JP2007186753A - AlまたはAl合金の陽極酸化皮膜の水和処理法 - Google Patents

AlまたはAl合金の陽極酸化皮膜の水和処理法 Download PDF

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Abstract

【課題】水和処理時間の許容範囲が広いAlまたはAl合金の陽極酸化皮膜の水和処理法を提供すること。
【解決手段】ポーラス層とポアのないバリア層とを備えた陽極酸化皮膜を有するAlまたはAl合金を加熱した処理水中に浸漬することによる水和処理法であり、前記処理水が、実質的に純水からなり、かつイオン状シリカを含有することを特徴とする方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、AlまたはAl合金の陽極酸化皮膜の水和処理法に関するものである。
AlまたはAl合金は、自然な状態でも表面に薄い酸化皮膜を有するので、鉄と比べると耐食性に優れている。この耐食性をさらに向上させるため、AlまたはAl合金は陽極酸化処理に供されることがある。ここで「陽極酸化処理」とは、AlまたはAl合金をシュウ酸などの電解液中で陽極酸化する処理であり、AlまたはAl合金の表面に自然に形成される酸化皮膜よりも、厚くて緻密な陽極酸化皮膜を形成させることを目的とする。
図1に示すように、AlまたはAl合金基材1の表面に形成された陽極酸化皮膜2は、開口したポア3を多数有するポーラス層4とポアのないバリア層(無孔層)5とを有する。このポーラス層4は吸着性があるため、染色や着色の際には有利に作用するが、逆に汚染物質や腐食物質も吸着するので、汚れやすく、耐食性にも悪影響を及ぼし得る。そこでAlまたはAl合金の陽極酸化皮膜(Al23)を、水蒸気または熱水で水和することによりベーマイト(Al23・H2O)に変化させて化学反応性を抑制する、さらにその体積膨張によりポアを封孔する、または狭くすることを目的とする後処理がしばしば行われる。
この後処理で陽極酸化皮膜の水和が不充分であると良好な耐食性が得られない。また逆に過剰に水和した場合も、皮膜の体積が膨張してクラックや欠陥が生じ、耐食性が低下する。特許文献1は、陽極酸化皮膜のクラックや欠陥の指標として塩素ガス腐食試験での腐食発生面積率を規定している(請求項1および段落0036参照)。
この特許文献1では、Al合金部材の陽極酸化皮膜を水和処理する方法として、水蒸気よりも制御が容易な、熱水浸漬による水和処理法を推奨している(段落0038参照)。しかし熱水浸漬による陽極酸化皮膜の水和処理でも、AlまたはAl合金の熱水中での浸漬時間が短すぎると水和が不充分であるため耐食性が低下し、一方、浸漬時間が長すぎてもクラックが発生するため、同様に耐食性が低下する。そのため殊に高度な耐食性が要求される場合には、熱水浸漬による水和処理でも、AlまたはAl合金を熱水中に浸漬させる時間、即ち水和処理時間が狭い範囲に限定され、工程管理が難しくなるという問題があった。
特に熱水浸漬による水和処理を工業的規模で実施する場合、AlまたはAl合金を熱水中に沈める操作、および熱水から引き上げる操作に一定の時間を要するので、AlまたはAl合金の下端と上端とでは、水和処理時間に差異が生ずる。そのため工業的規模では工程管理がより一層難しくなる。
特開2003−34894号公報、請求項1、段落0036および0038参照
本発明は前記のような事情に着目してなされたものであって、水和処理時間の許容範囲(管理範囲)が広いAlまたはAl合金の陽極酸化皮膜の水和処理法を提供することにある。
前記目的を達成し得た本発明とは、ポーラス層とポアのないバリア層とを備えた陽極酸化皮膜を有するAlまたはAl合金を加熱した処理水中に浸漬することによる水和処理法であり、前記処理水が、実質的に純水からなり、かつイオン状シリカを含有することを特徴とする。
イオン状シリカを含有する処理水の具体例として、純水にケイ酸ナトリウムを添加して形成されたものを挙げることができる。本発明の好ましい実施態様では、前記処理水中のイオン状シリカ濃度は10〜40ppm(質量基準、以下同じ)であり、および/または水和処理温度は90〜100℃である。ここで本発明における「水和処理温度」とは、AlまたはAl合金が浸漬している処理水の温度をいう。
本発明の好ましい方法において、100℃の水和処理温度で、水和処理時間が下記式(1)を満たすように管理することにより、AlまたはAl合金の陽極酸化皮膜に良好な耐食性を付与することができる。
6.6722×1.0417x≦y≦13.229×1.0490x (1)
〔式中、xは処理水中のイオン状シリカ濃度(ppm)を表し、yは水和処理時間(分)を表す。〕
さらに本発明の水和処理法において、前記バリア層組織の少なくとも一部を、ベーマイトおよび/または擬ベーマイトにし、かつ陽極酸化皮膜を、リン酸−クロム酸浸漬試験(JIS H8683−2)での溶解速度が100mg/dm2/15分以下であり、塩素ガス腐食試験(5体積%Cl2−Arガス雰囲気下、400℃、4時間)での腐食発生面積率が10%以下であるものにすることが好ましい。このような特性の陽極酸化皮膜を有するAlまたはAl合金は、特に耐食性が優れているからである。本発明の方法で水和処理したAlまたはAl合金は、高度な耐食性を有するので、真空チャンバ部材を形成するために用いることが推奨される。また本発明の方法では、イオン状シリカ濃度をコントロールして、水和処理時間を調節することができる。
本発明は、実質的に純水からなり、イオン状シリカを含有することを特徴とするAlまたはAl合金の陽極酸化皮膜を水和処理するための処理水、特に好ましくはそのイオン状シリカ濃度が10〜40ppmである処理水も提供する。
驚くべきことに、イオン状シリカを含有する処理水をAlまたはAl合金の陽極酸化皮膜の水和処理に用いると、水和処理時間の許容範囲(管理範囲)を広げ得ることを見出した。
発明を実施するための形態
本発明は、AlまたはAl合金の陽極酸化皮膜の水和処理に、イオン状シリカを含有する処理水を用いることに要旨がある。本発明において「イオン状シリカ」とは、JIS K0101−44.1に定義するものと同じであり、「七モリブデン酸六アンモニウムと反応してヘテロポリ化合物の黄色を生成するシリカ」をいう。
イオン状シリカを含有する処理水は、例えば、純水にイオン状シリカ供給物質を添加し、加熱下または無加熱下で充分に撹拌することにより製造することができる。このイオン状シリカ供給物質としては、例えばケイ酸塩が挙げられ、オルトまたはメタケイ酸のアルカリ金属塩が好ましい。オルトまたはメタケイ酸のアルカリ金属塩は水溶性に優れているからである。オルトまたはメタケイ酸塩は、非水和物および水和物のいずれであってもよく、具体的にはメタケイ酸ナトリウム(Na2SiO3)、メタケイ酸ナトリウム九水和物(Na2SiO3・9H2O)、およびオルトケイ酸ナトリウム(Na4SiO4)などが例示できる。
本発明の処理水は、イオン状シリカ供給物質を含有すること以外は、実質的に純水からなる。本発明における純水は、工業用純水であってもよい。一般に蒸留水、上水または工業用用水から、強酸性陽イオン交換樹脂および強塩基性イオン交換樹脂にて電気伝導性物質を除去して、その導電率を1μS/cm以下にしたものが、陽極酸化皮膜の水和処理用の純水として用いられることが多い。本発明においても、導電率が1μS/cm以下の純水にイオン状シリカ供給物質を添加して処理水を調製することが好ましい。
処理水中のイオン状シリカ濃度は、例えば、10〜40ppm(質量基準、以下同じ)程度、好ましくは15〜30ppm程度、さらに好ましくは20〜25ppm程度である。この範囲内にイオン状シリカ濃度を調節すれば、水和処理の効率性を大きく損なうことなく、水和処理時間の許容範囲を充分に広げることができる。
なお処理水中のイオン状シリカ濃度の値は、JIS K0101−44.1.1で規定されている「モリブデン黄吸光光度法」によって決定する(詳細はJIS K0101−44.1.1参照)。測定温度は、水和処理温度ではなく、JIS K0101−44.1.1で規定されている通り約20℃とする。イオン状シリカは、後述するように、その対応する化合物(ケイ酸塩などのイオン状シリカ供給物質)が水中で解離することによって供給されるため、その濃度は温度によって変化する。従って測定温度を定めておくことが重要である。
純水にメタケイ酸ナトリウム(Na2SiO3)を添加して処理水を調製する場合、処理水中のイオン状シリカ濃度(ppm)と、純水へのメタケイ酸ナトリウムの添加濃度(mg/L)とは、ほぼ
イオン状シリカ濃度(ppm)
=メタケイ酸ナトリウム添加濃度(mg/L)×0.43
の関係にある。よってメタケイ酸ナトリウムの添加濃度から、ある程度、イオン状シリカ濃度を予測することができる。
水和処理温度は、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上である。但し水和処理温度が低いと、ベーマイト(Al23・H2O)に比べて耐食効果の低いバイヤライト(Al23・3H2O)が形成され得る。従って90〜100℃の水和処理温度がさらに好ましい。従って本発明の好ましい1つの実施態様では、あらかじめ処理水を90〜100℃に加熱し、これにAlまたはAl合金を沈めて、所定時間浸漬させ、次いで処理水から引き上げることにより、陽極酸化皮膜の水和を行う。なお処理水を高温に加熱する場合、水の蒸発が顕著になるので、水を適宜補充して処理水中のイオン濃度を一定範囲に保つことが好ましい。
前記のように処理水中にイオン状シリカを含有させることにより、水和処理時間の許容範囲(管理範囲)を広げることができる。逆に水和処理時間が、この許容範囲内に含まれるように管理することにより、AlまたはAl合金の陽極酸化皮膜に良好な耐食性を付与することができる。具体的には以下の実施例で示されるように、100℃の水和処理温度で水和処理時間が、下記式(1)を満たすように(図2のグラフに記載する上下の指数近似曲線の間に含まれるように)管理することにより、塩酸浸漬試験で350分以上の水素発生時間を示すAlまたはAl合金を製造することができる。
6.6722×1.0417x≦y≦13.229×1.0490x (1)
〔式中、xは処理水中のイオン状シリカ濃度(ppm)を表し、yは水和処理時間(分)を表す。〕
さらに良好な耐食性を実現させるために、100℃の水和処理温度で水和処理時間が、好ましくは下記式(2)、より好ましくは下記式(3)を満たすように(図3または4のグラフに記載する上下の指数近似曲線の間に含まれるように)管理することが望ましい。
7.6064×1.0413x≦y≦10.865×1.0540x (2)
8.5484×1.0454x≦y≦9.8215×1.0523x (3)
〔式中、xは処理水中のイオン状シリカ濃度(ppm)を表し、yは水和処理時間(分)を表す。〕
以下の実施例で示すように、水和処理時間が上記式(3)を満たすように管理することにより、塩酸浸漬試験での水素発生時間が450分以上である極めて耐食性に優れたAlまたはAl合金を製造することができる。この水素発生時間が450分以上であるAlまたはAl合金の特性を調べたところ、陽極酸化皮膜のバリア層組織の少なくとも一部が、ベーマイトおよび/または擬ベーマイトであり、かつ陽極酸化皮膜のリン酸−クロム酸浸漬試験(JIS H8683−2)での溶解速度が100mg/dm2/15分以下であり、塩素ガス腐食試験(5体積%Cl2−Arガス雰囲気下、400℃、4時間)での腐食発生面積率が10%以下であった。
従って本発明の方法において、陽極酸化皮膜のバリア層組織の少なくとも一部を、ベーマイトおよび/または擬ベーマイトにし、かつ陽極酸化皮膜を、リン酸−クロム酸浸漬試験(JIS H8683−2)での溶解速度が100mg/dm2/15分以下であり、塩素ガス腐食試験(5体積%Cl2−Arガス雰囲気下、400℃、4時間)での腐食発生面積率が10%以下であるものにすることが好ましい。
ここで本発明において「ベーマイト」とは、Al23・H2Oを意味し、「擬ベーマイト」とは、Al23・nH2O(式中、nは1超1.9以下である。)を意味する。バリア層組織の少なくとも一部がベーマイトおよび/またはベーマイト化されているかについては、走査顕微鏡(SEM)による分析、X線回折法およびX線光電子分光法(XPS)により判定することができる。具体的には、まずAlまたはAl合金の陽極酸化皮膜の断面をSEMで観察して、バリア層の位置を特定する。次いでバリア層が存在する位置で、深さ方向にX線回折法とXPSとを併用して、元の陽極酸化皮膜の組織であるAl−O、Al−OH、Al−O−OHを識別および定量分析することにより、バリア層にベーマイトおよび/または擬ベーマイトが存在するか否かを判定することができる。
また本発明で規定する塩素ガス腐食試験での腐食発生面積率は、以下のような条件で算出されるものである:水和処理した陽極酸化皮膜の表面の汚れを、アセトンなどで除去する。次いで陽極酸化皮膜の試験面積が□20mmとなるように耐塩酸性テープでマスキングしたAlまたはAl合金を、室温で試験容器(容積5,000cm3)内に装入し、試験容器内を20〜30分間で145〜155℃まで昇温し、この温度で60分間保持する。その後、5体積%(±0.2体積%)Cl2−Arガスを130ccmの流速で供給すると同時に、加熱して20〜35分間で試験容器内を395〜405℃に昇温し、この温度で保持する。このときの試験容器内の圧力は、大気圧と同じにする。395〜405℃に達してから4時間後に、Cl2−Arガスの供給を停止し、まず残圧によって系内に残留するCl2−Arガスを排気した後、試験容器内に窒素ガスを供給する。Cl2−Arガスの供給停止と同時に加熱を停止して、室温になるまで放冷する。試験容器内が室温に達した後、窒素ガスの供給を停止してAlまたはAl合金を取り出し、その表面を観察する。腐食により陽極酸化皮膜が消失し、変色したAlまたはAl合金の基材が露出している部分の面積を腐食面積とし、この腐食面積と試験面積とから、腐食発生面積率(腐食面積/試験面積×100)を算出する。
前記のように水和処理時間を管理することにより、良好な耐食性を有するAlまたはAl合金を調製することができる。逆にイオン状シリカ濃度をコントロールすることにより、例えば処理水の調製でイオン状シリカ供給物質の添加量を調節することにより、所望の水和処理時間を設定することができる。
本発明の方法は、陽極酸化皮膜の水和を構成要件とするが、ポーラス層のポアの封孔は構成要件とはしない。即ちイオン状シリカを含有する処理水を用いた陽極酸化皮膜の水和処理法は、陽極酸化皮膜が水和されれば、ポーラス層のポアが封孔されていても、または封孔されずに開口したまま残っている場合も、本発明の範囲内に含まれる。しかし耐食性の観点から、ポーラス層のポアは封孔されることが好ましい。
本発明の水和処理法では、時間管理が容易でありながら、陽極酸化皮膜を有するAlまたはAl合金に高度な耐食性を付与することができる。高度な耐食性を有するAlまたはAl合金は、CVD装置、PVD装置、ドライエッチング装置などに用いられる真空チャンバ部材を形成するために有用である。前記真空チャンバの内部には、反応ガス、エッチングガス、クリーニングガスとしてCl、F、Br等のハロゲン元素を含む腐食性ガスが導入されることから腐食性ガスに対する耐食性が必要であり、さらに腐食性ガスに加えて、ハロゲン系のプラズマを発生させることが多いのでプラズマに対する耐食性も要求されるからである。従って本発明の水和処理法により高度な耐食性を付与されたAlまたはAl合金は、真空チャンバ部材を形成するために用いることが好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお特にことわりが無い限り、%およびppmは、質量を基準にする。
[陽極酸化皮膜の形成]
Al合金(Al−1.0%Si−2.0%Mg−1.0%Cu)を、□50mm(厚さ2mm)の基材(「Al基材」と省略する。)に切出し、#400の研磨紙にて研磨した。次いでAl基材を10%NaOH溶液(50℃)に15秒間浸漬させてアルカリ脱脂し、さらに20%HNO3溶液(室温)に5分間浸漬させてデスマット処理を行なった。このようにして前処理したAl基材を、4%シュウ酸(18℃)中で、陽極酸化(30V)を施し、厚さ40μmの陽極酸化皮膜を形成した。
[塩酸浸漬試験]
実験例で水和処理した陽極酸化皮膜を有するAl基材の耐食性を、以下のような塩酸浸漬試験により評価した:
まず水和処理した陽極酸化皮膜の表面を、アセトンを浸した柔らかい布で拭いて清浄にした。次いでAl基材を150℃に加熱したオーブンに入れた。Al基材装入時のオーブン扉の開閉により、オーブン内の温度は145℃に下がったが、10分後には150℃になった。温度が150℃になってから1時間保持した後、加熱を停止し、室温まで放冷(1時間)してからAl基材を取り出した。次いで陽極酸化皮膜の試験面積が□40mmとなるように、Al基材表面を耐塩酸性テープ(フッ素樹脂系テープ)でマスキングしてから、透明容器に試験面が上を向くようにAl基材を設置した。7%塩酸水溶液を、試験面から塩酸水溶液上面までの距離が40mmとなるまで、透明容器中に注いでAl基材を塩酸水溶液中に浸漬させ、室温下で放置した。このとき注いだ塩酸水溶液量は150ccであった。塩酸水溶液を注ぎ終わった時点から、水素(2Al+6HCl→2AlCl3+3H2↑)が連続的に試験面から発生するまでの時間(「水素発生時間」と省略する。)を測定した。水素発生時間が長いほど、耐食性が良好であることを示す。
[バリア層のベーマイトおよび/または擬ベーマイト化の判定]
まずAl基材の陽極酸化皮膜の断面をSEMで観察して、バリア層の位置を特定した。次いでバリア層が存在する位置で、深さ方向にX線回折法とXPSとを併用して、元の陽極酸化皮膜の組織であるAl−O、Al−OH、Al−O−OHを識別および定量分析し、バリア層にベーマイトおよび/または擬ベーマイトが存在するか否かを判定した。
[リン酸−クロム酸浸漬試験(JIS H8683−2)]
JIS H8683−21999に従い、水和処理した陽極酸化皮膜のリン酸−クロム酸浸漬試験での溶解速度(mg/dm2/15分)を測定した。溶解速度が小さいほど、陽極酸化皮膜の水和されている度合いが大きいことを示す。
[塩素ガス腐食試験]
試験容器として、耐塩素ガス性を有する石英管を用い、また試験装置として、試験容器内を均一に加熱するために該容器を囲むように加熱ヒーターを設置し、温度測定のために該容器内に熱電対を設置したものを用いた。
水和処理した陽極酸化皮膜の表面を、アセトンを浸した柔らかい布で拭いて清浄にしてから、陽極酸化皮膜の試験面積が□20mmとなるように、Al基材表面を耐塩酸性テープ(フッ素樹脂系テープ)でマスキングした。このAl基材を室温で試験容器(容積5,000cm3)内に装入し、試験容器内を20〜30分間で145〜155℃まで昇温し、この温度で60分間保持した。その後、5体積%(±0.2体積%)Cl2−Arガスを130ccmの流速で供給すると同時に、加熱して20〜35分間で試験容器内を395〜405℃に昇温し、この温度を保持した。このときの試験容器内の圧力を大気圧と同じに保持した。395〜405℃に達してから4時間後にCl2−Arガスの供給を停止し、まず残圧によって系内に残留するCl2−Arガスを排気した後、試験容器内に窒素ガスを供給した。Cl2−Arガスの供給停止と同時に加熱を停止して、室温になるまで放冷した(このとき要した時間は3〜4時間であった)。試験容器内が室温に達した後、窒素ガスの供給を停止してAl基材を取り出し、その表面を観察し、腐食発生面積率(腐食面積/試験面積×100)を算出した。腐食発生面積率が低いほど、クラックや皮膜欠陥が少ないことを示す。
実験例1(水和処理温度の影響)
70℃または100℃に加熱した純水にAl基材を浸漬して、陽極酸化皮膜の水和処理を行った。そして塩酸浸漬試験の水素発生時間が350分以上、400分以上および450分以上にするための水和処理時間(Al基材の処理水中への浸漬時間)の許容範囲を求めた。その結果を表1に示す。
Figure 2007186753
表1の結果から、水和処理温度を70℃から100℃に上昇させると、目的とする耐食性(水素発生時間)を達成するためには、水和処理時間の許容範囲が狭くなることが分かる。
実験例2(イオン状シリカ濃度の影響)
純水に、表2に示すようなイオン状シリカ濃度になるようにメタケイ酸ナトリウム(Na2SiO3)を添加して、処理水を調製した。表2に示すイオン状シリカ濃度の値は、JIS K0101−44.1.1(モリブデン黄吸光光度法)に従い定量したものである。但し、イオン状シリカ濃度が20ppm未満の場合は、作製した処理水を、そのままモリブデン黄吸光光度法により定量した。一方、イオン状シリカ濃度が20ppm以上の場合は、作製した処理水を10倍に希釈してから、モリブデン黄吸光光度法により定量し、得られた測定値を10倍して、イオン状シリカ濃度を求めた。
純水または表1に示す濃度でイオン状シリカを含有する処理水を100℃に加熱したものにAl基材を浸漬して、陽極酸化皮膜の水和処理を行った。そして塩酸浸漬試験の水素発生時間が350分以上、400分以上および450分以上にするための水和処理時間の許容範囲を求めた。その結果を表2に示す。なおこの水和処理では、イオン状シリカ濃度を一定に保ち、かつ温度の低下を防ぐために、蒸発した量の水を少量ずつ補充した。
Figure 2007186753
表2の結果から示されるように、100℃の純水による水和処理の場合、水素発生時間を450分以上にするためには水和処理時間を9分に制御しなければならないが、イオン状シリカを11ppm含有する処理水を用いると、水和処理時間の許容範囲を13〜17分に伸ばすことができる。
また表2に示した値、即ち塩酸浸漬試験で350分以上、400分以上および450分以上の各水素発生時間を達成するために許容される水和処理時間の下限値および上限値(分)をY1およびY2とし、イオン状シリカ濃度の値(ppm)をXとして、これらの指数近似の関係式(Y=b×mX)を求めた。その結果を以下に示す:
(1)水素発生時間350分以上
1=6.6722×1.0417X
2=13.229×1.0490X
(2)水素発生時間400分以上
1=7.6064×1.0413X
2=10.865×1.0540X
(3)水素発生時間450分以上
1=8.5484×1.0454X
2=9.8215×1.0523X
さらに各水素発生時間を達成するために許容される水和処理時間の下限値および上限値(分)を縦軸(y軸)にとり、イオン状シリカ濃度の値(ppm)を横軸(x軸)にとったグラフを図2〜4に示す。図2〜4のグラフには、前記の指数近似の関係式で表される曲線(指数近似曲線)も示す。この図2〜4のグラフ中で、上下の指数近似曲線で挟まれる範囲に水和処理時間を管理することにより、塩酸浸漬試験で350分以上、400分以上または450分以上の水素発生時間を有する耐食性に優れたAl基材を得ることができる。
言い換えれば、100℃の水和処理温度で水和処理時間yが、下記式(1)を満たすように管理することにより、塩酸浸漬試験での水素発生時間が350分以上であるAl基材が得られる。
6.6722×1.0417x≦y≦13.229×1.0490x (1)
〔式中、xは処理水中のイオン状シリカ濃度(ppm)を表し、yは水和処理時間(分)を表す。〕
また水和処理時間yが、下記式(2)を満たすように管理することにより水素発生時間を400分以上にすることができ、下記式(3)を満たすように管理することにより水素発生時間を450分以上にすることができる。
7.6064×1.0413x≦y≦10.865×1.0540x (2)
8.5484×1.0454x≦y≦9.8215×1.0523x (3)
〔式中、xは処理水中のイオン状シリカ濃度(ppm)を表し、yは水和処理時間(分)を表す。〕
またイオン状シリカを11〜36ppm含有する処理水を用いた本発明の方法で陽極酸化皮膜を水和処理したAl基材について、バリア層組織のベーマイトおよび/または擬ベーマイト化、リン酸クロム酸浸漬試験での溶解速度、並びに塩素ガス腐食試験での腐食発生面積率を測定した。その結果、塩酸浸漬試験の塩酸浸漬試験での水素発生時間が450分以上であるAl基材は全て、バリア層組織の一部が、ベーマイトおよび/または擬ベーマイト化されており、かつリン酸−クロム酸浸漬試験での溶解速度が100mg/dm2/15分以下であり、塩素ガス腐食試験での腐食発生面積率が10%以下であった。
AlまたはAl合金の陽極酸化皮膜を示す概略図である。 実験例2において、塩酸浸漬試験で水素発生時間を350分以上にするために必要な水和処理時間の下限値および上限値と、イオン状シリカ濃度との関係を示すグラフである。 実験例2において、塩酸浸漬試験で水素発生時間を400分以上にするために必要な水和処理時間の下限値および上限値と、イオン状シリカ濃度との関係を示すグラフである。 実験例2において、塩酸浸漬試験で水素発生時間を450分以上にするために必要な水和処理時間の下限値および上限値と、イオン状シリカ濃度との関係を示すグラフである。
符号の説明
1 AlまたはAl合金基材
2 陽極酸化皮膜(Al23
3 ポア
4 ポーラス層
5 バリア層

Claims (10)

  1. ポーラス層とポアのないバリア層とを備えた陽極酸化皮膜を有するAlまたはAl合金を加熱した処理水中に浸漬することによる水和処理法であり、前記処理水が、実質的に純水からなり、かつイオン状シリカを含有することを特徴とする方法。
  2. 前記処理水が、純水にケイ酸ナトリウムを添加して形成されたものである請求項1に記載の方法。
  3. 前記処理水中のイオン状シリカ濃度が、10〜40ppm(質量基準、以下同じ)である請求項1または2に記載の方法。
  4. 水和処理温度が、90〜100℃である請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 100℃の水和処理温度で、水和処理時間が下記式(1)を満たすように管理する請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
    6.6722×1.0417x≦y≦13.229×1.0490x (1)
    〔式中、xは処理水中のイオン状シリカ濃度(ppm)を表し、yは水和処理時間(分)を表す。〕
  6. 前記バリア層組織の少なくとも一部を、ベーマイトおよび/または擬ベーマイトにし、かつ陽極酸化皮膜を、リン酸−クロム酸浸漬試験(JIS H8683−2)での溶解速度が100mg/dm2/15分以下であり、塩素ガス腐食試験(5体積%Cl2−Arガス雰囲気下、400℃、4時間)での腐食発生面積率が10%以下であるものにする請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. イオン状シリカ濃度をコントロールして、水和処理時間を調節する請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
  8. 真空チャンバ部材を形成するために用いられる請求項1〜7のいずれかに記載の方法で水和処理したAlまたはAl合金。
  9. 実質的に純水からなり、イオン状シリカを含有することを特徴とするAlまたはAl合金の陽極酸化皮膜を水和処理するための処理水。
  10. イオン状シリカ濃度が、10〜40ppmである請求項9に記載の処理水。
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