JP3870690B2 - 光学活性アミン類の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、(S)−1−フェニルプロピルアミンのような、医薬、農薬等の中間体原料として産業上有用な化合物である光学活性アミン類の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アミン類は通常有機化学的な合成方法により製造されるが、近年、ケトン類から対応する光学活性なアミン類を微生物を用いて製造する方法も注目されている。
酵素法によるアミン類の製造法としては、デヒドロゲナーゼ法(特公平4−11194号公報)による方法、及びトランスアミナーゼ法(特許登録第2846074号公報、WO97/15682号公報、WO98/48030公報及び特開平1−174398号公報)によるものがあり、また、トランスアミナーゼ法の中でも、ラセミのアミンを光学分割する方法とケトン類より光学活性なアミン類を製造する方法とがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、デヒドロゲナーゼ法によるケトン類からの光学活性アミン類の製造法では、高価な補酵素NADH又はNADPHの添加、もしくは再生系が必要であり、コストが高くなるため、工業的に生産するには好ましくない。
また、光学分割の手法を取った場合には、目的とする立体でない化合物は、微生物の生育エネルギーとなってしまい、又、収率的にも最大50%であるため、ロスが大きく、工業的に有利な方法ではない。
【0004】
さらに、ケトン類から光学活性アミン類を製造する方法は、WO97/15682号公報、WO98/48030号公報及び特許登録第2846074号公報にも記載があるが、WO97/15682号公報及びWO98/48030号公報には、(R)体選択的な酵素とそれを用いた(R)体アミンの製造法が記載されているのみであり、一方、特許登録第2846074号公報には、ケトン類からω−アミノ酸トランスアミナーゼを用いて、(S)体の光学活性アミンを製造する方法が記載されているが、基質濃度が4.2mMと低く、ラセミ体アミンからの光学分割法と比較しても基質濃度をを半分以下にする必要があり、工業的には実用化は困難である。また、該公報の実施例の記載によれば、アセトフェノンのようにカルボニル基の両側が炭素鎖ではない化合物の場合、1−フェニル−3−アミノブタン等と比較して、急激に収率が下がるという問題点もある。
【0005】
本発明は、(S)体の光学活性アミン類をトランスアミナーゼを用いてケトン類より効率的に工業的に製造する方法を提供することを目的とするものである。酵素法によるアミン類の合成法は、合成副産物が少ない、安全、簡便であるなどの理由から医農薬中間体等として使われるアミン類の合成に極めて有用な手段であると考えられている。
【0006】
【課題を解決する手段】
本発明者は上記実状に鑑み、ケトン類にトランスアミナーゼを作用させて(S)体の光学活性アミン類を製造する方法を鋭意検討した結果、ガバクリン共存下で活性低下が見られない(S)体選択性のトランスアミナーゼを用いると、本発明の目的が達成されることを見いだし本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の要旨は、下記一般式(1)
【0008】
【化4】
【0009】
(式中、R及びXは、それぞれ独立して、置換されていても良い、アリール基、ヘテロアリール基又はアルキル基のいずれかを示す。また、RとXが一緒になって炭素環又はヘテロ環を形成していても良い。但し、Rは順位則による優先順位がXよりも高い基である。)に示されるケトン化合物をアミノ受容体とし、アミノ供与体の存在下、ガバクリン共存下での活性低下がみられないトランスアミナーゼを作用させて立体選択的にアミノ基転移を行わせることにより、下記一般式(2)
【0010】
【化5】
【0011】
(式中、R及びXはそれぞれ一般式(1)と同義である。)に示される光学活性アミン化合物を得ることを特徴とする、(S)体の光学活性アミン類の製造方法に存する。
以下本発明の構成を詳細に説明する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の製造方法は、下記一般式(1)
【0013】
【化6】
【0014】
(式中、R及びXは、それぞれ独立して、置換されていても良い、アリール基、ヘテロアリール基又はアルキル基のいずれかを示す。但し、Rは順位則による優先順位がXよりも高い基である。)で示されるケトン類を(S)体のアミン類に変換する方法である。
上記式中の置換基である、置換されていても良いアリール基としては、塩素原子等のハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ基、ハロアルキル基等の反応に不活性な置換基で置換されていても良いフェニル基又はナフチル基が挙げられ、このうち好ましくは、無置換のアリール基又はアルキルアリール基であり、特に好ましくはフェニル基である。
【0015】
置換されていても良いヘテロアリール基としては、塩素原子等のハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ基、ハロアルキル基、又はアリール基等の反応に不活性な置換基で置換されていても良いピリジル基、ピラジル基、チエニル基、フリル基、及びアゾリル基等が挙げられる。
置換されていても良いアルキル基としては、塩素原子等のハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、ハロアルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基等の反応に不活性な置換基で置換されていても良い、アルキル基が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ベンジル基等が挙げられる。このうち好ましくは、無置換アルキル基又はアリールアルキル基であり、特に好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基である。
【0016】
また、RとXは一緒になって炭素環またはヘテロ環を形成していても良い。また、炭素環又はヘテロ環は塩素原子等のハロゲン原子、水酸基、(ハロ)アルキル基、アルコキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基等の反応に不活性な置換基を側鎖として持っても良い。
好ましくは、Rが置換されていても良いアリール基であり、Xが置換されていても良いアルキル基のもの、又は
【0017】
【化7】
【0018】
(式中、R1〜R4はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、水酸基、(ハロ)アルキル基、アルコキシ基、アリール基及びヘテロアリール基からなる群より選ばれる基であり、m及びnはそれぞれ自然数である。但し、m>nである。)で表される化合物であり、上記構造式で表される化合物の具体例としては、1−インダノン、2−インダノン、1−テトラロン、2−テトラロン、5−メトキシ−2−テトラロン、6−メトキシ−2−テトラロン、7−メトキシ−2−テトラロン、8−メトキシ−2−テトラロン等が上げられる。
【0019】
上記置換基を有するケトン類の好ましい具体例としては、アセトフェノン、プロピオフェノン、ベンジルアセトン、4-メトキシフェニルアセトン、1−テトラロン、2−テトラロン、7−メトキシ2−テトラロン等が挙げられる。
本発明の製造方法において、用いられるアミノ供与体としては、ノルマルプロピルアミン、イソプロピルアミン、ノルマルブチルアミン、第二ブチルアミン、2,2−ジメチルプロピルアミン、ベンジルアミン、1−エチルプロピルアミン、2−アミノメトキシブタン、1−フェニルエチルアミン、2−フェニルエチルアミン等の第1アミン類が挙げられ、このうちノルマルブチルアミン、2−メチルブチルアミン、2,2−ジメチルプロピルアミン又はベンジルアミンが好ましい。
【0020】
本発明で用いられるトランスアミナーゼは、(S)体選択的なトランスアミナーゼ活性を有し、実質的にガバクリン共存下での活性低下が見られない、すなわち、酵素液に1mM以上、好ましくは2mM以上の濃度でガバクリンを共存させ、10分以上、好ましくは30分以上プレインキュベートさせた後反応を行った時の活性がガバクリンを共存させなかった場合に比して、20%以下、好ましくは10%以下の活性低下であるトランスアミナーゼであれば、特に限定されるものではないが、例えば、バチルス属由来のトランスアミナーゼが挙げられる。
【0021】
本発明の光学活性アミン類は、上記ケトン類を上記トランスアミナーゼを有する微生物の培養液、あるいは、該微生物の菌体及び/又は菌体処理物を含有する水溶液中で、アミノ供与体を接触させることで製造することが出来る。
上記トランスアミナーゼを有する微生物の具体例としては、バチルス エスピー MCI3899株等が挙げられる。尚、バチルス エスピー MCI3899株は、平成12年8月22日に通算省工業技術院生命工学工業技術研究所にFERM P−17996の受託番号で寄託されている。
【0022】
以下に該菌株の同定結果を示す。
7.分類学的考察
本菌株 MCI3899株は、1)グラム陽性桿菌、2)好気性、3)運動性を示す、4)主要なイソプレノイドキノンはメナキノンMK7などの特徴を持っている。これらの特徴から、本菌株はバージェイズマニュアル・システマティック・バクテリオロジー[Bergey's Manual of Systematic Bacteriology] 第2巻、1104〜1139頁(1986)に記載されているバチルス(Bacillus)属に含まれることが示唆された。しかし、インターナショナル・ジャーナル・オブ・システマティック・バクテリオロジー[International Journal of Systematic Bacteriology]第46巻、939〜946頁(1996)によると、16S rRNAの塩基配列を基にした系統学分類的解析により、バチルス属から新たに6つの属が分割されている。従って本菌株についても系統分類学的位置関係を明らかにするため、16S rRNA塩基配列を決定した。
【0023】
16S rRNA塩基配列を基にした系統樹(図1)から、本菌株はバチルス属に含まれることが判明した。また、"バチルス マクロイデス"("Bacillus macroides")と99%以上の相同性を示し、最も近縁であることが示唆された。しかしながら、"バチルス マクロイデス"は現在バチルス属の種名として正式に認められておらず、また本菌株MCI3899株は胞子形成が確認されていないなど、同一とは確定できなかった。
【0024】
従って以上の結果から、本菌株MCI3899株をバチルス エスピー(Bacillus sp.)と同定した。
上記微生物は、野生株だけでなく、UV照射やNTG処理等の通常の変異処理により得られる変異株、細胞融合又は遺伝子組換え法などの遺伝学的手法により誘導される組換え株などのいずれの株であってもよい。尚、上記遺伝子組み換え株の宿主としては、形質転換可能な微生物であれば、親株と同じ属種であっても良いし、あるいは大腸菌等の属種の異なるものであっても良い。本発明の製造方法においては、上記微生物の1種あるいは2種以上が、菌体及び/又はそれらの処理物の形で用いられる。具体的には、前記微生物を培養して得られた培養液をそのまま、あるいは遠心分離して得られた湿潤状態の菌体;該菌体をアセトン処理したもの、凍結乾燥処理したもの、菌体を物理的または酵素的に破砕したもの等の菌体処理物を用いることができる。また、これらの菌体または菌体処理物から、(S)体選択的トランスアミナーゼの酵素画分を粗製物あるいは精製物として取り出して用いることも可能である。さらには、この様にして得られた菌体、菌体処理物、酵素画分等を通常の固定化技術を用いて、すなわち、ポリアクリルアミドゲル、カラギーナンゲル等に代表される担体に固定化したもの等を用いることも可能である。そこで、本明細書において「菌体及び/又はそれらの処理物」の用語は、上述の菌体、菌体処理物、酵素画分及びそれらの固定化物全てを含有する概念として用いられる。
【0025】
また、上記微生物は、通常、培養して用いられるが、この培養については定法通り行うことができる。培養に使用する培地には、本微生物が資化しうる炭素源、窒素源及び無機イオン等が含まれる。炭素源としては、グルコース、フルクトース、シュークロース、サッカロース等の炭水化物;グリセリン、マンニトール、キシリトール、リビトール等のポリアルコール類;クエン酸、フマル酸等の有機酸その他が適宜使用される。窒素源としては、硫酸アンモニウム、硝酸ナトリウム等の無機窒素源;NZアミン、トリプトース、酵母エキス、ポリペプトン、尿素、肉エキス、コーンスティープリカー、大豆抽出物等の有機窒素源その他が適宜使用できる。無機イオンとしては、マグネシウム、カリウム、鉄、マンガン、モリブデン等の金属イオンやリン酸イオン等を含有したようなものを用いればよいが、それらを組み合わせた無機塩類を添加するのが簡便である。
【0026】
また、培地にエチルアミン、ノルマルプロピルアミン、イソプロピルアミン、ノルマルブチルアミン、第二ブチルアミン、1,2-ジメチルブチルアミン、1,1,3,3-テトラメチルブチルアミン、ベンジルアミン、1-エチルプロピルアミン、2-アミノメトキシブタン、1−フェニルエチルアミン等の第1アミン類から選択される1種以上のアミン化合物を添加し、酵素活性を誘導するのが好ましい。上記誘導物質としては、反応に用いられるアミノ供与体と同じ化合物である必要はなく、好ましくは、ノルマルプロピルアミン、イソプロピルアミン、1−フェニルエチルアミンが挙げられる。誘導物質の添加濃度としては0.01〜3g/Lが利用できるが、0.1〜1g/Lが好ましい。
【0027】
また本発明の反応形式としては、微生物を培養した上記培養液(培地)にそのままケトン類及びアミノ供与体を添加して反応させる方法、上記培養液から、菌体を分離しその菌体をそのまま又は菌体処理物として、ケトン類及びアミノ供与体を含有する水性媒体に添加する方法が挙げられる。また、静置反応、振盪または攪拌反応等いずれの反応様式でも良いが、基質が水溶液に不溶の場合は振盪または攪拌反応が望ましい。
【0028】
反応温度としてはトランスアミナーゼが活性を示す温度、例えば0℃〜80℃が利用できるが、好ましくは20〜50℃である。
pHはトランスアミナーゼが反応する範囲であればどの範囲でもよいが、通常、中性からやや塩基性側、すなわち、7〜10の範囲で反応は行われ、好ましくは7.5〜8である。
【0029】
水性媒体は適当な緩衝能を持った緩衝液を用いることが出来る。用いる緩衝液としては、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris)、N−トリス(ヒドロキシメチル)−メチル−2−アミノエタンスルホン酸(TES)、及び2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)等の中性pH領域にpKaを持つアミン化合物を用いた緩衝液、シュウ酸、マレイン酸といった有機酸緩衝液、EDTA、リン酸、炭酸等の緩衝液が挙げられるがこれらに限定されるものではない。添加する緩衝液として好ましくはリン酸及びTris緩衝液である。緩衝液濃度としてはたとえば1mMから1M、好ましくは0.01〜0.5Mである。
【0030】
反応基質濃度としては、例えば、0.1mM〜2Mが利用できるが、好ましくは10mM〜100mMである。また、ケトン類とアミノ供与体の各反応基質の濃度は等しい必要はない。例えば、一方の基質に対して、酵素の阻害がある場合には、他方の基質の大過剰存在下に、該基質を逐次添加させても良いし、又、反応平衡を生成物側にずらすために、一方の基質を他方の基質に対して大過剰量用いても良い。また、反応基質は反応系中で溶解していても溶解していなくとも良い。
【0031】
反応系には反応促進物質として、有機溶媒、、界面活性剤及び/又は脂肪酸を添加して行っても良い。
添加する有機溶媒としては、ヘプタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素、トルエン等の芳香族炭化水素、アルコール類、酢酸エチル等のエステル類、DMSO、DMF等の非プロトン性極性溶媒、アセトニトリル等のニトリル類、グリセロール等が挙げられるが、好ましくは脂肪族又は芳香族炭化水素系溶媒であり、特に好ましくはイソオクタンである。添加する有機溶媒量としては、0.1〜60%v/vが利用できるが、好ましくは1〜20%v/vである。
【0032】
界面活性剤としては、Tween80、TritonX―100等の非イオン性界面活性剤や、SDS等の陰イオン性界面活性剤等、酵素反応や菌体反応で通常用いられる界面活性剤が挙げられるが、好ましくはTween80である。添加する界面活性剤量としては、0.01〜5%w/vが利用できるが、好ましくは0.05〜0.5%w/vである。
【0033】
脂肪酸としては、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸いずれでも良く、例えばリノール酸、リノレン酸、オレイン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、カプロン酸もしくはそのエステル等が挙げられるが、好ましくはオレイン酸、パルミチン酸である。添加する脂肪酸量としては、0.01〜5%v/vが利用できるが、好ましくは0.1〜1%w/vである。
【0034】
上記有機溶媒、界面活性剤及び脂肪酸のうち、好ましくは、有機溶媒又は界面活性剤であり、特に好ましくは、有機溶媒である。
上記、有機溶媒、界面活性剤及び/又は脂肪酸を添加する時期としては反応開始時、反応中等いつでも良いが、反応開始時が望ましい。
反応後に目的とする光学活性アミンを分離する方法としては、有機溶媒による抽出や蒸留、カラムクロマトグラフィーを組み合わせて、また、化合物の種類によっては、晶析等の操作を組み合わせた通常の方法によって行うことができる。例えば、具体的には、酢酸エチル、トルエン等を抽出溶媒として用い、反応液をまず酸性にして抽出を行うことによりケトン類を除き、その後アルカリ性にして抽出することにより目的化合物を含むアミン類を分離する。そしてこの抽出画分をさらに蒸留することによって目的の光学活性アミン類を単離することが出来る。
【0035】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
グリセロール 2g/L、ポリペプトン 4g/L、酵母エキス 4g/L、リン酸一カリウム 1g/L、リン酸二カリウム 3g/L、塩化ナトリウム 1g/L、硫酸マグネシウム 0.2g/L、硫酸マンガンn水和物 10mg/L、塩化鉄(II)七水和物 10mg/L、塩化カルシウム 10mg/LpH7.0を含む培地100mLを分注して滅菌(121℃、20分間)した500mLのバッフル付き三角フラスコにバチルス エスピー MCI3899(FERM P−17996)を播種し、30℃で振盪培養した。播種6時間後に1−フェニルエチルアミン100mgをエタノール400uLに溶かした液を500uL添加し引き続き14時間30℃で振盪培養した後遠心分離(8000g 10分)にて菌体を採取した。得られた菌体に生理食塩水を加え全量を100mLとし、懸濁した後、再び遠心分離(8000g 10分)することで洗浄を実施した。
【0036】
上記菌体に再度生理食塩水を加え100mLとした後、その懸濁液2mL分を遠心して菌体を集め、0.3mLの反応液(プロピオフェノン10mM、n−ブチルアミン50mM、ピロドキサールリン酸 0.1mM、Tween80(関東化学社製)1g/L、100mMリン酸バッファーpH7.7)に懸濁後、30℃にて24時間振盪反応に供した。反応終了後の反応液は遠心分離(8000g 5分)にて菌体を除去した後HPLCに供し、エチルベンジルアミン生成量を測定した結果9.5mM、光学純度100%e.e.であった。
<エチルベンジルアミン生成量測定用>
カラム:ULTRON ESPhCD
移動相1:1g/L KH2PO4、3g/L K2HPO4(pH7.3)、50%アセトニトリル
流速:1mL/min
検出:UV(210nm)
<光学純度測定用>
カラム:ダイセル CROWNPAK CR(+)
移動相2:過塩素酸水(pH1.5)
流速:0.8mL/min
検出:UV 210nm
(参考例1)
アミノ供与体をノルマルブチルアミンから、表1に記載の各アミン化合物に変えた他は、実施例1と同様に反応を行った。
【0037】
結果を表1に示す。活性はノルマルブチルアミンをアミノ供与体とした場合を100%とした相対活性で示してある。
【0038】
【表1】
【0039】
上記の表から、第一アミン類をアミノ供与体として用いた場合には、活性を示すが、L-アラニン、及びγ-アミノ酪酸、L-リジン、オルニチンといったω-アミノ酸はアミノ供与体としてはほとんど作用しないことが判る。
(参考例2)
実施例1と同様にバチルス エスピー MCI3899(FERM P−17996)を500mLのバッフル付き三角フラスコ10本分(培養液1000mL分)に播種して19時間培養し、生食洗浄後菌体を回収した。菌体を破砕バッファー(10mMリン酸pH 7.7、20uM ピリドキサールリン酸、1mM DTT)60mLに懸濁後、超音波破砕機にかけることで破砕した。破砕処理後、遠心(10,000g 30分)にて菌体破砕物を除去し、上清に25%飽和となるように硫安を添加して沈殿した蛋白質を除いた後、50%飽和となるように硫安を添加して沈殿した蛋白質を分離した。これを上記緩衝液に溶解させ、同緩衝液に対して透析した後、この液で平衡化したDEAE-セファロースファストフロー(ファルマシア)カラム(φ1.6x10cm)に供し、0〜0.2M NaClのステップワイズによって溶出させた。この活性化区分を集め終濃度1Mとなるように硫安を添加した後1M硫安を含む上記破砕バッファーで平衡化したブチルトヨパール650M(TOSO)カラム(φ0.9x15cm)に供し、1M〜0M硫安の直線濃度勾配によって溶出した。この活性画分を集め、限外濾過で濃縮、脱塩した後、上記破砕バッファーで平衡化したMCI-GEL Prot-DEAE(7.5mm I.D. x100mm)カラムに供し、0.15M〜0.4M NaCl直線濃度勾配によって溶出させた。この活性画分を集め、限外濾過で濃縮し粗精製酵素液とした。
【0040】
この粗精製酵素液を用いてトランスアミナーゼに対する種々の酵素阻害剤の効果について調べた。100ulの粗精製酵素液に酵素阻害剤溶液を添加し(終濃度1mM)室温で30分プレインキュベートした後、100uLの反応液(0.1Mリン酸緩衝液(pH7.7)、50mM第二ブチルアミン、0.1mMピリドキサールリン酸、15mMプロピオフェノン、0.1% Tween80(関東化学社製))を添加し、30℃で14時間チューブ内で反応させた。反応終了後反応液を5倍希釈し液をHPLCで分析し、反応により生成した(S)-エチルベンジルアミンを定量した。そのときの結果を阻害剤を添加していない時との相対活性で示す。
【0041】
【表2】
【0042】
ω-アミノ酸トランスアミナーゼについては、該酵素として良く知られているシュウドモナスsp.F−1由来のω-アミノ酸トランスアミナーゼに関しての文献(アグリカルチュラル・バイオロジカル・ケミストリー(Agric. Biol. Chem.)、42巻、2363-2367頁(1978年)、アグリカルチュラル・バイオロジカル・ケミストリー(Agric. Biol. Chem.)、43巻、1043-1048頁(1979年)、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem)、258巻、2260-2265頁(1983年))に記載されている精製酵素によるデータで示した。上記の表から、本発明で用いられたトランスアミナーゼは、ω-アミノ酸トランスアミナーゼ選択的阻害剤として知られているガバクリンに対して、全く活性低下を示さず、ω-アミノ酸トランスアミナーゼではないことが判る。
【0043】
また、プロピオフェノン15mM及び第2ブチルアミン50mMの代わりに、以下に示すω-アミノ酸とアミノ受容体との組み合わせで反応を行った。尚、各基質の水に対する溶解度が高いため、ここでは0.1% Tween80を添加する必要がなく、入れなかった。
結果を表に示す。
【0044】
【表3】
【0045】
これらの結果から、本発明に使用されたトランスアミナーゼは、ω-アミノ酸に対しては全く活性を示さないかほとんど活性を示さず、ω-アミノ酸トランスアミナーゼとは基質特異性、性質が異なることが判る。
【0046】
【発明の効果】
本発明によれば、特に医農薬中間体として産業上有用な(S)体の光学活性アミン類を効率よく、低コスト、高純度で製造することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】16S rRNA塩基配列を基にしたバチルス エスピーMCI3899株の系統分類学的位置を示す図である。
Claims (11)
- 下記一般式(1)
- Rが置換されていても良いアリール基であり、Xが置換されていても良いアルキル基であることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
- 一般式(1)で示される化合物が、
- アミノ供与体が第一アミン類であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
- トランスアミナーゼがω-アミノ酸トランスアミナーゼ活性を有しないものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
- ケトン化合物の濃度が、0.1mM〜100mMであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
- 反応系のpHが7〜9であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
- 反応系内の温度が0℃〜80℃であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
- 界面活性剤及び/又は有機溶媒の共存下で反応を行うことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
- 立体選択的にアミノ転移を行わせる活性を有し、ガバクリン共存下での活性低下がみられないトランスアミナーゼを生産する微生物の培養物、分離した菌体及び/又は菌体処理物と、ケトン化合物及びアミン類とを接触させることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法。
- 培養時にアミン類を添加することにより、トランスアミナーゼ活性を誘導することを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
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