JP2007046093A - 電解コンデンサ電極用アルミニウム箔およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 純度99.9%以上で、Si:5〜30ppm、Fe:5〜30ppm、Cu:10〜100ppm、Pb:0.1〜3ppmを含有し、さらに所望によりLi、Na、Ca、希土類元素の1種または2種以上を合計で1〜20ppm含有し、残部Al及び不可避不純物からなる組成を有し、箔厚が111〜200μmの電解コンデンサ電極用アルミニウム箔を製造方法する際に、鋳造時に脱ガス処理を行って鋳造材のガス値を0.12cc/100g以下とし、最終焼鈍を550℃以上、6時間以上で行う。立方晶率が95%以上で、円相当直径5mm以上の粗大結晶粒面積率が0.01%以下である電解コンデンサ電極用アルミニウム箔となり、高容量化が可能になる。
【選択図】 図1
Description
一般的に粗大結晶粒成長は二次、又は三次再結晶に相当すると考えられ、表面状態の影響が大きいとされ、表面酸化皮膜特性(厚さ,質)、焼鈍温度、時間によって制御できると考えられていた。しかし、高容量化に伴い、焼鈍の高温化、箔厚の増加を行うと、現行管理している内容(焼鈍雰囲気・温度・時間・表面洗浄等)を制御しても、完全に抑制することはできないことが判明した。
Si:5〜30ppm、Fe:5〜30ppm
Si、FeはAlと化合し適度に析出物を生成し、再結晶粒の粗大化を抑制し、立方晶の成長を促進することができる。ただし、各々、5ppm未満の場合精製コストが高くなり、工業的には不向きである。一方、各々30ppm超の場合、析出物の総量が多くなりすぎて立方晶の成長まで制御するため、高い立方晶率が得られなくなる。このため、Si、Feの含有量を上記範囲に定める。なお、望ましい下限は、Si、Feともに10ppmであり、望ましい上限はSi、Feともに20ppmである。
Cuはエッチングにおけるピットの成長を促進する元素である。ただし、10ppm未満の含有では十分なピット成長が行われず好ましくない。一方、100ppmを超えて含有すると過剰な溶解反応が生じるため好ましくない。したがって、Cu含有量は10〜100ppmの範囲内に定める。なお、上記と同様の理由で下限を20ppm、上限を70ppmとするのが好ましい。
Pbはエッチングにおける表面溶解を均一にする元素である。ただし、0.1ppm未満ではその効果が期待できず、3ppm超では溶解性が高くなりすぎて過剰溶解を起こす。したがって、Pbの含有量を上記に定める。なお、望ましい下限は、0.2ppmであり、望ましい上限は1ppmである。
粗大結晶粒は、表面エネルギーの不均一部分にて、結晶粒の駆動エネルギーが正常結晶成長以上に高まった場合発生する。通常生産工程においては、正常結晶成長範囲で生産できるよう、圧延条件、熱処理条件が設定されているため、問題にならない。しかし、高容量化要求が高まるにつれて、熱処理の高温化、箔厚の増加が促進されている現状、従来、制御している条件では、粗大結晶粒の発生を抑制することはできなくなっている。
結晶粒成長の駆動エネルギは圧延時の歪に起因するほかに、粒界に存在する水素ガス、あるいは水素化合物に起因する。これは、鋳造時に放出できなかったガス成分が、箔における熱処理にて、ガス成分が移動し局所的に歪が導入され、それを基点に異状結晶粒成長が生じる。上記元素群は、このガス成分と反応して金属化合物(水素化物)を生成するものである。この金属化合物が熱処理と共に、箔表面に移動し、界面に濃縮するとしても、粒界に過度の歪を与えない。よって、これら元素の含有によって粗大結晶粒の発生を抑制できるものである。上記元素群は1ppm未満では抑制効果がない。又、20ppmを超える場合、立方晶率が低下するため、好ましくない。望ましくは、2〜10ppmの範囲である。
なお、ここで、REMとは、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm等の一群の元素からなる希土類元素を意味している。本発明では、REMとしてこれら元素の中の単独元素を選択したものであってもよく、また複数の元素を組み合わせたものであってもよい。
粗面化処理において、ピットが高密度で形成されて高い粗面化率を得るために、立方晶率は95%以上であることが必要とされる。望ましくは、98%以上である。
円相当直径5mm以上の粗大結晶粒が多く存在していると、粗面化処理に際し、良好にピットが形成されず、また箔の強度を低下させるので、該結晶粒の面積率を0.01%以下とする。
結晶粒の駆動エネルギが粒界に存在する水素ガス、あるいは水素化合物に起因することは上述したとおりである。したがって、鋳造材のガス値を規制することによって結晶粒の駆動エネルギを小さくでき、よってその後の工程における粗大結晶粒の成長を抑制することができる。このために鋳造材のガス値を0.12cc/100g以下に規制する。ガス値が0.12cc/100gを超えると、結晶粒の駆動エネルギが大きくなって、結晶粒の粗大化を招く。なお、同様の理由で該ガス値は、0.10cc/100g以下がさらに望ましい。
鋳造材のガス値は、鋳造の際に脱ガス処理を行うことにより制御することができる。なお、脱ガスの方法は特に限定されるものではなく、不活性ガスを用いたバブリングや、フラックス使用、真空脱ガスなどの常法を用いることができる。
熱間圧延前のアルミニウム材に対しては、均質化処理を行うのが望ましい。均質化処理によってアルミニウム材の均一性が得られ、局部的な粗大結晶粒の成長を抑制できる。均質化処理での温度が530℃未満であると、上記作用が十分に得られない。一方、均質化処理温度が600℃を超えると、溶融のおそれがあるので好ましくない。
(開始温度:530℃以上)
熱間圧延開始温度が低いと仕上がり温度の確保が困難になり、結晶粒の粗大化を招く。このため、開始温度を530℃以上とする。
(圧下率:95%以上)
圧下率{(投入厚さ−仕上がり厚さ)/投入厚さ}が不足すると、熱間圧延終了時の結晶粒が大きくなり、粗面化率に悪影響が表れる。このため熱間圧延時の圧下率を95%以上とする。
(終了時温度:250〜400℃)
熱間圧延終了時の温度(仕上げ温度)が低いと、析出物量が著しく低下し、再結晶挙動が抑制されないため、粗大結晶粒が発生しやすくなる。一方、仕上がり温度が高いと、熱間圧延組織が肥大化し、立方晶率が低下する。したがって、熱間圧延仕上げ温度は250〜400℃が望ましい。
熱間圧延後に箔圧延を行うことにより所望の箔厚が得られる。この箔厚を111μm以上にすることで、粗面化処理に際しピットを十分な深さにまで形成して高容量化を図ることが可能になる。ただし、箔厚があまり厚くなると、後述する高温での最終焼鈍によっても粗大結晶粒の成長を抑制しつつ十分に高い立方晶率を得ることが難しくなり、したがって、良好な粗面化率が得られなくなる。よって、本願発明の製造方法においては、アルミニウム箔厚を111〜200μmとする。
比較的厚いアルミニウム箔(111μm〜200μm)でも最終焼鈍を比較的高温(550℃以上)で行うことにより、立方晶率を高くすることができる(95%以上)。ただし550℃未満では、十分に高い立方晶率を得ることが難しくなる。また、最終焼鈍の加熱時間が6時間未満であると、同じく十分に高い立方晶率を得ることが難しくなる。なお、このように高温での最終焼鈍を行っても、鋳造材のガス値を規制することによって粗大結晶粒の成長が抑制され、例えば円相当直径5mm以上の粗大結晶粒を面積率で0.01%以下に抑えることができる。
好適には純度99.9%以上で、本発明の成分となるように調製されたアルミニウム材が用いられる。該アルミニウム材は常法により溶製することができるが、ガス値が0.12cc/100gとなるように制御する。該制御は、Arガス導入、フラックス添加などの脱ガス法によって行うことができる。
上記によって鋳造材(スラブ)を得て、530〜600℃に加熱する均質化処理を行う。均質化処理は、適宜の加熱炉などの加熱手段を用いて行うことができ、本発明としては特定の加熱手段に限定されるものではない。
上記均質化処理後には、熱間圧延に供される。該熱間圧延では、開始温度が530℃以上となるようにする。必要に応じてスラブを加熱する均熱処理を行う。該開始温度から熱間圧延を行い、圧下率95%以上で、例えば数mm厚程度のシート材とする。この際の終了温度(仕上がり温度)は、250〜400℃となるようにする。
最終冷間圧延後には、例えば、550℃以上×6時間以上に加熱する最終焼鈍処理を行う。該最終焼鈍処理では、不活性ガスまたは還元性ガスもしくはこれらの混合ガス雰囲気中で行うのが望ましい。上記最終焼鈍処理によって95%以上の高い立方晶率を得ることができる。
エッチング処理は、通常は塩酸を主体とする電解液を用いた電解エッチングによって行われる。本発明としてはこのエッチング処理の具体的条件等について特に限定されるものではなく、常法に従って行うことができるが、主として直流エッチングが適用される。
エッチング処理においては、箔に垂直なピットが均一に形成され、高い粗面化率が得られる。この際には、ピットが十分に深く形成されるようにエッチング条件を設定して高容量化を図ることができる。この箔を常法により電解コンデンサに電極として組み込むことにより静電容量の高いコンデンサが得られる。
次に、上記鋳塊に、590℃で6時間加熱する均質化処理を施し、さらに、表2に示す開始温度、圧下率、仕上がり温度で熱間圧延を行った。熱間圧延後に冷間圧延を行い230°×6hrの中間焼鈍後、圧下率20%の付加圧延を行なって最終箔厚とし、表2に示す焼鈍温度で6時間の焼鈍を行った。
Claims (5)
- 質量比において、純度99.9%以上で、Si:5〜30ppm、Fe:5〜30ppm、Cu:10〜100ppm、Pb:0.1〜3ppmを含有し、残部Al及び不可避不純物からなる組成を有し、さらに立方晶率が95%以上で、円相当直径5mm以上の粗大結晶粒面積率が0.01%以下であることを特徴とする電解コンデンサ電極用アルミニウム箔。
- 質量比において、純度99.9%以上で、Si:5〜30ppm、Fe:5〜30ppm、Cu:10〜100ppm、Pb:0.1〜3ppm含有し、さらにLi、Na、Ca、希土類元素の1種または2種以上を合計で1〜20ppm含有し、残部Al及び不可避不純物からなる組成を有し、さらに立方晶率が95%以上で、円相当直径5mm以上の粗大結晶粒面積率が0.01%以下であることを特徴とする電解コンデンサ電極用アルミニウム箔。
- 請求項1または2に記載の組成を有し、箔厚が111〜200μmの電解コンデンサ電極用アルミニウム箔を製造方法する方法であって、鋳造時に脱ガス処理を行って鋳造材のガス値を0.12cc/100g以下とすることを特徴とする電解コンデンサ電極用アルミニウム箔の製造方法。
- 530〜600℃の均質化処理を施した鋳造材に、開始温度530℃以上、圧下率95%以上、終了時温度250〜400℃で熱間圧延を行うことを特徴とする請求項3記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム箔の製造方法。
- 最終焼鈍を550℃以上、6時間以上で行うことを特徴とする請求項3または4に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム箔の製造方法。
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