JP2007070752A - ガラス合紙およびガラス合紙用パルプの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 セルロースパルプを主成分とした坪量20〜50g/m2、厚さ100μm以下の基紙であり、樹脂分が0.2質量%以下であるガラス合紙。セルロースパルプのスラリーをワイヤーを介して脱水処理することによりシートを形成し、次いで該シートをロールプレスで圧縮脱水処理するガラス合紙用パルプの製造方法。
Description
このような問題を解決するため、これまで紙中に含まれる樹脂分を一定の範囲にする減少させる方法がいくつか開示されている。例えば、特開昭60−181399号公報(特許文献1)には、古紙・砕木パルプを離解して脱樹油脂工程、異物除去工程を複数回にわたって繰り返し行う製造方法が開示されている。この公報には、樹脂分の具体的な減少方法の記述はなく、原料に樹脂分を多く含んでいる古紙や砕木パルプを用いているため、所定の量になるまで樹脂分を減らそうとすると多大な工程処理とコストの増加を伴う。
本発明の第1は、セルロースパルプを主成分とした坪量20〜50g/m2、厚さ100μm以下の基紙であり、ISO624−1974の方法で抽出される樹脂分が0.2質量%以下であるガラス合紙である。
本発明のガラス合紙は、ISO624−1974の方法で抽出される樹脂分が0.2質量%以下である。0.2質量%を越えると、ガラス合紙を用いて運搬した後のガラス表面を洗浄しても、汚染物質が表面に残存する危険性が高くなる。
この樹脂分の量は、同様の理由により、好ましくは0.05質量%以下、最も好ましくは0.01%質量以下である。なお、本発明において樹脂分抽出方法は、実施例の項で後述する[樹脂抽出量の測定]に従って行うものとする。
(2)パルプスラリーに硫酸アルミニウム、凝結剤、界面活性剤、水溶性ポリマー、炭酸ジルコニウムアンモニウム、カルボキシメチルセルロースの少なくとも1種以上を添加した後、パルプスラリーをワイヤーを介して脱水処理して得られたガラス合紙用パルプを使用する方法。
(3)上記(1)、(2)の方法により脱水してシート化した後、該シートをロールプレスで充分に加圧して脱水して得られたガラス合紙用パルプを使用する方法。
上記(1)、(2)、(3)の方法により、比較的簡便に経済的に、樹脂分が0.2質量%以下であるガラス合紙が得られる。しかし、最も確実に樹脂分が0.2質量%以下、更には0.05質量%以下のガラス合紙を得るためには、(2)、(3)の方法を併用してガラス合紙用パルプを製造することが望ましい。以下、各方法について、具体的に説明する。
尚、凝結剤には、ポリアクリルアミド系、ポリエチレンイミン系、ポリアミドポリアミン系、エポキシ化ポリアミドポリアミン系などが含まれる。
界面活性剤には、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、ナフタレンホルムアルデヒドスルホン酸ソーダ、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のものが挙げられ、これらのイオン性は特に問うものではない。
水溶性ポリマーには、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸およびこれらの無水物、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等の不飽和カルボン酸化合物とα−オレフィン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、マレイン酸エステル、イタコン酸エステル、スチレン、α−メチルスチレンおよびスチレンスルフォン酸等の炭素数4〜18のビニル化合物を構成成分としたアニオン性共重合体、カチオン性共重合体、ノニオン性共重合体が挙げられる。それらのものは疎水性および親水性結合を好適なバランスで含有しているものが良く、分子量は好ましくは5,000〜200,000、更に好ましくは10,000〜150,000である。なお、水溶性ポリマーとしては、特にマレイン酸系ポリマーが好適に用いられる。
パルプスラリー中の樹脂分を効率良く除去する薬品の添加率をここで一概に述べることはできないが、概ね絶乾パルプに対して0.01〜0.5%を添加すると、ロールプレス処理済みのパルプを抄紙して得られる合紙中の樹脂分が0.2%以下とすることができる。
パルプスラリーからシートを形成する際のワイヤーのメッシュは、特に限定しないが10〜50メッシュ、好ましくは10〜30メッシュを用いて脱水すると樹脂分を効率よく除去することができる。また、50メッシュを越えるとワイヤーの目詰りが起きやすく脱水性能が低下することがある。ワイヤーの形式は、シリンダー式、ツインワイヤー式、長網式のいずれでも良い。また、シートの坪量は特に制約はなく、パルプシートの圧縮脱水性及び操業面から絶乾質量換算で500〜2500g/m2が好ましい。
ロールプレス機に導入されるパルプシートは、概ね水分が90〜70%程度に脱水されたものであり、ロールプレスによる圧縮脱水処理後にはパルプ水分を65%以下にすることが好ましい。より好ましくは圧縮脱水処理して水分を55%〜40%とする。この際の水分の下限は特に限定しないが、40%未満にすることは通常では困難である。また、本明細書では、パルプ濃度及びパルプスラリー中の水分は全て質量%であるが、以下、単に%と表示する。
保水度の低下割合を5%以上にするためにはロールプレスの線圧を高くすることが好ましく、80kg/cm以上より好ましくは150kg/cm〜250kg/cmである。
一般にロールプレス等で生じる白水は樹脂分を含んでいること及び白水の水温が清水に比べて高いことから、通常、原料希釈やフィルター洗浄等の工程で再利用することが経済的な理由で行われるが、本発明では、ロールプレスにより絞られた白水を、ロールプレス処理後のウェットパルプ離解時に希釈水として使用すると、除去した樹脂分が再吸着するため、好ましくは白水を使用しないことである。
(1)クラフトパルプ(KP)、サルファイトパルプ(SP)、ソーダパルプ(AP),等の化学パルプ。
(2)セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグランドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ。
(3)砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)、リファイナーグランドウッドパルプ(RGP)等の機械パルプ。
(4)あるいは、楮、三椏、麻、ケナフ等を原料とする非木材繊維パルプ。
(5)古紙を原料とする脱墨パルプ。
これらの他、合成パルプ、合成繊維、レーヨン繊維などは、セルロースパルプを主成分とする範囲で配合しても良いが、本発明の趣旨からして、全繊維成分中で50質量%未満、好ましくは20質量%未満である。
上記(1)〜(5)のパルプは単独でも、二種以上混合使用しても良い。
中でも、好ましくは(1)〜(4)である。但し、樹種によっては樹脂分が多いものもあり、なるべく樹脂分の少ない樹種を選定した方が好ましい。紙中に含まれる樹脂分が0.2質量%以上を超えるとガラス表面を汚染させる可能性が大きいため0.2質量%以下に抑えられるようパルプを選定しなければならない。
J.TAPPI No.26のパルプの保水度測定法に従って行う。未処理のパルプの保水度に対する処理後、所謂ワイヤーを介して脱水処理およびロールプレスで圧縮脱水処理した後のパルプ保水度の低下率を式1にて求めた。
式1:R=100×(R0−R1)/R0
R:パルプ保水度の低下率(%)
R0:未処理パルプの保水度
R1:処理後パルプの保水度
通常、パルプ中に存在する樹脂分の量を測定するのに用いられる方法であるISO624−1974に準じて測定を行なった。紙の質量として絶乾約10gの試料を溶媒:ジクロロメタンを用い、ソックスレー定温ヒーター下で4時間かけて抽出を行った。下記の式2にて紙中の樹脂抽出量を求めた。
式2:m=100×(m0/m1)
m:樹脂抽出量(%)
m0:ジクロロメタン抽出物(g)
m1:試料の絶乾質量(g)
液晶パネル用ガラス板(200mm×200mm×0.7mm)と、同サイズのガラス合紙を平置きの状態で交互に10枚積層し、加圧用冶具を用いて上方より2kg/cm2の加重をかけた状態で温度50℃、湿度90%RHの環境下に4日間放置して加速試験を行った。試験終了後、ガラスの表裏面に洗浄剤を用いてブラッシング洗浄と超音波洗浄を実施して表裏面に付着した汚染を顕微鏡にて観察した。
評価法は、汚染の発生が無いものを〇とし、汚染の発生があるものを×とした。
濃度1.8質量%、温度40℃の未叩解LBKPスラリーをワイヤーシリンダー(ヴァキューム式ワイヤーメッシュ、50メッシュ)で脱水し、水分72%のパルプシート(絶乾質量で1800g/m2)を得た。処理後のパルプを長網抄紙機にて抄紙して、坪量35g/m2、厚さ70μmのガラス合紙を得た。
濃度1.8質量%、温度40℃の未叩解LBKPスラリーをワイヤーシリンダー(ヴァキューム式ワイヤーメッシュ、50メッシュ)で脱水し、水分72%のパルプシート(絶乾質量で1800g/m2)を得た。このパルプシートをロールプレス(グルーブドロール)1段で圧縮脱水処理した。ロールプレスの線圧は、80kg/cm(実施例2)、250kg/cm(実施例3)とし、このようにして処理したパルプの水分と保水度を測定した。更に、処理後のパルプを長網抄紙機にて抄紙して、坪量35g/m2、厚さ70μmのガラス合紙を得た。
濃度1.8質量%、温度40℃の未叩解NBKPスラリーに、硫酸アルミニウム0.20質量%を添加して均一に攪拌後、ワイヤーシリンダー(ヴァキューム式ワイヤーメッシュ 50メッシュ)で脱水し、水分70%のパルプシート(絶乾質量で1800g/m2)を得た。このパルプシートをロールプレス(グルーブドロール)1段で圧縮脱水処理した。ロールプレスの線圧は、250kg/cmとした。このようにして処理したパルプの水分と保水度を測定した。更に、処理後のパルプを長網抄紙機にて抄紙して、坪量35g/m2、厚さ70μmのガラス合紙を得た。
硫酸アルミニウムの代わりにポリアクリルアミド系の凝結剤(ソマール社製、商品名:REALIZER-A2300)0.10量%を添加する以外は、実施例4と同様にしてパルプシートを得た。このようにして処理したパルプの水分と保水度を測定した。更に、処理後のパルプを長網抄紙機にて抄紙して、坪量35g/m2、厚さ70μmのガラス合紙を得た。
硫酸アルミニウムの代わりに炭酸ジルコアンモニウム(日本軽金属社製、商品名:ベイコート20)0.2質量%を添加する以外は、実施例4と同様にしてパルプシートを得た。このようにして処理したパルプの水分と保水度を測定した。更に、処理後のパルプを長網抄紙機にて抄紙して、坪量35g/m2、厚さ70μmのガラス合紙を得た。
硫酸アルミニウムの代わりにマレイン酸系ポリマー(栗田工業製、商品名:ピッチコントロールD-500)0.2質量%を添加する以外は、実施例4と同様にしてパルプシートを得た。このようにして処理したパルプの水分と保水度を測定した。更に、処理後のパルプを長網抄紙機にて抄紙して、坪量35g/m2、厚さ70μmのガラス合紙を得た。
ワイヤー脱水によるパルプシート形成及びロールプレスによる圧縮脱水処理を施さずに、パルプの保水度(未処理パルプの保水度)を測定した後、この未処理のパルプを長網抄紙機にて抄紙して、坪量35g/m2、厚さ70μmのガラス合紙を得た。
実施例と比較例との対比から明らかなように、本発明の要件を満たす紙基材は、フラットパネル・ディスプレイ用のガラス板を複数枚積層して保管、運搬する流通過程において、ガラス表面への汚染を防止できるガラス合紙であり、その適性が格段に優れていることを示している。
Claims (5)
- セルロースパルプを主成分とした坪量20〜50g/m2、厚さ100μm以下の基紙であり、ISO624−1974の方法で抽出される樹脂分が0.2質量%以下であることを特徴とするガラス合紙。
- セルロースパルプのスラリーをワイヤーを介して脱水処理することによりシートを形成し、次いで該シートをロールプレスで圧縮脱水処理することを特徴とするガラス合紙用パルプの製造方法。
- セルロースパルプのスラリーに硫酸アルミニウム、凝結剤、界面活性剤、水溶性ポリマー、炭酸ジルコニウムアンモニウム、カルボキシメチルセルロースの少なくとも1種以上が添加されたことを特徴とする請求項2に記載のガラス合紙用パルプの製造方法。
- ロールプレスで圧縮脱水処理したパルプの水分が65質量%以下となる条件で圧縮脱水処理することを特徴とする請求項2〜3に記載のガラス合紙用パルプの製造方法。
- ワイヤーを介しての脱水処理、及び/又は、ロールプレスする際のパルプスラリーの温度を30℃以上とすることを特徴とする請求項2〜4に記載のガラス合紙用パルプの製造方法。
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