JP2007092072A - 熱接着用基材が用いられてなるプリフォーム、および積層体の製造方法 - Google Patents

熱接着用基材が用いられてなるプリフォーム、および積層体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 他の構造部材と容易に一体化でき、かつ、接合される部材間の優れた接着強度有する積層体を与えることのできる熱接着用基材を得ること。また、力学特性、軽量性に優れ、かつ、廃棄時には容易に解体ができる一体化成形品を与えることのできる熱接着用基材を得ること。
【解決手段】 同種および/または異種の被着材を熱接着するための基材であって、明細書中に定義された積層体試験片のISO4587に基づく接着強度(S)が、温度100℃において、5.0MPa以上であり、かつ、温度200℃において、1.0MPa以下である熱接着用基材。
【選択図】なし

Description

本発明は、多数本の連続したフィラメントからなる強化繊維群で強化された繊維強化樹脂製の積層体およびその製造方法に適用する熱接着用基材に関する。本発明は、他の構造部材、とりわけ熱可塑性樹脂からなる構造部材に対し強固に一体化できる積層体を与える熱接着用基材に関する。本発明は、積層体と他の構造部材とが一体化されることにより形成された成形品を廃棄する際には、当該成形品を部品毎に容易に分解、分別でき、部品の再利用を可能にした積層体を与える熱接着用基材に関する。
多数本の連続したフィラメントからなる強化繊維群で強化された樹脂からなる成形体(FRP)は、各種の部品や構造体を形成する部材として、広く用いられている。熱硬化性樹脂をマトリックスとした成形体は、熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグのプレス成形や、レジントランスファーモールディング(RTM)などの成形方法により成形体とすることにより、製造されている。
しかしながら、熱硬化性樹脂からなるFRPは、複雑な形状を有する部品や構造体を単一の成形工程で製造するには不向きである。そのため、複雑な形状を有する部品や構造体は、当該FRPからなる複数の部材を作成し、次いで、それらの部材を一体化することにより製造されていた。
この一体化手法として、ボルト、リベット、ビスなどの機械的接合方法や、接着剤を使用する接合方法が用いられている。機械的接合方法では、接合部分を予め加工する加工工程を必要とするため、生産コストの低減がはかり難い問題があり、また、その外観からも、適用用途が限定される問題があった。接着剤を使用する接合方法では、接着剤の準備や接着剤の塗布作業を含む接着工程を必要とするため、生産コストの低減がはかり難い問題があり、また、接着強度の信頼性に十分な満足が得られない問題があった。
熱可塑性樹脂で形成される部材と熱硬化性樹脂からなるFRPで形成される部材とを一体化する手法が、特許文献1に提案されている。この手法は、強化用の炭素繊維群と熱硬化性樹脂とからなるプリプレグシートの表面に熱可塑性樹脂フィルムを積層し、第1の積層体を形成する第1の工程と、次いで、得られた第1の積層体に、熱硬化性樹脂は硬化するが、フィルムは流動しない条件で熱圧を加え、熱可塑性樹脂フィルムが貼着された炭素繊維強化熱硬化性樹脂からなる第2の積層体を形成する第2の工程と、得られた第2の積層体を金型に入れ、第2の積層体の熱可塑性樹脂フィルムの表面に対し、熱可塑性樹脂を射出成形し、射出成形により形成された熱可塑性樹脂部材(芯部材)と第2の積層体(表面部材)とを接合させる第3の工程からなる。この手法によれば、熱可塑性樹脂からなる芯部材と表面部材とが、表面部材の熱可塑性樹脂フィルムを介して接合されるので、この接合部における接合の強さに、格別の問題はないものと云える。
しかし、表面部材における熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂フィルムとの接合部における接合の強さは、十分であるとは云えない問題がある。この後者の接合部は、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との接合により形成されている、すなわち、異種材料間の接合により形成されているからである。
本発明は、この異種材料間の接合における接合の強さにおける従来の不安を低減した積層体を提供することを、その目的の一つとしている。
繊維強化樹脂(FRP)は、種々の製品の形成材料として、広く用いられている。一方において、これらの製品の軽量化が要求されている。とりわけ、ノートパソコン、携帯電話、携帯情報端末に代表されるように携帯電子機器の普及が促進されるにつれて、薄型で軽量の製品が、市場で強く要望されている。これに伴い、製品を構成する筐体や内部部材が、薄肉性、軽量性を有するとともに、高剛性を有することが、要求されている。
この要求に対し、マグネシウム合金が活用されてはいる。高剛性の要求は、さらに高まっており、アルミニウム合金などのさらに剛性の高い金属材料の活用が検討されている。しかし、これらの金属材料では、複雑な形状の部材や製品を量産性よく容易に生産することが困難である。
特許文献2に、金属製の成形品と射出成形したリブとをエポキシ樹脂系の塗料で接着して一体化してなる筐体が、提案されている。特許文献3に、金属板と合成樹脂成形体とを一体化してなる電磁波シールド筐体が、提案されている。しかしながら、これらの筐体では、薄肉性と高剛性とを満足することができても、金属材料の比重が大きいために、結果的には、軽量性を満足するには至っていない。
異種の材料から形成された部材を一体化したこれらの製品では、製品のリサイクル性を考慮した場合、各部材の分離・分別が困難であり、異なる材料のコンタミネーションが発生し、それぞれの部材を再利用することが困難であったり、リサイクルに伴うコストアップが問題となる。
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑み、他の構造部材との一体化が容易に実施でき、かつ、優れた接合強度を発現する積層体およびその製造方法を提供することを目的とする。この積層体を用いた一体化成形品は、優れた力学特性、軽量性、電磁波シールド性だけでなく、意匠性、リサイクル性を兼ね備え、電気・電子機器、携帯情報端末などの筐体や自動車、航空機などの輸送羽機器の構造材に好適に使用される。
特開平10−138354号公報 特開2001−298277号公報 特開平06−029684号公報
他の構造部材と容易に一体化でき、かつ、接合される部材間の優れた接着強度有する積層体を与えることのできる熱接着用基材を得ること。また、力学特性、軽量性に優れ、かつ、廃棄時には容易に解体ができる一体化成形品を与えることのできる熱接着用基材を得ること。
本発明における積層体の態様:
本発明における積層体は、多数本の連続したフィラメントからなる強化繊維群を積層の単位として、厚み方向に複数積層されてなる積層体であって、前記積層体がマトリックス樹脂と強化繊維群からなり、前記積層体の表面に位置している第1層が、熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂とし、積層体の第2層側に位置する熱硬化性樹脂層と、熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂とし、積層体の表面側に位置する熱可塑性樹脂層の二層構造から成り、前記熱硬化性樹脂層と前記熱可塑性樹脂層とが凹凸形状を有して一体化されており、前記熱硬化性樹脂層と前記熱可塑性樹脂層の界面が第1層を構成する強化繊維群の中に存在し、前記強化繊維群の内の一群のフィラメントは、少なくとも前記熱硬化性樹脂層の樹脂に接し、前記強化繊維群の内の残りの群のフィラメントは、少なくとも前記熱可塑性樹脂層の樹脂に接してなり、かつ前記熱可塑性樹脂層において、前記フィラメントの接している領域の最大厚みが10μm以上である。
本発明における積層体において、前記多数本の連続したフィラメントが、一方向に配列されていることが好ましい。
本発明における積層体において、前記熱硬化性樹脂層を形成する樹脂のガラス転移温度が、60℃以上であることが好ましい。
本発明における積層体において、前記熱可塑性樹脂層において、前記連続したフィラメントが存在している領域の最大厚みが、1,000μm以下であることが好ましい。
本発明における積層体において、前記熱可塑性樹脂層の表面積が、積層体の表面積の0.1乃至50%であることが好ましい。
本発明における積層体において、前記熱可塑性樹脂層が位置する側とは反対側の積層体の面に、前記熱硬化性樹脂、前記熱可塑性樹脂、および、多数本の連続したフィラメントからなる強化繊維群から形成されるのと同様の構造からなる層が形成されていても良い。
本発明における積層体において、後に定義される積層体試験片のISO4587に基づく接着強度が、室温において、6MPa以上であることが好ましい。
本発明における積層体において、前記強化繊維群を構成する多数本の連続したフィラメントが炭素繊維であることが好ましい。
本発明における積層体において、前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂を主成分とする樹脂であることが好ましい。
本発明における積層体において、前記熱可塑性樹脂が、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂、EVA樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、PPS系樹脂の群より選択される少なくとも1種の樹脂であることが好ましい。
本発明における積層体の表面に位置している第1層において、表面に位置している熱可塑性樹脂層のマトリックス樹脂が、ポリアミド系樹脂からなり、前記第1層の前記熱可塑性樹脂層とポリアミド6樹脂と炭素繊維を繊維含有量30重量%となるようにコンパウンドした射出成形品との後に定義される垂直接着強度が、温度40℃雰囲気で、10MPa以上であり、かつ、温度140℃雰囲気で、10MPa未満であることが好ましい。
本発明における積層体の製造方法:
本発明における積層体の製造方法は、多数本の連続したフィラメントからなる強化繊維群に硬化前の熱硬化性樹脂が含浸せしめられてなるプリプレグの表面に、熱可塑性樹脂からなる熱接着用基材が配置せしめられ、前記熱硬化性樹脂の硬化反応時に、もしくは、硬化反応前の予熱時に、前記熱接着用基材の熱可塑性樹脂を前記強化繊維群に含浸せしめてなる。
本発明における積層体の製造方法において、前記強化繊維群に熱可塑性樹脂を含浸させる際に、圧力0.1MPa以上の加圧力を作用せしめることが好ましい。
本発明における一体化成形品:
本発明における一体化成形品は、本発明における積層体からなる第1の部材と、別の構造部材からなる第2の部材とが、前記第1の部材における前記熱可塑性樹脂を介して結合されてなる。
本発明における一体化成形品において、前記第2の部材が、本発明における積層体からなる部材、熱可塑性樹脂からなる部材、金属材料からなる部材から選択される少なくとも1種の部材であることが好ましい。
本発明における一体化成形品の具体例として、電気・電子機器、OA機器、家電機器、医療機器の部品、部材または筐体があり、また、自動車、二輪車、自転車、航空機、建材用の部品、部材またはパネルがある。
本発明における一体化成形品の製造方法:
本発明における一体化成形品の製造方法は、本発明における積層体からなる第1の部材と、別の構造部材からなる第2の部材とが、熱溶着、振動溶着、超音波溶着、レーザー溶着、インサート射出成形、アウトサート射出成形から選択される少なくとも1つの一体化方法にて、一体化せしめられることからなる。
本発明の熱接着用基材:
本発明の熱接着用基材は、同種および/または異種の被着材を熱接着するための基材であって、明細書中に定義された積層体試験片のISO4587に基づく接着強度(S)が、温度100℃において、5.0MPa以上であり、かつ、温度200℃において、1.0MPa以下である。
本発明の熱接着用基材において、温度t(℃)のときの接着強度をS(MPa)とし、温度(t+30)(℃)のときの接着強度をS(t+30)(MPa)としたとき、S≧3×S(t+30)なる関係を満足する温度tが、100℃乃至200℃であることが好ましい。
本発明の熱接着用基材において、前記基材が、共重合ポリアミド系樹脂組成物からなることが好ましい。この共重合ポリアミド系樹脂組成物が、3元共重合ポリアミド6/66/610を構成成分として含むことが好ましい。
本発明の熱接着用基材において、前記基材が、不織布またはフィルムの形態を有し、目付が、1乃至100g/mであることが好ましい。
本発明の熱接着用基材は、本発明における積層体の製造方法における熱接着用基材として好ましく用いられる。
本発明における電磁波シールド成形品:
本発明における電磁波シールド成形品は、多数本の連続したフィラメントからなる導電性繊維群が配置された樹脂組成物からなる第1の構造体と、熱可塑性樹脂組成物からなる第2の構造体とが一体化されてなる成形品であって、前記第1の構造体のKEC法にて測定される周波数1GHzにおける電磁波シールド性が、40dB以上である。
本発明における電磁波シールド成形品において、前記第1の構造体が、強化繊維群を構成する多数本の連続したフィラメントが炭素繊維である本発明における積層体であることが好ましい。
本発明における電磁波シールド成形品において、前記第1の構造体のASTM−D790に基づく曲げ弾性率が、後に定義される試験片おいて、8GPa以上であることが好ましい。
本発明における電磁波シールド成形品において、前記第1の構造体の平均厚みが、1.6mm以下であることが好ましい。
本発明における電磁波シールド成形品において、成形品を外方から観察したときに、前記多数本の連続したフィラメントの配列状態に基づく模様が観察されることが好ましい。
本発明における電磁波シールド成形品において、前記第1の構造体における樹脂組成物として、成形品の用途に応じ、熱硬化性樹脂、あるいは、熱可塑性樹脂が選択されることが好ましい。
本発明における電磁波シールド成形品において、前記第2の構造体の熱可塑性樹脂組成物が、不連続な炭素繊維を含み、該炭素繊維の重量平均繊維長Lwが、0.4mm以上で、かつ、重量平均繊維長Lwと数平均繊維長Lnとの比Lw/Lnが、1.3乃至2.0であることが好ましい。
本発明における電磁波シールド成形品の具体例として、電気・電子機器、OA機器、家電機器、医療機器の部品、部材または筐体がある。また、前記筐体の天面部の少なくとも一部に、前記第1の構造体が位置し、前記筐体のフレーム、ボス、リブ、ヒンジ、ランナーおよびこれらを含む部材に、前記第2の構造体が位置してなる電磁波シールド成形品がある。
本発明における電磁波シールド成形品の製造方法:
本発明における電磁波シールド成形品の製造方法は、予め成形された第1の構造体が、金型にインサートされる第1の工程と、次いで、第2の構造体を形成する熱可塑性樹脂組成物が、前記金型にインサートされた第1の構造体に対し射出され、前記第2の構造体が前記第1の構造体に一体化せしめられる第2の工程とからなる。
本発明における電磁波シールド成形品の製造方法において、予め成形された第1の構造体と、予め射出成形により成形された第2の構造体とが、超音波溶着にて一体化せしめられても良い。
本発明の熱接着用基材を適用した積層体は、他の構造部材と容易に一体化でき、かつ、接合される部材間の優れた接着強度有する。また、本発明の熱接着用基材を適用した積層体を用いた一体化成形品は、力学特性、軽量性に優れ、かつ、廃棄時には容易に解体ができる。
本発明における積層体の態様:
図1に、積層体5が示される。積層体5は、下面4aから上面4bに向かい、順次積層された5つの層からなる。すなわち、積層体5は、第1層1a、第2層2a、第3層3、第4層2b、および、第5層1bからなる。
図2に、第1層1aの一部の断面を拡大した図が示される。図2は、第1層1aの一部の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影して得られた写真に基づき作成された図である。
第1層1aは、本発明における積層体A1の一例である。積層体A1(第1層1a)は、熱硬化性樹脂層11と、熱可塑性樹脂層12と、多数本の連続したフィラメント13a、13bからなる強化繊維群13とから成る。熱硬化性樹脂層11と熱可塑性樹脂層12とが、これらの層11、12の界面14において、凹凸形状を有して一体化されている。強化繊維群13の内の一群のフィラメント13aは、少なくとも熱硬化性樹脂層11の樹脂に接し、強化繊維群13の内の残りの群のフィラメント13bは、少なくとも熱可塑性樹脂層12の樹脂に接している。熱可塑性樹脂層12の前記界面14とは反対側の面は、積層体A1(第1層1a)の表面に位置している。
積層体A1(第1層1a)は、多数本の連続したフィラメント13a、13bからなる強化繊維群13に、硬化前の熱硬化性樹脂が含浸せしめられてなるプリプレグの表面に、熱可塑性樹脂からなる熱接着用基材が配置せしめられ、熱硬化性樹脂の硬化反応時に、もしくは、硬化反応前の予熱時に、熱接着用基材の熱可塑性樹脂を強化繊維群13に含浸せしめることにより製造されたものである。
製造された積層体A1(第1層1a)において、熱硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂層11を形成し、熱可塑性樹脂は、熱可塑性樹脂層12を形成する。熱可塑性樹脂の強化繊維群13への含浸、すなわち、強化繊維群13を形成している多数本のフィラメント13a、13bの間への熱可塑性樹脂の浸透により、熱硬化性樹脂層11と熱可塑性樹脂層12との界面14の凹凸形状が形成される。
前記プリプレグとして、必要に応じ、複数の強化繊維群13からなり、これらの強化繊維群が、プリプレグの幅方向に配列され、あるいは、プリプレグの厚さ方向に積層されているプリプレグが用いられる。図2においては、プリプレグにおいて最外層に位置した強化繊維群13が示されている。
積層体A1の強化繊維群13は、少なくとも一方向に、10mm以上の長さに亘り連続した多数本のフィラメントから構成されている。強化繊維群13は、積層体A1の長さ方向の全長さに亘り、あるいは、積層体A1の幅方向の全幅に亘り、連続している必要はなく、途中で分断されていても良い。
強化繊維群13の形態の例としては、多数本のフィラメントからなるフィラメント束(繊維束)、この繊維束から構成されたクロス、多数本のフィラメントが一方向に配列されたフィラメント束(一方向性繊維束)、この一方向性繊維束から構成された一方向性クロスがある。プリプレグあるいは積層体の生産性の観点から、クロス、一方向性繊維束が好ましい。積層体A1の強化繊維群は、同一の形態の複数本の繊維束から構成されていても、あるいは、異なる形態の複数本の繊維束から構成されていても良い。必要に応じ、積層された強化繊維群の積層間に、他の基材が積層されてなるサンドイッチ形態が用いられる。
図1の積層体5は、上記した通り、5層からなる積層体である。第1層1aと第5層1bとは、同じ構造を有する。第5層1bの表面4bが、第1層1aの表面4aに相当する。第2層2aと第4層2bとは同じ構造を有する。これらの層2a、2bは、マトリックス樹脂(例えば、エポキシ系樹脂)と強化繊維群(例えば、炭素繊維群)とから構成されている。第3層3は、同じく、マトリックス樹脂(例えば、エポキシ系樹脂)と強化繊維群(例えば、炭素繊維群)とから構成されている。図1の積層体5においては、その全体の力学特性をコントロールするために、各層1a、2a、3、2b、1bにおける強化繊維群の配列方向が変えられている。特に、積層体5の弾性率や強度を効率的に高める上で、強化繊維群として、一方向性繊維束を使用することが好ましい。積層体5が薄肉で、層数に制限がある場合は、積層体5の長尺方向を0度方向としたとき、最外積層1a、1bの強化繊維群の配列方向が、約45度になるように積層することがより好ましい。
積層体5から形成される成形品に、クロス外観を付与するために、積層体5の最外積層の強化繊維群として、平織り、朱子織り、あるいは、綾織りなどのクロスを使用することが好ましい。
一つの強化繊維群を構成するフィラメント数は、通常、300乃至48,000である。フィラメント数は、好ましくは、300乃至12,000であり、より好ましくは、1,000乃至6,000である。この範囲のフィラメント数は、美しいクロス外観を呈する点からも好ましい。
従来、強化繊維群で強化された熱硬化性樹脂層の表面に熱可塑性樹脂層を被着せしめた積層体が、知られている。この従来の積層体は、表面に被着している熱可塑性樹脂を介して、他の被着体に接合される。この接合により、所望の成形品が製造されていた。
従来の積層体は、熱硬化性樹脂が硬化している強化繊維群で強化された熱硬化性樹脂層の表面に、接着剤を用いて熱可塑性樹脂層を被着することにより、製造されていた。あるいは、従来の積層体は、強化繊維群を含む未硬化の熱硬化性樹脂層の表面に、熱可塑性樹脂層を形成し、次いで、熱硬化性樹脂の硬化時に、熱可塑性樹脂層を溶融せしめ、この溶融した熱可塑性樹脂が強化繊維群の配列を乱すことがない状態において、すなわち、溶融した熱可塑性樹脂が、強化繊維群中に進入することがない状態において、熱可塑性樹脂層を熱硬化性樹脂層の表面に被着させることにより製造されていた。従来の積層体は、その表面の熱可塑性樹脂層を介して他の被着体に接合され成形品を製造するのに用いられている。しかし、成形品によっては、外力の作用を受けるものがあり、その場合、熱可塑性樹脂層と被着体との接合部で破損が生じる場合もあるが、熱硬化性樹脂層と熱可塑性樹脂層との接合部で破損が生じる場合があり、問題となっていた。
この問題は、本発明における積層体A1により解決される。積層体A1の特徴は、熱硬化性樹脂層の樹脂と熱可塑性樹脂層の樹脂との界面が、凹凸形状を有して一体化され、強化繊維群の内の一群のフィラメントは、少なくとも熱硬化性樹脂層の樹脂に接し、強化繊維群の内の残りの群のフィラメントは、少なくとも熱可塑性樹脂層の樹脂に接している成形体である点にある。この特徴は、強化繊維群のあるフィラメントは、その長手方向において、一部分では熱硬化性樹脂層の樹脂に接し、他の部分では熱可塑性樹脂層の樹脂に接している場合も含む。この特徴は、従来の積層体には、見ることが出来ない。
本発明における積層体A1の構造と従来の積層体の構造とを検証する3種類の試験方法が、第3−7図を用いて説明される。
第1の試験方法は、積層体表層部分の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)あるいは透過型電子顕微鏡(TEM)による観察に基づく。断面の観察は、必要に応じ、撮影した断面写真に基づいて行なわれても良い。観察する試験片は、積層体から切り出した表層部分を用いて作成された薄肉切片である。この作成に当たり、強化繊維群のフィラメントの一部が脱落する場合があるが、観察に影響がない範囲であれば、問題はない。試験片は、観察のコントラストを調整するために、必要に応じ、染色されても良い。
強化繊維群を構成するフィラメントは、通常、円形断面として観察される。フィラメントが脱落している場合は、通常、円形の脱落跡として観察される。強化繊維群を構成するフィラメントが位置する部分以外の部分において、熱硬化性樹脂層と熱可塑性樹脂層とは、コントラストの異なる2つの領域として観察される。
本発明における積層体A1の観察結果が、図3に示される。図3において、熱可塑性樹脂層22の樹脂が、強化繊維群23を構成する多数本のフィラメント23a、23b間の間隙の中まで進入している状態が示され、更に、熱硬化性樹脂層21と熱可塑性樹脂層22との界面24が凸凹形状を有している状態が示される。この多数本のフィラメントを含む凹凸形状の界面24の存在により、熱硬化性樹脂層21と熱可塑性樹脂層22との強固な接合がもたらされる。
従来の積層体PAの観察結果が、図4に示される。図4において、熱可塑性樹脂層32の樹脂が、強化繊維群33を構成する多数本のフィラメント33a、33bの中まで進入していない状態が示され、更に、熱硬化性樹脂層31と熱可塑性樹脂層32との界面34が略直線形状を有している状態が示される。この界面34の形状は、略直線形状であり、この界面34には、多数本のフィラメントが実質的に位置していないため、従来の積層体PAにおける熱硬化性樹脂層31と熱可塑性樹脂層32との接合力は、本発明における積層体A1の場合に比べ、外部から作用する力に対し、はるかに弱い。
第2の試験方法は、積層体表層部分の熱可塑性樹脂を溶媒で抽出除去した状態の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)あるいは透過型電子顕微鏡(TEM)による観察に基づく。断面の観察は、必要に応じ、断面写真に基づいて行われても良い。積層体を長さ10mm、幅10mm程度にカットして試験片とする。この試験片において、熱可塑性樹脂層を、それを構成している樹脂の良溶媒で十分に洗浄して、熱可塑性樹脂を除去して、観察用の試験片が作成される。作成された試験片の断面をSEM(あるいは、TEM)を用いて観察する。
本発明における積層体A1の観察結果が、図5に示される。図5において、熱硬化性樹脂層41は、強化繊維群43を構成するフィラメント43aを有して存在するが、熱硬化性樹脂層41と凹凸形状の界面44を有して存在していた熱可塑性樹脂層は、試験片の作成時に溶媒により除去されているため、存在しない。界面44の凹凸形状が観察されるとともに、熱可塑性樹脂層が存在していた位置に、強化繊維群43を構成するフィラメント43bが観察され、これらのフィラメント43bの間に、空隙45が観察される。これにより、積層体A1の熱可塑性樹脂層に、強化繊維群43を構成するフィラメント43bが存在していることが証明される。
同様の試験片に基づく従来の積層体PAの観察結果が、図6に示される。従来の積層体PAにおいては、熱硬化性樹脂層51中に位置する強化繊維群53を構成するフィラメント53a、53bまで、熱可塑性樹脂層の樹脂が浸透していない。試験片の作成時に、熱可塑性樹脂層は除去され、熱硬化性樹脂層51との界面54が、実質的に直線形状を描いて観察され、この界面54の熱可塑性樹脂層が存在していた側には、図5に示されるようなフィラメント43bとそれらの間の空隙45は、観察されない。
第3の試験方法は、積層体A1に別の部材が被着体B1(図示せず)として接合され一体化された成形品C1(図示せず)において、一方から他方を強制的に剥離したときに得られる状態の観察に基づく。この試験方法は、一体化成形品C1を、積層体A1と被着体B1との間で破壊するように、室温にて強制的に剥離させることにより行なわれる。剥離した被着体B1には、積層体A1表層の一部が残査として付着する場合がある。この残査が、顕微鏡で観察される。
第3の試験方法を実施して得られた試験片の状態の一例が、図7に示される。図7において、被着体B1の端部に積層体A1の表面が接合されていた接合部分61が示され、この接合部分61の一部に積層体A1の表層部の一部の残査62が観察される。この残査62には、積層体A1の表層に位置していた強化繊維群から脱落した複数のフィラメントが存在していることが観察される。一方、このような残査が被着体B1に付着しない場合や、残査の中にフィラメントが観察されない場合は、積層体において、表面の熱可塑性樹脂層の樹脂が強化繊維群の中まで浸透しておらず、このような積層体は、本発明の作用、効果を有さない。
本発明における積層体の構造的特徴は、前記の少なくとも1つの試験方法で検証することができる。
本発明における積層体A1は、他の被着材B1との接着強度を高める目的で、熱可塑性樹脂層12において、連続したフィラメント13bが存在している領域の最大厚みTpfが、10μm以上であることが必要であり、20μm以上であることが好ましく、40μm以上であることがより好ましい。この最大厚みTpf−maxは、熱可塑性樹脂層12の厚さ方向において、熱可塑性樹脂層12の樹脂に接している一番外側(表面側)のフィラメント13b−outと、熱可塑性樹脂層12の樹脂の表面からの入り込み厚さが最も大きい部位において、熱可塑性樹脂層12の樹脂に接している一番内側のフィラメント13b−in−maxとの間の距離(Tpf−max)と定義される。最大厚みTpf−maxは、第1の試験方法や第2の試験方法により得られるSEMあるいはTEM写真において、測定することができる。最大厚みTpf−maxは、最大で、1,000μmあれば、本発明の効果が十分に達成される。
最小厚みTpf−minは、熱可塑性樹脂層12の厚さ方向において、熱可塑性樹脂層12の樹脂に接している一番外側(表面側)のフィラメント13b−outと、熱可塑性樹脂層12の樹脂の表面からの入り込み厚さが最も小さい部位において、熱可塑性樹脂層12の樹脂に接している一番内側のフィラメント13b−in−minとの間の距離(Tpf−min)と定義される。
積層体A1において、熱硬化性樹脂層11と熱可塑性樹脂層12との界面14は、図2に示されるように、一方向に引き揃えられた多数本のフィラメント13a、13bからなる強化繊維群13の中に存在することが好ましい。積層体A1において、強化繊維群13が、厚み方向に複数積層存在する場合、界面14は、最外層の強化繊維群13中に存在すれば、通常は、十分である。
本発明における積層体A1の熱硬化性樹脂層11を形成している樹脂は、力学特性に優れた積層体A1を得るには、硬化反応したものが好ましく、そのガラス転移温度は、60℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることがさらに好ましい。ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)による公知の測定方法により測定される。例えば、積層体A1の熱硬化樹脂層11を、強化繊維群13を分離せずに切り出し、測定片を作成し、その測定片の吸熱ピークから、ガラス転移温度が、特定される。熱硬化性樹脂の硬化反応が進むにつれ、そのガラス転移温度は高温側にシフトし、それとともに吸熱ピークは小さくなる傾向がある。
本発明における積層体A1は、他の被着材B1と接合させ一体化成形品とする際に、優れた接着効果を得るためには、積層体A1の表面に設けられている熱可塑性樹脂層12と被着材B1とが、向かい会う状態で接合されることが必要である。積層体A1の表面に設けられる熱可塑性樹脂層12の面積Sは、接合が予定される被着体B1との接合力が確保可能な面積に応じて、決められる。面積Sは、必要以上に大きい必要はない。しかし、一体化成形品の製造におけるプロセス性の観点から、積層体A1と被着体B1とが接する面の全面に熱可塑性樹脂層12が存在するようにしても良い。
熱可塑性樹脂層12が、積層体A1の表面において部分的に形成される場合、積層体A1の表面積に占める熱可塑性樹脂層12の面積は、0.1乃至50%であることが好ましく、1乃至40%であることがより好ましく、10乃至30%でことが更に好ましい。さらに、積層体A1のソリの観点から、図1に例示されるように、熱可塑性樹脂層12は、積層体A1の両面に形成されていてもよい。この場合、積層体A1の積層構造が対称となるため、積層体A1の寸法安定性は、良好になる。
本発明における積層体A1は、室温状態では、他の被着材B1との積極的な接着力を有しないが、加熱などにより、熱可塑性樹脂層12が溶融状態になると、他の被着材B1と容易に接着し、積層体A1と被着材B1との一体化が可能となる。
本発明における積層体A1のISO4587に規定される接着強度ASが、室温において、6MPa以上であることが好ましく、8MPa以上であることがより好ましく、10MPa以上であることが更に好ましい。接着強度ASの上限については、特に制限はないが、30MPa以下であれば、本発明の効果を十分に達成できる。
接着強度ASの測定を行うための試験片は、次に説明される手法により準備される。
試験片TP1の形状および寸法は、ISO4587の規定に基づき、図8に示される。試験片TP1の長さTP1Lは、100mm、幅TP1Wは、25mmである。試験片TP1は、2本作成される。積層体A1の形状から、これらの寸法からなる試験片の切り出しが困難な場合は、図8に示される形状を比例的に縮小した寸法からなる試験片で代用してもよい。
用意された2本の試験片TP1同士を、それぞれの熱可塑性樹脂層12が接合部になるように向かい会わせる。この接合部BPの長さBPLは、12.5mmとする。熱可塑性樹脂層12の樹脂が十分に溶融する温度まで、双方の試験片TP1を加熱して、両者を接着させ、クランプしながら冷却し、両者を接合させたものを引張試験片とする。この引張試験片を引張試験に供する。接合位置近傍(境界近傍)で破壊したことを確認し、その強力(kN)を接合部表面積で除した値が、接着強度(MPa)となる。引張試験片の作成において、双方の試験片TP1同士が接着できれば、その接合手段には、特に制限はない。接合手段が、振動溶着や超音波溶着などの接着方法であっても良い。クランプする方法にも、特に制限はない。接合面BPを、0.1乃至1MPaの圧力で、プレスする方法などを用いることができる。
図9に一体化成形品C2が示される。図9において、成形品C2は、天板101を形成する本発明における積層体A2と枠体102を形成する構造部材B2とで形成されている。図9に示される成形品は、天板101(積層体A2)が、枠体102(構造部材B2)の立ち壁部分の上面と一体化されてなり、例えば、パソコン筐体などの電磁波シールド成形品C2の一例である。
図9において、電磁波シールド成形品C2を構成する本発明における積層体A2(天板101)は、熱硬化性樹脂からなるマトリックス樹脂と樹脂中に配置された導電性を有する連続した強化繊維群とからなり、かつ、積層体A2(天板101)の表面の少なくとも一部分に、後に説明される熱可塑性樹脂層が形成されてなるものである(この表面は、積層体A2(天板101)の下面に当たるため、図9には、この層は図示されていない)。
積層体A2とは、力学特性を達成するために、配列方向が異なる強化繊維を含む樹脂層が複数層、厚み方向に積層されたものを云う。導電性を有する強化繊維は、積層体A2において、少なくとも一方向に、10mm以上の長さ配列されている。しかし、強化繊維は、必ずしも積層体A2全体にわたって連続した繊維である必要はなく、途中で分断されていても良い。
導電性繊維の形態としては、フィラメント束、このフィラメント束から形成されたクロス、一方向性フィラメント束、この一方向性フィラメント束から形成された一方向性クロスなどがある。クロスあるいは一方向性フィラメント束が好適に使用される。強化繊維は、それぞれの繊維の形態の単独使用からなるものでも、あるいは、2種以上の形態の併用からなるものでも良い。
本発明における積層体A2は、熱可塑性樹脂層を介して、他の部材、例えば、構造部材B2(枠体102)と接着して一体化され一体化成形品とされたときに、接着部における垂直接着強度が、40℃において10MPa以上であって、かつ、140℃にいて10MPa未満である接着強度が得られるように設計されている。
一体化成形品は、その用途が主に発熱体を収納する筐体であることから、40℃近辺がその通常の使用環境であり、その環境での使用に耐える接着強度という観点からして、40℃雰囲気における垂直接着強度は、10MPa以上であることが好ましく、13MPa以上であることがより好ましく、18MPa以上であることが更に好ましい。40℃雰囲気における垂直接着強度が10MPa未満では、パソコン使用時に、落下させるなどの強い衝撃を受けたとき、積層体A2と構造部材B2との接合部で、一体化成形品C2が破壊する場合がある。40℃雰囲気における垂直接着強度の上限については、特に制限はないが、30MPa以下であれば本発明の効果を十分に達成できる。
さらに、本発明における積層体A2は、140℃雰囲気における垂直接着強度が、40℃雰囲気における垂直接着強度よりも大きく低下することに特徴がある。140℃雰囲気における垂直接着強度は、10MPa未満であり、好ましくは5MPa以下、より好ましくは1MPa以下である。
通常、積層体A2の熱硬化性樹脂としては、大気雰囲気下(常圧、50%RH)におけるガラス転移点(Tg)が130乃至150℃の熱硬化性樹脂が使用される。これは、積層体A2の主たる用途がパーソナルコンピュータであり、この用途の成形品が、150℃を越える温度環境で使用されることがないことによる。このことに注目して、本発明における積層体A2の140℃雰囲気における垂直接着強度が10MPa未満とされている。本発明における積層体A2がこの要件を満足していることにより、積層体A2と他の部材B2とが積層体A2の表面に形成されている熱可塑性樹脂層を介して接合されて形成された成形品C2を廃棄処理する際、部品毎に、例えば、天板101と枠体102とに、140℃近辺の温度環境で、容易に分解でき、その結果、部品毎の分別作業も容易なせると云う作用、効果がもたらされる。これにより、部品の再利用も促進される。
垂直接着強度の測定方法は、図10を用いて説明される。一体化成形品C2の積層体A2と構造部材B2とが接着して一体化している部分から測定用の試験片TP2を切り出す。試験片TP2の上下端部を通常の引張試験装置の治具111a、111bに固定し、試験片TP2の接着面112に対し垂直(90度)の方向(矢印113a、113b)に引張試験を行う。接着面112が破断するときの最大荷重を接着面112の面積で割ることにより、引張強度(T)MPaを求め、この値を垂直接着強度とする。実際に使用した引張試験装置は、“インストロン”(商標)5565型万能材料試験機(インストロン・ジャパン(株)製)であり、試験の際の引張速度は、1.27mm/分とした。
引張試験は、雰囲気温度が調節可能な試験室において、40℃および140℃の2点の雰囲気温度で行われた。試験開始前に、試験片TP2は、試験室内において、少なくとも5分間、引張試験の負荷がかからない状態維持する。試験片TP2に、熱電対を配置して、雰囲気温度と同等になったことを確認した後に、引張試験を行うのがより好ましい。
成形品C2が、引張試験装置の治具111a、111bに把持できる場合は、成形品C2をそのまま治具111a、111bに挟み、引張試験を行う。把持できない場合は、成形体C2に、アクリル系接着剤(スリーボンド1782、株式会社スリーボンド製)を塗布し、23±5℃、50±5%RHで4時間放置して、治具111a、111bと接着させた。試験結果は、治具と成形品との接着部で破壊が起こらず、積層体A2と構造部材B2との接合部分が引き剥がされる場合の値のみを採用する。治具と成形品の接着部が剥離する場合は、正確な接着強度値を求めることができないからである。
本発明における積層体A1ならびに本発明における積層体A2に使用される強化繊維群の繊維素材としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリアラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、ボロン繊維がある。これらは、単独または2種以上併用して用いられる。これらの繊維素材は、表面処理が施されているものであっても良い。表面処理としては、金属の被着処理、カップリング剤による処理、サイジング剤による処理、添加剤の付着処理などがある。これらの繊維素材の中には、導電性を有する繊維素材も含まれている。繊維素材としては、比重が小さく、高強度、高弾性率である炭素繊維が、好ましく使用される。
本発明における積層体A1および本発明における積層体A2に使用される熱硬化性樹脂としては、積層体A1、A2を用いて成形品C1、C2を成形したとき、成形品C1、C2に優れた剛性や強度が付与可能な熱硬化性樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、エポキシ、フェノール(レゾール型)、ユリア・メラミン、ポリイミド、これらの共重合体、変性体、および、これらの少なくとも2種類をブレンドした樹脂がある。耐衝撃性向上のために、熱硬化性樹脂には、エラストマーもしくはゴム成分が添加されていても良い。特に、エポキシ樹脂は、成形品C1、C2の力学特性の観点から好ましい。
本発明における積層体A1の熱可塑性樹脂層12、および、本発明における積層体A2の熱可塑性樹脂層を形成する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合(EVA)樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)スチレン樹脂、これらの共重合体、変性体、および、これらの少なくとも2種類をブレンドした樹脂がある。必要に応じ、添加剤、充填材などが添加されていても良い。熱可塑性樹脂は、一体化される被着材B1、B2との接着性を考慮し、被着部の組成に近い樹脂から選択されることが望ましい。例えば、ポリアミド系樹脂からなる被着材B1、B2に積層体A1、A2が接着される場合は、積層体A1、A2の表面に設けられる熱可塑性樹脂層は、ポリアミド樹脂とすることが好ましい。
用いられる熱可塑性樹脂の融点または軟化点は、成形品の実用性、積層体を製造する際のプロセス性を考慮して、50℃以上であることが好ましく、また、熱硬化性樹脂を硬化させる温度において溶融あるいは軟化していることが必要なため、300℃以下が好ましい。熱可塑性樹脂の融点または軟化点は、100℃乃至250℃でることがより好ましく、125乃至220℃であることが更に好ましい。融点は、JIS−K7121に準拠して、DSCにより昇温速度10℃/分で測定した値である。軟化点は、JIS−K7206に準拠して、ピカッド軟化温度を測定した値である。
本発明における積層体A1、および、本発明における積層体A2における、連続した導電性強化繊維の含有率は、成形性、力学特性と電磁波シールド性を両立させるの観点から、5乃至75体積%が好ましく、30乃至75体積%がより好ましく、50乃至70体積%が更に好ましい。
一体化成形品C1、C2を構成する構造部材B1、B2は、積層体A1、A2との接合部において、熱接着性を有する素材からなるものであれば特に制限はない。アルミニウム、鉄、マグネシウム、チタンおよびこれらとの合金等に、熱接着性の表面処理を施した金属材料であっても良い。
構造部材B1、B2は、強化繊維を含んだ熱可塑性樹脂からなることが好ましい。強化繊維としては、例えば、ポリアクリロニトリル系、レーヨン系、リグニン系、ピッチ系の炭素繊維、黒鉛繊維、ガラス繊維、アルミニウム繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維などの金属繊維、シリコンカーバイト繊維、シリコンナイトライド繊維などの無機繊維がある。
構造部材B1、B2に使用される熱可塑性樹脂としては、特に制限はない。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリエステル等のポリエステルや、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレン等のポリオレフィンや、スチレン系樹脂の他や、ポリオキシメチレン(POM)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチレンメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性PPE、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスルホン(PSU)、変性PSU、ポリエーテルスルホン、ポリケトン(PK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルニトリル(PEN)、フェノール系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂、更にポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、ポリイソプレン系、フッ素系等の熱可塑エラストマー等や、これらの共重合体、変性体、および、これらの少なくとも2種類をブレンドした樹脂がある。熱可塑性樹脂には、耐衝撃性向上のために、エラストマーもしくはゴム成分が添加されていても良い。耐熱性、耐薬品性の観点から、PPS樹脂が、成形品外観、寸法安定性の観点から、ポリカーボネート樹脂やスチレン系樹脂が、成形品の強度、耐衝撃性の観点から、ポリアミド樹脂が好ましく用いられる。熱可塑性樹脂には、充填材や添加剤が添加されていても良い。添加剤の一つに導電性付与剤がある。導電性付与剤としては、例えば、カーボンブラック、アモルファスカーボン粉末、天然黒鉛粉末、人造黒鉛粉末、膨張黒鉛粉末、ピッチマイクロビーズ、気相成長炭素繊維、カーボンナノチューブがある。導電性付与剤は、成形品C1、C2がパーソナルコンピュータの筐体の場合、電磁波シールド性をより高める目的で好ましく使用される。
本発明における積層体A1、A2を用いた一体化成形品C1、C2の製造方法は、特に制限されない。例えば、その製造方法は、積層体A1、A2を構成している熱可塑性樹脂層の融点または軟化点以上の温度で、構造部材B1、B2を接合させ、貼り付け、次いで冷却することからなる。
積層体A1、A2と構造部材B1、B2とを接合させる手順は、特に限定されない。例えば、(i)積層体A1、A2を予め成形しておき、構造部材B1、B2の成形と同時に、両者を接合し、一体化させる手法、(ii)構造部材B1、B2を予め成形しておき、積層体A1、A2の成形と同時に、両者を接合し、一体化させる手法、あるいは、(iii)積層体A1、A2と構造部材B1、B2とをそれぞれ別々に予め成形しておき、両者を接合し、一体化させる手法がある。
一体化の手法として、積層体A1、A2と構造部材B1、B2とを、機械的に嵌合させ、一体化する手法、両者をボルト、ネジなどの機械的結合手段を用いて一体化する手法、両者を接着剤などの化学的結合手段を用いて一体化する手法もある。これらの一体化する手法は、必要に応じて、併用されても良い。
前記一体化手法(i)の具体例としては、積層体A1、A2をプレス成形し、必要に応じ所定のサイズに加工あるいは後処理し、次いで射出成形金型にインサートし、その後、構造部材B1、B2を形成する材料を金型に射出成形する手法がある。
前記一体化手法(ii)の具体例としては、構造部材B1、B2を射出成形し、必要に応じ所定のサイズに加工あるいは後処理し、次いでプレス金型にインサートし、その後、プレス金型を所定のプロセス温度として、積層体A1、A2を形成する未硬化の熱硬化性樹脂と多数本の連続したフィラメントからなる導電性繊維群とからなるプリプレグの表面に熱可塑性樹脂層が形成された基材をレイアップし、次いで熱可塑性樹脂の融点以上の温度で真空バック成形する手法がある。
前記一体化手法(iii)の具体例としては、積層体A1、A2をプレス成形し、必要に応じ所定のサイズに加工あるいは後処理して用意した積層体A1、A2と、別途、射出成形にて構造部材B1、B2を予め成形し、それぞれを熱接着や超音波溶着などで前記一体化手法(ii)と同様にして一体化させる方法がある。
一体化成形品C1、C2の量産性の観点から、前記一体化手法(i)におけるインサート射出成形やアウトサート射出成形が好ましく使用される。形状安定性や接着部分の精密性の観点から、前記一体化手法(iii)が好ましく使用され、熱溶着、振動溶着、超音波溶着、レーザー溶着が好ましく使用できる。
かかる手法で一体化された成形品C1、C2によれば、従来の金属材料との一体化では実現できなかった成形品の軽量性が得られる。かかる一体化手法は、積層体A1、A2と構造部材B1、B2との間において優れた接着力を発現し、熱硬化性樹脂との一体化で従来問題となっていた材料間の剥離問題をも解決するものである。
成形品C1、C2の形態を維持するため、積層体A1、A2と構造部材B1、B2との接合面の少なくとも一部に接着部位(接着層)が存在するが、接着部位(接着層)の面積は、接合面の面積の50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、接合面の全面積と同じであることが更に好ましい。
一体化成形品C1、C2は、積層体A1、A2と構造部材B1、B2とが一体化してなるものであるが、成形品C1、C2の形状には、特に制限はない。形状としては、曲面、リブ、ヒンジ、ボス、中空部を有するものであっても良い。成形品C1、C2には、メッキ、塗装、蒸着、インサート、スタンピング、レーザー照射などにより表面加飾の処理が施されていてもよい。
かかる一体化成形品C1、C2の用途としては、電磁波シールド性が要求される分野における製品がある。例えば、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、ディスプレー、FDDキャリッジ、シャーシ、HDD、MO、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、ノートパソコン、携帯電話、デジタルスチルカメラ、PDA、ポータブルMD、プラズマディスプレーなどの電気または電子機器の部品、部材および筐体、電話、ファクシミリ、VTR、コピー機、テレビ、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器、電子レンジ、音響機器、掃除機、トイレタリー用品、レーザーディスク、コンパクトディスク、照明、冷蔵庫、エアコン、タイプライター、ワードプロセッサーなどに代表される家庭または事務製品部品、部材および筐体、パチンコ、スロットマシン、ゲーム機などの遊技または娯楽製品部品、部材および筐体、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などの光学機器、精密機械関連部品、部材および筐体、X線カセッテなどの医療用途、モーター部品、オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンショメーターベース、サスペンション部品、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係、排気系または吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、各種アーム、各種フレーム、各種ヒンジ、各種軸受、燃料ポンプ、ガソリンタンク、CNGタンク、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキバット磨耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、ディストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、バッテリートレイ、ATブラケット、ヘッドランプサポート、ペダルハウジング、ハンドル、ドアビーム、プロテクター、シャーシ、フレーム、アームレスト、ホーンターミナル、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ノイズシールド、ラジエターサポート、スペアタイヤカバー、シートシェル、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、アンダーカバー、スカッフプレート、ピラートリム、プロペラシャフト、ホイール、フェンダー、フェイシャー、バンパー、バンパービーム、ボンネット、エアロパーツ、プラットフォーム、カウルルーバー、ルーフ、インストルメントパネル、スポイラーおよび各種モジュールなどの自動車、二輪車関連部品、部材および外板、ランディングギアポッド、ウィングレット、スポイラー、エッジ、ラダー、エレベーター、フェイリング、リブなどの航空機関連部品、部材および外板、各種ラケット、ゴルフクラブシャフト、ヨット、ボード、スキー用品、釣り竿、自転車などのスポーツ関連部品、部材および人工衛星関連部品、パネルなどの建材用途などの各種用途に有用である。
上記の中でも、軽量かつ高剛性であって、複雑形状部を有し、かつ電磁波遮蔽能力が要求される、パソコン、ディスプレー、携帯電話、携帯情報端末などの電気または電子機器、OA機器、家電機器、医療機器の用途で好ましく用いられる。
さらに、力学特性に優れた大型成形品に複雑形状部が容易に成形できることから、自動車、二輪車、自転車、または航空機、建材用の部品、部材やパネル外板にも好適に用いられる。
本発明における積層体から形成される電磁波シールド成形品は、優れた電磁波シールド性を有するため、電気、電子機器用の筐体として、あるいは、外部部材として好適であり、さらには、薄肉で広い投影面積を必要とするノート型パソコンや携帯情報端末などの筐体として好適である。かかる筐体として使用する場合、電磁波シールド性の観点から、積層体A2が、成形品C2である筐体の天面の少なくとも一部を構成することが好ましく、天面の投影面積の50%以上を構成することがさらに好ましく、天面の投影面積の70%以上を構成することがとりわけ好ましい。
本発明における積層体A1、A2の製造方法を、一体化成形品C1、C2の好ましい用途である電子機器筐体の製造方法を例にとり、第11−12図を用いて説明する。
図11に、例えば、図1に示される本発明における積層体5の製造方法の一例が示される。
積層体Aは、多数本の連続したフィラメントからなる強化繊維束63に熱硬化性樹脂61をマトリックス樹脂として含浸したプリプレグ60を所定の大きさにカットし(工程71)、それらを所定の角度で積層させ、例えば、5枚を、角度0度、+45度、90度、−45度、0度で積層させ、その表面の全部または一部分に、熱可塑性樹脂からなる熱接着用樹脂基材62を配置する積層工程72と、次に熱硬化性樹脂の硬化反応と並行して、もしくは硬化反応前の予熱にて、熱接着用樹脂基材62の熱可塑性樹脂を溶融させるとともに加圧し、熱可塑性樹脂層および熱可塑性樹脂層を形成させる加熱成形工程73とにより製造される(積層体成型工程70)。すなわち、硬化前の熱硬化性樹脂と強化繊維束からなるプリプレグ60の表層に、熱可塑性樹脂62を膜状に配置してから、熱可塑性樹脂62の融点以上温度で、熱硬化性樹脂を硬化させるのであり、これにより、熱硬化性樹脂61と熱可塑性樹脂62とが、強化繊維束63を介在させて、良く接着した状態の積層体Aが得られる。この接着性が高い理由は、硬化過程にある熱硬化性樹脂に対し、溶融過程にある熱可塑性樹脂が、強化繊維束を形成している多数本のフィラメントの間を通り、浸透し、多数本のフィラメントを介して、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との界面が凹凸形状を描いて形成されることにある。したがって、熱硬化性樹脂を硬化させた後に、熱可塑性樹脂を溶融させて積層しても、本発明における積層体を得ることは困難である。
積層体Aの具体的な製造方法としては、特に限定されるものではなく、ハンドレイアップ成形法、スプレーアップ成形法、真空バック成形法、加圧成形法、オートクレーブ成形法、プレス成形法、トランスファー成形法などの熱硬化樹脂を使用した公知の成形方法やより簡易なプレス成形、スタンピング成形法などの熱可塑性樹脂を使用した公知の成形方法が用いられる。プロセス性、力学特性の観点から、真空バック成形法、プレス成形法、トランスファー成形法が、好適に用いられる。
一体化成形品Cにおける積層体Aと構造部材Bとの接着強度をより高めるために、強化繊維束63のフィラメント間に溶融した熱可塑性樹脂62を含浸させる際に、0.1MPa以上の加圧を用いることが好ましい。この加圧は、より好ましくは0.5MPa以上であり、更に好ましくは1MPa以上である。
得られた積層体Aから一体化成形品Cを製造するため、積層体Aを、打ち抜き法などで、所定の大きさに切り出す後加工(工程74)を行い、成形品Cの製造用の積層体Aを用意する。
次に、積層体Aを射出成形用金型にインサートし(工程81)、これにボス、リブ、ヒンジ、フレームなどの構造部材Bの形成材料である熱可塑性樹脂83を射出し、アウトサート成形させる(工程82)。この簡便な一体化工程80により得られた成形品Cを、必要に応じて、補修する補修工程91経て、製品92とする(後処理工程90)。得られた製品92が、完成された一体化成形品Cである。
図12に、従来の積層体を使用した場合の一体化成形品PCの製造方法が示される。熱硬化性樹脂と強化繊維束とからなるプリプレグを積層し、図11に示される積層体成型工程70と同じ成形方法にて積層体PAを成形する。この積層体PAには、図11における熱可塑性樹脂62は存在しない。得られた積層体PAは、熱接着性を有しないために、一体化成形品PCとするには、例えば、接着剤などによる一体化工程が必要となる。
別途、ボス、リブ、ヒンジ、フレームなどの構造部材PBが、成形される。この構造部材PBは、例えば、熱可塑性樹脂121を射出成形する工程122を経て、成形される部材123として得られる(射出成形工程120)。得られた構造部材PBは、必要に応じ、プライマー処理され(工程131)、積層体PAが接着される部位に接着剤が塗布される(工程132)。接着剤が塗布された構造部材PBに、積層体PAが接着せしめられる(工程133)。両者の接着は、治具で固定されることにより行われる(工程134)。次いで、一体化製品PCは、長時間乾燥せしめられる(工程135)。その後、治具から外され、製品136が、得られる(一体化工程130)。この製品136は、一体化成形品PCであるが、必要に応じ、更に、補修工程141を経て、製品142となる(後処理工程140)。この製品142が、最終の一体化製品PCとなる。このように、従来の積層体PAの製造には、本発明における積層体Aの製造に比べ、多大の労力と時間とコストを要する。得られる一体化成形品PCの積層体PAと構造部材PBとの間の接着強度は、本発明により得られる一体化成形品の場合に比べ、劣る。
本発明の熱接着用基材の態様:
本発明の熱接着用基材は、同種および/または異種の被着材を熱接着するための基材である。すなわち、熱接着用基材は、2つ以上の被着材を接着する際に用いられ、なんらかの加熱手段によって、被着材の界面に、熱接着用基材からなる接着層を形成する。
熱接着用基材は、ISO4587(JIS規格K6850)に示される、接着剤−剛性被着材の引張せん断接着強さ試験方法に基づく接着強度Sが、試験温度100℃のとき、5.0MPa以上の値を有する。接着強度Sは、好ましくは7MPa以上であり、さらに好ましくは8MPa以上である。
試験温度は、前記垂直接着強度の場合と同様、熱接着用基材を用いて熱接着された部材の接着強度を測定する際の雰囲気温度を指す。試験片を恒温槽の中に配置して、雰囲気温度と同等になったことを確認した後、チャックに把持し引張試験が行われる。
接着強度Sが、試験温度100℃のとき、5.0MPa未満であると、接着した製品が、実用高温環境下において負荷を受けた場合に、応力で被着材が容易に剥離するなどの問題が生じる場合がある、
さらに、熱接着用基材の接着強度Sは、試験温度200℃のとき、1.0MPa以下であり、好ましくは0.8MPa以下であり、さらに好ましくは0.7MPa以下である。
接着強度Sが、試験温度200℃のとき、1.0MPaを越えると、被着材を容易に分離、解体を行う際の労力とコストが大きくなり、リサイクル時の分別が困難になったり、材料の分別精度が低下し、異種材料のコンタミネーションを起こす場合がある。
接着強度Sの測定用試験片の調製方法について説明する。接着した試験片の形状は、ISO4587に基づき、図8に示される寸法とする。強化繊維である一方向性炭素繊維束に熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグから、JIS6850の接着剤−剛性被着材の引張せん断接着強さ試験方法に準じた試験片を採取する。この採取した試験片を、0度/90度/90度/0度の方向に積層した第2の試験片を2組み用意する。その内の一方の第2の試験片の熱接着を行う接合面の部位に、熱接着用基材を配置する。その上に、他方の第2の試験片を重ね合わせ、ISO4587に記載の形状のプリフォームを作成する。このプリフォームをプレス成形金型にセットし、必要に応じ、治具やスペーサーを使用して、この形状を維持させたまま、プレス成形を行う。このプレスは、加熱プレス成形機で、約5分間、1MPaの圧力をかけて、予熱プレスし、引き続き、プリプレグに含浸している樹脂の硬化温度で、30分間、1MPaの圧力をかけて、硬化反応を完結させる。予熱温度は、熱接着用基材の主成分である熱可塑性樹脂が溶融する温度である。具体的には、予熱温度は、熱可塑性樹脂の融点または軟化点温度以上でそれよりも30℃高い温度以下の範囲で選択されるのが望ましい。融点および軟化点の温度は、前記の測定法により測定される。
使用するプリプレグとしては、特に制限されないが、エポキシ樹脂(熱硬化性樹脂)が炭素繊維束に含浸し、炭素繊維の含有量(Wf)が70wt%、厚さが0.11mmのプリプレグ(東レ(株)製、トレカUDプリプレグ3053S−12)が好ましく用いられる。これを用いたときの硬化温度は、130乃至150℃が適切である。得られた試験片は、接着強度Sの評価に供せられる。
本発明の熱接着用基材は、同種および/または異種の被着材を、加熱による分解を容易にする目的で、その接着強度Sは、特定の温度依存性を有することが好ましい。すなわち、任意の試験温度t(℃)のときの接着強度Sと試験温度(t+30)(℃)のときの接着強度S(t+30)とが、S≧3xS(t+30)の関係を満足する試験温度tが、100乃至200℃の温度範囲に存在することが好ましい。この温度範囲は、120乃至180℃であることがより好ましく、130乃至170℃であることが更に好ましい。
本発明の熱接着基材は、熱可塑性樹脂を基材の形状に加工したものである。用いられる熱可塑性樹脂は、特に制限されないが、温度依存性や室温で高い接着強度を得る目的から、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂から選択される少なくとの1種の樹脂を構成成分として含む樹脂であることが好ましい。特に、ポリアミド樹脂が好ましい。ポリアミド樹脂は、アミノ酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸を主たる成分とする重合体であるが、熱接着用基材の成分として、そのホモポリマーまたはコポリマーも用いることができる。接着強度Sの温度依存性の観点から、共重合ポリアミド樹脂が、更に好ましい。
有用なポリアミド樹脂の具体的な例としては、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド66/6、ポリアミド6/66/610、ポリアミド6/66/612、ポリアミド6/66/610/612、ポリアミド6/6Iがある。これらの2種あるいはそれ以上を併用しても良い。中でも、3元共重合ポリアミド6/66/610を構成成分として含む熱接着性基材は、望ましい態様である。
熱可塑性樹脂には、難燃性が要求される部材への展開を目的として、難燃性成分が添加されていることが好ましい。難燃性成分として、ハロゲン化合物、アンチモン化合物、リン化合物、窒素化合物、シリコーン化合物、フッ素化合物、フェノール化合物、金属水酸化物などの公知の難燃剤を使用することができる。環境負荷の観点から、ポリリン酸アンモニウム、ポリホスファゼン、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、ホスフィンオキシド、赤リンなどのリン化合物が、好ましく使用できる。熱可塑性樹脂には、要求される特性に応じ、本発明の目的を損なわない範囲で、充填材、添加剤、他の熱可塑性樹脂などが含有されていても良い。
添加剤としては、結晶核剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、制振剤、抗菌剤、防虫剤、防臭剤、着色防止剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤、顔料、染料、制泡剤、カップリング剤などが使用できる。
本発明の熱接着用基材の形態としては、特に制限されないが、例えば、不織布形態、フィルム形態、シート形態がある。取り扱い性の観点から、不織布形態あるいはフィルム形態が好ましい。
熱接着用基材が、複雑な形状を有する被着体との接着に用いられる場合は、熱接着用基材に賦型性が要求される。この場合、熱接着用基材は、不織布形態を有していることが好ましい。不織布は、使用される形態を考慮して、公知の製造方法で製造されたもので良い。
被着材に、より均一に熱接着用基材を配置させる観点からは、熱接着用基材の形態は、フィルム形態であることが好ましい。フィルムの特性には、特に制限はなく、公知の方法で製造されたフィルムが使用される。フィルムの厚みは、複雑な形状への賦型性の観点から、0.01乃至0.5mmが好ましく、0.03乃至0.2mmがより好ましい。
本発明の熱接着用基材の目付は、その取り扱い性の観点から、1乃至100g/mであることが好ましく、3乃至80g/mであることがより好ましく、5乃至60g/mであることが更に好ましい。
本発明の熱接着用基材は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、金属材料、カーボン系材料、繊維、木材、紙などの幅広い材料から選択される被着材の接着に使用することができる。被着材の好ましい形態の一つは、多数本の連続した強化繊維群が層状に配置された熱硬化性樹脂からなる積層体である。この熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シアン酸エステル末端を有する樹脂、アリル末端を有する樹脂、アセチレン末端を有する樹脂、ナジック酸末端を有する樹脂、ベンゾシクロブテンを末端に有する樹脂がある。被着材の力学特性の観点から、エポキシ樹脂が好ましく用いられる。
使用される強化繊維としては、例えば、炭素繊維、金属繊維、ガラス繊維、有機繊維、無機繊維、これらの繊維に導電体を被覆した繊維がある。これらの中で、被着材の軽量性と力学特性のバランスに優れる点で、炭素繊維が好ましく用いられる。
本発明の熱接着用基材は、前記本発明における積層体の製造方法における熱接着用基材62として、好ましく用いられる。
本発明における電磁波シールド成形品:
図13を用いて、本発明における電磁波シールド成形品C3が説明される。図13において、電磁波シールド成形品C3は、多数本のフィラメントからなる連続した導電性繊維群が層状に配置された樹脂層からなる第1の構造体A3と熱可塑性樹脂からなる第2の構造体B2とが一体化されてなる。
第1の構造体A3に使用される導電性繊維としては、例えば、アルミニウム繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維などの金属繊維、ポリアクリロニトリル系、レーヨン系、リグニン系、ピッチ系の炭素繊維、黒鉛繊維など単独で導電性を有する繊維、および、これらに更に導電体が被覆された繊維がある。また、ガラス繊維などの絶縁性繊維、アラミド繊維、PBO繊維、ポリフェニレンスルフィド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリアミド繊維、ポリエチレン繊維などの有機繊維、および、シリコンカーバイド繊維、シリコンナイトライド繊維などの無機繊維に導電体が被覆された繊維がある。導電体の被覆方法としては、例えば、ニッケル、イッテルビウム、金、銀、銅、アルミニウムなどの金属をメッキ法(電解、無電解)、CVD法、PVD法、イオンプレーティング法、蒸着法があり、これらにより、少なくとも1層の導電層が形成される。これらの導電性繊維は、単独で、あるいは、少なくとも2種を併用して用いられる。比強度、比剛性、軽量性のバランスの観点から、炭素繊維、とりわけ、安価な生産コストを実現できる点で、ポリアクリロニトリル系炭素繊維が、好ましく用いられる。
第1の構造体A3に用いられる樹脂成分としては、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂のいずれも使用することができる。熱硬化性樹脂の場合は、成形品C3の剛性、強度に優れ、熱可塑性樹脂の場合は、成形品C3の衝撃強度、リサイクル性に優れる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、エポキシ、フェノール(レゾール型)、ユリア・メラミン、ポリイミドがあり、これらの共重合体、変性体、および、これらの少なくとも2種をブレンドした樹脂がある。衝撃性向上のために、エラストマーもしくはゴム成分が添加されていても良い。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリエステルなどのポリエステルや、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンなどのポリオレフィンや、スチレン系樹脂や、その他、ポリオキシメチレン(POM)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチレンメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性PPE、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスルホン(PSU)、変性PSU、ポリエーテルスルホン、ポリケトン(PK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルニトリル(PEN)、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂、更に、ポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、ポリイソプレン系、フッ素系などの熱可塑エラストマーなどや、これらの共重合体、変性体、これらの少なくとも2種をブレンドした樹脂がある。耐衝撃性向上のために、エラストマーもしくはゴム成分が添加されていても良い。
第1の構造体A3を構成する樹脂における導電性繊維の含有割合は、成形性、力学特性と電磁波シールド性の観点から、20乃至90体積%が好ましく、30乃至80体積%がより好ましい。
第1の構造体A3の形態としては、例えば、導電性繊維が層状に積層された積層体や、樹脂、不連続の繊維で強化された樹脂、金属、発泡体などのコア材と導電繊維とが層状に配置された表層材とのサンドイッチ材や、導電性繊維が層状に配置されたものをコア材とするサンドイッチ材があるが、前記本発明における積層体を第1の構造体A3として用いることで、電磁波シールド成形品C3の製造が容易になり、好ましい。
電磁波シールド成形品C3を電気、電子機器の筐体形状に適合させるため、第1の構造体A3は、少なくとも一つの略平面部を有していることが望まれる。第1の構造体A3の最大面積を司る面の50%以上が略平面であることが望ましい。
電気,電子機器の筐体を想定し、薄肉、軽量性の観点から、構造体A3の平均厚みは、1.6mm以下であることが好ましく、1.2mmであることがより好ましく、1.0mm以下であることが更に好ましく、0.8mm以下であることがとりわけ好ましい。第1の構造体A3の平均厚みは、上記略平面部における平均に分布した少なくとも5点における厚みの測定値の平均値である。平均厚みの測定に当たっては、リブ部、ヒンジ部、凹凸部など意図的に形状が付与されている部位は除かれる。
第1の構造体A3の投影面積は、電磁波シールド成形品C3に適合可能な大きさであれば、特に制限されないが、一体化した場合の電磁波シールド性をより高める観点から、所望とする電子機器筐体の天面の大きさに準ずる大きさであることが好ましい。ノートパソコン(ラップトップ)の筐体に使用することを想定した場合、第1の構造体A3の投影面積は、200cm以上であることが好ましく、400cm以上であることがより好ましく、600cm以上であることが更に好ましい。投影面積は、成形品C3の外形寸法から求められる成形品C3面の大きさを表す尺度である。
本発明における電磁波シールド成形品C3は、優れた電磁波シールド性を有することから、第1の構造体A3のKEC法にて測定される周波数1GHzにおける電波シールド性が、40dB以上である。この電波シールド性の値は、45dB以上であることが好ましく、50dB以上であることがより好ましい。
KEC法は、(財)関西電子工業振興センターが定める測定方法で、上下もしくは左右対称に分割したシールドボックスに試験片を挟み込んで、スペクトラムアナライザーにて電磁波の減衰度を測定するものである。試験に当たっては、第1の構造体A3の一部から適当な面積の平板を切り出し、これを測定片として用いる。
電磁波シールド成形品C3が、電気、電子機器の筐体に使用されることを想定すると、成形品C3の破損、撓み、変形から、それに実装される部材を保護する観点から、第1の構造体A3を構成する少なくとも一つの略平面部のASTM−D790に基づく曲げ弾性率が、8GPa以上であることが好ましく、10GPa以上であることがより好ましく、12GPa以上であることが更に好ましい。一般に、電気、電子機器の筐体は、内部に収納される衝撃、荷重、電気的短絡に対しデリケートな電子回路や破損し易い部材などを保護するためのものであり、過酷な荷重下に晒されることが想定される。このような用途では、破損は言うに及ばず、荷重による撓みや変形ですら内部の電子回路や部材に対して致命的なダメージを与える場合がある。
第1の構造体A3の曲げ弾性率は、配置される導電性繊維(強化繊維)の配置方向により異なる値を有することがあるが、ここで云う曲げ弾性率は、これらの内で最小値を示すものを意味する。具体的には、曲げ弾性率測定用の試験片は、第1の構造体A3の略平面部から、第1の構造体A3の長手方向を基準にして、0度、45度、90度、135度のように、異なる角度において切り出した、少なくとも4本、好ましくは6本の試験片として用意される。これらの試験片は、ASTM−D790に基づく曲げ弾性率の測定に供される。試験片の切り出しは、リブ部、ヒンジ部、凹凸部など意図的に形状が付されている部位を避けて行われるのが好ましい。試験片にこれらの意図的な形状部位が含まれている場合、試験片の厚みの測定は、この部位を除いて行われる。これらの試験片において得られる曲げ弾性率の内の最小値が、ここで云う曲げ弾性率として採用される。
電磁波シールド成形品C3を構成する第2の構造体B3に使用される熱可塑性樹脂としては、第1の構造体A3に使用される熱可塑性樹脂と同じものを用いることができる。用いる熱可塑性樹脂は、不連続の強化繊維を含むことが好ましい。
ここで使用される強化繊維としては、特に制限されないが、前記本発明における積層体Aにおいて使用される強化繊維と同じものを用いることができる。第2の構造体B2に含まれる強化繊維は、導電性繊維であることが好ましい。この導電性繊維としては、得られる電磁波シールド成形品C3の軽量性と力学特性の観点から、炭素繊維が好ましい。強化繊維は、少なくとも2種の強化繊維から構成されていても良い。
第2の構造体B2において、熱可塑性樹脂に強化繊維が均一に分散されていることが好ましく、成形性、強度、軽量性とのバランスの観点から、熱可塑性樹脂と強化繊維との割合は、熱可塑性樹脂が、好ましくは25乃至95重量%、より好ましくは35乃至85重量%であり、強化繊維が、好ましくは5乃至75重量%、より好ましくは15乃至65重量%である。
不連続の強化繊維の繊維長は、長い程、強度、剛性の向上効果が高く、特に衝撃強度の著しい向上効果が得られることは、良く知られている。不連続の強化繊維を含む樹脂においては、樹脂中に含まれている不連続の強化繊維の長さは、全て同一の長さではなく、異なる長さの分布をもっている。このような状態の強化繊維の繊維長を表すのに、数平均繊維長Lnや重量平均繊維長Lwが用いられる。
数平均繊維長Lnは、測定数に対する繊維長の単純な平均値であり、短い繊維長を有する繊維の寄与を敏感に反映する。繊維長に基づく補強効果は、繊維長が長い程、補強効果が大きい。繊維長の長い繊維と繊維長の短い繊維とがもたらす効果に相違があるので、これらを同列に扱うことは、好ましくない。繊維長が長い繊維が果たす補強効果を重視する場合、重量平均繊維長Lwを考慮すると良い。成形品C3の機械的特性を判定する際、第2の構造体B2に含まれている不連続の強化繊維の重量平均繊維長Lwを考察することが好ましいと云える。
重量平均繊維長Lwと数平均繊維長Lnとの比Lw/Lnにより、繊維長の分布を知ることができる。Lw/Lnの値が1より大きい程、繊維長の長い繊維が多く含まれていることになる。第2の構造体B3における不連続の強化繊維は、繊維長の長いものであることが好ましく、繊維長の長い繊維がより多く含まれていることがより好ましい。
第2の構造体B3の不連続の強化繊維は、重量平均繊維長Lwが、0.4mm以上で、かつ、重量平均繊維長Lwと数平均繊維長Lnとの比Lw/Lnが、1.3乃至2.0であることが好ましい。重量平均繊維長Lwが、0.4乃至1.0mmであることがより好ましい。
数平均繊維長Ln、重量平均繊維長Lw、および、比Lw/Lnは、次の手法により求められる。すなわち、第2の構造体B3の一部を長さ10mm、幅10mmの大きさで切り出し、測定片を作成する。作成された試験片を、熱可塑性樹脂が可溶な溶剤に24時間浸漬し、樹脂成分を溶解させる。樹脂成分が溶解された試験片を、顕微鏡にて、10乃至100倍の倍率のもとで観察する。この観察において、視野内の強化繊維の中の任意の400本について、繊維長を測定する。測定されたここの繊維長をLiとし、数平均繊維長Lnと重量平均繊維長Lwとを、次の式に基づき、算出する。
数平均繊維長Ln=(ΣLi)/(N)
ここで、Nは、測定本数(400本)
重量平均繊維長Lw=(ΣLi)/(ΣLi)
重量平均繊維長Lwが、0.4mm以上で、かつ、比Lw/Lnが、1.3乃至2.0となる強化繊維を含む第2の構造体B2の成形に、例えば、JP63−37694Bに開示されている長繊維ペレットが用いられる。この長繊維ペレットは、ペレットの長さに実質的に等しい長さを有し、ペレットの長さ方向に配列された強化繊維と熱可塑性樹脂とからなる。JU60−62912Aに開示されているコーディドペレットを用いることもできる。このコーディドペレットは、連続した強化繊維束の周囲を熱可塑性樹脂で被覆した後、所定の長さに切断して製造されたものである。第2の構造体B2の成形は、長さ1乃至20mmのチョップド繊維と樹脂からなるペレットとを混合し、射出成形することにより行うこともでき、この成形手法が好ましい。
長繊維ペレットから成形された成形品は、短繊維ペレットから成形された成形品と比べ、成形品中に、強化繊維が長い状態で存在し、かつ、繊維長の長い繊維が多く存在するため、機械特性に優れている。長繊維ペレットの長さが、1乃至20mmであれば、長繊維による補強効果と成形に用いられる押し出し機のスクリューなどへの繊維のカミコミの防止効果とが得られ、好ましい。長繊維ペレットの長さは、3乃至10mmであることがより好ましい。
第2の構造体B3を構成する熱可塑性樹脂には、要求される特性に応じ、充填剤や添加剤が含まれていても良い。充填剤あるいは添加剤としては、無機充填剤、難燃剤、導電性付与剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、制振剤、抗菌剤、防虫剤、防臭剤、着色防止剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤、顔料、発泡剤、カップリング剤などがある。
帯電性付与剤としては、例えば、カーボンブラック、アモルファスカーボン粉末、天然黒鉛粉末、人造黒鉛粉末、膨張黒鉛粉末、ピッチマイクロビーズ、気相成長炭素繊維、カーボンナノチューブがある。これらは、電磁波シールド成形品C3の電磁波シールド効果をより高める目的で、好ましく使用される。
本発明における電磁波シールド成形品C3は、第1の構造体A3と第2の構造体B3とが一体化されてなる。第1の構造体A3と第2の構造体B3とを一体化させる手法は、特に制限されない。一つの手法としては、第1の構造体A3を予め成形しておき、第2の構造体B3の成形と同時に、両者を一体化させる手法がある。他の手法としては、第2の構造体B3を予め成形しておき、第1の構造体A3の成形と同時に、両者を一体化させる手法がある。更に他の手法としては、予め第1の構造体A3と予め第2の構造体B3とを別個に成形し、次いで、両者を一体化させる手法がある。両者を一体化させる手段としては、接着、融着、嵌合、嵌め込みなどがある。特に好ましい一体化方法は、予め成形した第1の構造体A3を金型にインサートし、次いで、第2の構造体B3を成形する熱可塑性樹脂を射出することで、第2の構造体B3を第1の構造体A3に一体化する方法である。別の好ましい一体化方法は、予め成形した第1の構造体A3と予め成形した第2の構造体B3とを、超音波溶着にて一体化する方法である。このとき用いる第1の構造体A3を、前記本発明における積層体Aとすることで、優れた接着強度を得ることができる。
更に他の一体化方法としては、予め射出成形され、後処理された第2の構造体B3を、プレス金型にインサートし、次いで、第1の構造体A3を形成する連続した導電性繊維の基材に樹脂が含浸されたプリプレグをレイアップし、真空バッグ成形することで、第1の構造体A3と第2の構造体B3とを一体化する方法がある。
更に他の一体化方法としては、予めプレス成形にて成形され、後処理された第1の構造体A3と、予め射出成形にて成形され、後処理された第2の構造体B3とを、良く知られている接着剤を用いて接合することで一体化する方法がある。
第1の構造体A3の製造方法は、特に限定されない。第1の構造体A3の製造方法としては、例えば、ハンドレイアップ成形法、スプレーアップ成形法、真空バッグ成形法、加圧成形法、オートクレーブ成形法、プレス成形法、トランスファー成形法などの熱硬化性樹脂を使用する良く知られた方法がある。プロセス性、力学特性の観点から、真空バッグ成形法、プレス成形法、トランスファー成形法が、好ましく用いられる。
第2の構造体B3の製造方法は、特に限定されない。第2の構造体B3の製造方法としては、射出成形法、押出成形法、プレス成形法など良く知られた方法がある。射出成形法は、生産性が高く、かつ、リブ部、図13に示すヒンジ部151、ボス部152を有する複雑な形状の第2の構造体B3を容易に量産できることから、好適に使用される。
第1の構造体A3と第2の構造体B3との一体化により製造される電磁波シールド成形品C3は、一体化後も、その一体化構造が維持される必要があることから、第1の構造体A3と第2の構造体B3との接合面の少なくとも一部に接着層を有していることが好ましい。接合面の面積の50%以上の面積に、接着層を有していることがより好ましく、接合面の面積の70%以上の面積に、接着層を有していることが更に好ましく、接合面の全面に、接着層を有していることがとりわけ好ましい。
接着層の素材は、第1の構造体A3あるいは第2の構造体B3を構成している素材と異なる成分からなるものでも良く、類似の成分からなるものでも良い。接着層の素材は、第2の構造体B3との接着強度の観点から、これを構成する熱可塑性樹脂と同類の樹脂からなることが好ましい。
電磁波シールド成形品C3の形状は、特に制限されない。電磁波シールド成形品C3は、曲面、リブ、ヒンジ、ボス、中空部を有していても良い。電磁波シールド成形品C3は、メッキ、塗装、蒸着、インサート、スタンピング、レーザー照射などにより、その表面に装飾処理がなされていても良い。特に、第1の構造体A3中の強化繊維が描く模様が、外方から観察したとき、観察可能とすることにより、電磁波シールド成形品C3の意匠的効果が創出される。
電磁波シールド成形品C3の用途としては、前記本発明における積層体Aについて例示した用途がある。好適な用途としては、パソコン、ディスプレイ、OA機器、携帯電話、携帯情報端末、ファクシミリ、コンパクトディスク、ポータブルMD、携帯ラジオカセット、PDA(電子手帳などの携帯情報端末)、ビデオカメラ、ディジタルスチルカメラ、光学機器、オーディオ、エアコン、照明機器、娯楽用品、玩具用品、その他家電製品など電気、電子機器の筐体、ならびに、トレイやシャーシーなどの内部部材やそのケース、機構部品、自動車や航空機の電装部材、内部部品などがある。
電磁波シールド成形品C3は、その優れた電磁波シールド性から、電気、電子機器用の筐体や外部部材として好適に用いられ、薄肉で広い投影面積を必要とするノート型パソコンや携帯情報端末などの筐体として好適に用いられる。電磁波シールド成形品C3をこのような筐体として用いる場合、電磁波シールド性の観点から、筐体の天面の少なくとも一部が、第1の構造体A3により形成されていることが好ましく、天面の投影面積の50%以上が第1の構造体A3により形成されていることがより好ましく、天面の投影面積の70%以上が第1の構造体A3により形成されていることが更に好ましい。電磁波シールド成形品C3の内部に複雑な形状部を必要とする場合は、フレーム、ボス、リブ、ヒンジ、ランナー、ならびに、これらを含む部材を、第2の構造体B3に形成しておくことが好ましい。
実施例および比較例に基づき、本発明が更に具体的に説明される。実施例および比較例中に示される配合割合(%)は、別途特定している場合を除き、全て重量%に基づく値である。
実施例−1:積層体および一体化成形品:
実施例1−1:積層体A4
マトリックス樹脂がエポキシ樹脂(熱硬化性樹脂)で、一方向に配列された多数本の炭素フィラメントからなる強化繊維群からなり、強化繊維群の含有量が、重量割合(Wf)で70%、体積割合(Vf)で61%のプリプレグ(東レ(株)製トレカプリプレグP6053−12)から、所定の大きさを有する長方形のプリプレグシートを6枚切り出した。図14において、これら6枚のシート161−166が、斜視図をもって示される。それぞれのシートは、両端面において折り曲げられ、凹形状に加工されている。
プレス成形機の雌金型(図示せず)に、長方形の長辺の方向を0°として、繊維方向が、上から45°、−45°、90°、90°、−45°、45°となるように、6枚のプリプレグ161−166を、下から順次積層した(矢印160で示される)。
一方、後述の実施例3−1にておいて説明される熱接着用基材から、所定の幅を有する熱接着用基材テープを作成した。熱接着用基材テープ171を2枚重ね、プリプレグシート166の上面の外周約20mmの幅および折り曲げられた端面に、積層した(矢印170で示される)。
次に、雄金型(図示せず)をセットして、プレス成形を行った。プレス成形機にて、160℃で5分間予熱して、熱接着用基材171を溶融させた後、6MPaの圧力をかけながら、150℃で30分間加熱して熱硬化性樹脂を硬化させた。硬化終了後、室温で冷却し、脱型して、平均の厚み0.7mmの積層体A4を製造した。
製造された積層体A4の熱接着用基材171が積層されている部分から、10mmX10mmの正方形の試験片を切り出し、メチルアルコールで30分間超音波洗浄を行い、熱接着用基材171の熱可塑性樹脂を除去した。得られた試験片をSEMにて観察した。試験片の表面には、繊維束がむき出されている状態が観察された。さらに、試験片の断面には、積層体A4の表面方向に空隙を有する繊維群の層と、積層体A4の内部方向に空隙を有しない繊維群の層の二層構造が観察された。この二層構造は、図5に示されている。熱硬化性樹脂層と熱可塑性樹脂層との界面44は、凸凹形状を有していることが認められた。空隙45を有する繊維群43bの層が、熱可塑性樹脂層のうちの連続したフィラメントが配置されている領域である。この領域において、フィラメント43bが存在している領域の最大厚みTpfと最小厚みTpf−minとを測定した。最小厚みTpf−minは、30μm、最大厚みTpf−maxは、50μmであった。
得られた積層体A4の熱接着用基材テープが積層されていない部分を切り出し、熱硬化性樹脂層の樹脂のガラス転移温度を、パーキンエルマー社製DSCにて測定した。測定されたガラス転移温度は、130℃であった。
得られた積層体A4の長方形の底面から、長方形の長辺方向を0°として、0°、45°、90°、135°方向の曲げ弾性率を測定するため、それぞれの角度で、試験片を切り出した。測定された曲げ弾性率は、45°方向、すなわち、最外層の繊維方向、で最大となり、その値は116GPaであった。測定された曲げ弾性率は、135°方向、すなわち、最外層の繊維の90°方向、で最小となり、その値は25GPaであった。
得られた積層体A4から、ISO4587の被着材に準ずる形状の積層板を切り出した。積層体A4の熱接着用基材テープが積層されている部分同士を接合させるように合わせて、6MPaの圧力をかけながら、180℃で5分間プレスして、試験片を作成した。得られた試験片を用いて、室温での接着強度を測定した。接着強度は、20MPaであった。強度試験後の試験片の接着面を観察したところ、積層体A4から剥離されたフィラメントの付着が観察された。
実施例1−2:一体化成形品C5
図15に示される一体化成形品C5を製造する。積層体(1−1)を積層体A5として用い、この積層体A5を射出成形用金型(図示せず)にインサートした。マトリックス樹脂がポリアミド系樹脂からなり、炭素繊維含有率が重量割合(Wf)で20%の長繊維ペレット(東レ(株)製TLP1146)を用意した。このペレットを用いて、インサートされている積層体A5に対し、外周フレーム部分、ボス、ヒンジ部を有する被着部材B5を射出成形にて形成させ、一体化成形品C5を製造した。インサートした積層体A5には、予め、被着部材B5との接合面に当たる部分に、後述の実施例3−1にておいて説明される熱接着用基材から得られる熱接着用基材テープを貼着しておいた。射出成形は、日本製鋼所(株)製J350EIII射出成形機を用いて行い、シリンダー温度は、280℃とした。
実施例1−3:積層体A6
まず、ポリアミド12樹脂(宇部興産(株)製、融点180℃)のペレットを熱プレスし、厚み70μmのフィルム状の熱接着用基材を作成した。次に、実施例1−1に説明したのと同じ要領で、プリプレグを積層し、最後に積層したプリプレグの上から、作成された熱接着用基材を、積層体全体に1枚積層した。
次に、ホットプレートにて、190℃で5分間予熱して、熱接着用基材を溶融させた後、プレス成形機にて、3MPaの圧力をかけながら、150℃で30分間加熱して、平均の厚み0.8mmの積層体A6を製造した。
得られた積層体A6を、蟻酸を使用して、熱可塑性樹脂を除去して、熱可塑性樹脂層のうちの連続したフィラメントが配置されている領域の厚みを測定した。最小厚みTpf−minは、20μm、最大厚みTpf−maxは、30μmであった。熱硬化性樹脂層の樹脂のガラス転移温度は、134℃であった。
積層体A6の曲げ弾性率は、135°方向で最小となり、そのときの値は、26GPaであった。
実施例1−1の場合と同じ要領で、6MPaの圧力をかけながら、195℃で5分間プレスして、試験片を作成した。この試験片を用いて、ISO4587に準ずる、室温での接着強度を測定したところ、14MPaであった。接着強度試験後の試験片の接着面を観察すると、積層体A6から剥離されたフィラメントの付着が観察された。
実施例1−4:一体化成形品C7
実施例1−2の場合と同じ要領で、積層体A6を金型にインサートして、一体化成形品C7を製造した。
実施例1−5:積層体A7
実施例1−1の場合と同じ要領で、積層体A7を製造した。ただし、プリプレグを積層する前に、熱接着用基材として、ポリアミド6フィルム(東レ合成フィルム(株)製レイファンNO1401、厚み50μm、融点210℃)を雌型の積層面の全面に予め配置した。次に、マトリックス樹脂がエポキシ樹脂であり、一方向に配列された炭素繊維群の含有量が重量割合(Wf)で60%の織物プリプレグ(東レ(株)製トレカプリプレグF6343B−05P)を、0°/90°となるように配置した。さらに、マトリックス樹脂がエポキシ樹脂で、一方向に配列された炭素繊維群の含有量が重量割合(Wf)で60%の一方向性プリプレグ(東レ(株)製トレカプリプレグP6053−12)を45°、−45°、−45°、45°となるように4枚積層し、再度、前記織物プリプレグ(F6343B−05P)を、(0°/90°)となるように積層した。最後に、積層したプリプレグの上に、熱接着用基材として、再度、ポリアミド6フィルム(レイファンNO1401)を、積層体全体に積層した。
次に、プレス成形の前に、ホットプレートにて、225℃で3分間予熱して、熱接着用基材を溶融させた後、プレス成形機にて、6MPaの圧力をかけながら、150℃で30分間加熱して、平均の厚み0.9mmの積層体A7を製造した。
得られた積層体A7を、実施例1−3の場合と同じ要領で、熱可塑性樹脂層のうちの連続したフィラメントが配置されている領域の厚みを測定した。最小厚みTpf−minは、10μm、最大厚みTpf−maxは、40μmであった。
熱可塑性樹脂層の両表面を切削除去した後、熱硬化性樹脂層の樹脂のガラス転移温度を測定した。測定されたガラス転移温度は、132℃であった。
得られた積層体A7の長方形の底面から、長方形の長辺方向を0°として、0°、22.5°、45°、90°、112.5°、135°方向の曲げ弾性率を測定するため、それぞれの角度で、試験片を切り出した。測定された積層体A7の曲げ弾性率は、22.5°方向で最小となり、そのときの値は、20GPaであった。
実施例1−1の場合と同じ要領で、6MPaの圧力をかけながら、225℃で5分間プレスして、試験片を作成した。作成された試験片を用いて、ISO4587に準ずる、室温での接着強度を測定したところ、16MPaであった。接着強度試験後の試験片の接着面を観察したところ、積層体A7から剥離されたフィラメントの付着が観察された。
実施例1−6:一体化成形品C8
実施例1−2の場合と同じ要領で、積層体A7を金型にインサートして、一体化成形品C8を製造した。
また、前記長繊維ペレット(東レ(株)製TLP1146)を射出成形して、図15に示される被着材B5と同様な被着材B8を作成した。得られた一体化成形品C8に、被着材B8を、超音波溶着により、接合した。超音波溶着には、精電舎電子工業(株)製超音波溶着機SONOPETΣ−1200S/Rを用いて、周波数は、19kHz、加圧力は、1kNとした。
実施例1−7:積層体A9
前記実施例1−1の場合と同じ要領で、プリプレグを積層し、最後に積層したプリプレグの上に、熱接着用基材として、ポリカーボネートフィルム(バイエル(株)製ポリカーボネートフィルム、厚み50μm)を、積層体A9全体に1枚積層した。
次に、ホットプレートにて、260℃で3分間予熱して、熱接着用基材を溶融させた後、プレス成形機にて、6MPaの圧力をかけながら、150℃で30分間加熱して、平均厚み0.7mmの積層体A9を製造した。
得られた積層体A9を、塩化メチレンを使用して、熱可塑性樹脂を除去して、熱可塑性樹脂層のうちの連続したフィラメントが配置されている領域の厚みを測定した。最小厚みTpf−minは、10μm、最大厚みTpf−maxは、20μmであった。
熱可塑性樹脂層の両表面を切削除去した後、熱硬化性樹脂層の樹脂のガラス転移温度を測定した。測定されたガラス転移温度は、134℃であった。
測定された積層体A9の曲げ弾性率は、135°方向で最小となり、そのときの値は、25GPaであった。
実施例1−1の場合と同じ要領で、6MPaの圧力をかけながら、260℃で3分間プレスして、試験片を作成した。作成された試験片を用いて、ISO4587に準ずる、室温での接着強度を測定したところ、11MPaであった。接着試験後の試験片の接着面を観察すると、積層体A9から剥離されたフィラメントの付着が観察された。
実施例1−8:一体化成形品C10
ポリカーボネート樹脂(日本GEP(株)製ポリカーボネート樹脂レキサン121R)と、チョップド炭素繊維(東レ(株)製チョップド炭素繊維TS−12)を、2軸押出機(日本製鋼所(株)製2軸押出機TEX−30α)を用いて、コンパウンドし、繊維含有量30重量%の射出成形用ペレットを用意した。
前記積層体A9を射出成形用金型にインサートして、用意した射出成形用ペレットを用いて、一体化成形品C10を製造した。
実施例1−2、実施例1−4、実施例1−6、および、実施例1−8の一体化成形品は、優れた剛性を有する積層体と、複雑形状の成形に有利な射出成形部材からなる構造部材とが強固に結合しており、ノートパソコンなどの電気・電子機器の筐体に好適であることが判明した。さらに、積層体の強化繊維が描く模様が、外方から観察でき、商品価値が一層高まることが確認された。
比較例1−1:積層体PA1
熱接着性基材を積層せずに、前記実施例1−1の場合と同じ要領で、プリプレグを積層した。
次に、6MPaの圧力をかけながら、150℃で30分間加熱して、プレス成形を行い、平均の厚み0.7mmの積層体PA1を製造した。
得られた積層体PA1は、熱可塑性樹脂層が成形品PC1の表面に形成されていないために、他の部材PB1との熱接着性を有しない。ISO4587の被着材に準ずる形状の積層板を切り出し、接合部を、2液型エポキシ接着剤(タカダ化学品製(株)製スワンボンド4000)を用いて、25℃、1MPaの圧力で、24時間で、接合させ、試験片を作成した。得られた試験片を用いて、室温での接着強度を測定した。測定された接着強度は、4MPaであった。
比較例1−2:一体化成形品PC2
前記実施例1−2の場合と同じ要領で、比較例1−1の積層体PA1を射出成形用金型にインサートして、長繊維ペレット(東レ(株)製長繊維ペレットTLP1146)を用いて、外周フレーム部分、ボス、および、ヒンジ部を射出成形にて形成した。しかし、脱型後直ちに、積層体PA1と射出成形部材PB1とが剥離して、接着強度試験に供すことができなかった。
比較例1−3:積層体PA3
前記実施例1−5において、予熱することなしに、6MPaの圧力をかけながら、150℃で30分間加熱して、プレス成形を行い、平均の厚み0.9mmの積層体PA3を製造した。
得られた積層体PA3を、実施例1−3の場合と同じ要領で、蟻酸による洗浄を行ったが、空隙を有する繊維群の層が見られなかった。断面をSEMにて観察すると、熱可塑性樹脂層には、連続したフィラメントが配置されていないことが分かった。この状態は、図6に示される状態と同じであることが確認された。
熱可塑性樹脂層の両表面を切削除去した後、熱硬化性樹脂層の樹脂のガラス転移温度を測定測定した。測定されたガラス転移温度は、130℃であった。
実施例1−1の場合と同じ要領で、6MPaの圧力をかけながら、225℃で5分間プレスして、試験片を作成した。作成された試験片を用いて、ISO4587に準ずる、室温での接着強度を測定した。測定された接着強度は、0.6MPaであり、容易に剥離することが判明した。
比較例1−4:一体化成形品PC4
前記実施例1−6の場合と同じ要領で、得られる積層体PA4を金型にインサートして、一体化成形品PC4を製造した。
得られた一体化成形品PC4から、積層体PA4と射出成形部分PB4との間の垂直接着強度測定試験を行った。積層体PA4と射出成形部分PB4との界面付近で、すぐに分解し、垂直接着強度は、1MPa以下であることが判明した。分解後の、射出成形部品PB4の接着面を観察しても、積層体PA4から剥離されたフィラメントの付着は、観察されなかった。
比較例1−2、および、比較例1−4の一体化成形品は、積層体と射出成形部材との接着強度が十分でなく、製品とした場合に、剥離問題を起こす場合がある。このため、比較例の積層体からは、実施例の積層体のような生産性、量産性に優れた容易な方法で、一体化成形品を製造することが困難であることが確認された。
実施例2:積層体および一体化成形品
図9に示された電気・電子機器用モデル筐体C2の斜視図を用いて実施例を説明する。
参考例2−1:射出成形材料
ポリアミド6樹脂(東レ(株)製ポリアミド6樹脂CM1001)と、チョップド炭素繊維(東レ(株)製チョップド炭素繊維TS−12)を、日本製鋼所(株)製2軸押出機TEX−30αを用いて、コンパウンドし、繊維含有量30重量%の射出成形用ペレットを製造した。
実施例2−1:積層体A21
マトリックス樹脂がエポキシ樹脂(熱硬化性樹脂)であり、炭素繊維の含有率が、重量割合(Wf)で63%のプリプレグ(東レ(株)製トレカプリプレグ3051S−12)を所定の大きさにカットし、長さ350mm×幅300mmの積層体を製造した。
プレス成形用金型に、カットされた長方形のプリプレグの長辺方向を0°として、繊維方向が上から45°、−45°、90°、90°、−45°、45°となるように、6枚のプリプレグを積層した。最後に積層したプリプレグの上に、後述する実施例3−1における熱接着用基材を2枚積層した。
次に、プレス成形機にて、160℃で5分間予熱して、熱接着用基材を溶融させた後、6MPaの圧力をかけながら、150℃で30分間加熱して、熱硬化性樹脂を硬化させた。硬化終了後、室温で冷却し、厚み0.7mmの積層体を製造した。製造された積層体の断面をSEM観察すると、表面には、熱可塑性樹脂が溶融して膜状に付着しており、その膜厚は、10μmであった。製造された積層体を打ち抜き、図9に示す積層体A2(天板)形状に加工したものを積層体A21とする。
実施例2−2:一体化成形品C22
実施例2−1で製造された積層体A21を積層体A22とし、これを射出成形用金型にインサートして、前記参考例2−1で調製した射出成形用ペレットを用いて、図9に示す構造部材B2と同様の構造部材B22を射出成形する。得られた一体化成形品C22において、積層体A22と構造部材B22とが強固に一体接合されていた。この一体化成形品C22は、筐体として利用される。
製造された一体化成形品C22の積層体A22と構造部材B22とが結合している部分から、10mmX10mmの試験片を切り出し、垂直接着強度試験に供した。治具と試験片を接着剤(前記スリーボンド1782)にて接着させ、垂直接着強度試験を行った。試験結果は、40℃雰囲気では、積層体と射出成形部材の間で破壊は起こらず、治具と積層体を固定している接着剤部分で剥離が生じた。140℃雰囲気では、垂直接着強度は、4MPaであった。
実施例2−3:積層体A23
前記実施例2−1の場合と同じ要領で、平織りの炭素繊維織物(東レ(株)製トレカ織物CO6343)にエポキシ樹脂を含浸させた炭素繊維量57体積%のプリプレグを用いて、積層体A23を製造した。積層構成として、長方形の長辺方向を0°として、繊維方向が0°/90°となるように、4枚のプリプレグを積層し、さらに最後に積層したプリプレグの上に、熱接着用基材として、ポリアミド系不織布(呉羽化学社(株)製ポリアミド系不織布ダイナックLNS−0050、目付50g/m2、融点135℃)を積層した。
次いで、真空バッグ成形し、140℃で1時間加熱して硬化させ、厚さ0.9mmの積層体A23を製造した。製造された積層体A23の表面には、不織布が溶融して膜状に付着しており、その膜厚は25μmであった。得られた積層体A22を打ち抜き、図9に示す積層体A2の形状に加工したものを、積層体A23(天板)とする。
実施例2−4:一体化成形品C24
前記実施例2−2の場合と同じ要領で、積層体A23を積層体A24として、金型にインサートし、構造部材B24を射出成形する。得られた一体化成形品C24における、積層体A24と構造部材B24との垂直接着強度を、強制的にチャックに把持する方法で測定した結果、40℃雰囲気では、垂直接着強度は、21MPaであり、さらに140℃雰囲気では,垂直接着強度は、2MPaであった。
実施例2−5:積層体A25
前記実施例2−3の場合と同じ要領で、平織りの炭素繊維織物(東レ(株)製トレカ織物CO6343)に、180℃硬化型エポキシ樹脂を含浸させた炭素繊維量57体積%のプリプレグを用いて、積層体A25を製造した。熱接着用基材として、ポリアミドフィルム(東レ合成フィルム(株)製ポリアミドフィルム、タイプ1401、厚み80μm、融点215℃)を1枚積層した。
次いで、真空バッグ成形し、220℃で5分間予熱して、熱接着用基材を溶融させた後、180℃で45分で、熱硬化性樹脂を硬化させ、厚さ0.9mmの積層体A25を製造した。製造された積層体A25の表面には、不織布が溶融して膜状に付着しており、その膜厚は65μmであった。得られた積層体A25を打ち抜き、図9に示す積層体A2の形状に加工したものを積層体A25(天板)とする。
実施例2−6:一体化成形品C26
前記実施例2−2の場合と同じ要領で、積層体A25を積層体A26として、金型にインサートし、構造部材B26を射出成形する。得られた一体化成形品C26における、積層体A26と構造部材B26との垂直接着強度を、実施例2−4の場合と同様の方法で測定した結果、40℃雰囲気では、垂直接着強度は、15MPaであり、さらに140℃雰囲気では、垂直接着強度は、8MPaであった。
比較例2−1:積層体PA21
熱接着用基材を積層せずに、前記実施例2−1の場合と同じ要領で実施し、積層体PA21を製造した。
比較例2−2:一体化成形品PC22
実施例2−2の場合と同じ要領で、比較例2−1の積層体PA21を積層体PA22として、金型にインサートし、構造部材PB22を射出成形した。得られた一体化成形品PC22における、積層体PA22と構造部材PB22との垂直接着強度を、実施例2−2の場合と同様の方法で測定した結果、40℃雰囲気では、垂直接着強度は、0.2MPaであり、さらに140℃雰囲気では、垂直接着強度は、0.1MPaであった。
実施例2−2、実施例2−4、および実施例2−6の一体化成形品は、優れた剛性を有する積層体と、複雑形状の成形に有利な射出成形部材とが強固に結合しており、ノートパソコンなどの電気・電子機器の筐体に好適であることが判明した。さらに、高い雰囲気温度では、接着強度が大きく低下しており、積層体の分解が容易であり、リサイクル性の観点から、商品価値が一層高いことが認識された。
比較例2−1の積層体は、熱接着力を有さず、一体化成形品としても実用的な製品とはならなかった。
比較例2−2の一体化成形品は、積層体と射出成形部材との接着強度が十分でなく、製品とした場合に、剥離問題を起こす場合がある。このため、比較例の積層体は、実施例の積層体の場合のように、容易な方法で一体化成形品を製造することには向かないことが確認された。
実施例3:熱接着用基材
実施例3−1
3元共重合ポリアミド樹脂(東レ(株)製、3元共重合ポリアミド樹脂CM4000、ポリアミド6/66/610、融点150℃)のペレットを用い、メルトブロー法にて、幅1,000mmの不織布状の基材を製造した。この熱接着用基材の目付は、30g/mであった。
これを熱接着用基材として用い、予熱プレス温度を160℃として、ISO4587に基づく接着強度Sの評価を行った。
比較例3−1
熱接着用基材として、ポリプロピレン樹脂(チッソ(株)製ポリプロピレン樹脂、融点170℃)を用いて、同様に不織布状の基材を製造した。これを熱接着用基材として用い、予熱プレスを180℃として、実施例3−1と同様の方法で、接着強度Sの評価を行った。
比較例3−2
熱接着用基材として、ポリアミド6樹脂(東レ(株)製、ポリアミド6樹脂、融点215℃)を用いて、同様に不織布状の基材を製造した。これを熱接着用基材として用い、予熱プレスを220℃として、実施例3−1と同様の方法で、接着強度Sの評価を行った。
これらの評価結果が、表1に示される。
Figure 2007092072
表1は、次のことを示している。すなわち、実施例3−1の熱接着用基材は、130℃以下の温度では優れた接着強度を示し、かつ、160℃以上の温度では容易に分離でき、リサイクル性に好適である。一方、比較例3−1の熱接着用基材は、100℃での接着強度が不十分であり、実用上問題である。さらに、比較例3−2の熱接着用基材は、200℃においても、容易には分離できないため、リサイクル性には対応できない場合がある。
実施例4:電磁波シールド成形品C41
実施例4−1
前記実施例2−2によって、本発明における電磁波シールド成形品C41の一形態が説明できる。この電磁波シールド成形品C41は、図13における第1の構造体A3と、熱可塑性樹脂からなる第2の構造体B3とが一体化されてなる。さらに、第1の構造体A3のKEC法による電波シールド性は、50dB以上である。
実施例4−2
前記比較例2−1によって得られた積層体を第1の構造体A3とする。次に、実施例2−2で使用した金型を使用し、積層体をインサートするかわりに、スペーサーを配置して、参考例2−1の射出成形用ペレットを、射出成形し、第2の構造体B3を作成した。
得られた第1の構造体A3と第2の構造体B3とを、接合面をアルコールにて洗浄した後、前記スリーボンド(株)製2液型接着材3921/3926を用いて接着し、一体化成形品C3を製造した。接着後は、常温で24時間放置した。
第1の構造体A3のKEC法による電波シールド性は、50dB以上であった。
実施例4−3
図16に、天面181が二層構造を有する第1の構造体A43とこれに接合される第2の構造体B43とからなる電磁波シールド成形品C43の分解斜視図が示される。
前記東レ(株)製トレカ織物CO6343にエポキシ樹脂を含浸させた炭素繊維量57体積%のプリプレグを単独で、プレス成形機にて、6MPaの圧力をかけながら、150℃で30分間加熱して、熱硬化性樹脂を硬化させる。硬化終了後、室温で冷却し、厚み0.2mmの第1の構造体A43を製造した。
次に、長繊維ペレット(東レ(株)製長繊維ペレットTLP1146)を射出成形して、第2の構造体B43を作成した。
得られた第1の構造体A43と第2の構造体B43とを、接合面をアルコールにて洗浄した後、前記スリーボンド(株)製2液型接着材3921/3926を用いて接着し、一体化成形品C43を製造した。接着後は、常温で24時間放置した。
得られた成形品C43の天面181は二層構造を有しており、その厚みは、1.4mm、電波シールド性は、50dB以上であった。曲げ弾性率を測定するため、天面長手方向を0°として、0°、45°、90°方向について、それぞれの角度で、試験片を切り出した。ただし、ボス、リブ、ヒンジ、ウェルドを含む部分は除外した。試験片を用いて測定された曲げ弾性率は、45°方向で最小となり、その値は、15GPaであった。
第2の構造体B43の一部から、3mm×3mmの大きさの試験片を切り出し、溶剤(蟻酸)約100mlに24時間浸漬して樹脂成分を溶解させた。その後、ペーパーフィルターを用いて強化繊維成分を濾過し、フィルター残渣を顕微鏡にて観察して、無作為に抽出した400本の強化繊維の繊維長(mm)を測定した。重量平均繊維長Lwは、0.48mmで、かつ、重量平均繊維長Lwと数平均繊維長Lnの比(Lw/Ln)は、1.8であった。
比較例4−1
参考例1で調整した熱可塑性樹脂を使用し、モデル筐体を射出成形した。製造した成形品の天面の厚みは、1.2mm、電波シールド性は、23dBであった。曲げ弾性率を測定するため、天面長手方向を0°として、0°、30°、60°、90°方向について、それぞれの角度で、試験片を切り出した。ただし、ボス、リブ、ヒンジ、ウェルドを含む部分は除外した。試験片を用い測定された曲げ弾性率は、45°方向で最小となり、その値は、6GPaであった。
実施例4−1、実施例4−2、および、実施例4−3の一体化成形品は、優れた電磁波シールド性と剛性を有する構造体と、複雑形状の成形に有利な射出成形から形成される構造体からなり、ノートパソコンなどの電気・電子機器の筐体に好適であることが確認された。
一方、比較例4−1の一体化成形品では、電磁波シールド性、剛性が不十分であり、電気・電子機器に実装した場合に、電磁波障害、内部の電子回路の保護など、近年の電気・電子機器の筐体用途などの厳しい要求に応えるには不十分であることが判明した。
本発明の熱接着用基材を適用した積層体は、他の構造部材と容易に一体化でき、かつ、接合される部材間の優れた接着強度有する。本発明の熱接着用基材を適用した積層体を用いた一体化成形品は、力学特性、軽量性に優れ、かつ、廃棄時には容易に解体ができる。本発明の熱接着用基材は、優れた接着強度を有し、積層体と他の部材とを一体化する際の接着材料として好適である。
は、本発明における積層体の一態様の模式斜視図である。 は、図1の積層体の表層部の一部の拡大断面図である。 は、本発明における積層体の実施例の構造の第1の検証試験により得られる試験片の模式断面図である。 は、積層体の比較実施例の構造の第1の検証試験により得られる試験片の模式断面図である。 は、本発明における積層体の実施例の構造の第2の検証試験により得られる試験片の模式断面図である。 は、積層体の比較実施例の構造の第2の検証試験により得られる試験片の模式断面図である。 は、本発明における積層体の実施例の構造の第3の検証試験により得られる試験片の模式斜視図である。 は、積層体のISO4587による接着強度試験をする際の試験片の調整の仕方を説明する斜視図である。 は、本発明における一体化成形品の一実施例としての電気・電子機器用の筐体のモデルの斜視図である。 は、積層体の垂直接着強度を測定するための試験機の要部の模式正面図である。 は、本発明における一体化成形品の製造工程を説明するためのフロー図である。 は、従来の一体化成形品の製造工程を説明するためのフロー図である。 は、本発明における一体化成形品の他の実施例としての電気・電子機器の筐体のモデルの分解斜視図である。 は、本発明における積層体の他の実施例の分解斜視図である。 は、本発明における一体化成形品の更に他の実施例としての電気・電子機器の筐体のモデルの斜視図である。 は、本発明における一体化成形品の更に他の実施例としての電気・電子機器の筐体のモデルの分解斜視図である。
符号の説明
1a 積層体5の第1層
1b 積層体5の第5層
2a 積層体5の第2層
2b 積層体5の第4層
3 積層体5の第3層
4a 積層体5の下面
4b 積層体5の上面
5 積層体
11 熱硬化性樹脂層
12 熱可塑性樹脂層
13 強化繊維群
14 熱硬化性樹脂層11、熱可塑性樹脂層12の界面
21 熱硬化性樹脂層
22 熱可塑性樹脂層
23 強化繊維群
24 熱硬化性樹脂層21と熱可塑性樹脂層22との界面
31 熱硬化性樹脂層
32 熱可塑性樹脂層
33 強化繊維群
34 熱硬化性樹脂層31と熱可塑性樹脂層32との界面
41 熱硬化性樹脂層
43 強化繊維群
44 熱硬化性樹脂層41と除去された熱可塑性樹脂層との界面であった面
45 フィラメント43bの間の空隙
51 熱硬化性樹脂層
53 強化繊維群
54 界面
61 被着体B1の端部に積層体A1の表面が接合されていた接合部分
62 積層体A1の表層部の一部の残査
101 天板
102 枠体
111a 引張試験装置の治具
111b 引張試験装置の治具
112 試験片TP2の接着面
61 熱硬化性樹脂
62 熱可塑性樹脂
63 強化繊維束
60 プリプレグ
70 積層体成型工程
71 プリプレグカット工程
72 積層工程
73 加熱成形工程
74 所定の大きさに切り出す後加工工程
80 一体化工程
81 積層体Aを射出成形用金型にインサートする工程
82 熱可塑性樹脂83を射出し、アウトサート成形させる工程
83 熱可塑性樹脂
90 後処理工程
91 補修工程
92 製品
120 射出成形工程
121 熱可塑性樹脂
122 熱可塑性樹脂121を射出成形する工程
123 成形される部材
130 一体化工程
131 プライマー処理工程
132 接着剤塗布工程
133 構造部材PBに、積層体PAが接着せしめられる工程
134 治具固定工程
135 乾燥工程
136 製品
140 後処理工程
141 補修工程
142 製品
151 ヒンジ部
152 ボス部
161−166 プリプレグシート
171 熱接着用基材
181 天面
A1 本発明における積層体(第1層1a)
B1 被着体
A2 本発明における積層体
B2 構造部材
C2 一体化成形品
C3 電磁波シールド成形品
A3 第1の構造体
B3 第2の構造体
A4 積層体
A5 積層体
B5 被着部材
C5 一体化成形品
A43 第1の構造体
B43 第2の構造体
C43 電磁波シールド成形品
PA 従来の積層体
PB 構造部材
PC 一体化成形品
TP2 垂直接着強度の測定用の試験片

Claims (6)

  1. 同種および/または異種の被着材を熱接着するための基材であって、明細書中に定義された積層体試験片のISO4587に基づく接着強度(S)が、温度100℃において、5.0MPa以上であり、かつ、温度200℃において、1.0MPa以下である熱接着用基材。
  2. 温度t(℃)のときの接着強度をS(MPa)とし、温度(t+30)(℃)のときの接着強度をS(t+30)(MPa)としたとき、S≧3×S(t+30)なる関係を満足する温度tが、100℃乃至200℃である請求項1に記載の熱接着用基材。
  3. 前記基材が、共重合ポリアミド系樹脂からなる請求項1に記載の熱接着用基材。
  4. 前記共重合ポリアミドが、3元共重合ポリアミド6/66/610を構成成分として含む請求項3に記載の熱接着用基材。
  5. 前記基材が、不織布またはフィルムの形態を有し、目付が、1乃至100g/mである請求項1に記載の熱接着用基材。
  6. 多数本の連続したフィラメントからなる強化繊維群に硬化前の熱硬化性樹脂が含浸せしめられてなるプリプレグの表面に、請求項1に記載の熱接着用基材が配置せしめられ、前記熱硬化性樹脂の硬化反応時に、もしくは、硬化反応前の予熱時に、前記熱接着用基材の熱可塑性樹脂を前記強化繊維群に含浸せしめてなる積層体の製造方法。
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