JP2007145203A - 車輪用軸受装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】強度・剛性を確保しつつ軽量・コンパクト化を図ると共に、低コスト化を図った車輪用軸受装置を提供する。
【解決手段】ハブ輪4’が一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジ6’を一体に有する車輪用軸受装置において、車輪取付フランジ6’が、鍛造加工によりアウター側の側面6dに円周等配に穿設されたハブボルト挿通孔6bの周辺を避けてハブボルト挿通孔6b間に、このハブボルト挿通孔6bのピッチ円直径より内径側まで切欠きを有する花形形状に形成されると共に、車輪取付フランジ6’の外周縁に、軸方向寸法が1〜5mmの範囲に設定された面取り部15が形成されている。これにより、車輪取付フランジ6’のアウター側の側面6dを旋削工程で所望の寸法に形成しても、側面6dの外周縁にバリが発生して側面6d側に捲くれ込むことはなく、旋削工程におけるバリ除去が不要となる。
【選択図】図4

Description

本発明は、自動車等の車輪を懸架装置に対して回転自在に支承する車輪用軸受装置、特に、装置の軽量・コンパクト化と共に、低コスト化を図った車輪用軸受装置に関するものである。
近年、省資源あるいは公害等の面から燃費向上に対する要求は厳しいものがある。自動車部品において、中でも車輪軸受装置の軽量化はこうした要求に応える要因として注目され、強く望まれて久しい。特に、自動車等の車両の中でも軽四輪あるいはスモールカーをはじめとした軽車両においては、この軽量化に対する要求は益々増大してきている。従来から軽量化を図った車輪用軸受装置に関する提案は種々のものがあるが、それと共に低コスト化を図ることも重要な要因となっている。
図7は、自動車に用いられ、軽量化を図った車輪用軸受装置の一例である。この車輪用軸受装置は駆動輪側に使用される代表的な構造で、ハブ輪51と複列の転がり軸受52とがユニット化して構成されている。
車輪用軸受装置のハブ輪51は鍛造により形成されて中空構造をなし、図示しない車輪を取り付けるための車輪取付フランジ53を一体に有し、その外周に複列の転がり軸受52の一方の内側転走面51aと、この内側転走面51aから軸方向に延びる円筒状の小径段部51bが形成され、内周にトルク伝達用のスプライン54が形成されている。
前記小径段部51bには、複列の転がり軸受52の他方の内側転走面55aが外周に形成された別体の内輪55が圧入されている。そして、小径段部51bの端部を径方向外方に塑性変形させて加締部56が形成され、この加締部56によって内輪55がハブ輪51に対して軸方向に固定されている。
一方、複列の転がり軸受52を構成する外方部材57は、懸架装置を構成するナックル58に固定するための車体取付フランジ57bを一体に有し、内周に前記内側転走面51a、55aに対向する複列の外側転走面57a、57aが形成されている。このように、複列の転がり軸受52は、ハブ輪51と内輪55と外方部材57、および両転走面51a、57a、55a、57a間に転動自在に収容された複列のボール59、59を備えている。
ハブ輪51において、車輪取付フランジ53の円周4箇所等配にハブボルト53aが植設され、ブレーキロータ60および車輪が締結される。このハブ輪51は、図8に示すように、車輪取付フランジ53に、ハブボルト53aが固定されるボルト挿通孔61が形成され、このボルト挿通孔61の周辺を避けて、各ボルト挿通孔61間において、車輪取付フランジ53の外周にR形状の切欠き部62が形成されている。
切欠き部62は、ボルト挿通孔61のピッチ円直径Aより内径側で、かつ隣接するボルト挿通孔61の中心を結ぶ弦Bにその最深部62aが近接するように形成されている。さらに、車輪取付フランジ53は、各ボルト挿通孔61の外周近傍の肉厚が薄くされた薄肉部63が形成されると共に、各ボルト挿通孔61を含んで内周側の肉厚は薄くせず、充分な曲げ剛性が得られるように通常の厚肉部64とされている。これにより、軽量化を図りながらも、車輪取付フランジ53の曲げ剛性が低下するのを防止している。
特開2003−94905号公報
このような従来の車輪用軸受装置では、軽量化を狙って車輪取付フランジ53のハブボルト53a間の外周部分を排除して花形形状に形成されると共に、ハブ輪51のスリム化を図りつつ車輪取付フランジ53の曲げ剛性が低下するのを防止している。また、図9(a)に示すように、ハブ輪51の鍛造工程では、車輪取付フランジ53が平坦に形成できるような金型構造になっている。すなわち、車輪取付フランジ53の外周まで鍛造素材が流動し易いよう、上型65と下型66とが、車輪取付フランジ53の側面67の位置で僅かな空洞部を介して衝合するように構成されている。その結果、(b)に示すように、車輪取付フランジ53の外周にバリ68が発生する。そして、(c)に示すように、鍛造の最終工程にこのバリ68が型抜き除去されている。
然しながら、車輪取付フランジ53の側面67を旋削加工する際、側面67の外周縁にバリが発生して側面67側に捲くれ込まないように、別途側面67の外周縁のバリを除去する必要があった。さらに、車輪取付フランジ53が花形形状であるが故に、このバリ68を除去する旋削加工が断続加工となり、工程増しに加えサイクルタイムが長くなって製造コストが高騰する要因となっていた。
本発明は、このような従来の問題に鑑みてなされたもので、強度・剛性を確保しつつ軽量・コンパクト化を図ると共に、低コスト化を図った車輪用軸受装置を提供することを目的とする。
係る目的を達成すべく、本発明のうち請求項1に記載の発明は、内周に複列の外側転走面が形成された外方部材と、アウトボード側の端部に車輪取付フランジを一体に有し、外周に軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入された少なくとも一つの内輪とからなり、外周に前記複列の外側転走面に対向する複列の内側転走面が形成された内方部材と、前記両転走面間に転動自在に収容された複列の転動体とを備えた車輪用軸受装置において、前記車輪取付フランジの外周縁に、鍛造加工により所定の面取り部が形成されている。
このように、一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有するハブ輪を備えた車輪用軸受装置において、車輪取付フランジの外周縁に、鍛造加工により所定の面取り部が形成されているので、車輪取付フランジのアウター側の側面を旋削工程で所望の形状・寸法に形成しても、側面の外周縁にバリが発生して側面側に捲くれ込むことはなく、旋削工程におけるバリ除去が不要となる。したがって、強度・剛性を確保しつつ軽量・コンパクト化を図ると共に、工数削減によって低コスト化を図ることができる。
好ましくは、請求項2に記載の発明のように、前記面取り部の軸方向寸法が1〜5mmの範囲に設定されていれば、側面が旋削加工によって削り取られても外周縁に面取り部が残り、バリが発生するのを防止すると共に、外周面がエッジになることなく平坦部が確保できる。
また、請求項3に記載の発明は、前記車輪取付フランジが、アウター側の側面に円周等配に穿設されたハブボルト挿通孔の周辺を避けて該ハブボルト挿通孔間に、このハブボルト挿通孔のピッチ円直径より内径側まで切欠きを有する花形形状に形成されていれば、ハブ輪の強度・剛性を損なうことなく軽量化を達成することができる。
また、請求項4に記載の発明のように、前記車輪取付フランジが、円板状に形成されて周方向等配にハブボルトが圧入されるハブボルト挿通孔が穿設され、これらハブボルト挿通孔を含んで、鍛造加工によりフランジ基部から放射状に延びて肉厚が厚くされたリブ部が形成されると共に、当該リブ部の端部に所定の面取り部が形成されていれば、リブ部の側面を旋削工程で所望の形状・寸法に形成しても、側面の外周縁にバリが発生して側面側に捲くれ込むことはなく、旋削工程におけるバリ除去が不要となる。したがって、ハブ輪の強度・剛性を確保しつつ軽量・コンパクト化を図ると共に、工数削減によって低コスト化を図ることができる。
また、請求項5に記載の発明は、前記外方部材が、外周に懸架装置に取り付けられる車体取付フランジを一体に有し、この車体取付フランジが、この外周部に複数のボルト挿通孔が穿設され、鍛造加工により当該ボルト挿通孔の近傍を除く部分を切欠いて、各ボルト挿通孔の形成部分だけが外径側に放射状に突出する形状に形成されていると共に、前記車体取付フランジの外周縁に、所定の面取り部が形成されていれば、外方部材の強度・剛性を損なうことなく軽量化を達成することができると共に、車体取付フランジの側面を旋削工程で所望の形状・寸法に形成する時、側面の外周縁にバリが発生して側面側に捲くれ込むことはなく、旋削工程におけるバリ除去が不要となる。したがって、強度・剛性を確保しつつ軽量・コンパクト化を図ると共に、工数削減によって低コスト化を図ることができる。
本発明に係る車輪用軸受装置は、内周に複列の外側転走面が形成された外方部材と、アウトボード側の端部に車輪取付フランジを一体に有し、外周に軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入された少なくとも一つの内輪とからなり、外周に前記複列の外側転走面に対向する複列の内側転走面が形成された内方部材と、前記両転走面間に転動自在に収容された複列の転動体とを備えた車輪用軸受装置において、前記車輪取付フランジの外周縁に、鍛造加工により所定の面取り部が形成されているので、車輪取付フランジのアウター側の側面を旋削工程で所望の形状・寸法に形成する時、側面の外周縁にバリが発生して側面側に捲くれ込むことはなく、旋削工程におけるバリ除去が不要となる。したがって、強度・剛性を確保しつつ軽量・コンパクト化を図ると共に、工数削減によって低コスト化を図ることができる。
外周に懸架装置に取り付けられる車体取付フランジを一体に有し、内周に複列の外側転走面が形成された外方部材と、アウトボード側の端部に車輪取付フランジを一体に有し、外周に前記複列の外側転走面に対向する一方の内側転走面と、この内側転走面から軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入され、外周に前記複列の外側転走面に対向する他方の内側転走面が形成された内輪とからなる内方部材と、前記両転走面間に転動自在に収容された複列の転動体とを備えた車輪用軸受装置において、前記車輪取付フランジが、鍛造加工によりアウター側の側面に円周等配に穿設されたハブボルト挿通孔の周辺を避けて該ハブボルト挿通孔間に、このハブボルト挿通孔のピッチ円直径より内径側まで切欠きを有する花形形状に形成されると共に、当該車輪取付フランジの外周縁に、軸方向寸法が1〜5mmの範囲に設定された面取り部が形成されている。
以下、本発明の実施の形態を図面に基いて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る車輪用軸受装置の第1の実施形態を示す縦断面図、図2は、図1の側面図、図3(a)〜(c)は、ハブ輪の鍛造工程を示す説明図、図4(a)は、ハブ輪単体を示す正面図、(b)は、(a)のIV−IV線に沿った拡大横断面図、図5は、外方部材の鍛造工程を示す説明図である。なお、以下の説明では、車両に組み付けた状態で車両の外側寄りとなる側をアウター側(図面左側)、中央寄り側をインナー側(図面右側)という。
この車輪用軸受装置は、従動輪を回転自在に支承する第3世代と称され、内方部材1と外方部材2、および両部材1、2間に転動自在に収容された複列の転動体(ボール)3、3とを備えている。ここで、内方部材1は、ハブ輪4と、このハブ輪4に圧入された内輪5とを指す。
ハブ輪4は、外周のアウター側の端部に放射状に延びる4つに分割された車輪取付フランジ(以下、車輪取付アームと言う)6を一体に有し、この車輪取付アーム6の円周等配位置には車輪を締結するためのハブボルト6aが植設されている。車輪取付アーム6は、ハブボルト挿通孔6bの近傍を除く部分を切欠いて、各ハブボルト挿通孔6bの形成部分と略同じ幅でもって、環状の基部、すなわち、ブレーキパイロット部6cから放射状に突出して形成されている。これにより、外方部材2をナックルに締結する際に、この車輪取付アーム6に邪魔されることなく、締付工具等にて容易にナックルボルトを締結することができ、組立作業を簡便化することができる。
ハブ輪4の外周には、一方(アウター側)の内側転走面4aと、この内側転走面4aから軸方向に延びる小径段部4bが形成され、この小径段部4bに内輪5が所定のシメシロを介して圧入されている。内輪5の外周には他方(インナー側)の内側転走面5aが形成されている。そして、小径段部4bの端部を径方向外方に塑性変形させて加締部4cが形成されている。内輪5はこの加締部4cによってハブ輪4に対して軸方向に固定され、所謂セルフリテイン構造をなしている。したがって、ハブ輪4の強度・剛性を確保しつつ、軽量・コンパクト化を図ることができる。また、従来のように内輪をナット等で強固に緊締して予圧量を管理する必要がないため、車両への組込性を簡便にすることができ、長期間その予圧量を維持することができると共に、部品点数を大幅に削減でき、組込性の向上と相俟って低コスト化を達成することができる。なお、本発明に係る車輪用軸受においては、例示した第3世代構造に限らず、例えば、図示はしないが、ハブ輪の小径段部に一対の内輪が圧入される第1または第2世代構造であっても良い。
外方部材2の内周には、内方部材1の複列の内側転走面4a、5aに対向する複列の外側転走面2a、2aが形成され、これら両転走面2a、4aおよび2a、5a間に保持器7を介して複列の転動体3、3が転動自在に収容されている。また、外方部材2のアウター側の端部にはシール8が装着され、外方部材2と内方部材1との間に形成される環状空間の開口部を密封している。一方、外方部材2のインナー側の端部には、カップ状のシールキャップ(図示せず)が装着され、外方部材2の開口部を閉塞している。これらシール8およびシールキャップにより、軸受内部に封入された潤滑グリースの外部への漏洩と、外部から雨水やダスト等が軸受内部に侵入するのを防止している。
また、外方部材2は、外周に懸架装置を構成するナックル(図示せず)に取り付けられる車体取付フランジ2bを一体に有し、この車体取付フランジ2bの外周部に複数のボルト挿通孔9が穿設されている。この車体取付フランジ2bは、その外周部のうちボルト挿通孔9の近傍を除く部分を切欠いて、各ボルト挿通孔9の形成部分だけが外径側に放射状に突出する形状に形成されている。すなわち、車体取付フランジ2bは、円周方向に離れた複数の部分フランジ10に分割されている。そして、ボルト挿通孔9に貫通するナックルボルト(図示せず)によりナックルに固定される。さらに、外方部材2のインナー側の端部には、前記車体取付フランジ2bから軸方向に延びる円筒状のナックルパイロット部2cが形成され、このナックルパイロット部2cの外径面にナックルが嵌合される。
このように、外方部材2は、外周に放射状に延びる複数の部分フランジ10からなる車体取付フランジ2bが形成されているので、外方部材2の強度・剛性を損なうことなく軽量化を達成することができる。なお、前記ナックルパイロット部2cが、その円周方向の複数箇所に切欠きが設けられ、断続して突片状に形成されていても良い。これにより、外方部材2の剛性を低下させることなくさらに軽量化を図ることができる。
ハブ輪4は、S53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中炭素鋼で形成され、車輪取付アーム6のインボード側の基部および小径段部4bに亙り高周波焼入れによって表面硬さを58〜64HRCの範囲に硬化処理されている。なお、加締部4cは、鍛造後の素材表面硬さ25HRC以下の未焼入れ部としている。これにより、ハブ輪4の強度・剛性を確保すると共に、内輪5との嵌合面のフレッティング摩耗を防止することができ、ハブ輪4の耐久性が向上する。また、加締部4cを塑性変形させる時の加工性が向上し、加工時におけるクラック等の発生を防止して品質の信頼性を向上させることができる。
また、外方部材2は、ハブ輪4と同様、S53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中炭素鋼で形成され、複列の外側転走面2a、2aが高周波焼入れによって表面硬さを58〜64HRCの範囲に硬化処理されている。一方、内輪5は、SUJ2等の高炭素クロム軸受鋼からなり、ズブ焼入れにより芯部まで58〜64HRCの範囲で硬化処理されている。なお、ここでは、転動体3、3をボールとした複列アンギュラ玉軸受を例示したが、これに限らず転動体に円錐ころを使用した複列円錐ころ軸受であっても良い。
ここで、本実施形態では、ハブ輪4は、図3に示すような鍛造工程によって製造されている。すなわち、ハブ輪4’は、(a)に示すように、内側転走面をはじめ所望の形状の外周面に合致した内周面を有する上型11aと、この上型11aと軸方向に対向し、所望の形状を有する下型11bとからなる鍛造金型11によって形成されている。そして、車輪取付アーム6’の外周まで鍛造素材が流動し易いよう、これら上型11aと下型11bは、車輪取付アーム6’の外周面で、環状の空洞部12を介して互いに衝合するように構成されている。これにより、(b)に示すように、ハブ輪4’の車輪取付アーム6’の外周にはヒレ状のバリ13が形成される。このバリ13は、(c)に示す最終工程で、抜き型14によってせん断除去されるが、このような鍛造工程で製造された車輪取付アーム6’の外周の両端部には所定の曲率半径rからなる面取り部15が形成されている。
このような鍛造工程で製造されたハブ輪4’は、図4に示すように、外周面をはじめ車輪取付アーム6’のアウター側の側面6dが旋削工程で所望の形状・寸法に形成される。この時、外周の両端部に面取り部15が形成されているため、側面6dの外周縁にバリが発生し、側面6d側に捲くれ込むことはない。したがって、車輪取付アーム6’の側面6dのバリ除去が不要となり、工数削減によって低コスト化を図ることができる。
なお、鍛造工程で製造されたハブ輪4’における車輪取付アーム6’の面取り部15は、軸方向寸法Lが1〜5mm、好ましくは、2〜4mmの範囲に設定されている。すなわち、車輪取付アーム6’の側面6dが旋削加工によって通常1mm程度削り取られるため、軸方向寸法Lが少なくとも1mm必要であると共に、この軸方向寸法15aが大きくなり過ぎると、車輪取付アーム6’の外周面の平坦部が少なくなってエッジになるため、上限は5mmに設定されている。
さらに、本実施形態では、外方部材2もハブ輪4と同様、鍛造工程で車体取付フランジ2bの部分フランジ10が、面取り部17を有する外周に形成されている。すなわち、図5に示すように、ナックルパイロット部をはじめ所望の形状の外周面に合致した内周面を有する上型16aと、この上型16aと軸方向に対向し、所望の形状を有する下型16bとからなる鍛造金型16によって形成されている。そして、部分フランジ10’の外周まで鍛造素材が流動し易いよう、これら上型16aと下型16bは、部分フランジ10’の外周面で、環状の空洞部18を介して互いに衝合するように構成されている。これにより、外方部材2’の部分フランジ10’の外周にはヒレ状のバリ19が形成される。このバリ19は、図示しない最終工程で、抜き型によってせん断除去されるが、このような鍛造工程で製造された部分フランジ10’の外周の両端部には所定の曲率半径Rからなる面取り部17が形成されている。
このような鍛造工程で製造された外方部材2’は、外周面をはじめ部分フランジ10’のインナー側の側面およびナックルパイロット部が旋削工程で所望の形状・寸法に形成される。この時、外周の両端部に面取り部19が形成されているため、側面の外周縁にバリが発生し、側面側に捲くれ込むことはない。したがって、部分フランジ10’の側面のバリ除去が不要となり、工数削減によって一層の低コスト化を図ることができる。なお、鍛造工程で製造された外方部材2’における部分フランジ10’の面取り部19は、ハブ輪4’と同様、軸方向寸法Lが1〜5mm、好ましくは、2〜4mmの範囲に設定されている。
なお、ここでは、車輪取付フランジとして、環状の基部から放射状に突出するように形成された車輪取付アーム6を例示したが、これに限らず、従来のように、ハブボルト挿通孔の周辺を避けてハブボルト挿通孔間に、このハブボルト挿通孔のピッチ円直径より内径側まで深く切欠きが形成された車輪取付フランジのようなものであっても良い。
図6(a)は、本発明に係る車輪用軸受装置の第2の実施形態におけるハブ輪を示す正面図、(b)は、(a)のVI−VI線に沿った拡大横断面図である。なお、前述した実施形態と同一の部品や部位には同じ符号を付してその重複した説明を省略する。
この車輪用軸受装置のハブ輪20は、一端部に車輪取付フランジ21を有し、(a)に示すように、車輪取付フランジ21は円板状に形成され、周方向等配にハブボルト(図示せず)が圧入されるハブボルト挿通孔22が穿設されている。そして、車輪取付フランジ21は、外周に向って漸次肉厚が薄くされた薄肉部23と、各ハブボルト挿通孔22を含んでフランジ基部から放射状に延び、肉厚が厚くされたリブ部24とで構成されている。これにより、軽量化を図りながらも、車輪取付フランジ21の曲げ剛性が低下するのを防止している。ここで、前述した実施形態と同様、車輪取付フランジ21の外周の両端部に、鍛造工程で面取り(図示せず)が形成されると共に、リブ部24の端部に所定の曲率半径rからなる面取り部25が形成されている。
鍛造工程で製造されたリブ部24は、(b)に示すように、側面24aが旋削工程で所望の寸法に形成されるが、この面取り部25は、前述した実施形態と同様、旋削取代等を考慮して、軸方向寸法Lが1〜5mm、好ましくは、2〜4mmの範囲に設定されている。このように、リブ部24の端部24aに面取り部25が形成されているため、旋削加工において、側面24aの外周縁にバリが発生し、側面24a側に捲くれ込むことはない。したがって、リブ部24の側面24aのバリ除去が不要となり、工数削減によって低コスト化を図ることができる。
以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
本発明に係る車輪用軸受装置は、駆動輪用、従動輪用に拘わらず、車輪取付フランジを一体に有するハブ輪を備えた車輪用軸受装置に適用することができる。
本発明に係る車輪用軸受装置の第1の実施形態を示す縦断面図である。 図1の側面図である。 (a)〜(c)は、図1のハブ輪の鍛造工程を示す説明図である。 (a)は、図1のハブ輪単体を示す正面図である。 (b)は、(a)のIV−IV線に沿った拡大横断面図である。 図1の外方部材の鍛造工程を示す説明図である。 (a)は、本発明に係る車輪用軸受装置の第2の実施形態におけるハブ輪を示す正面図である。 (b)は、(a)のVI−VI線に沿った拡大横断面図である。 従来の車輪用軸受装置を示す縦断面図である。 従来のハブ輪単体を示す正面図である。 (a)〜(c)は、図8のハブ輪の鍛造工程を示す説明図である。
符号の説明
1・・・・・・・・・・・・・・・・・内方部材
2・・・・・・・・・・・・・・・・・外方部材
2b・・・・・・・・・・・・・・・・車体取付フランジ
2c・・・・・・・・・・・・・・・・ナックルパイロット部
3・・・・・・・・・・・・・・・・・転動体
4、4’、20・・・・・・・・・・・ハブ輪
4a、5a・・・・・・・・・・・・・内側転走面
4b・・・・・・・・・・・・・・・・小径段部
4c・・・・・・・・・・・・・・・・加締部
5・・・・・・・・・・・・・・・・・内輪
6、6’・・・・・・・・・・・・・・車輪取付アーム
6a・・・・・・・・・・・・・・・・ハブボルト
6b、22・・・・・・・・・・・・・ハブボルト挿通孔
6c・・・・・・・・・・・・・・・・ブレーキパイロット部
6d、24a・・・・・・・・・・・・側面
7・・・・・・・・・・・・・・・・・保持器
8・・・・・・・・・・・・・・・・・シール
9・・・・・・・・・・・・・・・・・ボルト挿通孔
10、10’・・・・・・・・・・・・部分フランジ
11、16・・・・・・・・・・・・・鍛造金型
11a、16a・・・・・・・・・・・上型
11b、16b・・・・・・・・・・・下型
12、18・・・・・・・・・・・・・空洞部
13、19・・・・・・・・・・・・・バリ
14・・・・・・・・・・・・・・・・抜き型
15、17、25・・・・・・・・・・面取り部
21・・・・・・・・・・・・・・・・車輪取付フランジ
23・・・・・・・・・・・・・・・・薄肉部
24・・・・・・・・・・・・・・・・リブ部
51・・・・・・・・・・・・・・・・ハブ輪
51a、55a・・・・・・・・・・・内側転走面
51b・・・・・・・・・・・・・・・小径段部
52・・・・・・・・・・・・・・・・複列の転がり軸受
53・・・・・・・・・・・・・・・・車輪取付フランジ
53a・・・・・・・・・・・・・・・ハブボルト
54・・・・・・・・・・・・・・・・スプライン
55・・・・・・・・・・・・・・・・内輪
56・・・・・・・・・・・・・・・・加締部
57・・・・・・・・・・・・・・・・外方部材
57a・・・・・・・・・・・・・・・外側転走面
57b・・・・・・・・・・・・・・・車体取付部
58・・・・・・・・・・・・・・・・ナックル
59・・・・・・・・・・・・・・・・ボール
60・・・・・・・・・・・・・・・・ブレーキロータ
61・・・・・・・・・・・・・・・・ボルト挿通孔
62・・・・・・・・・・・・・・・・切欠き部
63・・・・・・・・・・・・・・・・薄肉部
64・・・・・・・・・・・・・・・・厚肉部
65・・・・・・・・・・・・・・・・上型
66・・・・・・・・・・・・・・・・下型
67・・・・・・・・・・・・・・・・側面
68・・・・・・・・・・・・・・・・バリ
A・・・・・・・・・・・・・・・・・ボルト挿通孔のピッチ円直径
B・・・・・・・・・・・・・・・・・ボルト挿通孔の中心を結ぶ弦
L・・・・・・・・・・・・・・・・・面取り部の軸方向寸法

Claims (5)

  1. 内周に複列の外側転走面が形成された外方部材と、
    アウトボード側の端部に車輪取付フランジを一体に有し、外周に軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入された少なくとも一つの内輪とからなり、外周に前記複列の外側転走面に対向する複列の内側転走面が形成された内方部材と、
    前記両転走面間に転動自在に収容された複列の転動体とを備えた車輪用軸受装置において、
    前記車輪取付フランジの外周縁に、鍛造加工により所定の面取り部が形成されていることを特徴とする車輪用軸受装置。
  2. 前記面取り部の軸方向寸法が1〜5mmの範囲に設定されている請求項1に記載の車輪用軸受装置。
  3. 前記車輪取付フランジが、アウター側の側面に円周等配に穿設されたハブボルト挿通孔の周辺を避けて該ハブボルト挿通孔間に、このハブボルト挿通孔のピッチ円直径より内径側まで切欠きを有する花形形状に形成されている請求項1または2に記載の車輪用軸受装置。
  4. 前記車輪取付フランジが、円板状に形成されて周方向等配にハブボルトが圧入されるハブボルト挿通孔が穿設され、これらハブボルト挿通孔を含んで、鍛造加工によりフランジ基部から放射状に延びて肉厚が厚くされたリブ部が形成されると共に、当該リブ部の端部に所定の面取り部が形成されている請求項1または2に記載の車輪用軸受装置。
  5. 前記外方部材が、外周に懸架装置に取り付けられる車体取付フランジを一体に有し、この車体取付フランジが、この外周部に複数のボルト挿通孔が穿設され、鍛造加工により当該ボルト挿通孔の近傍を除く部分を切欠いて、各ボルト挿通孔の形成部分だけが外径側に放射状に突出する形状に形成されていると共に、前記車体取付フランジの外周縁に、所定の面取り部が形成されている請求項1乃至4にいずれか記載の車輪用軸受装置。
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