JP2007215484A - タケノコ発酵食品の製造方法及びタケノコ発酵食品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】原料タケノコの水分含有量を20〜90%に調整し、これに納豆菌を接種した後、湿度30〜90%、温度20〜50℃において5〜60時間かけて発酵させることによりタケノコ発酵食品を製造する。原料タケノコは、筍の皮であってもよい。
Description
また、タケノコを原料に使用する発酵食品としては、中国産の麻竹の筍を短冊状に切り、乳酸発酵させ塩づけにし、天日で干して製造されるメンマが知られており、中華料理の具材として広く用いられている。
さらに、タケノコの加工食品に関しては、筍水煮製品及びその製造方法[特許文献1参照]、竹の子の味噌漬の製造方法[特許文献2]、健康食品及び抗腫瘍剤[特許文献3参照]等がある。
これらは、タケノコを長期間保存するための方法やタケノコに味を付与した食品の製造方法、タケノコに含有される抗腫瘍物質を含む健康食品の製造法に関するものである。
地面から採取されたタケノコの先端部はやわらかく、底部はやや硬くなっているため、食品として提供するためには調理方法等工夫が必要であり、幼児や高齢者には食用できない場合もある。タケノコ全体を均一にやわらかく加工出来ればケノコの利用範囲は一層拡大される。
タケノコは、生産される期間が春期の比較的短期間に限られ、生産物は殆どが生食用として消費され、それ以外は、クエン酸や酢酸等を添加した水煮タケノコとして加工され流通している。
収穫されたタケノコは、通常、重量で約50%の竹皮に当たる部分を排除し食用に供されている。そのため、1次食品としてしては、無駄の多い食品原料である。この竹皮が軟化・食用化できれば、タケノコ全てが可食できることとなる。
また、近年、全国的に山間地の林業管理が、高齢化や人手不足等により疎かになる傾向があり、竹林面積が増大し、雑木林や管理された森がこれらにより侵食され『竹害』を与えている。竹林の自然増の制御が各地で課題となっている。
そのため、収穫されたタケノコの、発想を転換した新規食品の開発が待望されていた。本発明はこの点に鑑み、なされたものである。
本発明は、タケノコ(竹皮を含む)に納豆菌を接種して発酵させた、全く新規な発酵食品を提供するものである。
タケノコには食品分析成分表によれば、水分以外に炭水化物、たんぱく質と繊維質が比較的多く含まれている。特にタケノコには有用アミノ酸が多く、その中でも特にチロシンが析出することが知られている。
水分含量を大豆と同じ12.5%として、大豆とタケノコの主要成分を比較すると(五訂 日本食品標準成分表(科学技術庁資源調査会編))表1のようになり、かなりのたんぱく質、炭水化物、食物繊維を含有していることが解る。
本発明は、タケノコ(竹皮を含む)に納豆菌を接種して発酵させた、全く新規な発酵食品を提供するものであり、すなわち、下記構成のタケノコ発酵食品の製造方法及びタケノコ発酵食品である。
(1)原料タケノコの水分含有量を20〜90%に調整し、これに納豆菌を接種した後、湿度30〜90%、温度20〜50℃において5〜60時間かけて発酵させることを特徴とするタケノコ発酵食品の製造方法。
(2)原料タケノコが、筍の皮であることを特徴とする前項(1)に記載のタケノコ発酵食品の製造方法。
(3)原料タケノコが、粉状体又は小粒状体であることを特徴とする前項(1)に記載のタケノコ発酵食品の製造方法。
(4)原料タケノコに接種された納豆菌により発酵されて得られたタケノコ発酵食品。
(5)水分含有量が20〜90%の原料タケノコに納豆菌を接種し、湿度30〜90%、温度20〜50℃で5〜60時間発酵させて得られたタケノコ発酵食品。
(6)原料タケノコが、筍の皮であることを特徴とする前項(3)又は(4)に記載のタケノコ発酵食品。
(7)タケノコ発酵食品の製品形態が、粉状体、小粒状体、集塊物、塊状体、小塊状体、板状体、線状体、チップ状体、ペレット状体又は断片状体又はシート状体から選択されるいずれか1種であることを特徴とする前項(4)〜(6)のいずれか1項に記載のタケノコ発酵食品。
特に多量の食物繊維を含有するため、近年急増している、大腸がんや結腸がん等の抑制効果が充分に考えられるほか、整腸作用を期待すれば便秘解消にも有効となる。
また、製造時の納豆菌の酵素作用のためか、タケノコ底部の硬い部分であっても軟化しており、幼児から高齢者まで容易に食することができる。
さらに、前処理において、アクの除去処理をしなくても、製品は本来のタケノコにある苦味を感じさせることがない。むしろ タケノコ本来の淡白な味ではなくアミノ酸由来と思われる旨味が付加されたものとなる。
出発原料のタケノコは、その竹皮部又は切り屑部であっても上記水分範囲であれば発酵生産できる。タケノコ等はあらかじめ摂取し易い大きさ、形状に加工・切断しておくことが望ましい。摂取、提供の仕方によっては竹の子の粉砕物、竹の子の粉状物であっても、加水した液体に懸濁した状態でも良い。
本願の特許請求の範囲及び明細書の中で一般的な意味で記載されているタケノコは、タケノコの中身、すなはち、タケノコの本体ばかりでなく、それを包んでいる皮も包含し、さらにそれらの粉砕物、粉状物、切り屑をも含むものである。
収穫されたタケノコは、野性の納豆菌等の耐熱性細菌の付着が予想されるため、120℃・20分で加圧殺菌することが望ましい。新鮮な場合は、10%程度のエチルアルコ−ル溶液に浸漬後、風乾して殺菌しても良い。天日乾燥により水分を調整し、加圧殺菌することもできる。殺菌に際しては、あらかじめ目的とする大きさに加工・切断した後行っても良い。
タケノコに納豆菌を生育させる場合、タケノコの水分が20%以下であると納豆菌の増殖が困難であり、水分が90%以上であると水分過多のため増殖速度が低下し、たんぱく質分解酵素の生産性が極度に低下する。本発明では、タケノコの水分含有量を好ましくは35〜50%、特に好ましくは40〜45%に調整しておく。タケノコの水分調整は電子レンジや乾熱乾燥器、過熱蒸気を使用して無菌的に行うことが好ましい。
納豆菌によるタケノコ本体の発酵温度は、20℃以下であると増殖速度が遅く50℃以上であればタケノコ本体の自己消化によるものか、タケノコが液状化するため好ましくない。実験の結果、発酵生産可能な温度帯は特に好ましくは、30〜45℃であった。
また、湿度に関しては、湿度が30%よりも低いと納豆菌が殆ど生育しない。そして、その湿度が90%を超えるとたんぱく質分解酵素の生産性が極端に低下する。 よって、本発明では湿度の最適範囲を60〜85%と定めた。
さらに、納豆菌によるタケノコ本体の発酵時間は、5時間より短いと生育が不充分であり、たんぱく質分解酵素の生産が充分でなく、60時間より長いと、既に生産された各種酵素によりタケノコが軟化、液化するため好ましくない。実験の結果、特に最適発酵時間は15〜30時間であった。
実施例1:
タケノコ本体を剥皮して、水分80%のタケノコ(モウソウチク 山口市産)1.5Kgを得た。これを分割・切断し天日乾燥により水分を40%に調整し、120℃・25分間、加圧殺菌器で殺菌処理した。3〜5cm角のタケノコ細片が0.55Kg(水分45%)得られた。
次に、得られたタケノコ細片を径30cmのガラス製シャ−レに無菌的に移し、あらかじめ純粋培養した納豆菌*(5×104個/ml)20mlを噴霧し、温度40℃、湿度80%の恒温恒湿器に入れ30時間発酵させた。発酵終了後、直ちに5℃の冷蔵庫に保存した。
*納豆菌は、市販されている、おかめ納豆(タカノフ−ズ(株)茨城県東茨城郡)からYPG培地で無菌的に純粋分離した納豆菌を使用した。分離した納豆菌をYPG液体培地で37℃・3日間培養したものを使用した。
上記の結果、納豆菌で発酵したタケノコの新規発酵食品が得られた。
得られた製品の外観は、黄色から黄褐色のタケノコ片にうっすらと白い納豆菌の菌体が覆つていた。菌糸は見かけ以上にタケノコ内部まで浸透している。
得られた製品の風味は、納豆菌自体の香りは軽く感じられるが、タケ特有の香りが強く、新鮮なタケ風味の中に納豆の香りが漂うものであった。
タケノコ底部の硬い部分に於いても軟化していてコンブのような感触である。タケノコの前処理としてアクぬきをしていないにもかかわらず、本来タケノコにある苦味を感じない。むしろ タケノコ本来の淡白な味ではなくアミノ酸から由来したのか旨味が付加されている。40℃で長時間発酵を行ったにもかかわらず、官能的にはアンモニア臭は感じない。
〈6〉〈7〉〈9〉〈10〉は可食部100g当たりのmgで表示。
分析方法は五訂 日本食品標準成分表分析表の分析方法に準じて行い、食物繊維はプロスキ−法により、アンモニア態窒素はケルダ−ル法により分析した。
グルタミン酸は「日立L−8500」(商品名:(株)日立製作所製のアミノ酸分析計)を用いて分析した。
分析の結果、アミノ酸の一種であるグルタミン酸、食物繊維、ビタミンB1、B2、灰分が多いことが判った。アンモニア態窒素は極めて低い。食物繊維が著量含有されていることから、人体の代謝や整腸作用の効果が期待できる。
タケノコ本体から剥皮した内皮(水分75%)を20〜50mm角に細断した。乾熱乾燥器で60℃で風乾し、水分を45%に調整したもの25gを得た。これを三角フラスコに入れ120℃、30分加圧殺菌した。フラスコに実施例1で使用した納豆菌液(5×104個/ml)2mlを接種し、ガ−ゼでフラスコの口を無菌的に覆い 温度38℃、湿度80%の恒温恒湿器にいれ15時間発酵させた。発酵終了後、直ちに分析した。
分析結果は表3示すとおりであった。
得られた製品は、納豆菌接種前には繊維質のゴワゴワとした感触があったが、(1)発酵後は菌体が増殖し、ヌルヌルと軟らかい布のようになり、口の中で容易に分解する。また、(2)竹の香りと、ゴボウのようなやや土のような香りが混在している。(3)納豆菌特有の香りはほとんど無く、アンモニア臭も感じない。(4)苦味・渋味は少なく、甘味を感じる。
以上のように、本願発明のタケノコ発酵食品は、食用可能な新規発酵食品である。タケノコの皮(内皮)であっても成分値は実施例1と同様、グルタミン酸、食物繊維、ビタミンB1、B2が多いものである。
Claims (7)
- 原料タケノコの水分含有量を20〜90%に調整し、これに納豆菌を接種した後、湿度30〜90%、温度20〜50℃において5〜60時間かけて発酵させることを特徴とするタケノコ発酵食品の製造方法。
- 原料タケノコが、筍の皮であることを特徴とする請求項1に記載のタケノコ発酵食品の製造方法。
- 原料タケノコが、粉状体又は小粒状体であることを特徴とする請求項1に記載のタケノコ発酵食品の製造方法。
- 原料タケノコに接種された納豆菌により発酵されて得られたタケノコ発酵食品。
- 水分含有量が20〜90%の原料タケノコに納豆菌を接種し、湿度30〜90%、温度20〜50℃で5〜60時間発酵させて得られたタケノコ発酵食品。
- 原料タケノコが、筍の皮であることを特徴とする請求項3又は4に記載のタケノコ発酵食品。
- タケノコ発酵食品の製品形態が、粉状体、小粒状体、集塊物、塊状体、小塊状体、板状体、線状体、チップ状体、ペレット状体又は断片状体又はシート状体から選択されるいずれか1種であることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載のタケノコ発酵食品。
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