JP2007091981A - メタクリル系樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 透明性、耐候性、硬度、耐衝撃性、耐折曲げ割れ性および成形性に優れたフィルムを作成するに好適な樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 メタクリル酸アルキルエステルを主成分とするメタクリル酸エステル系重合体(A)が、多官能性単量体を含むアクリル酸アルキルエステルを主成分とするアクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)の存在下で重合されることにより得られるメタクリル系樹脂(C)であって、平均粒子径が600Å〜2500Å、アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)含有量が5〜45重量%、かつ、一般式(1)で示す紫外線吸収剤0.01〜30重量部を、少なくともアクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)に共重合してなることを特徴とするメタクリル系樹脂組成物をフィルム化することにより、上記特性を有するフィルムを得ることができる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、紫外線遮蔽性能を有するメタクリル系樹脂およびそれを成形してなるフィルムに関する。
透明性、耐候性、硬度および耐衝撃性に優れた架橋弾性体を含むメタクリル系樹脂組成物は、一般的に紫外線吸収剤を混合して用いられている。特に、フィルムとして使用する場合には、フィルムの厚みを薄くするほど大量の紫外線吸収剤を添加する必要がある。
しかし、一般の紫外線吸収剤はメタクリル系樹脂との相溶性が悪く、低分子量であるため、押出成形時にその一部が揮発して紫外線遮蔽性能が発揮できない、さらに、長期使用時にメタクリル系樹脂から逸散するため、紫外線遮蔽性能が経時的に低下する問題を抱えていた。
また、押出成形等の方法によりフィルムを成形した場合、押出機のベント詰まり、Tダイでの目やに付着、冷却ロールの白化等の問題を生じ、さらに多量の添加が必要な場合にはフィルム表面の粗面化、フィルム表面への溶出(ブリードアウト)等の問題を生じていた。
これらの問題点を解決するために、特定の紫外線吸収剤を選定し添加する方法が一般的に知られている。しかし、特定の紫外線吸収剤を単に添加する方法では、得られたフィルムは、温水浸漬時や屋外暴露時に添加している紫外線吸収剤が溶出(ブリードアウト)するため、紫外線遮蔽性能が低下したり、白化したりする等の問題が解決できていなかった。
これに対して、メタクリル系樹脂に対し、紫外線吸収性を示す特定の単量体を共重合する方法(特許文献1〜4)が提案されている。しかし、これらの方法により得られるフィルムは、耐折曲げ割れ性、成形性(フィルムの薄膜化)等が満足できていない。
特開昭60−38411号 特開平5−255447号 特開平9−194542号 特開平8−319326号
したがって、透明性、硬度、耐衝撃性、耐折曲げ割れ性、成形性および耐候性に優れたフィルムを形成しうるメタクリル系樹脂組成物が求められていた。
そこで、本発明者らは鋭意検討した結果、メタクリル酸エステル系重合体および特定の化学構造式を有する紫外線吸収性を示す単量体を共重合したアクリル酸エステル系架橋弾性体粒子からなる、特定の層構造および粒子径を有するメタクリル系樹脂組成物から得られるフィルムが、透明性、硬度、耐衝撃性、耐折曲げ割れ性および成形性に優れ、さらに耐候性試験後の耐折曲げ割れ性においても優れることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、
メタクリル酸エステル系重合体(A)をアクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)の存在下において重合することによって得られるメタクリル系樹脂(C)において、
メタクリル酸エステル系重合体(A)が、メタクリル酸アルキルエステル20〜100重量%、およびアクリル酸アルキルエステル0〜80重量%を含む単量体混合物を共重合することにより得られ、
アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)が、(a)アクリル酸アルキルエステル50〜100重量%およびメタクリル酸アルキルエステル50〜0重量%を含む単量体混合物、(b)1分子あたり2個以上の非共役二重結合を有する多官能性単量体、(c)メタクリル系樹脂(C)100重量部に対して、一般式(1)で示す紫外線吸収剤0.01〜30重量部、を共重合することにより得られ、
且つメタクリル系樹脂(C)に対するアクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)の含有量が5〜60重量%であることを特徴とするメタクリル系樹脂。
Figure 2007091981
(式中、XはHまたはハロゲン、R1はH、メチルまたは炭素数4〜6のt−アルキル基、R2は直鎖または枝分かれ鎖状の炭素数2〜10のアルキレン基、R3はHまたはメチルである。)(請求項1)、
アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)の平均粒子径が600Å〜2500Åである事を特徴とする請求項1に記載のメタクリル系樹脂(請求項2)、
請求項1又は請求項2に記載のメタクリル系樹脂(C)を40重量%以上含む事を特徴とするメタクリル系樹脂組成物(請求項3)、
請求項3に記載の樹脂組成物を成形してなるフィルム(請求項4)、
請求項3に記載のメタクリル系樹脂組成物を共押出しによって熱可塑性樹脂に積層することを特徴とする共押出成形品(請求項5)、
熱可塑性樹脂が、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物、ポリカーボネート系樹脂組成物、ABS系樹脂組成物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項5記載の共押出成形品(請求項6)、
請求項4のフィルムを被積層体に積層して得られる積層品。(請求項7)、
に関する。
本発明のメタクリル系樹脂およびそれから得られるフィルムは、耐候性試験後の耐折曲げ割れ性に優れたものである。
本発明におけるメタクリル系樹脂(C)は、メタクリル酸エステル系重合体(A)およびアクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)からなるものであり、アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)の存在化においてメタクリル酸エステル系重合体(A)を重合することにより得られるものである。アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)は、1分子あたり2個以上の非共役な反応性二重結合を有する多官能性単量体が共重合されているため、得られる重合体が架橋弾性を示す。また、アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)の重合時に反応せずに残った多官能性単量体の一方の反応性官能基(二重結合)がグラフト交叉点となって、メタクリル酸エステル系重合体(A)の重合時に、一定割合のメタクリル酸エステル系重合体(A)が、アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)にグラフト化されることを特徴とする。このことにより、得られたメタクリル系樹脂(C)を加工成形する際、アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)が、メタクリル系樹脂(C)中に不連続かつ均一に分散する。
本発明におけるメタクリル酸エステル系重合体(A)は、メタクリル酸アルキルエステル20〜100重量%およびアクリル酸アルキルエステル0〜80重量%を含む単量体混合物を少なくとも1段以上で重合させてなるものである。より好ましくは、メタクリル酸アルキルエステル60〜100重量%、およびアクリル酸アルキルエステル0〜40重量%である。アクリル酸アルキルエステルが0〜80重量%の範囲であれば、得られるメタクリル系樹脂組成物から形成しうるフィルムの耐熱性が良好となり、好ましい。
本発明におけるメタクリル酸エステル系重合体(A)を構成するメタクリル酸アルキルエステルは、重合反応性やコストの点からアルキル基の炭素数が1〜12であるものが好ましく、直鎖状でも分岐状でもよい。その具体例としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル等があげられ、これらの単量体は1種または2種以上が併用されてもよい。
本発明におけるメタクリル酸エステル系重合体(A)を構成するアクリル酸アルキルエステルは、重合反応性やコストの点からアルキル基の炭素数が1〜12であるものが好ましく、直鎖状でも分岐状でもよい。その具体例としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル等があげられ、これらの単量体は1種または2種以上が併用されてもよい。
また、本発明のメタクリル酸エステル系重合体(A)においては、必要に応じて、メタクリル酸アルキルエステルおよびアクリル酸アルキルエステルに対し共重合可能なエチレン系不飽和単量体を共重合してもかまわない。これらの共重合可能なエチレン系不飽和単量体としては、例えば、塩化ビニル、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル誘導体、塩化ビニリデン、弗化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン、アクリル酸、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カルシウム等のアクリル酸およびその塩、アクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸グリシジル、アクリルアミド、N−メチロ−ルアクリルアミド等のアクリル酸アルキルエステル誘導体、メタクリル酸、メアクリル酸ナトリウム、メタアクリル酸カルシウム等のメタクリル酸およびその塩、メタクリルアミド、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸グリシジル等のメタクリル酸アルキルエステル誘導体等があげられ、これらの単量体は2種以上が併用されてもよい。
本発明において用いられるアクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)は、アクリル酸アルキルエステル50〜100重量%およびメタクリル酸アルキルエステル50〜0重量%を含む単量体混合物、1分子あたり2個以上の非共役二重結合を有する多官能性単量体からなる混合物、および一般式(1)で示す紫外線吸収剤を少なくとも1段以上で共重合させてなるものである。
Figure 2007091981
(式中、XはHまたはハロゲン、R1はH、メチルまたは炭素数4〜6のt−アルキル基、R2は直鎖または枝分かれ鎖状の炭素数2〜10のアルキレン基、R3はHまたはメチルである。)
本発明のアクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)において用いられる単量体混合物は、より好ましくは、アクリル酸アルキルエステル60〜100重量%およびメタクリル酸アルキルエステル40〜0重量%である。メタクリル酸アルキルエステルが50〜0重量%の範囲であれば、得られるメタクリル系樹脂から形成しうるフィルムの耐折曲げ割れ性が良好となり、好ましい。
また、本発明のアクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)においては、必要に応じて、メタクリル酸アルキルエステルおよびアクリル酸アルキルエステルと共重合可能なエチレン系不飽和単量体を共重合してもかまわない。
本発明のアクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)において用いられる多官能性単量体としては、アリルメタクリレ−ト、アリルアクリレ−ト、トリアリルシアヌレ−ト、トリアリルイソシアヌレ−ト、ジアリルフタレ−ト、ジアリルマレ−ト、ジビニルアジペ−ト、ジビニルベンゼンエチレングリコ−ルジメタクリレ−ト、ジビニルベンゼンエチレングリコ−ルジアクリレ−ト、ジエチレングリコ−ルジメタクリレ−ト、ジエチレングリコ−ルジアクリレ−ト、トリエチレングリコ−ルジメタクリレ−ト、トリエチレングリコ−ルジアクリレ−ト、トリメチロ−ルプロパントリメタクリレ−ト、トリメチロ−ルプロパントリアクリレ−ト、テトラメチロ−ルメタンテトラメタクリレ−ト、テトラメチロ−ルメタンテトラアクリレ−ト、ジプロピレングリコ−ルジメタクリレ−トおよびジプロピレングリコ−ルジアクリレ−ト等があげられ、これらは2種以上が併用されてもよい。
本発明のアクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)における多官能性単量体の添加量は、前記単量体混合物100重量部に対して、0.05〜20重量部が好ましく、0.1〜10重量部がより好ましい。多官能性単量体の添加量が0.05〜20重量部の範囲であれば、メタクリル系樹脂から形成しうるフィルムの耐衝撃性および耐折曲げ割れ性を両立することができ、好ましい。
本発明のアクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)で用いられるアクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステルおよび、これらと共重合可能なエチレン系不飽和単量体の具体例は、前記メタクリル酸エステル系重合体(A)の説明において、列挙したものを同様に使用する事ができる。本発明におけるアクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)の平均粒子径は、600Å〜2500Åが好ましく、700Å〜2000Åがさらに好ましい。アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)が600Å〜2500Åであれば、得られるメタクリル系樹脂から形成しうるフィルムの透明性、耐衝撃性、耐折曲げ割れ性が良好となり、好ましい。
本発明におけるアクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)の含有量は、メタクリル系樹脂(C)全体を100重量%とした場合に、5〜60重量%が好ましく、10〜40重量%がより好ましく、15〜35重量%がさらに好ましい。アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)の含有量が5〜60重量%であれば、得られるメタクリル系樹脂から形成しうるフィルムの耐衝撃性、耐折曲げ割れ性、及びフィルムの硬度、成形性が良好となり、好ましい。
本発明における一般式(1)で示す紫外線吸収剤は、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール類であり、2−(2’−ヒドロキシ−5’−アクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシプロピルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチル−3’−t−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。コストおよび取り扱い性から、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールが好ましい。
本発明における一般式(1)で示す紫外線吸収剤の共重合比率は、アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)100重量部に対して、0.01〜30重量部が好ましく、0.01〜25重量部がより好ましく、0.01〜20重量部がさらに好ましく、0.05〜20重量部が特に好ましい。一般式(1)で示す紫外線吸収剤は、少なくともアクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)に共重合しているものであり、メタクリル酸エステル系重合体(A)に共重合していてもかまわない。一般式(1)で示す紫外線吸収剤の共重合比率が0.01〜30重量部の範囲であれば、得られるメタクリル系樹脂から形成しうるフィルムの耐衝撃性、耐折り曲げ割れ性、耐候試験後の耐折り曲げ割れ性が良好となり、好ましい。
本発明におけるメタクリル系樹脂(C)の製造方法は特に限定されず、乳化重合法、乳化−懸濁重合法、懸濁重合法、塊状重合法または溶液重合法がいずれも適用可能であるが、重合挙動の制御のし易さ等の観点から乳化重合法が特に好ましい。
乳化重合法により製造する場合、単量体混合物の水相への追加方法としては、単量体混合物の一部もしくは全部を同時に水相へ追加する一括追加や、単量体混合物を一定もしくは不連続の割合で少量ずつ追加していく連続追加が挙げられる。連続追加の場合、重合後のスケール(乳化ミセル外で重合した樹脂)を減少させるために、あらかじめ単量体混合物に水および乳化剤を添加して撹拌し、乳化させたものを追加していくことも可能である。
本発明における一般式(1)で示す紫外線吸収剤の共重合方法も特に限定されないが、アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)やメタクリル酸エステル系重合体(A)の製造中に共重合することが好ましい。共重合方法としては、乳化重合法、乳化−懸濁重合法、懸濁重合法、塊状重合法または溶液重合法が適用可能であるが、メタクリル系樹脂(C)の製造方法と同様の観点から乳化重合法が特に好ましい。
本発明のアクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)の重合における開始剤としては、本発明の目的を達する事ができれば特に制限はないが、有機系過酸化物、無機系過酸化物、アゾ化合物などの開始剤を使用することができる。具体的には、例えば、t−ブチルハイドロパ−オキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパ−オキサイド、スクシン酸パ−オキサイド、パ−オキシマレイン酸t−ブチルエステル、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物や、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物、さらにアゾビスイソブチロニトリル等の油溶性開始剤も使用される。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。これらの開始剤は、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルフォキシレート、アスコルビン酸、ヒドロキシアセトン酸、硫酸第一鉄、硫酸第一鉄とエチレンジアミン四酢酸2ナトリウムの錯体などの還元剤と組み合わせた通常のレドックス型開始剤として使用してもよい。
また、前記有機系過酸化物は、重合安定性、粒子径制御の点から、2価の鉄塩等の無機系還元剤および/またはホルムアルデヒドスルホキシル酸ソ−ダ、還元糖、アスコルビン酸等の有機系還元剤と組み合わせたレドックス系開始剤として使用するのが好ましい。
前記乳化重合に使用される界面活性剤も特に限定はなく、通常の乳化重合用の界面活性剤であれば使用することができる。具体的には、例えばアルキルスルフォン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、ジオクチルスルフォコハク酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、脂肪酸ナトリウム等の陰イオン性界面活性剤や、アルキルフェノ−ル類、脂肪族アルコ−ル類とプロピレンオキサイド、エチレンオキサイドとの反応生成物等の非イオン性界面活性剤等が示される。これらの界面活性剤は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。更に、アルキルアミン塩等の陽イオン性界面活性剤を使用してもよい。
乳化重合により得られたメタクリル系樹脂(C)のラテックスは、通常の凝固、洗浄および乾燥の操作により、または、スプレ−乾燥、凍結乾燥などによる処理により、メタクリル系樹脂(C)が水相より分離、回収される。
本発明のメタクリル系樹脂(C)には、必要に応じて、ポリグルタルイミド、無水グルタル酸ポリマー、ラクトン環化メタクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等を配合することも可能である。ブレンドの方法は本発明の目的を達する事が出来るのであれば、特に限定されない。
ブレンドにより得られた樹脂中の本発明のメタクリル系樹脂(C)の割合は、40〜100重量%が好ましく、50〜90重量%がより好ましく、60〜80重量%がさらに好ましい。ブレンドにより得られる樹脂におけるメタクリル系樹脂(C)の割合が40〜100重量%の範囲であれば、得られるフィルムの耐衝撃性、耐折曲げ割れ性が良好となり、好ましい。
本発明のメタクリル系樹脂(C)には、着色のために無機系顔料または有機系染料を、熱や光に対する安定性を更に向上させるために抗酸化剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤などを、あるいは、抗菌、脱臭剤、滑剤等を、単独または2種以上組み合わせて添加してもよい。
本発明で得られるメタクリル系樹脂(C)は、射出成形、押出成形、ブロー成形、圧縮成形などの各種プラスチック加工法によって様々な成形品に加工できる。
本発明のメタクリル系樹脂(C)は、特にフィルムとして有用であり、例えば、通常の溶融押出法であるインフレーション法やTダイ押出法、あるいはカレンダー法、更には溶剤キャスト法等により良好に加工される。また、必要に応じて、フィルムを成形する際、フィルム両面をロールまたは金属ベルトに同時に接触させることにより、特にガラス転移温度以上の温度に加熱したロールまたは金属ベルトに同時に接触させることにより、表面性のより優れたフィルムを得ることも可能である。また、目的に応じて、二軸延伸などによるフィルムの改質も可能である。
本発明のメタクリル系樹脂(C)から得られるフィルムの厚みは、10〜300μmが好ましく、10〜200μmがより好ましい。フィルムの厚みが10〜300μmの範囲であれば、フィルムの加工性、及びフィルムの透明性が良好となり、好ましい。
また、本発明のメタクリル系樹脂(C)より得られたフィルムは、必要に応じて、フィルム表面の光沢を低減させることができる。その方法は、本発明の目的を達する事が出来れば特に制約はないが、例えば、メタクリル系樹脂(C)に無機充填剤または架橋性高分子粒子を混練する方法等で実施することが可能である。また、得られるフィルムをエンボス加工により、フィルム表面の光沢を低減させることも可能である。
本発明のメタクリル系樹脂(C)は、共押出しによって熱可塑性樹脂に積層することができる。共押出しする方法は、特に限定されないが、通常の共押出し成形、多層押出し成形が有用であり、例えば、通常の溶融共押出し法である異型押出し法やTダイ押出し法、あるいはインフレーション法やカレンダー法等により良好に加工される。また、得られる成形品がフィルムやシートの場合は、必要に応じて、両面をロールまたは金属ベルトに同じに接触させることにより、特にガラス転移温度以上の温度に加熱したロールまたは金属ベルトに同じに接触させることにより、表面性のより優れたフィルムやシートを得ることも可能である。また、目的に応じて、二軸延伸による多層シートの改質も可能である。
本発明のメタクリル系樹脂(C)が共押出しできる熱可塑性樹脂としては、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ABS系樹脂、AS系樹脂、MBS系樹脂、MS系樹脂、スチレン系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリグルタルイミド、無水グルタル酸ポリマー、ラクトン環化メタクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等の組成物があげられ、これらの組成物は2種以上が併用されてもよい。相溶性と工業的観点から、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ABS系樹脂の組成物が好ましい。
本発明におけるポリ塩化ビニル系樹脂には、塩化ビニル単独重合体だけでなく、塩化ビニルおよび酢酸ビニル等の他の単量体との共重合体、後塩素化した塩素化塩化ビニル樹脂も含まれる。また、軟質塩化ビニル樹脂も含まれる。
共押出しする際の本発明のメタクリル系樹脂(C)の厚みは、10μm〜5mmが好ましく、10μm〜3mmがより好ましい。厚みが10μm未満では成形が困難となる傾向があり、5mmを超えると、透明性が低下する傾向がある。
本発明のメタクリル系樹脂組成物より得られるフィルムは、被積層体に積層して用いることができる。被積層体としては、本発明の目的を達する事が出来れば特に制約はないが、金属、陶器などの無機物品や、プラスチック、木材、皮革などの有機物品が挙げられる。フィルムの積層方法としては、積層成形や、被積層体に接着剤を塗布した後、フィルムを載せて乾燥させ貼り合わせるウエットラミネ−トや、ドライラミネ−ト、エキストル−ジョンラミネ−ト、ホットメルトラミネ−トなどがあげられる。
プラスチック部品にフィルムを積層する方法としては、フィルムを金型内に配置しておき、射出成形にて樹脂を充填するインサート成形またはラミネートインジェクションプレス成形や、フィルムを予備成形した後に金型内に配置し、射出成形にて樹脂を充填するインモールド成形などがあげられる。
本発明のメタクリル系樹脂組成物から得られるフィルム積層品は、家具や自動車内装材,自動車外装材などの塗装代替用途、屋根、雨樋、外壁、柵、杭、窓枠、浴室設備、壁紙、床材などの建材用部材、日用雑貨品、家具や電気機器のハウジング、ファクシミリなどのOA機器のハウジング、電気または電子装置の部品などに使用することができる。また、成形品としては、照明用レンズ、自動車ヘッドライト、光学レンズ、光ファイバ、光ディスク、液晶用導光板、液晶用フィルム、滅菌処理の必要な医療用品、電子レンジ調理容器、家電製品のハウジング、玩具またはレクリエーション品目などに使用することができる。
次に、本発明を実施例に基づき、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
なお、以下の実施例および比較例で測定した物性の各測定方法はつぎのとおりである。
(重合転化率の評価)
得られたメタクリル系樹脂(C)ラテックスを、熱風乾燥機内にて120℃で1時間乾燥して固形成分量を求め、100×固形成分量/仕込み単量体(%)により重合転化率(%)を算出した。
(アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)の平均粒子径の評価)
得られたフィルムを、透過型電子顕微鏡(日本電子製 JEM−1200EX)にて、加速電圧80kV、RuO4染色超薄切片法で撮影し、得られた写真からアクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)画像を無作為に100個選択し、それらの粒子径の平均値を求めた。
(ラテックスの平均粒子径の評価)
得られたメタクリル系樹脂(C)ラテックスを固形分濃度0.02%に希釈したものを試料として、分光光度計(HITACHI製、Spectrophotometer U−2000)を用いて546nmの波長での光線透過率より、平均粒子径を求めた。
(透明性の評価)
得られたフィルムの透明性は、JIS K6714に準じて、温度23℃±2℃、湿度50%±5%にてヘイズを測定した。
(鉛筆硬度の評価)
得られたフィルムの鉛筆硬度を、JIS S−1005に準じて測定した。
(耐折曲げ割れ性の評価)
得られたフィルムを25℃雰囲気下において1回180度折り曲げて、折り曲げ部の変化を目視で評価した。
○:割れが認められない
×:割れが認められる。
(成形性の評価)
フィルム成形を3時間連続して行い、その運転状況を観察し、以下の基準により評価をした。
○:フィルムの厚みが均一で、切れずに成形できる。
×:フィルムの厚みが不均一またはフィルム切れが発生する。
(耐候性試験後の耐折曲げ割れ性の評価)
得られたフィルムを高照度キセノン(スガ試験機(株)製、SC750−WA型)にて、89℃、162W/m2の条件で、430MJおよび580MJのエネルギー量に達するまで照射し、照射後のフィルムを耐折曲げ割れ性の評価方法に従い評価した。
(紫外線吸収剤のブリード性の評価)
フィルム成形を3時間連続して行い、冷却第一ロールへの紫外線吸収剤の付着状況を観察し、以下の基準により評価をした。
○:冷却ロールへの付着が認められない。
×:冷却ロールへの付着が認められる。
また、製造例、実施例および比較例中の「部」は重量部、「%」は重量%を表す。また、略号はそれぞれ下記の物質を表す。
BA:アクリル酸ブチル
MMA:メタクリル酸メチル
CHP:クメンハイドロパーオキサイド
tDM:ターシャリドデシルメルカプタン
AlMA:メタクリル酸アリル
RUVA:2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2−H−ベンゾトリアゾール(大塚化学(株)製、RUVA−93)。
(製造例1)メタクリル系樹脂組成物の製造
攪拌機付き8L重合装置に、以下の物質を仕込んだ。
脱イオン水 200部
ジオクチルスルフォコハク酸ナトリウム 0.25部
ソディウムホルムアルデヒドスルフォキシレ−ト 0.15部
エチレンジアミン四酢酸−2−ナトリウム 0.001部
硫酸第一鉄 0.00025部
重合機内を窒素ガスで充分に置換し実質的に酸素のない状態とした後、内温を60℃にし、表1中(1)に示した単量体混合物(B)<すなわち、BA90重量%およびMMA10重量%からなる単量体混合物100部に対しAlMA1部およびCHP0.2部からなる単量体混合物30部、およびRUVA(一般式(1)中の、XがH、R1がH、R2がメチレン基、R3がメチル基)0.5部>を10部/時間の割合で連続的に添加し、添加終了後、さらに0.5時間重合を継続し、アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)を得た。重合転化率は99.5%であった。
Figure 2007091981
その後、ジオクチルスルフォコハク酸ナトリウム0.05部を仕込んだ後、内温を60℃にし、表1中(1)に示した単量体混合物(A)<すなわち、BA10重量%およびMMA90重量%からなる単量体混合物100部に対しtDM0.5部およびCHP0.5部からなる単量体混合物70部>を10部/時間の割合で連続的に添加し、さらに1時間重合を継続し、メタクリル系樹脂(C)を得た。重合転化率は98.5%であった。得られたラテックスを塩化カルシウムで塩析、凝固し、水洗、乾燥して樹脂粉末(1)を得た。
Figure 2007091981
(製造例2〜4、6〜9、12)
単量体組成を表1のように変更した以外は、製造例1と同様に重合を行い、凝固、水洗、乾燥して樹脂粉末(2)〜(4)、(6)〜(9)および(12)を得た。但し、製造例(7)では重合中にラテックスが凝集した為、樹脂粉体(7)が得られなかった。
(製造例5、10、11、13)
最初に仕込むジオクチルスルフォコハク酸ナトリウムおよび単量体組成を表1のように変更した以外は、製造例1と同様に重合を行い、ジオクチルスルフォコハク酸ナトリウム量の変更によりラテックスの平均粒子径を変更した樹脂を得、凝固、水洗、乾燥して、樹脂粉末(5)、(10)、(11)および(13)を得た。
(製造例14)
単量体混合物(B)および単量体混合物(B)重合後のジオクチルスルフォコハク酸ナトリウム0.05部を仕込まない以外は、製造例1と同様に重合を行い、凝固、水洗、乾燥して樹脂粉末(15)を得た。
(製造例15)
懸濁重合で製造したMMA−EA共重合体(住友化学(株)製スミペックスEX:MMA約95重量%およびEA約5重量%からなる共重合体、還元粘度0.30dl/g)を用いた。
(実施例1、3〜8、比較例2〜5)
得られた樹脂粉末を、40ミリφベント付き単軸押出機を用いてシリンダ温度を240℃に設定して溶融混練を行い、ペレット化した。また、製造例(6)は、得られた樹脂粉末(6)に紫外線吸収剤として構造式(2)で示されるチヌビンP(チバスペシャルケミカル社製)を2部ブレンドしてから溶融混練を行い、ペレット化した。得られたペレットを、Tダイ付き40ミリφ押出機(ナカムラ産機(株)製、NEX040397)を用いて、ダイス温度240℃にて成形し、厚み100μmのフィルムを得た。
Figure 2007091981
(実施例2、比較例1)
得られた樹脂粉末を、表2に示すように配合し、混合機((株)カワタ製、スーパーフローター型式SFC−50)にて3分間ブレンドした以外は実施例1と同様にペレット化、成形し、厚み100μmのフィルムを得た。
得られたフィルムを用いた種々の特性を評価し、その結果を表2に示した。
Figure 2007091981
メタクリル系樹脂(C)の単量体組成比および紫外線吸収剤の共重合条件が、本発明の範囲を外れると、耐候性試験後の耐折り曲げ割れ性に優れたフィルムを得ることができなかった。

Claims (7)

  1. メタクリル酸エステル系重合体(A)をアクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)の存在下において重合することによって得られるメタクリル系樹脂(C)において、
    メタクリル酸エステル系重合体(A)が、メタクリル酸アルキルエステル20〜100重量%、およびアクリル酸アルキルエステル0〜80重量%を含む単量体混合物を共重合することにより得られ、
    アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)が、(a)アクリル酸アルキルエステル50〜100重量%およびメタクリル酸アルキルエステル50〜0重量%を含む単量体混合物、(b)1分子あたり2個以上の非共役二重結合を有する多官能性単量体、(c)メタクリル系樹脂(C)100重量部に対して、一般式(1)で示す紫外線吸収剤0.01〜30重量部、を共重合することにより得られ、
    且つメタクリル系樹脂(C)に対するアクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)の含有量が5〜60重量%であることを特徴とするメタクリル系樹脂。
    Figure 2007091981
    (式中、XはHまたはハロゲン、R1はH、メチルまたは炭素数4〜6のt−アルキル基、R2は直鎖または枝分かれ鎖状の炭素数2〜10のアルキレン基、R3はHまたはメチルである。)
  2. アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)の平均粒子径が600Å〜2500Åである事を特徴とする請求項1に記載のメタクリル系樹脂。
  3. 請求項1又は請求項2に記載のメタクリル系樹脂(C)を40重量%以上含む事を特徴とするメタクリル系樹脂組成物。
  4. 請求項3に記載のメタクリル系樹脂組成物を成形してなるフィルム。
  5. 請求項3に記載のメタクリル系樹脂組成物を共押出しによって熱可塑性樹脂に積層することを特徴とする共押出成形品。
  6. 熱可塑性樹脂が、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物、ポリカーボネート系樹脂組成物、ABS系樹脂組成物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項5記載の共押出し成形品。
  7. 請求項4のフィルムを被積層体に積層して得られる積層品。
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