JP2007185132A - α−アミノ酸−ω−アミド化合物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】α−アミノ酸−ω−アミド化合物を安全、簡便且つ効率的に製造するための新規な方法を提供する。
【解決手段】α−アミノ酸−ω−アミド化合物の製造方法であって、α−アミノ酸−ω−エステル化合物とアミン化合物及び/又はその塩その塩とを、α−アミノ酸−ω−アミド化合物を加水分解する活性を有する酵素、微生物、微生物培養液又は微生物処理物の存在下で反応させることを特徴とする前記製造方法。
【選択図】なし
【解決手段】α−アミノ酸−ω−アミド化合物の製造方法であって、α−アミノ酸−ω−エステル化合物とアミン化合物及び/又はその塩その塩とを、α−アミノ酸−ω−アミド化合物を加水分解する活性を有する酵素、微生物、微生物培養液又は微生物処理物の存在下で反応させることを特徴とする前記製造方法。
【選択図】なし
Description
本発明は、酵素を用いることによるα−アミノ酸−ω−アミド化合物の新規な製造方法に関する。
テアニンは茶の旨味成分であり、カフェイン興奮抑制作用、血圧降下作用、リラックス作用、脳機能改善作用等を有することが知られている。テアニンと同様に、関連するα−アミノ酸−ω−アミド化合物は有用な生理活性を有する物質として興味がもたれており、食品分野や医薬品分野等への応用が試みられている。
テアニン等のα−アミノ酸−ω−アミド化合物の製造方法としては、茶葉から抽出する方法、化学合成により製造する方法及び微生物の作用により製造する方法が知られている。
茶葉から抽出する方法は安全性の面からは有利であるが、茶葉中に含まれるテアニン類の含有量は微量であり、また他成分との分離も困難であるため効率的に製造することができない。
化学合成による方法としては、例えば、特公昭39−23392号、特開平5−70419号公報等には工業的規模での製造法が開示されているが、多段階の煩雑な工程を要するため全体としての収率も低くなることが問題であった。また、毒性の高い薬品を使用する場合もあり、食品添加物や医薬品原料としての用途を考慮すると、必ずしも安全とは言えない面がある。
一方、特開2002−325596号ではグルタミンシンセターゼを用いてグルタミン酸からテアニンを合成する方法が開示されている。しかしながら、グルタミンシンセターゼを用いる方法はATPを供給する必要があり、製造工程が煩雑になる。また、グルタミナーゼを使用してグルタミンからテアニンを合成する方法として、特公平7−55154号公報、特許第3210080号公報及び特開平8-89266号公報等が開示されている。しかしながら、グルタミンはグルタミン酸より高価であり、原料としてグルタミンを使用する方法ではテアニンを安価に供給することができない。
本発明は、安全且つ効率的にテアニン等のα−アミノ酸−ω−アミド化合物を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、安価なアミノ酸により簡便に調製できるα−アミノ酸−ω−エステル化合物とアミン化合物との混合物に、α−アミノ酸−ω−アミド化合物を加水分解する活性を有する酵素を作用させることにより、α−アミノ酸−ω−アミド化合物を効率的に製造できることを初めて見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)α−アミノ酸−ω−アミド化合物の製造方法であって、α−アミノ酸−ω−エステル化合物とアミン化合物及び/又はその塩その塩とを、α−アミノ酸−ω−アミド化合物を加水分解する活性を有する酵素、微生物、微生物培養液又は微生物処理物の存在下で反応させることを特徴とする前記製造方法。
(1)α−アミノ酸−ω−アミド化合物の製造方法であって、α−アミノ酸−ω−エステル化合物とアミン化合物及び/又はその塩その塩とを、α−アミノ酸−ω−アミド化合物を加水分解する活性を有する酵素、微生物、微生物培養液又は微生物処理物の存在下で反応させることを特徴とする前記製造方法。
(2)式(I):
[式中、
Rは、水素、置換若しくは無置換のC1−3アルキル基であり;
R1は、水素、置換若しくは無置換のC1−6アルキル、C2-6アルケニル基、アリール基又はアラルキル基であり;
R3及びR3’は、互いに独立して、水素又はアミノ基の保護基であり;
nは、1〜2の整数である。]
で表されるα−アミノ酸−ω−アミド化合物の製造方法であって、式(II):
[式中、
R、R1、R3、R3’及びnは請求項1に定義のとおりであり;
R2は、置換若しくは無置換のC1−6アルキル、C2-6アルケニル基、アリール基又はアラルキル基である。]
で表されるα−アミノ酸−ω−エステル化合物と、式(III):
HNR4R4’ (III)
(R4及びR4’は、互いに独立して、水素、置換若しくは無置換のC1−6アルキル、C2-6アルケニル基、アリール基又はアラルキル基である)
で表されるアミン化合物及び/又はその塩とを反応させることを特徴とする前記(1)記載の製造方法。
Rは、水素、置換若しくは無置換のC1−3アルキル基であり;
R1は、水素、置換若しくは無置換のC1−6アルキル、C2-6アルケニル基、アリール基又はアラルキル基であり;
R3及びR3’は、互いに独立して、水素又はアミノ基の保護基であり;
nは、1〜2の整数である。]
で表されるα−アミノ酸−ω−アミド化合物の製造方法であって、式(II):
R、R1、R3、R3’及びnは請求項1に定義のとおりであり;
R2は、置換若しくは無置換のC1−6アルキル、C2-6アルケニル基、アリール基又はアラルキル基である。]
で表されるα−アミノ酸−ω−エステル化合物と、式(III):
HNR4R4’ (III)
(R4及びR4’は、互いに独立して、水素、置換若しくは無置換のC1−6アルキル、C2-6アルケニル基、アリール基又はアラルキル基である)
で表されるアミン化合物及び/又はその塩とを反応させることを特徴とする前記(1)記載の製造方法。
(3)前記α−アミノ酸−ω−エステル化合物がグルタミン酸−ω−エチルエステルであり、前記アミン化合物がエチルアミン及び/又はその塩であり、そして前記α−アミノ酸−ω−アミド化合物を加水分解する活性を有する酵素がグルタミナーゼ様活性を有する酵素である前記(1)又は(2)記載の製造方法。
本発明によれば、α−アミノ酸−ω−エステル化合物とアミン化合物とを原料として用い、酵素を用いて反応させることを特徴とする、α−アミノ酸−ω−アミド化合物の新規な製造方法が提供される。本発明の方法は化学合成法と比較して安全であるだけでなく、煩雑な工程を必要とせず、簡便に且つ効率的にα−アミノ酸−ω−アミド化合物を製造することができる。
以下に本発明について説明する。
本発明で出発原料として用いられるα−アミノ酸−ω−エステル化合物とは、α−アミノ酸であって、尚且つ独立して末端エステル基を有する化合物を意味する。α−アミノ基及びα−カルボキシル基は有機合成の分野で通常用いられる公知の適当な官能基で保護されていてもよい。
本明細書で言うα−カルボキシル基の保護基としては、通常有機合成の分野で使用されるものであれば特に制限されるものではなく、例えば、置換若しくは無置換のC1−6アルキル、C2-6アルケニル基、アリール基及びアラルキル基等が挙げられる。
本明細書で言うC1−6アルキルとしては直鎖アルキル基及び分岐アルキル基のいずれでもよく、C1−3アルキル基の場合、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル等が挙げられ、C1−6アルキルとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−、iso−、sec−、tert−ブチル、n−ヘキシル基等が挙げられる。
本明細書で言うC2-6アルケニル基としては直鎖アルケニル基及び分岐アルケニル基のいずれでもよく、例えば、アリル基、メタリル基等が挙げられる。
上記C1−6アルキル及びC2−6アルケニル基は無置換でもよいが、ハロゲン、水酸基、アミノ基、ニトロ基、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基等)、アシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、ピバロイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基)、アルカンスルホニル基(例えば、メシル基)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基)等の置換基を有していてもよい。
本明細書で言うアリール基としてはフェニル基、ナフチル基及びアントラニル基等の芳香族炭化水素基が挙げられる。
本明細書で言うアラルキル基とは、上記のようなアリール基で置換されたアルキル基(好ましくは上記のようなC1−6アルキル、さらに好ましくはC1−3アルキル)のことを言い、好ましくはC7-14アラルキル基である。そのようなアラルキル基としては、例えば、ベンジル基及びフェネチル基等が挙げられる。
上記アリール基及びアラルキル基は無置換でもよいが、ハロゲン、水酸基、アミノ基、ニトロ基、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基等)、アシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、ピバロイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基)、アルカンスルホニル基(例えば、メシル基)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基)等の置換基を有していてもよい。そのような置換アリール基及びアラルキル基の具体例としては、トリル基、o−及びp−ニトロベンジル基、o−及びp−メトキシベンジル基、p−tert−ブチルベンジル基等が挙げられる。
本明細書で言うアミノ基の保護基としては、通常有機合成の分野で使用されるものであれば特に制限されるものでなく、例えば、アセチル基、ベンジル基、ベンゾイル基、tert-ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基等が挙げられる。
本発明では、α−アミノ酸−ω−エステル化合物としては、下記式(II):
[式中、R、R1、R2、R3、R3’及びnは上記定義のとおりである。
で表される化合物が好ましく、特にはR=R1=R3=R3’=Hであり、R2=Etであり、n=2であるグルタミン酸−ω−エチルエステルが好ましい。
で表される化合物が好ましく、特にはR=R1=R3=R3’=Hであり、R2=Etであり、n=2であるグルタミン酸−ω−エチルエステルが好ましい。
式(II)の化合物において、アミノ基NR3R3’及びカルボキシル基CO2R1は保護されていてもよいが、本発明の方法ではこれらの基は保護されていなくても反応は進行し、この場合、保護及び脱保護工程が不要になるので好ましい。
本発明で用いられるアミン化合物としては、α−アミノ酸−ω−エステル化合物の末端エステル基と反応してアミドを形成し得るものであれば特に限定されるものではなく、またその塩も用いることができる。このようなアミン化合物としては、例えば、アンモニア、第1級アミン及び第2級アミン並びにこれらの塩等が挙げられる。より具体的には、HNR4R4’(R4及びR4’は、互いに独立して、水素、置換若しくは無置換のC1−6アルキル、C2-6アルケニル基、アリール基又はアラルキル基である)で表される化合物又はその塩が好ましく、特にはR4=Etであり、R4’=Hであるエチルアミン又はその塩が好ましい。R4及びR4’における置換若しくは無置換のC1−6アルキル、C2-6アルケニル基、アリール基及びアラルキル基についての定義は先に述べたのと同様である。
上記アミン化合物の塩としては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩又は炭酸塩のような種々の無機又は有機酸とによる酸付加塩が挙げられる。
本発明におけるα−アミノ酸−ω−アミド化合物とは、α−アミノ酸であって、尚且つ独立して末端アミド基を有する化合物を意味する。この末端アミド基は上述のアミン化合物とカルボン酸との脱水縮合により生成し、加水分解によって元のアミン化合物とカルボン酸との1:1の混合物となる。α−アミノ基及びα−カルボキシル基は有機合成の分野で通常用いられる公知の適当な官能基で保護されていてもよい。α−アミノ酸−ω−アミド化合物の具体例としては、例えば、グルタミン、アスパラギン、テアニン及びこれらの誘導体等が挙げられる。
本明細書で言う「α−アミノ酸−ω−アミド化合物を加水分解する活性を有する酵素」とは、α−アミノ酸−ω−アミド化合物の末端アミド基の加水分解反応を触媒する活性を有する酵素を意味する。このような活性を有する酵素としては、例えば、グルタミナーゼ様活性を有する酵素が挙げられ、より具体的にはグルタミナーゼ、アスパラギナーゼ及びγ−グルタミルトランスフェラーゼ等が挙げられる。本発明の製造方法においては、用いる基質に対して最大の活性を示す酵素を適宜組み合わせて使用することが好ましく、例えば、原料がグルタミン酸−ω−エステル化合物の場合にはグルタミナーゼ等を使用するのが好ましい。
上記活性を有する酵素の由来は特に限定されるものではなく、例えばそれらの酵素を生産する動物、植物又は微生物から得たものを使用することができる。このような微生物としては、例えば、エンテロバクター(Enterobacter)属、クレブシエラ(Klebsiella)属、セラチア(Serratia)属、キサントモナス(Xanthomonas)属、アルスロバタクー(Arthrobacter)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、ミクロコッカス(Micrococcus)属、クロモバクテリウム(Chromobacterium)属、ミクロバクテリウム(Microbacterium)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、バチルス(Bacillus)属、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、トリコデルマ(Trichoderma)属、キャンディダ(Candida)属、サッカロミセス(Saccharomyces)属、ロドトルラ(Rhodotorula)属、クリプトコッカス(Cryptococcus)属、トルロプシス(Torulipsis)属、ピヒア(Picha)属、ペニシリウム(Penicillium)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、リゾプス(Rizopus)属、ムコール(Mucor)属、アクチノムコール(Actinomucor)属、ノカルディア(Nocardia)属、ストレプトミセス(Streptomyces)属、ハンゼヌラ(Hansenula)属、アクロモバクター(Achromobacter)属及びプロテウス(Proteus)属等に属する微生物が挙げられる。特には、シュードモナス・ニトロレデュセンス(Pseudomonas nitroreducens)、Pseudomonas aptata、シュードモナス・デニトリフィカンス(Pseudomonas denitrificans)、Pseudomonas citronellosis、アクロモバクター・キシロシス(Achromobacter xerosis)、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenase)、クレブシエラ・ニュモニアエ(Klebsiella pneumoniae)、セラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)及びキサントモナス・マルトフィラ(Xanthomonas maltophilia)等が好ましい。
本発明の方法においては精製酵素又は粗精製酵素のみならず、それらの酵素を含有する上記微生物、微生物培養液及び微生物処理物(例えば、微生物破砕物、超音波処理物、溶剤処理微生物、低温乾燥微生物、硫安塩析物等)をそのまま、又は固定化したものを用いてもよい。酵素は市販されているものを用いてもよく、例えば、グルタミナーゼダイワ(大和化成株式会社製)等を用いることができる。微生物は野生株又は変異株のいずれでもよく、また細胞融合又は遺伝子操作等の遺伝学的手法により誘導される組換え株であってもよい。
上記酵素は上記微生物を培養することにより容易に得られる。培養は常法に従って行うことができる。培地としては特に制限はなく、通常の炭素源、窒素源、無機イオン、更に必要に応じ有機栄養源を含む通常の培地でよい。炭素源としては、グルコ−ス、グリセリン、アミノ酸、有機酸、その他が適宜使用される。窒素源としては、アンモニアやその塩、アミノ酸等が用いられる。無機イオンとしては、マグネシウム、リン酸、カリウム、鉄、マンガン、その他が必要に応じ適宜使用される。有機栄養源としては、ビタミン、アミノ酸等、及びこれらを含有する酵母エキス、ペプトン、肉エキス、コーンスティープリカー、カゼイン分解物、その他が適宜用いられる。培養条件にも特に制限はなく、例えば、好気的条件下にて、pH5〜8、温度25〜40℃の範囲内でpH及び温度を適当に制限しつつ12〜48時間程度培養を行なえばよい。必要に応じて酵素生産の誘導基質を添加してもよい。
本発明の方法における酵素反応は、上記微生物とともに上記培養条件下で行ってもよいし、培養後回収した微生物や各種処理物を含有する適当な培養中で行ってもよい。溶媒としては、例えば、リン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム等の無機酸の緩衝液や、Tris−HCl、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等の有機酸塩の緩衝液が挙げられる。そのpHは酵素活性が失われない範囲であれば特に限定されるものではないが、通常pH7〜12であり、好ましくはpH8〜10である。また、温度は酵素活性が失われない範囲であれば特に制限されるものではないが、通常5〜80℃であり、好ましくは15〜60℃である。
基質となるα−アミノ酸−ω−エステル化合物の濃度は通常0.01〜1.0Mであり、好ましくは0.1〜0.5Mである。また、アミン化合物の濃度は通常0.1〜3.0Mであり、好ましくは1.0〜2.5Mである。酵素量は、反応液に対して通常0.1〜10U/mlであり、好ましくは0.5〜2.0U/mlである。なお、「1U」とは1分間で1μmolのL−γ−グルタミル−p−ニトロアニリドを加水分解できる酵素活性を意味する。
反応は原料のα−アミノ酸−ω−エステル化合物が消失するまで継続すればよいが、反応の進行とともに生成したα−アミノ酸−ω−アミド化合物の逆反応(加水分解)も起こるので、反応液中のα−アミノ酸−ω−アミド化合物の濃度等をモニターしながらその収量が最大になる時点で終了するのが好ましい。バッチ(回分式)反応で行う場合には、工業的な生産性の観点から反応時間は通常5時間以内とすることが好ましく、流通反応の場合では目的とするアミド化合物の収率が最大となる条件で運転することが好ましい。
反応終了後、生成したα−アミノ酸−ω−アミド化合物は公知の方法により単離精製することができ、例えば、各種のクロマトグラフィ、溶媒抽出、電気透析、減圧濃縮、膜濃縮、凍結濃縮、晶析、スプレードライ、フリーズドライ等を適宜組み合わせることにより実施できる。α−アミノ酸−ω−アミド化合物の末端アミド基は加熱によって容易に加水分解するので、熱を加えない精製方法が好ましく、例えば、電気透析とスプレードライやフリーズドライを組み合わせて精製することが好ましい。
以下に、本発明を実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
参考例1:グルタミン酸−γ−エチルエステルの合成
500mlの四つ口フラスコにグルタミン酸100gとエタノール268gを混合し、撹拌しながら硫酸71gを滴下した。70℃で2時間熟成した後、エタノールを減圧留去し、pHを7に調整してグルタミン酸−γ−エチルエステルの水溶液を得た。
500mlの四つ口フラスコにグルタミン酸100gとエタノール268gを混合し、撹拌しながら硫酸71gを滴下した。70℃で2時間熟成した後、エタノールを減圧留去し、pHを7に調整してグルタミン酸−γ−エチルエステルの水溶液を得た。
参考例2:Pseudomonas nitroreduens IFO 12694 株の培養
500ml坂口フラスコにグルタミン酸ナトリウム0.6%、酵母エキス0.1%、グルコース1.0%、KH2PO40.05%、K2HPO40.05%、MgSO4・7H2O0.07%及びEDTA−Fe0.01%を含む培養液(pH7.0)を調製し、この培地中でPseudomonas nitroreducensを30時間培養した(30℃、120rpm)。培養終了後、菌体を集菌し、100mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)で洗浄した。
500ml坂口フラスコにグルタミン酸ナトリウム0.6%、酵母エキス0.1%、グルコース1.0%、KH2PO40.05%、K2HPO40.05%、MgSO4・7H2O0.07%及びEDTA−Fe0.01%を含む培養液(pH7.0)を調製し、この培地中でPseudomonas nitroreducensを30時間培養した(30℃、120rpm)。培養終了後、菌体を集菌し、100mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)で洗浄した。
実施例1:テアニンの合成例
グルタミン酸−γ−エチルエステル(30mM)とエチルアミン塩酸塩(2100mM)とを含有するホウ酸緩衝液(Na2BO4O7−NaOH、pH9)に、参考例2で調製したPseudomonas nitroreducensの培養菌体を、OD660が20となるように懸濁し、これを37℃で30分間反応させた。反応終了後、HPLCを用いた分析により、テアニンが71mol%の収率で生成していることが確認された。
グルタミン酸−γ−エチルエステル(30mM)とエチルアミン塩酸塩(2100mM)とを含有するホウ酸緩衝液(Na2BO4O7−NaOH、pH9)に、参考例2で調製したPseudomonas nitroreducensの培養菌体を、OD660が20となるように懸濁し、これを37℃で30分間反応させた。反応終了後、HPLCを用いた分析により、テアニンが71mol%の収率で生成していることが確認された。
実施例2:テアニンの合成例
グルタミン酸−γ−エチルエステル(30mM)とエチルアミン塩酸塩(2100mM)とを含有するホウ酸緩衝液(Na2BO4O7−NaOH、pH9)に、「グルタミナーゼダイワ」(大和化成株式会社製)を、濃度が0.9U/mLとなるように添加し、これを37℃で30分間反応させた。反応終了後、HPLCを用いた分析により、テアニンが84mol%の収率で生成していることが確認された。
グルタミン酸−γ−エチルエステル(30mM)とエチルアミン塩酸塩(2100mM)とを含有するホウ酸緩衝液(Na2BO4O7−NaOH、pH9)に、「グルタミナーゼダイワ」(大和化成株式会社製)を、濃度が0.9U/mLとなるように添加し、これを37℃で30分間反応させた。反応終了後、HPLCを用いた分析により、テアニンが84mol%の収率で生成していることが確認された。
次に、テアニンを含む反応溶液(テアニンを100mM含有)を電気透析装置(株式会社アストム製:卓上電気透析装置マイクロ・アシライザーS3,AC−220−550膜)を用いて、電流が0.1A以下になるまで電気透析を行った。その結果、反応溶液中に残存している電荷を有するエチルアミン及び無機塩類は検出限界以下まで除去できることが分かった。さらに、この溶液をスプレードライ装置(東京理科製:SD−1000型)で乾燥したところ、テアニンを高純度(純度99%以上)の白色粉末として得ることができた。
本発明によるα−アミノ酸−ω−アミド化合物の製造方法は簡便に実施することができるだけでなく、さらには従来の酵素反応法と比較すると短時間で行うことができ、有用な生理活性を有するα−アミノ酸−ω−アミド化合物の効率的な製造に有用である。
Claims (3)
- α−アミノ酸−ω−アミド化合物の製造方法であって、α−アミノ酸−ω−エステル化合物とアミン化合物及び/又はその塩その塩とを、α−アミノ酸−ω−アミド化合物を加水分解する活性を有する酵素、微生物、微生物培養液又は微生物処理物の存在下で反応させることを特徴とする前記製造方法。
- 式(I):
Rは、水素、置換若しくは無置換のC1−3アルキル基であり;
R1は、水素、置換若しくは無置換のC1−6アルキル、C2-6アルケニル基、アリール基又はアラルキル基であり;
R3及びR3’は、互いに独立して、水素又はアミノ基の保護基であり;
nは、1〜2の整数である。]
で表されるα−アミノ酸−ω−アミド化合物の製造方法であって、式(II):
R、R1、R3、R3’及びnは請求項1に定義のとおりであり;
R2は、置換若しくは無置換のC1−6アルキル、C2-6アルケニル基、アリール基又はアラルキル基である。]
で表されるα−アミノ酸−ω−エステル化合物と、式(III):
HNR4R4’ (III)
(R4及びR4’は、互いに独立して、水素、置換若しくは無置換のC1−6アルキル、C2-6アルケニル基、アリール基又はアラルキル基である)
で表されるアミン化合物及び/又はその塩とを反応させることを特徴とする請求項1記載の製造方法。 - 前記α−アミノ酸−ω−エステル化合物がグルタミン酸−ω−エチルエステルであり、前記アミン化合物がエチルアミン及び/又はその塩であり、そして前記α−アミノ酸−ω−アミド化合物を加水分解する活性を有する酵素がグルタミナーゼ様活性を有する酵素である請求項1又は2記載の製造方法。
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