JP2007154595A - 目地止水構造及び建物 - Google Patents

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Abstract

【課題】目地の止水シール設置箇所を通過した雨水を受け止めて排水口より排水する止水構造に関し、排水口から逆流する雨水の建物内部への浸入を阻止する。
【解決手段】縦目地17には、縦一次止水シール31及びその背後の縦二次止水シール32を設け、縦二次止水シール32から所定間隔をおいた背後にクロス目地役物23の柱状シール部25を配置した。クロス目地役物23のベースシール部24には建物外部側に開口する凹部26を形成し、凹部26の前方位置に排水口38を設けた。その結果、縦二次止水シール32に受け止められて下方へ落下した雨水は凹部26及び排水口38を介して排水される。また、柱状シール部25の上部と縦二次止水シール32の対向面間に止水部材41を固定した。その結果、排水口38に連通しかつ建物内部側を行き止まりとした空間部44が形成され、排水口38から逆流する雨水が建物内部に浸入するのを阻止できる。
【選択図】図5

Description

本発明は、建物の外壁パネル間に形成される目地からの雨水等の水の浸入を防止する目地止水構造及びその目地止水構造を有した建物に関する。
建物の外壁パネル間に形成される目地から雨水等の水が建物内部に浸入するのを防止するために、目地内には止水シールが設けられている。しかし、止水シールの経時劣化などの要因により、止水シールの存在にかかわらず雨水が目地から建物内部に浸入することが考えられる。その対策として、目地の前後に止水シールを二重に配置することが提案されている。すなわち、外部に露出される止水シールを一次止水シールとし、その後方にバックアップシールとしての二次止水シールを設けるという手法である。これにより、たとえ一次止水シールを雨水が通過したとしても、二次止水シールによって雨水が受け止められ、それ以上の建物内部への雨水の浸入を防ぐことができる。
ところが、下階の外壁パネルと上階の外壁パネルとの境界部において縦目地と横目地との繋ぎ目が逆T字状になる箇所では、上階の外壁パネル間の縦目地において二次止水シールが雨水を受け止めても、二次止水シールに沿って流下する雨水を地上に至らせることができない。すなわち、逆T字状に目地の繋ぎ目が形成されている場合、二次止水シールが下階の外壁パネルの上端部で行き止まりとなってしまい、そこに二次止水シールを伝って流下してきた雨水が溜まってしまうおそれがある。
この問題点を解消するものとして、上階の縦目地において二次止水シールを伝って流下する雨水を受け止める排水ピース、及びその排水ピースに受け止められた雨水を建物外部に排出する排水口を設けた止水構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
この止水構造について図8に基づいて簡単に説明すると、排水ピース51は、下階外壁パネル52の上端部背後から後方に延びるように設けられており、二次止水シール53と所定間隔をおいた後方位置において上方へ折り曲げられるように形成されている。一次止水シール54は二次止水シール53の前方に配設されている。また、上階外壁パネル55の縦目地56下端部と下階外壁パネル52上端面との間、すなわち縦目地56と横目地との繋ぎ目位置に、排水口57が形成されている。
したがって、上階の縦目地56において一次止水シール54よりも建物内部側へ雨水が浸入することがあっても、その雨水が二次止水シール53によって受け止められる。そして、二次止水シール53を伝って流下してきた雨水はやがて当該二次止水シール53の下端から滴下され、排水ピース51に受け止められる。そして、排水ピース51に受け止められた雨水は、下階外壁パネル52の防水加工された上端面を通って建物外部に連通する排水口57に至り、最終的に建物外部へ排水される。
しかしながら、排水口57は風雨に直接晒される場所に形成されることになるため、例えば台風などのように強風を伴う降雨があった場合には、排水口57から雨水が逆流してくるおそれがある。この場合、勢い付いた雨水Wは風に煽られ、図8の白抜き矢印にて示すように、二次止水シール53と排水ピース51との前後方向の隙間を介して建物内部に浸入してしまうという新たな問題が懸念される。
なお、このような問題は、目地の止水シール設置箇所を通過した雨水を受け止めて外壁に露出した排水口より排水する止水構造であれば、上記逆T字状に目地が繋がる箇所に限
らず同様に発生するものと考えられる。
特開2002−146928号公報
本発明は、目地の止水シール設置箇所を通過した雨水等の水を受け止めて外壁に露出した排水口より排水する目地止水構造について、排水口から逆流してくる水の建物内部への浸入をも阻止することのできる目地止水構造、及びその目地止水構造を有した建物を提供することを主たる目的の一つとする。
上記課題を解決するのに有効な手段につき、必要に応じて作用、効果、より踏み込んだ具体的手段等を示しつつ説明する。なお、理解を容易にするため、発明の実施の形態において対応する主要な構成を括弧書きで適宜示すが、この括弧書きで示した具体的構成に限定されない。
本発明は、外壁を構成する外壁パネル(下階外壁パネル11、上階外壁パネル12,13)間の目地(縦目地17、横目地18)に建物外部からの水の浸入を阻止する止水シール(特に、縦二次止水シール32)を設けるとともに、前記外壁の一部に外部へ露出された排水口(排水口38)を設け、前記止水シールから流下する水を受け止めて前記排水口へ導く受け止め領域(特に、内外方向空隙部43)を形成した目地止水構造であって、前記受け止め領域における前記止水シールからの水の流下位置よりも建物内部側を所定位置で行き止まりとする空間部(空間部44)を形成した。
この目地止水構造によれば、外壁パネル間の目地に建物内部に水が浸入しようとしても、目地に設けられた止水シールによって受け止められる。止水シールによって受け止められた水は自重により流下していくが、この水は受け止め領域によって受け止められて排水口を介して建物外部へ排水される。ここで、受け止め領域における止水シールからの水の流下位置よりも建物内部側の所定位置において行き止まりとする空間部が形成されているため、強風に煽られて水が排水口から逆流しようとしても、当該水はその空間部内に至るだけであってそれ以上建物内部へ至ることがない。また、そもそも前記空間部内では風の勢いが低下することから空間部の末端部にまで到達する可能性も低くなる。その結果、排水口から逆流してくる水の建物内部への浸入を防止することができ、受け止め領域及び排水口を設けたことによる不具合を解消することができる。なお、上記止水シールは必ずしも外壁から露出されたものを意味せず、二次止水シール等のバックアップシールであってもよい。
上記止水構造において、前記目地が縦目地である場合には、該縦目地に設けられた前記止水シールの下端部から流下される水を受け止めるべく当該止水シールの下方に前記受け止め領域を配置することが好ましい。
縦目地に沿った止水シールに受け止められた水は当該止水シールを伝って下端部に至り、そこから流下されるからである。
上記止水構造において、前記目地が縦目地とその下端部に沿う横目地とで形成されている場合には、該横目地と縦目地とが繋がる位置に前記排水口を設け、前記横目地を形成する下方の外壁パネル上に前記受け止め領域を形成することが好ましい。
このような逆T字状の目地が形成されている場合には、縦目地の止水シールを伝って流
下してきた水が横目地との繋ぎ目で行き場を失い、建物内部に残留してカビやクラックを発生させるおそれがあるため、上記排水口を設けた意義が大きくなるからである。また、逆T字状の目地が形成されている箇所では、下方の外壁パネル上に前記受け止め領域を形成すれば当該受け止め領域の形成が簡単なものとなる。
上記縦目地の下端部に受け止め領域を設ける場合、縦目地に沿った止水シールより建物内部側へ間隔をおいて当該止水シールに沿って上方に延びる役物(クロス目地役物23、特に柱状シール部25)を設けることにより前記受け止め領域の建物内部側を上方に延設した上下方向空隙部(上下方向空隙部42)を形成し、その上下方向空隙部において前記役物と止水シールとの間に止水部材(止水部材41)を介在させることにより前記空間部を形成することが好ましい。
これにより、縦目地に沿った止水シールの建物内部側において上下方向空隙部を形成し、この上下方向空隙部において止水部材を設けて空間部を形成したことから、排水口から連通される空間部の容積を止水シールの建物内部側領域にまで拡大することができる。その結果、たとえ排水口からの排水量が止水シールからの水の流下量を一時的に上回ることがあっても、これを上下方向空隙部で吸収することができる。
また、上記役物は、弾性を有する弾性体によって構成されるとともに、上側の外壁パネルと下側の外壁パネルとの間に挟み込まれるベースシール部(ベースシール部24)と、該ベースシール部から前記縦目地に沿った止水シールの建物内部側にて上方に延びかつ前記上側の外壁パネル間に挟み込まれる柱状シール部(柱状シール部25)とを有する構造とすることが好ましい。さらに、前記ベースシール部を前記止水シールの下方に配置するとともに、前記ベースシール部には前記排水口側に延びかつ少なくとも当該排水口側及び上側が開口した凹部(凹部26)を形成し、当該凹部により前記上下方向空隙部にその下端部で連通される内外方向空隙部(内外方向空隙部43)を形成することが好ましい。
逆T字状の目地が形成されている箇所において、縦目地と横目地との繋ぎ目に排水口を形成する場合、繋ぎ目付近をベースシール部によって止水することが可能となり、横目地に沿った止水シールをベースシール部の両端部にまで延ばせばよいためである。そして、このベースシール部を縦目地の止水シール下方に配置するとともに、排水口側に延びかつ排水口側及び上側が開口した凹部を形成することで、止水シールから滴下された水は凹部を介して排水口へ好適に導かれる。また、凹部によって排水口から建物内部側に延びる内外方向空隙部が形成され、これと上下方向空隙部とが連通されることで、水が排水されるまで一旦貯留する余裕が生じる。
前記止水部材は、前記役物及び止水シールとは別体として形成することができ、前記役物と止水シールとに接着固定することができる。また、前記止水部材は、弾性を有する弾性体によって構成することが好ましい。
止水部材を別体で形成すれば、既存の役物及び止水シールをそのまま利用することが可能となる。この場合、止水部材がそれぞれに接着固定されることで、経時的に位置ずれを発生させる可能性が低くなり、また止水部材と止水シールとの間や止水部材と役物との間に隙間が発生してしまうおそれを抑止することができる。また、止水部材が弾性体であれば、役物と止水シールとの間隔が多少異なってもそれを吸収することができて現場の施工管理が容易になる。
なお、止水部材は自身の弾力に抗して縮められた状態で設置されることが一層好ましい。止水部材とそれに接する部材との間のシール効果を維持し易いからである。
前記役物とともに前記上下方向空隙部を形成する前記止水シールは、前記縦目地を形成する外壁パネルに向けて両側に延びるリップ(前方リップ33及び後方リップ34)を有した定形シールであり、建物外部より圧入されることにより取り付けられたものであることが好ましい。リップの存在によりシール性能を高めることができるからである。なお、止水性能向上のためにはリップを前後に複数有することが一層好ましい。
前記止水シールを前記目地の内外方向に複数(特に、縦一次止水シール31及び縦二次止水シール32)配置することが好ましい。これにより、建物外部に面した止水シールの経時劣化等により当該止水シールを水が通過してしまっても、次に控える止水シールがバックアップシールとして機能し、それ以上の建物内部への水の浸入を抑止することができるからである。
なお、以上の目地止水構造を有する建物では強風に煽られた雨水の浸入すらも防止することができて外壁の止水効果を極めて高くすることができ、台風の多い日本風土に好適な建物を得ることができる。
以下に、発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、図1は建物の外壁の一部を示した正面図、図2は図1のA−A線断面図、図3は図1のB−B線断面図、図4は二次止水シールの横断面図、図5は図2の断面部分を拡大した要部斜視図、図6及び図7は施工過程を説明するための分解斜視図である。
図1に示すように、本実施の形態における建物では、下階に下階外壁パネル11が配設されるとともに、上階に上階外壁パネル12,13が一対配設されて、外壁の一部が構成されている。図2,図3等に示すように、各外壁パネル11〜13は、いずれも建物外部に露出する外壁板14とその背面側に固定されたフレーム15とから構成されている。外壁板14は、建物の外観を決定付けるものであって、意匠性を高めるべく表面に凹凸模様等が施され、かつ耐候性に優れた素材で形成されている。フレーム15は、その剛性の高さによって外壁パネル11〜13としての強度を高めるとともに、建物の骨組の一部を形成する鋼材16に連結されている。
各外壁パネル11〜13は例えば10mm程度の一定間隔をおいて配置されている。そして、その隙間によって、上階外壁パネル12,13間に縦目地17が形成されるとともに、下階外壁パネル11と上階外壁パネル12,13との間に横目地18が形成されている。このように縦目地17の下端部に沿って横目地18が形成され、目地同士が逆T字状に繋がった箇所では、縦目地17が下階外壁パネル11の上端部で途切れた形となっている。これら縦目地17及び横目地18には、雨水等の水が建物内部に浸入することを防止するために、止水処理が施されている。
以下に、これら縦目地17及び横目地18の止水構造について説明する。
横目地18には、下階外壁パネル11と上階外壁パネル12,13との外壁板14間に不定形シールからなる横一次止水シール21が設けられている。なお、不定形シールとはペースト状の不定形な樹脂材料を目地に充填することで固定される防水材である。横一次止水シール21の背面側には定形シールからなる一対の横二次止水シール22が設けられている。横二次止水シール22は縦目地17と横目地18との繋ぎ目位置に至る途中位置までの長さとされている。一対の横二次止水シール22の間には、クロス目地役物23のベースシール部24前端部が介在されている。
クロス目地役物23は、水平方向に延びかつ横長板状に形成されたベースシール部24
と、そのベースシール部24の幅方向中央部の後部位置から垂直に上方へ延びる四角柱状の柱状シール部25とを備えている。そして、これらベースシール部24と柱状シール部25がEPDM等のゴムによって一体成形されている。ベースシール部24には、前端中央に奥側へ延びかつ上下方向に貫通する凹部26が形成されている。ベースシール部24の前端部における左右両角部には横二次止水シール22の端部が入り込む受け部27が形成されている。
このように形成されたクロス目地役物23は、そのベースシール部24が下階外壁パネル11上に配設されている。より詳細には、下階外壁パネル11の上面には、少なくとも縦目地17との繋ぎ目位置を含む幅方向所定範囲を含み、当該下階外壁パネル11のフレーム15の厚さ方向全域を覆うように、防水性を有する止水シート28が貼り付けられている。そして、その止水シート28上にクロス目地役物23のベースシール部24が貼り付けられている。また、クロス目地役物23は、各受け部27に前記各横二次止水シール22の端部が受け止められた状態となり、かつ凹部26の中心が縦目地17の中心と一致するように配置されている。したがって、横目地18では、ベースシール部24が下階外壁パネル11と上階外壁パネル12,13のフレーム15間に挟み込まれた状態で押し潰され、ベースシール部24と下階外壁パネル11の上面との間、及びベースシール部24と上階外壁パネル12,13の下面との間のシールが確保されている。また、各横二次止水シール22とベースシール部24の前端部とで横目地18全域の二次止水機能が担保されている。
縦目地17には、上階外壁パネル12,13の両外壁板14間に不定形シールからなる縦一次止水シール31が設けられている。縦一次止水シール31の背面側には定形シールからなる縦二次止水シール32が設けられている。図4に示すように、縦二次止水シール32には長手方向に延びる前方リップ33と後方リップ34とが前後に間隔をおいて形成されており、上階外壁パネル12,13の両フレーム15間に押し込まれている。この状態では、各リップ33,34の先端側が建物外部へ向けて撓んだ状態となっており、各リップ33,34の復帰弾性力によってフレーム15側へ押し付けられている。これにより止水効果が高められている。縦二次止水シール32の前端部には外壁面に沿った平板状の受け板部35が形成されており、これにより縦一次止水シール31の背面位置が決定されている。
縦二次止水シール32の背面側には、同縦二次止水シール32と所定間隔をおいて前記クロス目地役物23の柱状シール部25が配設されている。柱状シール部25は両側面が隣接するフレーム15によって押し潰された状態で保持されており、柱状シール部25の復帰弾性力によって当接されているフレーム15側へ押し付けられている。なお、各上階外壁パネル12,13の下側角部にはコーナー防水テープ36が予め貼り付けられている。より詳細には、各上階外壁パネル12,13の隣接する下側角部には、柱状シール部25の上端位置よりも上方位置に至る範囲、かつ当該各上階外壁パネル12,13のフレーム15の厚さ方向全域を覆うように、コーナー防水テープ36が貼り付けられている。これにより、柱状シール部25の側面と隣接するフレーム15との間の止水効果が高められている。
ここで、縦二次止水シール32の下端部は、下階外壁パネル11より上方位置、詳しくはクロス目地役物23のベースシール部24上面とほぼ等しい高さ位置まで延ばされている。また、ベースシール部24の前記凹部26は少なくとも縦二次止水シール32の直下位置よりも背面側まで延びている。さらに、横一次止水シール21と縦一次止水シール31との繋ぎ目位置には、凹部26に連続するようにして、排水具37が設けられている。排水具37は四角筒状に形成され、前方が外部に連通されて排水口38が形成される一方、後方が凹部26の前端に連通されている。その結果、縦二次止水シール32と柱状シー
ル部25との間に形成される上下方向空隙部42と、前記凹部26から排水口38に至る内外方向空隙部43とが連通されている。
柱状シール部25の前面上部とそれに向き合う縦二次止水シール32背面との間には直方体形状をなすスポンジ製の止水部材41が設けられている。止水部材41は柱状シール部25及び縦二次止水シール32にそれぞれ接着されることによって固定されている。これにより、上下方向空隙部42の上部が行き止まりとされている。したがって、排水口38から後方へ延びる内外方向空隙部43とその後端から上方へ延びる上下方向空隙部42が、全体として略L字状をなし建物内部側が行き止まりとなった空間部44とされている。
以上の止水構造によって、図5等に示すように、外壁に至った雨水は外壁パネル11〜13によって受け止められ、縦目地17や横目地18に至った雨水は横一次止水シール21や縦一次止水シール31によって受け止められる。横一次止水シール21や縦一次止水シール31の経時劣化等によりこれらより建物内部側へ雨水が浸入することがあっても、その雨水は横二次止水シール22や縦二次止水シール32の前後各リップ33,34によって受け止められる。
ここで、縦二次止水シール32の各リップ33,34に受け止められた雨水は自重によってリップ33,34を伝って下方へ流下していき、やがて縦二次止水シール32の下端から滴下される。この滴下された雨水はクロス目地役物23によって受け止められる。より詳細には、その滴下された雨水はクロス目地役物23に形成された凹部26と止水シート28とに囲まれて形成された内外方向空隙部43に至る。そして、この内外方向空隙部43に至った雨水Wは、最終的には排水口38を介して建物外部へ排出される。
一方、排水口38は建物外部に露出されているため、強風と降雨とが重なった気象状況下では、排水口38から内外方向空隙部43へ雨水が逆流して入り込み、さらに強風に煽られて雨水が上下方向空隙部42へと至る可能性がある。この場合において、上下方向空隙部42の上部、すなわちクロス目地役物23の前面上部と縦二次止水シール32との間の空隙が止水部材41によって止水処理されているため、上下方向空隙部42へ至った雨水がさらに上方へ移動しようとしても、スポンジ製の止水部材41に受け止められ、雨水のそれ以上の建物内部への浸入が阻止される。
以上説明した止水構造によれば、以下に示す有利な効果が得られる。
各一次止水シール21,31の経時劣化等によりこれらより建物内部側へ雨水が浸入することがあっても、各二次止水シール22,32によって受け止められる。その結果、各二次止水シール22,32が各一次止水シール21,31のバックアップシールとして機能し、即座に建物内部に雨水が入り込むことがなくなる。
縦二次止水シール32はリップ33,34を前後に離間させたものであるため、当該縦二次止水シール32に至った雨水がさらに建物内部に至る可能性が殆どなくなり、止水性能が極端に向上する。後方リップ34が前方リップ33の更なるバックアップシールとして機能するためである。
縦二次止水シール32の前面、すなわち建物外部へ向けられた面は平坦状の受け板部35とされ、縦一次止水シール31を施工する際の注入限界位置を決定付けている。その結果、縦一次止水シール31の仕上がりを良好なものとすることができ、ひいては縦一次止水シール31の施工不良を低減し得る。
縦二次止水シール32に受け止められその下端から滴下された雨水は、クロス目地役物23に受け止められ得る。そして、クロス目地役物23に形成された凹部26と止水シート28とに囲まれて形成された内外方向空隙部43に至り、最終的には排水口38を介して建物外部へ排出される。その結果、縦二次止水シール32にまで至った雨水が縦目地17内に残留し続けてカビやクラックが発生する可能性を低くすることができる。
クロス目地役物23の柱状シール部25が縦二次止水シール32の後方にて上方に立ち上げられることで上下方向空隙部42が形成されている。これにより、縦二次止水シール32から流下する雨水が建物内部側へ浸入するのを阻止することができるし、万一大量の雨水が入り込んで排水口38からの排水能力が追いつかない場合であっても雨水の建物内部への浸入を阻止することができる。すなわち、上下方向空隙部42は非常時に備えた余裕空間として機能する。
縦二次止水シール32とクロス目地役物23とで形成される上下方向空隙部42の上部対向面間を止水部材41により塞いで、排水口38においてのみ開放する空間部44を形成した。これにより、排水口38から内外方向空隙部43へ雨水が逆流して入り込み、さらに雨水が上下方向空隙部42へと至ったとしても、止水部材41に受け止められ、雨水のそれ以上の建物内部への浸入を阻止することができる。しかも、空間部44とすることによって、排水口38から入り込む風の抜け道が殆どなくなってしまい、風の勢いが極端に低下する。したがって、そもそも強風によって雨水が排水口38から逆流してきても、その雨水が止水部材41に到達することは殆どないといえる。これらによって、排水口38を設けたことによる雨水の逆流という問題点を解消することができる。
なお、止水部材41を設けず、排水口38からの雨水の逆流程度を低くするために当該排水口38の流路断面積を小さくする工夫も考えられるが、これでは排水能力を低下させてしまうという問題があるし、強風時の雨水が上下方向空隙部42を上方へ至る可能性を十分に低くできるものとはいえず、根本的な解決にはならない。したがって、止水部材41を設けることの効果は絶大である。しかも、止水部材41の存在によって、排水口38の流路断面積を比較的大きくすることができる効果もあり、排水能力を向上させることができるという新たな利点も生じ得る。
止水部材41をスポンジにより形成した。これにより、万一、止水部材41に雨水が若干至るようなことがあっても、これを止水部材41によって吸収することができる。また、止水部材41をソリッド状の弾性体で成形した場合に比べて伸縮性が高いため、縦二次止水シール32とクロス目地役物23との間隔のずれを吸収することができ、施工管理が容易になる。
クロス目地役物23は、ベースシール部24によって横目地18の奥側をバックアップしつつ、柱状シール部25によって縦目地17の奥側をバックアップすることができる。そして、ベースシール部24と柱状シール部25とが一体成形されていることにより、排水口38から続く空隙部42,43に連通される隙間の発生を抑止することができる。したがって、クロス目地役物23の存在により空間部44の形成が容易になる。
次いで、上記止水構造を構築するための施工方法について、特に図6及び図7を中心に説明する。
図6に示すように、まず、下階外壁パネル11の上面には、縦目地17形成予定位置に中心がくるように、止水シート28を貼り付ける。止水シート28は下階外壁パネル11の外壁板14に差し掛かる位置まで延ばされることで、下階外壁パネル11の外壁板14とフレーム15との隙間を止水する機能を有する。なお、止水シート28は奥行き方向に
フレーム15の厚さを越える長さを有しているため、余剰分はフレーム15の背面側に貼り付ける。そして、この止水シート28上に、クロス目地役物23のベースシール部24を貼り付ける。この際、凹部26が縦目地17形成予定位置と中心があうように位置決めするとともに、ベースシール部24の前端部をフレーム15の前端位置に位置合わせした状態で貼り付ける。また、下階外壁パネル11の上面に、フレーム15の前端位置に沿って横二次止水シール22を配置し、それらの相対向する端部をベースシール部24の受け部27に受け止めさせる。
次いで、クレーン等によって、下階外壁パネル11上に一方の上階外壁パネル12を設置する。この場合、図7に示すように、柱状シール部25に対して側面から押圧した状態となるように上階外壁パネル12を配置することで、柱状シール部25の幅が圧縮された状態となる。
ここで、前記止水構造の説明では触れなかったが、柱状シール部25の両側面上部には可撓性を有する左右一対の接着シート46が設けられ、両接着シート46は柱状シール部25の上端から十分に長い接着余裕をもって形成されている。そして、最初に設置された上階外壁パネル12とは反対側の接着シート46を当該上階外壁パネル12のフレーム15に貼り付ける。その貼り付け態様は、接着シート46の先端がフレーム15の上方へ延びるように一定の張力をもって行われる。これにより、使用された接着シート46側の柱状シール部25側面上部が若干上階外壁パネル12側へ引き寄せられた状態に弾性変形された状態となる。なお、使用しない接着シート46は切断して除去するが、折り畳むだけでもよい。
この状態で、クレーン等によって、下階外壁パネル11上にもう一方の上階外壁パネル13を設置する。ここで、柱状シール部25を幅方向に圧縮させる必要があることから、上階外壁パネル13を斜め下方に向けて予定の設置位置に向け移動させる。この場合、誤って柱状シール部25の上面に上階外壁パネル13の下角部が移動してきても、その下角部が接着シート46にまず当接され、その後、接着シート46をガイドとして上階外壁パネル13の位置修正が行われる。これにより、柱状シール部25の損傷を回避しながら、柱状シール部25の幅方向の圧縮をしつつ上階外壁パネル12に隣接した位置にもう一方の上階外壁パネル13を予定位置に設置することができる。また、このようにして各外壁パネル11〜13が設置された状態で縦目地17及び横目地18が形成される。
その後、柱状シール部25の前面上部に接着剤を塗布し、縦目地17内に止水部材41を押し込むことにより、柱状シール部25の前面上部に止水部材41を接着する。次いで、止水部材41の前面側に接着剤を塗布した状態で、縦目地17に沿って延びる縦二次止水シール32を押し込む。これにより、縦二次止水シール32が縦目地17に設置されるとともに、止水部材41が縦二次止水シール32に接着される。
さらにその後、排水具37を縦目地17と横目地18との繋ぎ目位置に配置し、縦目地17及び横目地18にそれぞれ不定形シールを施工することで各目地17,18の隙間を閉塞する。この際、排水具37の周面に至るまで不定形シールを施工することで、排水具37の位置決め固定も同時に行われる。
以上説明した施工方法によれば、上記した止水構造に基づく効果以外にも、以下に示す有利な効果が得られる。なお、以下の効果は上記止水構造が前提となる効果であるから、上記止水構造によって発揮し得る効果ということもできる。
柱状シール部25の両側に上階外壁パネル12,13を設置するに際して、最初に設置された上階外壁パネル12のフレーム15に、柱状シール部25の両側面上部に設けた左
右一対の接着シート46のうち遠い側の接着シート46を一定の張力を付与した状態で貼り付けた。これにより、もう一方の上階外壁パネル13を設置する際、接着シート46がガイドとなり、柱状シール部25が上階外壁パネル13の設置時に損傷してしまうおそれを回避しながら、柱状シール部25の幅方向の圧縮をしつつ上階外壁パネル12に隣接した予定設置位置にもう一方の上階外壁パネル13を効率良く設置することができる。
止水部材41は各外壁パネル11〜13の設置後に建物外部から押し込むだけで予定位置に設けることができる。また、その後、縦二次止水シール32を建物外部から縦目地17内へ押し込むだけでよい。さらに、止水部材41の縦二次止水シール32及びクロス目地役物23への固定は、それぞれを接着するだけでよい。その結果、止水部材41の施工が容易になる。
四角筒状の排水具37を各目地17,18の繋ぎ目位置に配置することによって排水口38を形成した。これにより、各一次止水シール21,31の施工の際に排水口38が塞がってしまう不具合を解消し得る。また、排水具37は各一次止水シール21,31が施工されて固まった段階では各一次止水シール21,31によって保持される結果となり、排水具37専用の位置固定手段が不要となる。
なお、以上説明した実施の形態に限らず、例えば以下に別例として示した形態で実施することもできる。
・上記実施の形態では、止水部材41としてスポンジを用いたが、弾力性のある部材であればよく、例えば不定形シール材や、ソリッド状の弾性体等を用いることができる。なお、ゴムのような弾性体とする場合には、クロス目地役物23の柱状シール部25の前面上部に一体成形することも可能となる。このようにクロス目地役物23に一体成形しておくと、クロス目地役物23の成形が複雑にはなるものの、現場での止水部材41の施工忘れを回避し得る利点がある。
・上記実施の形態では、横二次止水シール22や縦二次止水シール32などのようにバックアップシールを設けたが、これを省略して実施することもできる。1の止水シールによって目地の止水を行う場合、縦二次止水シール32において例示したように前後に複数のリップを有することが好ましい。
・上記実施の形態では、排水口38を形成するために排水具37を使用したが、このような特別な部材を別途用意しなくてもよい。すなわち、各一次止水シール21,31の施工の際に排水口38を形成する箇所に対応して一定空間が確保されるように治具を建物外部から嵌め込んでおき、各一次止水シール21,31の施工後に治具を引き抜けば、排水口38を形成することができる。また、排水具37に対応する構成をクロス目地役物23と一体に又は一体的に形成することも可能である。
・上記実施の形態では、逆T字状目地となる縦目地17と横目地18との繋ぎ目位置にクロス目地役物23を配置したが、縦目地17用の役物と横目地18用の役物を別個に設けて繋ぎ目位置の止水構造を構築してもよい。
・上記実施の形態では、内外方向空隙部43は略水平方向を向くようになっていたが、排水口38へ向けて下り傾斜となるように内外方向空隙部43の底面を形成することもできる。この場合、縦二次止水シール32から滴下された雨水を円滑に排水口38から排出することができる。ここで、下り傾斜とする有効な構造の一つとして、クロス目地役物23の凹部26を有底として前方及び上方にのみ開放した溝形状とし、当該溝の底部を排水口38へ向けた下り傾斜に形成することが挙げられる。
・上記実施の形態では、縦目地17と横目地18とで逆T字状に目地が形成された箇所の止水構造について説明したが、それ以外の目地について二次止水シールに至った雨水を受け止めて排水口へ導く空間を形成し、当該空間のうち排水口へ導く空間を除き建物内部と連通する箇所を塞ぐようにしてもよい。また、例えば同一階において形成される目地に適用するなど上階と下階との間に形成される目地に限られるものでもないし、外壁パネル11〜13が必ずしも外壁板14とその背後のフレーム15とから構成されたものに限られるものでもない。
本実施の形態における建物の外壁の一部を示す正面図。 外壁パネルの止水構造を示す縦断面図(図1のA−A線断面図)。 外壁パネルの止水構造を示す横断面図(図1のB−B線断面図)。 二次止水シールの横断面図。 図2の断面部分を拡大した要部斜視図。 施工過程を説明するための分解斜視図。 施工過程を説明するための分解斜視図。 従来の外壁パネルの止水構造を示す縦断面図。
符号の説明
11…下階外壁パネル、12,13…上階外壁パネル、17…縦目地、18…横目地、21…横一次止水シール、22…横二次止水シール、23…役物としてのクロス目地役物、24…ベースシール部、25…柱状シール部、26…凹部、28…止水シート、31…縦一次止水シール、32…縦二次止水シール、37…排水具、38…排水口、41…止水部材、42…受け止め領域を形成する上下方向空隙部、43…受け止め領域を形成する内外方向空隙部、44…空間部。

Claims (10)

  1. 外壁を構成する外壁パネル間の目地に建物外部からの水の浸入を阻止する止水シールを設けるとともに、前記外壁の一部に外部へ露出された排水口を設け、前記止水シールから流下する水を受け止めて前記排水口へ導く受け止め領域を形成した目地止水構造であって、
    前記受け止め領域における前記止水シールからの水の流下位置よりも建物内部側を所定位置で行き止まりとする空間部を形成したことを特徴とする目地止水構造。
  2. 前記目地は縦目地であり、該縦目地に設けられた前記止水シールの下端部から流下される水を受け止めるべく当該止水シールの下方に前記受け止め領域を配置した請求項1記載の目地止水構造。
  3. 前記目地として縦目地とその下端部に沿う横目地が形成され、該横目地と縦目地とが繋がる位置に前記排水口を設け、前記横目地を形成する下方の外壁パネル上に前記受け止め領域を形成した請求項1又は2記載の目地止水構造。
  4. 前記止水シールより建物内部側へ間隔をおいて当該止水シールに沿って上方に延びる役物を設けることにより前記受け止め領域の建物内部側を上方に延設した上下方向空隙部を形成し、その上下方向空隙部において前記役物と止水シールとの間に止水部材を介在させることにより前記空間部を形成した請求項2又は3記載の目地止水構造。
  5. 前記役物は、弾性を有する弾性体によって構成されるとともに、上側の外壁パネルと下側の外壁パネルとの間に挟み込まれるベースシール部と、該ベースシール部から前記縦目地に沿った止水シールの建物内部側にて上方に延びかつ前記上側の外壁パネル間に挟み込まれる柱状シール部とを有し、
    前記ベースシール部を前記止水シールの下方に配置するとともに、前記ベースシール部には前記排水口側に延びかつ少なくとも当該排水口側及び上側が開口した凹部を形成し、当該凹部により前記上下方向空隙部にその下端部で連通される内外方向空隙部を形成した請求項4記載の目地止水構造。
  6. 前記止水部材は、前記役物及び止水シールとは別体として形成され、前記役物と止水シールとに接着固定されている請求項4又は5記載の目地止水構造。
  7. 前記止水部材は、弾性を有する弾性体によって構成されている請求項4乃至6のいずれかに記載の目地止水構造。
  8. 前記役物とともに前記上下方向空隙部を形成する前記止水シールは、前記縦目地を形成する外壁パネルに向けて両側に延びるリップを有した定形シールであり、建物外部より圧入されることにより取り付けられたものである請求項4乃至7のいずれかに記載の目地止水構造。
  9. 前記止水シールを前記目地の内外方向に複数配置した請求項1乃至7のいずれかに記載の目地止水構造。
  10. 請求項1乃至9のいずれかに記載の目地止水構造を外壁パネル間に設けた建物。
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