JP5429729B2 - 機械部品の製造方法および機械部品 - Google Patents

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Description

本発明は、鋼の熱処理方法、機械部品の製造方法および機械部品に関し、より特定的には、3.75質量%以上のクロムを含有する鋼からなる被処理物を窒化する工程を含む鋼の熱処理方法、3.75質量%以上のクロムを含有する鋼からなり、表層部が窒化処理された機械部品およびその製造方法に関するものである。
鋼からなる部材の表層部の強度を向上させる目的で、鋼の窒化処理が行なわれる場合がある。従来の鋼の窒化処理方法としては、鋼をアンモニアなどの窒素源となる気体を含む雰囲気中で加熱することにより、鋼の表層部に窒素を侵入させるガス軟窒化処理が代表的である。しかし、クロム含有量の高い鋼、たとえば3.75質量%以上のクロムを含有する鋼においては、表層部に化学的に安定な酸化膜が形成される。そのため、クロム含有量の高い鋼に対して上記軟窒化処理を実施しても、鋼の表層部に窒素が侵入せず、鋼が窒化されないという問題があった。
これに対し、鋼からなる被処理物を減圧した炉内に配置し、当該炉内に窒素源となる気体を含む気体を導入した上で、被処理物と被処理物に対向するように配置された部材、たとえば炉壁との間に電位差を生じさせてグロー放電を発生させ、被処理物を構成する鋼の表層部に窒素を侵入させる処理(プラズマ窒化処理)が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。そして、プラズマ窒化処理の制御は、たとえばグロー放電の分光分析に基づいて行なう方法や、被処理物を流れる電流の電流密度に基づいて行なう方法が提案されている(たとえば特許文献2および3参照)。
特開平2−57675号公報 特開平7−118826号公報 特開平9−3646号公報
しかしながら、上述のようなプラズマ窒化処理およびその制御方法では、プラズマ窒化された鋼の表層部に侵入する窒素量が窒素の固溶限(析出物に含まれる窒素も含めた固溶限)に到達することを回避することは困難である。そのため、適切な焼入および焼戻が実施された鋼に対してプラズマ窒化処理を実施した場合、結晶粒界に沿って析出する鉄の窒化物(FeN、FeNなど)が形成される。アスペクト比2以上で、かつ7.5μm以上の長さで形成された鉄の窒化物(以下、アスペクト比2以上、かつ7.5μm以上の長さを有し、結晶粒界に沿って形成される鉄の窒化物を粒界析出物という)は、剥離や破断の起点となるおそれがある。
より具体的には、プラズマ窒化が実施されることにより粒界析出物が形成された被処理物が機械部品に適用されると、当該機械部品に応力が繰返し負荷された場合、早期に剥離や破断が発生するおそれがある(疲労強度の低下)。また、粒界析出物が形成された機械部品に衝撃的な応力が負荷されると、容易に破損が発生するおそれもある(靭性の低下)。このように、機械部品を構成する鋼に粒界析出物が形成された場合、表層部は高硬度を有するものの、疲労強度や靭性が低下するという問題が発生し得る。
そこで、本発明の目的は、表層部を窒化処理して高硬度な表層部を形成するとともに、粒界析出物の発生を抑制することが可能な、3.75質量%以上のクロムを含有する鋼の熱処理方法、表層部を窒化処理して高硬度な表層部を形成するとともに、粒界析出物の発生を抑制することが可能な、3.75質量%以上のクロムを含有する鋼からなる機械部品の製造方法、および3.75質量%以上のクロムを含有する鋼からなり、かつ表層部が窒化処理されることにより高硬度な表層部を有するとともに、粒界析出物の発生が抑制された機械部品を提供することである。
本発明に従った鋼の熱処理方法は、鋼を焼入硬化する工程と、当該鋼をプラズマ窒化する工程と、当該鋼を拡散温度に保持する工程とを備えている。鋼を焼入硬化する工程では、0.77質量%以上0.85質量%以下の炭素と、0.01質量%以上0.25質量%以下の珪素と、0.01質量%以上0.35質量%以下のマンガンと、0.01質量%以上0.15質量%以下のニッケルと、3.75質量%以上4.25質量%以下のクロムと、4質量%以上4.5質量%以下のモリブデンと、0.9質量%以上1.1質量%以下のバナジウムとを含有し、残部鉄および不純物からなる鋼が焼入硬化される。鋼をプラズマ窒化する工程では、焼入硬化された上記鋼がプラズマ窒化される。そして、鋼を拡散温度に保持する工程では、プラズマ窒化された鋼が300℃以上480℃以下の温度である拡散温度に保持される。
本発明者は、プラズマ窒化処理を含む鋼の熱処理方法において、表層部に十分な硬度を付与しつつ、粒界析出物の形成を抑制する方法について詳細に検討を行なった。その結果、以下に説明するように、プラズマ窒化された鋼を300℃以上480℃以下の温度である拡散温度に保持することにより、表層部の硬度を十分に確保しつつ、粒界析出物を減少させることが可能であることを見出した。
すなわち、プラズマ窒化により鋼の表面に窒素を侵入させると、鋼の表面付近に粒界析出物が生成した層(粒界析出物層)が形成される場合が多い。そして、鋼に対して窒素を侵入させる深さ(表面からの距離)を、たとえば機械部品の特性向上に必要な0.1mm以上とすると、粒界析出物層の厚みが、プラズマ窒化処理の後に実施される機械部品の仕上げ加工で除去される厚みよりも大きくなり、完成した機械部品の表面に粒界析出物層が残存する。そして、この粒界析出物層内の粒界析出物に起因して、機械部品の疲労強度等が低下する。
一方、プラズマ窒化された鋼に対して、当該鋼を300℃以上の温度に保持する処理である拡散処理を実施することにより、実際の生産工程における許容範囲内の時間で、プラズマ窒化により鋼に侵入した窒素を、より深い(表面からの距離が大きい)所望の領域にまで到達させることができる。そのため、この拡散工程を実施することにより、プラズマ窒化処理において窒素が侵入する深さを、仕上げ加工での粒界析出物層の除去が可能な範囲にとどめても、鋼に侵入した窒素を所望の領域にまで到達させることができる。
さらに、拡散処理の温度を上昇させることにより、鋼に侵入した窒素の所望の領域までの拡散を短時間で達成することが可能となる。しかし、拡散処理の温度が480℃を超えると、拡散処理の加熱による鋼の硬度の低下が表層部の硬度に影響を及ぼし、プラズマ窒化処理による表層部の硬度上昇を相殺するため、十分な表層部の硬度を確保することが難しくなる。
これに対し、本発明の鋼の熱処理方法においては、まず、鋼を焼入硬化した後、プラズマ窒化が実施されることにより、3.75質量%以上のクロムを含有する鋼の表層部に窒素が侵入し、窒化層が形成される。これにより、鋼に高硬度な表層部が形成される。そして、当該鋼が300℃以上480℃以下の拡散温度に保持されることにより、窒化層形成により得られた硬度上昇が相殺されることを抑制しつつ、鋼に侵入した窒素を所望の領域にまで到達させることができる。その結果、本発明の鋼の熱処理方法によれば、表層部を窒化処理して高硬度な表層部を形成するとともに、粒界析出物の発生を抑制することが可能な、3.75質量%以上のクロムを含有する鋼の熱処理方法を提供することができる。
上記本発明の鋼の熱処理方法において好ましくは、拡散温度は、430℃以下である。上述のように、拡散温度を抑制することにより、拡散処理の加熱による鋼の硬度低下が抑制され、鋼の表層部により高い硬度を付与することが可能となる。
ここで、上記温度範囲の拡散温度に鋼を保持する場合、上記温度範囲内の一定温度に温度を維持してもよいし、上記温度範囲内で温度を変動させつつ、変動の範囲を上記温度範囲内としてもよい。
本発明に従った機械部品の製造方法は、0.77質量%以上0.85質量%以下の炭素と、0.01質量%以上0.25質量%以下の珪素と、0.01質量%以上0.35質量%以下のマンガンと、0.01質量%以上0.15質量%以下のニッケルと、3.75質量%以上4.25質量%以下のクロムと、4質量%以上4.5質量%以下のモリブデンと、0.9質量%以上1.1質量%以下のバナジウムとを含有し、残部鉄および不純物からなる鋼から構成され、機械部品の概略形状に成形された鋼部材を準備する工程と、当該鋼部材の焼入処理および窒化処理を含む熱処理を行なう工程とを備えている。そして、上記熱処理は、上述の本発明の鋼の熱処理方法により実施される。
本発明の機械部品の製造方法によれば、3.75質量%以上のクロムを含有する鋼からなる被処理物の窒化処理に適した上述の本発明の鋼の熱処理方法を用いて熱処理が実施されるため、3.75質量%以上のクロムを含有する鋼からなり、表層部が窒化処理されて高硬度な表層部が形成されるとともに、粒界析出物の発生が抑制された機械部品を製造することができる。
本発明に従った機械部品は、上記本発明の機械部品の製造方法により製造されている。上述した本発明の機械部品の製造方法により製造されていることにより、本発明の機械部品は、3.75質量%以上のクロムを含有する鋼からなり、表層部が窒化処理されて高硬度な表層部が形成されるとともに、粒界析出物の発生が抑制された機械部品となっている。
上記本発明の機械部品は、軸受を構成する部品として用いられてもよい。表層部が窒化されることにより表層部が強化され、かつ粒界析出物の発生が抑制された本発明の機械部品は、疲労強度、耐摩耗性等が要求される機械部品である軸受を構成する部品として好適である。
なお、上述の機械部品を用いて、軌道輪と、軌道輪に接触し、円環状の軌道上に配置される転動体とを備えた転がり軸受を構成してもよい。すなわち、軌道輪および転動体の少なくともいずれか一方、好ましくは両方が、上述の機械部品である。表層部が窒化されることにより表層部が強化され、かつ粒界析出物の発生が抑制された本発明の機械部品を備えていることにより、当該転がり軸受によれば、長寿命な転がり軸受を提供することができる。
以上の説明から明らかなように、本発明の鋼の熱処理方法によれば、表層部を窒化処理して高硬度な表層部を形成するとともに、粒界析出物の発生を抑制することが可能な、3.75質量%以上のクロムを含有する鋼の熱処理方法を提供することができる。また、本発明の機械部品の製造方法によれば、表層部を窒化処理して高硬度な表層部を形成するとともに、粒界析出物の発生を抑制することが可能な、3.75質量%以上のクロムを含有する鋼からなる機械部品の製造方法を提供することができる。さらに、本発明の機械部品によれば、3.75質量%以上のクロムを含有する鋼からなり、かつ表層部が窒化処理されることにより高硬度な表層部を有するとともに、粒界析出物の発生が抑制された機械部品を提供することができる。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
図1は、本発明の一実施の形態における機械部品を備えた転がり軸受としての深溝玉軸受の構成を示す概略断面図である。図1を参照して、本発明の一実施の形態における転がり軸受としての深溝玉軸受について説明する。
図1を参照して、深溝玉軸受1は、環状の外輪11と、外輪11の内側に配置された環状の内輪12と、外輪11と内輪12との間に配置され、円環状の保持器14に保持された転動体としての複数の玉13とを備えている。外輪11の内周面には外輪転走面11Aが形成されており、内輪12の外周面には内輪転走面12Aが形成されている。そして、内輪転走面12Aと外輪転走面11Aとが互いに対向するように、外輪11と内輪12とは配置されている。さらに、複数の玉13は、玉転走面13Aにおいて内輪転走面12Aおよび外輪転走面11Aに接触し、かつ保持器14により周方向に所定のピッチで配置されることにより、円環状の軌道上に転動自在に保持されている。以上の構成により、深溝玉軸受1の外輪11および内輪12は、互いに相対的に回転可能となっている。
ここで、機械部品である外輪11、内輪12、玉13および保持器14のうち、特に、外輪11、内輪12および玉13には転動疲労強度や耐摩耗性が要求される。そのため、これらのうち少なくとも1つが3.75質量%以上のクロムを含有する鋼からなり、かつ表層部が窒化処理されることにより高硬度な表層部を有するとともに、粒界析出物の発生が抑制された本発明の機械部品であることにより、深溝玉軸受1を長寿命化することができる。
図2は、本実施の形態における第1の変形例である機械部品を備えた転がり軸受としてのスラストニードルころ軸受の構成を示す概略断面図である。図2を参照して、第1の変形例であるスラストニードルころ軸受について説明する。
図2を参照して、スラストニードルころ軸受2は、円盤状の形状を有し、互いに一方の主面が対向するように配置された転動部材としての一対の軌道輪21と、転動部材としての複数のニードルころ23と、円環状の保持器24とを備えている。複数のニードルころ23は、一対の軌道輪21の互いに対向する主面に形成された軌道輪転走面21Aに接触し、かつ保持器24により周方向に所定のピッチで配置されることにより円環状の軌道上に転動自在に保持されている。以上の構成により、スラストニードルころ軸受2の一対の軌道輪21は、互いに相対的に回転可能となっている。
ここで、機械部品である軌道輪21、ニードルころ23および保持器24のうち、特に、軌道輪21、ニードルころ23には転動疲労強度や耐摩耗性が要求される。そのため、これらのうち少なくとも1つが3.75質量%以上のクロムを含有する鋼からなり、かつ表層部が窒化処理されることにより高硬度な表層部を有するとともに、粒界析出物の発生が抑制された本発明の機械部品であることにより、スラストニードルころ軸受2を長寿命化することができる。
図3は、本実施の形態における第2の変形例である機械部品を備えた等速ジョイントの構成を示す概略断面図である。また、図4は、図3の線分IV−IVに沿う概略断面図である。また、図5は、図3の等速ジョイントが角度をなした状態を示す概略断面図である。なお、図3は、図4の線分III−IIIに沿う概略断面図に対応する。図3〜図5を参照して、第2の変形例である等速ジョイントについて説明する。
図3〜図5を参照して、等速ジョイント3は、軸35に連結されたインナーレース31と、インナーレース31の外周側を囲むように配置され、軸36に連結されたアウターレース32と、インナーレース31とアウターレース32との間に配置されたトルク伝達用のボール33と、ボール33を保持するケージ34とを備えている。ボール33は、インナーレース31の外周面に形成されたインナーレースボール溝31Aと、アウターレース32の内周面に形成されたアウターレースボール溝32Aとに接触して配置され、脱落しないようにケージ34によって保持されている。
インナーレース31の外周面およびアウターレース32の内周面のそれぞれに形成されたインナーレースボール溝31Aとアウターレースボール溝32Aとは、図3に示すように、軸35および軸36の中央を通る軸が一直線上にある状態において、それぞれ当該軸上のジョイント中心Oから当該軸上の左右に等距離離れた点Aおよび点Bを曲率中心とする曲線(円弧)状に形成されている。すなわち、インナーレースボール溝31Aおよびアウターレースボール溝32Aに接触して転動するボール33の中心Pの軌跡が、点A(インナーレース中心A)および点B(アウターレース中心B)に曲率中心を有する曲線(円弧)となるように、インナーレースボール溝31Aおよびアウターレースボール溝32Aのそれぞれは形成されている。これにより、等速ジョイントが角度をなした場合(軸35および軸36の中央を通る軸が交差するように等速ジョイントが動作した場合)においても、ボール33は、常に軸35および軸36の中央を通る軸のなす角(∠AOB)の2等分線上に位置する。
次に、等速ジョイント3の動作について説明する。図3および図4を参照して、等速ジョイント3においては、軸35、36の一方に軸まわりの回転が伝達されると、インナーレースボール溝31Aおよびアウターレースボール溝32Aに嵌め込まれたボール33を介して、軸35、36の他方の軸に当該回転が伝達される。ここで、図5に示すように軸35、36が角度θをなした場合、ボール33は、前述のインナーレース中心Aおよびアウターレース中心Bに曲率中心を有するインナーレースボール溝31Aおよびアウターレースボール溝32Aに案内されて、中心Pが∠AOBの二等分線上となる位置に保持される。ここで、ジョイント中心Oからインナーレース中心Aまでの距離と、アウターレース中心Bまでの距離とが等しくなるように、インナーレースボール溝31Aおよびアウターレースボール溝32Aが形成されているため、ボール33の中心Pからインナーレース中心Aおよびアウターレース中心Bまでの距離はそれぞれ等しく、三角形OAPと三角形OBPとは合同である。その結果、ボール33の中心Pから軸35、36までの距離Lは互いに等しくなり、軸35、36の一方が軸まわりに回転した場合、他方も等速で回転する。このように、等速ジョイント3は、軸35、36が角度をなした場合でも、等速性を確保することができる。なお、ケージ34は、軸35、36が回転した場合に、インナーレースボール溝31Aおよびアウターレースボール溝32Aからボール33が飛び出すことをインナーレースボール溝31Aおよびアウターレースボール溝32Aとともに防止すると同時に、等速ジョイント3のジョイント中心Oを決定する機能を果たしている。
ここで、機械部品であるインナーレース31、アウターレース32、ボール33およびケージ34のうち、特に、インナーレース31、アウターレース32およびボール33には疲労強度や耐摩耗性が要求される。そのため、これらのうち少なくとも1つが3.75質量%以上のクロムを含有する鋼からなり、かつ表層部が窒化処理されることにより高硬度な表層部を有するとともに、粒界析出物の発生が抑制された本発明の機械部品であることにより、等速ジョイント3を長寿命化することができる。
次に、本発明の機械部品の製造方法の一実施の形態における機械部品、および上記機械部品を備えた転がり軸受、等速ジョイントなどの機械要素の製造方法について説明する。図6は、本発明の一実施の形態における機械部品および当該機械部品を備えた機械要素の製造方法の概略を示す図である。
図6を参照して、まず、0.77質量%以上0.85質量%以下の炭素と、0.01質量%以上0.25質量%以下の珪素と、0.01質量%以上0.35質量%以下のマンガンと、0.01質量%以上0.15質量%以下のニッケルと、3.75質量%以上4.25質量%以下のクロムと、4質量%以上4.5質量%以下のモリブデンと、0.9質量%以上1.1質量%以下のバナジウムとを含有し、残部鉄および不純物からなる鋼からなり、機械部品の概略形状に成形された鋼部材を準備する鋼部材準備工程が実施される。具体的には、たとえば、上記成分を含有する棒鋼、鋼線などを素材とし、当該棒鋼、鋼線などに対して切断、鍛造、旋削などの加工が実施されることにより、機械部品としての外輪11、軌道輪21、インナーレース31などの機械部品の概略形状に成形された鋼部材が準備される。
次に、鋼部材準備工程において準備された上述の鋼部材に対して、焼入処理および窒化処理を含む熱処理を行なう熱処理工程が実施される。この熱処理工程の詳細については後述する。
次に、熱処理工程が実施された鋼部材に対して、仕上げ加工などが施される仕上げ工程が実施される。具体的には、たとえば、熱処理工程が実施された鋼部材の内輪転走面12A、軌道輪転走面21A、アウターレースボール溝32Aなどに対する研磨加工が実施される。これにより、本実施の形態における機械部品は完成し、本実施の形態における機械部品の製造方法は完了する。
さらに、完成した機械部品が組合わされて機械要素が組立てられる組立て工程が実施される。具体的には、上述の工程により製造された本発明の機械部品である、たとえば外輪11、内輪12、玉13と保持器14とが組合わされて、深溝玉軸受1が組立てられる。これにより、本発明の機械部品を備えた機械要素が製造される。
次に、上述の熱処理工程の詳細について説明する。図7は、本実施の形態における機械部品の製造方法に含まれる熱処理工程の詳細を説明するための図である。図7において、横方向は時間を示しており右に行くほど時間が経過していることを示している。また、図7において、縦方向は温度を示しており上に行くほど温度が高いことを示している。図7を参照して、本実施の形態における機械部品の製造方法に含まれる熱処理工程の詳細について説明する。
図7を参照して、本実施の形態における機械部品の製造方法の熱処理工程においては、まず、被処理物としての鋼部材が焼入処理される焼入工程が実施される。具体的には、鋼部材が真空または塩浴中でA変態点以上の温度である温度Tに加熱され、時間tの間保持された後、A変態点以上の温度からM点以下の温度に冷却されることにより、鋼部材が焼入処理される。
ここで、A点とは鋼を加熱した場合に、鋼の組織がフェライトからオーステナイトに変態を開始する温度に相当する点をいう。また、M点とはオーステナイト化した鋼が冷却される際に、マルテンサイト化を開始する温度に相当する点をいう。
次に、焼入処理が実施された鋼部材に対し、焼戻処理を行なう第1焼戻工程が実施される。具体的には、鋼部材が真空中でA変態点未満の温度である温度Tに加熱され、時間tの間保持された後、冷却されることにより鋼部材が焼戻処理される。これにより、鋼部材の焼入処理による残留応力を緩和し、熱処理によるひずみが抑制される等の効果が得られる。
次に、第1焼戻工程が実施された鋼部材に対し、サブゼロ処理を行なうサブゼロ工程が実施される。具体的には、鋼部材がたとえば液体窒素を噴霧されて0℃未満の温度である温度Tに冷却され、時間tの間保持されることにより鋼部材がサブゼロ処理される。これにより、鋼部材の焼入処理により生成した残留オーステナイトがマルテンサイトに変態し、鋼の組織が安定化する等の効果が得られる。
次に、サブゼロ工程が実施された鋼部材に対し、焼戻処理を行なう第2焼戻工程が実施される。具体的には、鋼部材が真空中でA変態点未満の温度である温度Tに加熱され、時間tの間保持された後、冷却されることにより鋼部材が焼戻処理される。これにより、鋼部材のサブゼロ処理による残留応力を緩和し、ひずみが抑制される等の効果が得られる。
次に、第2焼戻工程が実施された鋼部材に対し、再度焼戻処理を行なう第3焼戻工程が実施される。具体的には、上記第2焼戻工程と同様に鋼部材が真空中でA変態点未満の温度である温度Tに加熱され、時間tの間保持された後、冷却されることにより鋼部材が焼戻処理される。ここで、温度Tおよびtは第2焼戻工程の温度Tおよびtと同様の条件とすることができる。これにより、第2焼戻工程と同様に、鋼部材のサブゼロ処理による残留応力を緩和し、ひずみが抑制される等の効果が得られる。なお、第2焼戻工程および第3焼戻工程は、1つの工程で実施してもよい。
次に、第3焼戻工程が実施された鋼部材に対し、プラズマ窒化処理を行なうプラズマ窒化工程が実施される。具体的には、たとえば圧力50Pa以上5000Pa以下となるように窒素(N)と、水素(H)、メタン(CH)およびアルゴン(Ar)からなる群から選択される少なくともいずれか1つ以上とが導入されたプラズマ窒化炉に、鋼部材が挿入され、放電電圧50V以上1000V以下、放電電流0.001A以上400A以下の条件下で温度Tに加熱されて時間tの間保持された後、冷却されることにより鋼部材がプラズマ窒化処理される。これにより、鋼部材の表層部に窒素が侵入し、当該表層部の強度が向上する。ここで、温度Tは、たとえば300℃以上550℃以下、時間tは1時間以上80時間以下とすることができる。この温度T、時間tなどの熱処理条件は、仕上げ工程で実施される仕上げ加工における取りしろを考慮し、プラズマ窒化処理において形成される粒界析出物層の厚みが、仕上げ加工において除去可能な厚みとなるように決定することができる。
なお、鋼部材を構成する鋼がAMS規格6490(AISI規格M50)である場合、プラズマ窒化工程における上記圧力は50Pa以上1000Pa以下、放電電圧は50V以上600V以下、放電電流は0.001A以上300A以下、温度Tは350℃以上450℃以下、時間tは1時間以上50時間以下とすることが好ましい。
次に、プラズマ窒化工程が実施された鋼部材に対し、拡散処理を行なう拡散工程が実施される。具体的には、たとえば真空中で温度Tに加熱され、時間tの間保持されることにより鋼部材が拡散処理される。ここで、温度Tは、300℃以上480℃以下、好ましくは300℃以上430℃以下、時間tは50時間以上300時間以下とすることができる。これにより、窒化層形成による表層部の硬度上昇が相殺されることを抑制しつつ、鋼に侵入した窒素を所望の領域にまで到達させることができる。これにより、本実施の形態における熱処理工程は完了する。
以上のように、本実施の形態における鋼の熱処理方法によれば、3.75質量%以上のクロムを含有する鋼の表層部を窒化処理して高硬度な表層部を形成するとともに、粒界析出物の発生を抑制することができる。
また、上記実施の形態における機械部品の製造方法によれば、3.75質量%以上のクロムを含有する鋼からなり、表層部が窒化処理されて高硬度な表層部を形成されるとともに、粒界析出物の発生が抑制された機械部品を製造することができる。より具体的には、たとえば仕上げ工程が完了した鋼部材を表面に垂直な断面で切断し、当該断面を光学顕微鏡または走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)を用いて、表面を含む一辺150μmの正方形の視野をランダムに5視野観察した場合、アスペクト比2以上、長さ7.5μm以上の鉄の窒化物(粒界析出物;FeNまたはFeNなど)の検出数を1個以下とすることができる。さらに、同様に20視野観察した場合においても、粒界析出物の検出数を1個以下とすることも可能である。
また、上記実施の形態における機械部品は、3.75質量%以上のクロムを含有する鋼からなり、表層部が窒化処理されて高硬度な表層部が形成されるとともに、粒界析出物の発生が抑制された機械部品となっている。
なお、上記実施の形態においては、本発明の機械部品の一例として、深溝玉軸受、スラストニードルころ軸受、等速ジョイントを構成する機械部品について説明したが、本発明の機械部品はこれに限られず、表層部の疲労強度、耐摩耗性が要求される機械部品、たとえばハブ、ギア、シャフト等を構成する機械部品であってもよい。
また、被処理物(鋼部品)の表層部とは、被処理物の表面付近の領域をいい、たとえば仕上げ加工等が実施され、被処理物が製品となった状態における表面からの距離が0.2mm以下の領域となるべき領域をいう。つまり、被処理物(鋼部品)の表層部とは、被処理物が加工等されて製造される製品に対する要求特性に鑑み、被処理物が製品となった状態において、窒素濃度を制御すべき領域であって、製品ごとに適宜決定することができる。
以下、本発明の実施例1について説明する。本発明の機械部品と同様の構成を有するサンプルを、本発明の鋼の熱処理方法を採用した本発明の機械部品の製造方法により実際に作製し、表層部における粒界析出物の発生が抑制されていることを確認する実験を行なった。実験の手順は以下のとおりである。
まず、0.77質量%以上0.85質量%以下の炭素と、0.01質量%以上0.25質量%以下の珪素と、0.01質量%以上0.35質量%以下のマンガンと、0.01質量%以上0.15質量%以下のニッケルと、3.75質量%以上4.25質量%以下のクロムと、4質量%以上4.5質量%以下のモリブデンと、0.9質量%以上1.1質量%以下のバナジウムとを含有し、残部鉄および不純物からなる鋼であるAMS規格6490(AISI規格M50)の鋼材を準備し、これを加工することにより外径φ40mm、内径φ30mm、厚みt16mmの試験片を作製した。
次に、この試験片に対し、上記実施の形態において図7に基づいて説明した本発明の鋼の熱処理方法を用いた熱処理工程を実施した。ここで、T、t、T、t、T、t、T、t、Tおよびtは、第3焼戻工程後の試験片の硬度が58HRC以上65HRCとなるように決定し、Tは430℃、tは10時間、Tは430℃、tは160時間とした。また、プラズマ窒化工程においては、プラズマ窒化時の処理温度Tが430℃となるように、放電電圧を200V以上450V以下、放電電流を1A以上5A以下の範囲で制御した。さらに、プラズマ窒化工程においては、プラズマ窒化時の炉内の圧力が267Pa以上400Pa以下となるように、窒素(N):水素(H)=1:1の割合で炉内にガスを導入した。
さらに、拡散工程では、窒素雰囲気に調整された雰囲気炉内において試験片が加熱され、試験片の表面における炭素濃度と窒素濃度との和が1.7質量%以下となるように、拡散処理が実施された。以上のように本発明の鋼の熱処理方法が実施された試験片を、本発明の実施例のサンプルとした(実施例A)。
一方、同様に作製されたAMS規格6490からなる試験片に対し、上記実施の形態において図7に基づいて説明した本発明の鋼の熱処理方法から、拡散工程を省略することにより、本発明の範囲外となる熱処理工程を実施した。ここで、T、t、T、t、T、t、T、t、Tおよびtは、第3焼戻工程後の試験片の硬度が58HRC以上65HRCとなるように決定し、Tは480℃、tは30時間とした。また、プラズマ窒化工程においては、プラズマ窒化時の処理温度Tが480℃となるように、放電電圧を200V以上450V以下、放電電流を1A以上5A以下の範囲で制御した。さらに、プラズマ窒化工程においては、プラズマ窒化時の炉内の圧力が267Pa以上400Pa以下となるように、窒素(N):水素(H):メタン(CH)=79:80:1の割合で炉内にガスを導入した。以上のように本発明の範囲外の鋼の熱処理方法が実施された試験片を、本発明の比較例のサンプルとした(比較例A)。
そして、上述のように作製された実施例Aおよび比較例Aのサンプルを表面に垂直な断面にて切断し、当該断面を研磨した。さらに、研磨された断面を腐食液にて腐食した後、表面を含む一辺150μmの正方形の視野をランダムに5視野観察した。
次に、実験結果について説明する。図8は、実施例Aの表面付近におけるミクロ組織の光学顕微鏡写真である。また、図9は、実施例Aの表面付近における硬度分布を示す図である。また、図10は、実施例Aの表面付近における炭素および窒素の濃度の分布を示す図である。また、図11は、比較例Aの表面付近におけるミクロ組織の光学顕微鏡写真である。また、図12は、比較例Aの表面付近における硬度分布を示す図である。また、図13は、比較例Aの表面付近における炭素および窒素の濃度の分布を示す図である。図8および図11において、写真上部がサンプルの表面側に該当する。また、図9および図12において、横軸は表面からの深さ(距離)、縦軸は硬度(単位はビッカース硬さ)を示している。また、図10および図13において、横軸は表面からの深さ(距離)、縦軸は炭素および窒素の濃度を示しており、図中に炭素濃度(C濃度)、窒素濃度(N濃度)および炭素濃度と窒素濃度との合計値(C+N濃度)が示されている。
図8を参照して、本発明の実施例Aのサンプルにおける表層部には、粒界析出物(アスペクト比2以上で、かつ7.5μm以上の長さで形成された鉄の窒化物)は観察されず、良好なミクロ組織となっている。また、図9および図10を参照して、実施例Aのサンプルの表面から深さ0.05mm以内の領域は、950HV以上という十分な硬度を有しているとともに、十分な量の窒素が侵入している。そのため、実施例Aと同様の熱処理を実施した鋼部材の表面に対して研磨などの仕上げ加工を施すことにより、高硬度な表層部を有するとともに、粒界析出物の発生が抑制された機械部品を製造することができる。
一方、図11を参照して、本発明の範囲外である比較例Aのサンプルにおける表層部には、多数の粒界析出物90が観察される。また、図12および図13を参照して、比較例Aのサンプルの表面から深さ0.05mm以内の領域は、実施例Aと同様に、950HV以上という十分な硬度を有しているとともに、十分な量の窒素が侵入している。そのため、比較例Aと同様の熱処理を実施した鋼部材の表面に対して研磨などの仕上げ加工を施しても、高硬度な表層部が形成されているものの、表層部に粒界析出物が残存する機械部品が得られる。このような機械部品は、上述のように、十分な疲労強度や靭性を有しているとはいえない。
以上より、本発明の鋼の熱処理方法を採用した本発明の機械部品の製造方法によれば、表層部を窒化処理して高硬度な表層部を形成するとともに、粒界析出物の発生を抑制することが可能な、3.75質量%以上のクロムを含有する鋼からなる機械部品を製造可能であることが確認された。
以下、本発明の実施例2について説明する。本発明の鋼の熱処理方法の拡散工程における、適切な加熱温度の範囲を調査する実験を行なった。実験の手順は以下のとおりである。
まず、0.77質量%以上0.85質量%以下の炭素と、0.01質量%以上0.25質量%以下の珪素と、0.01質量%以上0.35質量%以下のマンガンと、0.01質量%以上0.15質量%以下のニッケルと、3.75質量%以上4.25質量%以下のクロムと、4質量%以上4.5質量%以下のモリブデンと、0.9質量%以上1.1質量%以下のバナジウムとを含有し、残部鉄および不純物からなる鋼であるAMS規格6490(AISI規格M50)の鋼材を準備し、これを加工することにより外径φ40mm、内径φ30mm、厚みt16mmの試験片を作製した。
次に、この試験片に対し、上記実施の形態において図7に基づいて説明した本発明の鋼の熱処理方法を用いた熱処理工程のうち、焼入工程から第3焼戻工程までを上記実施例1の実施例Aの場合と同様に実施した。そして、当該試験片を430℃〜570℃の温度に種々の時間保持することにより、拡散工程と同様の工程を実施し、試験片の硬度を測定した。さらに、当該測定結果を反応速度論に基づき解析し、拡散工程の各加熱温度における加熱処理時間(拡散時間)と硬度との関係を算出した。
一方、同様の試験片に焼入工程から第3焼戻工程までを上記実施例1の実施例Aの場合と同様に実施した後、実際にプラズマ窒化工程および拡散工程を実施して、試験片の硬度分布を確認する実験も行なった。プラズマ窒化工程においては、プラズマ窒化時の処理温度Tが480℃となるように、放電電圧を200V以上450V以下、放電電流を1A以上5A以下の範囲で制御し、1時間保持することによりプラズマ窒化を行なった。さらに、プラズマ窒化工程では、プラズマ窒化時の炉内の圧力が267Pa以上400Pa以下となるように、窒素(N):水素(H)=1:1の割合で炉内にガスを導入した。さらに、プラズマ窒化工程が完了した試験片に対して、480℃で50時間保持する拡散工程を行なった。そして、拡散工程を実施する前後における試験片の表層部における硬度分布を測定した。
次に、実験の結果について説明する。図14は、上記反応速度論に基づく解析の結果得られた、拡散工程の各加熱温度における加熱処理時間(拡散時間)と試験片の硬度との関係を示す図(アブラミプロット)である。図14において、横軸は加熱処理時間(拡散時間)、縦軸は試験片の硬度を示している。また、図15は、拡散工程を行なう前の試験片、および480℃で50時間保持する拡散工程を行なった試験片の表層部の硬度分布を示す図である。図15において、横軸は表面からの深さ(距離)、縦軸は硬度を示している。また、図15において、菱形は拡散工程を行なう前の試験片、四角形は480℃で50時間保持する拡散工程を行なった試験片の硬度を示している。
図14を参照して、試験片の硬度は、拡散温度が高いほど短時間で低下しているが、拡散温度が480℃になると、200時間拡散処理を行なった場合でも硬度の低下幅が40HV以下となり、母材の硬度(プラズマ窒化による窒素の侵入の影響がない領域における硬度)の低下が表層部の硬度に及ぼす影響が小さくなる。また、拡散温度が460℃になると、200時間拡散処理を行なった場合でも硬度の低下幅が25HV以下となり、母材の硬度の低下が表層部の硬度に及ぼす影響が一層小さくなる。さらに、拡散温度が430℃になると、200時間拡散処理を行なった場合でも硬度の低下幅が10HV以下となり、母材の硬度の低下は、表層部の硬度にほとんど影響を及ぼさなくなる。
一方、図15を参照して、480℃で50時間保持する拡散工程を行なった場合、実際の母材硬度の低下幅は、図14の解析結果とほぼ一致しており、図14の解析結果は、実際の熱処理の結果に一致しているものと考えられる。
以上の実験結果より、拡散工程における加熱温度(拡散温度)は、母材の硬度の低下が表層部の硬度に及ぼす影響を抑制しつつ、鋼に侵入した窒素を所望の領域にまで到達させる観点から、480℃以下とする必要があり、460℃以下とすることが好ましい。さらに、当該加熱温度を430℃以下とすることにより、母材の硬度の低下を表層部の硬度にほとんど影響させることなく、拡散工程を実施することができる。なお、母材の硬度の低下が表層部の硬度に及ぼす影響を抑制する観点からは、拡散工程における加熱温度を一層低くすることが好ましいが、鋼に侵入した窒素を所望の領域にまで到達させるために要する時間が実際の生産工程における許容限度を超えて長くなることを回避するため、当該加熱温度は300℃以上とすることが好ましい。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の鋼の熱処理方法、機械部品の製造方法および機械部品は、3.75質量%以上のクロムを含有する鋼からなる被処理物を窒化する工程を含む鋼の熱処理方法、3.75質量%以上のクロムを含有する鋼からなり、表層部が窒化処理された機械部品およびその製造方法に、特に有利に適用され得る。
本発明の一実施の形態における機械部品を備えた深溝玉軸受の構成を示す概略断面図である。 第1の変形例である機械部品を備えたスラストニードルころ軸受の構成を示す概略断面図である。 第2の変形例である機械部品を備えた等速ジョイントの構成を示す概略断面図である。 図3の線分IV−IVに沿う概略断面図である。 図3の等速ジョイントが角度をなした状態を示す概略断面図である。 本発明の一実施の形態における機械部品および当該機械部品を備えた機械要素の製造方法の概略を示す図である。 機械部品の製造方法に含まれる熱処理工程の詳細を説明するための図である。 実施例Aの表面付近におけるミクロ組織の光学顕微鏡写真である。 実施例Aの表面付近における硬度分布を示す図である。 実施例Aの表面付近における炭素および窒素の濃度の分布を示す図である。 比較例Aの表面付近におけるミクロ組織の光学顕微鏡写真である。 比較例Aの表面付近における硬度分布を示す図である。 比較例Aの表面付近における炭素および窒素の濃度の分布を示す図である。 拡散工程の各加熱温度における加熱処理時間と試験片の硬度との関係を示す図(アブラミプロット)である。 拡散工程を行なう前の試験片、および430℃で50時間保持する拡散工程を行なった試験片の表層部の硬度分布を示す図である。
符号の説明
1 深溝玉軸受、2 スラストニードルころ軸受、3 等速ジョイント、11 外輪、11A 外輪転走面、12 内輪、12A 内輪転走面、13 玉、13A 玉転走面、14,24 保持器、21 軌道輪、21A 軌道輪転走面、23 ニードルころ、31 インナーレース、31A インナーレースボール溝、32 アウターレース、32A アウターレースボール溝、33 ボール、34 ケージ、35,36 軸、90 粒界析出物。

Claims (5)

  1. 0.77質量%以上0.85質量%以下の炭素と、0.01質量%以上0.25質量%以下の珪素と、0.01質量%以上0.35質量%以下のマンガンと、0.01質量%以上0.15質量%以下のニッケルと、3.75質量%以上4.25質量%以下のクロムと、4質量%以上4.5質量%以下のモリブデンと、0.9質量%以上1.1質量%以下のバナジウムとを含有し、残部鉄および不純物からなる鋼から構成され、機械部品の概略形状に成形された鋼部材を準備する工程と、
    前記鋼部材の焼入処理および窒化処理を含む熱処理を行なう工程と、
    前記熱処理を行なう工程が実施された前記鋼部材に対して仕上げ加工が施される仕上げ工程とを備え、
    前記熱処理を行う工程は、前記鋼部材を焼入硬化する工程と、焼入硬化された前記鋼部材をプラズマ窒化する工程と、プラズマ窒化された前記鋼部材を300℃以上480℃以下の温度である拡散温度に保持する工程とを有する、機械部品の製造方法。
  2. 前記拡散温度は、430℃以下である、請求項1に記載の機械部品の製造方法。
  3. 前記仕上げ工程が完了した前記鋼部材の表面に垂直な断面で切断し、前記断面を顕微鏡にて観察した場合、アスペクト比2以上、長さ7.5μm以上の鉄の窒化物の数が、前記表面を含む1辺150μmの正方形領域5視野内に1個以下である、請求項1または2に記載の機械部品の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の機械部品の製造方法により製造された、機械部品。
  5. 軸受を構成する部品として用いられる、請求項4に記載の機械部品。
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