JP2007162048A - 浸炭窒化方法、機械部品の製造方法および機械部品 - Google Patents
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Abstract
【課題】試行錯誤によるアンモニアガスの流量などの処理条件の決定を必要とせず、被処理物の表層部に浸入する窒素量を制御することが可能な浸炭窒化方法を提供する。
【解決手段】浸炭窒化方法は、炉内の酸素濃度が確認される酸素濃度確認工程と、被処理物が浸炭窒化される浸炭窒化工程とを備えている。酸素濃度確認工程では、酸素濃度測定工程が実施され、酸素濃度が1.3×10−19質量%を超える場合には、酸素濃度低減工程が実施された後、酸素濃度測定工程が再度実施される。酸素濃度が1.3×10−19質量%以下の場合には、浸炭窒化工程が実施される。浸炭窒化工程では、炉内の未分解アンモニア濃度が測定され、未分解アンモニア濃度と被処理物の表層部における窒素濃度との関係に基づいて、炉内に供給されるアンモニアの流量を調節することにより、被処理物の表層部における窒素濃度が制御される。
【選択図】図7
【解決手段】浸炭窒化方法は、炉内の酸素濃度が確認される酸素濃度確認工程と、被処理物が浸炭窒化される浸炭窒化工程とを備えている。酸素濃度確認工程では、酸素濃度測定工程が実施され、酸素濃度が1.3×10−19質量%を超える場合には、酸素濃度低減工程が実施された後、酸素濃度測定工程が再度実施される。酸素濃度が1.3×10−19質量%以下の場合には、浸炭窒化工程が実施される。浸炭窒化工程では、炉内の未分解アンモニア濃度が測定され、未分解アンモニア濃度と被処理物の表層部における窒素濃度との関係に基づいて、炉内に供給されるアンモニアの流量を調節することにより、被処理物の表層部における窒素濃度が制御される。
【選択図】図7
Description
本発明は浸炭窒化方法、機械部品の製造方法および機械部品に関し、より特定的には、安定した処理が可能な浸炭窒化方法、品質を安定させることが可能な機械部品の製造方法および品質の安定した機械部品に関するものである。
一般に、浸炭窒化処理、特に鋼からなる被処理物に対して実施されるガス浸炭窒化処理においては、RXガスおよびアンモニア(NH3)ガスを一定の流量(単位時間あたりの供給量)で熱処理炉内に流入させるとともに、熱処理炉内のカーボンポテンシャル(CP)値を熱処理炉内の二酸化炭素(CO2)の分圧に基づいて制御することにより、当該熱処理炉内の雰囲気が制御されている。ここで、被処理物の表層部に浸入する窒素量は、浸炭窒化処理中に直接測定することは困難である。そのため、各熱処理炉に関して、アンモニアガスの流量と被処理物の表層部に浸入する窒素量との関係を過去の生産実績等から経験的に決定し、浸炭窒化処理中に直接測定することが可能なアンモニアガスの流量を調節することにより被処理物の表層部に浸入する窒素量が制御される場合が多い。そして、このアンモニアガスの流量は、各熱処理炉の過去の生産実績等に基づき、被処理物の量や形状などを考慮して経験的に決定されているが、過去の生産実績が無いような量や形状の被処理物を浸炭窒化処理する必要が生じた場合、当該浸炭窒化処理における最適なアンモニアガスの流量を決定するための試行錯誤が必要となる。その結果、最適なアンモニアガスの流量が決定されるまでは被処理物の品質を安定させることが困難なだけでなく、上記試行錯誤を量産ラインにおいて実施する必要があるため、要求品質を満たさない被処理物が発生し、生産コスト上昇の要因となるおそれもある。
これに対し、熱処理炉の形状、被処理物の量や形状ごとに変化するアンモニアガスの流量ではなく、熱処理炉内に残留しているアンモニア濃度である未分解アンモニア濃度(アンモニアの残留ガス濃度)を調節することにより、被処理物に浸入する窒素量を制御する方法が提案されている(たとえば、非特許文献1および特許文献1参照)。すなわち。浸炭窒化処理中に測定が可能な未分解アンモニア濃度を測定し、熱処理炉の形状や被処理物の量や形状に関係なく決定可能な未分解アンモニア濃度と被処理物に浸入する窒素量との関係に基づき、アンモニアガスの流量を調節する。これにより、最適なアンモニアガスの流量を試行錯誤により決定することなく、被処理物に浸入する窒素量を制御することが可能となり、被処理物の品質を安定させることができる。
恒川好樹、外2名、「ガス浸炭窒化処理におけるボイドの発生と窒素の拡散挙動」、熱処理、1985年、25巻、5号、p.242−247 特開平8−13125号公報
恒川好樹、外2名、「ガス浸炭窒化処理におけるボイドの発生と窒素の拡散挙動」、熱処理、1985年、25巻、5号、p.242−247
上述の未分解アンモニア濃度をパラメータとする浸炭窒化処理においては、未分解アンモニア濃度は、アンモニアガスの流量により調節される。浸炭窒化処理が十分な時間継続して実施されている定常状態においては、アンモニアガスの流量の増減と未分解アンモニア濃度の増減との間には明瞭な一定の相関関係が存在する。そのため、この相関関係に基づいてアンモニアガスの流量を調節することにより未分解アンモニア濃度をコントロールし、被処理物の表層部に浸入する窒素濃度を制御することができる。しかし、熱処理炉が補修等の理由により運転が停止され、その後再度運転を開始した場合等の非定常状態において、上記相関関係が不明瞭となり未分解アンモニア濃度のコントロールが困難となる場合がある。この場合、窒素濃度を制御するためのパラメータである未分解アンモニア濃度のコントロール自体が困難であるため、被処理物の表層部に浸入する窒素濃度を制御することが困難となる。
そこで、本発明の目的は、補修等の理由により熱処理炉の運転が停止され、その後再度運転を開始した場合等の非定常状態においても、試行錯誤によるアンモニアガスの流量の決定を必要とせず、被処理物の表層部に浸入する窒素量を制御することが可能な浸炭窒化方法を提供することである。また、本発明の他の目的は、浸炭窒化処理が実施され、かつ安定した品質を有する機械部品を製造することが可能な機械部品の製造方法を提供することである。また、本発明のさらに他の目的は、浸炭窒化処理が実施され、かつ安定した品質を有する機械部品を提供することである。
本発明に従った浸炭窒化方法は、熱処理炉内の酸素濃度が確認される酸素濃度確認工程と、酸素濃度確認工程が実施された後において、被処理物が浸炭窒化される浸炭窒化工程とを備えている。そして、酸素濃度確認工程においては、熱処理炉内の酸素濃度を測定する酸素濃度測定工程が実施され、酸素濃度測定工程において測定された熱処理炉内の酸素濃度が1.3×10−19質量%を超える場合には、熱処理炉内の酸素濃度を低減するための酸素濃度低減工程が実施された後、酸素濃度測定工程が再度実施される。一方、酸素濃度測定工程において測定された熱処理炉内の酸素濃度が1.3×10−19質量%以下の場合には、浸炭窒化工程が実施される。浸炭窒化工程では、熱処理炉内の未分解アンモニア濃度が測定され、未分解アンモニア濃度と被処理物の表層部における窒素濃度との関係に基づいて、熱処理炉内に供給されるアンモニアの流量を調節することにより、被処理物の表層部における窒素濃度が制御される。
本発明者は、上記アンモニアガスの流量の増減と未分解アンモニア濃度の増減との間の相関関係が不明瞭となる原因について詳細に検討を行なった。その結果、以下のような知見を得た。すなわち、本発明者は熱処理炉が補修等の理由により運転が停止され、その後再度運転を開始した場合等において、上記アンモニアガスの流量の増減と未分解アンモニア濃度の増減との間の相関関係が不明瞭となることに着目し、その原因について鋭意検討した。その結果、上記アンモニアガスの流量の増減と未分解アンモニア濃度の増減との間の相関関係に対して、熱処理炉内の酸素濃度が影響していることを見出した。つまり、浸炭窒化処理が実施される熱処理炉内の雰囲気は還元性雰囲気であるため、浸炭窒化処理が十分な時間継続して実施されている定常状態においては、熱処理炉内の酸素濃度は十分に低減されている。一方、補修等の理由により運転が停止された場合、停止中に窒素ガスを充填する等の対策をとった場合においても、熱処理炉内に微量の酸素が侵入する。そして、その後再度運転を開始した場合等の非定常状態においては、上記定常状態に比べて熱処理炉内の酸素濃度が高い状態で浸炭窒化処理が実施される場合が多く、この場合に上記アンモニアガスの流量の増減と未分解アンモニア濃度の増減との間の相関関係が不明瞭となっている。本発明者は、さらに詳細な検討を実施した結果、熱処理炉内の酸素濃度が1.3×10−19質量%以下であれば、被処理物の表層部に浸入する窒素濃度を制御することが可能な程度に上記アンモニアガスの流量の増減と未分解アンモニア濃度の増減との間の相関関係が明瞭となることを見出した。
したがって、本発明の浸炭窒化方法によれば、熱処理炉内の酸素濃度が1.3×10−19質量%以下とされた上で、浸炭窒化処理が実施されるため、アンモニアガスの流量の増減と未分解アンモニア濃度の増減との間の相関関係が明瞭となり、アンモニアガスの流量による未分解アンモニア濃度のコントロールが十分に可能となる。その結果、非定常状態においても、試行錯誤によるアンモニアガスの流量の決定を必要とせず、被処理物の表層部に浸入する窒素量を制御することが可能な浸炭窒化方法を提供することができる。
なお、未分解アンモニア濃度とは、熱処理炉内に供給されたアンモニアのうち、分解されることなく気体アンモニアの状態で残存しているアンモニアの熱処理炉内の雰囲気における濃度をいう。また、被処理物の表層部とは、被処理物の表面付近の領域をいい、たとえば仕上げ加工等が実施され、被処理物が製品となった状態における表面からの距離が0.2mm以下の領域となるべき領域をいう。つまり、被処理物の表層部とは、被処理物が加工等されて製造される製品に対する要求特性に鑑み、被処理物が製品となった状態において、窒素濃度を制御すべき領域であって、製品ごとに適宜決定することができる。
本発明に従った機械部品の製造方法は、鋼からなり、機械部品の概略形状に成形された鋼製部材を準備する鋼製部材準備工程と、鋼製部材準備工程において準備された鋼製部材に対して、浸炭窒化処理を実施した後、A1点以上の温度からMS点以下の温度へ冷却することにより、鋼製部材を焼入硬化する焼入硬化工程とを備えている。そして、焼入硬化工程における浸炭窒化処理は、上述の浸炭窒化方法を用いて実施される。
ここで、A1点とは鋼を加熱した場合に、鋼の組織がフェライトからオーステナイトに変態を開始する温度に相当する点をいう。また、Ms点とはオーステナイト化した鋼が冷却される際に、マルテンサイト化を開始する温度に相当する点をいう。
本発明の機械部品の製造方法によれば、浸炭窒化処理が実施された機械部品において、当該浸炭窒化が上述の浸炭窒化方法を用いて実施されることにより、安定した品質を有する機械部品を製造することが可能である。
本発明に従った機械部品は、上述の機械部品の製造方法により製造されている。本発明の機械部品の製造方法により製造されていることにより、本発明の機械部品は、安定した品質を有している。
上記本発明の機械部品は軸受を構成する部品として用いられてもよい。浸炭窒化が実施されることにより表面層が強化された本発明の機械部品は、疲労強度、耐摩耗性等が要求される機械部品である軸受を構成する部品として好適である。
なお、上述の機械部品を用いて、軌道輪と、軌道輪に接触し、円環状の軌道上に配置される転動体とを備えた転がり軸受を構成してもよい。すなわち、軌道輪および転動体の少なくともいずれか一方は、上述の機械部品である。上述の優れた機械部品を備えていることにより、当該転がり軸受によれば、長寿命な転がり軸受を提供することができる。
以上の説明から明らかなように、本発明の浸炭窒化方法によれば、補修等の理由により熱処理炉の運転が停止され、その後再度運転を開始した場合等の非定常状態においても、試行錯誤によるアンモニアガスの流量の決定を必要とせず、被処理物の表層部に浸入する窒素量を制御することが可能な浸炭窒化方法を提供することができる。また、本発明の機械部品の製造方法によれば、浸炭窒化処理が実施され、かつ安定した品質を有する機械部品を製造することが可能な機械部品の製造方法を提供することができる。また、本発明の機械部品によれば、浸炭窒化処理が実施され、かつ安定した品質を有する機械部品を提供することができる。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
図1は、本発明の一実施の形態である機械部品を備えた転がり軸受としての深溝玉軸受の構成を示す概略断面図である。図1を参照して、本発明の一実施の形態における転がり軸受としての深溝玉軸受について説明する。
図1を参照して、深溝玉軸受1は、環状の外輪11と、外輪11の内側に配置された環状の内輪12と、外輪11と内輪12との間に配置され、円環状の保持器14に保持された転動部材としての複数の玉13とを備えている。外輪11の内周面には外輪転走面11Aが形成されており、内輪12の外周面には内輪転走面12Aが形成されている。そして、内輪転走面12Aと外輪転走面11Aとが互いに対向するように、外輪11と内輪12とは配置されている。さらに、複数の玉13は、内輪転走面12Aおよび外輪転走面11Aに接触し、かつ保持器14により周方向に所定のピッチで配置されることにより円環状の軌道上に転動自在に保持されている。以上の構成により、深溝玉軸受1の外輪11および内輪12は、互いに相対的に回転可能となっている。
ここで、機械部品である外輪11、内輪12、玉13および保持器14のうち、特に、外輪11、内輪12および玉13には転動疲労強度や耐摩耗性が要求されるため、これらのうち少なくとも1つは本発明の機械部品であることにより、深溝玉軸受1の寿命を長寿命化することができる。
図2は、本発明の一実施の形態である機械部品を備えた転がり軸受としてのスラストニードルころ軸受の構成を示す概略断面図である。図2を参照して、本発明の一実施の形態における転がり軸受としてのスラストニードルころ軸受について説明する。
図2を参照して、スラストニードルころ軸受2は、円盤状の形状を有し、互いに一方の主面が対向するように配置された転動部材としての一対の軌道輪21と、転動部材としての複数のニードルころ23と、円環状の保持器24とを備えている。複数のニードルころ23は、一対の軌道輪21の互いに対向する一方の主面に形成された軌道輪転走面21Aに接触し、かつ保持器24により周方向に所定のピッチで配置されることにより円環状の軌道上に転動自在に保持されている。以上の構成により、スラストニードルころ軸受2の一対の軌道輪21は、互いに相対的に回転可能となっている。
ここで、機械部品である軌道輪21、ニードルころ23および保持器24のうち、特に、軌道輪21、ニードルころ23には転動疲労強度や耐摩耗性が要求されるため、これらのうち少なくとも1つは本発明の機械部品であることにより、スラストニードルころ軸受2の寿命を長寿命化することができる。
図3は、本発明の一実施の形態である機械部品を備えた等速ジョイントの構成を示す概略部分断面図である。また、図4は、図3の線分IV−IVに沿う概略断面図である。また、図5は、図3の等速ジョイントが角度をなした状態を示す概略部分断面図である。なお、図3は、図4の線分III−IIIに沿う概略断面図に対応する。図3〜図5を参照して、本発明の一実施の形態における等速ジョイントについて説明する。
図3〜図5を参照して、等速ジョイント3は、軸35に連結されたインナーレース31と、インナーレース31の外周側を囲むように配置され、軸36に連結されたアウターレース32と、インナーレース31とアウターレース32との間に配置されたトルク伝達用のボール33と、ボール33を保持するケージ34とを備えている。ボール33は、インナーレース31の外周面に形成されたインナーレースボール溝31Aと、アウターレース32の内周面に形成されたアウターレースボール溝32Aとに接触して配置され、脱落しないようにケージ34によって保持されている。
インナーレース31の外周面およびアウターレース32の内周面のそれぞれに形成されたインナーレースボール溝31Aとアウターレースボール溝32Aとは、図3に示すように、軸35および軸36の中央を通る軸が一直線上にある状態において、それぞれ当該軸上のジョイント中心Oから当該軸上の左右に等距離離れた点Aおよび点Bを曲率中心とする曲線(円弧)状に形成されている。すなわち、インナーレースボール溝31Aおよびアウターレースボール溝32Aに接触して転動するボール33の中心Pの軌跡が、点A(インナーレース中心A)および点B(アウターレース中心B)に曲率中心を有する曲線(円弧)となるように、インナーレースボール溝31Aおよびアウターレースボール溝32Aのそれぞれは形成されている。これにより、等速ジョイントが角度をなした場合(軸35および軸36の中央を通る軸が交差するように等速ジョイントが動作した場合)においても、ボール33は、常に軸35および軸36の中央を通る軸のなす角(∠AOB)の2等分線上に位置する。
次に、等速ジョイント3の動作について説明する。図3および図4を参照して、等速ジョイント3においては、軸35、36の一方に軸まわりの回転が伝達されると、インナーレースボール溝31Aおよびアウターレースボール溝32Aに嵌め込まれたボール33を介して、軸35、36の他方の軸に当該回転が伝達される。ここで、図5に示すように軸35、36が角度θをなした場合、ボール33は、前述のインナーレース中心Aおよびアウターレース中心Bに曲率中心を有するインナーレースボール溝31Aおよびアウターレースボール溝32Aに案内されて、中心Pが∠AOBの二等分線上となる位置に保持される。ここで、ジョイント中心Oからインナーレース中心Aまでの距離と、アウターレース中心Bまでの距離とが等しくなるように、インナーレースボール溝31Aおよびアウターレースボール溝32Aが形成されているため、ボール33の中心Pからインナーレース中心Aおよびアウターレース中心Bまでの距離はそれぞれ等しく、△OAPと△OBPとは合同である。その結果、ボール33の中心Pから軸35、36までの距離Lは互いに等しくなり、軸35、36の一方が軸まわりに回転した場合、他方も等速で回転する。このように、等速ジョイント3は、軸35、36が角度をなした場合でも、等速性を確保することができる。なお、ケージ34は、軸35、36が回転した場合に、インナーレースボール溝31Aおよびアウターレースボール溝32Aからボール33が飛び出すことをインナーレースボール溝31Aおよびアウターレースボール溝32Aとともに防止すると同時に、等速ジョイント3のジョイント中心Oを決定する機能を果たしている。
ここで、機械部品であるインナーレース31、アウターレース32、ボール33およびケージ34のうち、特に、インナーレース31、アウターレース32およびボール33には疲労強度や耐摩耗性が要求されるため、これらのうち少なくとも1つは本発明の機械部品であることにより、等速ジョイント3の寿命を長寿命化することができる。
次に、本発明の機械部品の製造方法における一実施の形態である上記機械部品、および上記機械部品を備えた転がり軸受、等速ジョイントなどの機械要素の製造方法について説明する。図6は、本発明の一実施の形態における機械部品および当該機械部品を備えた機械要素の製造方法の概略を示す図である。図6を参照して、まず、鋼からなり、機械部品の概略形状に成形された鋼製部材を準備する鋼製部材準備工程が実施される。具体的には、たとえば、棒鋼を素材とし、当該棒鋼に対して切断、鍛造、旋削などの加工が実施されることにより、機械部品としての外輪11、軌道輪21、インナーレース31などの機械部品の概略形状に成形しされた鋼製部材が準備される。
次に、鋼製部材準備工程において準備された上述の鋼製部材に対して、浸炭窒化処理を実施した後、A1点以上の温度からMS点以下の温度へ冷却することにより、鋼製部材を焼入硬化する焼入硬化工程が実施される。この焼入硬化工程の詳細については後述する。
次に、焼入硬化工程が実施された鋼製部材に対して、A1点以下の温度に加熱することにより焼入硬化された鋼製部材の靭性等を向上させる焼戻工程が実施される。具体的には、焼入硬化された鋼製部材がA1点以下の温度である150℃以上350℃以下の温度、たとえば180℃に加熱され、30分間以上240分間以下の時間、たとえば120分間保持されて、その後室温の空気中で冷却される(空冷)。
さらに、焼戻工程が実施された鋼製部材に対して、仕上げ加工などが施される仕上げ工程が実施される。具体的には、たとえば、焼戻工程が実施された鋼製部材の内輪転走面12A、軌道輪転走面21A、アウターレースボール溝32Aなどに対する研削加工が実施される。これにより、本発明の一実施の形態における機械部品は完成し、本発明の一実施の形態における機械部品の製造方法は完了する。さらに、完成した機械部品が組み合わされて機械要素が組み立てられる組み立て工程が実施される。具体的には、上述の工程により製造された本発明の機械部品である、たとえば外輪11、内輪12、玉13と保持器14とが組み合わされて、深溝玉軸受1が組み立てられる。これにより、本発明の機械部品を備えた機械要素が製造される。
次に、上述の焼入硬化工程の詳細について説明する。図7は、本発明の一実施の形態における機械部品の製造方法に含まれる焼入硬化工程の詳細を説明するための図である。また、図8は、図7の浸炭窒化工程に含まれる加熱パターン制御工程における加熱パターン(被処理物に与えられる温度履歴)の一例を示す図である。図8において、横方向は時間を示しており右に行くほど時間が経過していることを示している。また、図8において、縦方向は温度を示しており上に行くほど温度が高いことを示している。図7および図8を参照して、本実施の形態における機械部品の製造方法に含まれる焼入硬化工程の詳細について説明する。
図7を参照して、本発明の一実施の形態における機械部品の製造方法の焼入硬化工程において用いられる本発明の一実施の形態における浸炭窒化方法においては、浸炭窒化を実施するための熱処理炉内の酸素濃度が確認される酸素濃度確認工程が実施され、酸素濃度確認工程が実施された後において、被処理物としての鋼製部材が浸炭窒化される浸炭窒化工程が実施される。さらに、浸炭窒化工程が実施された後において、鋼製部材がA1点以上の温度からMS点以下の温度に冷却される冷却工程が実施される。
具体的には、まず、浸炭窒化処理を実施するための熱処理炉の内部における酸素濃度が確認される酸素濃度確認工程が実施される。この酸素濃度確認工程においては、まず、熱処理炉内の酸素濃度を測定する酸素濃度測定工程が実施される。酸素濃度の測定は、たとえばジルコニア(ZrO2)を用いた酸素センサにより実施することができる。そして、酸素濃度測定工程において測定された酸素濃度に基づいて酸素濃度を低減するための酸素濃度低減工程の実施の要否を判断する酸素濃度判断工程が実施される。酸素濃度判断工程においては、酸素濃度測定工程において測定された酸素濃度が1.3×10−19質量%以下であるかどうかに基づいて酸素濃度低減工程の実施の要否が判断される。
酸素濃度が1.3×10−19質量%を超える場合には、熱処理炉内の酸素濃度を低減するための酸素濃度低減工程が実施された後、酸素濃度測定工程が再度実施される。酸素濃度低減工程は、たとえば熱処理炉に連結された真空ポンプにより熱処理炉内を減圧した後、窒素ガス(N2)、アルゴンガス(Ar)などを熱処理炉内に充填することにより実施することができる。また、充填するガスは、浸炭窒化を実施するためのアンモニア(NH3)ガスとRXガスとの混合ガスでもよい。
一方、酸素濃度が1.3×10−19質量%以下の場合には、被処理物としての鋼製部材をRXガスとアンモニアガスとの混合ガス中で加熱することにより鋼製部材の表層部を浸炭窒化する浸炭窒化工程が実施される。浸炭窒化工程においては、図7に示すように、熱処理炉内の雰囲気における未分解アンモニアの濃度を制御する未分解アンモニア濃度制御工程と、熱処理炉内の雰囲気におけるCP値を制御するCP値制御工程と、鋼製部材に与えられる加熱履歴である加熱パターンを制御する加熱パターン制御工程とが同時に実施される。
未分解アンモニア濃度制御工程では、まず、熱処理炉内の未分解アンモニア濃度を測定する未分解アンモニア濃度測定工程が実施される。未分解アンモニア濃度の測定は、たとえばガスクロマトグラフを用いて実施することができる。そして、未分解アンモニア濃度測定工程において測定された未分解アンモニア濃度に基づいて熱処理炉へのアンモニアガスの供給量を増減させるアンモニア供給量調節工程の実施の要否を判断する未分解アンモニア濃度判断工程が実施される。当該判断は、たとえば予め実験的に求められた未分解アンモニア濃度と被処理物の表層部における窒素濃度との関係に基づいて実施される。
図9は、浸炭窒化処理時間9000秒、aC値1.0の条件の下で浸炭窒化処理を実施した場合における、熱処理炉内の未分解アンモニア量と被処理物への窒素侵入量(被処理物の単位表面積から被処理物の内部に侵入したの窒素の質量)との関係を示す図である。図9を参照して、未分解アンモニア濃度判断工程の実施の一態様について説明する。
図9を参照して、aC値1.0、浸炭窒化処理の実施時間が9000秒間の条件の下で、被処理物への窒素侵入量をある値としたい場合、図9の関係から目標の未分解アンモニア濃度を決定することができる。したがって、未分解アンモニア濃度判断工程においては、未分解アンモニア濃度測定工程において測定されたアンモニア濃度が当該目標の未分解アンモニア濃度となっているか否かによりアンモニア供給量調節工程の実施の要否を判断することができる。なお、目標の未分解アンモニア濃度を決定するための関係は、上述のような未分解アンモニア濃度と窒素侵入量との関係に限られず、たとえば未分解アンモニア濃度と被処理物の表面から所定の深さの位置における窒素濃度との関係などであってもよい。
未分解アンモニア濃度が目標の未分解アンモニア濃度になっていない場合には、熱処理炉内の未分解アンモニア濃度を増減させるためのアンモニア供給量調節工程が実施された後、未分解アンモニア濃度測定工程が再度実施される。アンモニア供給量調節工程は、たとえば、熱処理炉に配管を介して連結されたアンモニアガスボンベから単位時間に熱処理炉に流入するアンモニアの量(アンモニアガスの流量)を当該配管に取り付けられたマスフローコントローラなどを備えた流量制御装置により調節することにより実施することができる。すなわち、測定された未分解アンモニア濃度が目標の未分解アンモニア濃度よりも高い場合、上記流量を低下させ、低い場合、上記流量を増加させることにより、アンモニア供給量調節工程を実施することができる。このアンモニア供給量調節工程において、測定された未分解アンモニア濃度と目標の未分解アンモニア濃度との間に所定の差がある場合、どの程度流量を増減させるかについては、予め実験的に決定したアンモニアガスの流量の増減と未分解アンモニア濃度の増減との関係に基づいて決定することができる。
ここで、浸炭窒化処理が十分な時間継続して実施されている定常状態では、アンモニアガスの流量を所定量増減させた場合の未分解アンモニア濃度の増減量に再現性があり、これに基づいて未分解アンモニア濃度のコントロールが可能である。しかし、熱処理炉が補修等の理由により運転を停止され、その後運転を開始した場合等の非定常状態では、アンモニアガスの流量を所定量の増減させた場合の未分解アンモニア濃度の増減量に再現性がなくなる場合がある。本実施の形態においては、上述のように熱処理炉内の酸素濃度が1.3×10−19質量%以下とされた上で、浸炭窒化処理が実施されているため、非定常状態においてもアンモニアガスの流量の増減と未分解アンモニア濃度の増減との間の相関関係が明瞭となっている。すなわち、アンモニアガスの流量を所定量増減させた場合の未分解アンモニア濃度の増減量に再現性がある。そのため、アンモニアガスの流量による未分解アンモニア濃度のコントロールが十分に可能である。
一方、未分解アンモニア濃度が目標の未分解アンモニア濃度になっている場合には、アンモニア供給量調節工程が実施されることなく、未分解アンモニア濃度測定工程が再度実施される。
CP値制御工程では、式(1)および式(2)に表される熱処理炉内の雰囲気におけるCP値が制御される。ここで、ASは温度に依存する物性値、acは鋼中の炭素の活量、PCOは一酸化炭素(CO)の分圧、PCO2は二酸化炭素(CO2)の分圧、Kは
<C>+CO2⇔2CO
における平衡定数である。
<C>+CO2⇔2CO
における平衡定数である。
具体的には、たとえば、赤外線ガス濃度測定装置を用いて雰囲気中の一酸化炭素の分圧PCOおよび二酸化炭素の分圧PCO2が測定される。そして、当該測定値に基づいて、aC値が目標の値である0.7以上1.2以下の値、たとえば0.9となるように、エンリッチガスとしてのプロパン(C3H8)ガス、ブタンガス(C4H10)などの供給量が調節される。
加熱パターン制御工程では、被処理物としての鋼製部材に付与される加熱履歴(温度履歴)が制御される。具体的には、図8に示すように、鋼製部材が上述の未分解アンモニア濃度制御工程およびCP値制御工程によって制御された雰囲気中で、A1点以上の温度である800℃以上1000℃以下の温度、たとえば850℃に加熱され、60分間以上300分間以下の時間、たとえば150分間保持される。当該保持時間が経過するとともに加熱パターン制御工程は終了し、同時に未分解アンモニア濃度制御工程およびCP値制御工程も終了する。
その後、鋼製部材は油中に浸漬(油冷)されることにより、A1点以上の温度からMS点以下の温度に冷却される冷却工程が実施される。以上の工程のより、鋼製部材は表層部が浸炭窒化されるとともに焼入硬化される。これにより、本実施の形態の焼入硬化工程は完了する。
以上のように、本実施の形態の浸炭窒化方法によれば、熱処理炉内の酸素濃度が1.3×10−19質量%以下とされた上で、浸炭窒化処理が実施されているため、アンモニアガスの流量による未分解アンモニア濃度のコントロールが十分に可能である。そのため、補修等の理由により熱処理炉の運転が停止され、その後再度運転を開始した場合等の非定常状態においても、試行錯誤によるアンモニアガスの流量の決定を必要とせず、被処理物としての鋼製部材の表層部に浸入する窒素量を制御することが可能である。また、本実施の形態の機械部品の製造方法によれば、浸炭窒化処理が実施され、かつ安定した品質を有する機械部品を製造することができる。また、本実施の形態の機械部品は、浸炭窒化処理が実施され、かつ安定した品質を有する機械部品となっている。
なお、本実施の形態の浸炭窒化方法において、酸素濃度確認工程は、被処理物である鋼製部材が熱処理炉内に挿入された状態で実施される場合、浸炭窒化が進行しない温度域、たとえばA1点未満の温度で実施することができる。これにより、熱処理炉内にアンモニア、RXガス等の浸炭窒化ガスが充填されている場合でも、浸炭窒化処理が進行する前に熱処理炉内の酸素濃度が十分に低減され、浸炭窒化処理を安定して実施することができる。また、酸素濃度確認工程をA1点以上の温度で実施する場合、酸素濃度確認工程を実施する際の熱処理炉内の雰囲気を、たとえば窒素ガス、アルゴンガス雰囲気等としてもよい。これにより、酸素濃度確認工程の実施後、直ちに浸炭窒化ガスを熱処理炉内に充填することで、昇温工程を経ることなく、浸炭窒化処理を実施することができる。また、機械部品の製品となるべき鋼製部材ではなく、ダミー部材を熱処理炉内に挿入した状態で、熱処理炉内を浸炭窒化ガス雰囲気とし、浸炭窒化が進行する温度域において酸素濃度確認工程を実施してもよい。これにより、浸炭窒化工程を一層安定して実施することができる。
なお、浸炭窒化ガスは還元性であるため、浸炭窒化処理が実施されると酸素濃度は低下する。そのため、一度酸素濃度確認工程を実施すれば、以後浸炭窒化処理工程を繰返して実施することができる。この場合でも、熱処理炉内に酸素が侵入するおそれがある事象が発生した場合、たとえば、炉の停止、配管の緩みやピンホール等が発生した場合、再度酸素濃度確認工程を実施した後、浸炭窒化工程を実施することにより、安定して浸炭窒化処理を実施することができる。
なお、本発明の機械部品の一例として、深溝玉軸受、スラストニードルころ軸受、等速ジョイントについて説明したが、本発明の機械部品はこれに限られず、表層部の疲労強度、耐摩耗性が要求される機械部品、たとえばハブ、ギア、シャフト等であってもよい。
以下、本発明の実施例について説明する。本発明の浸炭窒化方法の有効性を確認するため、熱処理炉内の酸素濃度と未分解アンモニア濃度の時間に対する変化率との関係を調査する実験を行なった。実験の手順は以下のとおりである。
実験に用いた熱処理炉の容量は120Lである。熱処理炉内の温度は850℃、aC値は1、熱処理炉に供給されるアンモニアガスの流量は0.1L/分および1.0L/分の2水準で一定とした。この2水準のアンモニアガスの流量は、容量120Lの熱処理炉を用いて実際の製品の生産を行なう場合に採用されるアンモニアガスの流量の上下限に該当する流量であり、所望の未分解アンモニア量を得るためには、この範囲のアンモニアガスの流量での制御が可能であれ良い。当然ながら違う容量の炉であれば、適切なアンモニアガスの流量の範囲は変化するが、アンモニアガスの流量は炉の容積で一般化して捉えることが可能で、上記実験条件の範囲は、0.00083〜0.0083/分(流量/炉の容積:アンモニアガスのみで熱処理炉を満たすのに必要な時間の逆数)となる。ここで、熱処理炉内のCOおよびCO2分圧の測定は赤外線ガス濃度測定装置、未分解アンモニア濃度の測定はガスクロマトグラフ、酸素濃度の測定はジルコニアを用いた酸素センサを使用して実施した。また、浸炭窒化処理時における未分解アンモニア量のコントロールの容易性を示す指標として、以下の式(3)で定義される未分解アンモニア(NH3)濃度の変化率を上述の未分解アンモニア濃度の測定結果から算出した。
熱処理炉内が上記条件を満たしていることを確認のうえ、一定の材質からなり、かつ一定の形状および量(すなわち被処理物の表面積が一定)の被処理物(鋼製部材)を熱処理炉内に投入して浸炭窒化処理を開始した。具体的には、被処理物の材質はJIS SUJ2、形状は外径φ38mm、内径φ30mm、高さt10mmのリング状、量は3個とした。そして、浸炭窒化処理を開始した直後の熱処理炉内の酸素濃度を測定するとともに、浸炭窒化処理開始3600秒後および36000秒後の未分解アンモニア濃度を測定し、式(3)に基づいて未分解アンモニア濃度変化率を算出した。
図10は、実施例の試験結果を示す図である。図10において、横軸は熱処理炉内の酸素濃度、縦軸は未分解アンモニア(NH3)濃度変化率を示している。また、図中の実線はアンモニアガスの流量が0.1L/分の場合、破線はアンモニアガスの流量が1.0L/分の場合を示している。図10を参照して、本実施例の実験結果について説明する。
図10を参照して、熱処理炉内の酸素濃度と未分解アンモニア濃度変化率とは明確な相関関係を有しており、酸素濃度が増加するにしたがって、未分解アンモニア濃度変化率も増加している。ここで、式(3)から、未分解アンモニア濃度変化率は、浸炭窒化処理開始3600秒後から36000秒後の間における1秒あたりの未分解アンモニア濃度の変化の割合を示している。上述のように、熱処理炉内の温度、CP値、アンモニアガスの流量、被処理物の形状および量が一定であることから、算出される未分解アンモニア濃度変化率は、0となることが理想的である。アンモニアガスの流量が一定の状態で未分解アンモニア濃度変化率が大きくなると、浸炭窒化処理時における熱処理炉内の未分解アンモニア濃度をアンモニアガスの流量によってコントロールすることが難しくなる。そして、未分解アンモニア濃度変化率が1.5×10−5(1/秒)を超えると、実際の浸炭窒化処理における未分解アンモニア濃度をアンモニアガスの流量によってコントロールすることが困難となる。したがって、図10より、浸炭窒化処理の開始時における熱処理炉内の酸素濃度は1.3×10−19質量%以下とすることが好ましい。さらに、浸炭窒化処理の開始時における熱処理炉内の酸素濃度を9.0×10−20質量%以下とすることにより、未分解アンモニア濃度のコントロールが一層容易となる。所定の未分解アンモニア濃度、例えば、0.2質量%や0.1質量%を得たい場合、熱処理炉内の酸素濃度を1.3×10−19質量%以下にすれば、3600秒後と36000秒後との間の未分解アンモニア濃度の変化量は3600秒後における未分解アンモニア濃度の5割程度である。さらに、熱処理炉内の酸素濃度を9.0×10−19質量%以下にすれば、上記未分解アンモニア濃度の変化量は3600秒後における未分解アンモニア濃度の4割以下に抑えられ、未分解アンモニア濃度の管理が一層容易となる。
以上より、本発明の浸炭窒化方法によれば、熱処理炉内の酸素濃度が1.3×10−19質量%以下とされた上で、浸炭窒化処理が実施されるため、アンモニアガスの流量の調節による未分解アンモニア濃度のコントロールが十分に可能となることが確認された。したがって、本発明の浸炭窒化方法によれば、非定常状態においても、試行錯誤によるアンモニアガスの流量の決定を必要とせず、被処理物の表層部に浸入する窒素量を制御することが可能であるといえる。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の浸炭窒化方法および機械部品の製造方法は、鋼からなる部材の浸炭窒化方法および鋼からなる機械部品の製造方法に特に有利に適用され得る。また、本発明の機械部品は、疲労強度および耐摩耗性が要求される機械部品に特に有利に適用され得る。
1 深溝玉軸受、2 スラストニードルころ軸受、3 等速ジョイント、11 外輪、11A 外輪転走面、12 内輪、12A 内輪転走面、13 玉、14 保持器、21 軌道輪、21A 軌道輪転走面、23 ニードルころ、24 保持器、31 インナーレース、31A インナーレースボール溝、32 アウターレース、32A アウターレースボール溝、33 ボール、34 ケージ、35,36 軸。
Claims (4)
- 熱処理炉内の酸素濃度が確認される酸素濃度確認工程と、
前記酸素濃度確認工程が実施された後において、被処理物が浸炭窒化される浸炭窒化工程とを備え、
前記酸素濃度確認工程においては、前記熱処理炉内の酸素濃度を測定する酸素濃度測定工程が実施され、
前記酸素濃度測定工程において測定された前記熱処理炉内の酸素濃度が1.3×10−19質量%を超える場合には、前記熱処理炉内の酸素濃度を低減するための酸素濃度低減工程が実施された後、前記酸素濃度測定工程が再度実施され、
前記酸素濃度測定工程において測定された前記熱処理炉内の酸素濃度が1.3×10−19質量%以下の場合には、前記浸炭窒化工程が実施され、
前記浸炭窒化工程では、前記熱処理炉内の未分解アンモニア濃度が測定され、前記未分解アンモニア濃度と前記被処理物の表層部における窒素濃度との関係に基づいて、前記熱処理炉内に供給されるアンモニアの流量を調節することにより、前記被処理物の表層部における窒素濃度が制御される、浸炭窒化方法。 - 鋼からなり、機械部品の概略形状に成形された鋼製部材を準備する鋼製部材準備工程と、
前記鋼製部材準備工程において準備された前記鋼製部材に対して、浸炭窒化処理を実施した後、A1点以上の温度からMS点以下の温度へ冷却することにより、前記鋼製部材を焼入硬化する焼入硬化工程とを備え、
前記焼入硬化工程における浸炭窒化処理は、請求項1に記載の浸炭窒化方法を用いて実施される、機械部品の製造方法。 - 請求項2に記載の機械部品の製造方法により製造された、機械部品。
- 軸受を構成する部品として用いられる、請求項3に記載の機械部品。
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