JP2005273805A - 自動変速機の異常検出装置 - Google Patents

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裕康 本田
Yoshikazu Tanaka
義和 田中
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Abstract

【課題】 油圧スイッチを用いたり正常時にオーバーラップして係合させたりすることなく摩擦係合装置の異常を検出できるようにする。
【解決手段】 パワーON状態で複数の摩擦係合装置のうちの何れか1つを解放しつつ他の1つを係合させて変速する2→3、3→4、または4→5アップシフト時に、カウンタCount がフェール判断値Ts以上になっても変速が終了しない場合には、係合側および解放側の一対の摩擦係合装置を共に解放する解放指令(ニュートラル指令)を出力するとともに、その解放指令に拘らずエンジン回転速度変化ΔNEが吹き上がり判断値α以下の場合には、解放側摩擦係合装置が解放不良である旨の異常判断を行う。
【選択図】 図8

Description

本発明は車両の自動変速機に係り、特に、複数の摩擦係合装置のうちの何れか1つを解放しつつ他の1つを係合させて変速する際に、解放側の摩擦係合装置が異常か否かを判断する異常検出装置に関するものである。
複数の摩擦係合装置が選択的に係合させられることにより、変速比が異なる複数のギヤ段を成立させて動力源の出力を車輪側へ伝達する自動変速機において、動力源がパワーON状態の場合に、前記複数の摩擦係合装置のうちの何れか1つを解放しつつ他の1つを係合させて変速することにより、変速時にニュートラルとなって駆動トルクが一時的に抜けたり動力源が吹き上がったりすることを防止する技術が知られている。一方、このような自動変速機において、摩擦係合装置が故障すると所定のギヤ段が成立しなくなる可能性があることから、摩擦係合装置の異常の有無を検出してフェイルセーフモードへ移行することが提案されている。特許文献1に記載の装置はその一例で、油圧式の摩擦係合装置が用いられているとともに、その油圧の大きさでON、OFFする油圧スイッチを設けて、油圧回路を含む摩擦係合装置の異常を検出するようになっている。また、特許文献2には、上記係合および解放する一対の摩擦係合装置をオーバーラップして係合させても動力源が吹き上がる場合には、係合側の摩擦係合装置が異常であると判断する技術が記載されている。
特開2000−9224号公報 特開平6−341540号公報
しかしながら、油圧スイッチを用いて異常を検出する場合には、部品点数が増えるとともに油圧回路が複雑になり、製造コストが高くなる一方、オーバーラップして係合させる場合には、両摩擦係合装置が正常な時にタイアップしてショックが発生するとともに、摩擦係合装置に過大な負荷が作用して耐久性が損なわれる可能性がある。
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、油圧スイッチを用いたり正常時にオーバーラップして係合させたりすることなく摩擦係合装置の異常を検出できるようにすることにある。
かかる目的を達成するために、本発明は、(a) 複数の摩擦係合装置が選択的に係合させられることにより、変速比が異なる複数のギヤ段を成立させて動力源の出力を車輪側へ伝達する自動変速機に関し、(b) 前記動力源がパワーON状態で前記複数の摩擦係合装置のうちの何れか1つを解放しつつ他の1つを係合させて変速する際に、その解放側の摩擦係合装置が異常か否かを判断する自動変速機の異常検出装置であって、(c) 前記変速が進行しているか否かを判断する変速進行判断手段と、(d) その変速進行判断手段によって前記変速が進行していない旨の判断が為された場合に、前記係合側および前記解放側の一対の摩擦係合装置を共に解放すべき解放指令を出力する解放手段と、(e) 前記解放指令に拘らず、前記動力源の回転速度が上昇しない場合に前記解放側の摩擦係合装置の異常判断を行う異常判断手段と、を有することを特徴とする。
このような自動変速機の異常検出装置によれば、パワーON状態で複数の摩擦係合装置のうちの何れか1つを解放しつつ他の1つを係合させて変速する際に、その変速が進行しているか否かを判断し、変速が進行していない場合には係合側および解放側の一対の摩擦係合装置を共に解放する解放指令を出力するとともに、その解放指令に拘らず動力源の回転速度が上昇しない場合には、解放側の摩擦係合装置の異常判断を行う。すなわち、変速が進行しなければ、係合側および解放側の一対の摩擦係合装置の何れか一方が異常である可能性があり、その変速に関与する一対の摩擦係合装置を共に解放すれば、動力源の回転速度は反力が無くなって上昇するはずであるが、変速前のギヤ段の係合要素である解放側の摩擦係合装置が正しく解放しない場合には、その変速前のギヤ段に対応する回転速度に留まるため、その回転速度の上昇の有無に基づいて解放側の摩擦係合装置の異常判断を行うことができるのである。解放不良の原因としては、例えば摩擦係合装置そのものの作動不良やその係合力制御を行う電気系統の故障があり、油圧式摩擦係合装置の場合には、リニアソレノイド弁やコントロール弁等の油圧制御弁のバルブスティック(引っ掛かり)も原因となる。
ここで、本発明では変速に関与する一対の摩擦係合装置を共に解放し、それに伴う動力源の回転速度変化に基づいて異常の有無を判断するため、油圧スイッチ等を用いて異常を検出する場合に比較して装置を簡単且つ安価に構成できるとともに、両摩擦係合装置をオーバーラップして係合させる場合のように、正常時にタイアップによるショックが発生したり摩擦係合装置に過大な負荷が作用して耐久性が損なわれたりする恐れが無い。
自動変速機としては、複数の遊星歯車装置を有する遊星歯車式の自動変速機が好適に用いられるが、複数の入力経路を切り換えて変速する平行軸式の自動変速機を用いることもできるなど、種々の自動変速機を採用できる。摩擦係合装置としては、油圧アクチュエータによって係合させられる多板式、単板式のクラッチやブレーキ、或いはベルト式のブレーキが広く用いられている。
複数の摩擦係合装置のうちの何れか1つを解放しつつ他の1つを係合させるパワーON状態での変速は、変速時にニュートラルとなって駆動トルクが一時的に抜けたり動力源が吹き上がったりすることを防止するためのもので、一般にアップシフトにおいて広く用いられているが、ダウンシフトに適用することもできる。また、予め定められた変速マップ等の変速条件に従って自動的に変速する場合だけでなく、運転者のマニュアル操作に従って変速する場合にも適用され得る。
動力源としては、燃料の燃焼によって動力を発生するエンジン(内燃機関)が広く用いられているが、電動モータ等の他の動力源を採用することもできる。
変速進行判断手段は、例えば変速終了が予想される一定時間を経過しても次のギヤ段が成立しない場合に、変速が進行していない旨の判断を行うように構成されるが、変速出力から一定時間経過しても変速が開始(入力回転速度変化など)しないか否かを判断するようにしても良いなど、種々の態様を採用できる。変速の進行は、一般に変速比の変化に伴う入力回転速度や動力源の回転速度の変化に基づいて判断できる。
異常判断手段は、解放側の摩擦係合装置の異常(解放不良)を判断するものであるが、その異常判断に基づいて異常ランプの点灯などで運転者に異常を知らせたり、ダイアグノーシスに異常を記録したり、変速で使用するギヤ段を制限したりするなどの対応処理を行う手段が必要に応じて設けられる。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)車両などの横置き型の車両用駆動装置の骨子図であり、ガソリンエンジン等の内燃機関によって構成されているエンジン10の出力は、トルクコンバータ12、自動変速機14、差動歯車装置16等の動力伝達装置を経て図示しない駆動輪(前輪)へ伝達されるようになっている。トルクコンバータ12は、エンジン10のクランク軸18と連結されているポンプ翼車20と、自動変速機14の入力軸22に連結されたタービン翼車24と、一方向クラッチ26を介して非回転部材であるハウジング28に固定されたステータ30と、図示しないダンパを介してクランク軸18を入力軸22に直結するロックアップクラッチ32とを備えている。ポンプ翼車20にはギヤポンプ等の機械式のオイルポンプ21が連結されており、エンジン10によりポンプ翼車20と共に回転駆動されて変速用や潤滑用などの油圧を発生するようになっている。上記エンジン10は車両走行用の動力源であり、トルクコンバータ12は流体継手である。
自動変速機14は、入力軸22上に同軸に配設されるとともにキャリアとリングギヤとがそれぞれ相互に連結されることにより所謂CR−CR結合の遊星歯車機構を構成するシングルピニオン型の一対の第1遊星歯車装置40および第2遊星歯車装置42と、前記入力軸22と平行なカウンタ軸44上に同軸に配置された1組の第3遊星歯車装置46と、そのカウンタ軸44の軸端に固定されて差動歯車装置16と噛み合う出力ギヤ48とを備えている。上記遊星歯車装置40,42,46の各構成要素すなわちサンギヤ、リングギヤ、それらに噛み合う遊星ギヤを回転可能に支持するキャリアは、4つのクラッチC0、C1、C2、C3によって互いに選択的に連結され、或いは3つのブレーキB1、B2、B3によって非回転部材であるハウジング28に選択的に連結されるようになっている。また、2つの一方向クラッチF1、F2によってその回転方向により相互に若しくはハウジング28と係合させられるようになっている。なお、差動歯車装置16は軸線(車軸)に対して対称的に構成されているため、下側を省略して示してある。
上記入力軸22と同軸上に配置された一対の第1遊星歯車装置40,第2遊星歯車装置42、クラッチC0、C1、C2、ブレーキB1、B2、および一方向クラッチF1により前進4段、後進1段の主変速部MGが構成され、上記カウンタ軸44上に配置された1組の遊星歯車装置46、クラッチC3、ブレーキB3、一方向クラッチF2によって副変速部すなわちアンダードライブ部U/Dが構成されている。主変速部MGにおいては、入力軸22はクラッチC0、C1、C2を介して第2遊星歯車装置42のキャリアK2、第1遊星歯車装置40のサンギヤS1、第2遊星歯車装置42のサンギヤS2にそれぞれ連結されている。第1遊星歯車装置40のリングギヤR1と第2遊星歯車装置42のキャリアK2との間、第2遊星歯車装置42のリングギヤR2と第1遊星歯車装置40のキャリアK1との間はそれぞれ連結されており、第2遊星歯車装置42のサンギヤS2はブレーキB1を介して非回転部材であるハウジング28に連結され、第1遊星歯車装置40のリングギヤR1はブレーキB2を介して非回転部材であるハウジング28に連結されている。また、第2遊星歯車装置42のキャリアK2と非回転部材であるハウジング28との間には、一方向クラッチF1が設けられている。そして、第1遊星歯車装置40のキャリアK1に固定された第1カウンタギヤG1と第3遊星歯車装置46のリングギヤR3に固定された第2カウンタギヤG2とは相互に噛み合わされている。アンダードライブ部U/Dにおいては、第3遊星歯車装置46のキャリアK3とサンギヤS3とがクラッチC3を介して相互に連結され、そのサンギヤS3と非回転部材であるハウジング28との間には、ブレーキB3と一方向クラッチF2とが並列に設けられている。
上記クラッチC0、C1、C2、C3およびブレーキB1、B2、B3(以下、特に区別しない場合は単にクラッチC、ブレーキBという)は、多板式のクラッチやバンドブレーキなど油圧アクチュエータによって係合制御される油圧式摩擦係合装置であり、油圧制御回路98(図3参照)のソレノイド弁S1〜S5、およびリニアソレノイド弁SL1、SL2、SLUの励磁、非励磁や図示しないマニュアルバルブによって油圧回路が切り換えられることにより、例えば図2に示すように係合、解放状態が切り換えられ、シフトレバー72(図3参照)の操作位置(ポジション)に応じて前進5段、後進1段、ニュートラルの各ギヤ段が成立させられる。図2の「1st」〜「5th」は前進の第1速ギヤ段〜第5速ギヤ段を意味しており、「○」は係合、「×」は解放、「△」は駆動時のみ係合を意味している。シフトレバー72は、例えば図4に示すシフトパターンに従って駐車ポジション「P」、後進走行ポジション「R」、ニュートラルポジション「N」、前進走行ポジション「D」、「4」、「3」、「2」、「L」へ操作されるようになっており、「P」および「N」ポジションでは動力伝達を遮断する非駆動ギヤ段としてニュートラルギヤ段が成立させられるが、「P」ポジションでは図示しないメカニカルパーキング機構によって機械的に駆動輪の回転が阻止される。
図3は、図1のエンジン10や自動変速機14などを制御するために車両に設けられた制御系統を説明するブロック線図で、アクセルペダル50の操作量(アクセル開度)Accがアクセル操作量センサ51により検出されるようになっている。アクセルペダル50は、運転者の出力要求量に応じて大きく踏み込み操作されるもので、アクセル操作部材に相当し、アクセル操作量Accは出力要求量に相当する。エンジン10の吸気配管には、スロットル指令値TAに従ってスロットルアクチュエータ54が制御されることによりスロットル弁開度θTHが変化させられる電子スロットル弁56が設けられている。スロットル指令値TAはスロットル弁開度θTHに対応し、基本的には図5に示すようにアクセル操作量Accをパラメータとして予め定められた目標スロットル指令値TA* のマップに従って制御され、アクセル操作量Accが多くなるほど目標スロットル指令値TA* 、更にはスロットル指令値TAが大きくされ、スロットル弁開度θTHが開き制御されてエンジン出力が増大させられる。
また、エンジン10の回転速度NEを検出するためのエンジン回転速度センサ58、エンジン10の吸入空気量Qを検出するための吸入空気量センサ60、上記電子スロットル弁56の全閉状態(アイドル状態)およびその開度θTHを検出するためのアイドルスイッチ付スロットルセンサ64、車速Vに対応するカウンタ軸44の回転速度NOUT を検出するための車速センサ66、エンジン10の冷却水温TW を検出するための冷却水温センサ68、フットブレーキ操作の有無を検出するためのブレーキスイッチ70、シフトレバー72のレバーポジション(操作位置)PSHを検出するためのレバーポジションセンサ74、タービン回転速度NT(=入力軸22の回転速度NIN)を検出するためのタービン回転速度センサ76、油圧制御回路98内の作動油の温度であるAT油温TOIL を検出するためのAT油温センサ78、第1カウンタギヤG1の回転速度NCを検出するためのカウンタ回転速度センサ80などが設けられており、それらのセンサから、エンジン回転速度NE、吸入空気量Q、スロットル弁開度θTH、車速V、エンジン冷却水温TW 、ブレーキ操作の有無、シフトレバー72のレバーポジションPSH、タービン回転速度NT、AT油温TOIL 、カウンタ回転速度NC、などを表す信号が電子制御装置90に供給されるようになっている。ブレーキスイッチ70は、常用ブレーキを操作するブレーキペダルの踏込み状態でON、OFFが切り換わるON−OFFスイッチである。
電子制御装置90は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、エンジン10の出力制御や自動変速機14の変速制御などを実行するもので、図7に示すように機能的にエンジン制御手段110および変速制御手段120を備えており、必要に応じてエンジン制御用と変速制御用とに分けて構成される。
エンジン制御手段110は、前記スロットルアクチュエータ54により電子スロットル弁56を開閉制御する他、燃料噴射量制御のために燃料噴射弁92を制御し、点火時期制御のためにイグナイタ等の点火装置94を制御するとともに、エンジン10の始動時にはスタータ(電動モータ)96によってクランク軸18をクランキングする。電子スロットル弁56の開閉制御は、基本的には図5に示す関係から実際のアクセル操作量Accに基づいて目標スロットル指令値TA* を求め、その目標スロットル指令値TA* をそのままスロットル指令値TAとして出力してスロットルアクチュエータ54を駆動することにより、アクセル操作量Accが増加するほどスロットル弁開度θTHを増加させるが、トラクションコントロールなどにより必要に応じてアクセル操作量Accに応じた目標スロットル指令値TA* とは異なるスロットル指令値TAを出力する。
変速制御手段120は、例えば図6に示す予め記憶された変速線図(変速マップ)から実際のアクセル操作量Accおよび車速Vに基づいて自動変速機14の変速すべきギヤ段を決定し、その決定されたギヤ段への変速作動を開始させる変速出力を実行するとともに、駆動力変化などの変速ショックが発生したり摩擦材の耐久性が損なわれたりすることがないように、油圧制御回路98のソレノイド弁S1〜S5のON(励磁)、OFF(非励磁)を切り換えたり、リニアソレノイド弁SL1、SL2、SLUの通電量を連続的に変化させたりする。図6の実線はアップシフト線で、破線はダウンシフト線であり、車速Vが低くなったりアクセル操作量Accが大きくなったりするに従って、変速比γ(=入力回転速度NIN/出力回転速度NOUT )が大きい低速側のギヤ段に切り換えられるようになっており、図中の「1」〜「5」は第1速ギヤ段「1st」〜第5速ギヤ段「5th」を意味している。
そして、2→3アップシフトでは、ブレーキB1を解放するとともにクラッチC0を係合させるクラッチツークラッチ変速を実施し、3→4アップシフトでは、クラッチC1を解放するとともにブレーキB1を係合させるクラッチツークラッチ変速を実施し、4→5アップシフトでは、ブレーキB3を解放するとともにクラッチC3を係合させるクラッチツークラッチ変速を実施する。その場合に、アクセルONでエンジン10の出力が車輪側へ伝達されるパワーON状態では、変速時にニュートラルとなって駆動トルクが一時的に抜けたりエンジン10が吹き上がったりすることを防止するため、リニアソレノイド弁SL1、SL2などの油圧制御により、図9に示すように解放側の摩擦係合装置を解放しつつ係合側の摩擦係合装置を徐々に係合させてアップシフトを行う。図9の実線は、パワーON状態での2→3、3→4、または4→5アップシフト時における解放側および係合側の摩擦係合装置の油圧変化を、入力回転速度NINに対応するエンジン回転速度NEの変化と対応させて示したタイムチャートの一例で、時間t1 は変速出力すなわち解放側および係合側の油圧制御指令が出力された時間であり、時間t2 は、エンジン回転速度NEすなわち入力回転速度NINがアップシフト後のギヤ段の同期回転速度に達して変速が終了した時間である。エンジン回転速度NEは、係合側の摩擦係合装置の係合トルクによって引き下げられる。
ここで、本実施例の変速制御手段120は、図7に示すように変速進行判断手段122、解放手段124、異常判断手段126、対応処理手段128を機能的に備えており、図8のフローチャートに従って信号処理を行うことにより、上記パワーON状態でのアップシフト時に解放側の摩擦係合装置の異常(解放不良)を判断するようになっている。図8のフローチャートのステップS2〜S4は変速進行判断手段122に相当し、ステップS5は解放手段124に相当し、ステップS6およびS7は異常判断手段126に相当し、ステップS8は対応処理手段128に相当する。
図8のステップS1では、解放側の摩擦係合装置を解放しつつ係合側の摩擦係合装置を係合させて変速を行う前記パワーON状態での2→3、3→4、または4→5アップシフトの変速出力が為されたか否かを判断し、それ等のアップシフトの変速出力が為されるとステップS2以下を実行する。ステップS2ではカウンタCount をリセットして新たに計数(計時)を開始させ、ステップS3では変速が終了したか否かを判断する。変速終了は、エンジン回転速度NEすなわち入力回転速度であるタービン回転速度NTが、アップシフト後のギヤ段の同期回転速度に達したか否かによって判断でき、同期回転速度は、アップシフト後のギヤ段の変速比γと出力回転速度NOUT とを掛け算することによって求められる。
変速開始当初は、上記ステップS3の判断はNO(否定)で、ステップS4を実行する。ステップS4では、カウンタCount が、正常時の変速所要時間よりも長い予め定められたフェール判断値Ts以上になったか否かを判断し、Count <TsであればステップS3を繰り返す。フェール判断値Tsは、例えばアップシフトの種類毎に一定値が予め定められるが、変速時間に影響する車速Vやスロットル弁開度θTHなどをパラメータとして設定されるようにしても良い。そして、Count ≧Tsになる前に変速が終了すれば異常はなく、ステップS3の判断がYES(肯定)となってそのまま本制御を終了するが、変速が終了することなくCount ≧Tsになったら、何等かの異常があると判断してステップS5以下を実行する。図9の時間t3 は、アップシフトが終了することなくカウンタCount がフェール判断値Tsに達した時間で、この段階では例えば解放側摩擦係合装置の解放不良や係合側摩擦係合装置の係合不良などが考えられる。
ステップS5では、今回のアップシフトに関与している解放側および係合側の一対の摩擦係合装置の油圧を抜いて一気に解放すべき解放指令(ニュートラル指令)を出力する。これにより、解放側摩擦係合装置が正常に解放されれば、エンジン10は反力の作用を受けなくなってニュートラル状態となり、エンジン回転速度NEは図9に一点鎖線で示すように上昇するが、解放側摩擦係合装置が何等かの理由で係合したままであれば、エンジン回転速度NEは破線で示すように変速前のギヤ段の変速比γに応じた回転速度を維持する。解放側摩擦係合装置の解放不良の原因としては、リニアソレノイド弁の通電不良やバルブスティック(引っ掛かり)、リニアソレノイド弁の出力油圧に従って作動させられるコントロール弁のバルブスティックなどがある。なお、図9の油圧の欄において破線で示すように時間t3 で低下している解放側油圧は正常時の場合で、解放側摩擦係合装置が解放不良の場合は、実線で示す部分も含めて解放側油圧は最大値を維持したままとなる。
ステップS6では、エンジン回転速度NEの所定時間の変化量ΔNEが予め定められた吹き上がり判断値αより大きいか否かを判断する。吹き上がり判断値αは、一対の摩擦係合装置が何れも正常に解放されてエンジン回転速度NEが上昇したか否かを判断できれば良く、例えば正の一定値が定められるが、変速の種類や車速V、車速Vの変化ΔV、変速比γなどをパラメータとして設定されるようにしても良い。そして、ΔNE>αの場合は、解放側摩擦係合装置は正常に解放されているため、ステップS9で、その解放側摩擦係合装置は正常である旨の判断を行って一連の制御を終了する。なお、引き続いて係合側摩擦係合装置の異常の有無について判断するようにしても良い。
一方、ΔNE≦αの場合は、解放側摩擦係合装置が正常に解放されていないため、前記ステップS6に続いてステップS7を実行し、解放側摩擦係合装置が解放不良である旨の異常判断を行うとともに、ステップS8で、異常ランプの点灯などで運転者に異常を知らせたり、ダイアグノーシスに異常を記録したり、変速で使用するギヤ段を制限したりするなどの対応処理を実行する。
このように、本実施例では、パワーON状態で複数の摩擦係合装置のうちの何れか1つを解放しつつ他の1つを係合させて変速する2→3、3→4、または4→5アップシフト時に、カウンタCount がフェール判断値Ts以上になっても変速が終了しない場合には、係合側および解放側の一対の摩擦係合装置を共に解放する解放指令(ニュートラル指令)を出力するとともに、その解放指令に拘らずエンジン回転速度変化ΔNEが吹き上がり判断値α以下の場合には、解放側摩擦係合装置が解放不良である旨の異常判断を行うため、油圧スイッチ等を用いて異常を検出する場合に比較して装置を簡単且つ安価に構成できるとともに、解放側および係合側の一対の摩擦係合装置をオーバーラップして係合させる場合のように、正常時にタイアップによるショックが発生したり摩擦係合装置に過大な負荷が作用して耐久性が損なわれたりする恐れが無い。
なお、上記実施例ではステップS3で変速が終了したか否かを判断するようになっているが、エンジン回転速度NEの変化に基づいて変速(イナーシャ相)が開始したか否かを判断するとともに、ステップS4では、正常時の変速開始所要時間よりも少し長い予め定められたフェール判断値Tt(図9参照)以上になったか否かを判断するようにしても良い。その場合は、係合側の摩擦係合装置が完全に係合する前にステップS5以下が実行されるため、解放側摩擦係合装置が解放不良の場合でもタイアップによるショックを発生することなく異常判断を行うことができる。
また、前記実施例では、パワーON状態で複数の摩擦係合装置のうちの何れか1つを解放しつつ他の1つを係合させて変速する2→3、3→4、または4→5アップシフト時に、解放側の摩擦係合装置の解放不良を検出する場合について説明したが、パワーON状態で解放側の摩擦係合装置を解放しつつ係合側の摩擦係合装置を係合させて変速するものであればダウンシフトなど他の変速であっても、前記実施例と同様にして解放側の摩擦係合装置の異常判断を行うことができる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
本発明が好適に適用される車両用駆動装置の構成を説明する骨子図である。 図1の自動変速機の各ギヤ段を成立させるためのクラッチおよびブレーキの係合解放状態を説明する図である。 図1の車両用駆動装置のエンジン制御や変速制御を行う制御系統を説明するブロック線図である。 図3のシフトレバーのシフトパターンの一例を示す図である。 図3の電子制御装置によって行われるスロットル制御で用いられるアクセル操作量Accと目標スロットル指令値TA* との関係の一例を示す図である。 図3の電子制御装置によって行われる自動変速機の変速制御で用いられる変速線図(マップ)の一例を示す図である。 図3の電子制御装置の制御機能の要部を説明するブロック線図である。 図7の変速制御手段が備えている異常検出機能の処理内容を具体的に説明するフローチャートである。 図8のフローチャートに従って異常検出を行った場合のエンジン回転速度NEおよび摩擦係合装置の油圧の変化を説明するタイムチャートの一例である。
符号の説明
10:エンジン(動力源) 14:自動変速機 90:電子制御装置 122:変速進行判断手段 124:解放手段 126:異常判断手段 C0、C1、C2、C3:クラッチ(摩擦係合装置) B1、B2、B3:ブレーキ(摩擦係合装置) NE:エンジン回転速度
ステップS2〜S4:変速進行判断手段
ステップS5:解放手段
ステップS6、S7:異常判断手段

Claims (1)

  1. 複数の摩擦係合装置が選択的に係合させられることにより、変速比が異なる複数のギヤ段を成立させて動力源の出力を車輪側へ伝達する自動変速機に関し、
    前記動力源がパワーON状態で前記複数の摩擦係合装置のうちの何れか1つを解放しつつ他の1つを係合させて変速する際に、該解放側の摩擦係合装置が異常か否かを判断する自動変速機の異常検出装置であって、
    前記変速が進行しているか否かを判断する変速進行判断手段と、
    該変速進行判断手段によって前記変速が進行していない旨の判断が為された場合に、前記係合側および前記解放側の一対の摩擦係合装置を共に解放すべき解放指令を出力する解放手段と、
    前記解放指令に拘らず、前記動力源の回転速度が上昇しない場合に前記解放側の摩擦係合装置の異常判断を行う異常判断手段と、
    を有することを特徴とする自動変速機の異常検出装置。
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