JP2007177962A - 自動変速機の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】自動変速機にニュートラル状態となる故障が生じた時に、油圧スイッチによって何れの係合要素(リニアソレノイド弁)に異常が生じたかを特定できるか否かに拘らず、適切にフェールセーフ処理が行われるようにする。
【解決手段】S1でニュートラル故障の判定が為された場合に、油圧スイッチが正常で何れのリニアソレノイド弁が故障であるか特定できる時には、S5以下を実行し、その故障したリニアソレノイド弁に応じて特定のフェールセーフ処理を行う一方、油圧スイッチの異常でリニアソレノイド弁の何れが故障であるか特定できない時には、ステップS3以下を実行し、故障の可能性があるリニアソレノイド弁を絞り込んで特定のフェールセーフ処理を行う。
【選択図】図9

Description

本発明は自動変速機の制御装置に係り、特に、自動変速機にニュートラル状態となる故障が生じた場合のフェールセーフ処理の改良に関するものである。
複数の係合要素を選択的に係合させることにより変速比が異なる複数のギヤ段を成立させる自動変速機に関し、その自動変速機の入力軸回転速度および出力軸回転速度に基づいて、その自動変速機にニュートラル状態となる故障が生じたと判定された時には、所定のギヤ段を成立させるためのフェールセーフ処理を実行する自動変速機の制御装置が知られている。特許文献1に記載の装置はその一例で、自動変速機の入力軸回転速度と出力軸回転速度とから実際の変速比を算出し、その実際の変速比が指示ギヤ段の変速比から外れている時には、自動変速機がニュートラル状態となる故障が生じたと判定し、この時には、その故障が検出されたギヤ段への変速を禁止し、指示ギヤ段を他のギヤ段に変更するフェールセーフ処理を行うことが提案されている。
特開平11−280898号公報
ところで、自動変速機の各ギヤ段は、一般に、複数の係合要素が同時に係合させられることによって成立させられるとともに、各係合要素は幾つかのギヤ段を形成する際に用いられる。このため、ニュートラル状態となる故障が、何れの係合要素の係合状態に異常が生じたものか特定しなければ、特定のフェールセーフ処理しか行うことができず、適切なフェールセーフ処理を行うことができない場合がある。この点に関し、各係合要素の係合状態の異常を判定するために、係合要素を係合させるための油圧の出力状態を監視するための油圧スイッチを設け、油圧スイッチの出力に基づいて各係合要素の係合状態の異常を判定することも知られているが、油圧スイッチが故障する場合もある。
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、自動変速機にニュートラル状態となる故障が生じた時に、油圧スイッチによって何れの係合要素に異常が生じたかを特定できるか否かに拘らず、適切にフェールセーフ処理を行うことができる自動変速機の制御装置を提供することにある。
かかる目的を達成するために、本発明は、複数の係合要素を選択的に係合させることにより変速比が異なる複数のギヤ段を成立させる自動変速機に関し、その自動変速機の入力軸回転速度および出力軸回転速度に基づいて、その自動変速機にニュートラル状態となる故障が生じたと判定された時には、所定のギヤ段を成立させるためのフェールセーフ処理を実行する自動変速機の制御装置において、(a) 前記係合要素を係合させるための油圧に応じて作動する油圧スイッチと、(b) 前記油圧スイッチの異常を判定するためのスイッチ異常判定手段と、(c) 前記自動変速機にニュートラル状態となる故障が生じたと判定された時において、前記スイッチ異常判定手段により前記油圧スイッチの異常が判定されておらず、その油圧スイッチの出力により何れの係合要素が故障であるかが特定できる時には、その油圧スイッチの出力に基づいて前記フェールセーフ処理の中から特定の処理を選択して実行する一方、前記スイッチ異常判定手段により前記油圧スイッチの異常が判定されており、その油圧スイッチの出力により何れの係合要素が故障であるかが特定できない時には、前記自動変速機がニュートラル状態となる故障が生じたと判定された時の指示ギヤ段に基づき、前記フェールセーフ処理の中から特定の処理を選択して実行するフェールセーフ処理実行手段と、を有することを特徴とする。
このような自動変速機の制御装置によれば、自動変速機にニュートラル状態となる故障が生じた場合に、油圧スイッチの出力により何れの係合要素が故障であるか特定できる時には、その故障した係合要素に応じて特定のフェールセーフ処理が行われる。また、油圧スイッチの異常で何れの係合要素が故障であるか特定できない時には、ニュートラル状態となる故障が生じたと判定された時の指示ギヤ段に基づいて、例えば故障の可能性のある係合要素を絞り込むなどすることにより、特定のフェールセーフ処理が行われる。したがって、何れの係合要素に故障が生じたかを油圧スイッチによって特定できるか否かに拘らず、適切にフェールセーフ処理を実行できるようになる。
本発明は、車両用の自動変速機に好適に適用され、燃料の燃焼によって駆動力を発生するエンジン駆動車両や、電動モータによって走行する電気自動車など、種々の車両用自動変速機に適用され得る。自動変速機としては、例えば遊星歯車式や平行軸式など、複数の係合要素の作動状態に応じて複数のギヤ段が成立させられる種々の自動変速機が用いられる。
係合要素は、油圧シリンダ等の油圧アクチュエータによって係合させられる単板式或いは多板式のクラッチやブレーキ、ベルト式のブレーキなどで、例えばソレノイド弁等による油圧制御やアキュムレータの作用などで油圧(係合圧)を所定の変化パターンで変化させたり、所定のタイミングで油圧を変化させたりすることによって変速制御が行われる。また、大容量のソレノイド弁(リニアソレノイド弁など)の出力油圧がそのまま供給されて、その出力油圧によって係合させられる直接圧制御が好適に採用されるが、その出力油圧によって調圧制御されるコントロール弁等を介して油圧制御が行われる場合であっても良い。
油圧スイッチは、例えば総ての係合要素に対応して設けることもできるが、少なくとも故障した係合要素を特定できれば良いため、例えば一対の係合要素によってギヤ段が成立させられる場合は、何れか一方の係合要素に対して油圧スイッチを設けるだけでも、どちらの係合要素が故障したか特定できる。したがって、例えば一対の入力クラッチを備えていて、それ等の入力クラッチと他の一つの係合要素との係合で各ギヤ段が成立させられる場合には、その一対の入力クラッチに油圧スイッチを設けるだけでも良い。
係合要素の故障は、その係合要素を係合させるための油圧が十分に上昇しなくなって係合不能となる場合で、その係合要素を係合させるための油圧を制御する前記ソレノイド弁やコントロール弁等の故障によるものであり、例えばバルブスティック等の機械的な故障や、コネクタ外れ、断線等の電気的な故障が考えられる。したがって、前記油圧スイッチとしては、それ等のソレノイド弁やコントロール弁等の出力油圧の有無によってON、OFFが切り替わるON−OFFスイッチ等が好適に用いられる。
油圧スイッチの異常判定は、例えばその油圧スイッチが配設された係合要素の油圧を制御するソレノイド弁の駆動状態と、実際の油圧スイッチの出力状態(ON、OFFなど)とを比較することによって行うことができる。すなわち、係合要素に対して油圧を出力するようにソレノイド弁が制御されている時に油圧スイッチが油圧出力の停止を意味するOFF状態であるか、係合要素に対して油圧を出力しないようにソレノイド弁が制御されている時に油圧スイッチが油圧出力を意味するON状態である場合には、油圧スイッチが異常であると判定できる。
入力軸回転速度および出力軸回転速度に基づくニュートラル状態の故障判定は、例えばそれ等の回転速度から実際の変速比を算出して、ギヤ段毎に定められた設定変速比と比較することによって行うことができる。すなわち、実際の変速比が指示ギヤ段の設定変速比と異なる場合には、ニュートラル状態であると判定できる。但し、必ずしも実際の変速比を算出する必要はなく、出力軸回転速度と指示ギヤ段の設定変速比とを掛け算した値と、入力軸回転速度とを比較するようにしても良いなど、実質的に変速比に基づいて判定が行われれば良い。また、ギヤ段毎の設定変速比を用いることは必ずしも必要でなく、実際の変速比の変化や大きさなどからニュートラル状態の故障判定を行うこともできるなど、種々の態様が可能である。
自動変速機にニュートラル状態となる故障が生じた場合にフェールセーフ処理を行うフェールセーフ処理実行手段は、故障した係合要素を特定できるか否かによって異なる処理が予め定められる。すなわち、油圧スイッチが正常で故障した係合要素を特定できる場合には、例えばその係合要素を使うことなく成立させることができるギヤ段に切り替えるように処理内容が定められ、駆動力変動や動力源のオーバーレブを回避する上で、元の指示ギヤ段よりも高速側のギヤ段とすることが望ましい。
また、油圧スイッチが異常で故障した係合要素を特定することができない場合は、例えばニュートラル状態となる故障の判定時の指示ギヤ段に基づいて、故障の可能性がある係合要素を絞り込み、その係合要素に応じて所定のギヤ段を成立させるフェールセーフ処理が定められる。具体的には、例えば故障の可能性がある複数の係合要素を何れも使うことなく成立させることができるギヤ段へ切り替えるように処理内容が定められる。また、別経路で所定の係合要素にライン圧等を供給して所定のギヤ段を強制的に成立させることができるフェールセーフバルブを備えている場合には、そのフェールセーフバルブをフェール側へ切り換えて所定のギヤ段を成立させることもできるなど、油圧制御回路に応じて種々のフェールセーフ処理が可能である。
上記フェールセーフ処理はまた、動力源のオーバーレブや急な駆動力変化等を回避する上で、車速やアクセル操作量等に基づいてフェールセーフ処理の実行を制限し、ニュートラル状態を維持するように構成することが望ましい。例えば、フェールセーフ処理で低速側のギヤ段を成立させる場合には、所定車速以下になるまで待って処理を開始し、それまではニュートラル状態を維持するように構成できる。また、油圧スイッチの異常で故障した係合要素を特定できない場合に、フェールセーフ処理により故障した係合要素に応じて異なるギヤ段が成立させられる場合は、可能性のある最も低速側のギヤ段を基準としてフェールセーフ処理の実行の可否を判断することが望ましい。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)車両などの横置き型の車両用駆動装置の骨子図であり、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等の内燃機関によって構成されているエンジン10の出力は、トルクコンバータ12、自動変速機14を経て、図示しない差動歯車装置から駆動輪(前輪)へ伝達されるようになっている。上記エンジン10は車両走行用の動力源で、トルクコンバータ12は流体継手である。
自動変速機14は、シングルピニオン型の第1遊星歯車装置20を主体として構成されている第1変速部22と、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置26およびダブルピニオン型の第3遊星歯車装置28を主体として構成されている第2変速部30とを同軸線上に有し、入力軸32の回転を変速して出力歯車34から出力する。入力軸32は入力部材に相当するもので、本実施例ではトルクコンバータ12のタービン軸であり、出力歯車34は出力部材に相当するもので、差動歯車装置を介して左右の駆動輪を回転駆動する。なお、自動変速機14は中心線に対して略対称的に構成されており、図1では中心線の下半分が省略されている。
上記第1変速部22を構成している第1遊星歯車装置20は、サンギヤS1、キャリアCA1、およびリングギヤR1の3つの回転要素を備えており、サンギヤS1が入力軸32に連結されて回転駆動されるとともに、リングギヤR1が第3ブレーキB3を介して回転不能にトランスミッションケース(以下、単にケースという)36に固定されることにより、キャリアCA1が中間出力部材として入力軸32に対して減速回転させられて出力する。また、第2変速部30を構成している第2遊星歯車装置26および第3遊星歯車装置28は、一部が互いに連結されることによって4つの回転要素RM1〜RM4が構成されており、具体的には、第3遊星歯車装置28のサンギヤS3によって第1回転要素RM1が構成され、第2遊星歯車装置26のリングギヤR2および第3遊星歯車装置28のリングギヤR3が互いに連結されて第2回転要素RM2が構成され、第2遊星歯車装置26のキャリアCA2および第3遊星歯車装置28のキャリアCA3が互いに連結されて第3回転要素RM3が構成され、第2遊星歯車装置26のサンギヤS2によって第4回転要素RM4が構成されている。上記第2遊星歯車装置26および第3遊星歯車装置28は、キャリアCA2およびCA3が共通の部材にて構成されているとともに、リングギヤR2およびR3が共通の部材にて構成されており、且つ第2遊星歯車装置26のピニオンギヤが第3遊星歯車装置28の第2ピニオンギヤ(外周側ピニオンギヤ)を兼ねているラビニヨ型の遊星歯車列とされている。
上記第1回転要素RM1(サンギヤS3)は第1ブレーキB1によって選択的にケース36に連結されて回転停止させられ、第2回転要素RM2(リングギヤR2、R3)は第2ブレーキB2によって選択的にケース36に連結されて回転停止させられ、第4回転要素RM4(サンギヤS2)は第1クラッチC1を介して選択的に前記入力軸32に連結され、第2回転要素RM2(リングギヤR2、R3)は第2クラッチC2を介して選択的に入力軸32に連結され、第1回転要素RM1(サンギヤS3)は中間出力部材である前記第1遊星歯車装置20のキャリアCA1に一体的に連結され、第3回転要素RM3(キャリアCA2、CA3)は前記出力歯車34に一体的に連結されて回転を出力するようになっている。また、第2回転要素RM2(リングギヤR2、R3)とケース36との間には、第2回転要素RM2の正回転(入力軸32と同じ回転方向)を許容しつつ逆回転を阻止する一方向クラッチFが第2ブレーキB2と並列に設けられている。
上記クラッチC1、C2およびブレーキB1、B2、B3(以下、特に区別しない場合は単にクラッチC、ブレーキBという)は、多板式のクラッチやバンドブレーキなど油圧アクチュエータによって係合制御される油圧式摩擦係合装置で、複数の係合要素に相当する。そして、油圧制御回路98(図3参照)のリニアソレノイド弁SL1〜SL5の励磁、非励磁やマニュアルバルブによって油圧回路が切り換えられることにより、図2に示すように係合、解放状態が切り換えられ、シフトレバー72(図3参照)のセレクト位置(ポジション)に応じて前進6段、後進1段の各ギヤ段が成立させられる。図2の「1st」〜「6th」は前進の第1速ギヤ段〜第6速ギヤ段を意味しており、「Rev」は後進ギヤ段であり、それ等の変速比(=入力軸回転速度NIN/出力軸回転速度NOUT )は、前記第1遊星歯車装置20、第2遊星歯車装置26、および第3遊星歯車装置28の各ギヤ比ρ1、ρ2、ρ3によって適宜定められる。図2の「○」は係合、「◎」はエンジンブレーキ時のみ係合、空欄は解放を意味している。第1変速段「1st」を成立させるブレーキB2には並列に一方向クラッチFが設けられているため、発進時(加速時)には必ずしもブレーキB2を係合させる必要は無いのである。
上記シフトレバー72はシフト操作部材に相当するもので、例えば図4に示すシフトパターンに従って駐車ポジション「P」、後進走行ポジション「R」、ニュートラルポジション「N」、前進走行ポジション「D」、「4」、「3」、「2」、「L」へ操作されるようになっており、「P」および「N」ポジションでは動力伝達を遮断するニュートラルが成立させられるが、「P」ポジションでは図示しないメカニカルパーキング機構によって機械的に駆動輪の回転が阻止される。
図3は、図1のエンジン10や自動変速機14などを制御するために車両に設けられた制御系統を説明するブロック線図で、アクセルペダル50の操作量(アクセル開度)Accがアクセル操作量センサ51により検出されるようになっている。アクセルペダル50は、運転者の出力要求量に応じて大きく踏み込み操作されるもので、アクセル操作部材に相当し、アクセル操作量Accは出力要求量に相当する。また、エンジン10の吸気配管には、スロットルアクチュエータ54によって開度θTHが変化させられる電子スロットル弁56が設けられている。この他、エンジン10の回転速度NEを検出するためのエンジン回転速度センサ58、エンジン10の吸入空気量Qを検出するための吸入空気量センサ60、吸入空気の温度TA を検出するための吸入空気温度センサ62、上記電子スロットル弁56の全閉状態(アイドル状態)およびその開度θTHを検出するためのアイドルスイッチ付スロットルセンサ64、車速Vに対応する出力歯車34の回転速度(出力軸回転速度に相当)NOUT を検出するための車速センサ66、エンジン10の冷却水温TW を検出するための冷却水温センサ68、フットブレーキ操作の有無を検出するためのブレーキスイッチ70、シフトレバー72の操作位置であるセレクト位置PSHを検出するためのレバーポジションセンサ74、タービン回転速度NTを検出するためのタービン回転速度センサ76、油圧制御回路98内の作動油の温度であるAT油温TOIL を検出するためのAT油温センサ78、イグニッションスイッチ82などが設けられており、それらのセンサから、エンジン回転速度NE、吸入空気量Q、吸入空気温度TA 、スロットル弁開度θTH、車速V(出力軸回転速度NOUT )、エンジン冷却水温TW 、ブレーキ操作の有無、シフトレバー72のセレクト位置PSH、タービン回転速度NT、AT油温TOIL 、イグニッションスイッチ82の操作位置などを表す信号が電子制御装置90に供給されるようになっている。上記タービン回転速度NTは、入力部材である入力軸32の回転速度(入力軸回転速度NIN)と同じである。
油圧制御回路98は、自動変速機14の変速制御に関して図5に示す回路を備えている。図5において、オイルポンプ40から圧送された作動油は、リリーフ型の第1調圧弁100により調圧されることによって第1ライン圧PL1とされる。オイルポンプ40は、例えば前記エンジン10によって回転駆動される機械式ポンプである。第1調圧弁100は、リニアソレノイド弁SLTから供給される信号油圧PSLTに応じて調圧動作するもので、タービントルクTT すなわち自動変速機14の入力トルクTIN、或いはその代用値であるスロットル弁開度θTHに応じて第1ライン圧PL1が調圧され、その第1ライン圧PL1は、シフトレバー72に連動させられるマニュアルバルブ104に供給される。そして、シフトレバー72が「D」ポジション等の前進走行ポジションへ操作されているときには、このマニュアルバルブ104からDレンジ圧PD がリニアソレノイド弁SL1〜SL5へ供給される。
リニアソレノイド弁SL1〜SL5は、それぞれ前記クラッチC1、C2、ブレーキB1〜B3に対応して配設されており、電子制御装置90から出力される駆動信号(指示油圧)に従ってそれぞれ励磁状態が制御されることにより、それ等の係合油圧PC1、PC2、PB1、PB2、PB3がそれぞれ独立に制御され、これにより第1速ギヤ段「1st」〜第6速ギヤ段「6th」、および後進ギヤ段「Rev」の何れかを択一的に成立させることができる。リニアソレノイド弁SL1〜SL5は何れも大容量型で、出力油圧PSL1〜PSL5がそのままクラッチC1、C2、ブレーキB1〜B3に供給され、それ等の係合油圧PC1、PC2、PB1、PB2、PB3を直接制御する直接圧制御が行われる。リニアソレノイド弁SL1およびSL2にはそれぞれON−OFF型の油圧スイッチSW1、SW2が接続されており、それらの出力油圧PSL1、PSL2が所定値以上になるとONになり、油圧出力を表す油圧信号が前記電子制御装置90に供給される。
油圧制御回路98はまた、図10に示すフェールセーフバルブ110を備えており、上記リニアソレノイド弁SL1、SL2、およびSL5と第1クラッチC1、第2クラッチC2、および第3ブレーキB3との間に介在させられている。このフェールセーフバルブ110は、前進走行を確保するためのバックアップ用のもので、第1切換バルブ112から供給される選択油圧POUTとモジュレータ油圧PMODと第1ライン圧PL1との関係に基づいて作動させられるようになっている。第1切換バルブ112は、出力油圧PSL1およびPSL2の何れかを選択するもので、次式(1) を満足する場合には実線の矢印で示すように出力油圧PSL2を選択油圧POUTとして出力する。(1) 式のa、b、cは受圧面積やスプリング荷重等によって定まる定数で、出力油圧PSL1が出力される第1速ギヤ段「1st」〜第4速ギヤ段「4th」ではその出力油圧PSL1が選択油圧POUTとして出力され、第5速ギヤ段「5th」および第6速ギヤ段「6th」では出力油圧PSL2が選択油圧POUTとして出力される。
a×PSL2+PD >b×PSL1+c ・・・(1)
上記フェールセーフバルブ110は、次式(2) を満足する場合にフェール側へ切り換えられ、実線の矢印で示すようにDレンジ圧PD をクラッチC1またはC2、およびブレーキB3側へ出力する。(2) 式のd、eは、受圧面積やモジュレータ油圧PMOD、スプリング荷重等によって定まる定数で、dは正、eは負の値であり、第1クラッチC1および第2クラッチC2の少なくとも一方が係合させられる前進走行時で、通常の出力油圧PSL1、PSL2の何れかが選択油圧POUTとして供給される限り、(2) 式を満足することはなく、点線の矢印で示すように出力油圧PSL1、PSL2、PSL5がそれぞれクラッチC1、C2、ブレーキB3へ供給される。しかし、出力油圧PSL1、PSL2が共に低圧で、選択油圧POUTが所定値以下になり、且つ第1ライン圧PL1として最高圧PLMAX が供給されると、(2) 式を満足するようになり、フェールセーフバルブ110がフェール側へ切り換えられるとともに、シフトレバー72が「D」ポジション等の前進走行ポジションへ操作されて前記マニュアルバルブ104からDレンジ圧PD が出力されている場合には、そのDレンジ圧PD がクラッチC1またはC2、およびブレーキB3へ出力される。最高圧PLMAX は、前記リニアソレノイド弁SLTによって制御できる最高の油圧で、第1調圧弁100の諸元等によって定まる。
POUT<d×PL1+e ・・・(2)
上記フェールセーフバルブ110のフェールセーフ用の入力ポートのうち、第3ブレーキB3用のポートには直接Dレンジ圧PD が供給されるが、第1クラッチC1および第2クラッチC2用のポートには、第2切換バルブ114から択一的にDレンジ圧PD が供給される。第2切換バルブ114は、前記出力油圧PSL1およびPSL2をパイロット圧として機械的に連通状態が切り換えられるもので、出力油圧PSL1が供給されると点線で示すようにDレンジ圧PD を第1クラッチC1用のポートから出力し、出力油圧PSL2が供給されると実線で示すようにDレンジ圧PD を第2クラッチC2用のポートから出力する。また、出力油圧PSL1およびPSL2が共に供給された場合、或いは何れも供給されない場合は、直前に単一の出力油圧PSL1またはPSL2が供給された時の連通状態を維持する。
したがって、出力油圧PSL1のみが供給される第1速ギヤ段「1st」〜第3速ギヤ段「3rd」での走行中に、何らかの異常でフェールセーフバルブ110がフェール側へ切り換えられると、第1クラッチC1および第3ブレーキB3が係合させられることにより、第3速ギヤ段「3rd」が強制的に成立させられる。出力油圧PSL2のみが供給される第5速ギヤ段「5th」および第6速ギヤ段「6th」での走行中に、何らかの異常でフェールセーフバルブ110がフェール側へ切り換えられると、第2クラッチC2および第3ブレーキB3が係合させられることにより、第5速ギヤ段「5th」が強制的に成立させられる。また、出力油圧PSL1およびPSL2が共に供給される第4速ギヤ段「4th」での走行中に、何らかの異常でフェールセーフバルブ110がフェール側へ切り換えられると、その第4速ギヤ段「4th」になる直前のギヤ段に応じて強制的に成立させるギヤ段は相違し、出力油圧PSL1が供給される第1速ギヤ段「1st」〜第3速ギヤ段「3rd」であれば、第1クラッチC1が係合させられて第3速ギヤ段「3rd」が成立させられ、出力油圧PSL2が供給される第5速ギヤ段「5th」または第6速ギヤ段「6th」であれば、第2クラッチC2が係合させられて第5速ギヤ段「5th」が成立させられる。
電子制御装置90は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、図6に示すようにエンジン制御手段120、変速制御手段130の各機能を実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用、変速制御用に分けて構成される。
エンジン制御手段120は、エンジン10の出力制御を行うもので、スロットルアクチュエータ54により電子スロットル弁56を開閉制御する他、燃料噴射量制御のために燃料噴射弁92を制御し、点火時期制御のためにイグナイタ等の点火装置94を制御する。電子スロットル弁56の制御は、例えば図7に示す関係から実際のアクセル操作量Accに基づいてスロットルアクチュエータ54を駆動し、アクセル操作量Accが増加するほどスロットル弁開度θTHを増加させる。また、エンジン10の始動時には、スタータ(電動モータ)96によってクランキングする。
変速制御手段130は、自動変速機14の変速制御を行うもので、例えば図8に示す予め記憶された変速線図(変速マップ)から実際のスロットル弁開度θTHおよび車速Vに基づいて自動変速機14の変速すべきギヤ段を決定し、すなわち現在のギヤ段から変速先のギヤ段への変速判断を実行し、その決定されたギヤ段(指示ギヤ段)への変速作動を開始させる変速出力を実行する。また、駆動力変化などの変速ショックが発生したり摩擦係合装置(クラッチCやブレーキB)の摩擦材の耐久性が損なわれたりすることがないように、油圧制御回路98のリニアソレノイド弁SL1〜SL5の励磁状態、すなわちクラッチCやブレーキBの係合油圧PC1、PC2、PB1、PB2、PB3を連続的に変化させる。前記図2から明らかなように、本実施例の自動変速機14は、クラッチCおよびブレーキBの何れか1つを解放するとともに他の1つを係合させるクラッチツークラッチ変速により、連続するギヤ段の変速が行われるようになっている。図8の実線はアップシフト線で、破線はダウンシフト線であり、車速Vが低くなったりスロットル弁開度θTHが大きくなったりするに従って、変速比が大きい低速側のギヤ段に切り換えられるようになっており、図中の「1」〜「6」は第1速ギヤ段「1st」〜第6速ギヤ段「6th」を意味している。
そして、シフトレバー72が「D」ポジションへ操作されると、総ての前進ギヤ段「1st」〜「6th」を用いて自動的に変速する最上位のDレンジ(自動変速モード)が成立させられる。また、シフトレバー72が「4」〜「L」ポジションへ操作されると、4、3、2、Lの各変速レンジが成立させられる。4レンジでは第4速ギヤ段「4th」以下の前進ギヤ段で変速制御が行われ、3レンジでは第3速ギヤ段「3rd」以下の前進ギヤ段で変速制御が行われ、2レンジでは第2速ギヤ段「2nd」以下の前進ギヤ段で変速制御が行われ、Lレンジでは第1速ギヤ段「1st」に固定される。したがって、例えばDレンジの第6速ギヤ段「6th」で走行中に、シフトレバー72を「D」ポジションから「4」ポジション、「3」ポジション、「2」ポジションへ操作すると、変速レンジがD→4→3→2へ切り換えられて、第6速ギヤ段「6th」から第4速ギヤ段「4th」、第3速ギヤ段「3rd」、第2速ギヤ段「2nd」へ強制的にダウンシフトさせられ、手動操作でギヤ段を変更することができる。
このような自動または手動による自動変速機14の変速制御は、係合側油圧や解放側油圧を予め定められた変化パターンに従って変化させたり、所定の変化タイミングで変化させたりすることによって行われ、この変化パターンや変化タイミング等の制御態様は、クラッチCおよびブレーキBの耐久性や変速応答性、変速ショック等を総合的に考慮して、運転状態等に応じて定められる。
変速制御手段130はまた、図6に示すように、ニュートラル故障判定手段132、スイッチ異常判定手段134、フェールセーフ処理実行手段136を備えており、前記クラッチCおよびブレーキBの何れかが係合不能で、所定の指示ギヤ段を成立させる際に自動変速機14がニュートラル状態となった場合に、代りのギヤ段を成立させるなどして走行可能とするフェールセーフ処理を行うようになっている。クラッチCやブレーキBの係合不能は、それ等の係合油圧PC1、PC2、PB1、PB2、PB3が上昇しない場合で、前記リニアソレノイド弁SL1〜SL5の機械的なフェール(バルブスティックなど)、或いはコネクタ外れ、断線等の電気的なフェールにより、それ等の油圧出力が不可となった場合等に発生する。
図9は、上記ニュートラル故障判定手段132、スイッチ異常判定手段134、およびフェールセーフ処理実行手段136の処理内容を具体的に説明するフローチャートであり、ステップS1はニュートラル故障判定手段132に相当し、ステップS2はスイッチ異常判定手段134に相当し、ステップS3〜S6はフェールセーフ処理実行手段136に相当する。
そして、ステップS1では、何れかの前進ギヤ段を成立させる際に、クラッチCやブレーキBの故障(係合不能)で自動変速機14がニュートラル状態となり、その時のギヤ段(指示ギヤ段)を成立させることができない故障が生じたか否かを判定する。具体的には、タービン回転速度NTと一致する入力軸回転速度NIN、車速Vに対応する出力軸回転速度NOUT 、およびギヤ段毎に予め定められた設定変速比γG に基づいて、次式(3) を満足する場合にニュートラル故障と判断する。すなわち、出力軸回転速度NOUT と指示ギヤ段の設定変速比γG とを掛け算し、その値に所定値αを加算して入力軸回転速度NINと比較することにより、入力軸回転速度NINの方が大きい場合にはニュートラル故障と判断するのである。(1) 式は、実際の変速比γ(=NIN/NOUT )が、指示ギヤ段の設定変速比γG よりも所定値以上大きいことと等価である。
IN>NOUT ×γG +α ・・・(3)
ステップS2では、今回の指示ギヤ段に関係するリニアソレノイド弁SL1および/またはSL2に設けられた油圧スイッチSW1、SW2が異常か否かを判定する。すなわち、指示ギヤ段が第1速ギヤ段「1st」〜第3速ギヤ段「3rd」の場合は油圧スイッチSW1が異常か否かを判定し、第5速ギヤ段「5th」または第6速ギヤ段「6th」の場合は油圧スイッチSW2が異常か否かを判定し、第4速ギヤ段「4th」の場合は油圧スイッチSW1およびSW2が共に異常か否かを判定する。この油圧スイッチSW1、SW2の異常は、例えばコネクタ外れや断線等の電気的な故障、或いは作動不良等の機械的な故障などで、出力油圧PSL1、PSL2の有無を正確に検知できなくなった場合であり、その異常判定は、例えば油圧スイッチSW1、SW2が配設されたリニアソレノイド弁SL1、SL2の駆動状態と、油圧スイッチSW1、SW2の出力状態とを比較することによって行うことができる。油圧スイッチSW1について具体的に説明すると、出力油圧PSL1を出力するようにリニアソレノイド弁SL1が制御されている時に、油圧スイッチSW1が油圧出力の停止を意味するOFF状態であるか、出力油圧PSL1の出力を停止するようにリニアソレノイド弁SL1が制御されている時に、油圧スイッチSW1が油圧出力を意味するON状態である場合には、油圧スイッチSW1が異常であると判定できる。油圧スイッチSW2についても同様である。この油圧スイッチSW1、SW2の異常判定は、図9のフェールセーフ制御のフローとは別個に並行して行われ、ステップS2ではその判定結果を読み込んで判断する。
ここで、フェールセーフ処理を適切に行うためには何れのリニアソレノイド弁SL1〜SL5が故障したかを特定する必要があるが、自動変速機14の各前進ギヤ段「1st」〜「6th」は、何れも複数(本実施例では2つ)の摩擦係合装置(クラッチC、ブレーキB)が同時に係合させられることによって成立させられるとともに、各摩擦係合装置は何れも幾つかのギヤ段を形成する際に係合させられるため、故障したリニアソレノイド弁SL1〜SL5を特定するためには、油圧スイッチSW1およびSW2が必要である。総てのリニアソレノイド弁SL1〜SL5に油圧スイッチを設けることもできるが、本実施例の自動変速機14は一対の入力クラッチC1およびC2を備えており、それ等を切り換えて係合させるとともに、3つのブレーキB1〜B3の何れか1つを係合させることにより、各前進ギヤ段「1st」〜「6th」を成立させるようになっているため、それ等の入力クラッチC1、C2に対応して設けられた2つの油圧スイッチSW1、SW2のON、OFF状態により、指示ギヤ段に応じて5つのリニアソレノイド弁SL1〜SL5の何れが故障したかを特定できる。
一方、上記油圧スイッチSW1、SW2が故障し、出力油圧PSL1、PSL2の有無を正確に検知できない場合があるが、その場合にそのままフェールセーフ処理を続行すると、ニュートラル状態を解消できなくて走行不能となるなどの不都合を生じる可能性がある。このため、前記ステップS2で油圧スイッチSW1、SW2の異常の有無を判断し、その異常の有無に応じて別々にフェールセーフ処理を実行するようにしたのである。
ステップS2の判断がYES(肯定)の場合、すなわち油圧スイッチSW1およびSW2の少なくとも一方が異常で、今回の指示ギヤ段でニュートラル状態となる故障の原因となる摩擦係合装置(クラッチCやブレーキB)すなわちリニアソレノイド弁SL1〜SL5を特定することができない場合は、ステップS3以下を実行する。ステップS3では、今回の変速出力すなわちステップS1でニュートラル故障の判定が行われた時の指示ギヤ段に基づいて、故障の可能性がある摩擦係合装置を特定する。具体的には、図2の作動表から明らかなように、各ギヤ段を成立させる際に係合させられる一対の摩擦係合装置が、故障の可能性がある摩擦係合装置として特定される。
そして、次のステップS4では、その特定された摩擦係合装置に対応するリニアソレノイド弁SL1〜SL5に応じて、所定のギヤ段を成立させるフェールセーフ処理が決定され、ニュートラル状態を解消して走行可能とする。例えば今回の指示ギヤ段が第5速ギヤ段「5th」または第6速ギヤ段「6th」の高速ギヤ段の場合は、故障の可能性がある摩擦係合装置を何れも使うことなく成立させることができるギヤ段へ切り替えるように定められる。指示ギヤ段が第6速ギヤ段「6th」の場合は、第2クラッチC2および第1ブレーキB1が故障の可能性があるため、それ等を使わないギヤ段のうちで最も高速側の第3速ギヤ段「3rd」へ切り換える。指示ギヤ段が第5速ギヤ段「5th」の場合は、第2クラッチC2および第3ブレーキB3が故障の可能性があるため、それ等を使わないギヤ段のうちで最も高速側の第2速ギヤ段「2nd」へ切り換える。
また、今回の指示ギヤ段が第4速ギヤ段「4th」の場合は、第3速ギヤ段「3rd」への変速指令を出力するとともに、第1ライン圧PL1を最高圧PLMAX とする。この場合は、第1クラッチC1に関するリニアソレノイド弁SL1が正常で、第2クラッチC2に関するリニアソレノイド弁SL2が故障の時には、第1クラッチC1および第3ブレーキB3の係合で第3速ギヤ段「3rd」が成立させられる。逆にリニアソレノイド弁SL2が正常でリニアソレノイド弁SL1が故障の時には、前記フェールセーフバルブ110がフェール側へ切り換えられ、別の経路で第1クラッチC1および第2クラッチC2の何れか一方にDレンジ圧PD が供給されることにより、出力油圧PSL1またはPSL2の履歴(ギヤ段の履歴)に応じて第3速ギヤ段「3rd」または第5速ギヤ段「5th」が成立させられる。
今回の指示ギヤ段が第3速ギヤ段「3rd」の場合は、第2速ギヤ段「2nd」への変速指令を出力するとともに、第1ライン圧PL1を最高圧PLMAX とする。この場合は、第1クラッチC1に関するリニアソレノイド弁SL1が正常の時には、第1クラッチC1および第1ブレーキB1の係合で第2速ギヤ段「2nd」が成立させられる。リニアソレノイド弁SL1が故障であれば、前記フェールセーフバルブ110がフェール側へ切り換えられ、別経路で第1クラッチC1および第2クラッチC2の何れか一方、および第3ブレーキB3にDレンジ圧PD が供給されることにより、出力油圧PSL1またはPSL2の履歴(ギヤ段の履歴)に応じて第3速ギヤ段「3rd」または第5速ギヤ段「5th」が成立させられる。なお、第1ブレーキB1および第3ブレーキB3の同時係合を阻止するために図示しないフェールセーフバルブが設けられており、その場合は第3ブレーキB3のみに油圧が供給されるようになっている。
今回の指示ギヤ段が第2速ギヤ段「2nd」の場合は、第3速ギヤ段「3rd」への変速指令を出力するとともに、第1ライン圧PL1を最高圧PLMAX とする。この場合は、第1クラッチC1に関するリニアソレノイド弁SL1が正常の時には、第1クラッチC1および第3ブレーキB3の係合で第3速ギヤ段「3rd」が成立させられる。リニアソレノイド弁SL1が故障であれば、前記フェールセーフバルブ110がフェール側へ切り換えられ、別経路で第1クラッチC1および第2クラッチC2の何れか一方、および第3ブレーキB3にDレンジ圧PD が供給されることにより、出力油圧PSL1またはPSL2の履歴(ギヤ段の履歴)に応じて第3速ギヤ段「3rd」または第5速ギヤ段「5th」が成立させられる。
今回の指示ギヤ段が第1速ギヤ段「1st」の場合は、第2速ギヤ段「2nd」への変速指令を出力するとともに、第1ライン圧PL1を最高圧PLMAX とする。この場合は、第1クラッチC1に関するリニアソレノイド弁SL1が正常の時には、第1クラッチC1および第1ブレーキB1の係合で第2速ギヤ段「2nd」が成立させられる。リニアソレノイド弁SL1が故障であれば、前記フェールセーフバルブ110がフェール側へ切り換えられ、別経路で第1クラッチC1および第2クラッチC2の何れか一方、および第3ブレーキB3にDレンジ圧PD が供給されることにより、出力油圧PSL1またはPSL2の履歴(ギヤ段の履歴)に応じて第3速ギヤ段「3rd」または第5速ギヤ段「5th」が成立させられる。
上記ステップS4のフェールセーフ処理はまた、動力源であるエンジン10のオーバーレブや急な駆動力変化等を回避するため、車速Vやアクセル操作量Acc等に基づいてフェールセーフ処理の実行を制限し、所定の実行条件を満足するまでニュートラル状態を維持するようになっている。すなわち、フェールセーフ処理で低速側のギヤ段を成立させる場合には、オーバーレブを回避するためにギヤ段毎に定められた所定車速以下になるまで待ってフェールセーフ処理を開始し、それまではニュートラル状態を維持する。その場合に、今回の指示ギヤ段が第4速ギヤ段「4th」以下のように、故障したリニアソレノイド弁SL1〜SL5の種類や出力油圧PSL1、PSL2の履歴(ギヤ段の履歴)により、フェールセーフ処理によって成立するギヤ段が相違する場合には、それぞれ可能性のある最も低速側のギヤ段を基準としてフェールセーフ処理の実行の可否を判断する。
一方、前記ステップS2の判断がNO(否定)の場合、すなわちステップS1でニュートラル故障の判定が行われた時の指示ギヤ段に関係する油圧スイッチSW1および/またはSW2が異常なしで、今回の指示ギヤ段でニュートラル状態となる故障の原因となる摩擦係合装置(クラッチCやブレーキB)を特定することができる場合は、ステップS5以下を実行する。ステップS5では、油圧スイッチSW1、SW2の出力状態(ON、OFF)に基づいて、故障した摩擦係合装置すなわちリニアソレノイド弁SL1〜SL5を特定する。すなわち、各前進ギヤ段「1st」〜「6th」は、クラッチC1およびC2、またはクラッチC1またはC2とブレーキB1〜B3の何れか1つが係合させられることによって成立させられるため、クラッチC1、C2に関するリニアソレノイド弁SL1、SL2の出力油圧PSL1、PSL2を検知する油圧スイッチSW1、SW2の出力状態(ON、OFF)に基づいて、故障した摩擦係合装置を特定することができるのである。具体的には、今回の指示ギヤ段に関係する油圧スイッチSW1、SW2の出力状態がOFFであれば、リニアソレノイド弁SL1、SL2が故障なのであり、油圧スイッチSW1、SW2の出力状態がONであれば、他のブレーキB1〜B3に対応するリニアソレノイド弁SL3〜SL5の何れかが故障なのである。
そして、ステップS6では、その特定されたリニアソレノイド弁SL1〜SL5に応じて、所定のギヤ段を成立させるフェールセーフ処理が決定され、ニュートラル状態を解消して走行可能とする。具体的には、故障したリニアソレノイド弁SL1〜SL5を使用することなく成立させることができるギヤ段へ切り替えるように定められるとともに、駆動力変動やエンジン10のオーバーレブを回避する上で、元の指示ギヤ段よりも高速側で且つ元の指示ギヤ段に最も近いギヤ段へ切り替え、それが不可の場合は、可能な範囲で最も高速側のギヤ段を選択する。リニアソレノイド弁SL1およびSL2が何れも故障の場合など、所定の条件下で第1ライン圧PL1を最高圧PLMAX として、フェールセーフバルブ110をフェール側へ切り換えることにより、出力油圧PSL1、PSL2の履歴(ギヤ段の履歴)に応じて第3速ギヤ段「3rd」または第5速ギヤ段「5th」を成立させる。また、前記ステップS4と同様に、エンジン10のオーバーレブや急な駆動力変化等を回避するため、車速Vやアクセル操作量Acc等に基づいてフェールセーフ処理の実行を制限し、所定の実行条件を満足するまでニュートラル状態を維持する。
このように、本実施例の自動変速機の制御装置によれば、自動変速機14にニュートラル状態となる故障が生じた場合に、油圧スイッチSW1および/またはSW2が正常で、その出力状態により何れのリニアソレノイド弁SL1〜SL5が故障であるか特定できる時には、ステップS5以下を実行し、その故障したリニアソレノイド弁SL1〜SL5に応じて特定のフェールセーフ処理が行われる。また、油圧スイッチSW1および/またはSW2の異常でリニアソレノイド弁SL1〜SL5の何れが故障であるか特定できない時には、ステップS3以下を実行し、ステップS1でニュートラル状態の故障判定が為された時の指示ギヤ段に基づいて、故障の可能性があるリニアソレノイド弁SL1〜SL5の絞り込みを行い、そのリニアソレノイド弁SL1〜SL5に基づいて特定のフェールセーフ処理が行われる。したがって、何れのリニアソレノイド弁SL1〜SL5が故障であるかを、油圧スイッチSW1、SWL2によって特定できるか否かに拘らず、適切にフェールセーフ処理が実行されるようになる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
本発明が適用された車両用駆動装置の骨子図である。 図1の自動変速機の各ギヤ段を成立させるためのクラッチおよびブレーキの係合、解放状態を説明する図である。 図1の実施例の車両に設けられた電子制御装置の入出力信号を説明する図である。 図3のシフトレバーのシフトパターンの一例を示す図である。 図3の油圧制御回路のうち自動変速機の変速制御に関連する部分の構成を説明する回路図である。 図3の電子制御装置が備えている機能を説明するブロック線図である。 図6のエンジン制御手段によって行われるスロットル制御で用いられるアクセル操作量Accとスロットル弁開度θTHとの関係の一例を示す図である。 図6の変速制御手段によって行われる自動変速機の変速制御で用いられる変速線図(マップ)の一例を示す図である。 図6のフェールセーフ処理実行手段等によって行われるフェールセーフ処理の内容を具体的に説明するフローチャートである。 図3の油圧制御回路に備えられているフェールセーフバルブを説明する回路図である。
符号の説明
14:自動変速機 90:電子制御装置 134:スイッチ異常判定手段 136:フェールセーフ処理実行手段 SW1、SW2:油圧スイッチ NT:タービン回転速度(入力軸回転速度) V:車速(出力軸回転速度) C1、C2:クラッチ(係合要素) B1〜B3:ブレーキ(係合要素)

Claims (1)

  1. 複数の係合要素を選択的に係合させることにより変速比が異なる複数のギヤ段を成立させる自動変速機に関し、該自動変速機の入力軸回転速度および出力軸回転速度に基づいて、該自動変速機にニュートラル状態となる故障が生じたと判定された時には、所定のギヤ段を成立させるためのフェールセーフ処理を実行する自動変速機の制御装置において、
    前記係合要素を係合させるための油圧に応じて作動する油圧スイッチと、
    前記油圧スイッチの異常を判定するためのスイッチ異常判定手段と、
    前記自動変速機にニュートラル状態となる故障が生じたと判定された時において、前記スイッチ異常判定手段により前記油圧スイッチの異常が判定されておらず、該油圧スイッチの出力により何れの係合要素が故障であるかが特定できる時には、該油圧スイッチの出力に基づいて前記フェールセーフ処理の中から特定の処理を選択して実行する一方、前記スイッチ異常判定手段により前記油圧スイッチの異常が判定されており、該油圧スイッチの出力により何れの係合要素が故障であるかが特定できない時には、前記自動変速機がニュートラル状態となる故障が生じたと判定された時の指示ギヤ段に基づき、前記フェールセーフ処理の中から特定の処理を選択して実行するフェールセーフ処理実行手段と、
    を有することを特徴とする自動変速機の制御装置。
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