方に散乱された光100を一度に検出することができる。したがって、散乱光の回転角度依存性のデータを取得する為に必要な時間を短縮することができる。
(第8の実施の形態の変形例2)
第8の実施の形態及びその変形例1では、ディテクタ(101、108)によって測定された散乱光強度の回転角度依存性を示すプロファイルと、データベース106に収納されたプロファイルとを比較して、方位判定領域94の結晶方位を求めた。
しかし、前述したように、方位判定領域94の底面はウェーハの第1主面95に対し傾斜している。従って、方位判定領域94がウェーハ91の外周部のどの箇所に形成されているかによって、方位判定領域(94a〜94c)の底面に存在するエッチピット(97a〜97c)の形状自体が異なる。
そこで、第8の実施の形態の変形例2では、方位判定領域(94a〜94c)の底面に形成されたエッチピット(97a〜97c)の形状を測定し、データベース内に収納されたエッチピットの形状と比較することで、方位判定領域の結晶方位を求める場合について説明する。
第8の実施の形態の変形例2に係る半導体ウェーハの製造装置は、図39及び図42に示したディテクタ(101、108)の代わりに、方位判定領域94の底面に形成されたエッチピット97の形状を測定する手段を有する。この形状測定手段には、CCDカメラ、感光性ポラロイドカメラなどが含まれる。測定対象となるエッチピット97の形状とは、図40に示したようなエッチピット(97a〜97c)の平面形状を示す。また、ここで言う平面には、ウェーハの第1主面95或いは方位判定領域94の底面が含まれる。
半導体ウェーハの製造装置は、図42と同様に、第1回転駆動部103と、XYステージ107とを有する。その他の装置構成は、図42に示した半導体ウェーハの製造装置と同様であり、説明を省略する。
データベース106内には、ウェーハ91の全周囲に渡って形成されたエッチピットの平面形状に関する2次元画像データが登録されている。データベース106内の2次元画像データは、予め実験或いはシミュレーションにより作成したものである。
第1回転駆動部103を動作させて、方位判定領域94に白色光99を照射させる。方位判定領域94の底面に存在するエッチピット97の平面形状を、CCDカメラなどの形状測定手段を用いて測定する。測定結果は、2次元画像データとしてPC102へ送られる。そして、PC102は、測定したエッチピットの平面形状と、データベース106内のエッチピットの平面形状とを比較検討して、方位判定領域94の結晶方位を決定する。
具体的には、測定されたエッチピット97の平面形状と、データベース106内のエッチピットの平面形状とを比較検討して、形状の誤差が極小になるデータベース106に登録された結晶方位を求める。データベース106に収納された全周囲に係るエッチピットの平面形状の内で、測定したエッチピット97の平面形状に最も近似したものを選出する。そして、選出されたエッチピットの結晶方位が測定対象のエッチピット97が存在する結晶方位であると特定する。したがって、実験あるいはシミュレーションにおける方位判定領域94の底面の傾斜角度と、S26段階において加工する方位判定領域94の底面の傾斜角度との整合性が取られていることが必要である。
以上説明したように、第8の実施の形態の変形例2によれば、第8の実施の形態と同様な作用効果を得ることができる。また、エッチピット97の平面形状を比較の対象とすることで、散乱光強度の回転角度依存性を示すプロファイルを測定する必要が無くなる。換言すれば、ウェーハ91などを回転させたり、エッチピットによって四方に散乱された光を検出する必要が無くなる。
(第9の実施の形態)
第9の実施の形態においては、ノッチ或いはオリエンテーションフラットが存在しない円形の半導体ウェーハに対して、ウェーハ表面或いは内部に形成された結晶欠陥を利用して、ウェーハの結晶方位を測定する装置及び方法について説明する。
図43の各分図は、第9の実施の形態に係る装置及び方法において利用する結晶欠陥の形状を示す拡大写真である。図43(a)はクリスタル・オリジネイト・パーティクル(Crystal Originated Particle:COP)と呼ばれる結晶欠陥を示し、図43(b)はバルク・マイクロ・ディフェクト(Bulk Micro Defect:BMD)と呼ばれる結晶欠陥を示す。
対象とする半導体ウェーハが、回転引上げ法(Czochralski Method:CZ法)で製造されたウェーハ(以後、「CZウェーハ」と呼ぶ)、或いはエピタキシャル成長法によって製造されたウェーハ(以後、「エピタキシャルウェーハ」と呼ぶ)である場合、COPを利用してウェーハの結晶方位を測定する。
一方、対象とする半導体ウェーハがアニールウェーハ或いは予めIG熱処理を施したウェーハである場合、BMDを利用してウェーハの結晶方位を測定する。COPは8面体構造を有し、BMDは6−8面体構造を有する。また、COP及びBMDは、(111)面を含む特定の結晶方位面が表出した結晶欠陥である。したがって、第8の実施の形態と同様に、COPあるいはBMDの結晶方位面によって散乱した光の強度は、回転角度依存性を有することになる。
図44は、第9の実施の形態に係る半導体ウェーハの製造装置の動作原理を説明する為の半導体ウェーハを示す断面図である。ウェーハ121の内部にはCOP或いはBMDなどの微小な結晶欠陥122が存在する。ビーム状の赤外光123をウェーハ121の第1主面に対して斜めに照射する。ビーム状の赤外光123として、赤外線レーザ光を用いることができる。赤外光123の一部は、ウェーハ121の内部に侵入し、結晶欠陥122によって散乱される。このとき、赤外光123は結晶欠陥122の特定の結晶方位面によって反射される。散乱した赤外光126は、ウェーハ121の第1主面上方に構えられた散乱光検知機124によって検出される。
また、ウェーハ121は、回転機構を有するウェーハステージ125の上に配置されている。赤外光123は、ウェーハ121の回転の中心に照射される。ウェーハ121を回転させながら、回転中心に位置する結晶欠陥122によって散乱された光126の強度を継続的に検出する。このとき、散乱された光の強度は周期的に変化する。即ち、検出される散乱光の強度は回転角度依存性を有する。散乱光強度のプロファイルからウェーハ121の結晶方位を決定することができる。
なお、波長が1000nmの赤外線レーザ光を用いた場合、赤外線レーザ光123が到達することができるウェーハ121内の深さは第1主面から50μm程度である。したがって、測定対象となる結晶欠陥は、第1主面から50μm程度深さまでに存在する結晶欠陥となる。
図45は、第9の実施の形態に係る半導体ウェーハの製造装置の構成を示す外観図である。半導体ウェーハの製造装置は、赤外線レーザ光源127と、回転機構を有するウェーハステージ125と、散乱光検知機124と、ナンバリングを行うためのマーキング機構を形成するレーザマーカ(マーク刻印器)128と、装置全体を覆い隠すチャンバー130と、散乱光強度の回転角度依存性に関するデータを解析するコンピュータ(PC)129とを有する。
赤外線レーザ光源127から出射された赤外線レーザ光は、ウェーハステージ125の回転中心に、ウェーハ121の第1主面に対して斜めに入射される。散乱光検知機124は、ウェーハ121の第1主面の上方に配置され、ウェーハ121内の結晶欠陥によって散乱された赤外線レーザ光の強度を測定する。
チャンバー130は、ウェーハステージ125、赤外線レーザ光源127、散乱光検知機124、レーザマーカ128、及びウェーハ121を覆い隠し、外部から侵入する赤外光を遮断する機能を有する。コンピュータ129には、散乱光強度の回転角度依存性に関するデータを解析するための解析ソフトがインストールされている。レーザマーカ128は、ウェーハ121の外周部に、レーザ光をウェーハ表面で結像した状態で照射する。これにより、ウェーハ表面が溶融、再結晶化する過程で、例えばサイズ5μm、段差0.5μmの微小突起部(ドットマーク)が形成される。レーザマーカ128として、例えば、ガウシアン形状のエネルギー密度分布を持つHe−Neレーザなどを用いることができる。
(イ)まず、ウェーハステージ125上に測定対象のウェーハ121を載置する。ウェーハ121は、 ノッチ及びオリエンテーションフラットが形成されていない円形のCZウェーハである。CZウェーハ121の第1主面には(100)面が表出している。また、低効率ρは10〜20Ω・cmであり、酸素濃度[Oi]は12〜14×1017atoms/cm3(old ASTM)である。
(ロ)次に、図46に示すように、S40段階において、ウェーハステージ125の回転機構を用いてCZウェーハ121を回転させながら、赤外線レーザ光源127を用いてCZウェーハ121の第1主面に対して斜めに赤外線レーザ光を照射する。同時に、S41段階において、散乱光検知機124を動作させて、CZウェーハ121内部の結晶欠陥によって散乱されたレーザ光の強度を継続的に測定する。なお、S40段階とS41段階は、並行して実施されている必要がありそれで十分である。したがって、開始する順序は問わない。つまり、先に回転機構を動作させてから散乱光検知機124を動作させても、その逆であっても構わない。
(ハ)次に、S42段階において散乱されたレーザ光強度の回転角度依存性を示すデータはPC129によって解析され、S43段階においてCZウェーハ121の結晶方位が決定される。具体的には、図47に示すようなCZウェーハ121の回転角度に対する散乱光強度の変化を示すプロファイルがPC129上で解析される。菱形の点及びそれらの繋ぐ線は、第9の実施の形態に係る方法によりCZウェーハ121について実際に測定されたCOPのプロファイルを示している。図47に示すように、散乱光強度の回転角度依存性は、正弦波からなる周期性を有している。散乱光強度の極大値及び極小値が形成されるCZウェーハ121の回転角度において、COPの(111)面がレーザ光の入射方向に直面している。
図示は省略するが、エピタキシャルウェーハについても実際にCOPのプロファイルの測定を行い、CZウェーハ121と同様な結果が得られている。測定対象のエピタキシャルウェーハは、エピ層の抵抗率ρVGが10〜20Ω・cmであり、エピ層の厚さtVGが3μmのノッチレスp/p−ウェーハである。ウェーハの第1主面には(100)面が表出している。
なお、CZウェーハ121の回転時にウェーハステージ125が振動してノイズが発生することがある。その場合、CZウェーハ121の回転を止めて測定点を少なくする。測定点が少ないことにより測定精度が低くなる。しかし、得られる曲線を正弦波として近似して解析するソフトウェアをPC129へ搭載することで、測定点が少なくても高精度に結晶方位を決定することが可能となる。
(ニ)そして、再びウェーハステージ125の回転機構を動作させて、レーザマーカ128のレーザ照射位置に、CZウェーハ121の [011] 線を合わせる。そして、S44段階において、レーザマーカ128を動作させて、CZウェーハ121の外周端部から2mmの位置に3mm×8mmの範囲にCZウェーハ121の結晶方位を示す基準IDマークを刻印する。
(第9の実施の形態の実験例1)
測定対象のウェーハとして、還元性雰囲気でアニール処理されたアニールウェーハを用いた。用いたアニールウェーハは、低効率ρが10〜30Ω・cmであり、酸素濃度[Oi]が10〜12×1017atoms/cm3である。アニールウェーハの第1主面には(100)面が表出している。図47において、正方形の点及びそれらを繋ぐ線は、アニールウェーハについて実際に測定されたBMDのプロファイルを示している。散乱光強度の極大値及び極小値が形成されるアニールウェーハの回転角度において、BMDの(111)面がレーザ光の入射方向に直面している。
(第9の実施の形態の実験例2)
次に、ウェーハへ基準IDマークを刻印する際ではなく、ウェーハ上へパターンを露光する際に、上述したウェーハの結晶方位の測定を実施した。結晶方位を決定した後,ウェーハ上に基準IDマークを刻印し、その後、基準IDマークに基づいてウェーハの位置合わせを行ってからパターンを露光した。
(第9の実施の形態の比較例)
第9の実施の形態に係るCZウェーハ121と同様なウェーハを用意し、第7の実施の形態と同様なX線回折方法によって形成されるラウエ像に基づいて結晶方位を決定した。CZウェーハ121の第1主面には(100)面が表出している。また、低効率ρは10〜20Ω・cmであり、酸素濃度[Oi]は12〜14×1017atoms/cm3(old ASTM)である。
上述した第9の実施の形態、その実験例1及び2、及びその比較例において、ウェーハの結晶方位をそれぞれ決定することができた。また、実験例2においては、結晶方位を決定した後、パターン露光時にウェーハの結晶方位の位置合わせを行うことができた。
図48は、ウェーハの結晶方位を決定する為に要する時間を示すグラフである。「第9実施形態」は第9の実施の形態及びその実験例1及び2を示し、「比較例」は第9の実施の形態の比較例を示す。「第9実施形態」はウェーハ1枚当たり1乃至2分程度の時間を要したが、「比較例」はその約10倍の10乃至20分程度の時間を要した。これは、X線を用いてウェーハの結晶方位を精度良く決定するためには、X線が通過するスリットを狭くして測定面積を小さくする必要があり、強度の弱いX線を長時間測定するからである。
以上説明したように、第9の実施の形態及びその実験例1及び2によれば、第8の実施の形態と同様に、ノッチ或いはオリエンテーションフラットが存在際しない円形のウェーハであっても、安全で且つ短時間に結晶方位を決定することができる。
なお、第9の実施の形態、その実験例1及び2、及びその比較例では、半導体装置の製造工程においてウェーハの結晶方位を測定する場合について説明した。しかし、ウェーハを製造する工程の途中であっても、同様な方法によってウェーハの結晶方位を測定することが可能である。
また、ウェーハに照射する光が赤外光である場合について示したが、可視光であっても構わない。即ち、図45に示す赤外線レーザ光源127の代わりに可視レーザ光源を使用してウェーハの第1主面に可視レーザ光を照射しても構わない。この場合、散乱光検知機124が測定する波長域が可視領域であることは勿論である。
更に、ウェーハの第1主面に対して斜めにレーザ光123を照射し、ウェーハの第1主面の上方に散乱光検知機124を配置した場合について説明した。しかし、レーザ光の入射方向と散乱されたレーザ光の検知方向との関係は、これに限定されるものではない。レーザ光をウェーハの第1主面上方から照射し、散乱光検知機124を斜めに構えて散乱されたレーザ光を検知しても構わない。或いは、斜めにレーザ光を入射し、斜めに散乱されたレーザ光を検知しても構わない。
(第10の実施の形態)
第10の実施の形態においては、第8の実施の形態と同様に、アルカリ溶液を用いた異方性のエッチング処理を施して形成されるエッチピットを用いて、半導体ウェーハの結晶方位を決める半導体ウェーハの製造方法について述べる。第10の実施の形態においては、半導体ウェーハの第1主面上に形成されたエッチピットを用いて結晶方位を検出する場合について説明する。
まず、発明者が行った第10の実施の形態に係る実験例について説明する。図49は、半導体ウェーハの一連の製造工程を示すフローチャートである。引上げられた単結晶インゴット(S50)に対して、外周研削処理(S51)を施してウェーハの径を特定し、ブロック切断処理(S52)、及びスライス処理(S53)を施して、円盤状のウェーハを形成する。ウェーハの第1主面には、(100)面が表出している。なお、単結晶インゴットに対して、結晶方位の測定及びノッチ或いはオリエンテーションフラット加工は行わないため、ウェーハの外周の形状は円形である。
ウェーハの外周端部の角を落とす、いわゆる面取り処理を施す(S54)。ウェーハの外周部には、ウェーハの第1主面に対して傾斜した面(ベベル面)を有するベベル部が形成される。そして、ウェーハの第1主面及びベベル部に対してラッピング加工を施す(S55)。そして、ウェーハの第1主面の大きなうねりを除去することを主要な目的の一つとする異方性のエッチング処理を施す(S56)。異方性のエッチング処理とは、ウェーハの結晶方位によりエッチング速度の異なるアルカリ溶液を用いたエッチング処理(アルカリエッチング)を示す。アルカリ溶液としては、KOH、NaOHを用いることができる。異方性のエッチング処理を施すことにより、ウェーハの第1主面上には、(100)面とは異なる結晶方位面が表出したエッチピットが形成される。
その後、エッチピットを除去することを主要な目的の一つとする酸溶液を用いたエッチング処理(酸エッチング)を施す(S57)。そして、ウェーハ第1主面及びベベル部にポリッシュ処理を施し(S58)、洗浄及び検査を行った(S59)後、梱包及び出荷される(S60)。
発明者らは、アルカリエッチング(S56)を行った後、酸エッチング(S57)を行う前のウェーハを製造ラインから抜き取り、これをサンプルウェーハとした。
図50は、実験例において使用した装置の構成を示す外観図である。サンプルウェーハ140はウェーハステージ141の上に載置されている。サンプルウェーハ140の第1主面には、第1結晶面である(100)面とは異なる第2結晶面が表出したエッチピットが多数存在する。サンプルウェーハ140の第1主面の上方に光源142を配置し、白色光を第1主面に表出したエッチピット144に垂直に入射する。エッチピット144により散乱された光は、散乱光検出器143により検出される。サンプルウェーハ140、ウェーハステージ141、光源142、及び散乱光検出器143はチャンバー146によって覆い隠されている。チャンバー146は外部から侵入する光を遮断する。
散乱光検出器143の受光面155を(100)面と平行の状態から傾けた場合の散乱光強度の変化を測定した。図51は、散乱光検出器143の受光面155の傾斜角度に対する散乱光強度の変化を示すグラフである。横軸は検出器143の傾斜角度を示し、縦軸は散乱光強度を相対値で示す。受光面155が(100)面と平行の状態、即ち傾斜角度が0°の状態においてピークが現れた。また、35°及び−35°だけ傾けた状態においてもピークが現れた。
図52は、サンプルウェーハ140の第1主面上に形成されたエッチピット144による光の散乱を説明する為の模式図である。光源から出射された光(147a、147b)は(100)面に対して垂直に入射する。受光面155aの傾斜角度が0°である検出器143aは、(100)面によってそのまま反射された散乱光148aを検出する。このことにより、傾斜角度が0°におけるピークが形成される。
受光面155bの傾斜角度が35°である検出器143bは、エッチピット144によって散乱された散乱光148bを検出する。このことにより、傾斜角度が35°におけるピークが形成される。図52に示すように、エッチピット144には、(111)面及び(111)面と等価な結晶面を含む第2結晶面が表出している。エッチピット144によって散乱れる光は、エッチピット144内の第2結晶面によって反射され、受光面155bが35°傾いた検出器143bによって検出される。
以上示した実験例に基づいて、第10の実施の形態に係る半導体ウェーハの製造装置について説明する。図53は、第10の実施の形態に係る半導体ウェーハの製造装置を示す外観図である。半導体ウェーハの製造装置は、アルカリエッチング直後のウェーハ表面に白色光を入射させてその散乱光を測定することにより、ウェーハの結晶方位を測定し、ウェーハにマーキングを施す装置である。
半導体ウェーハの製造装置は、ウェーハステージ141と、ウェーハステージ141上に載置されたウェーハ140の第1主面に光を照射し、ウェーハ140の第1主面に形成されたエッチピット144によって散乱された光の強度を測定する検出ユニット149と、散乱された光の強度の回転角度依存性に関するデータを解析するコンピュータ145と、ウェーハ140上にウェーハ140の結晶方位を示す基準IDマークを付するレーザマーカ(マーク刻印器)150と、少なくともウェーハステージ141、ウェーハ140及び検出ユニット149を覆い隠して外部から侵入する光を遮断するチャンバー146とを有する。コンピュータ145は、散乱光の強度の回転角度依存性に関するデータを解析し、ウェーハ140の傾斜角度を補正するソフトを搭載している。
ここで、ウェーハ140の第1主面には、第1結晶面(ここでは、(100)面)が表出し、アルカリエッチングによって(100)面とは異なる、第2結晶面が表出したエッチピットが形成されている。第2結晶面には、(111)面及び(111)面に対して等価な結晶面が含まれる。検出ユニット149は、ウェーハ140の第1主面に光を照射する機能、及びウェーハ140の第1主面に形成されたエッチピット144によって散乱された光の強度を測定する機能とを有する。レーザマーカ150は、ウェーハ140の第2主面の外周部に、レーザを照射して複数のドットマークからなる基準IDマークを刻印する。なお、基準IDマークの形成位置は、ウェーハ140の第2主面の外周部に限らず、ウェーハ140の第1主面の外周部或いは側面部であっても構わない。
図54(a)及び図54(b)は、検出ユニット149の構成を示す図である。図54(a)は検出ユニット149の断面図であり、図54(b)はウェーハ140側から観た検出ユニット149の底面図である。検出ユニット149は、ウェーハステージ上に載置されたウェーハの第1主面に光151を照射する光源154と、ウェーハの第1主面に形成されたエッチピットによって散乱された光の強度を測定する受光素子149とを有する。受光素子149として、直径が1.25cm、30万画素のCCDカメラを使用することができる。
受光素子149は、光151の出射口の外周を取り囲み、光151の照射方向に対して傾斜して配置されたリング状の受光面155を有する。ここでは、受光面155はほぼ円形の形状を有する。受光面155の傾斜角度は、35.3±1°に設定されている。この様に、検出ユニット149は、光源154と受光素子152とが一体となったものである。
ウェーハに照射される光151は、発散或いは収束することのない平行な光の束からなる平行光束である。また、光151は、白色光であっても、単色光であっても構わない。また、可視光に限らず赤外光であっても構わない。したがって、光源154として単色レーザ或いは赤外線レーザを用いることが可能である。
光源154を動作させてウェーハの第1主面に平行光束151を照射する。照射された平行光束151の内、第1主面上に形成されたエッチピットによって散乱された光が、35°傾いた受光素子152によって検出される。受光素子152は、光源154の周囲を取り囲むように配置されているため、ウェーハ或いは受光素子149を回転させることなく、エッチピットによって四方に散乱される光を同時に測定することができる。コンピュータ145は、エッチピットによって四方に散乱された光の強度を、入射光151を中心とした受光面155の回転角度ごとに評価する。
図55は、コンピュータ145によって評価された散乱光の回転角度依存性を示すグラフである。横軸は受光面155の回転角度で特定した受光部分を示し、縦軸は散乱光強度を相対値で示す。また、図55中のリング状の受光面155は、主要な回転角度に対応する受光部分153の位置を示す。ほぼ同じ強度を有する散乱光のピークが、90°毎に4箇所に現れている。これは、エッチピットに表出した(111)面及びこれに等価な結晶面が4つ存在しているためである。受光素子を円状に配置することにより、(100)面による散乱光を取り込まず、且つ一度に(111)面及びこれに等価な結晶面による散乱光を検出することができる。
一方、図56も、コンピュータ145によって評価された散乱光の回転角度依存性を示すグラフである。しかし、図56に示す散乱光のピークは、間隔及び強度が不揃いである。回転角度が10°、50°、170°及び310°においてピークが現れ、各ピークの強度は均一ではない。これは、ウェーハの第1主面に表出している結晶面が(100)面からずれている場合、或いは検出ユニットがウェーハの第1主面に対して傾いている場合に生じる。この場合、ウェーハの第1主面或いは検出ユニットの角度をコンピュータを用いて補正することにより、図55に示したように均一な間隔及び強度のピ4つのークが形成されるようになる。
また、ウェーハ140と検出ユニット149内の受光素子152との距離には最適値がある。具体的には、図57(a)に示すように、ウェーハ140へ照射される平行光束151の中心と受光面155の中心との距離が、ウェーハ140の第1主面と受光面155の中心との距離に対して0.7であることが望ましい。
図57(b)は、ウェーハ140へ照射される平行光束151の中心と受光面155の中心との距離(dL)を固定し、ウェーハ140の第1主面と受光面155の中心との距離(dW)を変化させて、散乱光の強度の変動を測定した結果を示す。横軸は(dL/dW)を示し、縦軸は散乱光強度を示す。図57(b)に示すように、(dL/dW)=0.7±0.1において、散乱光強度の極大値が得られる。これは、図52に示した(111)面及びこれに等価な結晶面による散乱光148bを最も効率的に検出していることを示している。
以上のように、検出ユニット149とウェーハとの距離、及びウェーハ140或いは検出ユニット149の傾きを補正することにより、測定精度が向上する。
図58は、第10の実施の形態に係る半導体ウェーハの製造方法を示すフローチャートである。図58は、図49のフローチャートとほぼ同一である。図49におけるサンプルウェーハを抜き取る代わりに、図58においては、図53に示した半導体ウェーハの製造装置を用いて、結晶方位の測定及びマーキング(S61)を行う。
具体的には、アルカリエッチング(S56)を行った後のウェーハに対して、エッチング処理によりウェーハの第1主面に形成されたエッチピットに平行光束を照射する。エッチピット内に表出した第2結晶面によって散乱された光を測定し、散乱光強度の回転角度依存性を評価する。そして、ウェーハ上にウェーハの結晶方位を示す基準IDマークを付す。その後、酸エッチングによりエッチピットを除去する(S57)。
(第10の実施の形態の比較例)
アルカリエッチング(S56)の後、酸エッチング(S57)の前に、ウェーハにX線を照射して結晶方位を測定した。そして、測定結果に基づいてマーキング装置を用いてウェーハにマーキングした。
図59は、ウェーハの方位測定及びマーキングに要する時間について、第10の実施の形態と比較例とを比較したグラフである。比較例ではウェーハ1枚当たり10〜20分程度の時間を要するが、第10の実施の形態ではウェーハ1枚当たり1〜2分程度であった。なお、第10の実施の形態では可視光或いは赤外線を使用するが、比較例では人体への悪影響を及ぼすX線を使用しているため、安全を確保するための装置が必要となる。
したがって、第10の実施の形態によれば、製造コストを抑え、安全に、且つ短時間に高精度なウェーハの結晶方位測定及びマーキングを行うことができる。
(第11の実施の形態)
近年、半導体集積回路の高性能化が進み、省電力・高速動作の特徴を持つSOIウェーハの採用が本格的となってきている。しかしながら、直接接合法によりSOIウェーハを製造する場合、1枚のSOIウェーハの製造において2枚のウェーハが必要となり、ウェーハ価格が高いという欠点を有する。例えば、8インチウェーハの価格は1枚当たり10万円程度である。したがって、低価格化はSOIウェーハの最大懸念事項の一つである。
一方、半導体製品の特性を更に改善する為に、最近では製造プロセスに様々な元素を使用するようになってきている。これに伴い、ノッチ部分(凹部分)に残留するダストによる次工程への汚染の防止、ウェーハ−ウェーハ間の汚染防止のため、ウェーハの洗浄工程が重要になってきている。しかし、ノッチ部分に堆積してしまった元素(ダスト)は様々な洗浄方法を用いても除去することができない。よって、ノッチがウェーハの汚染起因となってしまい、製造歩留りを低下させてしまっている。
第11の実施の形態においては、第5の実施の形態と同様に、単結晶シリコンからなる基体ウェーハと、基体ウェーハの主面上に配置された絶縁層と、絶縁層の上に配置されたSOI層(単結晶シリコン層)とを具備するSOIウェーハについて説明する。特に、基体ウェーハ上にノッチ及びオリエンテーションフラットが存在しない、基体ウェーハ外周が円形であるSOIウェーハ及びその製造方法について説明する。
図60(a)は、第11の実施の形態に係るSOIウェーハの全体構成を示す外観図である。SOIウェーハ173は、外周の形状が円形である基体ウェーハ160と、基体ウェーハ160の外周部に形成されたベベル部と、基体ウェーハ160の上に配置された絶縁層と、絶縁層の上に配置されたSOI層と、SOI層の外周部に形成された基準位置169と、SOI層の結晶方位を示す基準IDマークとを具備する。
基準位置169は、SOI層の結晶方位を示すノッチ或いはオリエンテーションフラットである。ここでは、基準位置がノッチ169である場合について説明を続ける。
図60(b)は、ノッチ169及びその近傍に形成された基準IDマークを示す部分拡大図である。基体ウェーハ160の主面上に絶縁層172が配置され、絶縁層172の上にSOI層171が配置さている。ノッチ169は、絶縁層172及びSOI層171の外周部に形成されている。なお、ノッチ169は、少なくともSOI層171の外周部にのみ形成されていれば良い。即ち、絶縁層172に形成されていてもいなくてもどちらでも構わない。
基準IDマーク165は、ノッチ169に合わせて基体ウェーハ160のベベル部上に付されている。また、基準IDマーク165に隣接して、SOIウェーハ173に関する情報を示すIDマーク164が、基体ウェーハ160のベベル部上に付されている。ここでは、基準IDマーク165として、“△”の印を使用する。但し、これに限定されることはない。基準IDマーク165は、他の実施の形態で示したように、SOI層の結晶方位を認識するためのマークであれば、どんな形状のマークであっても構わない。IDマーク164は、SOIウェーハ173の品質を管理することを主要な目的の一つとした複数の英数字である。以後の説明においては、基準IDマーク165及びIDマーク164をまとめて、IDマーク162と呼ぶ。
次に、図60に示したSOIウェーハ173の製造方法を説明する。第11の実施の形態に係るSOIウェーハ173は、直接接合法により作製されるSOIウェーハである。図61は、第11の実施の形態に係る基体ウェーハ160の製造方法を示すフローチャートである。まず、引上げられた単結晶インゴット(S71)に対して、外周研削処理(S72)を施してウェーハの径を特定し、スライス処理(S75)を施して、円盤状のウェーハを形成する。なお、単結晶インゴットに対して、結晶方位の測定及びノッチ或いはオリエンテーションフラット加工は行わないため、ウェーハの外周の形状は円形である。
ウェーハの外周端部の角を落とす、いわゆる面取り処理を施す(S76)。ウェーハの外周部には、ウェーハの主面に対して傾斜した面(ベベル面)を有するベベル部が形成される。そして、ウェーハの主面及びベベル部に対してラッピング加工を施す(S76)。そして、ウェーハの主面の大きなうねりを除去することを主要な目的の一つとするエッチング処理を施す(S78)。エッチング処理には、アルカリ溶液を用いたエッチング処理(アルカリエッチング)と、酸溶液を用いたエッチング処理(酸エッチング)とが含まれる。
そして、ウェーハ主面及びベベル部に鏡面研磨処理を施し(S79)、洗浄及び検査を行う。その後、ウェーハのベベル部に、結晶方位の認識及びSOIウェーハの品質管理のためのIDマーク162を描画する。以上の工程を経て、第11の実施の形態に係る基体ウェーハ160が完成する。
図62(a)は、図61に示したフローチャートに従って製造された基体ウェーハ160の全体構成を示す外観図である。基体ウェーハ160の外周は円形の形状を有し、ノッチ或いはオリエンテーションフラットなどの基準位置は形成されていない。基体ウェーハ160の外周部にはベベル部163が形成されている。図62(b)は、IDマーク162が描画された部分を拡大した図である。IDマーク162は、ベベル部163の主面161に近い側に描画されている。
図63は、第11の実施の形態に係るSOI層用ウェーハ166の製造方法を示すフローチャートである。まず、図61に示した基体ウェーハ160の製造方法に準じた方法によって、ウェーハの外周にノッチが形成されたシリコン(Si)ウェーハを製造する。但し、外周研磨(S72)の後、スライス処理(S75)の前に、X線を用いて単結晶インゴットの結晶方位を測定し、単結晶インゴットに対してノッチ加工を施す。この様にして、ウェーハの外周にノッチが形成されたシリコン(Si)ウェーハ170が製造される。
次に、図63に示すように、Siウェーハの第1主面に対して熱処理を加えて熱酸化膜を形成する(S91)。或いは、シリコン酸化膜をSiウェーハの第1主面上に堆積してもよい。これらの熱酸化膜或いはシリコン酸化膜(以後、単に「酸化膜」と呼ぶ)は、SOIウェーハ173におけるBOX層として機能するとなる埋め込み酸化膜172となる。酸化膜の上からSiウェーハの第1主面に対してイオン注入法を用いて水素イオンを注入する(S92)。イオン注入条件は、例えばイオンの加速エネルギーを50keV程度に、注入密度を1017/cm2にそれぞれ設定する。Siウェーハ170の内部に酸化膜と離間して水素イオン注入層が形成される。以上の工程を経て、SOI層用ウェーハ166が完成する。
図64(a)は、図63に示したフローチャートに従って製造されたSOI層用ウェーハ166の全体構成を示す外観図である。SOI層用ウェーハ166のベベル部170にはノッチ169が形成されている。図64(b)は、SOI層用ウェーハ166の断面構成を示す図である。SOI層用ウェーハ166の第1主面167には酸化膜172が形成されている。また、ウェーハ170内部には酸化膜172と離間して水素イオン注入層168が形成されている。酸化膜172と水素イオン注入層168との間に配置された層が、SOI層(単結晶シリコン層)171となる。
図65は、図62の基体ウェーハ160と図64のSOI層用ウェーハ166とを用いて、第11の実施の形態に係るSOIウェーハ173を製造する方法を示すフローチャートである。まず、基体ウェーハ160の主面161と、SOI層用ウェーハ166の第1主面167とを、室温にて接着する(S95)。このとき、SOI層用ウェーハ166の外周部に形成されたノッチ169と、基体ウェーハ160のベベル部163に形成された基準IDマーク“△”とを合わせた状態で、基体ウェーハ160とSOI層用ウェーハ166とを貼り合わせる。ノッチ169と基準IDマーク165との位置合わせには、CCDによる光学式のマーク読み取り装置を使用すればよい。ベベル部に形成された“△”マーク165を参照にして両ウェーハ(160、166)の方位合わせを行う。
その後、熱処理を加えながら、SOI層用ウェーハ166の水素イオン注入層168を境にしてSOI層用ウェーハ166を壁開する(S96)。結果として、基体ウェーハ160の主面161の上に酸化膜(埋め込み酸化膜)172、及びSOI層171が一体化される。最後に、幣開された面に対して鏡面研磨加工を施して(S97)、図60に示したSOIウェーハ173が完成する。
なお、ここでは、基体ウェーハ160とSOI層用ウェーハ166とを貼り合わせた後に、水素イオン注入層168を境にしてSOI層用ウェーハ166を壁開する方法について述べた。しかし、第11の実施の形態に係るSOIウェーハの製造方法はこれに限定されるものではない。水素イオン注入層168を形成せずに、基体ウェーハ160とSOI層用ウェーハ166を貼り合わせ或いは接着しても構わない。この場合、両ウェーハ(160、166)を接着した後、第1主面167に対向する第2主面からSOI層用ウェーハ166を所望の薄さまで薄膜化することによって、SOI層171を形成すればよい。薄膜化するための手段としては、化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)、もしくは化学的或いは物理的なエッチングを使用することができる。
以上説明したように、SOIウェーハにおけるノッチやオリエンテーションフラットは、半導体集積回路を作製する上でSOI層の面内方位を知るために必要なものであるため、基体ウェーハの結晶方位がSOI層用ウェーハの結晶方位とズレていても特に問題がない。よって、SOI層の結晶方位さえ知ることができれば、基体ウェーハは、ノッチやオリエンテーションフラットがない、単純な円盤状であっても構わない。
(第11の実施の形態の変形例1)
第11の実施の形態では、図62(b)に示したように、基体ウェーハ160のベベル部に描画するIDマーク162が英数字コード164及び“△”マーク165からなる場合について述べた。第11の実施の形態の変形例1では、英数字コード及び“△”マークの代わりに、バーコードである場合について述べる。
図66(a)に示すように、SOI層用ウェーハ166と基体ウェーハ160とが貼り合わされている。SOI層用ウェーハ166にはノッチ169が形成されている。一方、基体ウェーハ160のベベル部には、ノッチ169に合わせてバーコード175が付されている。図66(b)に示すように、バーコード175は、ノッチ169に隣接して、ベベル部のSOI層用ウェーハ166に近い側に付されている。なお、バーコード175には、図66(b)に示すような1次元バーコードのほかに2次元バーコードが含まれる。
(第11の実施の形態の変形例2)
一般的に、SOIウェーハにおけるノッチやオリエンテーションフラットは、半導体集積回路を作製する上でSOI層171の面内方位を知るために必要なものである。したがって、基体ウェーハ160の結晶方位は特に問題とならない。また、SOI層用ウェーハ166には、SOI層171の結晶方位を示すノッチ169が形成されている。したがって、ノッチ169を用いてSOI層171の結晶方位を認識することができれば、基体ウェーハ160にSOI層171の結晶方位を示す為の“△”マーク165などの基準IDマークを付す必要がない。
そこで、第11の実施の形態の変形例2では、基体ウェーハ160にSOI層171の結晶方位を示す為の基準IDマークが形成されていない場合について述べる。図67(a)に示すように、第11の実施の形態の変形例2に係るSOIウェーハ176は、ノッチ169が形成されたSOI層用ウェーハ166と、基準IDマークが一切形成されていない基体ウェーハ160とを張り合わせて製造されている。図67(b)に示すように、SOI層用ウェーハ166の埋め込み酸化膜及びSOI層には、ノッチ169が形成されている。一方、基体ウェーハ160のベベル部には、結晶方位を示す基準IDマーク、及びSOIウェーハの品質を管理する為のIDマークが一切形成されていない。
なお、ウェーハの結晶方位の合わせが必要な半導体集積回路の作製工程においては、CCDカメラによる光学式のマーク読み取り装置を使用して、SOI層171のノッチ169を認識して、結晶方位の合わせを行うことができる。
以上説明したように、基体ウェーハの外周形状がノッチ或いはオリエンテーションフラットが存在しない円形であっても、SOI層用ウェーハの内の少なくともSOI層の外周にノッチ或いはオリエンテーションフラットが形成されていれば、半導体集積回路を作製する上でSOI層の面内方位を知ることができる。更に、SOI層用ウェーハのノッチ等に合わせて、基体ウェーハのベベル部上に基準IDマークを付しておくことで、SOI層の外周のノッチ等を直接検出することなく、基準IDマークを読み取ることで、簡便な方法で迅速にSOI層の結晶方位を求めることができる。
基体ウェーハを製造する上で、ノッチ或いはオリエンテーションフラットの加工コストを削減することができるため、SOIウェーハの低価格化が実現できる。また、外周の形状が円形である為、半導体集積回路の作製工程におけるウェーハ面内の均一性が向上する。更に、製造途中で発生する残膜等のダストがノッチ部分に残留することがなく、後工程への汚染(クロスコンタミネーション)を防止できる。よって、低コストで高品質な半導体ウェーハを供給することができる。
(第11の実施の形態の比較例)
第11の実施の形態の比較例に係るSOIウェーハは、ノッチを有する基体ウェーハと、ノッチを有するSOI層用ウェーハとを貼り合わせることにより製造される。即ち、基体ウェーハは、基準IDマークの代わりにノッチを有する。以下に、比較例に係る基体ウェーハの製造方法及びSOIウェーハについて説明する。
図68は、第11の実施の形態の比較例に係る基体ウェーハ177の製造方法を示すフローチャートである。図61と同様に、引上げられた単結晶インゴット(S71)に対して外周研削処理(S72)を施す。その後、X線に用いて単結晶インゴットの結晶方位を測定する(S73)。そして、ウェーハの面内結晶方位を示す(通常は[110]方向を示す)ノッチ或いはオリエンテーションフラットを形成する(S74)。その後、図61と同様にS75乃至S79の処理を施す。そして、ウェーハの裏面に品質管理用のレーザマークを付す(S81)。これは、表面側にマーキングしてしまうとマークの凹凸がウェハ接着時の障害となるからである。
図69(a)及び(b)は、比較例に係るSOIウェーハ178の構成を示す。SOIウェーハ178は、図68のフローチャートに従って製造された基体ウェーハ177と、SOI層用ウェーハ166とを貼り合わせて製造される。ここで、SOI層用ウェーハ166は、図63のフローチャートに従って製造され、図64に示したSOI層用ウェーハと同一構成を有する。また、基体ウェーハ177とSOI層用ウェーハ166との貼り合わせは、図65に示したフローチャートに従って行われる。このとき、SOI層用ウェーハ166のノッチ169に対して、基体ウェーハ177のノッチ179を位置合わせて、両ウェーハ(166、177)が貼り合わされる。
従って、図69(a)に示すように、両ノッチ(169、179)の位置は一致している。即ち、比較例に係るSOIウェーハ178は、第11の実施の形態に係る図60のSOIウェーハ173と比較して、基体ウェーハ177に基準IDマークを付す代わりにノッチ179が形成され、ノッチ179を基準にして貼り合わせが行われている。
なお、図69(b)に示すように、ウェーハの裏面には品質管理用のレーザマーク164が付されている。