JP2007100248A - ポリウレタン系弾性繊維およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 シリコーンオイル、変性シリコーン、及び金属石けんを、それぞれ、ポリウレタン繊維に対し0.1〜10重量%、0.1〜10重量%、0.05〜5.0重量%含有してなるポリウレタン系弾性繊維である。また、シリコーンオイル、変性シリコーン、及び金属石けんを混合してなる改質剤をポリウレタン紡糸原液に添加した後、乾式紡糸することにより上記ポリウレタン系弾性繊維を製造する方法である。
【選択図】なし
Description
本発明のポリウレタン系弾性繊維は、シリコーンオイル、変性シリコーン、及び金属石けんを含有し、その含有量は、それぞれ、ポリウレタン弾性繊維に対し、0.1〜10重量%、0.01〜5.0重量%、0.05〜5.0重量%である。
このシリコーンオイルは、特に、併用添加する金属石鹸の繊維中での均一微分散性を高めるために必要であり、その配合量は、繊維に対し0.1〜10重量%である。なかでも0.5〜5重量%が好ましい。
このポリウレタン重合体は、ウレア結合も含むポリウレタン−ウレアであってもよいし、また、ウレア結合を含まないポリウレタンであってもよい。また、ポリウレタンとポリウレタン−ウレアとの混合ポリマや共重合体であってもよい。
ポリエーテルソフトセグメントを誘導するためのポリエーテル系ジオール化合物としては、次の一般式で表される単位を含む共重合ジオール化合物を含むことが好ましい。
なお、実施例中の各特性は次の評価方法による。
予め混合したスラリー状改質剤の100mlを密栓付きガラス製100mlメスシリンダーに入れ、40℃にて1週間と1ケ月間放置し、1週間後と1ケ月間後の改質剤の外観を観察し、スラリー状改質剤の分散安定性を下記の基準で判定した。
◎: 均一な分散状態で外観に変化がなかった。
○: 5ml未満の透明層が発生した。
△: 5ml以上の透明層が発生した。
×: 金属石けんの沈殿が発生した。
予め混合したスラリー状改質剤の100mlに、金属石鹸が1000ppmの濃度となるように、25℃粘度が20×10-6m2 /Sであるシリコーンオイルを添加して希釈し、試料とした。この試料を25℃で超遠心式自動粒度分布測定装置(堀場製作所製CAPA−700)を用いて面積基準の平均粒子径を測定した。
[紡糸性の評価]
乾式紡糸工程途中における糸切れの頻度を測定し、糸切れ発生までの巻き取り距離(繊維長さ)にて表示した。
弾性繊維巻糸体を転がしながらポリウレタン系弾性繊維を解舒し、この時、200%伸長状態の弾性糸を50m/分の送り速度で送り、交差ロールを介して糸割れ箇所を拡大して糸割れ箇所数を計測する。糸割れ箇所は曲がった節として観察される。100個の巻糸体を検査して糸割れ箇所の発生数を調べ、弾性繊維100mあたりの糸割れ箇所数(平均値)を求め、下記の基準で評価した。
◎: 100mあたり1箇所未満
○: 100mあたり1箇所以上5箇所未満
△: 100mあたり5箇所以上50箇所未満
×: 100mあたり50箇所以上
弾性糸の試料サンプルを、“インストロン”4502型引張試験機を用いて引張テストすることにより破断時点の強度、伸度を測定する。
即ち、試料長5cm(L1)の試料糸を50cm/分の引張速度で300%伸長を5回繰返した。次にこの長さを30秒間保持した。さらに6回目に試料サンプル糸が切断するまで伸長した。この破断時の応力を(G3)、破断時の試料長さを(L3)とした。以下、上記の特性は下記式により与えられる。
伸度=100×{(L3)−(L1)}/(L1)
解舒張力は、図1に示す装置によって測定する。チューブ2に巻かれたポリウレタン弾性繊維巻糸体1を図1の様に固定し、そこからポリウレタン弾性繊維3を、45.7m/minの一定速度で巻糸体1の側面から解舒する。その解舒された走行糸3を、ガイド4、セラミック製スロット・ガイド5を通過させ、張力計ローラー6で90度に屈曲した軌跡を描かせ、ローラー12に45.7m/minにてドライブし、90度に屈曲した軌跡を描かせ、サッカーガン13に吸引させる。フリーの張力計ローラー6は電気的な歪みゲージ7に接続されており、その電気信号は導線8を通じ、積分器9で平均化処理され、記録器11にそのデータを蓄積する。このテストは4分間行い、183mの糸道の平均張力を計測する。計測時の温度は25℃、60%RHにて実施する。計測する巻糸体の位置は、巻糸体表層、中央層、最内部層とする。
巻糸体をミニチュア整経機に10本仕立て、25℃×65%RHの雰囲気下で糸速度300m/分で1500km巻き取った。このとき、ミニチュア整経機のクシガイドに対するスカムの脱落および蓄積状態を肉眼観察し、次の基準で評価した。
◎: スカムの付着がほとんどなかった。
○: スカムがやや付着しているが、糸の安定走行に問題はなかった。
×: スカムの付着および蓄積が多く、糸の安定走行に大きな問題があった。
分子量2900のポリテトラメチレンエーテルグリコール、ビス−(p−イソシアナートフェニル)−メタン、およびエチレンジアミンからなる重合原料から通常のプレポリマ法(末端停止剤としてジエチルアミンを配合)により重合を行い、ポリウレタン溶液(溶媒はN,N’−ジメチルアセトアミド(以下、DMACと略する。)、ポリウレタン濃度は35重量%)(A)を調製した。
スラリー状改質剤を調合する際、シリコーンオイル(S−1)100重量部に対するアミノ変性シリコーン(M−1)の量を6.0重量部と変更し、シリコーン混合物100重量部に対するジステアリン酸マグネシウム塩(M−1)の量を35.0重量部(実施例1の場合の2倍量)に変更した以外は実施例1の場合と同様に、20〜35℃で均一になるまで混合した後、横型ビーズミルを用いて湿式粉砕してジステアリン酸マグネシウム塩がコロイド状に分散された分散液を調製し、これをスラリー状改質剤(T−2)とした。得られたスラリー状改質剤の組成および特性を表1に示した。
スラリー状改質剤を調合する際、変性シリコーン成分をカルボキシアミド変性シリコーン(M−2)に変更した以外は実施例2の場合と同様にしてスラリー状改質剤(T−3)を調製した。得られたスラリー状改質剤の組成および特性を表1に示した。
このスラリー状改質剤(T−3)を用いた以外は、実施例2と同様にしてポリウレタン系弾性繊維を製造し、評価した。その結果は表2に示すとおりであった。
スラリー状改質剤を次の方法で調製した。
シリコーンオイル成分として、無変性のポリジメチルシロキサンからなり、25℃における粘度が20×10-3m2 /Sであるシリコーンオイル(S−2)を用い、また、変性シリコーン成分として、両末端ポリエーテル変性シリコーンを用いた。このシリコーンオイル(S−2)100重量部と、両末端ポリエーテル変性シリコーン(M−1)10重量部とを混合してシリコーン混合物とした。
この実施例4で用いたスラリー状改質剤は、分散安定性が良好で、しかも、金属石鹸の平均粒子径も小さいものであった。また、得られたポリウレタン系弾性繊維は、巻糸体の特に内層部の解舒張力の低減効果が大きく、各層ともに解舒張力が低くて解舒性に優れ、合着性も優れ、紡糸性にも優れ、スカムの付着が殆どないものであった。
実施例1で調製した溶液(D)を、スラリー状改質剤を添加することなくそのまま用い、これを紡糸原液とした。この紡糸原液を用いて実施例1と同様にしてポリウレタン系弾性繊維を製造し、評価した。その結果は表2に示すとおりであり、合着性は良好である物の、巻糸体での糸同士の膠着防止性が劣っていて、特に内層部の解舒張力が高く解舒性が不満足なものであった。また、スカム抑制効果も不十分であった。
シリコーンオイルを含有しないスラリー状改質剤を次の方法で調製した。
アミノ変性シリコーン(M−1)100重量部に対し、ジステアリン酸マグネシウム塩17.5重量部を加えて25〜35℃で均一になるまで混合した後、横型ビーズミルを用いて湿式粉砕してジステアリン酸マグネシウム塩がコロイド状に分散された分散液を調製し、これをスラリー状改質剤(U−2)とした。得られたスラリー状改質剤の組成及び特性を表1に示した。
変性シリコーンを含有しないスラリー状改質剤を次の方法で調製した。
無変性のポリジメチルシロキサンからなり、25℃における粘度が20×10-6m2 /Sであるシリコーンオイル(S−1)100重量部に対し、ジステアリン酸マグネシウム塩35.0重量部を加えて25〜35℃で均一になるまで混合した後、横型ビーズミルを用いて湿式粉砕してジステアリン酸マグネシウム塩がコロイド状に分散された分散液を調製し、これをスラリー状改質剤(U−3)とした。得られたスラリー状改質剤の組成及び特性を表1に示した。
この比較例3で用いたスラリー状改質剤は、分散安定性が劣り、しかも、金属石鹸の平均粒子径も大きいものであった。また、得られたポリウレタン系弾性繊維は、巻糸体からの解舒性は良好であったが、合着性に劣り、紡糸性も低く、スカム付着抑制にも問題があった。
シリコーンオイルを含有せずにハイドロタルサイトを含有するスラリー状改質剤を次の方法で調製した。
実施例1で使用したアミノ変性シリコーン(M−1)100重量部に対し、ジステアリン酸マグネシウム塩70重量部と合成ハイドロタルサイト(協和化学工業(株)製DHT−4A)70重量部とを加えて25〜35℃で均一になるまで混合した後、横型ビーズミルを用いて湿式粉砕して固形分が分散された分散液を調製し、これをスラリー状改質剤(U−4)とした。得られたスラリー状改質剤の組成及び特性を表1に示した。
この比較例4で用いたスラリー状改質剤は、分散安定性が劣り、しかも、金属石鹸の平均粒子径も大きいものであった。また、得られたポリウレタン系弾性繊維は、巻糸体からの解舒性は比較的良好で、合着性もあったが、紡糸性が大きく劣り、スカムの付着が多いという問題があった。
実施例1で使用したジステアリン酸マグネシウム塩17.5重量部とDMAc100重量部とを25〜35℃で混合した後、横型ビーズミルを用いて湿式粉砕してジステアリン酸マグネシウム塩が分散された分散液(U−5)とした。この分散液(U−5)をスラリー状改質剤の代わりに用い、紡糸原液中に、繊維中の金属石鹸含有量が0.52重量%となるように配合した以外は、実施例1と同様にしてポリウレタン系弾性繊維を製造し、評価した。得られたポリウレタン系弾性繊維は、巻糸体からの解舒性は良好であったが、紡糸性が大きく劣って連続紡糸が困難であった。しかも、合着性も大きく劣り、マルチフィラメントの単糸が容易に割れてしまう糸割れ現象が見られ、不満足なものであった。
実施例1で使用したアミノ変性シリコーン(M−1)を、スラリー状改質剤の代わりに用い、紡糸原液中に、繊維中の変性シリコーン含有量が0.07重量%となるように配合した以外は、実施例1と同様にしてポリウレタン系弾性繊維を製造し、評価した。得られたポリウレタン系弾性繊維は、巻糸体からの解舒張力が劣り、改質剤添加なしの比較例1と同様に解舒性が悪く、全く不満足のものであった。
実施例1で使用したシリコーンオイル(S−1)を、スラリー状改質剤の代わりに用い、紡糸原液中に、繊維中のシリコーンオイル含有量が1.40重量%となるように配合した以外は、実施例1と同様にしてポリウレタン系弾性繊維を製造し、評価した。得られたポリウレタン弾性繊維は、やはり、巻糸体からの解舒張力が劣り、改質剤添加なしの比較例1と同様に解舒性が悪く、全く不満足のものであった。
Claims (10)
- シリコーンオイル、変性シリコーン、及び金属石けんを、それぞれ、ポリウレタン繊維に対し0.1〜10重量%、0.01〜5.0重量%、0.05〜5.0重量%含有してなることを特徴とするポリウレタン系弾性繊維。
- 2本以上のフィラメントが合着された状態の弾性繊維糸であることを特徴とする請求項1記載のポリウレタン系弾性繊維。
- シリコーンオイルと変性シリコーンとの含有量合計100重量部に対し、金属石けんの含有量が5〜100重量部であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリウレタン系弾性繊維。
- シリコーンオイルと変性シリコーンとの含有量の重量比が、シリコーンオイル/変性シリコーン=(100/50)〜(100/0.5)の割合であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリウレタン系弾性繊維。
- シリコーンオイルが、25℃における粘度が10×10-6〜10×10-1m2 /Sのシリコーンオイルであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリウレタン系弾性繊維。
- 変性シリコーンが、アミノ変性シリコーン、アミド変性シリコーン、カルボキシアミド変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーンのうちの1種または2種以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリウレタン系弾性繊維。
- 金属石けんが高級脂肪酸金属塩であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリウレタン系弾性繊維。
- シリコーンオイル、変性シリコーン、及び金属石けんを混合してなる改質剤をポリウレタン紡糸原液に添加した後、乾式紡糸することにより請求項1記載のポリウレタン系弾性繊維を製造することを特徴とするポリウレタン系弾性繊維の製造方法。
- 改質剤が、シリコーンオイル及び変性シリコーンからなるシリコーン混合物中に金属石けんがコロイド状に分散されたスラリー状であることを特徴とする請求項8に記載のポリウレタン系弾性繊維の製造方法。
- 乾式紡糸工程において、口金から紡出された2本以上のフィラメントを合着処理した後に巻き上げることを特徴とする請求項8又は9に記載のポリウレタン系弾性繊維の製造方法。
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