JP2007073571A - 2次元フォトニック結晶面発光レーザ光源 - Google Patents

2次元フォトニック結晶面発光レーザ光源 Download PDF

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Abstract

【課題】 面垂直方向への光の取り出し効率が高い2次元フォトニック結晶面発光レーザ光源を提供する。
【解決手段】 板状の母材内に空孔25を多数、周期的に配置してなる2次元フォトニック結晶層24と、2次元フォトニック結晶層24の一方の側に設けた活性層23と、を備えるレーザ光源において、空孔25を、円形等の所定の断面形状を有する柱状であってその柱の主軸が母材の表面に対して傾きを持つように形成する。このような2次元フォトニック結晶層24を有する2次元フォトニック結晶面発光レーザ光源は、面垂直方向のQ値であるQ値がレーザ光の発振に適した値(数千)になり、面垂直方向への光の取り出し効率が高い。
【選択図】 図4

Description

本発明は、平面状の光源から面に垂直な方向にレーザ光を放射する面発光レーザ光源に関する。
従来より、ファブリ・ペロー共振器を用いたファブリ・ペロー型レーザ光源や、回折格子を用いた分布帰還(Distributed Feedback; DFB)型レーザ光源が用いられている。これらのレーザ光源はいずれも、共振や回折により所定の波長の光を増幅してレーザ光を発振させるものである。
それに対して、近年、フォトニック結晶を用いた新しいタイプのレーザ光源が開発されている。フォトニック結晶は、誘電体から成る母材に周期構造を人工的に形成したものである。周期構造は一般に、母材とは屈折率が異なる領域(異屈折率領域)を母材内に周期的に設けることにより形成される。この周期構造により、結晶内でブラッグ回折が生じ、また、光のエネルギーにエネルギーバンドギャップが現れる。フォトニック結晶レーザ光源には、バンドギャップ効果を利用して点欠陥を共振器として用いるものと、光の群速度が0となるバンド端の定在波を利用するものがある。いずれも所定の波長の光を増幅してレーザ発振を得るものである。
特許文献1には、2枚の電極の間に発光材料を含む活性層を設け、その活性層の近傍に2次元フォトニック結晶を形成したレーザ光源が記載されている。この2次元フォトニック結晶には、半導体層に円柱状(層の面内では円形)の空孔が周期的(三角格子状、正方格子状、六角格子状等)に設けられ、屈折率の分布が2次元的な周期性を持っている。この周期を、電極からのキャリアの注入により活性層で生成される光の媒質内波長に一致させておくことにより、2次元フォトニック結晶の内部に2次元定在波が形成され、それにより光が強められてレーザ発振する。
図1に、特許文献1に記載の2次元フォトニック結晶の内部に形成される定在波を模式的に示す。この図では結晶面内の一方向(x方向とする)の定在波のみを1次元的に示しているが、例えば正方格子の場合にはそれに垂直な方向にも定在波が形成される。電場のy成分に着目すると、この定在波は、2次元フォトニック結晶11内の空孔12部分に節をもつものと腹をもつものの2つのモードを形成する。ある空孔12の中心を通る軸(z軸)を対称軸と定義すると、その軸に関して前者は反対称であり、後者は対称である。ここで外部平面波との結合を考えると、z方向に伝播する平面波の分布関数は、x方向に関しては一様であるのに対し、対称軸に関しては、反対称モードでは奇関数、対称モードでは偶関数となる。2次元フォトニック結晶の大きさが無限であると仮定すると、対称モードでは外部平面波との重なり積分が0ではないため、面垂直方向への1次回折光が生じる。それに対して、反対称モードでは外部平面波との重なり積分が0になるため、面垂直方向への1次回折光が生じない。そのため、この反対称モードは面垂直方向に取り出すことができない。
実際には2次元フォトニック結晶の大きさは有限であるため、反対称モードの光も、対称性が崩れ、面垂直方向に取り出すことができる。しかしその場合においても、2次元フォトニック結晶の中心では、対称性が高いため面垂直方向に強い強度で光を取り出すことができない。
特許文献2には、並進対称性はあるが回転対称性がない格子構造を形成することにより、結晶の母体に平行な面内での対称性を崩した2次元フォトニック結晶を有する面発光レーザ光源について記載されている。このような対称性は、例えば空孔を正方格子状に配置して、各空孔の平面形状を正三角形にすることにより形成される。このレーザ光源では、2次元フォトニック結晶の格子構造の対称性が低いため、2次元フォトニック結晶の中心付近においても、反対称モードの光が打ち消されず面垂直方向に強い強度で光を取り出すことができる。
特開2000-332351号公報([0037]〜[0056],図1) 特開2004-296538号公報([0026]〜[0037],図1〜5)
レーザ光源の効率を示す指針の1つに、レーザ光源に注入する電流の増加分を分母とし、その電流増加による面垂直方向への光の出力の増加分を分子として表される微分量子効率ηdがある。微分量子効率は面垂直方向のQ値であるQ、側面方向のQ値であるQ//、内部吸収や散乱損失を表す無次元因子αを用いて表される
Figure 2007073571
に比例する。微分量子効率を向上させるには、1/Q//+αを小さくすると共に、1/Qを大きく、即ちQを小さくすることが有効である。但し、Qが小さすぎるとレーザ発振させることができないため、Q値の大きさは数千程度であることが望ましい。なお、ここで定義したQは有限周期構造(有限の大きさ)を持つ2次元フォトニック結晶に対するものであるが、以下では、Qは無限周期構造に対して定義されたものとして取り扱う。無限周期構造のQは有限周期構造のQと相関があるため、計算が容易な無限周期構造のQを用いて議論しても本質は損なわれない。
また、レーザ光源の効率を高めるためには、レーザ発振に利用するフォトニックバンドの選択に留意する必要がある。図2に、空孔を正方格子状に配置した2次元フォトニック結晶のフォトニックバンド図を示す。この2次元フォトニック結晶では、k=0(Γ点)付近に4本のバンドが形成される。これらのバンドのうち低エネルギー(低周波数)側の2本のバンドのバンド端A, Bがレーザ発振に寄与する。このうちバンド端BはΓ点付近で平らな分散関係を示すことから、現実の有限周期構造ではΓ点以外の波数をもつ光がより多く混在する。Γ点以外の波数をもつ光は対称性が低いため、面垂直方向には閉じ込められない。従って現実のデバイスでは通常、バンド端Bはバンド端Aに比べてQ値が低くなり、バンド端Aが発振モードとなる。なお、図2では空孔の平面形状を楕円形とした場合の計算結果を示したが、空孔が他の形状である場合にも基本的には同様である。
特許文献2に記載の2次元フォトニック結晶面発光レーザ光源について、本願発明者が2次元フォトニック結晶のQ値を計算したところ、空孔の大きさを適切に設定することにより、バンド端Aに対するQ値は数千程度にすることができるのに対して、バンド端Bに対するQの値は数十万〜数百万程度という大きな値になることが明らかになった。この場合、バンド端AのQ値は適切な値であるが、バンド端BのQ値がそれよりも大きいため、現実の有限周期構造においてもバンド端Bでレーザ発振が生じる可能性がある。現実のレーザ光源では上述のように元来はバンド端Aが選択されるが、バンド端BのQ値が大きくなると不安定な2モード発振を引き起こす可能性がある。また、バンド端Bが発振に選ばれると、そのQ値が大きすぎるため面垂直方向への光の取り出し効率が低くなる。
本発明が解決しようとする課題は、面垂直方向への光の取り出し効率が高い2次元フォトニック結晶面発光レーザ光源を提供することである。
上記課題を解決するために成された本発明に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザ光源は、板状の母材内に母材とは屈折率の異なる領域を多数、周期的に配置してなる2次元フォトニック結晶と、該2次元フォトニック結晶の一方の側に設けた活性層と、を備えるレーザ光源において、
前記異屈折率領域が所定の断面形状を有する柱状であり、その柱の主軸が母材の表面に対して傾きを持つことを特徴とする。
本発明の2次元フォトニック結晶面発光レーザ光源において、前記異屈折率領域が斜円柱状であり、その主軸の傾きが母材の表面の垂線に対して20゜〜45゜である2次元フォトニック結晶を用いることができる。
また、本発明の2次元フォトニック結晶面発光レーザ光源において、前記異屈折率領域が、活性層の反対側の面から活性層側に向かうに従い、母材表面における断面の正三角形の底辺側に傾いている斜正三角柱状である2次元フォトニック結晶を用いることができる。
発明の実施の形態及び効果
本発明に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザ光源(以下、「レーザ光源」とする)では、活性層の一方の側に2次元フォトニック結晶を設ける。但し、活性層と2次元フォトニック結晶は直接接している必要はなく、両者の間にスペーサ等の部材が挿入されていてもよい。活性層には、従来よりファブリ・ペロー型レーザ光源に用いられているものと同様のものを用いることができる。2次元フォトニック結晶は、板状の母材内にそれとは屈折率の異なる異屈折率領域を多数、周期的に配置することにより形成される。異屈折率領域は、母材にそれとは屈折率の異なる部材を埋め込むことによって形成することもできるが、母材に空孔を設けることにより形成する方が、母材との屈折率の差を大きく取ることができるうえ、製造も簡単であるため望ましい。但し、製造時に2次元フォトニック結晶と他の層を高温で融着する必要がある場合、高温により空孔が変形することがあるため、空孔ではなく、母材に何らかの部材を埋めこむことにより異屈折率領域を形成してもよい。
本発明のレーザ光源は、異屈折率領域の形状に特徴を有する。即ち、異屈折率領域は所定の断面形状を有する柱状であり、その柱の主軸は母材の表面に対して傾きを持つ。なお、本出願における「柱」とは、層に平行な断面の形状が一定であり、各断面の重心を結ぶ線が直線である立体のことを言う。そして、この直線のことを、柱の主軸と呼ぶ。
前記形状の異屈折率領域は、母材の表面に平行な面内での対称性、具体的には母材の表面に対して垂直な軸の周りの回転対称性を持たない。このような2次元フォトニック結晶を設けたレーザ光源では、2次元フォトニック結晶の中心付近においても反対称モードの光が打ち消されない。そのため、面垂直方向への光の取り出し効率がよくなる。
また、このような2次元フォトニック結晶をレーザ光源に用いることにより、バンド端Bに対するQ値であるQ⊥B値を抑えることができる。この理由は以下のように考えられる。フォトニック結晶及び活性層に形成される定在波の、母材表面に平行な面内における節の位置は、異屈折率領域の立体の重心の、この面内における位置の近傍にある。一方、光の強度は活性層において最大となるため、光の電場分布はフォトニック結晶中の異屈折率領域のうち活性層に最も近い底面付近の形状に強く影響される。異屈折率領域が母材表面に対して傾きを持つ時、活性層側の底面形状の重心は定在波の節の位置から大きくずれる。このため当該底面内で非対称な電場分布が形成され、Q値が低下する。ところで同一構造であっても、バンド端Bモードの節の位置はバンド端Aモードの節の位置とやや異なる。即ち、バンド端Bモードの節の位置の方がバンド端Aモードの節の位置よりも異屈折率領域の底面の重心から大きくずれるため、電場分布がより強く非対称化され、Q⊥B値をバンド端Aに対するQ値であるQ⊥A値よりも小さくすることができる。これにより、バンド端BによるΓ点以外でのレーザ発振の影響を抑え、バンド端Aによる安定したレーザ発振を得ることができる。
特に、後述の例のように空孔の形状によっては、Q⊥B値はQ⊥A値よりも小さくすることができる。これにより、バンド端Bの影響をほぼ排除することができる。
Q値及び面垂直方向への光の取り出し効率は異屈折率領域の柱の主軸と母材表面の成す角度及びその柱の断面形状により変化する。そのため、その角度の適切な範囲は、その柱の断面形状に依存する。
ここでは、異屈折率領域が斜円柱状の場合を例にして説明する。斜円柱とは、断面が円形であり、主軸が母材表面に対して傾斜している柱のことをいう。このような斜円柱状の異屈折率領域を持つ2次元フォトニック結晶を有するレーザ光源では、Q⊥A値は主軸と母材表面の垂線との角度θが20゜〜45゜の時に数千〜1万程度に抑えることができる。また、この角度範囲におけるQ⊥B値はQ⊥A値よりも更に低くなる。このようにQ⊥A値が適度に小さく、Q⊥B値がQ⊥A値よりも更に小さいことにより、バンド端Bの影響をほぼ排除することができ、レーザ光を安定して発振させることができる。
上述の斜円柱状以外の、本発明における異屈折率領域の形状の例として、斜正三角柱が挙げられる。斜正三角柱とは、断面形状が正三角形であり、主軸が母材表面に対して傾斜している柱のことをいう。その主軸の傾斜方向により、斜正三角柱全体の立体形状は異なったものとなる。例えば、主軸の傾斜角度θが同じであっても、活性層の反対側の面から活性層側に向かうに従い、面内形状の正三角形の頂点の一つが(i)その頂点と向かい合う底辺側に移動するか、(ii)その底辺の反対側に移動するかにより、斜正三角柱の形状が異なるものとなる。この(i)(ii)の例を比較すると、本発明では(ii)よりも(i)の場合の方が望ましい。これは、広い角度(θ)範囲に亘って、(ii)の場合にはQ⊥B値が(i)の場合よりも大きくなる傾向がありQ⊥B値がQ⊥A値を上回るのに対して、(i)の場合には斜円柱状の場合に近い傾向、即ちQ⊥A値は数千程度、Q⊥B値はそれよりも更に低くなるためである。
本発明に係るレーザ光源の第1の実施例を、図3〜図5を用いて説明する。
本実施例のレーザ光源では、図3に示すように、陽電極21と陰電極22の間に、インジウム・ガリウム砒素((InGaAs)/ガリウム砒素(GaAs)から成り多重量子井戸(Multiple-Quantum Well; MQW)を有する活性層23を設ける。活性層23の上に、p型GaAsから成るスペーサ層261を介して、同じくp型GaAsから成る2次元フォトニック結晶層24を設ける。2次元フォトニック結晶層24は板材に空孔25を正方格子状に周期的に配置したものである。空孔25の形状については後述する。なお、この図の例ではスペーサ層261と2次元フォトニック結晶層24は1枚の一体の層として形成され、上側にある2次元フォトニック結晶層24の方にのみ空孔25が形成されている。活性層23と陽電極21の間に、p型GaAsから成るスペーサ層262、p型AlGaAsから成るクラッド層271及びp型GaAsから成るコンタクト層28を設ける。また、活性層23と陰電極22の間に、n型GaAsから成るスペーサ層263及びn型AlGaAsから成るクラッド層272を設ける。なお、図3では、2次元フォトニック結晶層24の構造を示すために、スペーサ層262と2次元フォトニック結晶層24の間を空けて描いた。
ここで、図3に示したように、空孔25が形成する正方格子の1方向をx軸、もう1方向をy軸、2次元フォトニック結晶層24に垂直な方向をz軸とする座標系を定義する。本実施例において、主軸はx軸方向に傾いている。また、活性層23から2次元フォトニック結晶層24に向かう方向をz軸の正の方向とする。
図4に、1個の空孔25の形状を斜視図、断面図及び投影図で示す。(a)は斜視図、(b)はx-z面への投影図、(c)はy-z面への投影図、(d)は2次元フォトニック結晶層24のスペーサ層262側の表面での断面図(平面図)である。図3に示したように、実際には、2次元フォトニック結晶層24には同じ形状の空孔25が多数、正方格子状に形成されている。なお、(a)では空孔25の形状を示すために、2次元フォトニック結晶層24及びスペーサ層262を透過させて表した。
(d)の平面図に示すように、x-y面での空孔25の平面形状は円であり、この平面形状はzの値に拘わらず、前記表面に平行な任意の断面において同じである。空孔25は、主軸がx軸方向に傾いているので、断面がzの正の方向に移動するに従いこの円がxの正の方向に移動するような形状を有する。即ち、(a)、(b)に示すように、主軸31は上方(z軸の正の方向)がxの正の方向に傾斜している。なお、(c)に示すように、主軸31はy方向には傾斜していない。
本実施例のレーザ光源の動作は、基本的には従来の2次元フォトニック結晶面発光レーザ光源と同様である。陽電極21と陰電極22の間に電圧を印加すると、陽電極21側から正孔が、陰電極22側から電子が、それぞれ活性層23に注入され、正孔と電子の再結合により発光する。この光が2次元フォトニック結晶層24によりフィードバックを受けてレーザ発振する。このレーザ光はコンタクト層28(出射面)から外部に取り出される。
図5に、本実施例のレーザ光源についてθ=10°、20°、30°、45°である場合のQ⊥A値及びQ⊥B値を計算した結果を示す。ここでは、2次元フォトニック結晶層24がx-y面内に無限に拡がる無限周期構造を有し、2次元フォトニック結晶層24中の空孔25が占める体積の割合(フィリングファクタ)が18%である場合について、3次元FDTD法を用いて計算を行った。なお、図5には示されていないが、θ=0°の場合には、Q⊥A値、Q⊥B値共に無限大になる。
計算の結果、Q⊥A値は、θ=20°〜45°の範囲内では、レーザ発振に好適な値である数千〜1万になることがわかった。Q⊥B値は、計算した範囲内で全てQ⊥A値よりも小さく(θ=20°では約6割に、θ=45°では約2割に)なった。これらの計算結果より、本実施例のレーザ光源では、少なくともθが20°〜45°の範囲内にある場合には、バンド端Aによるレーザ発振が得られることが明らかになった。
次に、本発明のレーザ光源の第2及び第3の実施例を、図6及び図7を用いて説明する。これらの実施例のレーザ光源は、空孔の形状を除いて、図3に示した第1実施例のレーザ光源と同様の構造を有する。
図6に第2実施例の空孔45の形状を、図7に第3実施例の空孔55の形状を、それぞれ示す。図6、図7のいずれにおいても、(a)は斜視図、(b)はx-z面への投影図、(c)はy-z面への投影図、(d)は2次元フォトニック結晶層24のスペーサ層262側の表面での断面図(平面図)である。なお、図6、図7では空孔45、55を1個のみ示したが、図3と同様に、実際には、2次元フォトニック結晶層24には同じ形状の空孔が多数、正方格子状に形成されている。
第2実施例、第3実施例のいずれにおいても、図6(d)、図7(d)の平面図に示すように、x-y面での空孔の平面形状は正三角形であり、3つの頂点のうちの1つがx軸の正の方向を向いている。この平面形状はzの値に拘わらず、前記表面に平行な任意の断面において同じである。
第2実施例と第3実施例は次の点で相違する。第2実施例の空孔45は、活性層23の反対側から活性層23側に(zの負方向に)移動するに従い、前記1頂点が正三角形の底辺側に移動するような形状を有する。言い換えれば、x-y平面に平行な断面がzの正の方向に移動するに従い正三角形がxの正の方向に移動する。従って、(a)、(b)に示すように、空孔45は上方がxの正の方向に傾斜した形状を有する。それに対して、第3実施例の空孔55は、活性層23の反対側から活性層23側に移動するに従い、前記1頂点が正三角形の底辺から離れる方向に移動するような形状を有する。言い換えれば、x-y平面に平行な断面がzの正の方向に移動するに従い正三角形がxの負の方向に移動する。従って、(a)、(b)に示すように、空孔55は上方がxの負の方向に傾斜した形状を有する。
第2実施例と第3実施例のレーザ光源について、傾斜角度θが30°、フィリングファクタが16%である場合のQ⊥A値及びQ⊥B値を3次元FDTD法により計算した。その結果、第2実施例ではQ⊥A=4095、Q⊥B=2581となり、第3実施例ではQ⊥A=5849、Q⊥B=26200となった。このように、第2実施例及び第3実施例は共に、Q⊥A値がレーザ発振に適した数千の値を持つことがわかった。一方、Q⊥B値は、第2実施例ではQ⊥A値よりも低く抑えることができるのに対して、第3実施例ではQ⊥A値よりも高くなる(但し、特許文献2の場合よりは1〜2桁小さくすることができる)ため、バンド端Aで選択的にレーザ発振させるためには、第3実施例の構成よりも第2実施例の構成の方が望ましいといえる。
次に、図8〜図12を用いて、第1実施例(θ=30°)〜第3実施例のレーザ光源について2次元フォトニック結晶及び活性層の内部における電場分布の計算結果を説明し、その結果とこれらの実施例におけるQ⊥A値及びQ⊥B値の関係について述べる。なお、比較例として、図8(a)に示すように主軸がz軸に平行であり母材の表面に対して傾斜していない三角柱状の空孔65を正方格子状に配置した2次元フォトニック結晶を有するレーザ光源についても、同様の計算を行った。また、電場分布の計算は図8(b)に示すように空孔63の活性層23側の底面を含む面61と、活性層23内の、この層に平行な面62において行った。
図9に第1実施例、図10に第2実施例、図11に第3実施例、図12に比較例、における電場分布の計算結果をそれぞれ示す。各図はいずれも、(a)は面61におけるバンド端Aの電場、(b)は面61におけるバンド端Bの電場、(c)は面62におけるバンド端Aの電場、(d)は面62におけるバンド端Bの電場、をそれぞれ示す。各図中の矢印の長さ及び方向は、x-y面内での電場の大きさ及び方向を示す。
これらの図において、電場ベクトルのy方向の成分Eyに着目する。まず、図9〜図12の(a)、(b)に着目し、空孔のうちx方向の負側の端付近にある領域661とx方向の正側の端付近にある領域662を比較する。第3実施例及び比較例のバンド端Bにおいて、Eyは領域661と領域662の間でほぼ反対称になっており、この場合にはQ値が10000を越える値を有する。それに対して、全ての例のバンド端A及び第1及び第2実施例のバンド端Bでは、このような対称性は見られず、この場合にはQ値は数千の値を有する。即ち、電場の対称性の低下とQ値の低下には相関がある。
次に、図9〜図12の(c)、(d)において、いずれの実施例及び比較例においても、バンド端A、B共にy方向に延びる節67においてEyがゼロになる。この節67の位置が面61における空孔の断面の重心から離れるほど、Q値が小さくなる傾向が見られる。例えば、第1実施例では、バンド端Aの場合よりもバンド端Bの場合の方が、節67が空孔25の面61における重心(円の中心)から遠い位置にあり、Q⊥A値よりもQ⊥B値の方が小さくなっている。
同様に、第2実施例と第3実施例のバンド端Bにおける電場分布を比較すると、空孔の面61における重心68と節67の距離は第2実施例の方が第3実施例よりも遠く、第2実施例のQ⊥B値よりも第3実施例のQ⊥B値の方が小さくなっている。この第2実施例と第3実施例の違いは、重心68と節67の距離の影響に加えて、第2実施例においては節67が空孔のy方向の幅が狭くなる方向(xの正の方向)にずれていることにより、x方向の対称性が更に小さくなるために生じていると考えられる。この節67はx-y面内において、空孔全体の重心のx-y面内における位置に近い位置に形成されるため、第2実施例と第3実施例では空孔の主軸方向の違いに起因してQ⊥B値の違いが生じるといえる。
2次元フォトニック結晶内の定在波の反対称モードと対称モードを示すグラフ。 2次元フォトニック結晶におけるフォトニックバンドの例を示すグラフ。 本実施例のレーザ光源の斜視図。 第1実施例における空孔25の形状を示す斜視図、投影図及び断面図。 第1実施例のレーザ光源におけるQ⊥A値及びQ⊥B値の計算結果を示すグラフ。 第2実施例における空孔45の形状を示す斜視図、投影図及び断面図。 第3実施例における空孔55の形状を示す斜視図、投影図及び断面図。 比較例の空孔65の形状を示す斜視図及び電場分布の計算を行った面を示す断面図。 第1実施例における電場分布の計算結果を示す図。 第2実施例における電場分布の計算結果を示す図。 第3実施例における電場分布の計算結果を示す図。 比較例における電場分布の計算結果を示す図。
符号の説明
11…2次元フォトニック結晶
12、25、45、55、65…空孔
21…陽電極
22…陰電極
23…活性層
24…2次元フォトニック結晶層
261、262、263…スペーサ層
271、272…クラッド層
28…コンタクト層
31…主軸

Claims (3)

  1. 板状の母材内に母材とは屈折率の異なる領域を多数、周期的に配置してなる2次元フォトニック結晶と、該2次元フォトニック結晶の一方の側に設けた活性層と、を備えるレーザ光源において、
    前記異屈折率領域が所定の断面形状を有する柱状であり、その柱の主軸が母材の表面に対して傾きを持つことを特徴とする2次元フォトニック結晶面発光レーザ光源。
  2. 前記異屈折率領域が斜円柱状であり、その主軸の傾きが母材の表面の垂線に対して20゜〜45゜であることを特徴とする請求香高Pに記載の2次元フォトニック結晶面発光レーザ光源。
  3. 前記異屈折率領域が、活性層の反対側の面から活性層側に向かうに従い、母材表面における断面の正三角形の底辺側に傾いている斜正三角柱状であることを特徴とする請求項1に記載の2次元フォトニック結晶面発光レーザ光源。
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