JP2007162263A - 建物用制振装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】同じ仕様・諸元のダイナミックダンパーとバネ定数の異なる取付けブラケットを複数用意して、建物が発生する、異なった振動数の振動を吸収し、音の低減化を図る建物用制振装置を提供する。
【解決手段】建物の柱、梁、根太に取付けられるものであって、弾性体を有するゴム部30と、質量体を有するマス部20とから構成されるダイナミックダンパー10と、そのダイナミックダンパーを上記建物に取付ける取付けブラケット40から構成される建物用制振装置1において、ゴム部のゴム弾性体32の特性をtanδの値が0.01〜0.7の範囲に形成し、ダイナミックダンパーの固有振動数(f1)と取付ける建物の第1共振周波数(F1)と一致させ、ダイナミックダンパーと取付けブラケットから構成される建物用制振装置の固有振動数(f2)と建物の第2共振周波数(F2)と一致させ、上記f1とf2を20〜180Hzの範囲とした建物用制振装置である。
【選択図】図1

Description

本発明は、建物における柱、梁、根太等の制振を目的に用いられる制振装置に関するものである。特に、所定の質量を有するマスと、所定のバネ特性及び減衰特性を有するゴム弾性体とからなるダイナミックダンパーの固有振動数と、そのダイナミックダンパーを建物に装着する取付けブラケットとダイナミックダンパーを合体させた建物用制振装置の固有振動数を異ならせるようにして、2つの固有振動数により、上の階から衝撃力が入力されることによって下の階に発生する音の抑制、及び上階における人の歩行時に発生する音の低減化を、広い振動数の領域で図ることのできるようにした建物用制振装置に関するものである。
一般に、鉄骨系の住宅においては、その骨格を形成する柱、梁等にH形鋼あるいはC形鋼等からなる鉄骨材が用いられていることより、木造住宅等に較べて、その床及び天井等に関して減衰力(減衰特性)が劣ると言う問題点を有する。このような点を考慮して、従来の鉄骨系住宅において、高い重量床衝撃音性能を確保するためには、上の階の床と下の階の天井の間の梁に、床制振材及び床吸振材等を設けるものがある。
しかし、上記床制振材が質量の重いものであるところから、その設置には多くの労力を要すると言う問題点がある。また、上下の梁間には、小梁用の制振材と大梁用の制振材が設置されるようになっているとともに、下の階の天井のところには、グラスウール等からなる吸音材等が設置されるようになっている。このため、従来のものにおいては、上述のように多数の異なる種類の制振部材等を用意しなければならず、コスト的にも不利である。また、質量の重い各種制振材等を敷設するにあたっては、その敷設作業が煩雑となり、作業効率を低下させるおそれがある。
そこで、図10に示すように、振動を吸収するために、上の階の床と下の階の天井を支えるためその間に設けた大梁4と小梁5にダイナミックダンパー110を設けたものがある(例えば、特許文献1参照。)。この場合には、図7に示すように、所定の振動数の振動を強く吸収するために、ダイナミックダンパー110の固有振動数と、ダイナミックダンパー110を取付けブラケットに装着したときの制振装置全体の固有振動数を一致させるように調整していた。
しかしながら、建物において発生する振動は多くの異なる振動数を有しており、その振動を吸収するためには、異なる固有振動数を有するダイナミックダンパー110をそれぞれ取付ける必要がある。そのため、異なるダイナミックダンパー110を製造し、用意することとなり、製造工程が複雑となり、製造コストが増加することとなる。
また、自動車用ダイナミックダンパーにおいて、マスーゴムから成る複数の複振動系をバネ材を介して並列配置することで、主振動系を構成し、主振動系による反共振を複振動系により低減する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。しかし、この技術は主振動系による反共振を低減させるものであり、もともと複数の共振周波数をもつ振動系に適用するためには、複数の異なる固有振動数を有するダイナミックダンパーを設置する必要があった。
特開2004−3280号公報 特開2003−28234号公報
このような問題点を解決するために、同じ仕様・諸元からなるダイナミックダンパーとバネ定数の異なる取付けブラケットを複数用意して、建物が発生する、異なった振動数の振動を吸収し、上階における人の歩行時等に発生する音の低減化を図ることのできるようにした建物用制振装置を提供しようとするのが、本発明の課題である。
上記課題を解決するために、請求項1の本発明は、建物の柱、梁、根太に取付けられるものであって、弾性体を有するゴム部と、質量体を有するマス部とから構成されるダイナミックダンパーと、該ダイナミックダンパーを建物に取付ける取付けブラケットから構成される建物用制振装置において、
ゴム部のゴム弾性体の特性をtanδの値が0.01〜0.7の範囲に形成し、ダイナミックダンパーの固有振動数(f1)と建物の第1共振周波数(F1)と一致させ、ダイナミックダンパーと取付けブラケットから構成される建物用制振装置の固有振動数(f2)と建物の第2共振周波数(F2)と一致させるとともに、ダイナミックダンパーの固有振動数(f1)とダイナミックダンパーと取付けブラケットから構成される建物用制振装置の固有振動数(f2)をそれぞれ20Hz〜180Hzの範囲としたたことを特徴とする建物用制振装置である。
請求項1の本発明では、ゴム部のゴム弾性体の特性をtanδの値が0.01〜0.7の範囲に形成するため、ゴム部の減衰特性を上記所定の範囲内に設定することによって、比較的広い範囲の周波数帯域においても制振作用を発揮させることができるようになる。その結果、重量衝撃音の低減化、具体的には、JISA1418に規定される重量床衝撃音レベル等級LH−60を確保することができるようになる。また、歩行者の歩行により生ずる音の低減化を図ることができるようになる。
ダイナミックダンパーの固有振動数(f1)と建物の第1共振周波数(F1)と一致させたため、建物の第1共振周波数(F1)の周波数域において、柱、梁、根太等の振動を効果的に制振することができるようになる。
また、ダイナミックダンパーと取付けブラケットから構成される建物用制振装置の固有振動数(f2)と建物の第2共振周波数(F2)と一致させたため、建物の第2共振周波数(F2)の周波数域において、柱、梁、根太等の振動を効果的に制振することができるようになるとともに、1つのダイナミックダンパーを使用しても、2個の固有振動数を有するため、異なる2種類の周波数の振動を同時に吸収することができ、建物の振動と騒音をより多く吸収することができる。
さらに、ダイナミックダンパーの固有振動数(f1)とダイナミックダンパーと取付けブラケットから構成される建物用制振装置の固有振動数(f2)をそれぞれ20Hz〜180Hzの範囲としたため、住宅等の建物において発生する可能性の大きい振動を効果的に吸収することができ、防音効果が大きい。
請求項2の本発明は、ダイナミックダンパーと取付けブラケットから構成される建物用制振装置の固有振動数(f2)と建物の第2共振周波数(F2)との一致は、ダイナミックダンパーを共通使用して、取付けブラケットのバネ定数を調整して一致させた建物用制振装置である。
請求項2の本発明では、ダイナミックダンパーと取付けブラケットから構成される建物用制振装置の固有振動数(f2)と建物の第2共振周波数(F2)と一致は、ダイナミックダンパーを共通使用して、取付けブラケットのバネ定数を調整して一致させたものである。このため、同じダイナミックダンパーを使用することができ、製造工程が単純になり、製造コストを低減することができる。また、同じダイナミックダンパーを使用しても、取付けブラケットを変化させることのみで、建物の第2共振周波数(F2)と一致させることができるため、建物用制振装置の固有振動数(f2)と建物の第2共振周波数(F2)とを一致させる調整が容易であり、効率がよい。
請求項3の本発明は、取付けブラケットのバネ定数の調整は、取付けブラケットにおいてダイナミックダンパーを取付けるダンパー取付け板と柱、梁又は根太に取付ける梁取付け板とを略直角に屈曲して形成し、ダンパー取付け板と梁取付け板との間に補強リブを設けて調整する建物用制振装置である。
請求項3の本発明では、取付けブラケットのバネ定数の調整は、取付けブラケットにおいてダイナミックダンパーを取付けるダンパー取付け板と柱、梁又は根太に取付ける梁取付け板とを略直角に屈曲して形成し、ダンパー取付け板と梁取付け板との間に補強リブを設けて調整するため、補強リブの数、大きさと肉厚を変化させることにより容易に調整することができ、製造が容易である。
請求項4の本発明は、取付けブラケットのバネ定数の調整は、取付けブラケットのダイナミックダンパーを取付けるダンパー取付け板の幅を変化させ、ダイナミックダンパーと建物の柱、梁又は根太との間の距離を調整する建物用制振装置である。
請求項4の本発明では、取付けブラケットのバネ定数の調整は、取付けブラケットのダイナミックダンパーを取付けるダンパー取付け板の幅を変化させ、ダイナミックダンパーと建物の柱、梁又は根太との間の距離を調整するため、取付けブラケットのダンパー取付け板の幅を変化させるのみで、容易に調整することができ、取付けブラケットの板金の材料を変化させることがなく、寸法を変えることのみで調整が容易である。
請求項5の本発明は、取付けブラケットのバネ定数の調整は、取付けブラケットを構成する板金の板厚を調整する建物用制振装置である。
請求項5の本発明では、取付けブラケットのバネ定数の調整は、取付けブラケットを構成する板金の板厚を調整するため、取付けブラケットを構成する板金の板厚を変化させるのみで、容易に調整することができ、建物用制振装置の形状を大きく変化させることがなく、建物への取付け等の作業が容易である。
請求項6の本発明は、固有振動数(f2)の異なった複数の種類の建物用制振装置が、建物に取付けられている建物用制振装置である。
請求項6の本発明では、固有振動数(f2)の異なった複数の種類の建物用制振装置が建物に取付けられているため、多数の異なった振動数の振動を効果的に吸収することができる。固有振動数(f2)の異なった複数の種類の建物用制振装置は、取付けブラケットの板金の肉厚や、幅や、補強リブの形状等を変化させることにより容易に製造することができる。
請求項7の本発明は、建物用制振装置は、天井または1つ上の階の床を支える梁、根太に装着される建物用制振装置である。
請求項7の本発明では、建物用制振装置は、天井または1つ上の階の床を支える梁、根太に装着されるため、上の階から衝撃力により建物が振動して、下の階に発生する音の抑制を図ることができるようになる。
請求項8の本発明は、建物用制振装置は、天井または1つ上の階の床を支える梁、根太の腹部に装着される建物用制振装置である。
請求項8の本発明では、建物用制振装置は、天井または1つ上の階の床を支える梁、根太の腹部に装着されるため、特定周波数の床振動を効果的に抑制することができるようになるとともに、ダイナミックダンパーを、床を支える小梁の腹部のところに設置するようにしたので、振動形態における最大振幅部である小梁の腹部にてダイナミックダンパーを作動させることができるようになり、制振効果を最大限に発揮させることができるようになる。
請求項9の本発明は、ゴム部は、ゴム弾性体と、ゴム弾性体の上下をマス取付け板とブラケット取付け板が接着されて形成され、マス取付け板及びマス部並びに取付けブラケット及びブラケット取付け板がそれぞれネジにより固着された建物用制振装置である。
請求項9の本発明では、ゴム部は、ゴム弾性体と、ゴム弾性体の上下をマス取付け板とブラケット取付け板が接着されて形成されたため、ゴム弾性体を加硫成形するときにマス取付け板とブラケット取付け板を成形金型に取付けるのみでゴムとの加硫接着をすることができゴム部の製造が容易である。
マス取付け板及びマス部並びに取付けブラケット及びブラケット取付け板がそれぞれネジにより固着されたため、ゴム部を共通の部品として使用し、マス部と取付けブラケットを自由に選択して使用することができ、固有振動数の調整が容易である。
請求項10の本発明は、建物用制振装置を、同じものを2個一組の状態で、柱、梁又は根太のところに設置する建物用制振装置である。
請求項10の本発明では、建物用制振装置を、同じものを2個一組の状態で、柱、梁又は根太のところに設置するため、建物用制振装置を2個一組の状態で柱、梁又は根太に複数個設置することによって、柱、梁、根太等の振動を効果的に制振することができるようになる。また、同じ仕様の建物用制振装置が大量に生産されることとなるので、建物用制振装置の製造コストの低減化を図ることができるようになる。更には、1個の建物用制振装置の質量を作業に適切な軽い値に設定することができるようになり、建物用制振装置の組立作業あるいは当該建物用制振装置を制振装置として梁等に装着する際の作業性の向上を図ることができるようになる。
本発明によれば、建物の柱、梁、根太のところに設けられるものであって、弾性体を形成するゴム部及び質量体を形成するマスからなるダイナミックダンパー型の建物用制振装置に関して、上記ダイナミックダンパーを形成するゴム部の特性をtanδの値が0.01から0.7の範囲内に入るようにした構成を採ることとしたので、特定の周波数域において、柱、梁、根太等の振動を効果的に制振することができるようになった。
また、ゴム部の減衰特性を所定の範囲内に設定することによって、比較的広い範囲の周波数帯域においても制振作用を発揮させることができるようになり、重量衝撃音のみならず、歩行音の低減化も図ることができるようになった。特に、本発明のものにおいては、JISA1418に規定される重量床衝撃音レベル等級LH−60を確保することができるようになった。
本発明の実施の形態について、図面に基づき説明する。なお、本発明は、住宅用のみならず広く建物用の制振に広く使用することができる建物用制振装置1に関するものであるが、本実施の形態においては、住宅用制振装置を例にとり説明する。
まず、第1の実施の形態について、図1〜図4及び図8〜図11に基き説明する。本実施の形態にかかる建物用制振装置1は、図10に示す如く、鉄骨系住宅の梁、特に小梁5のところに取付けられるものである。なお、後述のように、小梁5の最大振幅部である腹部に取付けることが好ましい。
図1は、建物用制振装置1の平面図であり、図2はその正面図、図3はその側面図である。図4は、建物用制振装置1を小梁5に取付けた模式図である。
建物用制振装置1は、ダイナミックダンパー10と取付けブラケット40から構成され、そのダイナミックダンパー10は、ゴム弾性体32を有するゴム部30及び質量体を有するマス部20から構成される。
マス部20のマス本体21は、横長の略直方体の形状をなし、質量を大きくするため全体が金属製の塊である。固有振動数を変化させるために、質量を変化させるには、横方向の長さを調節することで行うことができる。マス本体21の下面には2箇所に取付けネジ穴22が形成されている。この取付けネジ穴22に、後述するようにマス取付けネジ34が挿入されて、ゴム部30に固着される。ダイナミックダンパー10を形成するマス部20の質量値としては、本実施の形態においては、7〜8Kgのものを採用することができる。
ゴム部30は、弾性を有するゴム弾性体32とそのゴム弾性体32の上下に接着されたマス取付け板31とブラケット取付け板33から構成される。ゴム弾性体32は、略4角柱状に形成され、ゴム弾性体32を加硫成形するときに、マス取付け板31とブラケット取付け板33を加硫接着している。
ゴム弾性体32は、ブチルゴムで形成することができる。他のゴムでも、適宜その制振性に応じて選択することができる。
ダイナミックダンパー10を形成するゴム弾性体32の特性であるtanδの値、すなわち、ゴム弾性体32の動バネ定数と損失ばね定数との間におけるベクトル位相差(角度)の値は0.01から0.7の範囲内に入るように設定することができる。なお、このtanδの値は、0.2から0.6の範囲内に設定されるのがより好ましい。このような範囲内にゴム弾性体32の特性を限定することによって、広い範囲の周波数帯域において制振作用を発揮させることができるようになる。その結果、重量衝撃音の低減化、具体的には、JISA1418に規定される重量床衝撃音レベル等級LH−60の確保や、歩行により発生する音の低減化を図ることができるようになる。
次に、マス取付け板31は、マス部20のマス本体21の下面の中心部付近に密着可能なように略長方形の板状に形成されている。マス取付け板31には、マス本体21に形成された取付けネジ穴22に対応する位置に、取付けネジ孔31bが形成されている。この取付けネジ穴22と取付けネジ孔31bにマス取付けネジ34を挿入してマス部20を固着している。このため、マス部20を自由に交換することができ、必要な周波数を得るように固有振動数を調整することができる。また、ゴム部30とマス部20を別々に製造することができ、製造が容易である。
なお、マス取付け板31の中央部の梁と反対側に、中央突出部31cが形成され、その中央突出部31cには貫通孔が形成され、その貫通孔に後述する保護板36が挿入されている。
ブラケット取付け板33は、取付けブラケット40に密着可能なように略長方形の板状に形成されている。ブラケット取付け板33の梁と反対側の2箇所に、横方向に張り出して突出部33cが形成されている。この突出部33cには、取付けネジ孔33bが形成されている。この取付けネジ孔33bと後述する取付けブラケット40のダンパー用ネジ孔43に、ブラケット取付けネジ35が挿入され、ブラケット取付け板33が取付けブラケット40に固着される。なお、ブラケット取付け板33に突出部33cが形成されているため、マス部20に邪魔されることなくブラケット取付けネジ35を取付けることができる。
なお、ブラケット取付け板33の梁と反対側の中央部から上方に保護板36が屈曲して形成されている。保護板36は、上述のように、マス取付け板31の中央突出部31cに形成された貫通孔を通って上方に伸び、マス部20を保護することができる。
次に、取付けブラケット40について説明する。取付けブラケット40は、図3に示すように断面略L字形をなし、側面が小梁5に取付けられる梁取付け板41を形成し、上面がダイナミックダンパー10を取付けるダンパー取付け板42を構成する。梁取付け板41とダンパー取付け板42のL字形に屈曲した内部には、その梁取付け板41とダンパー取付け板42の両面に直交するように斜めに板状の補強リブ45が取付けられている。補強リブ45は第1の実施の形態では左右両端と中央部の3箇所にとりつけられているが、その数は必要とする固有振動数に応じて適宜選択することができる。また、この補強リブ45は、必要とする取付けブラケット40の強度と固有振動数に応じて省略することもできる。
取付けブラケット40のダンパー取付け板42は、平面状に形成され、前述のブラケット取付け板33の取付けネジ孔33bに対応する部分にダンパー用ネジ孔43が形成される。ブラケット取付け板33とダンパー取付け板42は密着して、ブラケット取付けネジ35で強固に固着される。これにより、ダイナミックダンパー10と取付けブラケット40は一体となり、建物用制振装置1の全体として固有振動数を有するようになる。また後述するように、ダンパー取付け板42の幅方向の寸法を調整することにより、取付けブラケット40のバネ定数を調整することができる。
また、ブラケット取付けネジ35により、取付けブラケット40を自由に交換することができ、必要な固有振動数を得るように建物用制振装置1全体の固有振動数を調整することができる。
梁取付け板41は、ダンパー取付け板42と略直角に折り曲げられるように一体に形成され、小梁5に取付けられるように梁用ネジ孔46が適宜の数だけ形成される。
建物用制振装置1を小梁5取付ける場合は、梁取付け板41を小梁5に密着させて、図3と図4に示すように、建物用制振装置1はダンパー取付けネジ44で小梁5に固着される。これにより、上の階の床や下の階の天井3から小梁5に伝わる住宅の振動を減少させることができる。
また、図10と図11に示すように、床2を支持する小梁5の、最大振幅幅の部分であるそれぞれの中央部に形成される腹部に取付ける。これにより、小梁5の振動を効果的に低減することができる。
なお、図11に示すように建物用制振装置1を2個一組の状態で取付けるようにすることができる。これにより、ダイナミックダンパー10に同じものを2個一組の状態で、かつ、梁を間に挟んだ状態で設置するようにした構成を採る場合は、小さな同じ仕様・諸元のダイナミックダンパー10を大量に生産することができるようになり、建物用制振装置1の製造コストの低減化を図ることができる。その結果、制振効果を低コストにて実現化することができる。更には、1個の建物用制振装置1の質量、特に、マス部20の重量を作業に適切な軽い値に設定することによって、建物用制振装置1の取付け作業性を向上させることができるようになった。
また、本発明のものにおいては、建物用制振装置1を、小梁5等に工場内にて取付けることができるので、品質の安定性を確保することができるようになった。
この場合は、2個一組の建物用制振装置1により柱、梁、根太等の振動を効果的に制振することができるようになる。また、1個の建物用制振装置1の質量を作業に適切な軽い値に設定することができるようになり、建物用制振装置1の組立作業あるいは小梁5等に装着する際の作業性の向上を図ることができるようになる。
なお、2個一組の建物用制振装置1について説明したが、必ずしも2個一組のみならず、1個の建物用制振装置1を取付けても、同様な効果を得ることができる。
またなお、この建物用制振装置1の取付けに当たっては、床2を形成する1ユニット内のほぼ全面にわたって、そこに設けられる小梁5のところに設置するようにする。本実施の形態においては、1ユニット当たり12個設けるようにする。なお、ユニットサイズの違う仕様のものには、設置する建物用制振装置1の数を増減させることによって対応させるようにする。これによって、床面に入力された衝撃振動を効果的に制振することができるようになる。
次に、本実施の形態の建物用制振装置1の固有振動数について説明する。
マス部20とゴム部30から構成されるダイナミックダンパー10の固有振動数(f1)の値は、44Hzから88Hzの範囲内に入るように設定される。なお、この固有振動数(f1)の値としては、50Hzから70Hzの範囲内に設定されるのが好ましい。そして、ダイナミックダンパー10を形成するマス部20の質量値としては、本実施の形態においては7〜8Kgのものが採用される。
また、上述のように、ダイナミックダンパー10を形成するゴム部30のゴム弾性体32の特性であるtanδの値、すなわち、ゴム弾性体32の動バネ定数と損失ばね定数との間におけるベクトル位相差(角度)の値は0.01から0.7の範囲内に入るように設定する。このような値に設定することによりダイナミックダンパー10の固有振動数としては、例えば55Hzを得ることができる。
このような固有振動数(f1)を44Hzから88Hzの範囲内に入るダイナミックダンパー10を取付けブラケット40に固着した建物用制振装置1において、その建物用制振装置1の固有振動数は、取付けブラケット40とダイナミックダンパー10を固着した建物用制振装置1の全体として89Hzから180Hzの範囲内の固有振動数(f2)と、ダイナミックダンパー10の固有振動数(f1)との2つの固有振動数を持つことができる。そのためこの建物用制振装置1を建物に取付けた場合は、この2つの周波数領域の振動を吸収することができる。
このような構成からなる建物用制振装置1を、例えば図10に示す如く、床2を支持する小梁5の、それぞれの中央部に形成される腹部のところに、2個一組の状態で取付けるようにする。なおこの場合は、図11に示すように、この建物用制振装置1を、床2を形成する1ユニット内のほぼ全面にわたって、そこに設けられる小梁5に設置する。
なお、建物用制振装置1は、振動の大きさと振動数に応じて小梁5の片側に1個取付けてもよい。
本実施の形態においては、1ユニット当たり12個設けるようにする。なお、ユニットサイズの違う仕様のものには、設置する建物用制振装置1の数を増減させることによって対応させるようにする。これによって、床面に入力された衝撃振動を効果的に制振することができるようになる。また、床2を支える小梁5のところに取付けられる各建物用制振装置1は、その仕様・諸元、すなわち、固有振動数の値(f1)及びゴム弾性体32の特性であるtanδが、すべてのダイナミックダンパー10について同じ値になるように設定されているものである。従って、同じ仕様のダイナミックダンパー10が大量に生産されることとなるので、ダイナミックダンパー10の製造コストの低減化を図ることができるようになり、床2の制振作用を低コストにて実現化することができるようになる。
次に、このような構成からなる本実施の形態のものについての、住宅に取付けたときの作用等について説明する。まず、図10に示す如く、床2を形成する小梁5の、その腹部のところに同じ仕様・諸元のダイナミックダンパー10を設置する。これによって、一つ上の階の床面に入力された衝撃による振動は、各ダイナミックダンパー10の作動により、効果的に制振されることとなる。
具体的には、建物用制振装置1の固有振動数即ち、ダイナミックダンパー10の固有振動数(f1)とダイナミックダンパー10を取付けブラケット40に固着した状態の固有振動数の値をそれぞれ55Hz及び95Hzに設定するとともに、tanδの値を0.32に設定することによって、建物用制振装置1がない場合に比べて、大幅に制振作用の発揮させることができる。そして、この条件下における音圧レベルでの測定結果を視てみると、JISA1418に規定される重量床衝撃音レベル等級においてLH−60の値を満足することができる。
このように、本実施の形態のものにおいては、特定の値に調整されたダイナミックダンパー10を、床2を形成する1ユニットの各小梁5の腹部のところに設けることによって、一つ上の階に入力された衝撃による振動を効率良く制振し、下の階には、衝撃に起因する振動を伝播させないようにすることができるようになる。その結果、本実施の形態のものにおいては、質量の重い床制振材や、小梁間に設けられる床吸振材等が不要となるとともに、下の階の天井3に設けられていた天井制振材やグラスウール等も不要となる。また、大梁4間には、従来のものにおいて設けられていた大梁間制振材等も不要となる。その結果、本鉄骨系住宅全体の建築費を大幅に削減化することができるようになる。
この第1の実施の形態の振動吸収について、図8に基き説明する。第1の実施の形態のダイナミックダンパー10の固有振動数(f1)は、上記の通り44Hzから88Hzの範囲内に設定される。一方、取付けブラケット40の固有振動数は、89Hzから180Hzに設定される。このため、第1の実施の形態の建物用制振装置1は、図8に示すように44Hzから88Hzと89Hzから180Hzの間にそれぞれピークを有する2つの山の振動吸収部分を有することとなる。このため、住宅の第1共振周波数(F1)と第2共振周波数(F2)を吸収することができ、住宅等に多い44Hzから180Hzの間の振動を広く効果的に吸収することができる。
そして、この場合は、同じダイナミックダンパー10を共通に使用して。取付けブラケット40のバネ弾性を変化させることにより、89Hzから180Hzの間に固有振動数(f2)を設定することができる。なお、取付けブラケット40の固有振動数の変化は、取付けブラケット40の板厚を厚くしたり、補強リブ45の強度と数を増加させることにより固有振動数を大きくすることができ、その逆の場合は小さくすることができ、調整することができきる。
次に、第2の実施の形態について図5に基き説明する。第2の実施の形態は、第1の実施の形態と取付けブラケット40の形状が異なり、ダイナミックダンパー10は第1の実施の形態と同じであるため、異なる部分を説明し、同様の部分の説明は省略する。
第2の実施の形態の取付けブラケット40は、ダンパー取付け板42部分の幅が広く形成されている。また、補強リブ45も省略されている。図5に示すように、この幅広く形成したダンパー取付け板42の端の部分に、ダイナミックダンパー10が取付けられている。このため、ダイナミックダンパー10と小梁5の距離が長くなり、ダンパー取付け板42が撓みやすく、取付けブラケット40のバネ定数は低くなる。これによって、ダイナミックダンパー10の固有振動数よりも低い振動数を建物用制振装置1が有することができ、振動数の低い部分の振動をも効果的に吸収することができる。
このように、ダンパー取付け板42の幅の長さと板厚を変化させることにより固有振動数を調整することができる。
この第2の実施の形態の振動吸収について、図9に基き説明する。第2の実施の形態のダイナミックダンパー10の固有振動数(f1)は、上記の通り44Hzから88Hzの範囲内に設定される。一方、取付けブラケット40にダイナミックダンパー10を固着した全体の固有振動数(f2)は、20Hzから43Hzに設定される。このため、第1の実施の形態の建物用制振装置1は、図9に示すように44Hzから88Hzと20Hzから43Hzの間にそれぞれピークを有する2つの山の振動吸収部分を有することとなる。このため、20Hzから88Hzの間の振動を広く効果的に吸収することができる。
第2の実施の形態のダイナミックダンパー10は、第1の実施の形態のダイナミックダンパー10と同じものを使用し、取付けブラケット40を固有振動数の低いものを使用するため、ダイナミックダンパー10の製造用金型や製造工程は共通のものを使用することができ、製造コストを低減することができる。
次に、第3の実施の形態について図6に基き説明する。第3の実施の形態は、第1の実施の形態と取付けブラケット40の形状が異なり、ダイナミックダンパー10は第1の実施の形態と同じであるため、異なる部分を説明し、同様の部分の説明は省略する。
第3の実施の形態の取付けブラケット40は、図6に示すように、ダンパー取付け板42の先端と梁取付け板41の先端に補強リブ45を固着したものである。
このように、ダンパー取付け板42の先端と梁取付け板41の先端と補強リブ45で固定すると断面が三角形状に成り、ダンパー取付け板42の剛性が増加して、撓み難くなり、取付けブラケット40のバネ定数は高くなる。これによって、ダイナミックダンパー10の固有振動数よりも高い固有振動数(f2)を建物用制振装置1が有することができ、振動数の高い部分の振動をも効果的に吸収することができる。
この第3の実施の形態の振動吸収について説明する。第1の実施の形態のダイナミックダンパー10の固有振動数(f1)は、上記の通り44Hzから88Hzの範囲内に設定される。一方、取付けブラケット40にダイナミックダンパー10を固着した状態の固有振動数(f2)は、89Hzから180Hzの間の第1の実施の形態よりも高い周波数に設定される。このため、第3の実施の形態の建物用制振装置1は、第1の実施の形態と同様に、44Hzから88Hzと89Hzから180Hzの間にそれぞれピークを有する2つの山の振動吸収部分を有することとなる。このため、20Hzから180Hzの間の振動を広く効果的に吸収することができる。
第3の実施の形態のダイナミックダンパー10は、第1の実施の形態のダイナミックダンパー10と同じものを使用し、取付けブラケット40を固有振動数の高いものを使用するため、ダイナミックダンパー10の製造用金型や製造工程は共通のものを使用することができ、製造コストを低減することができる。
上記の第1〜3の実施の形態のように、取付けブラケット40の形状を変化させることにより、ダイナミックダンパー10を同じものを使用しても、多種類の異なった固有振動数を有する建物用制振装置1を得ることができる。
また、ダイナミックダンパー10の固有振動数(f1)を20Hz〜43Hzに設定し、ダイナミックダンパー10を取付けブラケット40に固着した固有振動数(f2)を44Hz〜84Hzに設定して、低い振動周波数を有する建物の振動を吸収させることもできる。さらに、ダイナミックダンパー10の固有振動数(f1)を89Hz〜180Hzに設定し、ダイナミックダンパー10を取付けブラケット40に固着した固有振動数(f2)を44Hz〜84Hzに設定して、高い振動周波数を有する建物の振動を吸収させることもできる。
本発明の第1の実施の形態の建物用制振装置の平面図である。 本発明の第1の実施の形態の建物用制振装置の正面図である。 本発明の第1の実施の形態の建物用制振装置の側面図である。 本発明の第1の実施の形態の建物用制振装置を小梁に装着した状態を示す模式図である。 本発明の第2の実施の形態の建物用制振装置を小梁に装着した状態を示す模式図である。 本発明の第3の実施の形態の建物用制振装置を小梁に装着した状態を示す模式図である。 従来の建物用制振装置1の振動吸収を示すグラフである。 本発明の第2の実施の形態の建物用制振装置1の振動吸収を示すグラフである。 本発明の第3の実施の形態の建物用制振装置1の振動吸収を示すグラフである。 本発明の建物用制振装置の小梁への配置状態を示す斜視図である。 本発明の建物用制振装置の床面への配置状態を示す概念図である。
符号の説明
1 建物用制振装置
5 小梁
10 ダイナミックダンパー
20 マス部
30 ゴム部
32 ゴム弾性体
40 取付けブラケット
45 補強リブ

Claims (10)

  1. 建物の柱、梁、根太に取付けられるものであって、弾性体を有するゴム部と、質量体を有するマス部とから構成されるダイナミックダンパーと、該ダイナミックダンパーを上記建物に取付ける取付けブラケットから構成される建物用制振装置において、
    上記ゴム部のゴム弾性体の特性をtanδの値が0.01〜0.7の範囲に形成し、
    上記ダイナミックダンパーの固有振動数(f1)と上記建物の第1共振周波数(F1)と一致させ、上記ダイナミックダンパーと上記取付けブラケットから構成される建物用制振装置の固有振動数(f2)と上記建物の第2共振周波数(F2)と一致させるとともに、上記ダイナミックダンパーの固有振動数(f1)と上記ダイナミックダンパーと上記取付けブラケットから構成される建物用制振装置の固有振動数(f2)をそれぞれ20Hz〜180Hzの範囲としたことを特徴とする建物用制振装置。
  2. 上記ダイナミックダンパーと上記取付けブラケットから構成される建物用制振装置の固有振動数(f2)と上記建物の第2共振周波数(F2)と一致は、上記ダイナミックダンパーを共通使用して、上記取付けブラケットのバネ定数を調整して一致させた請求項1に記載の建物用制振装置。
  3. 上記取付けブラケットのバネ定数の調整は、上記取付けブラケットにおいて上記ダイナミックダンパーを取付けるダンパー取付け板と上記柱、梁又は根太に取付ける梁取付け板とを略直角に屈曲して形成し、該ダンパー取付け板と梁取付け板との間に補強リブを設けて調整する請求項2に記載の建物用制振装置。
  4. 上記取付けブラケットのバネ定数の調整は、上記取付けブラケットの上記ダイナミックダンパーを取付けるダンパー取付け板の幅を変化させ、上記ダイナミックダンパーと上記建物の上記柱、梁又は根太との間の距離を調整する請求項2に記載の建物用制振装置。
  5. 上記取付けブラケットのバネ定数の調整は、上記取付けブラケットを構成する板金の板厚を調整する請求項2に記載の建物用制振装置。
  6. 固有振動数(f2)の異なった複数の種類の上記建物用制振装置が、上記建物に取付けられている請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の建物用制振装置。
  7. 上記建物用制振装置は、天井または1つ上の階の床を支える梁、根太に装着される請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の建物用制振装置。
  8. 上記建物用制振装置は、天井または1つ上の階の床を支える梁、根太の腹部に装着される請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の建物用制振装置。
  9. 上記ゴム部は、ゴム弾性体と、該ゴム弾性体の上下をマス取付け板とブラケット取付け板が接着されて形成され、上記マス取付け板及び上記マス部並びに上記取付けブラケット及び上記ブラケット取付け板がそれぞれネジにより固着された請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の建物用制振装置。
  10. 上記建物用制振装置を、同じものを2個一組の状態で、上記柱、梁又は根太を挟んで設置する請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の建物用制振装置。
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