JP2674076B2 - D−α−アミノ酸の製造方法 - Google Patents

D−α−アミノ酸の製造方法

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JP2674076B2 JP8930488A JP8930488A JP2674076B2 JP 2674076 B2 JP2674076 B2 JP 2674076B2 JP 8930488 A JP8930488 A JP 8930488A JP 8930488 A JP8930488 A JP 8930488A JP 2674076 B2 JP2674076 B2 JP 2674076B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、D−α−アミノ酸の製造法に関する。更に
詳しくは、DL−α−アミノ酸アミドを生化学的に不斉加
水分解して、対応するD−α−アミノ酸を選択的に生成
させる方法に関するものである。
D−α−アミノ酸は、抗生物質の原料、殺菌剤の原料
および各種工業薬品の中間体として重要な物質である。
[従来の技術、発明が解決しようとする問題点 従来、DL−α−アミノ酸アミドを生化学的に不斉加水
分解して対応するD−α−アミノ酸を製造する方法とし
ては、DL−α−アミノ酸アミドにL−α−アミノ酸アミ
ドを選択的に加水分解する酵素(L−アミダーゼ)含有
物を作用させてL−α−アミノ酸を得、次いで未反応の
D−α−アミノ酸アミドを分離したのちに普通のDL−ア
ミダーゼ含有物を作用させる方法が知られている(たと
えば、特公表昭56−500319号)。しかしながら、この方
法は、D−α−アミノ酸とほぼ等量のL−α−アミノ酸
の併産が不可避であるという欠点を有している。
また、D−α−アミノ酸アミドを酵素的に加水分解し
て対応するD−α−アミノ酸を得る方法も知られている
(たとえば、特開昭60−184392号および特開昭61−9698
9号)。しかしながら、これらの方法ではDL−α−アミ
ノ酸アミドを予め分割して得られたD−α−アミノ酸ア
ミドを原料としなければならないという煩雑さがあっ
た。
このような種類の欠点を克服するために、本発明者等
は、DL−α−アミノ酸アミドを原料とし、このDL−α−
アミノ酸アミドから直接D−α−アミノ酸を工業的に有
利に製造する方法の開発を目的に検討を進め、先にロド
コッカス属に属する微生物がDL−α−アミノ酸アミドの
加水分解において、D−α−アミノ酸アミドを選択的に
加水分解する活性を有することを見出した(特願昭60−
244023)。
しかして、この方法においては、DL−α−アミノ酸ア
ミド中のD−α−アミノ酸アミドを選択的に不斉加水分
解する際に、D−α−アミノ酸アミドを優先的に不斉加
水分解する必要があるが、このときにL−α−アミノ酸
アミドの不斉加水分解が随伴し、また、反応が進みすぎ
るとD−α−アミノ酸アミドが実質的に加水分解されつ
くしたのちに、L−α−アミノ酸アミドが加水分解され
ることになり、目的物であるD−α−アミノ酸にL−α
−アミノ酸の混入が避けられず、混入したL−α−アミ
ノ酸を分離して純度を高めることは工業的には大きな困
難を伴う。従って、D−α−アミノ酸の純度を高くする
ためには、このようなL−α−アミノ酸アミドの不斉加
水分解の生起を防止することが必要となるが、このよう
なことは従来は不可能であった。
[問題点を解決するための手段、作用] 本発明者らは、DL−α−アミノ酸アミド中のD−α−
アミノ酸アミドのみを優先的に、かつ、選択的に不斉加
水分解するに際し、L−α−アミノ酸アミドの不斉加水
分解を伴わないようにする手段について鋭意研究した結
果、キレート試薬と接触させた微生物菌体またはこの菌
体処理物を使用することにより、L−α−アミノ酸アミ
ドの不斉加水分解が実質的に伴われないことを発見し、
この発見にもとずいて本発明に到達した。
すなわち、本発明は、 一般式が (ただし、式中Rは低級アルキル基、置換低級アルキル
基、フェニル基、置換フェニル基、フリル基、ピリジル
基、チアゾリル基、イミダゾリル基またはインドリル基
を示す)で示されるDL−α−アミノ酸アミドに、キレー
ト試薬と接触させたD−α−アミノ酸アミド加水分解酵
素と含有する微生物の菌体またはこの菌体の処理物を作
用させて、該DL−α−アミノ酸アミドに対応するD−α
−アミノ酸を製造することを特徴とするD−α−アミノ
酸の製造方法である。
本発明の一般式で示されるDL−α−アミノ酸アミドの
Rの低級アルキル基および置換低級アルキル基の低級ア
ルキル基のそれぞれには特に制限はないが、たとえばメ
チル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソ
ブチルおよびsec−ブチルなどのC1〜C4の直鎖または分
枝した低級アルキル基が好適である。また、置換低級ア
ルキル基および置換フェニル基のそれぞれに含まれる置
換基は、たとえば、ヒドロキシ、メトキシ、メルカプ
ト、メチルメルカプト、アミノ、グアニル、カルボキシ
ル、カルボクサミド、ハロゲン、フェニル、ヒドロキシ
フェニル、イミダゾリルおよびインドリルなどである。
本発明の一般式で示されるDL−α−アミノ酸アミドの
代表例とて、アラニンアミド(“DL−”を省略。以下同
様)、バリンアミド、ロイシンアミド、イソロイシンア
ミド、セリンアミド、スレオニンアミド、システインア
ミド、シスチンアミド、メチオニンアミド、リジンアミ
ド、アルギニンアミド、アスパラギンアミド、グルタミ
ンアミド、フェニルグリシンアミド、フェニルアラニン
アミド、チロシンアミド、トリプトファンアミドおよび
ヒスチジンアミドなどがある。
本発明に使用される微生物は、D−α−アミノ酸アミ
ドを加水分解する活性を有するものであればよく、特に
制限はなく、たとえばバチルス属(Bacillus)、バクテ
リジウム属(Bacteridium)、ミクロコッカス属(Micro
coccus)ブレビバクテリウム属(Brevibacterium)、ア
クロモバクター属(Achromobacter)、アルカリゲネス
属(Alcaligenes)、クルチア属(Kurthia)、シュード
モナス属(Pseudomonas)、ロドコッカス属(Rhodococc
us)およびセラチア属(Serratia)等のそれぞれに属す
る微生物がある。
これらのうち、実用上、ロドコッカス属に属するロド
コッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropoli
s)が特に好ましい。
ロドコッカス・エリスロポリスに属する代表例とし
て、ロドコッカス・エリスロポリス NR−23(微工研菌
寄第8937号)および同NR−28(微工研菌寄第8938号)な
どがある。これらの菌株は本発明者らが分離・同定した
新菌株である。
これら微生物を増殖させるための培養に当たって用い
られる栄養培地としては、これらの細菌が資化し得る炭
素源を少なくとも含有していることを要し、さらに適量
の窒素源および無機塩などを含有する培地であれば良
く、合成培地および天然培地のどちらでも良く、特別な
培地を必要としない。
炭素源としては、これらの細菌が資化し得る炭素源で
あれば良く特に制限はなく、たとえば糖蜜,ペプトン,
肉エキス,およびコーンスティープ・リカーなどの天然
物、ならびにグルコース,フラクトース,シュクロー
ス、ソルビトール,グリセリンおよびマンニトール等の
糖類、エタノールおよびn−プロパノールなどのアルコ
ール類、酢酸,クエン酸およびコハク酸等の有機酸等を
用いることができる。
窒素源としては、たとえばアンモニウム塩,硝酸塩な
どの無機窒素化合物および/または、たとえば尿素,コ
ーンスティープ・リカー,カゼイン,ペプトン,酵母エ
キスなどの有機窒素含有物質が用いられる。
無機成分としては、たとえばカルシウム塩,マグネシ
ウム塩,カリウム塩,ナトリウム塩,リン酸塩,マンガ
ン塩,亜鉛塩,鉄塩,銅塩,モリブデン塩,コバルト
塩,ほう素化合物およびよう素化合物が用いられる。
高い酵素活性を得るために培地へD−α−アミノ酸ア
ミドもしくはDL−α−アミノ酸アミドを添加することも
効果的である。この際に、塩化されるα−アミノ酸アミ
ドは本発明の一般式で示されるα−アミノ酸アミドであ
ればいずれでも良いが、目的とするD−α−アミノ酸に
対応するα−アミノ酸アミドを用いることが特に好まし
い。添加されるα−アミノ酸アミドの培地中での濃度
は、通常は0.1〜10重量%、好ましくは0.2〜2重量%と
される。培養条件は、使用される菌株によって異なり、
各菌株にとって生育、増殖およびD−α−アミノ酸アミ
ドの選択的加水分解酵素の生産に適した培養条件を選択
すれば良い。たとえば通常は、培養温度20〜42℃、好ま
しくは25〜40℃、pH5〜9,好ましくは6〜8である。
このようにして培養、増殖させた微生物を、D−α−
アミノ酸アミド加水分解酵素として、前記の一般式で示
されたDL−α−アミノ酸アミドに作用させるには、液体
培地に微生物を培養して得られた培養液、この培養液か
ら分離した菌体、菌体破砕物、または培養液もしくは菌
体から分離したD−α−アミノ酸アミド加水分解酵素
(D−アミダーゼ)の粗製酵素,精製酵素,酵素含有抽
出物あるいはその濃縮物および常法にしたがって固定化
された菌体または酵素(以下菌体以外のものを“菌体の
処理物”と記すこともある)等の状態で作用させる。
これらの菌体または菌体の処理物は、キレート試薬と
接触させて、DL−α−アミノ酸アミドに作用させる。
これらの菌体または菌体の処理物とキレート試薬との
接触は、これらの菌体または菌体の処理物を、キレート
試薬を水性媒体に溶解した溶液に懸濁することにより行
われる。
また、これらの菌体または菌体の処理物とキレート試
薬とを接触させる時期は(イ)不斉加水分解反応(以
下、単に加水分解反応または反応と記すこともある)開
始前(ロ)反応開始前および反応中および(ハ)反応中
などである。これらのうち、(ロ)が好ましい。
前記の(イ)においては、菌体または菌体の処理物を
キレート試薬の水溶液に5〜30分程度懸濁ないし溶解さ
せたのち、この懸濁液から常法によって分離回収された
菌体または菌体の処理物をDL−α−アミノ酸アミドを含
有する反応原料液に添加して反応液とする。前記の
(ロ)においては、前記(イ)での処理後の懸濁液ない
し溶液に原料のDL−α−アミノ酸アミドを添加してこれ
を反応液として、反応を開始させる。また、前記の
(ハ)においては、DL−α−アミノ酸アミドを含有する
反応原料液に、菌体または菌体の処理物およびキレート
試薬を添加して反応液とし、反応を開始させるとともに
菌体または菌体の処理物とキレート試薬とを接触させ
る。
反応原料液としては、DL−α−アミノ酸アミドを、た
とえば、水のような水性媒体に溶解した液が一般に使用
されるが、一方、D−α−アミノ酸アミド加水分解酵素
を含有する微生物を増殖させた培養液にDL−α−アミノ
酸アミドを添加した液を使用することもできる。
本発明で使用されるキレート試薬としては、金属イオ
ンと錯体を形成する通常のキレート試薬であれば良く、
特に制限はなく、たとえばトランス−1,2−シクロヘキ
サンジアミン−N,N,N′,N′,−四酢酸、ジエチレント
リアミン−N,N,N′,N″,N″−五酢酸、エチレンジアミ
ン−N,N′−二酢酸、エチレンジアミン−N,N,N′,N′−
四酢酸、3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジアミン−N,N,
N′,N′−四酢酸、N−(2−ヒドロキシエチル)エチ
レンジアミン−N,N′,N′−三酢酸、イミノ二酢酸、N
−(2−ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸、ニトリロ三
酢酸およびトリエチレンテトラミン−N,N,N′,N″,N,
N−六酢酸等がある。
菌体または菌体処理物とキレート試薬との接触の条件
は、微生物の種類、キレート試薬の種類等によって異な
り、一概に特定し得ないが、通常はたとえば、処理液中
の微生物の濃度は乾燥菌体として0.001〜10重量%好ま
しくは0.01〜1重量%、キレート試薬の濃度は10-6〜10
-1Mol/L好ましくは10-5〜10-2Mol/L、処理温度0〜70℃
好ましくは10〜60℃、PH5〜13好ましくは5〜12の範
囲、処理時間は少なくとも5分程度である。
加水分解反応の条件は、微生物の種類、酵素の加水分
解活性の強さ、DL−α−アミノ酸アミドの種類およびキ
レート試薬の種類等によって異なり、一概に特定し得な
いが、通常は、たとえば、反応液中のDL−α−アミノ酸
アミド濃度は1〜40重量%、好ましくは5〜20重量%、
キレート試薬の濃度は10-6〜10-1Mol/L好ましくは10-5
〜10-2Mol/L、DL−α−アミノ酸アミドに対する微生物
菌体または菌体の処理物の使用量は乾燥菌体として重量
比0.005〜10好ましくは0.01〜1、反応温度0〜70℃好
ましくは10〜60℃およびpH5〜13好ましくは5〜12の範
囲である。
加水分解反応で生成したD−α−アミノ酸は、たとえ
ば、反応生成液から遠心分離などの常法により菌体また
は菌体の処理物を除き、さらに必要に応じて限外濾過な
どの方法によって酵素を除いた後、減圧濃縮後エタノー
ルを加えてD−α−アミノ酸を析出させ、このD−α−
アミノ酸を濾取するなどの方法により容易に分離するこ
とができる。
D−α−アミノ酸分離後の残存L−α−アミノ酸アミ
ドは、それ自体公知の方法、たとえば酸あるいはアルカ
リで加水分解することにより対応するL−α−アミノ酸
を得ることができる。また、L−α−アミノ酸アミドを
ラセミ化した後、必要に応じて未反応のDL−α−アミノ
酸アミドとともに反応系へ循環することにより、DL−α
−アミノ酸アミドから高収率でD−α−アミノ酸を製造
することも可能である。
[実施例] 以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこ
れのみに限定されるものではない。
実施例 1 グルコース10g、ポリペプトン10g、酵母エキス10gを
純水1に溶解し、pHを7.0に調整した培地100mlを1
容三角フラスコに入れ、1kg/cm2Gで20分間殺菌した培地
に、同様な培地で前培養したロドコッカス・エリスロポ
リスNR−28(微工研菌寄第8938号)の培養液を1ml植菌
し、30℃で48時間振とう培養を行い、培養液を18000rpm
で10分間遠心分離し、菌体を得た。
DL−バリンアミド10gを純水に溶解して4N塩酸でpHを
7とし、これにエチレンジアミン−N,N,N′,N′−四酢
酸を濃度10-3M/Lになるように加え、さらに前記の菌体
を乾燥菌体重量換算で200mgを加え、全量を100mlとし
た。これを300ml三角フラスコに入れ、40℃で10時間振
とうしつつ反応を行った。反応終了後、反応生成液を18
000rpmで10分間遠心し、上澄液を得た。この上澄液を高
速液体クロマトグラフィで分析し、生成したバリンの収
率および光学純度を求め、エチレンジアミン−N,N,N′,
N′−四酢酸無添加のブランクと比較した。結果を表1
に示す。
実施例 2 培地を次の組成に変更した以外は実施例1と同様にし
て行った。
グルコース 10 g ペプトン 5 g 肉エキス 1 g 酵母エキス 5 g KH2PO4 1 g MgSO4・7H2O 0.4 g FeSO4・7H2O 0.01g MnCl2・4H2O 0.01g DL−バリンアミド 5 g 水 1 pH 7 結果を表−2に示す。
実施例 3 実施例2と同様にしてロドコッカス・エリスロポリス
NR−28(微工研菌寄第8938号)を培養し、凍結乾燥菌体
を得た。pH7、濃度2×10-4M/Lに調製したエチレンジア
ミン−N,N,N′,N′−四酢酸の水溶液50mlへ、前記凍結
乾燥菌体200mgを加え、40℃で30分間振とうし、菌体を
前処理した。次いでこの処理液を2等分し、別途pH7、
濃度20重量%に調製したDL−バリンアミドの水溶液各25
mlを加え40℃および20℃で振とうしつつそれぞれ反応を
行い、3時間,10時間後におけるバリンの収率および光
学純度ならびにバリンの収率が100%となるまでの反応
時間を求め、エチレンジアミン−N,N,N′,N′−四酢
酸、無処理のブランクと比較した。結果を表3に示す。
実施例 4 各種キレート試薬を使用し、反応pHを9とした以外は
実施例2と同様に行った。
結果を表4に示す。
実施例 5 仕込DL−バリンアミド濃度を5重量%とし、各種菌株
を用いた以外は実施例2と同様に行った 結果を表5に示す。
実施例 6 反応原料に各種DL−α−アミノ酸アミドを使用した以
外は実施例2と同様に行った。
結果を表6に示す。
[発明の効果] 本発明方法によって、DL−α−アミノ酸アミドを不斉
加水分解してL−α−アミノ酸アミドの加水分解の生起
を防止して、L−α−アミノ酸の混入量が少なく純度の
高い有用な多くのD−α−アミノ酸を工業的に容易に、
しかも効率良く製造することが可能となった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 (C12P 41/00 C12R 1:39)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一般式が (ただし、式中Rは低級アルキル基、置換低級アルキル
    基、フェニル基、置換フェニル基、フリル基、ピリジル
    基、チアゾリル基、イミダゾリル基またはインドリル基
    を示す)で示されるDL−α−アミノ酸アミドに、キレー
    ト試薬と接触させたD−α−アミノ酸アミド加水分解酵
    素と含有する微生物の菌体またはこの菌体の処理物を作
    用させて、該DL−α−アミノ酸アミドに対応するD−α
    −アミノ酸を製造することを特徴とするD−α−アミノ
    酸の製造方法。
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