JP2007062450A5 - - Google Patents

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ラック軸支持装置
この発明は、ラックアンドピニオン式ステアリング装置に適用されるラック軸支持装置に関するものである。
ラックアンドピニオン式ステアリング装置において、通例、ラック軸はラック軸支持装置によって支持されている。このラック軸支持装置は、ハウジングに形成された案内孔に進退自在に保持された支持部材と、案内孔の開口を封止するプラグと、支持部材とプラグの間に介在する付勢部材とを備えている。上記ラック軸は支持部材により軸方向に摺動可能に支持され、支持部材は付勢部材によりラック軸側へ付勢されている。また、プラグに形成された雄ねじ部と、案内孔に形成された雌ねじ部とが螺合することでプラグが案内孔に保持されている。
通例、上記プラグはハウジングとの相対位置が変化しないように、雄ねじ部に緩み止めが施されている。この緩み止めは、例えば、プラグにロックナットを締め付けたり、ハウジングをかしめたりして行われる(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
特開2005−132287号公報 特開2005−170109号公報
しかしながら、特許文献1または特許文献2に記載のいずれの方法であっても、プラグの緩み止めを行うための面倒な作業が必要である。例えば、特許文献1ではプラグがロックナットと共回りしないように、プラグを保持した状態で、ロックナットを締め付けるという煩雑な作業が必要である。また、特許文献2では、かしめ装置を用いて所定のかしめ荷重でかしめ付けるという煩雑な作業が必要である。
また、上述の緩み止め方法では、万一、ロックナットが緩んだり、かしめが外れたりした場合に、プラグがハウジングから抜脱してしまう虞がある。
この発明は、かかる背景のもとになされたものであり、専用の工程を要することなくプラグの移動を規制することができ、且つハウジングからプラグが抜脱することを確実に防止することができるラック軸支持装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、ラック軸(4)を摺動自在に収容するハウジング(3)と、ハウジングに設けられた案内孔(8)と、案内孔内に進退自在に保持され、ラック軸を軸方向に摺動可能に支持する支持部材(10)と、支持部材の後退位置(P1)を位置決めし、案内孔の開口を封止するプラグ(11)と、支持部材とプラグとの間に介在し、支持部材をラック軸側に付勢する付勢部材(12)とを備え、上記プラグは、案内孔の内周面のねじ部(18)に螺合するねじ部(17)が形成された外周面(23)を有する断面丸形の本体(19)と、本体によって片持ち状に支持され、本体の軸方向に延びるとともに本体の周方向に並べて設けられた複数の弾性アーム(21)と、弾性アームの自由端(21a)に設けられ弾性アームの揺動に伴って本体の径方向(R1)に変位する係合爪(22)と、上記複数の弾性アーム相互の間に形成され、本体の軸方向に延びるスリット(25)と、本体に設けられているとともに本体の径方向に関して複数の弾性アームの内側に配置され、付勢部材を受ける受け部(20)と、受け部と複数の弾性アームとの間を仕切る環状溝(31)とを含み、上記環状溝によって上記複数の弾性アームが内側へ撓むための空間が形成されるようにしてあり、案内孔の内周面に、上記係合爪と係合することによりプラグを所定のねじ込み位置にロックする係合溝(29)が形成されていることを特徴とするラック軸支持装置(100)である。
本発明によれば、弾性アームを弾性変形させて係合爪をプラグの径方向内方へ変位させた状態で、プラグをハウジングの案内孔に、ねじ込んでいく。プラグを所定位置まで、ねじ込むと、弾性アームの復元力によって、係合爪がプラグの径方向外方へ変位され、係合溝に係合する。この係合爪と係合溝との係合により、プラグが所定のねじ込み位置にロックされる。その結果、当該プラグによって、支持部材の後退位置を精度良く位置決めすることができる。また、プラグが緩んで案内孔から抜脱することを確実に防止することができる。
また、上記弾性アームは、本体の軸方向に延びるとともに複数が本体の周方向に並べて設けられ、これら弾性アーム相互の間に、本体の軸方向に延びるスリットが形成されているので、複数の係合爪をプラグの周方向に並べて設けることになり、プラグを確実にロックすることができる。
また、上記プラグは、本体に設けられ付勢部材を受ける受け部と、受け部と複数の弾性アームとの間を仕切る環状溝とを含むので、プラグ本体の受け部によって付勢部材を受けることができる。また、環状溝によって、弾性アームが径方向内方へ撓むための空間を容易に確保することができる。
なお、上記複数の弾性アームは付勢部材を受ける受け部を含んでいてもよい。この場合、弾性アームの受け部によって付勢部材を受けることができる。
また、本発明において、上記係合爪は、プラグを案内孔の入口に押し込む力(F1)を、係合爪をプラグの径方向内方へ変位させる力(F2)に変換するための傾斜状カム面(28)を含む場合がある。この場合、傾斜状カム面を案内孔の入口の周縁部に押し当てると、係合爪をプラグの径方向内方に容易に変位させることができる。
また、本発明において、上記プラグは合成樹脂の一体形成品である場合がある。この場合、弾性アームや係合爪を、本体と一体に容易に形成することができる。また、弾性アームの弾性を容易に得ることができる。
なお、上記において、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
以下には、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明する。
図1は、本発明の一実施形態にかかるラック軸支持装置が適用されたラックアンドピニオン式ステアリング装置の断面図である。
図1を参照して、ステアリング装置100は、図示しないステアリングホイール等の操舵部材に連結されたピニオン軸1と、ピニオン軸1の先端に設けられたピニオン2と、ハウジング3内にて噛み合うラック軸4と、ラック軸4をピニオン2に押し付けるためのラック軸支持装置5とを備えている。
ピニオン軸1は、2つの軸受6a,6bにてハウジング3内に回転可能に支持され、ピニオン軸1の回転によりピニオン2が回転する。ラック軸4の両端部はハウジング3に保持された図示しない軸受部材によって、軸方向(図1の紙面に垂直な方向)に摺動自在に支持されている。また、図示はしないが、ラック軸4の両端には、それぞれタイロッドを介して車輪が連結されている。
ハウジング3は、ラック軸4を挟んでピニオン2と反対側に突出する張出部7を有している。この張出部7に、案内孔8が形成されており、この案内孔8の一端は、張出部7の頂部7aに開口している。
ラック軸支持装置5は、パッド9を介してラック軸4を軸方向に摺動自在に支持する支持部材10と、案内孔8を封止したプラグ11と、支持部材10とプラグ11との間に介在し支持部材10をラック軸4側に付勢するスプリング12とを含む。
支持部材10は円柱状に形成されており、案内孔8の深さ方向X1に進退自在に収容されている。支持部材10の一端10aには上記パッド9を取り付けるための曲面13が形成されており、この曲面13に取り付けられたパッド9がラック軸4と摺接するようになっている。支持部材10の他端10bには、上記スプリング12が収容される凹部14が形成されている。また、支持部材10の外周面10cには、周方向に延びる一対の環状溝15が形成されており、この環状溝15に、Oリング等の環状の弾性部材16が保持されている。弾性部材16は、案内孔8の内周面8aおよび支持部材10の環状溝15の間で圧縮されている。これにより、支持部材10は、案内孔8の径方向Y1に弾性支持されている。その結果、案内孔8内における支持部材10のがたつきを抑えることができる。
プラグ11は、合成樹脂によって形成されている。雄ねじ部17と雌ネジ部18とを螺合させることによって、案内孔8をプラグ11で封止することができる。また、プラグ11は、当該プラグ11の一端11aと支持部材10の他端10bとの間に所定の間隔S(例えば、0.1mm)が設けられる状態で、案内孔8に保持されている。支持部材10の他端10bがプラグ11の一端11aに当接することにより、支持部材10のプラグ11側への後退位置P1を規制することができる。
スプリング12は、凹部14の底面14aとプラグ11の一端11aとの間で挟持されている。スプリング12によって支持部材10がラック軸4側に付勢され、これにより、ピニオン2とラック軸4とのバックラッシュを除去することができる。
図2は、プラグを概略的に示した側面図であり、図3はプラグを矢視IIIから見た平面図である。図2および図3を参照して、プラグ11は、断面丸形の本体19と、本体19に設けられスプリング12を受ける受け部20と、本体19に片持ち状に支持された複数の弾性アーム21と、各弾性アーム21に設けられた係合爪22とを有している。また、プラグ11は合成樹脂製であり、本体19、受け部20、各弾性アーム21および係合爪22は一体に形成されている。
上記本体19は円柱状の大径部191と、大径部191よりも小径の小径部192とを有している。大径部191の外周面23には、案内孔8の内周面8aの雌ねじ部18と螺合する上記雄ねじ部17が形成されている。また、大径部191の後面19aには、工具係合孔24が形成されている。図示しない工具を工具係合孔24に係合して、プラグ11を回転させることにより、プラグ11を締め込んだり緩めたりすることができる。これにより、プラグ11の案内孔8へのねじ込み量を調節して、プラグ11と支持部材10との間に上記所定の間隔Sを設けることができる。
小径部192は、円柱状に形成され、大径部191の前面19bから本体19の軸方向Z1に延びている。小径部192は、大径部191と同軸に配置されている。小径部192の一端面に受け部20が設けられ、この受け部20によってスプリング12が受けられている。
上記複数の弾性アーム21のそれぞれは、略四角柱状に形成されており、大径部191の前面19bから本体19の軸方向Z1に延びている。複数の弾性アーム21の基端部は、大径部191の前面19bの周縁に沿って並べられている。複数の弾性アーム21は、小径部192を取り囲み、小径部192と同心の環状に配列されている。複数の弾性アーム21は、本体19の周方向A1に等間隔で並べられている。周方向A1に隣接する各弾性アーム21の間には、本体19の軸方向Z1に延びるスリット25が設けられている。周方向A1に隣接する各弾性アーム21の間が、このスリット25によって仕切られている。
係合爪22は、各弾性アーム21の自由端21aに設けられており、各弾性アーム21から本体19の径方向R1外方に突出している。係合爪22は、各弾性アーム21の自由端21a側に設けられた第1係合面26と、各弾性アーム21の固定端21b側に設けられた第2係合面27と、第1係合面26および第2係合面27の間を接続する傾斜状カム面28とを有している。第1係合面26および第2係合面27は、本体19の軸方向Z1に対して垂直な面である。傾斜状カム面28は第2係合面27から第1係合面26にかけて径方向R1内方に傾斜している。
係合爪22は、各弾性アーム21と同様に、小径部192を同心に取り囲み、環状に配置されている。環状に配置された係合爪22の最外径D1は、係合爪22が弾性変形していない状態で、大径部191の外径D2よりも大径となっている。係合爪22は、案内孔8の内周面8aに形成された断面溝型の係合溝29に係合される。これにより、プラグ11を所定のねじ込み位置にロックすることができる。
複数の弾性アーム21と小径部192の外周との間には、環状溝31が設けられている。環状溝31によって、各弾性アーム21と小径部192の外周との間に、一定の空間が設けられている。これにより、各弾性アーム21を径方向R1内方に撓ませて、係合爪22を径方向R1内方に変位させることができるようになっている。また、環状溝31によって、各弾性アーム21と受け部20とが仕切られている。
図4は、プラグ11を案内孔8にねじ込んでロックさせる手順を説明するための一部断面概略図である。図4を参照して、プラグ11を案内孔8にロックさせるには、複数の弾性アーム21を本体19の径方向R1内方へ変位させた状態で、プラグ11を案内孔8にねじ込んでいくだけでよい。すなわち、ねじ込みにより係合爪22が係合溝29の位置まで達した時点で、弾性アーム21の弾性復元力によって、係合爪22が径方向R1外方に変形し、係合爪22が係合溝29に自動的に係合し、ロックが達成される。
より詳細に説明すると、まず最初に、図4(a)に示すように、係合爪22のカム面28と案内孔8の開口周縁部30とを当接させて、プラグ11を案内孔8の方へ押し込む。この際に、プラグ11を案内孔8の方へ押し込む力F1が、カム面28によって係合爪22を本体19の径方向R1内方に変位させる力F2に変換される。これにより、各弾性アーム21が弾性変形して、係合爪22が本体19の径方向R1内方に変位させられ、プラグ11を案内孔8に容易に押し込むことができる。
プラグ11を案内孔8に押し込んだ後、図4(b)に示すように、プラグ11を回転させて雄ねじ部17と雌ねじ部18とを螺合させる。雄ねじ部17と雌ねじ部18とを螺合させることにより、案内孔8の開口がプラグ11によって封止される。また、プラグ11を案内孔8の所定のねじ込み位置、すなわち、係合爪22が係合溝29に一致する位置までねじ込むことにより、各弾性アーム21が弾性復元力によって復元して、係合爪22が径方向R1外方に変位される。その結果、係合爪22が係合溝29に係合し、プラグ11のロックが達成される。
このように、プラグ11のロックが達成された状態で、プラグ11の一端11aと支持部材10の他端10bとの間に所定の間隔Sが確保されるようになっている。この所定の間隔Sの量は調節可能である。すなわち、係合溝29の第1係合面26および第2係合面27とそれぞれ対向する面である第1の面29aおよび第2の面29bの間隔が係合爪22の厚みよりも所定量大きくなるように、係合溝29および係合爪の寸法が設定されている。したがって、上記所定量の分だけ、上記所定の間隔Sの量を調節することができるようになっている。
また、係合爪22が係合溝29と係合することにより、案内孔8の深さ方向X1へのプラグ11の移動を規制することができる。具体的には、第1係合面26が、第1の面29aに当接することにより、支持部材10側へのプラグ11の移動を規制する。また、第2係合面27が、第2の面29bに当接することにより、プラグ11の案内孔8からの抜脱が規制される。
以上のように、この実施形態によれば、複数の弾性アーム21を径方向R1内方に弾性変形させて、プラグ11を案内孔8にねじ込むことができる。プラグ11を所定のねじ込み位置までねじ込むことにより、各弾性アーム21が復元して係合爪22と係合溝29とが係合する。これにより、プラグ11が所定のねじ込み位置にロックされる。その結果、プラグ11によって、支持部材10の後退位置P1を精度良く位置決めすることができる。また、プラグ11が緩んで案内孔8から抜脱することを確実に防止することができる。
図5は、この発明の参考形態に係るプラグの一部を概略的に示した断面図である。この図5において、前述の図2および図3に示された各部と同等の構成部分については、図2および図3と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
参考形態が図2の実施の形態と主に相違するのは、スプリング12を受けるための受け部200が係合爪220の端面に設けられていることにある。
プラグ110は、弾性アーム210と、係合爪220とを備える。係合爪220は、弾性アーム210の自由端21aに設けられており、受け部200を含む。受け部200は、係合爪220の端面に設けられており、第1係合面26と同一面上にある。
これにより、受け部200が設けられた係合爪220は、プラグ110のねじ込み位置をロックするだけでなく、スプリング12を受けることもできる。
この発明は、以上の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
本発明の一実施形態にかかるラック軸支持装置が適用されたラックアンドピニオン式ステアリング装置の断面図である。 プラグを概略的に示した側面図である。 プラグを矢視IIIから見た平面図である。 プラグと案内孔とを結合させる手順を説明するための一部断面概略図であ る。 図5は、この発明の参考形態に係るプラグの一部を概略的に示した断面図 である。
符号の説明
3・・・ハウジング、4・・・ラック軸、5・・・ラック軸支持装置、8・・・案内孔、8a・・・内周面、10・・・支持部材、11,110・・・プラグ、12・・・スプリング(付勢部材)、17・・・雄ねじ部(ねじ部)、18・・・雌ネジ部(内周面のねじ部)、19・・・本体、20,200・・・受け部、21,210・・・弾性アーム、21a・・・自由端、22,220・・・係合爪、23・・・外周面、25・・・スリット、28・・・カム面、29・・・係合溝、31・・・環状溝、A1・・・周方向、F1・・・押し込む力、F2・・・変位させる力、P1・・・後退位置、R1・・・径方向、Z1・・・軸方向

Claims (3)

  1. ラック軸を摺動自在に収容するハウジングと、
    ハウジングに設けられた案内孔と、
    案内孔内に進退自在に保持され、ラック軸を軸方向に摺動可能に支持する支持部材と、
    支持部材の後退位置を位置決めし、案内孔の開口を封止するプラグと、
    支持部材とプラグとの間に介在し、支持部材をラック軸側に付勢する付勢部材とを備え、
    上記プラグは、案内孔の内周面のねじ部に螺合するねじ部が形成された外周面を有する断面丸形の本体と、本体によって片持ち状に支持され、本体の軸方向に延びるとともに本体の周方向に並べて設けられた複数の弾性アームと、弾性アームの自由端に設けられ弾性アームの揺動に伴って本体の径方向に変位する係合爪と、上記複数の弾性アーム相互の間に形成され、本体の軸方向に延びるスリットと、本体に設けられているとともに本体の径方向に関して複数の弾性アームの内側に配置され、付勢部材を受ける受け部と、受け部と複数の弾性アームとの間を仕切る環状溝とを含み、
    上記環状溝によって上記複数の弾性アームが内側へ撓むための空間が形成されるようにしてあり、
    案内孔の内周面に、上記係合爪と係合することによりプラグを所定のねじ込み位置にロックする係合溝が形成されていることを特徴とするラック軸支持装置。
  2. 請求項1において、上記係合爪は、プラグを案内孔の入口に押し込む力を、係合爪をプラグの径方向内方へ変位させる力に変換するための傾斜状カム面を含むことを特徴とするラック軸支持装置。
  3. 請求項1または2において、上記プラグは合成樹脂の一体形成品であることを特徴とするラック軸支持装置。
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