JP2004057014A - 芳香族アミノ酸のラセミ化方法、芳香族アミノ酸の光学活性体の製造方法並びに芳香族アミノ酸のラセミ化活性を有する微生物および酵素 - Google Patents
芳香族アミノ酸のラセミ化方法、芳香族アミノ酸の光学活性体の製造方法並びに芳香族アミノ酸のラセミ化活性を有する微生物および酵素 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】生物学的材料を用いて、芳香族アミノ酸を限られた工程でラセミ化し、所望の芳香族アミノ酸の光学活性体を効率よく生産する方法を提供することを目的とする。特に、芳香族アミノ酸自体をも直接ラセミ化し、一の芳香族アミノ酸の光学異性体から他の光学異性体を効率よく製造する方法を提供する。殊に、アミノ酸のD体からL体への変換のみならずL体からD体への変換も可能とする方法を提供する。
【解決手段】芳香族アミノ酸をラセミ化する能力を有する生物学的材料を芳香族アミノ酸に対して作用させることを特徴とする芳香族アミノ酸のラセミ化方法。当該生物学的材料は、好ましくはバチルス属の細菌由来である。
【選択図】 なし
【解決手段】芳香族アミノ酸をラセミ化する能力を有する生物学的材料を芳香族アミノ酸に対して作用させることを特徴とする芳香族アミノ酸のラセミ化方法。当該生物学的材料は、好ましくはバチルス属の細菌由来である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、芳香族アミノ酸のラセミ化方法に関する。より詳細には、生物学的材料、特に微生物由来の生物学的材料による芳香族アミノ酸のラセミ化方法に関する。更に、本発明は、当該ラセミ化方法を利用した芳香族アミノ酸の光学活性体の製造方法に関し、また当該ラセミ化活性を有する微生物および酵素に関する。
【0002】
【従来の技術】
アミノ酸の光学活性体は医薬中間体や飼料添加物、食品添加物などの分野で幅広く用いられる極めて有用な化合物である。例えば、自然界に存在するアミノ酸の殆どがL−アミノ酸であり、生命体を維持している蛋白質はL−アミノ酸から構成される。一方、L−アミノ酸の光学異性体であるD−アミノ酸が、その特性から医薬中間体として重要であることは上記のとおりである。
【0003】
したがって、このように重要なアミノ酸の光学活性体を効率よく、安価、大量に、且つ高い光学純度で製造することは極めて意義深い。
【0004】
アミノ酸の光学活性体の製造のための様々な方法が知られている。例えば、所望のアミノ酸の光学異性体(例えば、D−α−アミノ酸)を得るために、当該光学異性体に対応するもう一方のアミノ酸の光学異性体(L−α−アミノ酸)をラセミ化し、得られる光学異性体の混合物(D,L−α−アミノ酸)から所望の光学異性体を分離するアミノ酸の光学活性体の製造方法が一般的に行なわれている。このようなラセミ化によるアミノ酸の光学活性体の製造方法の例は特開平11−322684号公報にも記載されており、当該公報に記載の方法では、光学活性なアミノ酸を、アミノ酸を実質上溶解しない不活性溶媒中に分散させ、低級脂肪酸および脂肪族または芳香族のアルデヒドを作用させて異性化させ、溶媒から晶出するアミノ酸の光学異性体の混合物を固液分離により取得する。当該方法を利用してL−イソロイシンからD−アロイソロイシンを得る場合には、上記光学異性体の混合物から特開平11−228512号公報に記載の方法に従って、D−アロイソロイシンを光学分割する。
【0005】
アミノ酸の光学活性体を得るための生物学的材料の使用も知られている。生物学的材料、例えば微生物の培養物やその酵素を利用する方法は反応条件も温和で、効率がよく、また有害な廃棄物も発生し難いことから工業的にも優れた方法として各種の分野で多用される。ラセミ化工程を含む或いは含まない生物学的材料を使用したアミノ酸の光学活性体の製造方法は以下の公報にも記載されている。
【0006】
特開2000−350593号公報には、式:R−CH(NH2)−COOH(式中、Rは置換されていてもよいC1−C12アルキル基、置換されていてもよいC4−C8シクロアルキル基または置換されていてもよいC6〜C14アリール基を表す。)で示されるアミノ酸において、アミノ基及びカルボキシル基の両者が結合する不斉炭素原子に基づく一方の光学異性体(光学異性体I)を他方の光学異性体(光学異性体II)に変換する能力であって、当該能力がアミノトランスフェラーゼ阻害剤であるβ−クロロ−D−アラニン、β−クロロ−L−アラニンまたはガバクリンによる重大な阻害を受けない能力を有する生物学的材料を、前記一方の光学異性体(光学異性体I)に作用させることを特徴とする前記他の光学異性体(光学異性体II)の製造方法が開示されている。
【0007】
しかしながら、当該公報は、芳香族アミノ酸をもラセミ化するような能力を有する酵素の存在を示唆するものではなく、したがって、当該公報に記載の方法は、本発明の芳香族アミノ酸をもラセミ化する酵素を用いた芳香族アミノ酸の光学異性体の製造方法を何等、開示していない。
【0008】
特開平6−205668号公報には、アミノ酸の光学異性体の製造に利用できる有用な酵素であるアシルアミノ酸ラセマーゼを生産するアミコラトプシス・スピーシーズ(Amycolatopsis sp.)TS−1−60および当該微生物からのアシルアミノ酸ラセマーゼの製造法が開示されている。
【0009】
特開平6−343462号公報には、D−又はL−又はD,L−5−モノ置換ヒダントイン又はD−又はL−又はD,L−N−カルバモイル−α−アミノ酸を相応するエナンチオマー純粋なL−α−アミノ酸に変換する能力を高い特異的活性で有する微生物および当該微生物が生産する酵素を利用してD−,L−又はD,L−5−モノ置換ヒダントイン及びD−,L−又はD,L−N−カルバモイル−α−アミノ酸よりL−α−アミノ酸を製造する方法が開示されている。
【0010】
特開2001−314191号公報には、セベキア・ベニハナ(Sebekia benihana)に由来するN−アシル−アミノ酸ラセマーゼ(NAAR)によるラセミ化方法と、この方法に基づく光学活性アミノ酸の製造方法が開示されている。当該公報に記載の方法では、N−アシル−アラニン、N−アシル−アスパラギン酸、N−アシル−ロイシン、あるいはN−アシル−バリンといったアシルアミノ酸においても、これらを基質として効率的なラセミ化を触媒することができ、更に光学活性アミノ酸の製造に応用した場合には、医薬品原料などとして有用な光学活性アミノ酸を効率的に得ることができるとされる。
【0011】
最後に、特開2001−46088号公報には、上記アミコラトプシス・スピーシーズTS−1−60からのN−アセチル−アミノ酸ラセマーゼに比して、重金属イオンの活性依存性が少ない別のアミコラトプシスからのN−アセチル−アミノ酸ラセマーゼが開示されており、当該N−アセチル−アミノ酸ラセマーゼは、その重金属イオンに対する低い活性依存性の観点から、酵素の工業的な使用においてコストおよび環境面で優れるとされる。
【0012】
しかしながら、上記のとおり、これまで、トリプトファンやフェニルアラニン、チロシン等の芳香族アミノ酸自体をもラセミ化する能力を有する酵素については全く報告されておらず、医薬品合成用原料として注目されているD−トリプトファン、D−フェニルアラニン、D−チロシンの当該酵素を利用した効率的な製造方法も知られていないのである。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明は、生物学的材料を用いて、芳香族アミノ酸を限られた工程でラセミ化し、所望の芳香族アミノ酸の光学活性体を効率よく生産する方法を提供することを目的とする。特に、芳香族アミノ酸自体をも直接ラセミ化し、一の芳香族アミノ酸の光学異性体から他の光学異性体を効率よく製造する方法を提供する。殊に、アミノ酸のD体からL体への変換のみならずL体からD体への変換も可能とする方法を提供する。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、ある種の生物学的材料を用いることにより、芳香族アミノ酸が効率よくラセミ化されることを見出した。上記のとおり、トリプトファン等の芳香族アミノ酸をラセミ化する生物学的材料は知られておらず、そのような特異性を有する当該生物学的材料の発見は驚嘆に値する。したがって、本発明の第1は、
(1)芳香族アミノ酸をラセミ化する能力を有する生物学的材料を芳香族アミノ酸に対して作用させることを特徴とする芳香族アミノ酸のラセミ化方法である。
【0015】
上記生物学的材料は、好ましくは微生物の培養液、或いは培養菌体またはそれらの処理物、例えばその休止菌体、固定化菌体、凍結乾燥菌体、菌体破砕物、菌体自己消化物、菌体の超音波処理物および菌体抽出物であり得、また当該微生物由来の粗精製若しくは精製酵素であり得る。したがって、本発明の第2は、
(2)前記生物学的材料が、微生物の培養物;微生物の休止菌体、固定化菌体、凍結乾燥菌体、菌体破砕物、菌体自己消化物、菌体の超音波処理物および菌体抽出物;並びに微生物由来の粗精製および精製酵素からなる群から選択される上記(1)の方法である。
【0016】
更に、上記微生物はバチルス(Bacillus)属であることが好ましく、特にバチルス・セレウス(Bacillus cereus)、バチルス・フシフォルミス(Bacillus fusiformis)およびバチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)種において本発明のラセミ化活性が高率で発現される。したがって、本発明の第3および第4は、
(3)前記微生物がバチルス属である上記(2)の方法、および
(4)前記バチルス属の微生物がバチルス・セレウス、バチルス・フシフォルミスおよびバチルス・ズブチリスからなる群から選択される上記(3)の方法である。
【0017】
本発明の方法においては、D体の芳香族アミノ酸のみならずL体の芳香族アミノ酸も基質として作用し、D体からL体の芳香族アミノ酸が得られるばかりでなくL体からD体の芳香族アミノ酸を得ることもできる。したがって、本発明の第5および第6は、
(5)前記芳香族アミノ酸がL体である上記(1)乃至(4)のいずれかの方法であり、
(6)前記芳香族アミノ酸がD体である上記(1)乃至(4)のいずれかの方法である。
【0018】
また、本発明の方法の基質となる芳香族アミノ酸としてはトリプトファン、フェニルアラニン、チロシンの他、その誘導体もあげられる。したがって、本発明の第7および第8は、
(7)前記芳香族アミノ酸がトリプトファン、フェニルアラニン、チロシンおよびその誘導体からなる群から選択される上記(1)乃至(6)のいずれかの方法であり、
(8)前記芳香族アミノ酸がトリプトファン、フェニルアラニンまたはチロシンである上記(7)の方法である。
【0019】
上記ラセミ化により、基質として用いた芳香族アミノ酸の一の光学異性体から所望の他の光学異性体が生成され、光学分割等のそれ自体当業者に公知の手法により当該生成した芳香族アミノ酸の光学異性体を分離および/または精製することにより所望の芳香族アミノ酸の光学活性体が製造される。したがって、本発明の第9は、
(9)上記(1)乃至(8)のいずれかのラセミ化方法を行なうことを特徴とする芳香族アミノ酸の光学活性体の製造方法である。
【0020】
本発明のラセミ化方法および芳香族アミノ酸の光学活性体の製造方法には、芳香族アミノ酸をラセミ化する活性、特に芳香族アミノ酸ラセマーゼ活性を有する微生物の培養液や培養菌体、若しくは当該菌体等の処理物、或いは当該微生物由来の酵素、すなわち芳香族アミノ酸をラセミ化する活性を有する酵素が好適に使用される。なお、上記微生物としては広汎なバチルス属の菌株を用いることができ、これに限定されないが、本発明者が新たに単離した新規菌株バチルス・セレウス WU−STR7およびバチルス・フシフォルミス WU−ATR−9も利用できる。したがって、本発明の第10乃至15は、
(10)芳香族アミノ酸のラセミ化活性を有する微生物、
(11)バチルス・セレウス WU−STR7またはバチルス・フシフォルミスWU−ATR−9である上記(10)の微生物、
(12)芳香族アミノ酸のラセミ化活性を有する酵素、
(13)微生物由来である上記(12)の酵素、
(14)前記微生物がバチルス属である上記(13)に記載の酵素、および
(15)前記バチルス属の微生物がバチルス・セレウス、バチルス・フシフォルミスおよびバチルス・ズブチリスからなる群から選択される上記(14)の酵素である。
【0021】
本発明の生物学的材料、特に微生物の培養菌体等やその処理物或いは酵素を用いることにより芳香族アミノ酸の一の光学異性体を限られた工程で効率よくラセミ化して、他の芳香族アミノ酸の光学異性体を製造することができる。そして、得られた芳香族アミノ酸の光学活性体は、医薬中間体や飼料または食品添加物として利用可能である。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明では、芳香族アミノ酸をラセミ化する能力を有する生物学的材料を用いて、芳香族アミノ酸をラセミ化する方法が提供される。ここで、本明細書にいう芳香族アミノ酸とは、一般式:R1−CH(NH2)−COOHにおいて、置換基R1が芳香族性またはヘテロ芳香族性の基を有する基であるαアミノ酸のことであり、例えば、該R1は、任意に置換されたフェニル、ヒドロキシフェニル、ナフチルまたはインドリルで置換されたC1−4アルキルであり得る。当該フェニル、ヒドロキシフェニル、ナフチルまたはインドリルの置換基の例としてはC1− 4アルキル、C1− 4ハロゲン化アルキル基、C1− 4ヒドロキシアルキル基、C1− 4アルコキシ基、カルボキシル基、アミノ基、シアノ基、ハロゲン原子等があげられる。したがって、発明の芳香族アミノ酸の例には、天然界に一般的に存在するトリプトファン、フェニルアラニン、チロシンの他、その誘導体、例えばフェニルグリシン、p−クロロフェニルアラニン、p−フルオロフェニルアラニン、ナフチルグリシン、ナフチルアラニン等が含まれ、好ましくはトリプトファン、フェニルアラニンおよびチロシンである。
【0023】
また、上記の定義から明らかなように、本発明の芳香族アミノ酸は、上記一般式においてアミノ基およびカルボキシル基がともに結合するα位の不斉炭素に基づきD体およびL体の光学異性体を生ずる。したがって、本明細書にいう芳香族アミノ酸の光学活性体とは実質的な光学純度を有する一般的なL体またはD体の芳香族アミノ酸を意図する。また、本明細書にいう芳香族アミノ酸のラセミ化とは、芳香族アミノ酸の光学活性体の一部がその対掌体に変化することにより旋光度を減少させることをいう。
【0024】
また、上記の定義から明らかなように、本発明の芳香族アミノ酸をラセミ化する能力を有する生物学的材料とは、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファン等に代表される芳香族アミノ酸の一の光学異性体を他の光学異性体に変換する能力を有する生物から得られる材料である。当該能力の評価は、例えばトリプトファン等の特定の芳香族アミノ酸の光学異性体(例えば、L−トリプトファン)に被検生物の培養物等を適当な時間接触させ、生成する他の光学異性体(D−トリプトファン)の存在またはその量を同定することによりなされ得る。当該評価方法の一例では、約3.5ml程度の被検生物学的材料を含む溶液に25mM程度のL−トリプトファンを含む溶液の約1.5mlを混合し、該混合物を140rpmで振とう下、37℃で1日間インキュベートした後に生成したD−トリプトファンをHPLCにより測定する。
【0025】
微生物、特にバチルス属の細菌において上記のラセミ化能力が広汎に認められる。バチルス属細菌とは内性胞子を形成するグラム陽性(フシフォルミスでは不定)桿菌で好気性または通性嫌気性の従属栄養細菌である。当該バチルス属の細菌のうちバチルス・セレウス、バチルス・フシフォルミスおよびバチルス・ズブチリスが、その培養も容易で比較的速い生育が得られるので好適に用いられる。特に、上記バチルス属の細菌の具体例としては、バチルス・セレウス WU−STR7、バチルス・セレウス ATCC14579、バチルス・フシフォルミスWU−ATR−9およびバチルス・ズブチリス IFO3336をあげることができる。
【0026】
バチルス・セレウス WU−STR7は、本発明の芳香族アミノ酸をラセミ化する能力を有する細菌として本発明者等が単離した新規の菌株であり、該菌株は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターにFERM P−18678として寄託されている。
【0027】
また、バチルス・フシフォルミス WU−ATR−9も本発明者等が単離した新規の菌株であり、該菌株においても芳香族アミノ酸をラセミ化する高い能力が認められている。該菌株は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターにFERM P−18858として寄託されている。
【0028】
バチルス・セレウス ATCC14579およびバチルス・ズブチリス IFO3336はこの種の菌株のタイプ・ストレインであり、これらの菌株は、各々、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションや財団法人発酵研究所から入手できる。なお、これらのタイプ・ストレインにおいて芳香族アミノ酸のラセミ化能力が認められる事実は、驚くべきことではあるが、従来全く報告のなかったような本発明の新たなタイプのラセミ化活性が、バチルス属の菌株において広範囲に発現されていることを示している。
【0029】
また、上記のような天然に存在する菌株の他、遺伝子組換え微生物も使用可能である。例えば、本発明の芳香族アミノ酸のラセミ化活性を有する酵素をコードする遺伝子により形質転換され、当該遺伝子を発現するような大腸菌等も、当然に使用可能である。
【0030】
本発明の生物学的材料は、好ましくは上記の微生物から得ることができる。すなわち、該生物学的材料は、上記の微生物の培養液/培養菌体または培養菌体処理物、例えば、休止菌体、固定化菌体、凍結乾燥菌体、菌体破砕物、菌体自己消化物、菌体の超音波処理物および菌体抽出物である。
【0031】
当該微生物の培養菌体等を得るためには、当業者に公知のいかなる方法を用いても差し支えがない。バチルス属の細菌の培養液/菌体を得る場合には、ジャー・ファーンターやバッフル付エルレンマイヤー・フラスコ、坂口フラスコ等に収容したバチルス属の生育に好適な培地に当該バチルス属の細菌を植菌し、十分な通気および/または攪拌下で20乃至37℃で培養すればよい。好ましい培地としてはLG培地、すなわち、バクト・トリプトンを1.0%(w/v)、バクト・イースト・エキストラクトを0.5%(w/v)、塩化ナトリウムを0.5%(w/v)および別途滅菌したグルコースを終濃度で0.5%(w/v)含む培地(pH無調整)があげられる。植菌に用いる細菌は、場合によっては同様の培地でプレ・インキュベーションした当該菌の培養液からなる種母の形としてもよく、また当該細菌が生育するスラントから白金耳等で直接に植菌してもよい。バッフル付500ml容のエルレンマイヤー・フラスコを用いる培養の例では、当該フラスコに100mlの滅菌処理された上記LG培地を収容し、該培地に本発明の細菌を植菌した後、150rpmで振とう下、37℃で培養する。培養は、典型的には19時間程度行なわれるが、その具体的な終点は培養液のO.D.660を測定することによって決定することもでき、例えば、O.D.660が2以上になる点を目安に培養を終了してもよく、また場合によってはそれ以上のO.D.660、例えば14程度の値を示すまで継続してもよい。かくして得られた培養液は、そのままで本発明の微生物の培養物である生物学的材料となり得、また、当該培養液から培養菌体と上清を分離し、そのいずれをも本発明の生物学的材料となし得る。
【0032】
また、上記培養菌体の処理物を得る際にも当業者に公知のいかなる方法を用いて差し支えない。当該処理物としての休止菌体を得るためには、例えば上記バッフル付500ml容のエルレンマイヤー・フラスコでの培養物を遠心分離(4℃、5000rpm、10分間)してその培養菌体を回収し、例えば20mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)を用いて洗菌すればよく、得られた休止菌体は−70℃前後で保存可能である。使用に際しては当該菌体を、上記洗菌に用いた緩衝液やトリス塩酸(Tris−HCl)緩衝液に所望の濃度で懸濁させて用いてもよい。
【0033】
微生物の固定化菌体は、例えば上記のようにして回収した休止菌体をシリカゲル等の無機担体やDEAE−セルロースなどの樹脂に吸着および/または結合させて、或いは該休止菌体をカラギーナンやアルギン酸ゲルに封入させて調製できる、当該方法は当業者に公知である。
【0034】
また、上記の菌体は、定法により凍結乾燥してもよく或いは適切な方法で破砕してもよい。或いは、上記微生物の培養を長時間継続して、当該菌体の自己消化産物を得ることもできる。更には、上記の休止菌体を適切な緩衝液に懸濁した後、超音波破砕してその内容物を溶出させてもよい。これらの方法もまた当業者に公知である。
【0035】
本発明の生物学的材料は、好適には上記微生物から得られた粗精製酵素、或いは精製した酵素であり得る。当該酵素は本発明の芳香族アミノ酸をラセミ化する活性、好ましくはラセマーゼ活性を有する。好ましい酵素はバチルス属の細菌、特にバチルス・セレウス、バチルス・フシフォルミスおよびバチルス・ズブチリスより得られる。粗精製酵素の形で用いる場合、当該酵素は上記バチルス属の細菌の菌体を超音波処理などにより破砕した超音波処理物の遠心分離後の上清としても使用可能であるが、更に付加的な精製工程によりその精製度を高めてもよい。当該精製工程としては、例えば、硫酸アンモニウムによる塩析、溶媒沈殿、等電点沈殿、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィーおよび電気泳動をあげることができる。これらの方法の単独またはこれらを適当に組み合わせて、粗精製酵素或いは精製酵素を得ることができる。なお、当該酵素を適当な担体に固定化しバイオリアクターとして使用することも当然に可能である。
【0036】
本発明の方法では、上記の生物学的材料が芳香族アミノ酸自体に直接に作用してこれをラセミ化することも可能である。すなわち、本発明の1態様では、簡便に、出発原料となる芳香族アミノ酸の一の光学異性体に上記の生物学的材料を接触させ、これらを適切な条件下で適当な時間インキュベートすればよく、そのようにして反応を進行させることにより目的となる他の光学異性体が生成される。たとえば、D−トリプトファンを得る場合には、上記生物学的材料をL−トリプトファンと接触させ、また、L−トリプトファンを得る場合には同様の生物学的材料をD−トリプトファンと接触させてインキュベートすればよい。
【0037】
当該インキュベートは、好適には各種の緩衝液中で行なわれる。リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液を例示できるがこれに限定されない。0.15Mトリス塩酸緩衝液(pH7.6)や20mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)が好ましい。また当該緩衝液には、場合により各種補酵素や微量元素、界面活性剤や安定剤などを添加してもよい。出発原料、すなわち基質としての芳香族アミノ酸の一の光学異性体の量は、目的とするもう一方の芳香族アミノ酸の光学異性体の収率や反応速度、反応条件などにより適宜加減して設定できるが、一般的に反応溶液全体に対して30%(w/v)以下が好ましい。しかしながら、0.002%(w/v)でも十分に本発明のラセミ化活性を検出することができる。用いる生物学的材料の量も、当該生物学的材料の性状や性質、基質として用いる芳香族アミノ酸や生成する芳香族アミノ酸の光学異性体の性質、反応の条件や目的とする収率により適宜変更することができる。ラセミ化の反応条件も同様に適宜変更することができるが、好ましくは上記の芳香族アミノ酸および本発明の生物学的材料を含む緩衝液を静置或いは50乃至200rpmでの振とう下、20乃至37℃で、数時間〜1週間程度、インキュベートする。また、適切な間隔を置いて採取したサンプル中に存在する目的の光学異性体をHPLC等により定量してインキュベートの終点を決定してもよい。当該インキュベートの具体的な例の1つにおいては、バチルス属細菌の休止菌体を、O.D.660が8.0となるように20mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)に対して懸濁し、当該懸濁液の3.5mlに対して25mMのL−若しくはD−トリプトファン、またはL−若しくはD−フェニルアラニン、或いは0.5mMのL−若しくはD−チロシン溶液の1.5mlを加え、140rpmで振とう下、37℃で1日間反応を行なう。当該インキュベート後、上記反応溶液中に目的とするもう一方の芳香族アミノ酸の光学異性体生成が観察される。
【0038】
上記のように反応して芳香族アミノ酸の一の光学異性体から生成した他の光学異性体は、当業者に公知の光学分割方法を用いて容易に分離することができる。例えば、「アミノ酸の光学分割方法」と題する特開平6−306030号公報に記載の方法が使用できる。また、酵素を利用して、反応物中に残存する出発物質の芳香族アミノ酸の一の光学異性体を特異的に分解し、目的とする芳香族アミノ酸の光学異性体だけを得ることもできる。例えば、L−トリプトファンを出発原料として本発明の生物学的材料を接触させて反応を行い、得られたD−トリプトファンとL−トリプトファンの混合物から、L−トリプトファナーゼによりL−トリプトファンのみを選択的に分解することもできる。
【0039】
かくして、本発明の芳香族アミノ酸をラセミ化する能力を有する生物学的材料を利用した芳香族アミノ酸の光学活性体の製造が達成される。
【0040】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、実施例は本発明を何ら限定するものではない。
【0041】
【実施例】
実施例1:バチルス・セレウス WU − STR7由来の休止菌体および粗精製酵素による芳香族アミノ酸のラセミ化
(1)バチルス・セレウス WU−STR7の培養:
バチルス・セレウス WU−STR7(以下、「STR−7」と略す。)を2Lのジャー・ファーメンターにより培養した。培地はLG培地(バクト・トリプトン1.0%、バクト・イースト。エキストラクト0.5%、塩化ナトリウム0.5%、別途滅菌したグルコースを終濃度で0.5%、但し濃度は全て重量/容量でpH無調整)であった。上記ジャー・ファーメンターに1Lの培地を投入しオートクレーブ後、STR−7を植菌した。植菌に用いた種母は、STR−7を前記培地内で16時間、37℃、150rpmの振とう条件で培養した培養物の50mlであった。ジャー・ファーメンターでの培養終了時のO.D.660は14.7であった。
【0042】
(2)休止菌体および粗精製酵素の調製:
上記ジャー・ファーメンターで培養して得られた培養物を遠心分離(4℃、5000rpm、10分間)して菌体を集菌した。当該菌体は使用時まで−70℃で保存した。該菌体の250mlを0.15MのTris−HCl緩衝液(pH7.6)で2回洗菌し、0.15MのTris−HCl緩衝液(pH7.6)の40mlに懸濁した。そのうちの20mlを休止菌体の懸濁液とし、また残りの20mlは粗精製酵素の調製のために用いた。すなわち、当該残りの20mlの菌体懸濁液を市販の超音波破砕機により処理して懸濁液中の菌体を破砕した。該破砕液を遠心分離(5000rpm、10分間)した後、その上清を粗精製酵素溶液とした。
【0043】
(3)STR−7由来の休止菌体および粗精製酵素による芳香族アミノ酸のラセミ化:
トリプトファンに対する休止菌体による反応では、上記休止菌体の懸濁液(7ml)に対し、出発原料としての芳香族アミノ酸の一の光学異性体を含む基質溶液(3ml)、ビタミン・ミクスチャー(100μl、脱イオン水100ml中にチアミン:0.2mg、ビオチン:0.2mg、葉酸:0.2mg、イノシトール:0.2mg、ニコチン酸:0.5mg、パントテン酸:0.5mg、ピリドキシン:0.25mg、リボフラビン:0.2mgを含む)および金属溶液(100μl、脱イオン水100ml中にFeCl2・4H2O:1.5g、CoCl2・6H2O:0.19g、MnCl2・4H2O:0.1g、ZnCl2:0.07g、H3BO3:0.062g、Na2MoO4・4H2O:0.036g、NiCl2・6H2O:0.024g、CuCl2・2H2O:0.017gを含む)を添加した。粗精製酵素による反応では、休止菌体の懸濁液にかえて上記の粗精製酵素溶液(7ml)を用いた。ただし、フェニルアラニンおよびチロシンに対する反応に用いた休止菌体の懸濁液および粗精製酵素溶液は、上記(2)において、洗菌した菌体を80mlの0.15MのTris−HCl緩衝液(pH7.6)に懸濁させて調製した。反応の基質にはD−またはL−のトリプトファン、フェニルアラニン或いはチロシンを用いた。すなわち、上記の基質溶液(3ml)に対して25mMとなるようにD−或いはL−のトリプトファン、フェニルアラニンまたはチロシンを、夫々、溶解させた。ただし、D−およびL−チロシンについてはその全量が溶解しなかったため、そのまま基質として用いた。反応はすべて、37℃、120rpmの振とう下、1日間行なわせた。反応終了後、遠心分離(5000rpm、10分間)にて反応液の上清を回収し、該上清をサンプルとしてHPLC(カラム:WH−C18A、移動相:(A)CH3CN/MeOH/50mM KH2PO4 pH2.7=5/5/90、(B)CH3CN/MeOH/50mM KH2PO4 pH2.7=35/5/60、(C)CH3CN/THF/H2O=60/20/20、流速:0.5ml/min、検出:340nm、インジェクション:10μl:HITACHI TECHNICAL DATA シート NO.131に準拠)で残存する基質および生成したもう一方の芳香族アミノ酸の光学活性体を定量した。結果を表1乃至3に示す。なお、表中、基質量とは反応終了後の反応液で検出された基質の量、すなわちD−トリプトファンを基質とした場合には反応終了後に残存するD−トリプトファンの量を表し、一方、反応物量とは反応終了後の反応液に存在する生成したもう一方の芳香族アミノ酸の光学異性体の量、すなわちD−トリプトファンを基質とした場合には反応終了後に存在するL−トリプトファンの量を表しており、夫々、反応溶液10mlあたりに換算して示している。また、転換率とは、消費された基質のうちどの程度がもう一方の光学異性体に変換されたかを示す。アミノ酸名は3文字表記。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
実施例2:バチルス・セレウス WU − STR7およびバチルス・セレウス ATCC14579(タイプ・ストレイン)の休止菌体による芳香族アミノ酸のラセミ化の検証
(1)バチルス・セレウス WU−STR7およびバチルス・セレウス ATCC14579の培養:
STR−7およびバチルス・セレウス ATCC14579(以下、「Type」と略す。)を500ml容のバッフル付エルレンマイヤー・フラスコを用いて培養した。培地は実施例1と同様のLG培地の100mlであった。植菌は、前記LB培地のプレート上で生育した菌体を、3mlのLB培地を含む試験管に植菌し、5時間、37℃、120rpmの条件で前培養を行い、次いでこの培養液1mlを上記500ml容バッフル付エルレンマイヤー・フラスコ内の培地に接種することにより行なった。37℃、150rpmの振とう下、19時間培養した。培養終了時のSTR−7のO.D.660は2.737、TypeのO.D.660は2.515であった。
【0048】
(2)休止菌体の調製:
実施例1と同様の条件で遠心分離して上記の培養物からSTR−7およびTypeの菌体を、各々、集菌した。20mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)で洗菌後、同緩衝液に対してO.D.660が8.0となるように洗菌した菌体を懸濁し、休止菌体の懸濁液を調製した。
【0049】
(3)STR−7およびTypeの休止菌体による芳香族アミノ酸のラセミ化:上記休止菌体の懸濁液(3.5ml)に対し、出発原料としての芳香族アミノ酸の一の光学異性体を含む基質溶液(1.5ml)を加えた。実施例1のビタミン・ミクスチャーおよび金属溶液は用いなかった。反応は全て、37℃、140rpmの振とう下、1日間行わせた。なお、用いた基質は、25mMのD−またはL−のトリプトファン若しくはフェニルアラニン、0.5mMのD−またはL−チロシンであった。反応終了後、実施例1と同様にしてHPLCにより生成したもう一方の芳香族アミノ酸の光学異性体を定量した。結果を表4に示す。なお、表中、生成物量は、反応終了後の反応液に存在する、生成したもう一方の芳香族アミノ酸の光学異性体、すなわち基質がD−トリプトファンであればL−トリプトファンの量を、反応液5mlあたりに換算して示している。アミノ酸は3文字表記。
【0050】
【表4】
【0051】
以上の実施例1および実施例2の結果から、生物学的材料により芳香族アミノ酸のラセミ化が達成し得ることが示された。
【0052】
実施例3:他のバチルス属細菌による芳香族アミノ酸のラセミ化
バチルス属の他の菌株について、その芳香族アミノ酸のラセミ化能力を、アガーピース法を用いて評価した。すなわち、表5に示す下層培地にL−トリプトファン要求性大腸菌(CAG12202)の懸濁液を添加し、また、表6に示すD−トリプトファン含有の上層培地上で被検バチルス菌株を培養した。被検バチルス菌株は、バチルス・セレウス WU−STR7、バチルス・フシフォルミス WU−ATR−9、バチルス・セレウス WU−STR−13、バチルス・セレウス ATCC14579、バチルス・ズブチリス IFO3336であった。また、対照として大腸菌(Escherichia coli)JM109を用いた。培養は37℃で行なった。
【0053】
【表5】
【0054】
【表6】
【0055】
本試験では、上層の細菌が本発明のラセミ化能力を有する場合、上層アガ−ピス中のD−トリプトファンがL−トリプトファンに変換される。次いで、当該上層アガ−ピースにおいて生成し下層に拡散したL−トリプトファンを利用して、該アガ−ピース直下の下層L−トリプトファン要求性大腸菌の生育が可能となり、当該箇所にL−トリプトファン要求性大腸菌の生育によるサテライトが形成される。当該サテライトの形成結果を表7に示す。
【0056】
【表7】
【0057】
上記の結果から、バチルス属の細菌において広汎に芳香族アミノ酸のラセミ化活性が認められることがわかる。
【0058】
実施例4:D−トリプトファンの生産
本実施例では、L−トリプトファンを原料として、本発明の生物学的材料によるラセミ化方法を利用し、更にトリプトファナーゼを用いるD−トリプトファンの生産について検証した。すなわち、実施例1で得られた、L−トリプトファンを基質とする休止菌体および粗精製酵素による反応終了後の溶液(D−トリプトファンが生成)に、L−トリプトファナーゼ活性を有する大腸菌JM109の休止菌体を接触させ、残存するL−トリプトファンをインドールに分解して、D−トリプトファンのみを得た。
【0059】
大腸菌JM109を50mlのLB培地を用いて培養した後、4℃、5000rpmで10分間遠心分離して集菌した。集菌した菌体を0.15Mトリス塩酸緩衝液(pH7.6)で2回洗菌し、当該菌体を同緩衝液の50mlに懸濁して休止菌体の懸濁液を得た(O.D.660=4.95)。当該休止菌体懸濁液(8ml)に実施例1で得られた反応液(2ml)とビタミン・ミクスチャー100μlおよび金属溶液100μlを加えた。なお、実施例1で得られた反応液とは、上記のとおり、L−トリプトファンを基質としてSTR−7の休止菌体および粗精製酵素を反応させて得られた溶液のことであり、該反応により生成したD−トリプトファンを含んでいたものである。37℃、120rpmの振とう下、1日間反応を進行させた後、5000rpm、10分間遠心分離して上清を回収し実施例1と同様のHPLCによりL−およびD−トリプトファンの量を測定した。結果を表8に示す。
【0060】
【表8】
【0061】
【発明の効果】
本発明の方法を用いることにより、芳香族アミノ酸の光学異性体を効率よくラセミ化して、他の芳香族アミノ酸の光学異性体を製造することができる。そして、得られた芳香族アミノ酸の光学活性体は、医薬中間体や飼料または食品添加物として利用可能である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、芳香族アミノ酸のラセミ化方法に関する。より詳細には、生物学的材料、特に微生物由来の生物学的材料による芳香族アミノ酸のラセミ化方法に関する。更に、本発明は、当該ラセミ化方法を利用した芳香族アミノ酸の光学活性体の製造方法に関し、また当該ラセミ化活性を有する微生物および酵素に関する。
【0002】
【従来の技術】
アミノ酸の光学活性体は医薬中間体や飼料添加物、食品添加物などの分野で幅広く用いられる極めて有用な化合物である。例えば、自然界に存在するアミノ酸の殆どがL−アミノ酸であり、生命体を維持している蛋白質はL−アミノ酸から構成される。一方、L−アミノ酸の光学異性体であるD−アミノ酸が、その特性から医薬中間体として重要であることは上記のとおりである。
【0003】
したがって、このように重要なアミノ酸の光学活性体を効率よく、安価、大量に、且つ高い光学純度で製造することは極めて意義深い。
【0004】
アミノ酸の光学活性体の製造のための様々な方法が知られている。例えば、所望のアミノ酸の光学異性体(例えば、D−α−アミノ酸)を得るために、当該光学異性体に対応するもう一方のアミノ酸の光学異性体(L−α−アミノ酸)をラセミ化し、得られる光学異性体の混合物(D,L−α−アミノ酸)から所望の光学異性体を分離するアミノ酸の光学活性体の製造方法が一般的に行なわれている。このようなラセミ化によるアミノ酸の光学活性体の製造方法の例は特開平11−322684号公報にも記載されており、当該公報に記載の方法では、光学活性なアミノ酸を、アミノ酸を実質上溶解しない不活性溶媒中に分散させ、低級脂肪酸および脂肪族または芳香族のアルデヒドを作用させて異性化させ、溶媒から晶出するアミノ酸の光学異性体の混合物を固液分離により取得する。当該方法を利用してL−イソロイシンからD−アロイソロイシンを得る場合には、上記光学異性体の混合物から特開平11−228512号公報に記載の方法に従って、D−アロイソロイシンを光学分割する。
【0005】
アミノ酸の光学活性体を得るための生物学的材料の使用も知られている。生物学的材料、例えば微生物の培養物やその酵素を利用する方法は反応条件も温和で、効率がよく、また有害な廃棄物も発生し難いことから工業的にも優れた方法として各種の分野で多用される。ラセミ化工程を含む或いは含まない生物学的材料を使用したアミノ酸の光学活性体の製造方法は以下の公報にも記載されている。
【0006】
特開2000−350593号公報には、式:R−CH(NH2)−COOH(式中、Rは置換されていてもよいC1−C12アルキル基、置換されていてもよいC4−C8シクロアルキル基または置換されていてもよいC6〜C14アリール基を表す。)で示されるアミノ酸において、アミノ基及びカルボキシル基の両者が結合する不斉炭素原子に基づく一方の光学異性体(光学異性体I)を他方の光学異性体(光学異性体II)に変換する能力であって、当該能力がアミノトランスフェラーゼ阻害剤であるβ−クロロ−D−アラニン、β−クロロ−L−アラニンまたはガバクリンによる重大な阻害を受けない能力を有する生物学的材料を、前記一方の光学異性体(光学異性体I)に作用させることを特徴とする前記他の光学異性体(光学異性体II)の製造方法が開示されている。
【0007】
しかしながら、当該公報は、芳香族アミノ酸をもラセミ化するような能力を有する酵素の存在を示唆するものではなく、したがって、当該公報に記載の方法は、本発明の芳香族アミノ酸をもラセミ化する酵素を用いた芳香族アミノ酸の光学異性体の製造方法を何等、開示していない。
【0008】
特開平6−205668号公報には、アミノ酸の光学異性体の製造に利用できる有用な酵素であるアシルアミノ酸ラセマーゼを生産するアミコラトプシス・スピーシーズ(Amycolatopsis sp.)TS−1−60および当該微生物からのアシルアミノ酸ラセマーゼの製造法が開示されている。
【0009】
特開平6−343462号公報には、D−又はL−又はD,L−5−モノ置換ヒダントイン又はD−又はL−又はD,L−N−カルバモイル−α−アミノ酸を相応するエナンチオマー純粋なL−α−アミノ酸に変換する能力を高い特異的活性で有する微生物および当該微生物が生産する酵素を利用してD−,L−又はD,L−5−モノ置換ヒダントイン及びD−,L−又はD,L−N−カルバモイル−α−アミノ酸よりL−α−アミノ酸を製造する方法が開示されている。
【0010】
特開2001−314191号公報には、セベキア・ベニハナ(Sebekia benihana)に由来するN−アシル−アミノ酸ラセマーゼ(NAAR)によるラセミ化方法と、この方法に基づく光学活性アミノ酸の製造方法が開示されている。当該公報に記載の方法では、N−アシル−アラニン、N−アシル−アスパラギン酸、N−アシル−ロイシン、あるいはN−アシル−バリンといったアシルアミノ酸においても、これらを基質として効率的なラセミ化を触媒することができ、更に光学活性アミノ酸の製造に応用した場合には、医薬品原料などとして有用な光学活性アミノ酸を効率的に得ることができるとされる。
【0011】
最後に、特開2001−46088号公報には、上記アミコラトプシス・スピーシーズTS−1−60からのN−アセチル−アミノ酸ラセマーゼに比して、重金属イオンの活性依存性が少ない別のアミコラトプシスからのN−アセチル−アミノ酸ラセマーゼが開示されており、当該N−アセチル−アミノ酸ラセマーゼは、その重金属イオンに対する低い活性依存性の観点から、酵素の工業的な使用においてコストおよび環境面で優れるとされる。
【0012】
しかしながら、上記のとおり、これまで、トリプトファンやフェニルアラニン、チロシン等の芳香族アミノ酸自体をもラセミ化する能力を有する酵素については全く報告されておらず、医薬品合成用原料として注目されているD−トリプトファン、D−フェニルアラニン、D−チロシンの当該酵素を利用した効率的な製造方法も知られていないのである。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明は、生物学的材料を用いて、芳香族アミノ酸を限られた工程でラセミ化し、所望の芳香族アミノ酸の光学活性体を効率よく生産する方法を提供することを目的とする。特に、芳香族アミノ酸自体をも直接ラセミ化し、一の芳香族アミノ酸の光学異性体から他の光学異性体を効率よく製造する方法を提供する。殊に、アミノ酸のD体からL体への変換のみならずL体からD体への変換も可能とする方法を提供する。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、ある種の生物学的材料を用いることにより、芳香族アミノ酸が効率よくラセミ化されることを見出した。上記のとおり、トリプトファン等の芳香族アミノ酸をラセミ化する生物学的材料は知られておらず、そのような特異性を有する当該生物学的材料の発見は驚嘆に値する。したがって、本発明の第1は、
(1)芳香族アミノ酸をラセミ化する能力を有する生物学的材料を芳香族アミノ酸に対して作用させることを特徴とする芳香族アミノ酸のラセミ化方法である。
【0015】
上記生物学的材料は、好ましくは微生物の培養液、或いは培養菌体またはそれらの処理物、例えばその休止菌体、固定化菌体、凍結乾燥菌体、菌体破砕物、菌体自己消化物、菌体の超音波処理物および菌体抽出物であり得、また当該微生物由来の粗精製若しくは精製酵素であり得る。したがって、本発明の第2は、
(2)前記生物学的材料が、微生物の培養物;微生物の休止菌体、固定化菌体、凍結乾燥菌体、菌体破砕物、菌体自己消化物、菌体の超音波処理物および菌体抽出物;並びに微生物由来の粗精製および精製酵素からなる群から選択される上記(1)の方法である。
【0016】
更に、上記微生物はバチルス(Bacillus)属であることが好ましく、特にバチルス・セレウス(Bacillus cereus)、バチルス・フシフォルミス(Bacillus fusiformis)およびバチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)種において本発明のラセミ化活性が高率で発現される。したがって、本発明の第3および第4は、
(3)前記微生物がバチルス属である上記(2)の方法、および
(4)前記バチルス属の微生物がバチルス・セレウス、バチルス・フシフォルミスおよびバチルス・ズブチリスからなる群から選択される上記(3)の方法である。
【0017】
本発明の方法においては、D体の芳香族アミノ酸のみならずL体の芳香族アミノ酸も基質として作用し、D体からL体の芳香族アミノ酸が得られるばかりでなくL体からD体の芳香族アミノ酸を得ることもできる。したがって、本発明の第5および第6は、
(5)前記芳香族アミノ酸がL体である上記(1)乃至(4)のいずれかの方法であり、
(6)前記芳香族アミノ酸がD体である上記(1)乃至(4)のいずれかの方法である。
【0018】
また、本発明の方法の基質となる芳香族アミノ酸としてはトリプトファン、フェニルアラニン、チロシンの他、その誘導体もあげられる。したがって、本発明の第7および第8は、
(7)前記芳香族アミノ酸がトリプトファン、フェニルアラニン、チロシンおよびその誘導体からなる群から選択される上記(1)乃至(6)のいずれかの方法であり、
(8)前記芳香族アミノ酸がトリプトファン、フェニルアラニンまたはチロシンである上記(7)の方法である。
【0019】
上記ラセミ化により、基質として用いた芳香族アミノ酸の一の光学異性体から所望の他の光学異性体が生成され、光学分割等のそれ自体当業者に公知の手法により当該生成した芳香族アミノ酸の光学異性体を分離および/または精製することにより所望の芳香族アミノ酸の光学活性体が製造される。したがって、本発明の第9は、
(9)上記(1)乃至(8)のいずれかのラセミ化方法を行なうことを特徴とする芳香族アミノ酸の光学活性体の製造方法である。
【0020】
本発明のラセミ化方法および芳香族アミノ酸の光学活性体の製造方法には、芳香族アミノ酸をラセミ化する活性、特に芳香族アミノ酸ラセマーゼ活性を有する微生物の培養液や培養菌体、若しくは当該菌体等の処理物、或いは当該微生物由来の酵素、すなわち芳香族アミノ酸をラセミ化する活性を有する酵素が好適に使用される。なお、上記微生物としては広汎なバチルス属の菌株を用いることができ、これに限定されないが、本発明者が新たに単離した新規菌株バチルス・セレウス WU−STR7およびバチルス・フシフォルミス WU−ATR−9も利用できる。したがって、本発明の第10乃至15は、
(10)芳香族アミノ酸のラセミ化活性を有する微生物、
(11)バチルス・セレウス WU−STR7またはバチルス・フシフォルミスWU−ATR−9である上記(10)の微生物、
(12)芳香族アミノ酸のラセミ化活性を有する酵素、
(13)微生物由来である上記(12)の酵素、
(14)前記微生物がバチルス属である上記(13)に記載の酵素、および
(15)前記バチルス属の微生物がバチルス・セレウス、バチルス・フシフォルミスおよびバチルス・ズブチリスからなる群から選択される上記(14)の酵素である。
【0021】
本発明の生物学的材料、特に微生物の培養菌体等やその処理物或いは酵素を用いることにより芳香族アミノ酸の一の光学異性体を限られた工程で効率よくラセミ化して、他の芳香族アミノ酸の光学異性体を製造することができる。そして、得られた芳香族アミノ酸の光学活性体は、医薬中間体や飼料または食品添加物として利用可能である。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明では、芳香族アミノ酸をラセミ化する能力を有する生物学的材料を用いて、芳香族アミノ酸をラセミ化する方法が提供される。ここで、本明細書にいう芳香族アミノ酸とは、一般式:R1−CH(NH2)−COOHにおいて、置換基R1が芳香族性またはヘテロ芳香族性の基を有する基であるαアミノ酸のことであり、例えば、該R1は、任意に置換されたフェニル、ヒドロキシフェニル、ナフチルまたはインドリルで置換されたC1−4アルキルであり得る。当該フェニル、ヒドロキシフェニル、ナフチルまたはインドリルの置換基の例としてはC1− 4アルキル、C1− 4ハロゲン化アルキル基、C1− 4ヒドロキシアルキル基、C1− 4アルコキシ基、カルボキシル基、アミノ基、シアノ基、ハロゲン原子等があげられる。したがって、発明の芳香族アミノ酸の例には、天然界に一般的に存在するトリプトファン、フェニルアラニン、チロシンの他、その誘導体、例えばフェニルグリシン、p−クロロフェニルアラニン、p−フルオロフェニルアラニン、ナフチルグリシン、ナフチルアラニン等が含まれ、好ましくはトリプトファン、フェニルアラニンおよびチロシンである。
【0023】
また、上記の定義から明らかなように、本発明の芳香族アミノ酸は、上記一般式においてアミノ基およびカルボキシル基がともに結合するα位の不斉炭素に基づきD体およびL体の光学異性体を生ずる。したがって、本明細書にいう芳香族アミノ酸の光学活性体とは実質的な光学純度を有する一般的なL体またはD体の芳香族アミノ酸を意図する。また、本明細書にいう芳香族アミノ酸のラセミ化とは、芳香族アミノ酸の光学活性体の一部がその対掌体に変化することにより旋光度を減少させることをいう。
【0024】
また、上記の定義から明らかなように、本発明の芳香族アミノ酸をラセミ化する能力を有する生物学的材料とは、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファン等に代表される芳香族アミノ酸の一の光学異性体を他の光学異性体に変換する能力を有する生物から得られる材料である。当該能力の評価は、例えばトリプトファン等の特定の芳香族アミノ酸の光学異性体(例えば、L−トリプトファン)に被検生物の培養物等を適当な時間接触させ、生成する他の光学異性体(D−トリプトファン)の存在またはその量を同定することによりなされ得る。当該評価方法の一例では、約3.5ml程度の被検生物学的材料を含む溶液に25mM程度のL−トリプトファンを含む溶液の約1.5mlを混合し、該混合物を140rpmで振とう下、37℃で1日間インキュベートした後に生成したD−トリプトファンをHPLCにより測定する。
【0025】
微生物、特にバチルス属の細菌において上記のラセミ化能力が広汎に認められる。バチルス属細菌とは内性胞子を形成するグラム陽性(フシフォルミスでは不定)桿菌で好気性または通性嫌気性の従属栄養細菌である。当該バチルス属の細菌のうちバチルス・セレウス、バチルス・フシフォルミスおよびバチルス・ズブチリスが、その培養も容易で比較的速い生育が得られるので好適に用いられる。特に、上記バチルス属の細菌の具体例としては、バチルス・セレウス WU−STR7、バチルス・セレウス ATCC14579、バチルス・フシフォルミスWU−ATR−9およびバチルス・ズブチリス IFO3336をあげることができる。
【0026】
バチルス・セレウス WU−STR7は、本発明の芳香族アミノ酸をラセミ化する能力を有する細菌として本発明者等が単離した新規の菌株であり、該菌株は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターにFERM P−18678として寄託されている。
【0027】
また、バチルス・フシフォルミス WU−ATR−9も本発明者等が単離した新規の菌株であり、該菌株においても芳香族アミノ酸をラセミ化する高い能力が認められている。該菌株は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターにFERM P−18858として寄託されている。
【0028】
バチルス・セレウス ATCC14579およびバチルス・ズブチリス IFO3336はこの種の菌株のタイプ・ストレインであり、これらの菌株は、各々、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションや財団法人発酵研究所から入手できる。なお、これらのタイプ・ストレインにおいて芳香族アミノ酸のラセミ化能力が認められる事実は、驚くべきことではあるが、従来全く報告のなかったような本発明の新たなタイプのラセミ化活性が、バチルス属の菌株において広範囲に発現されていることを示している。
【0029】
また、上記のような天然に存在する菌株の他、遺伝子組換え微生物も使用可能である。例えば、本発明の芳香族アミノ酸のラセミ化活性を有する酵素をコードする遺伝子により形質転換され、当該遺伝子を発現するような大腸菌等も、当然に使用可能である。
【0030】
本発明の生物学的材料は、好ましくは上記の微生物から得ることができる。すなわち、該生物学的材料は、上記の微生物の培養液/培養菌体または培養菌体処理物、例えば、休止菌体、固定化菌体、凍結乾燥菌体、菌体破砕物、菌体自己消化物、菌体の超音波処理物および菌体抽出物である。
【0031】
当該微生物の培養菌体等を得るためには、当業者に公知のいかなる方法を用いても差し支えがない。バチルス属の細菌の培養液/菌体を得る場合には、ジャー・ファーンターやバッフル付エルレンマイヤー・フラスコ、坂口フラスコ等に収容したバチルス属の生育に好適な培地に当該バチルス属の細菌を植菌し、十分な通気および/または攪拌下で20乃至37℃で培養すればよい。好ましい培地としてはLG培地、すなわち、バクト・トリプトンを1.0%(w/v)、バクト・イースト・エキストラクトを0.5%(w/v)、塩化ナトリウムを0.5%(w/v)および別途滅菌したグルコースを終濃度で0.5%(w/v)含む培地(pH無調整)があげられる。植菌に用いる細菌は、場合によっては同様の培地でプレ・インキュベーションした当該菌の培養液からなる種母の形としてもよく、また当該細菌が生育するスラントから白金耳等で直接に植菌してもよい。バッフル付500ml容のエルレンマイヤー・フラスコを用いる培養の例では、当該フラスコに100mlの滅菌処理された上記LG培地を収容し、該培地に本発明の細菌を植菌した後、150rpmで振とう下、37℃で培養する。培養は、典型的には19時間程度行なわれるが、その具体的な終点は培養液のO.D.660を測定することによって決定することもでき、例えば、O.D.660が2以上になる点を目安に培養を終了してもよく、また場合によってはそれ以上のO.D.660、例えば14程度の値を示すまで継続してもよい。かくして得られた培養液は、そのままで本発明の微生物の培養物である生物学的材料となり得、また、当該培養液から培養菌体と上清を分離し、そのいずれをも本発明の生物学的材料となし得る。
【0032】
また、上記培養菌体の処理物を得る際にも当業者に公知のいかなる方法を用いて差し支えない。当該処理物としての休止菌体を得るためには、例えば上記バッフル付500ml容のエルレンマイヤー・フラスコでの培養物を遠心分離(4℃、5000rpm、10分間)してその培養菌体を回収し、例えば20mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)を用いて洗菌すればよく、得られた休止菌体は−70℃前後で保存可能である。使用に際しては当該菌体を、上記洗菌に用いた緩衝液やトリス塩酸(Tris−HCl)緩衝液に所望の濃度で懸濁させて用いてもよい。
【0033】
微生物の固定化菌体は、例えば上記のようにして回収した休止菌体をシリカゲル等の無機担体やDEAE−セルロースなどの樹脂に吸着および/または結合させて、或いは該休止菌体をカラギーナンやアルギン酸ゲルに封入させて調製できる、当該方法は当業者に公知である。
【0034】
また、上記の菌体は、定法により凍結乾燥してもよく或いは適切な方法で破砕してもよい。或いは、上記微生物の培養を長時間継続して、当該菌体の自己消化産物を得ることもできる。更には、上記の休止菌体を適切な緩衝液に懸濁した後、超音波破砕してその内容物を溶出させてもよい。これらの方法もまた当業者に公知である。
【0035】
本発明の生物学的材料は、好適には上記微生物から得られた粗精製酵素、或いは精製した酵素であり得る。当該酵素は本発明の芳香族アミノ酸をラセミ化する活性、好ましくはラセマーゼ活性を有する。好ましい酵素はバチルス属の細菌、特にバチルス・セレウス、バチルス・フシフォルミスおよびバチルス・ズブチリスより得られる。粗精製酵素の形で用いる場合、当該酵素は上記バチルス属の細菌の菌体を超音波処理などにより破砕した超音波処理物の遠心分離後の上清としても使用可能であるが、更に付加的な精製工程によりその精製度を高めてもよい。当該精製工程としては、例えば、硫酸アンモニウムによる塩析、溶媒沈殿、等電点沈殿、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィーおよび電気泳動をあげることができる。これらの方法の単独またはこれらを適当に組み合わせて、粗精製酵素或いは精製酵素を得ることができる。なお、当該酵素を適当な担体に固定化しバイオリアクターとして使用することも当然に可能である。
【0036】
本発明の方法では、上記の生物学的材料が芳香族アミノ酸自体に直接に作用してこれをラセミ化することも可能である。すなわち、本発明の1態様では、簡便に、出発原料となる芳香族アミノ酸の一の光学異性体に上記の生物学的材料を接触させ、これらを適切な条件下で適当な時間インキュベートすればよく、そのようにして反応を進行させることにより目的となる他の光学異性体が生成される。たとえば、D−トリプトファンを得る場合には、上記生物学的材料をL−トリプトファンと接触させ、また、L−トリプトファンを得る場合には同様の生物学的材料をD−トリプトファンと接触させてインキュベートすればよい。
【0037】
当該インキュベートは、好適には各種の緩衝液中で行なわれる。リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液を例示できるがこれに限定されない。0.15Mトリス塩酸緩衝液(pH7.6)や20mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)が好ましい。また当該緩衝液には、場合により各種補酵素や微量元素、界面活性剤や安定剤などを添加してもよい。出発原料、すなわち基質としての芳香族アミノ酸の一の光学異性体の量は、目的とするもう一方の芳香族アミノ酸の光学異性体の収率や反応速度、反応条件などにより適宜加減して設定できるが、一般的に反応溶液全体に対して30%(w/v)以下が好ましい。しかしながら、0.002%(w/v)でも十分に本発明のラセミ化活性を検出することができる。用いる生物学的材料の量も、当該生物学的材料の性状や性質、基質として用いる芳香族アミノ酸や生成する芳香族アミノ酸の光学異性体の性質、反応の条件や目的とする収率により適宜変更することができる。ラセミ化の反応条件も同様に適宜変更することができるが、好ましくは上記の芳香族アミノ酸および本発明の生物学的材料を含む緩衝液を静置或いは50乃至200rpmでの振とう下、20乃至37℃で、数時間〜1週間程度、インキュベートする。また、適切な間隔を置いて採取したサンプル中に存在する目的の光学異性体をHPLC等により定量してインキュベートの終点を決定してもよい。当該インキュベートの具体的な例の1つにおいては、バチルス属細菌の休止菌体を、O.D.660が8.0となるように20mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)に対して懸濁し、当該懸濁液の3.5mlに対して25mMのL−若しくはD−トリプトファン、またはL−若しくはD−フェニルアラニン、或いは0.5mMのL−若しくはD−チロシン溶液の1.5mlを加え、140rpmで振とう下、37℃で1日間反応を行なう。当該インキュベート後、上記反応溶液中に目的とするもう一方の芳香族アミノ酸の光学異性体生成が観察される。
【0038】
上記のように反応して芳香族アミノ酸の一の光学異性体から生成した他の光学異性体は、当業者に公知の光学分割方法を用いて容易に分離することができる。例えば、「アミノ酸の光学分割方法」と題する特開平6−306030号公報に記載の方法が使用できる。また、酵素を利用して、反応物中に残存する出発物質の芳香族アミノ酸の一の光学異性体を特異的に分解し、目的とする芳香族アミノ酸の光学異性体だけを得ることもできる。例えば、L−トリプトファンを出発原料として本発明の生物学的材料を接触させて反応を行い、得られたD−トリプトファンとL−トリプトファンの混合物から、L−トリプトファナーゼによりL−トリプトファンのみを選択的に分解することもできる。
【0039】
かくして、本発明の芳香族アミノ酸をラセミ化する能力を有する生物学的材料を利用した芳香族アミノ酸の光学活性体の製造が達成される。
【0040】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、実施例は本発明を何ら限定するものではない。
【0041】
【実施例】
実施例1:バチルス・セレウス WU − STR7由来の休止菌体および粗精製酵素による芳香族アミノ酸のラセミ化
(1)バチルス・セレウス WU−STR7の培養:
バチルス・セレウス WU−STR7(以下、「STR−7」と略す。)を2Lのジャー・ファーメンターにより培養した。培地はLG培地(バクト・トリプトン1.0%、バクト・イースト。エキストラクト0.5%、塩化ナトリウム0.5%、別途滅菌したグルコースを終濃度で0.5%、但し濃度は全て重量/容量でpH無調整)であった。上記ジャー・ファーメンターに1Lの培地を投入しオートクレーブ後、STR−7を植菌した。植菌に用いた種母は、STR−7を前記培地内で16時間、37℃、150rpmの振とう条件で培養した培養物の50mlであった。ジャー・ファーメンターでの培養終了時のO.D.660は14.7であった。
【0042】
(2)休止菌体および粗精製酵素の調製:
上記ジャー・ファーメンターで培養して得られた培養物を遠心分離(4℃、5000rpm、10分間)して菌体を集菌した。当該菌体は使用時まで−70℃で保存した。該菌体の250mlを0.15MのTris−HCl緩衝液(pH7.6)で2回洗菌し、0.15MのTris−HCl緩衝液(pH7.6)の40mlに懸濁した。そのうちの20mlを休止菌体の懸濁液とし、また残りの20mlは粗精製酵素の調製のために用いた。すなわち、当該残りの20mlの菌体懸濁液を市販の超音波破砕機により処理して懸濁液中の菌体を破砕した。該破砕液を遠心分離(5000rpm、10分間)した後、その上清を粗精製酵素溶液とした。
【0043】
(3)STR−7由来の休止菌体および粗精製酵素による芳香族アミノ酸のラセミ化:
トリプトファンに対する休止菌体による反応では、上記休止菌体の懸濁液(7ml)に対し、出発原料としての芳香族アミノ酸の一の光学異性体を含む基質溶液(3ml)、ビタミン・ミクスチャー(100μl、脱イオン水100ml中にチアミン:0.2mg、ビオチン:0.2mg、葉酸:0.2mg、イノシトール:0.2mg、ニコチン酸:0.5mg、パントテン酸:0.5mg、ピリドキシン:0.25mg、リボフラビン:0.2mgを含む)および金属溶液(100μl、脱イオン水100ml中にFeCl2・4H2O:1.5g、CoCl2・6H2O:0.19g、MnCl2・4H2O:0.1g、ZnCl2:0.07g、H3BO3:0.062g、Na2MoO4・4H2O:0.036g、NiCl2・6H2O:0.024g、CuCl2・2H2O:0.017gを含む)を添加した。粗精製酵素による反応では、休止菌体の懸濁液にかえて上記の粗精製酵素溶液(7ml)を用いた。ただし、フェニルアラニンおよびチロシンに対する反応に用いた休止菌体の懸濁液および粗精製酵素溶液は、上記(2)において、洗菌した菌体を80mlの0.15MのTris−HCl緩衝液(pH7.6)に懸濁させて調製した。反応の基質にはD−またはL−のトリプトファン、フェニルアラニン或いはチロシンを用いた。すなわち、上記の基質溶液(3ml)に対して25mMとなるようにD−或いはL−のトリプトファン、フェニルアラニンまたはチロシンを、夫々、溶解させた。ただし、D−およびL−チロシンについてはその全量が溶解しなかったため、そのまま基質として用いた。反応はすべて、37℃、120rpmの振とう下、1日間行なわせた。反応終了後、遠心分離(5000rpm、10分間)にて反応液の上清を回収し、該上清をサンプルとしてHPLC(カラム:WH−C18A、移動相:(A)CH3CN/MeOH/50mM KH2PO4 pH2.7=5/5/90、(B)CH3CN/MeOH/50mM KH2PO4 pH2.7=35/5/60、(C)CH3CN/THF/H2O=60/20/20、流速:0.5ml/min、検出:340nm、インジェクション:10μl:HITACHI TECHNICAL DATA シート NO.131に準拠)で残存する基質および生成したもう一方の芳香族アミノ酸の光学活性体を定量した。結果を表1乃至3に示す。なお、表中、基質量とは反応終了後の反応液で検出された基質の量、すなわちD−トリプトファンを基質とした場合には反応終了後に残存するD−トリプトファンの量を表し、一方、反応物量とは反応終了後の反応液に存在する生成したもう一方の芳香族アミノ酸の光学異性体の量、すなわちD−トリプトファンを基質とした場合には反応終了後に存在するL−トリプトファンの量を表しており、夫々、反応溶液10mlあたりに換算して示している。また、転換率とは、消費された基質のうちどの程度がもう一方の光学異性体に変換されたかを示す。アミノ酸名は3文字表記。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
実施例2:バチルス・セレウス WU − STR7およびバチルス・セレウス ATCC14579(タイプ・ストレイン)の休止菌体による芳香族アミノ酸のラセミ化の検証
(1)バチルス・セレウス WU−STR7およびバチルス・セレウス ATCC14579の培養:
STR−7およびバチルス・セレウス ATCC14579(以下、「Type」と略す。)を500ml容のバッフル付エルレンマイヤー・フラスコを用いて培養した。培地は実施例1と同様のLG培地の100mlであった。植菌は、前記LB培地のプレート上で生育した菌体を、3mlのLB培地を含む試験管に植菌し、5時間、37℃、120rpmの条件で前培養を行い、次いでこの培養液1mlを上記500ml容バッフル付エルレンマイヤー・フラスコ内の培地に接種することにより行なった。37℃、150rpmの振とう下、19時間培養した。培養終了時のSTR−7のO.D.660は2.737、TypeのO.D.660は2.515であった。
【0048】
(2)休止菌体の調製:
実施例1と同様の条件で遠心分離して上記の培養物からSTR−7およびTypeの菌体を、各々、集菌した。20mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)で洗菌後、同緩衝液に対してO.D.660が8.0となるように洗菌した菌体を懸濁し、休止菌体の懸濁液を調製した。
【0049】
(3)STR−7およびTypeの休止菌体による芳香族アミノ酸のラセミ化:上記休止菌体の懸濁液(3.5ml)に対し、出発原料としての芳香族アミノ酸の一の光学異性体を含む基質溶液(1.5ml)を加えた。実施例1のビタミン・ミクスチャーおよび金属溶液は用いなかった。反応は全て、37℃、140rpmの振とう下、1日間行わせた。なお、用いた基質は、25mMのD−またはL−のトリプトファン若しくはフェニルアラニン、0.5mMのD−またはL−チロシンであった。反応終了後、実施例1と同様にしてHPLCにより生成したもう一方の芳香族アミノ酸の光学異性体を定量した。結果を表4に示す。なお、表中、生成物量は、反応終了後の反応液に存在する、生成したもう一方の芳香族アミノ酸の光学異性体、すなわち基質がD−トリプトファンであればL−トリプトファンの量を、反応液5mlあたりに換算して示している。アミノ酸は3文字表記。
【0050】
【表4】
【0051】
以上の実施例1および実施例2の結果から、生物学的材料により芳香族アミノ酸のラセミ化が達成し得ることが示された。
【0052】
実施例3:他のバチルス属細菌による芳香族アミノ酸のラセミ化
バチルス属の他の菌株について、その芳香族アミノ酸のラセミ化能力を、アガーピース法を用いて評価した。すなわち、表5に示す下層培地にL−トリプトファン要求性大腸菌(CAG12202)の懸濁液を添加し、また、表6に示すD−トリプトファン含有の上層培地上で被検バチルス菌株を培養した。被検バチルス菌株は、バチルス・セレウス WU−STR7、バチルス・フシフォルミス WU−ATR−9、バチルス・セレウス WU−STR−13、バチルス・セレウス ATCC14579、バチルス・ズブチリス IFO3336であった。また、対照として大腸菌(Escherichia coli)JM109を用いた。培養は37℃で行なった。
【0053】
【表5】
【0054】
【表6】
【0055】
本試験では、上層の細菌が本発明のラセミ化能力を有する場合、上層アガ−ピス中のD−トリプトファンがL−トリプトファンに変換される。次いで、当該上層アガ−ピースにおいて生成し下層に拡散したL−トリプトファンを利用して、該アガ−ピース直下の下層L−トリプトファン要求性大腸菌の生育が可能となり、当該箇所にL−トリプトファン要求性大腸菌の生育によるサテライトが形成される。当該サテライトの形成結果を表7に示す。
【0056】
【表7】
【0057】
上記の結果から、バチルス属の細菌において広汎に芳香族アミノ酸のラセミ化活性が認められることがわかる。
【0058】
実施例4:D−トリプトファンの生産
本実施例では、L−トリプトファンを原料として、本発明の生物学的材料によるラセミ化方法を利用し、更にトリプトファナーゼを用いるD−トリプトファンの生産について検証した。すなわち、実施例1で得られた、L−トリプトファンを基質とする休止菌体および粗精製酵素による反応終了後の溶液(D−トリプトファンが生成)に、L−トリプトファナーゼ活性を有する大腸菌JM109の休止菌体を接触させ、残存するL−トリプトファンをインドールに分解して、D−トリプトファンのみを得た。
【0059】
大腸菌JM109を50mlのLB培地を用いて培養した後、4℃、5000rpmで10分間遠心分離して集菌した。集菌した菌体を0.15Mトリス塩酸緩衝液(pH7.6)で2回洗菌し、当該菌体を同緩衝液の50mlに懸濁して休止菌体の懸濁液を得た(O.D.660=4.95)。当該休止菌体懸濁液(8ml)に実施例1で得られた反応液(2ml)とビタミン・ミクスチャー100μlおよび金属溶液100μlを加えた。なお、実施例1で得られた反応液とは、上記のとおり、L−トリプトファンを基質としてSTR−7の休止菌体および粗精製酵素を反応させて得られた溶液のことであり、該反応により生成したD−トリプトファンを含んでいたものである。37℃、120rpmの振とう下、1日間反応を進行させた後、5000rpm、10分間遠心分離して上清を回収し実施例1と同様のHPLCによりL−およびD−トリプトファンの量を測定した。結果を表8に示す。
【0060】
【表8】
【0061】
【発明の効果】
本発明の方法を用いることにより、芳香族アミノ酸の光学異性体を効率よくラセミ化して、他の芳香族アミノ酸の光学異性体を製造することができる。そして、得られた芳香族アミノ酸の光学活性体は、医薬中間体や飼料または食品添加物として利用可能である。
Claims (15)
- 芳香族アミノ酸をラセミ化する能力を有する生物学的材料を芳香族アミノ酸に対して作用させることを特徴とする芳香族アミノ酸のラセミ化方法。
- 前記生物学的材料が、微生物の培養液;微生物の培養菌体;微生物の休止菌体、固定化菌体、凍結乾燥菌体、菌体破砕物、菌体自己消化物、菌体の超音波処理物および菌体抽出物;並びに微生物由来の粗精製および精製酵素からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
- 前記微生物がバチルス属である請求項2に記載の方法。
- 前記バチルス属の微生物がバチルス・セレウス、バチルス・フシフォルミスおよびバチルス・ズブチリスからなる群から選択される請求項3に記載の方法。
- 前記芳香族アミノ酸がL体である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
- 前記芳香族アミノ酸がD体である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
- 前記芳香族アミノ酸がトリプトファン、フェニルアラニン、チロシンおよびその誘導体からなる群から選択される請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
- 前記芳香族アミノ酸がフェニルアラニン、チロシンまたはトリプトファンである請求項7に記載の方法。
- 請求項1乃至8のいずれかに記載のラセミ化方法を行なうことを特徴とする芳香族アミノ酸の光学活性体の製造方法。
- 芳香族アミノ酸のラセミ化活性を有する微生物。
- バチルス・セレウス WU−STR7またはバチルス・フシフォルミス WU−ATR−9である請求項10に記載の微生物。
- 芳香族アミノ酸のラセミ化活性を有する酵素。
- 微生物由来である請求項12に記載の酵素。
- 前記微生物がバチルス属である請求項13に記載の酵素。
- 前記バチルス属の微生物がバチルス・セレウス、バチルス・フシフォルミスおよびバチルス・ズブチリスからなる群から選択される請求項14に記載の酵素。
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