図1は、本発明の実施例1に係る車両用制動制御装置を表す概略構成図、図2は、実施例1の車両用制動制御装置における制御ブロックを表す概略図、図3は、実施例1の車両用制動制御装置における制動力制御を表すフローチャート、図4は、実施例1の車両用制動制御装置におけるブレーキ効き判定制御を表すフローチャート、図5は、実施例1の車両用制動制御装置におけるブレーキ効き補正制御を表すフローチャート、図6は、推定車輪速に対する実車輪速の変化を表す走行抵抗判定マップ、図7は、推定減速度に対する実減速度の変化を表す走行抵抗判定マップ、図8は、坂路勾配による実減速度の補正方法を説明するための説明図である。
本実施例の車両用制動制御装置は、電子制御によって駆動輪の制動力配分を調整するEBD(Electronic Brake force Distribution)制御、駆動輪のロックを防止するABS(Anti−lock Brake System)制御、駆動輪の空転を抑制するTRC(Traction Control System)制御、横滑りを抑制するVSC(Vehicle Stability Control)制御などを可能とした電子制御ブレーキシステムに適用されている。なお、この電子制御ブレーキシステムは、必ずしもEBD制御やABS制御などを実行せず、運転者の操作力に応じた制動力を各駆動輪に付与する通常のブレーキ制御を行うことも可能である。
本実施例の車両用制動制御装置は、図1及び図2に示すように、入力部11と、油圧制御部12と、油圧ブレーキ13と、ブレーキ制御部(ブレーキECU)14トから構成されている。即ち、ブレーキペダル21には、運転者によるこのブレーキペダル21の踏み込み操作に応答して作動油を圧送するマスタシリンダ22が接続されると共に、このブレーキペダル21に、その踏み込み量、即ち、ペダルストロークを検出するペダルストロークセンサ23が装着されている。
マスタシリンダ22は、2つの油圧供給配管24,25が連結されており、一方の油圧供給導管24には、通常開放されているシミュレータカット弁26を介してストロークシミュレータ27が接続されている。このストロークシミュレータ27は、運転者によるブレーキペダル21の操作踏力に応じたペダルストロークを発生させるものである。各油圧供給配管24,25には、通常閉弁されているマスタカット弁28,29が装着されており、これらマスタカット弁28,29よりも上流側(マスタシリンダ22側)に、油圧供給配管24,25の油圧を検出するマスタシリンダ圧センサ30,31がそれぞれ装着されている。
マスタシリンダ22のリザーバ32には、油圧排出配管33が接続されており、この油圧排出配管33から分岐する油圧供給配管34の途中に、ポンプモータ35により駆動する油圧ポンプ36が配置されると共に、油圧ポンプ36の駆動により昇圧された油圧を貯えるアキュムレータ37が接続されている。また、油圧供給配管34の途中には、アキュムレータ37の内圧を検出するためのアキュムレータ圧センサ38が装着されている。更に、油圧供給配管34と油圧排出配管33との間には、油圧供給配管34内の油圧が高くなった場合に、貯留した作動油をリザーバ32に戻すためのリリーフ弁39が装着されている。
油圧供給配管34は4つの油圧供給分岐配管40FR,40FL,40RL,40RRに分岐され、4つの駆動輪(図示略)に配置される油圧ブレーキ13を駆動するホイールシリンダ41FR,41FL,41RL,41RRに接続されている。同様に、油圧排出配管33も4つの油圧排出分岐配管42FR,42FL,42RL,42RRに分岐され、ホイールシリンダ41FR,41FL,41RL,41RRに接続されている。
各油圧供給分岐配管40FR,40FL,40RL,40RRの途中の油圧排出分岐配管42FR,42FL,42RL,42RRとの接続部より上流側(油圧ポンプ36側)に、それぞれ電磁式増圧弁43FR,43FL,43RL,43RRが配置され、接続部より下流側(ホイールシリンダ41FR,41FL,41RL,41RR側)に、ホイールシリンダ41FR,41FL,41RL,41RRへ付与される油圧を検出するためのホイールシリンダ圧センサ44FR,44FL,44RL,44RRが配置されている。また、油圧排出分岐配管42FR,42FL,42RL,42RRの途中、つまり、各油圧供給分岐配管40FR,40FL,40RL,40RRとの接続部より下流側(リザーバ32側)に、それぞれ電磁式減圧弁45FR,45FL,45RL,45RRが配置されている。
そして、油圧供給分岐配管40FR,40FL,40RL,40RRは、電磁式増圧弁43FR,43FL,43RL,43RRよりも下流側で、それぞれマスタカット弁28,29を介して油圧供給配管24,25に接続されている。これによりマスタカット弁28,29を介してマスタシリンダ22とホイールシリンダ41FR,41FL,41RL,41RRが接続されることとなる。また、4つの駆動輪には、各駆動輪の回転速度を検出する車輪速センサ46FR,46FL,46RL,46RRが装着されている。
ブレーキECU14は、CPUやメモリ等からなり、格納されているブレーキ制御プログラムを実行することにより制動制御を実行する。即ち、このブレーキECU14には、マスタシリンダ圧センサ30,31が検出した油圧、アキュムレータ圧センサ38が検出した油圧、ホイールシリンダ圧センサ44FR,44FL,44RL,44RRが検出した油圧がそれぞれ入力される。また、ブレーキECU14には、ペダルストロークセンサ23が検出したペダルストローク、各車輪速センサ46FR,46FL,46RL,46RRが検出した車輪速がそれぞれ入力される。そして、ブレーキECU14は、シミュレータカット弁26、マスタカット弁28,29、電磁式増圧弁43FR,43FL,43RL,43RR、電磁式減圧弁45FR,45FL,45RL,45RR、ポンプモータ35、リリーフ弁39を制御可能となっている。
従って、通常、マスタカット弁28,29は閉弁され、シミュレータカット弁26は開弁されており、運転者がブレーキペダル21を踏み込み操作すると、マスタシリンダ22はその操作量に応じた油圧を発生する。一方、作動油の一部が油圧供給配管24からシミュレータカット弁26を経由してストロークシミュレータ27へ流れ込むため、ブレーキペダル21の踏力に応じてこのブレーキペダル21の操作量が調整される。即ち、操作踏力に応じたペダル操作量(ペダルストローク)が生成される。なお、このペダルストロークは、ペダルストロークセンサ23により検出されるが、マスタシリンダ圧センサ30,31が検出した油圧からも算出可能であり、それぞれのペダルストロークが一致しない場合には、各センサ23,30,31の異常、あるいはマスタシリンダ22、油圧供給配管24,25の異常と判定する。
目標制動力設定手段としてのブレーキECU14は、検出したペダルストロークに基づいて目標制動力を設定し、各駆動輪に付与する目標制動力配分を決定し、各ホイールシリンダ41FR,41FL,41RL,41RRへ付与すべき目標油圧の配分を設定する。このとき、アキュムレータ37に所定の油圧が蓄えられているが、アキュムレータ圧センサ38が検出した油圧が規定下限油圧よりも不足している場合には、ポンプモータ35を駆動して油圧ポンプ36を作動して昇圧を行う。一方、油圧が規定上限油圧よりも高すぎる場合には、リリーフ弁39を開弁して作動油をリザーバ32へ解放する。
そして、ブレーキECU14は、設定された目標油圧(目標制動力)に基づいて電磁式増圧弁43FR,43FL,43RL,43RR及び電磁式減圧弁45FR,45FL,45RL,45RRを開閉し、各ホイールシリンダ41FR,41FL,41RL,41RRに所定の油圧を付与する。つまり、この各ホイールシリンダ41FR,41FL,41RL,41RRに付与される油圧は、各電磁式増圧弁43FR,43FL,43RL,43RR及び電磁式減圧弁45FR,45FL,45RL,45RRの開度を変更することで調整する。そして、ホイールシリンダ圧センサ44FR,44FL,44RL,44RRが検出したホイールシリンダ圧をフィードバックし、これを目標制動力と比較し、その比較結果に基づいて電磁式増圧弁43FR,43FL,43RL,43RR及び電磁式減圧弁45FR,45FL,45RL,45RRの開度を調整する。
例えば、ホイールシリンダ41FRの場合、ブレーキECU14は、ホイールシリンダ圧センサ44FLにより検出されたホイールシリンダ圧を目標油圧と比較し、加圧を要する場合には、減圧弁45FLを閉弁した状態で増圧弁43FLを開く。これによりアキュムレータ37の作動油が油圧供給配管34、増圧弁43FL、油圧供給分岐配管40FLを経由してホイールシリンダ41FLへ供給されることとなり、このホイールシリンダ41FLの油圧が増圧し、制動力が強められる。
一方、制動力が強すぎて駆動輪がロックしている場合(ABS制御の場合)や、ホイールシリンダ圧センサ44FLが検出したホイールシリンダ圧が目標油圧より高い場合には、ブレーキECU14は、減圧を要すると判定し、増圧弁43FLを閉弁した状態で減圧弁45FLを開弁する。これによりホイールシリンダ41FLへ供給されていた作動油の一部が油圧排出分岐配管42FL、減圧弁45FL、油圧排出配管33を経由してリザーバ32へと戻されることとなり、ホイールシリンダ41FLに付与される油圧が減圧されて制動力が弱められる。
そして、増圧または減圧後等のホイールシリンダ圧センサ44FLで検出されたホイールシリンダ圧が目標油圧に略一致している場合、ブレーキECU14は、ホイールシリンダ圧を維持する必要があると判定し、増圧弁43FL及び減圧弁45FLを閉じる。この結果、増圧弁43FL、減圧弁45FLからホイールシリンダ41FL側の油圧供給配管40FLでの作動油の流れが停止することとなり、ホイールシリンダ41FLに付与される油圧が保持される。
なお、この油圧ブレーキ13が適用された電子制御ブレーキシステムで油圧制御部12に異常が発生した場合、適切な制動力配分を行うことができない。そこで、油圧制御部12に異常が検出された場合、ブレーキECU14は、マスタカット弁28,29を開弁してシミュレータカット弁26を閉弁し、マスタシリンダ22で生成した油圧を油圧供給配管24,25を経由して直接ホイールシリンダ41FR,41FL,41RL,41RRへと導くことで、手動による制動操作を可能としている。
ところで、上述した本実施例の車両用制動制御装置における油圧ブレーキ13は、図示しないが、車軸と一体になって回転するディスクをブレーキパッドにより両側から締め付け、その摩擦により制動力を確保するものであり、上述したホイールシリンダ41FR,41FL,41RL,41RRによりブレーキパッドを作動させている。この場合、ブレーキパッドに取付けられた摩擦材がディスクに押し付けられることで摩擦力が発生するため、長期の使用によりこの摩擦材が摩耗して摩擦力、つまり、制動力が低下する。また、油圧ブレーキの長時間の使用によりこの摩擦材の温度が高くなるが、摩擦材の温度上昇により摩擦係数が低下するため、制動力が低下する。即ち、油圧ブレーキ13は、ブレーキパッドに取付けられた摩擦材の使用状況に応じて制動力がばらついてしまい、運転者が所望する制動力(減速度)を確保できない場合がある。
そこで、本実施例の車両用制動制御装置では、車両に作用する実際の減速度を検出する前後加速度センサ(減速度検出手段)61を設け、ブレーキECU14は、この前後加速度センサ61が検出した車両の前後加速度に基づいて車両に作用する実際の減速度(以下、実減速度)Grを算出する。一方、ブレーキECU14は、ホイールシリンダ圧センサ44FR,44FL,44RL,44RRが検出したホイールシリンダ圧から車両に作用する推定減速度(目標減速度)Geを換算する。そして、実減速度Grと推定減速度Geとの偏差に基づいて、油圧ブレーキ13の効き度合を判定(ブレーキ効き度合判定手段)し、その判定結果に基づいて目標制動力を補正(目標制動力補正手段)するようにしている。
具体的に説明すると、前後加速度センサ61が車両の前後加速度を検出し、ブレーキECU14は、この前後加速度センサ61が検出した前後加速度から車両の実減速度Grを算出する。一方、ホイールシリンダ圧センサ44FR,44FL,44RL,44RRがホイールシリンダ圧を検出し、ブレーキECU14は、このホイールシリンダ圧センサ44FR,44FL,44RL,44RRが検出したホイールシリンダ圧から車両に作用する推定減速度Geを換算する。そして、この実減速度Grから推定減速度Geを減算し、この減算値(偏差)を推定減速度Geで除算し、これを割合として油圧ブレーキ13のブレーキ効き度合Erを算出する。
Er=[(Gr−Ge)/Ge]×100(%)
そして、このブレーキ効き度合Erが予め設定された下限判定値Er1以下だったときには、油圧ブレーキ13の効き度合が悪いと判定し、ブレーキ効き度合Erが上限判定値Er2以上だったときには、油圧ブレーキ13の効き度合が良過ぎると判定する。このとき、ブレーキ効き度合Erが下限判定値Er1より高く、且つ、上限判定値Er2より低い範囲になるように、油圧ブレーキ13の目標制動力、つまり、ホイールシリンダ41FR,41FL,41RL,41RRの目標油圧を増減する。
この場合、ブレーキECU14は、前後加速度センサ61が検出した前後加速度から車両のエンジンブレーキと坂路勾配と転がり抵抗を減算して減速度Grを算出する。
Gr=前後加速度−(エンジンブレーキ+坂路勾配+走行抵抗)
なお、エンジンブレーキは、エンジンの特性により予め設定されており、坂路勾配は、車輪速センサ46FR,46FL,46RL,46RRが検出した車輪速度と前後加速度センサ61が検出した前後加速度とに基づいて推定し、転がり抵抗は、予め設定された車速に対する空気抵抗のマップを用いて車速センサ62が検出した車速に基づいて設定する。
また、車両に発生する実減速度Geは、油圧ブレーキ13による制動力の他に走行抵抗などの外的要因に応じて変化する。そして、車両の走行条件によっては、運転者によるブレーキペダル21の操作力に応じた目標制動力よりも過大な減速度が発生してしまうおそれがある。例えば、車両が雪の深い道路や砂地などの走行抵抗が過大な道路を走行するとき、車輪がラッセル動作により雪や砂をかき上げながら回転しており、運転者がブレーキ操作を行うと、この運転者が要求する目標制動力(目標減速度)よりも大きな減速度が発生する。そのため、このときに検出した実減速度Geを用いて上述した油圧ブレーキ13のブレーキ効き度合Erを算出してブレーキ効き判定を実行すると、運転者が要求する目標制動力に対して適正な目標減速度を設定することができない。
そこで、本実施例の車両用制動制御装置では、エンジン回転数を検出するエンジン回転数センサ63と、変速機の変速比(ギヤ位置)を検出する変速比センサ64を設け、このエンジン回転数センサ63と変速比センサ64を本発明の車両走行状態検出手段として適用する。また、マスタシリンダ圧を検出するマスタシリンダ圧センサ30,31またはホイールシリンダ圧を検出するホイールシリンダ圧センサ44FR,44FL,44RL,44RRを本発明の車両走行状態検出手段として適用する。
本発明の減速度判定手段としてのブレーキECU14は、車輪速センサ46FR,46FL,46RL,46RRが検出した実際の車輪速度(以下、実車輪速度)Vrと、エンジン回転数と変速比により推定した推定車輪速度Veとを比較し、推定車輪速度Veに対して車輪速度Vrが過大であるかどうかを判定する。また、ブレーキECU14は、前後加速度センサ61が検出した前後加速度から換算した実減速度Grと、マスタシリンダ圧センサ30,31が検出したマスタシリンダ圧またはホイールシリンダ圧センサ44FR,44FL,44RL,44RRが検出したホイールシリンダ圧から換算した推定減速度Geとを比較し、推定減速度Geに対して実減速度Grが過大であるかどうかを判定する。
そして、ブレーキECU14が推定車輪速度Veに対して車輪速度Vrが過大であると判定したり、推定減速度Geに対して実減速度Grが過大であると判定したら、本発明の目標制動力補正禁止手段としてのブレーキECU14は、上述したブレーキ効き度合Erの判定結果に基づいて油圧ブレーキ13の目標制動力(ホイールシリンダ41FR,41FL,41RL,41RRの目標油圧)を補正(増減)する処理を禁止するようにしている。
ここで、本実施例の車両用制動制御装置における制動力制御について、図3のフローチャートに基づいて説明する。車両の制動力制御において、図3に示すように、まず、ステップS1では、ストロークセンサ23が検出したペダルストロークを取得し、ステップS2では、ホイールシリンダ圧センサ44FR,44FL,44RL,44RRが検出したホイールシリンダ圧を取得する。次に、ステップS3にて、ペダルストロークに基づいて目標制動力を演算し、目標油圧を設定する。
そして、ステップS4にて、油圧ブレーキ13のブレーキ効き補正を実行する。但し、予め、ブレーキ効き補正値k=1.0と設定されており、後述するブレーキ効き判定処理が完了していないときは、設定した目標油圧を補正することなく、ステップS5にて、目標制動力から各ホイールシリンダ41FR,41FL,41RL,41RRに付与する目標油圧を決定し、この目標油圧に基づいて電磁式増圧弁43FR,43FL,43RL,43RR及び電磁式減圧弁45FR,45FL,45RL,45RRの開度を調整し、各ホイールシリンダ41FR,41FL,41RL,41RRにより油圧ブレーキ13を作動させる。このとき、ホイールシリンダ圧をフィードバックし、目標油圧と一致するように制御する。
そして、ステップS6にて、油圧ブレーキ13のブレーキ効き判定を実行する。本実施例の車両用制動制御装置におけるブレーキ効き判定制御において、図4に示すように、ステップS11では、前後加速度センサ61が検出した車両の前後加速度を取得し、ステップS12では、車輪速センサ46FR,46FL,46RL,46RRが検出した車輪速度を取得し、ステップS13では、車速センサ62が検出した車速を取得し、ステップS14では、ホイールシリンダ圧センサ44FR,44FL,44RL,44RRが検出したホイールシリンダ圧を取得する。
そして、ステップS15では、下記数式に基づいて油圧ブレーキ13のブレーキ効き度合Erを算出する。
Er=[(Gr−Ge)/Ge]×100(%)
続いて、ステップS16では、このブレーキ効き度合Erが予め設定された下限判定値Er1より大きく、且つ、上限判定値Er2より小さい範囲にあるかどうかを判定する。つまり、油圧ブレーキ13にて、ブレーキパッドに取付けられた摩擦材の使用状況(摩耗や温度上昇による摩擦係数μの低下)により制動力が変動しているかどうかを判定する。
このステップS16にて、ブレーキ効き度合Erが下限判定値Er1と上限判定値Er2との範囲にあると判定されたら、油圧ブレーキ13の効き度合が良いと判定し、ブレーキ効き補正値kを変更せずに前回のものを保持する。一方、ブレーキ効き度合Erが下限判定値Er1と上限判定値Er2との範囲にないと判定されたら、ステップS17に移行し、ここで、ブレーキ効き度合Erが下限判定値Er1と上限判定値Er2との範囲に入るように、具体的には、Er=0となるようにブレーキ効き補正値kを変更する。この場合、ブレーキ効き度合Erが下限判定値Er1より小さいときには、ブレーキ効き補正値kが大きくなる方向に変更し、ブレーキ効き度合Erが上限判定値Er2より大きいときは、ブレーキ効き補正値kが小さくなる方向に変更する。
このように油圧ブレーキ13の効き度合が適切でなく、ブレーキ効き補正値kが新たに設定されると、前述した車両の制動力制御におけるステップS4にて、目標制動力にブレーキ効き補正値kが乗算されることで補正され、ステップS5にて、補正された目標制動力に基づいて目標油圧が設定され、この目標油圧に基づいて電磁式増圧弁43FR,43FL,43RL,43RR及び電磁式減圧弁45FR,45FL,45RL,45RRの開度が調整されることとなり、油圧ブレーキ13の効き度合が良好となる。
ところが、車両の制動力制御におけるステップS4にて、ブレーキ効き補正制御が実行されるとき、走行抵抗が過大である場合には、車両に作用する実際の減速度が過大となってブレーキ効き判定の結果を誤学習してしまうおそれがあるため、ブレーキ効き判定の結果に基づいて油圧ブレーキ13の目標制動力(ホイールシリンダ41FR,41FL,41RL,41RRの目標油圧)を補正する処理を禁止する。
即ち、本実施例の車両用制動制御装置におけるブレーキ効き補正制御において、図5に示すように、ステップS21では、ブレーキ効き判定が完了したかどうかを判定する。ここで、ブレーキ効き判定処理が完了していないと判定されたら、ステップS25にて、ブレーキ効き補正値k=1.0と設定し、ステップS26にて、ブレーキ効き補正を実行する。
一方、ステップS21にて、ブレーキ効き判定が完了したと判定されたら、既にブレーキ効き判定結果に基づいてブレーキ効き補正値kが設定されていると判断し、ステップS22にて、車両の走行抵抗を演算する。本実施例では、車両の走行状態に応じて走行抵抗の演算方法が異なる。車両の発進加速時や定常走行時には、車輪速センサ46FR,46FL,46RL,46RRが検出した実車輪速度Vrと、エンジン回転数センサ63が検出したエンジン回転数と変速比センサ64が検出した変速比により推定した推定車輪速度Veを用いて走行抵抗を求める。つまり、図6に示すように、走行抵抗がないときには、同図に実線で表すように、実車輪速度Vrの増加量に対して推定車輪速度Veも同量だけ増加する。しかし、走行抵抗があるときには、同図に一点鎖線で表すように、実車輪速度Vrの増加量に対して推定車輪速度Veの増加量が少なくなる。従って、実車輪速度Vrと推定車輪速度Veとの偏差(以下、車輪速度偏差)Vdを車両の走行抵抗とする。
一方、車両の惰行減速時や制動時には、前後加速度センサ61が検出した前後加速度から換算した実減速度Grと、マスタシリンダ圧センサ30,31が検出したマスタシリンダ圧またはホイールシリンダ圧センサ44FR,44FL,44RL,44RRが検出したホイールシリンダ圧から換算した推定減速度Geとを用いて走行抵抗を求める。つまり、図7に示すように、走行抵抗がないときには、同図に実線で表すように、実減速度Grの増加量に対して推定減速度Geが所定角度で増加する。しかし、走行抵抗があるときには、同図に一点鎖線で表すように、実減速度Grの増加量に対して推定減速度Geの増加量が大きくなる。従って、実減速度Grと推定減速度Geとの偏差(以下、減速度偏差)Gdを車両の走行抵抗とする。
なお、車両の発進加速時や定常走行時に、エンジン回転数センサ63が検出したエンジン回転数と変速比センサ64が検出した変速比により推定した推定車輪速度Veを用いて走行抵抗を求めたが、エンジン回転数に代えてアクセル開度やスロットル開度を用いてもよい。また、実車輪速度Vrと推定車輪速度Veを用いて走行抵抗を求めたが、前後加速度センサ61が検出した車両の前後加速度と、車輪速センサ46FR,46FL,46RL,46RRが検出した車輪速度を換算した車輪加速度を用いて走行抵抗を求めてもよい。
また、上述した車両の走行抵抗を演算するとき、走行する路面の坂路勾配を考慮した補正を行う。図8に示すように、車両が登坂路を走行するとき、車両の前後加速度Gから坂路勾配(傾斜角θ)により発生する停車時の前後加速度G0を減算して前後加速度Grを求める。
なお、車両の発進加速時及び定常走行時と車両の惰行減速時及び制動時とで走行抵抗の演算方法を異なるものとすることで、常時、走行抵抗を取得することができ、制動時における判定を時間遅れなく実施することができる。そして、車両の発進加速時及び定常走行時と車両の惰行減速時及び制動時の判定は、ストップランプスイッチのON/OFF状態により行えばよい。但し、車両の発進加速時及び定常走行時と車両の惰行減速時及び制動時とで走行抵抗の演算方法を異なるものとせず、いずれか一方の方法を用いてもよいものである。
そして、ステップS22にて、車両の走行抵抗が演算されたら、ステップS23にて、現在の車両に作用する走行抵抗が過大なものであるかどうかを判定する。即ち、実車輪速度Vrと推定車輪速度Veとの車輪速度偏差Vdが予め設定された所定値Vsより大きいかどうか、または、実減速度Grと推定減速度Geとの減速度偏差Gdが予め設定された所定値Gsより大きいかどうかを判定する。
ここで、車輪速度偏差Vdが所定値Vs以下で、且つ、減速度偏差Gdが所定値Gs以下であるときには、走行抵抗が過大ではないと判定し、ステップS26にて、既に設定されたブレーキ効き補正値kに基づいてブレーキ効き補正を実行する。一方、車輪速度偏差Vdが所定値Vsより大きかったり、または、減速度偏差Gdが所定値Gsより大きいときには、走行抵抗が過大であると判定し、ステップS24に移行し、ここで、ブレーキ効き補正値kに基づいたブレーキ効き補正を禁止する。
即ち、現在の車両に作用する走行抵抗が過大であるときには、ブレーキ効き補正値kに基づいたブレーキ効き補正を禁止、つまり、実減速度Grを用いた目標制動力の学習制御を実施しない。従って、不適切な実減速度Grによる補正をやめることで、車両の走行状態に応じて適切な制動力の制御が可能となる。
このように実施例1の車両用制動制御装置にあっては、前後加速度センサが検出した実減速度Grと、ホイールシリンダ圧センサ44FR,44FL,44RL,44RRが検出したホイールシリンダ圧から算出した推定減速度Geとの偏差に基づいて、油圧ブレーキ13の効き度合を判定し、その判定結果に基づいて目標制動力を補正する一方、推定車輪速度Veに対して車輪速度Vrが過大であったり、推定減速度Geに対して実減速度Grが過大であって、車両の走行抵抗が過大であるときには、ブレーキ効き度合の判定結果に基づいた目標制動力の補正処理を禁止するようにしている。
従って、実減速度Grと推定減速度Geとの偏差に基づいて油圧ブレーキ13の効き度合を判定して目標制動力を補正することで、高精度な制動力の制御が可能となると共に、車両の走行抵抗が過大であるときには、ブレーキ効き度合の判定結果に基づいた目標制動力の補正処理を禁止し、不適切な実減速度による補正をやめることで、車両の走行状態に応じて適切な制動力の制御を実現することができる。
また、本実施例の車両用制動制御装置では、前後加速度センサ61が検出した前後加速度から車両の実減速度Grを算出する一方、ホイールシリンダ圧センサ44FR,44FL,44RL,44RRが検出したホイールシリンダ圧から車両に作用する推定減速度Geを算出し、この実減速度Grから推定減速度Geを減算し、この減算値(偏差)を推定減速度Geで除算し、これを割合として油圧ブレーキ13のブレーキ効き度合Erを算出しており、高精度なブレーキ効き判定を実行することができる。
そして、本実施例の車両用制動制御装置では、減速度として車両に作用する走行抵抗を適用し、走行抵抗が予め設定された所定値より大きいときに目標減速度に対して実減速度が過大であると判定するようにしている。従って、この走行抵抗を、マスタシリンダ圧センサ30,31、ホイールシリンダ圧センサ44FR,44FL,44RL,44RR、車輪速センサ46FR,46FL,46RL,46RR、前後加速度センサ61、エンジン回転数センサ63、変速比センサ64など既存のセンサを用いて算出することで、簡単な構成で適切な判定を実行することができる。
図9は、本発明の実施例2に係る車両用制動制御装置におけるブレーキ効き補正制御を表すフローチャートである。なお、本実施例の車両用制動制御装置における全体構成は、上述した実施例1とほぼ同様であり、図1を用いて説明すると共に、この実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
実施例2の車両用制動制御装置では、前述した実施例1と同様に、図1に示すように、ブレーキECU14は、前後加速度センサ61が検出した車両の前後加速度に基づいて車両に作用する実減速度Grを算出する一方、ホイールシリンダ圧センサ44FR,44FL,44RL,44RRが検出したホイールシリンダ圧から車両に作用する推定減速度Geを算出し、実減速度Grと推定減速度Geとの偏差に基づいて油圧ブレーキ13の効き度合を判定し、その判定結果に基づいて目標制動力を補正するようにしている。
また、実施例2の車両用制動制御装置では、車速センサ62を本発明の車両走行状態検出手段として適用し、ブレーキECU14は、車速センサ62が検出した車速に基づいて算出した空力抵抗が予め設定した所定値に対して過大であるかどうかを判定する。そして、ブレーキECU14が所定値に対して空力抵抗が過大であると判定したら、上述したブレーキ効き度合Erの判定結果に基づいて油圧ブレーキ13の目標制動力を補正する処理を禁止するようにしている。
ここで、本実施例の車両用制動制御装置におけるブレーキ効き補正制御について、図9のフローチャートに基づいて説明する。ブレーキ効き補正制御において、図9に示すように、ステップS31では、ブレーキ効き判定が完了したかどうかを判定し、ここで、ブレーキ効き判定処理が完了していないと判定されたら、ステップS35にて、ブレーキ効き補正値k=1.0と設定し、ステップS36にて、ブレーキ効き補正を実行する。
一方、ステップS31にて、ブレーキ効き判定が完了したと判定されたら、既にブレーキ効き判定結果に基づいてブレーキ効き補正値kが設定されていると判断し、ステップS32にて、車両の空力抵抗Dを下記数式より演算する。
D=(1/2)・CD・A・V2・α
ここで、CDは、車両の空力抗力係数であり、Aは、車両の前面投影面積であり、車両に応じて予め計測しておく。Vは、車速であり、車速センサ62を用いて検出する。αは、空気密度であり、気温と大気圧により求めることができる。
そして、ステップS32にて、車両の空力抵抗が演算されたら、ステップS33にて、現在の車両に作用する空力抵抗が過大なものであるかどうかを判定する。即ち、空力抵抗は上記数式により求めることができるが、車速Vを除く車両の空力抗力係数CD、前面投影面積A、空気密度αは予めわかっており、空力抵抗は車速Vに依存する。そのため、このステップS33では、車速センサ62が検出した車速Vが予め設定された所定値V0より大きいかどうかを判定する。
ここで、車速Vが予め設定された所定値V0以下であるときには、空力抵抗が過大ではないと判定し、ステップS36にて、既に設定されたブレーキ効き補正値kに基づいてブレーキ効き補正を実行する。一方、車速Vが予め設定された所定値V0より大きいときには、空力抵抗が過大であると判定し、ステップS34に移行し、ここで、ブレーキ効き補正値kに基づいたブレーキ効き補正を禁止する。
即ち、現在の車両に作用する空力抵抗が過大であるときには、ブレーキ効き補正値kに基づいたブレーキ効き補正を禁止、つまり、実減速度Grを用いた目標制動力の学習制御を実施しない。従って、不適切な実減速度Grによる補正をやめることで、車両の走行状態に応じて適切な制動力の制御が可能となる。
このように実施例2の車両用制動制御装置にあっては、前後加速度センサが検出した実減速度Grと、ホイールシリンダ圧センサ44FR,44FL,44RL,44RRが検出したホイールシリンダ圧から算出した推定減速度Geとの偏差に基づいて、油圧ブレーキ13の効き度合を判定し、その判定結果に基づいて目標制動力を補正する一方、車速Vが所定値V0より大きいときには車両の空力抵抗が過大であるとし、ブレーキ効き度合の判定結果に基づいた目標制動力の補正処理を禁止するようにしている。
従って、車両の空力抵抗が過大であるときには、ブレーキ効き度合の判定結果に基づいた目標制動力の補正処理を禁止し、不適切な実減速度による補正をやめることで、車両の走行状態に応じて適切な制動力の制御を実現することができる。
また、本実施例の車両用制動制御装置では、減速度として車両に作用する空力抵抗を適用し、走行抵抗が予め設定された所定値より大きいときに目標減速度に対して実減速度が過大であると判定するようにしている。従って、この空力抵抗を、車速センサ62など既存のセンサを用いて算出することで、簡単な構成で適切な判定を実行することができる。
図10は、本発明の実施例3に係る車両用制動制御装置を表す概略構成図、図11は、実施例3の車両用制動制御装置におけるブレーキ効き補正制御を表すフローチャートである。なお、前述した実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
実施例3の車両用制動制御装置では、前述した実施例1、2と同様に、図10に示すように、ブレーキECU14は、前後加速度センサ61が検出した車両の前後加速度に基づいて車両に作用する実減速度Grを算出する一方、ホイールシリンダ圧センサ44FR,44FL,44RL,44RRが検出したホイールシリンダ圧から車両に作用する推定減速度Geを算出し、実減速度Grと推定減速度Geとの偏差に基づいて油圧ブレーキ13の効き度合を判定し、その判定結果に基づいて目標制動力を補正するようにしている。
また、実施例3の車両用制動制御装置が適用される車両は、図示しないが、前輪側プロペラシャフトと後輪側プロペラシャフトとがセンタディファレンシャルにより直結可能とされた四輪駆動車両であり、運転者が前輪側プロペラシャフトと後輪側プロペラシャフトとがセンタディファレンシャルにより直結する直結スイッチを押すと点灯するセンタデフ直結ランプ65が設けられ、センタデフ直結ランプ65の点灯信号(ON信号)がブレーキECU14に入力する。
本実施例では、センタデフ直結ランプ65を、センタディファレンシャルによる前輪側プロペラシャフトと後輪側プロペラシャフトとの直結状態を検出する本発明の車両走行状態検出手段として適用し、ブレーキECU14は、センタデフ直結ランプ65が点灯(ON)したときに、前輪側プロペラシャフトと後輪側プロペラシャフトとが直結状態にあると判断し、目標減速度に対して実減速度が過大であると判定し、上述したブレーキ効き度合Erの判定結果に基づいて油圧ブレーキ13の目標制動力を補正する処理を禁止するようにしている。
即ち、前輪及び後輪の目標制動力は、前述したように、ペダルストロークに基づいて設定されるが、車両の安定性を考慮すると、前輪の目標制動力に対して後輪の目標制動力が若干小さく設定されるのが一般的である。この場合、センタディファレンシャルにより前輪側プロペラシャフトと後輪側プロペラシャフトとが直結状態にあるとき、油圧ブレーキ13が作動すると、前輪側の制動力が後輪側に伝達され、前輪の制動力と後輪の制動力が同様となり、車両の安定性が不十分となって過大な減速度が発生してしまうおそれがある。そのため、前輪側プロペラシャフトと後輪側プロペラシャフトとが直結状態にあるときには、ブレーキ効き度合Erの判定結果に基づいた油圧ブレーキ13の目標制動力の補正処理を禁止する。
ここで、本実施例の車両用制動制御装置におけるブレーキ効き補正制御について、図11のフローチャートに基づいて説明する。ブレーキ効き補正制御において、図11に示すように、ステップS41では、ブレーキ効き判定が完了したかどうかを判定し、ここで、ブレーキ効き判定処理が完了していないと判定されたら、ステップS45にて、ブレーキ効き補正値k=1.0と設定し、ステップS46にて、ブレーキ効き補正を実行する。
一方、ステップS41にて、ブレーキ効き判定が完了したと判定されたら、既にブレーキ効き判定結果に基づいてブレーキ効き補正値kが設定されていると判断し、ステップS42にて、センタデフ直結ランプ65の点灯状況(ON/OFF信号)を読み込む。そして、ステップS43にて、センタデフ直結ランプ65の点灯(ON信号)しているかどうかを判定する。
ここで、センタデフ直結ランプ65の点灯していないときには、減速度が過大ではないと判定し、ステップS46にて、既に設定されたブレーキ効き補正値kに基づいてブレーキ効き補正を実行する。一方、センタデフ直結ランプ65が点灯しているときには、減速度が過大であると判定し、ステップS44に移行し、ここで、ブレーキ効き補正値kに基づいたブレーキ効き補正を禁止する。
即ち、センタデフ直結ランプ65が点灯しているときには、前輪側の制動力が後輪側に伝達されて過大な減速度が発生するおそれがあるため、ブレーキ効き補正値kに基づいたブレーキ効き補正を禁止、つまり、実減速度Grを用いた目標制動力の学習制御を実施しない。従って、不適切な実減速度Grによる補正をやめることで、車両の走行状態に応じて適切な制動力の制御が可能となる。
このように実施例3の車両用制動制御装置にあっては、前後加速度センサが検出した実減速度Grと、ホイールシリンダ圧センサ44FR,44FL,44RL,44RRが検出したホイールシリンダ圧から算出した推定減速度Geとの偏差に基づいて、油圧ブレーキ13の効き度合を判定し、その判定結果に基づいて目標制動力を補正する一方、センタデフ直結ランプ65が点灯しているときには車両の減速度が過大であるとし、ブレーキ効き度合の判定結果に基づいた目標制動力の補正処理を禁止するようにしている。
従って、センタディファレンシャルにより前輪側プロペラシャフトと後輪側プロペラシャフトとが直結状態にあるときは、車両の減速度が過大になるおそれがあり、ブレーキ効き度合の判定結果に基づいた目標制動力の補正処理を禁止し、不適切な実減速度による補正をやめることで、車両の走行状態に応じて適切な制動力の制御を実現することができる。
また、本実施例の車両用制動制御装置では、減速度の過大判定要素として、前輪側プロペラシャフトと後輪側プロペラシャフトとが直結状態となって点灯するセンタデフ直結ランプ65を適用している。従って、簡単な構成で適切な判定を実行することができる。
なお、上述した各実施例では、前後加速度センサ61が検出した車両の前後加速度に基づいて実減速度Grを算出する一方、ホイールシリンダ圧センサ44FR,44FL,44RL,44RRが検出したホイールシリンダ圧から車両に作用する推定減速度Geを換算し、実減速度Grと推定減速度Geとの偏差に基づいて、油圧ブレーキ13の効き度合を判定するようにしたが、この構成に限定されるものではない。即ち、マスタシリンダ圧センサ30,31が検出したマスタシリンダ圧から車両に作用する推定減速度Geを求めたり、ストロークセンサ23が検出したペダルストロークに基づいて設定した目標制動力(目標油圧)から車両に作用する推定減速度Geを求めてもよい。
また、上述した各実施例では、走行抵抗、空力抵抗、前輪側プロペラシャフトと後輪側プロペラシャフトとが直結状態に応じて、目標減速度に対して実減速度が過大であるかどうかを判定するようにしたが、この方法に限定されるものではない。例えば、車両の重量や積載量を検出するセンサとして、荷重センサや車高センサを設け、車両の重量や積載量が所定値より大きいときには車両の減速度が過大であるとし、ブレーキ効き度合の判定結果に基づいた目標制動力の補正処理を禁止するようにしてもよい。
更に、上述した各実施例では、目標油圧をホイールシリンダ41FR,41FL,41RL,41RRに付与して油圧ブレーキ13を作動させたとき、ホイールシリンダ圧をフィードバックし、目標油圧と一致するように制御したが、本発明の車両用制動制御装置は、このフィードバック制御を実施しなくてもよく、ブレーキ効き判定の学習制御により高精度な制動制御を可能とすることができる。