JP2007181404A - イソニトリル加水分解酵素、およびアミンの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、新規なイソニトリル加水分解酵素を提供し、また前記イソニトリル加水分解酵素を使用する、アミンの新規な製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のイソニトリル加水分解酵素は、ニトリルヒドラターゼからなる。本発明のアミンの製造方法は、このニトリルヒドラターゼを触媒とし、イソニトリルからアミンを生成する。ここで、ニトリルヒドラターゼは、Rhodococcus sp.N771に由来するニトリルヒドラターゼからなることが好ましい。また、イソニトリルは、一般式 R−NCであり、Rは、i-ブチル基またはt-ブチル基であることが好ましい。
【選択図】図3
【解決手段】本発明のイソニトリル加水分解酵素は、ニトリルヒドラターゼからなる。本発明のアミンの製造方法は、このニトリルヒドラターゼを触媒とし、イソニトリルからアミンを生成する。ここで、ニトリルヒドラターゼは、Rhodococcus sp.N771に由来するニトリルヒドラターゼからなることが好ましい。また、イソニトリルは、一般式 R−NCであり、Rは、i-ブチル基またはt-ブチル基であることが好ましい。
【選択図】図3
Description
本発明は、新規なイソニトリル加水分解酵素に関する。また、本発明は、前記イソニトリル加水分解酵素を使用する、アミンの新規な製造方法に関する。
従来、ニトリルヒドラターゼ(nitrile hydratase; NHase; EC 4.4.1.84.)は低分子脂肪族ならびに芳香族ニトリルの水和反応を促進する酵素として利用されてきた(例えば、非特許文献1,2参照。)。ニトリルヒドラターゼはアクリルアミド、ニコチンアミドの工業生産に利用される安定で活性の高い触媒である(例えば、非特許文献3参照。)が、ニトリル水和反応以外を触媒するという報告はこれまでされていない。
一方、近年、シュードモナス属微生物からイソニトリルをN置換ホルムアミドに水和する酵素(例えば、特許文献1参照。)が、アースロバクター属微生物からN置換ホルムアミドをアミンに加水分解する酵素(例えば、特許文献2参照。)が単離された。
しかしながら、これらの酵素はそれぞれ別の微生物中で生産されるものであり、イソニトリルからアミンを直接合成可能な酵素は報告されていなかった。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、新規なイソニトリル加水分解酵素を提供することを目的とする。
また、本発明は、前記イソニトリル加水分解酵素を使用する、アミンの新規な製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、前記イソニトリル加水分解酵素を使用する、アミンの新規な製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明のイソニトリル加水分解酵素は、ニトリルヒドラターゼからなる。
ここで、限定されるわけではないが、ニトリルヒドラターゼは、鉄型ニトリルヒドラターゼまたはコバルト型ニトリルヒドラターゼであり、前記鉄型ニトリルヒドラターゼおよび前記コバルト型ニトリルヒドラターゼは、放線菌またはシュードモナス属の細菌に由来することが好ましい。また、限定されるわけではないが、鉄型ニトリルヒドラターゼは、Rhodococcus sp.N771、Rhodococcus sp.N774、Rhodococcus sp.R312、Rhodococcus erythropolis、またはPseudomonas chlororaphis B23に由来するニトリルヒドラターゼの1種または2種以上の組み合わせからなることが好ましい。また、限定されるわけではないが、コバルト型ニトリルヒドラターゼは、Rhodococcus rhodochruous J1、Pseudomonoas putida 5B、またはKlebsiella sp. AM1に由来するニトリルヒドラターゼの1種または2種以上の組み合わせからなることが好ましい。また、限定されるわけではないが、鉄型ニトリルヒドラターゼまたはコバルト型ニトリルヒドラターゼは、Rhodococcus sp.N771におけるシステイン114に相当するシステインがシステインスルフィン酸に酸化されているニトリルヒドラターゼであってもよい。また、限定されるわけではないが、イソニトリルは、一般式 R−NCであり、Rは、置換されていても良いフェニル基、カルボキシル基及びアミノ基からなる置換基群から選ばれる1つ以上の置換基で置換されていても良い炭素原子数が1〜8のアルキル基、又は、置換されていても良いフェニル基、カルボキシル基及びアミノ基からなる置換基群から選ばれる1つ以上の置換基で置換されていても良い炭素原子数が6〜10のアリル基であることが好ましい。また、限定されるわけではないが、イソニトリルは、一般式 R−NCであり、Rは、i-ブチル基またはt-ブチル基であることが好ましい。
本発明のアミンの製造方法は、ニトリルヒドラターゼを触媒とし、イソニトリルからアミンを生成する。
ここで、限定されるわけではないが、ニトリルヒドラターゼは、鉄型ニトリルヒドラターゼまたはコバルト型ニトリルヒドラターゼであり、前記鉄型ニトリルヒドラターゼおよび前記コバルト型ニトリルヒドラターゼは、放線菌またはシュードモナス属の細菌に由来することが好ましい。また、限定されるわけではないが、鉄型ニトリルヒドラターゼは、Rhodococcus sp.N771、Rhodococcus sp.N774、Rhodococcus sp.R312、Rhodococcus erythropolis、またはPseudomonas chlororaphis B23に由来するニトリルヒドラターゼの1種または2種以上の組み合わせからなることが好ましい。また、限定されるわけではないが、コバルト型ニトリルヒドラターゼは、Rhodococcus rhodochruous J1、Pseudomonoas putida 5B、またはKlebsiella sp. AM1に由来するニトリルヒドラターゼの1種または2種以上の組み合わせからなることが好ましい。また、限定されるわけではないが、鉄型ニトリルヒドラターゼまたはコバルト型ニトリルヒドラターゼは、Rhodococcus sp.N771におけるシステイン114に相当するシステインがシステインスルフィン酸に酸化されているニトリルヒドラターゼであってもよい。また、限定されるわけではないが、イソニトリルは、一般式 R−NCであり、Rは、置換されていても良いフェニル基、カルボキシル基及びアミノ基からなる置換基群から選ばれる1つ以上の置換基で置換されていても良い炭素原子数が1〜8のアルキル基、又は、置換されていても良いフェニル基、カルボキシル基及びアミノ基からなる置換基群から選ばれる1つ以上の置換基で置換されていても良い炭素原子数が6〜10のアリル基であることが好ましい。また、限定されるわけではないが、イソニトリルは、一般式 R−NCであり、Rは、i-ブチル基またはt-ブチル基であることが好ましい。
本発明は、以下に記載されるような効果を奏する。
本発明は、ニトリルヒドラターゼからなる酵素であるので、新規なイソニトリル加水分解酵素を提供することができる。
本発明は、ニトリルヒドラターゼを触媒とし、イソニトリルからアミンを生成するので、アミンの新規な製造方法を提供することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
まず、イソニトリル加水分解酵素にかかる発明を実施するための最良の形態について説明する。
まず、イソニトリル加水分解酵素にかかる発明を実施するための最良の形態について説明する。
本発明のイソニトリル加水分解酵素はニトリルヒドラターゼからなる。ニトリルヒドラターゼは、鉄型ニトリルヒドラターゼまたはコバルト型ニトリルヒドラターゼであり、前記鉄型ニトリルヒドラターゼおよび前記コバルト型ニトリルヒドラターゼは、放線菌またはシュードモナス属の細菌に由来する。
鉄型ニトリルヒドラターゼは、Rhodococcus sp.N771 (T. Nagamune, H. Kurata, M. Hirata, J. Honda, H. Koike, M. Ikeuchi, Y. Inoue, A. Hirata, I. Endo, Biochem. Biophys. Res. Commun., 168, 437 (1990))、Rhodococcus sp.N774 (長澤透、季刊化学総説(日本化学会編 学会出版センター)、24, 180 (1995))、Rhodococcus sp.R312 (M. J. Nelson, H. Gin, I. M. Turner, Jr., G. Grove, R. C. Scarrow, B. A. Brennan, L. Que, Jr., J. Am. Chem.. Soc., 113, 7072 (1991))、Rhodococcus erythropolis (R. Duran, M. Nishiyama, S. Horinouchi, T. Beppu, Biosci. Biotech. Biochem., 57, 1323 (1993)) 、またはPseudomonas chlororaphis B23(I. Watanabe, Y. Satoh, K. Enomoto, Agric. Biol. Chem., 51, 3193 (1987); M. Nishiyama, S. Horinouchi, M. Kobayasi, T. Nagasawa, H. Yamada, T. Beppu, J. Bacteriol., 173, 2465 (1991))に由来するニトリルヒドラターゼの1種または2種以上の組み合わせからなる。
コバルト型ニトリルヒドラターゼは、Rhodococcus rhodochruous J1 (M. Kobayashi, M. Nishiyama, T. Nagasawa, S. Horinouchi, T. Beppu, H. Yamada, Biochim. Biophys. Acta, 1129, 23(1991))、Pseudomonoas putida 5B (S. Wu, R. D. Fallon, M. S. Payne, Appl. Microbiol. Biotechnol., 48, 704 (1997))、またはKlebsiella sp. AM1(B. Pooru, K. Yamada, H. Morimoto, Patent JP 1994303971-A2)に由来するニトリルヒドラターゼの1種または2種以上の組み合わせからなる。
鉄型ニトリルヒドラターゼまたはコバルト型ニトリルヒドラターゼは、Rhodococcus sp.N771におけるシステイン114に相当するシステインがシステインスルフィン酸に酸化されているニトリルヒドラターゼであってもよい。
以上のことから、本発明を実施するための最良の形態によれば、ニトリルヒドラターゼからなる酵素であるので、新規なイソニトリル加水分解酵素を提供することができる。
なお、本発明は上述の発明を実施するための最良の形態に限らず本発明の要旨を逸脱することなくその他種々の構成を採り得ることはもちろんである。
つぎに、アミンの製造方法にかかる発明を実施するための最良の形態について説明する。
本発明のアミンの製造方法は、前記のニトリルヒドラターゼを触媒とし、イソニトリルからアミンを生成する方法である。
イソニトリルは、一般式がR−NCである。ここで、Rは、置換されていても良いフェニル基、カルボキシル基及びアミノ基からなる置換基群から選ばれる1つ以上の置換基で置換されていても良い炭素原子数が1〜8のアルキル基、又は、置換されていても良いフェニル基、カルボキシル基及びアミノ基からなる置換基群から選ばれる1つ以上の置換基で置換されていても良い炭素原子数が6〜10のアリル基である。
アルキル基としては、i-ブチル基((CH3)2CHCH2基)、t-ブチル基((CH3)3C基)、n-C2H5〜n-C8H17基、CH3C(CH3)2CH2基、CH3C(CH3)2CH2C(CH3)2基、CH2=CH基、CH2=C(CH3)基、CH3CH=CHCH2基、ClCH2基などを採用することができる。
アミンの製造方法における、反応条件について説明する。
反応温度は0〜30℃の範囲内にあることが好ましい。反応温度が0℃以上であると、水溶液中で反応を行えるという利点がある。反応温度が30℃以下であると、酵素の変性がなく、活性が高いという利点がある。
反応温度は0〜30℃の範囲内にあることが好ましい。反応温度が0℃以上であると、水溶液中で反応を行えるという利点がある。反応温度が30℃以下であると、酵素の変性がなく、活性が高いという利点がある。
酵素の濃度は1 x 10-3 〜1000μMの範囲内にあることが好ましい。また、酵素の濃度は3〜60μMの範囲内にあることがさらに好ましい。
酵素の濃度が1 x 10-3μM以上であると、触媒反応が円滑に進むという利点がある。酵素の濃度が3μM以上であると、この効果がより顕著になる。
酵素の濃度が1000μM以下であると、酵素の活性が十分に活かされるという利点がある。酵素の濃度が60μM以下であると、この効果がより顕著になる。
酵素濃度に対する基質濃度の比率は0.2〜2 x 107の範囲内にあることが好ましい。また、比率は1000〜1500の範囲内にあることがさらに好ましい。
比率が0.2以上であると、反応が十分に速いという利点がある。比率が1000以上であると、この効果がより顕著になる。
比率が2 x 107以下であると、高濃度基質による酵素の失活を防止できるという利点がある。比率が1500以下であると、この効果がより顕著になる。
pHは6.5〜8.5の範囲内にあることが好ましい。pHが6.5以上であると、酵素が安定であり、変性、失活しないという利点がある。pHが8.5以下であると、Rhodococcus sp. N771におけるシステイン114に相当するシステインが速やかにシステインスルフィン酸に空気酸化(自動酸化)された酵素になるのを防止できるという利点がある。
本発明の方法は、イソニトリルを含む水系廃液の処理、また不純物としての微量のイソニトリルの除去に適用することができる。本発明の方法により生成されるアミン類は生理活性物質製造の中間体として有用な化合物であり、その新たな製造方法(例えば、工業的に有利な製造方法等)の開発が望まれる。
以上のことから、本発明を実施するための最良の形態によれば、ニトリルヒドラターゼを触媒とし、イソニトリルからアミンを生成するので、アミンの新規な製造方法を提供することができる。
なお、本発明は上述の発明を実施するための最良の形態に限らず本発明の要旨を逸脱することなくその他種々の構成を採り得ることはもちろんである。
つぎに、本発明にかかる実施例について具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではないことはもちろんである。
二トリルヒドラターゼ(NHase)の調整法
暗所にて菌体 (Rhodococcus sp. N771) を、緩衝液に懸濁し、超音波破砕した。破砕溶液中の不溶成分を遠心分離により除去し、粗抽出物を得た。
イオン交換樹脂 (Toyopearl SuperQ-650) を充填したカラム (50φ×120 mm) を用い、暗所にて100〜500 mM NaClの直線濃度勾配で溶出させた。フラクションをドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミド電気泳動(SDS-PAGE)により確認し、NHaseを多く含むものを回収した。
暗所にて回収したサンプルに硫酸アンモニウムを1.2 Mの濃度になるように加え、遠心分離した後、上清を回収した。
疎水性樹脂 (Toyopearl butyl-650) を充填したカラムを用い、暗所にて1.2〜0 M (NH4)2SO4の直線濃度勾配で溶出させた。各フラクションをSDS-PAGEにより確認し、NHaseを多く含むフラクションを回収した。
回収したNHase溶液を透析した。
回収したNHase溶液を透析した。
イオン交換樹脂(Toyopearl DEAE 650)を充填したカラムを用い、暗所にて100〜300 mM NaClの直線濃度勾配で溶出した。SDS-PAGEによりフラクションを確認し、NHaseを多く含むきれいなフラクションを回収した。
精製したNHaseは暗所にて-80℃で凍結保存して保存した。さらに使用直前に氷上で15分間光照射を行い、活性化させて使用した。
Rhodococcus sp.N771におけるシステイン114に相当するシステインがシステインスルフィン酸に酸化されたNHase (dSO2H)の調整法
光照射により活性化したNHaseを500 mlのTris-HCl pH 8.5 溶液で、4 ℃で透析した。開始から3日目で緩衝液を交換し、さらに4日間透析し、Rhodococcus sp.N771におけるシステイン114に相当するシステインがシステインスルフィン酸に酸化されたNHase (dSO2H)を調製した。
生成物の分析方法
生成物の分析条件は以下の通りである。
LC:
Column: SeQuant ZICTM-HILIC 2.1×150 mm (Nomura)
Solvent:
A: 20 mM ammonium acetate in water
B: 100 % acetonitrile
(3→18 min;10 %A→80 %A linear gradient)
Flow rate: 200 μl/min
LC:
Column: SeQuant ZICTM-HILIC 2.1×150 mm (Nomura)
Solvent:
A: 20 mM ammonium acetate in water
B: 100 % acetonitrile
(3→18 min;10 %A→80 %A linear gradient)
Flow rate: 200 μl/min
MS:
Mass spectrometer: 4000 QTRAP (Applied Biosystems)
MS Scan mode: Q3 scan
MS/MS Scan mode: Profile
Mass spectrometer: 4000 QTRAP (Applied Biosystems)
MS Scan mode: Q3 scan
MS/MS Scan mode: Profile
順相カラム(SeQuant ZICTM-HILIC 2.1×150 mm; Nomura)を用いたLCにより分離された成分をそのままMSスペクトルで測定した。同時に、アミンに相当する、m/z74のイオンピークに関してはさらにイオン化したMS/MSの確認も行った。
標品として市販のi-ブチルアミン(i-BuNH2)の解析を行った。i-BuNH2の分子イオンピークm/z 74は11.627分に現れた(図1 a))。さらにこのピークのMS/MSをみると、分解にともなうイオンピークm/z 57,m/z 41が検出された(図1 b))。
同じ条件で、t-BuNCとNHaseの反応生成物の一つと予想される、t-BuNH2の標品の解析を行った。t-BuNH2の分子イオンピークm/z 74は12.031 minに現れた(図2 a))。このピークをさらにイオン化してMS/MSを測定すると、分解によると考えられるイオンピークm/z 57,m/z 41が検出された(図2 b))。
実施例1(native NHaseとi-BuNCの反応)
i-BuNCとnative NHaseの反応をLC-MSにより経時的に解析した。分析条件は標品と同じである。
反応溶液:2.9 μMのNHase溶液598 μl (pH 7.5,50 mM Tris 緩衝液) に2.4 μlのi-BuNCを添加し (40 mM) 、添加直後、1時間後、3時間後に反応溶液を150 μlずつとり限外ろ過 (40 min) した。ろ液をアセトニトリルで1/10に希釈し、LC-MSを測定した。
i-BuNC添加直後に反応処理したサンプル(図3 a))ですでにアミンi-BuNH2のシグナルが確認された。反応処理(除タンパク)を限外ろ過で行っているため、添加直後に処理を開始しても、ろ過終了までに40分ほど経ってしまうので、その操作中に反応が進んだものと思われる。アミンのシグナルは経時的に増加し(図3 a)〜c))、i-BuNCがi-BuNH2に加水分解されている様子が確認できた。しかしながら、i-ブチルホルムアミド(i-BuFA)のシグナルは全く観測されなかった。反応機構は、イソニトリルへの水和により、ホルムアミドを生成し、さらに加水分解されてアミンを生成すると考えられるが、中間体であると思われるホルムアミドから、アミンへの分解反応が速いことが考えられる。
実施例2(NHase(dSO2H)と i-BuNCの反応)
反応溶液:3.2 μMのNHase (dSO2H) 溶液598 μl ( pH 8.5,50 mM Tris 緩衝液) に2.4 μlのi-BuNCを添加し(36 mM)、添加直後、1時間後、3時間後に反応溶液を150 μlずつとり限外ろ過した。ろ液をアセトニトリルで1/10に希釈し、LC-MSを測定した。
NHase(dSO2H)を用いると、添加直後(40 min)ではアミンは生成しなかったが(図4 a))、時間を置くと若干の生成が確認された(220 min) (図4 b))。しかし、native NHaseと比べると、明らかにアミンの生成量が少ないことから、i-BuNCからi-BuNH2への加水分解にはNHaseの酵素活性が大きく関与していることが確認できた。
実施例3(t-BuNCとNHaseの反応)
分析方法は標品と同じである。
反応溶液:60.2 μMのNHase溶液600 μl(pH 7.5,50mM Tris 緩衝液)に4.0μlのt-BuNCを添加し(59 mM)、添加直後、1時間後、5時間後に150 μlずつ反応溶液をとり限外ろ過(40 min)した。ろ液をアセトニトリルで1/10に希釈し、LC-MSを測定した。
反応溶液:60.2 μMのNHase溶液600 μl(pH 7.5,50mM Tris 緩衝液)に4.0μlのt-BuNCを添加し(59 mM)、添加直後、1時間後、5時間後に150 μlずつ反応溶液をとり限外ろ過(40 min)した。ろ液をアセトニトリルで1/10に希釈し、LC-MSを測定した。
t-BuNCはt-ブチルアミン(t-BuNH2)に変換されていることが確認された(図5 a)〜c))。アミンのピークは経時的に増加した。MS/MSによりt-BuNH2の分解ピークも確認できた(図5 d))。生成物量の経時変化から、反応はi-BuNH2より遅いことがわかった。t-ブチルホルムアミド(t-BuFA)は検出されなかった。i-BuNCの時と同様、中間体と考えられるt-BuFAからアミンへの反応が速いと思われる。
比較例(熱変性させて失活させたNHaseとi-BuNCの反応)
分析方法は標品と同じである。
反応溶液:2.9 μMのNHase溶液598 μl (pH 7.5,50 mM Tris 緩衝液)を90 ℃で30分間インキュベートし、酵素を変性させた。この酵素溶液に2.4 μlのi-BuNCを添加し(36 mM)、添加直後、1時間後、に反応溶液を150 μlずつとり限外ろ過(40 min)した。ろ液をアセトニトリルで1/10に希釈し、LC-MSを測定した。
反応溶液:2.9 μMのNHase溶液598 μl (pH 7.5,50 mM Tris 緩衝液)を90 ℃で30分間インキュベートし、酵素を変性させた。この酵素溶液に2.4 μlのi-BuNCを添加し(36 mM)、添加直後、1時間後、に反応溶液を150 μlずつとり限外ろ過(40 min)した。ろ液をアセトニトリルで1/10に希釈し、LC-MSを測定した。
熱変性させたNHaseとの反応ではアミンの生成は確認されなかった(図6)。このことは、NHaseとi-BuNCの反応で確認されたアミンのシグナルがi-BuNCの自然分解によるものではなく、NHaseとの反応により生成したものであることを示している。また、native NHaseとの反応と同様に、i-BuFAのシグナルは観測されなかった。
以上のことから、本実施例によれば、イソニトリル化合物はNHaseにより、相当するアミン化合物へと変換されていることが確認できた。イソニトリル化合物ではイソニトリル基の炭素が、NHaseの活性中心鉄に配位していること、イソニトリルとニトリルが競争的にNHaseに作用すること、および、他の酵素との比較の結果を踏まえると、水和によるホルムアミドの生成を経由してさらにアミンへと加水分解されていると考えられる(化1参照。)。
Claims (16)
- ニトリルヒドラターゼからなるイソニトリル加水分解酵素。
- ニトリルヒドラターゼは、鉄型ニトリルヒドラターゼまたはコバルト型ニトリルヒドラターゼであり、
前記鉄型ニトリルヒドラターゼおよび前記コバルト型ニトリルヒドラターゼは、放線菌またはシュードモナス属の細菌に由来する
請求項1記載のイソニトリル加水分解酵素。 - 鉄型ニトリルヒドラターゼは、Rhodococcus sp.N771、Rhodococcus sp.N774、Rhodococcus sp.R312、Rhodococcus erythropolis、またはPseudomonas chlororaphis B23に由来するニトリルヒドラターゼの1種または2種以上の組み合わせからなる
請求項2記載のイソニトリル加水分解酵素。 - 鉄型ニトリルヒドラターゼは、Rhodococcus sp.N771に由来するニトリルヒドラターゼからなる
請求項2記載のイソニトリル加水分解酵素。 - コバルト型ニトリルヒドラターゼは、Rhodococcus rhodochruous J1、Pseudomonoas putida 5B、またはKlebsiella sp. AM1に由来するニトリルヒドラターゼの1種または2種以上の組み合わせからなる
請求項2記載のイソニトリル加水分解酵素。 - 鉄型ニトリルヒドラターゼまたはコバルト型ニトリルヒドラターゼは、Rhodococcus sp.N771におけるシステイン114に相当するシステインがシステインスルフィン酸に酸化されているニトリルヒドラターゼである
請求項2記載のイソニトリル加水分解酵素。 - イソニトリルは、一般式 R−NCであり、
Rは、置換されていても良いフェニル基、カルボキシル基及びアミノ基からなる置換基群から選ばれる1つ以上の置換基で置換されていても良い炭素原子数が1〜8のアルキル基、又は、置換されていても良いフェニル基、カルボキシル基及びアミノ基からなる置換基群から選ばれる1つ以上の置換基で置換されていても良い炭素原子数が6〜10のアリル基である
請求項1記載のイソニトリル加水分解酵素。 - イソニトリルは、一般式 R−NCであり、
Rは、i-ブチル基またはt-ブチル基である
請求項7記載のイソニトリル加水分解酵素。 - ニトリルヒドラターゼを触媒とし、
イソニトリルからアミンを生成する
アミンの製造方法。 - ニトリルヒドラターゼは、鉄型ニトリルヒドラターゼまたはコバルト型ニトリルヒドラターゼであり、
前記鉄型ニトリルヒドラターゼおよび前記コバルト型ニトリルヒドラターゼは、放線菌またはシュードモナス属の細菌に由来する
請求項9記載のアミンの製造方法。 - 鉄型ニトリルヒドラターゼは、Rhodococcus sp.N771、Rhodococcus sp.N774、Rhodococcus sp.R312、Rhodococcus erythropolis、またはPseudomonas chlororaphis B23に由来するニトリルヒドラターゼの1種または2種以上の組み合わせからなる
請求項10記載のアミンの製造方法。 - 鉄型ニトリルヒドラターゼは、Rhodococcus sp.N771に由来するニトリルヒドラターゼからなる
請求項10記載のアミンの製造方法。 - コバルト型ニトリルヒドラターゼは、Rhodococcus rhodochruous J1、Pseudomonoas putida 5B、またはKlebsiella sp. AM1に由来するニトリルヒドラターゼの1種または2種以上の組み合わせからなる
請求項10記載のアミンの製造方法。 - 鉄型ニトリルヒドラターゼまたはコバルト型ニトリルヒドラターゼは、Rhodococcus sp.N771におけるシステイン114に相当するシステインがシステインスルフィン酸に酸化されているニトリルヒドラターゼである
請求項10記載のアミンの製造方法。 - イソニトリルは、一般式 R−NCであり、
Rは、置換されていても良いフェニル基、カルボキシル基及びアミノ基からなる置換基群から選ばれる1つ以上の置換基で置換されていても良い炭素原子数が1〜8のアルキル基、又は、置換されていても良いフェニル基、カルボキシル基及びアミノ基からなる置換基群から選ばれる1つ以上の置換基で置換されていても良い炭素原子数が6〜10のアリル基である
請求項9記載のアミンの製造方法。 - イソニトリルは、一般式 R−NCであり、
Rは、i-ブチル基またはt-ブチル基である
請求項15記載のアミンの製造方法。
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