JP2007044639A - 晶析方法および晶析装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】結晶形状が制御された結晶粒子を効率よく容易に得ることのできる晶析方法を提供すること。
【解決手段】晶癖修飾剤を含む飽和水溶液中で、目的とする結晶へ晶癖修飾剤を吸着させた後、飽和水溶液を冷却することによって、目的とする結晶の晶癖修飾剤吸着平衡時間(tAE)および晶癖修飾剤吸着平衡時間における結晶成長開始温度(TGE)を予め測定しておく工程と、
種結晶および晶癖修飾剤を含む飽和水溶液を、前記結晶成長開始温度(TGE)より高く飽和温度(Ts)以下で晶癖修飾剤吸着平衡時間(tAE)以上保持して、種結晶へ晶癖修飾剤を吸着させる工程と、
前記晶癖修飾剤が吸着された種結晶を含む飽和水溶液を、前記結晶成長開始温度(TGE)以下に冷却して種結晶を成長させ、目的とする結晶を得る工程と
を含むことを特徴とする晶析方法。
【選択図】図1
【解決手段】晶癖修飾剤を含む飽和水溶液中で、目的とする結晶へ晶癖修飾剤を吸着させた後、飽和水溶液を冷却することによって、目的とする結晶の晶癖修飾剤吸着平衡時間(tAE)および晶癖修飾剤吸着平衡時間における結晶成長開始温度(TGE)を予め測定しておく工程と、
種結晶および晶癖修飾剤を含む飽和水溶液を、前記結晶成長開始温度(TGE)より高く飽和温度(Ts)以下で晶癖修飾剤吸着平衡時間(tAE)以上保持して、種結晶へ晶癖修飾剤を吸着させる工程と、
前記晶癖修飾剤が吸着された種結晶を含む飽和水溶液を、前記結晶成長開始温度(TGE)以下に冷却して種結晶を成長させ、目的とする結晶を得る工程と
を含むことを特徴とする晶析方法。
【選択図】図1
Description
本発明は、晶析方法および晶析装置に関する。
結晶形状や粒径が制御された結晶粒子は、良好な溶解特性や溶融特性、あるいは均一な光学的特性、磁気的特性などの特徴を有するため、医薬品や工業製品、中間体原料など幅広い分野で求められている。
例えば、塩化ナトリウムの結晶形状を変化させる手法として、pHが2.72に調整された梅酢から水分を室温で除々に蒸発させることによって、{111}面から構成される塩化ナトリウムを得る方法が知られている(非特許文献1を参照)。
一方、粒径が制御された結晶粒子を工業的規模で生産する手法として、晶析槽の母液と同一組成の溶液を溶質結晶の析出のない状態で母液の飽和温度以下まで冷却し、溶質結晶の析出のない状態で晶析槽へ投入する方法が知られている(特許文献1を参照)。
一方、粒径が制御された結晶粒子を工業的規模で生産する手法として、晶析槽の母液と同一組成の溶液を溶質結晶の析出のない状態で母液の飽和温度以下まで冷却し、溶質結晶の析出のない状態で晶析槽へ投入する方法が知られている(特許文献1を参照)。
佐々木茂子、他2名、「塩化ナトリウムの晶癖に対するクエン酸の不純物効果」、日本海水学会誌、2001年、第55巻、第5号、340〜342頁
特開2004−33951号公報
しかしながら、上記非特許文献1に記載の方法では、目的とする結晶粒子を得るのに多大な時間を要する上に、晶析条件のわずかな変化が結晶形状に大きな影響を与えてしまうためバラツキの少ない結晶粒子を安定して得ることが困難であった。そのため、このような方法を工業的規模の晶析槽に適用することはできない。
また、上記特許文献1に記載の方法では、結晶形状の制御については何ら考慮されていないため、このような方法で所望の結晶形状を有する結晶粒子を得ることは不可能である。
したがって、本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、結晶形状が制御された結晶粒子を効率よく容易に得ることのできる晶析方法および晶析装置を提供することを目的としている。
また、上記特許文献1に記載の方法では、結晶形状の制御については何ら考慮されていないため、このような方法で所望の結晶形状を有する結晶粒子を得ることは不可能である。
したがって、本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、結晶形状が制御された結晶粒子を効率よく容易に得ることのできる晶析方法および晶析装置を提供することを目的としている。
そこで、本発明者らは、上記のような従来の課題を解決すべく鋭意研究、開発を遂行した結果、目的とする結晶の晶癖修飾剤吸着平衡時間およびその時間における結晶成長開始温度を予め測定しておき、これら測定された晶癖修飾剤吸着平衡時間および結晶成長開始温度に基づいて、種結晶への晶癖修飾剤の吸着および水溶液の冷却を行う晶析方法が、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、晶癖修飾剤を含む飽和水溶液中で、目的とする結晶へ晶癖修飾剤を吸着させた後、飽和水溶液を冷却することによって、目的とする結晶の晶癖修飾剤吸着平衡時間(tAE)および晶癖修飾剤吸着平衡時間における結晶成長開始温度(TGE)を予め測定しておく工程と、種結晶および晶癖修飾剤を含む飽和水溶液を、晶癖修飾剤吸着平衡時間における結晶成長開始温度(TGE)より高く飽和温度(Ts)以下で晶癖修飾剤吸着平衡時間(tAE)以上保持して、種結晶へ晶癖修飾剤を吸着させる工程と、晶癖修飾剤が吸着された種結晶を含む飽和水溶液を、晶癖修飾剤吸着平衡時間における結晶成長開始温度(TGE)以下に冷却して種結晶を成長させ、目的とする結晶を得る工程とを含むことを特徴とする晶析方法である。
目的とする結晶は、{111}面が成長した塩化ナトリウムであり、かつ晶癖修飾剤は、クエン酸であることが好ましい。また、目的とする結晶は、{100}面が成長したリン酸二水素カリウムであり、かつ晶癖修飾剤は、硫酸アルミニウムであることも好ましい。
また、本発明は、目的とする結晶の晶癖修飾剤吸着平衡時間(tAE)および晶癖修飾剤吸着平衡時間における結晶成長開始温度(TGE)を測定する手段と、種結晶および晶癖修飾剤を含む飽和水溶液を、前記結晶成長開始温度(TGE)より高く飽和温度(Ts)以下で晶癖修飾剤吸着平衡時間(tAE)以上保持する手段と、前記晶癖修飾剤が吸着された種結晶を含む飽和水溶液を、前記結晶成長開始温度(TGE)以下に冷却する手段とを備えていることを特徴とする晶析装置である。
すなわち、本発明は、晶癖修飾剤を含む飽和水溶液中で、目的とする結晶へ晶癖修飾剤を吸着させた後、飽和水溶液を冷却することによって、目的とする結晶の晶癖修飾剤吸着平衡時間(tAE)および晶癖修飾剤吸着平衡時間における結晶成長開始温度(TGE)を予め測定しておく工程と、種結晶および晶癖修飾剤を含む飽和水溶液を、晶癖修飾剤吸着平衡時間における結晶成長開始温度(TGE)より高く飽和温度(Ts)以下で晶癖修飾剤吸着平衡時間(tAE)以上保持して、種結晶へ晶癖修飾剤を吸着させる工程と、晶癖修飾剤が吸着された種結晶を含む飽和水溶液を、晶癖修飾剤吸着平衡時間における結晶成長開始温度(TGE)以下に冷却して種結晶を成長させ、目的とする結晶を得る工程とを含むことを特徴とする晶析方法である。
目的とする結晶は、{111}面が成長した塩化ナトリウムであり、かつ晶癖修飾剤は、クエン酸であることが好ましい。また、目的とする結晶は、{100}面が成長したリン酸二水素カリウムであり、かつ晶癖修飾剤は、硫酸アルミニウムであることも好ましい。
また、本発明は、目的とする結晶の晶癖修飾剤吸着平衡時間(tAE)および晶癖修飾剤吸着平衡時間における結晶成長開始温度(TGE)を測定する手段と、種結晶および晶癖修飾剤を含む飽和水溶液を、前記結晶成長開始温度(TGE)より高く飽和温度(Ts)以下で晶癖修飾剤吸着平衡時間(tAE)以上保持する手段と、前記晶癖修飾剤が吸着された種結晶を含む飽和水溶液を、前記結晶成長開始温度(TGE)以下に冷却する手段とを備えていることを特徴とする晶析装置である。
本発明によれば、結晶形状が制御された結晶粒子を効率よく容易に得ることのできる晶析方法および晶析装置を提供することができる。
本発明による晶析方法は、晶癖修飾剤を含む飽和水溶液中で、目的とする結晶へ晶癖修飾剤を吸着させた後、飽和水溶液を冷却することによって、目的とする結晶の晶癖修飾剤吸着平衡時間(tAE)および晶癖修飾剤吸着平衡時間における結晶成長開始温度(TGE)を予め測定しておく工程(工程1)と、種結晶および晶癖修飾剤を含む飽和水溶液を、晶癖修飾剤吸着平衡時間における結晶成長開始温度(TGE)より高く飽和温度(Ts)以下で晶癖修飾剤吸着平衡時間(tAE)以上保持して、種結晶へ晶癖修飾剤を吸着させる工程(工程2)と、晶癖修飾剤が吸着された種結晶を含む飽和水溶液を、晶癖修飾剤吸着平衡時間における結晶成長開始温度(TGE)以下に冷却して種結晶を成長させ、目的とする結晶を得る工程(工程3)とを含むものである。
工程1:晶癖修飾剤吸着平衡時間(tAE)および晶癖修飾剤吸着平衡時間における結晶成長開始温度(TGE)の測定
工程1では、まず、晶癖修飾剤を含む、飽和温度(Ts)における結晶の飽和水溶液を調製する。その際、晶癖修飾剤を含む水溶液に結晶を過剰に加えておき、その後、濾過採取して結晶の飽和水溶液を確実に作成することが望ましい。
ここで使用する晶癖修飾剤としては、目的とする結晶に晶癖修飾作用を与えることのできるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、結晶として塩化ナトリウムを用いる場合、クエン酸、コハク酸、酒石酸、りんご酸、酢酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、アスパラギン酸およびこれらの混合物を挙げることができる。ここでの飽和水溶液中に含まれる晶癖修飾剤の濃度は、クエン酸、コハク酸、酒石酸およびりんご酸の場合、0.2mol/L〜0.5mol/L、酢酸の場合、1.5mol/L〜2.0mol/L、アジピン酸、マレイン酸およびフマル酸の場合、0.02mol/L〜0.03mol/L、アスパラギン酸の場合、0.002mol/L〜0.004mol/Lであることが好ましい。また、結晶としてリン酸二水素カリウムを用いる場合、硫酸アルミニウム、硫酸クロム(III)、硫酸鉄(III)およびこれらの混合物を挙げることができる。ここでの飽和水溶液中に含まれる晶癖修飾剤の濃度は、0.2mg/L〜60mg/Lであることが好ましい。
次いで、予め用意した目的とする結晶をステンレスワイヤー等に取り付けて固定し、これを飽和水溶液中に浸漬させ、目的とする結晶へ晶癖修飾剤を所定の時間吸着させる。吸着させる際、飽和水溶液の温度は、飽和温度(Ts)以下で溶質結晶が析出しない温度であればよい。
目的とする結晶としては、最終的に得ようとする結晶形状を有するものであればよいが、本発明の特長を生かす観点から、従来は大量生産が難しい特異な結晶形状を有するものが好ましい。このような結晶としては、例えば、クエン酸を晶癖修飾剤に用いた場合、{111}面が成長した塩化ナトリウム(八面体塩化ナトリウム)、硫酸アルミニウム、硫酸鉄(III)を晶癖修飾剤に用いた場合、{100}面が成長したリン酸二水素カリウム(柱状リン酸二水素カリウム)、グルコースを晶癖修飾剤に用いた場合、[010]方向が成長したサッカロース、脂肪族カルボン酸を晶癖修飾剤に用いた場合、{100}面が成長した臭化カリウム、L-グルタミン酸を晶癖修飾剤に用いた場合、(101)面が成長したL−アスパラギン一水和物などを挙げることができる。
工程1では、まず、晶癖修飾剤を含む、飽和温度(Ts)における結晶の飽和水溶液を調製する。その際、晶癖修飾剤を含む水溶液に結晶を過剰に加えておき、その後、濾過採取して結晶の飽和水溶液を確実に作成することが望ましい。
ここで使用する晶癖修飾剤としては、目的とする結晶に晶癖修飾作用を与えることのできるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、結晶として塩化ナトリウムを用いる場合、クエン酸、コハク酸、酒石酸、りんご酸、酢酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、アスパラギン酸およびこれらの混合物を挙げることができる。ここでの飽和水溶液中に含まれる晶癖修飾剤の濃度は、クエン酸、コハク酸、酒石酸およびりんご酸の場合、0.2mol/L〜0.5mol/L、酢酸の場合、1.5mol/L〜2.0mol/L、アジピン酸、マレイン酸およびフマル酸の場合、0.02mol/L〜0.03mol/L、アスパラギン酸の場合、0.002mol/L〜0.004mol/Lであることが好ましい。また、結晶としてリン酸二水素カリウムを用いる場合、硫酸アルミニウム、硫酸クロム(III)、硫酸鉄(III)およびこれらの混合物を挙げることができる。ここでの飽和水溶液中に含まれる晶癖修飾剤の濃度は、0.2mg/L〜60mg/Lであることが好ましい。
次いで、予め用意した目的とする結晶をステンレスワイヤー等に取り付けて固定し、これを飽和水溶液中に浸漬させ、目的とする結晶へ晶癖修飾剤を所定の時間吸着させる。吸着させる際、飽和水溶液の温度は、飽和温度(Ts)以下で溶質結晶が析出しない温度であればよい。
目的とする結晶としては、最終的に得ようとする結晶形状を有するものであればよいが、本発明の特長を生かす観点から、従来は大量生産が難しい特異な結晶形状を有するものが好ましい。このような結晶としては、例えば、クエン酸を晶癖修飾剤に用いた場合、{111}面が成長した塩化ナトリウム(八面体塩化ナトリウム)、硫酸アルミニウム、硫酸鉄(III)を晶癖修飾剤に用いた場合、{100}面が成長したリン酸二水素カリウム(柱状リン酸二水素カリウム)、グルコースを晶癖修飾剤に用いた場合、[010]方向が成長したサッカロース、脂肪族カルボン酸を晶癖修飾剤に用いた場合、{100}面が成長した臭化カリウム、L-グルタミン酸を晶癖修飾剤に用いた場合、(101)面が成長したL−アスパラギン一水和物などを挙げることができる。
所定の時間吸着させた後、飽和水溶液を、例えば、0.2℃/分〜0.4℃/分の冷却速度で冷却して、結晶の各々の面が成長を開始する結晶成長開始温度(TG)を測定する。なお、結晶成長の開始点は、例えば、CCDカメラを通してモニター上で結晶表面を観察し、結晶成長に伴い、照明に反射する結晶表面からの光を確認することで判断することができる。そして、飽和温度(Ts)から、測定された結晶成長開始温度(TG)を差し引いて、結晶成長開始過冷却度(ΔTG)を求める(ΔTG=TS−TG)。吸着時間を変えて同様の測定を繰り返し、結晶成長開始過冷却度(ΔTG)が一定の値となり始める時の吸着時間を晶癖修飾剤吸着平衡時間(tAE)とし、そして、この吸着時間における結晶成長開始温度を晶癖修飾剤吸着平衡時間における結晶成長開始温度(TGE)とする。
なお、塩化ナトリウムのように2つの結晶面、すなわち、{111}面および{100}面を有する結晶を所望する場合では、それぞれの結晶面におけるtAEおよびTGEを測定する必要がある。
なお、塩化ナトリウムのように2つの結晶面、すなわち、{111}面および{100}面を有する結晶を所望する場合では、それぞれの結晶面におけるtAEおよびTGEを測定する必要がある。
工程2:種結晶への晶癖修飾剤の吸着
工程2では、工程1で測定された晶癖修飾剤吸着平衡時間(tAE)および晶癖修飾剤吸着平衡時間における結晶成長開始温度(TGE)に基づいて、適当な晶析槽中で種結晶の表面へ晶癖修飾剤を吸着させ、吸着平衡の状態にする。すなわち、種結晶および晶癖修飾剤を含む飽和水溶液を、TGEより高くTs以下の温度でtAE以上保持することによって、種結晶へ晶癖修飾剤を吸着させる。
この工程2における飽和水溶液中の晶癖修飾剤濃度は、基本的には工程1と同一にする必要があるが、工程1で晶癖修飾剤濃度を変えてtAEおよびTGEを数点測定し、測定されたtAEおよびTGEを用いて下記式(1)を最小二乗法などによりフィッティングして、晶癖修飾剤濃度Cと結晶成長開始過冷却度ΔTGとの関数を決定しておけば、ある晶癖修飾剤濃度における結晶成長開始過冷却度を決定することができるので、工程1と同一にしなくてもよい。
工程2では、工程1で測定された晶癖修飾剤吸着平衡時間(tAE)および晶癖修飾剤吸着平衡時間における結晶成長開始温度(TGE)に基づいて、適当な晶析槽中で種結晶の表面へ晶癖修飾剤を吸着させ、吸着平衡の状態にする。すなわち、種結晶および晶癖修飾剤を含む飽和水溶液を、TGEより高くTs以下の温度でtAE以上保持することによって、種結晶へ晶癖修飾剤を吸着させる。
この工程2における飽和水溶液中の晶癖修飾剤濃度は、基本的には工程1と同一にする必要があるが、工程1で晶癖修飾剤濃度を変えてtAEおよびTGEを数点測定し、測定されたtAEおよびTGEを用いて下記式(1)を最小二乗法などによりフィッティングして、晶癖修飾剤濃度Cと結晶成長開始過冷却度ΔTGとの関数を決定しておけば、ある晶癖修飾剤濃度における結晶成長開始過冷却度を決定することができるので、工程1と同一にしなくてもよい。
使用する種結晶としては、目的とする結晶と結晶形状が異なるものであればよいが、工業的に入手しやすく、また安価であるものが好ましい。
また、この工程2において、飽和水溶液中に含まれる種結晶の量は特に限定されるものではないが、種結晶の添加量が少な過ぎると二次結晶核が発生する恐れがあるため好ましくない。特に、種結晶添加量を下記の式(2)および(3)から求められる飽和水溶液100mL当たりの種結晶添加量以上にすることで、よりバラツキの少ない結晶を安定して効率よく得ることができるため好ましい。
CS *=2.17×10−6×LS 2 (2)
CS=WS/Wth (3)
ただし、
CS:種晶添加比[−]
CS *:臨界種晶添加比[−]
LS 2:種晶体積平均粒径[μm]
WS:種晶添加量[g/水100g]
Wth:理論析出量[g/水100g]
を表す。
また、この工程2において、飽和水溶液中に含まれる種結晶の量は特に限定されるものではないが、種結晶の添加量が少な過ぎると二次結晶核が発生する恐れがあるため好ましくない。特に、種結晶添加量を下記の式(2)および(3)から求められる飽和水溶液100mL当たりの種結晶添加量以上にすることで、よりバラツキの少ない結晶を安定して効率よく得ることができるため好ましい。
CS *=2.17×10−6×LS 2 (2)
CS=WS/Wth (3)
ただし、
CS:種晶添加比[−]
CS *:臨界種晶添加比[−]
LS 2:種晶体積平均粒径[μm]
WS:種晶添加量[g/水100g]
Wth:理論析出量[g/水100g]
を表す。
工程3:種結晶の成長
工程3では、上述した工程2で得られた晶癖修飾剤の吸着が平衡になっている種結晶を含む飽和水溶液を、晶癖修飾剤吸着平衡時間における結晶成長開始温度(TGE)以下に冷却して種結晶を成長させることで、所望の結晶形状を有する結晶を得ることができる。ここでの飽和水溶液の冷却速度は特に限定されるものではないが、結晶を効率よく製造する観点から、塩化ナトリウム結晶の場合、0.1℃/日〜5℃/日、リン酸二水素カリウム結晶の場合、1℃/h〜4℃/hであることが好ましい。
工程3では、上述した工程2で得られた晶癖修飾剤の吸着が平衡になっている種結晶を含む飽和水溶液を、晶癖修飾剤吸着平衡時間における結晶成長開始温度(TGE)以下に冷却して種結晶を成長させることで、所望の結晶形状を有する結晶を得ることができる。ここでの飽和水溶液の冷却速度は特に限定されるものではないが、結晶を効率よく製造する観点から、塩化ナトリウム結晶の場合、0.1℃/日〜5℃/日、リン酸二水素カリウム結晶の場合、1℃/h〜4℃/hであることが好ましい。
工程3で得られた目的とする結晶を含む水溶液は、必要に応じて、濾過、スプレードライ、遠心分離などの当該技術分野において公知の分離工程を経て結晶が分離された後、分離された結晶は乾燥される。
なお、工程2および3においては、結晶の凝集を防ぐために晶析槽内を攪拌することが好ましい。ただし、工程2および3の操作が3日以上に及ぶ場合は、攪拌によって結晶が摩耗する恐れがあるため、攪拌速度を適宜調整することが好ましい。
また、本発明による晶析装置は、目的とする結晶の晶癖修飾剤吸着平衡時間(tAE)および晶癖修飾剤吸着平衡時間における結晶成長開始温度(TGE)を測定する手段と、種結晶および晶癖修飾剤を含む飽和水溶液を、前記結晶成長開始温度(TGE)より高く飽和温度(Ts)以下で晶癖修飾剤吸着平衡時間(tAE)以上保持する手段と、前記晶癖修飾剤が吸着された種結晶を含む飽和水溶液を、前記結晶成長開始温度(TGE)以下に冷却する手段とを備えている。
図1は、本発明の一実施形態に係る晶析装置の模式図である。目的とする結晶の晶癖修飾剤吸着平衡時間(tAE)および晶癖修飾剤吸着平衡時間における結晶成長開始温度(TGE)を測定する手段としての予備測定用晶析槽1は、晶癖修飾剤を含む飽和溶液2を収容するための収容部3aと、目的とする結晶4を飽和溶液2中に固定するための固定部5と、飽和溶液2を攪拌するための攪拌部6aと、飽和溶液2の温度を調節するための温度調節部7aと、飽和溶液2の温度を測定するための温度測定部8aと、結晶成長を観察するための結晶成長観察部9とを有している。さらに、結晶成長観察部9および温度測定部8aは、制御部13に接続されている。制御部13は、結晶成長観察部9からの画像データに基づいて結晶成長の開始点を判断し、結晶が成長したと判断された時の飽和溶液温度、すなわち、結晶成長開始温度(TG)を制御部13に接続された記憶部10に記憶させる。
このように構成された予備測定用晶析槽1において、上述した工程1に従って、結晶成長開始温度(TG)から目的とする結晶の晶癖修飾剤吸着平衡時間(tAE)および晶癖修飾剤吸着平衡時間における結晶成長開始温度(TGE)が求められ、これらtAEおよびTGEが記憶部10に記憶される。
図1は、本発明の一実施形態に係る晶析装置の模式図である。目的とする結晶の晶癖修飾剤吸着平衡時間(tAE)および晶癖修飾剤吸着平衡時間における結晶成長開始温度(TGE)を測定する手段としての予備測定用晶析槽1は、晶癖修飾剤を含む飽和溶液2を収容するための収容部3aと、目的とする結晶4を飽和溶液2中に固定するための固定部5と、飽和溶液2を攪拌するための攪拌部6aと、飽和溶液2の温度を調節するための温度調節部7aと、飽和溶液2の温度を測定するための温度測定部8aと、結晶成長を観察するための結晶成長観察部9とを有している。さらに、結晶成長観察部9および温度測定部8aは、制御部13に接続されている。制御部13は、結晶成長観察部9からの画像データに基づいて結晶成長の開始点を判断し、結晶が成長したと判断された時の飽和溶液温度、すなわち、結晶成長開始温度(TG)を制御部13に接続された記憶部10に記憶させる。
このように構成された予備測定用晶析槽1において、上述した工程1に従って、結晶成長開始温度(TG)から目的とする結晶の晶癖修飾剤吸着平衡時間(tAE)および晶癖修飾剤吸着平衡時間における結晶成長開始温度(TGE)が求められ、これらtAEおよびTGEが記憶部10に記憶される。
また、種結晶および晶癖修飾剤を含む飽和水溶液を、前記結晶成長開始温度(TGE)より高く飽和温度(Ts)以下で晶癖修飾剤吸着平衡時間(tAE)以上保持する手段および前記晶癖修飾剤が吸着された種結晶を含む飽和水溶液を、前記結晶成長開始温度(TGE)以下に冷却する手段としての回分晶析槽11は、種結晶および晶癖修飾剤を含む飽和溶液12を収容するための収容部3bと、飽和溶液12を攪拌するための攪拌部6bと、飽和溶液12の温度を調節するための温度調節部7bと、飽和溶液12の温度を測定するための温度測定部8bとを有している。さらに、攪拌部6b、温度調節部7bおよび温度測定部8bは制御部13に接続されており、制御部13は記憶部10に接続されている。そして、制御部13は、結晶が凝集したり摩耗したりしないように攪拌部6bの攪拌速度を制御しつつ、先に記憶されたTGEを読み出して飽和溶液12の温度が所定の温度になるように温度調節部7bを制御する。
このように構成された回分晶析槽11において、上述した工程2および3に従って、所望の結晶形状を有する結晶を得ることができる。
このように構成された回分晶析槽11において、上述した工程2および3に従って、所望の結晶形状を有する結晶を得ることができる。
上述したように本発明の晶析方法および晶析装置は、目的とする結晶の晶癖修飾剤吸着平衡時間(tAE)および晶癖修飾剤吸着平衡時間における結晶成長開始温度(TGE)を予め測定し、吸着時間および水溶液温度を管理するだけで、複雑な制御を必要としないという利点があるため、実験室レベルから化学プラント等に容易にスケールアップすることが可能である。さらに、本発明の晶析方法および晶析装置は、結晶形状が厳密に制御された結晶粒子を効率よく容易に得ることができることから、工業的利用価値の極めて高いものと言える。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
〔実施例1〕
顆粒状の水酸化ナトリウムおよび蒸留水100mLを200mL三角フラスコに加え、晶癖修飾剤として0.4mol/Lとなるようにクエン酸を加えて35℃で溶解させる。そして、飽和温度35℃(TS)における飽和水溶液を確実に作成するため、過剰の塩化ナトリウムを三角フラスコにさらに加え、3時間攪拌させた。その溶液を40mL濾過採取して、50mLガラスビーカーに入れてゴム栓で密閉した。
顆粒状の水酸化ナトリウムおよび蒸留水100mLを200mL三角フラスコに加え、晶癖修飾剤として0.4mol/Lとなるようにクエン酸を加えて35℃で溶解させる。そして、飽和温度35℃(TS)における飽和水溶液を確実に作成するため、過剰の塩化ナトリウムを三角フラスコにさらに加え、3時間攪拌させた。その溶液を40mL濾過採取して、50mLガラスビーカーに入れてゴム栓で密閉した。
次いで、図2に示される{111}面を有する塩化ナトリウム結晶(0.4mol/Lのクエン酸を含む塩化ナトリウム水溶液をシャーレに加え、さらに水酸化ナトリウム溶液を加えて水溶液のpHを2.7〜8.6に調整した後、350時間程度かけて室温で水分を蒸発させ析出させたもの)をステンレスワイヤーに取り付けて固定し、これを先に調製した塩化ナトリウム飽和水溶液中に浸漬して、溶液温度34.3℃の条件下でクエン酸の吸着を開始させた。所定の吸着時間(tA)経過後、冷却速度0.3℃/分で水溶液を冷却させて、結晶の各々の面が成長を開始する溶液温度(TG)を測定した。なお、結晶成長開始の判断は、CCDカメラを通してモニター上で結晶表面を観察し、結晶成長に伴い、照明に反射する結晶表面からの光を確認した時点とした。そして、飽和温度(Ts)から結晶成長開始温度(TG)を差し引いて、結晶成長開始過冷却度(ΔTG)を求めた(ΔTG=TS−TG)。この結晶成長開始過冷却度(ΔTG)測定までの温度プロフィールを図3に示した。この結晶成長開始過冷却度(ΔTG)をクエン酸吸着時間(tA)に対してプロットした結果を図4に示した。
図4から分かるように、{111}面を有する塩化ナトリウムへのクエン酸の吸着時間に対する結晶成長開始過冷却度(ΔTG)は、15時間以降からほぼ一定(ΔTG=4.0℃)になった。したがって、{111}面を有する塩化ナトリウムにおいて、晶癖修飾剤吸着平衡時間(tAE)は15時間、晶癖修飾剤吸着平衡時間(tAE)での結晶成長開始温度(TGE)は31.0℃と求められた。
図4から分かるように、{111}面を有する塩化ナトリウムへのクエン酸の吸着時間に対する結晶成長開始過冷却度(ΔTG)は、15時間以降からほぼ一定(ΔTG=4.0℃)になった。したがって、{111}面を有する塩化ナトリウムにおいて、晶癖修飾剤吸着平衡時間(tAE)は15時間、晶癖修飾剤吸着平衡時間(tAE)での結晶成長開始温度(TGE)は31.0℃と求められた。
上記{111}面を有する塩化ナトリウムと同様にして、{100}面を有する塩化ナトリウム結晶(関東化学株式会社製、鹿1級塩化ナトリウムの室温飽和水溶液を室温にて徐冷蒸発させて析出させたもの)において、晶癖修飾剤吸着平衡時間(tAE)および晶癖修飾剤吸着平衡時間(tAE)での結晶成長開始温度(TGE)を求めたところ、tAE=15時間およびTGE=31.6℃であった。
以上のことから、クエン酸濃度が0.4mol/Lの塩化ナトリウム飽和水溶液の温度を31.0℃以下に冷却すれば、{111}面の成長が開始され、温度を31.6℃以下に冷却すれば、{100}面の成長も開始されることが分かる。したがって、31.6℃より高く35℃以下の水溶液温度で15時間以上保持することで結晶を成長させずに種結晶へのクエン酸の吸着を行うことができ、次いで、水溶液を31.0℃以下に冷却することで種結晶を成長させることができる。
また、塩化ナトリウム種結晶およびクエン酸を含む飽和水溶液を調製するに先立ち、上述した式(2)および(3)に基づいて、飽和溶液100mL当たりの塩化ナトリウム種結晶添加量を0.02gと求めた。
温度計およびU字型攪拌翼を備えた500mLセパラブルフラスコを晶析槽として用いた。なお、セパラブルフラスコ本体と蓋との間にはゴムパッキンを挟み込み、U字型攪拌翼のシャフトはパーフェクトシール(General製)を通してフラスコの口に固定してある。はじめに、クエン酸添加濃度0.4mol/L、35℃飽和の塩化ナトリウム水溶液(pH5.4)350mLを晶析槽に加えた。飽和水溶液を34.7℃に設定し、塩化ナトリウム種結晶0.07g(飽和溶液100mL当たり0.02g)を添加して、38〜250rpmで水溶液を攪拌しながら1日間クエン酸を吸着させた。クエン酸を吸着させた後、水溶液を0.3〜5℃/日で27.7℃まで冷却させた。なお、冷却過程において、31.0℃付近で{111}面が現れたことを確認した。得られた結晶の実体顕微鏡写真および電子顕微鏡写真を図5および図6にそれぞれ示した。図5および図6から分かるように、{111}面が成長した塩化ナトリウム結晶が得られた。
〔実施例2〕
クエン酸の吸着時間を22時間とし、クエン酸濃度を0.05〜0.5mol/Lに変えた以外は実施例1と同様にして、(100)面および(111)面における結晶成長開始過冷却度(ΔTG)を測定した。(100)面および(111)面における結晶成長開始過冷却度(ΔTG)をクエン酸濃度に対してプロットした結果を図7に示した。また、実験で得られたそれぞれの結晶成長開始過冷却度(ΔTG)を上述した式(1)に代入し、最小二乗法によりフィッティングさせ、図7に実線として示した。
上記で測定されていないクエン酸濃度C[mol/L]における実線上の結晶成長開始過冷却度(ΔTG)を用いて、実施例1と同様にして晶析実験を行ったところ、{111}面が成長した塩化ナトリウム結晶を得ることができた。このことから、クエン酸濃度を変えて結晶成長開始過冷却度(ΔTG)を何点か測定し、これを最小二乗法により式(1)にフィッティングさせておくことで、測定されていないクエン酸濃度における(100)面および(111)面における結晶成長開始過冷却度(ΔTG)を知ることができ、さらにその値に基づいて晶析操作を行うことで、目的とする結晶形状を有する塩化ナトリウム結晶が得られることが示唆された。
クエン酸の吸着時間を22時間とし、クエン酸濃度を0.05〜0.5mol/Lに変えた以外は実施例1と同様にして、(100)面および(111)面における結晶成長開始過冷却度(ΔTG)を測定した。(100)面および(111)面における結晶成長開始過冷却度(ΔTG)をクエン酸濃度に対してプロットした結果を図7に示した。また、実験で得られたそれぞれの結晶成長開始過冷却度(ΔTG)を上述した式(1)に代入し、最小二乗法によりフィッティングさせ、図7に実線として示した。
上記で測定されていないクエン酸濃度C[mol/L]における実線上の結晶成長開始過冷却度(ΔTG)を用いて、実施例1と同様にして晶析実験を行ったところ、{111}面が成長した塩化ナトリウム結晶を得ることができた。このことから、クエン酸濃度を変えて結晶成長開始過冷却度(ΔTG)を何点か測定し、これを最小二乗法により式(1)にフィッティングさせておくことで、測定されていないクエン酸濃度における(100)面および(111)面における結晶成長開始過冷却度(ΔTG)を知ることができ、さらにその値に基づいて晶析操作を行うことで、目的とする結晶形状を有する塩化ナトリウム結晶が得られることが示唆された。
〔実施例3〕
飽和温度45℃(TS)における飽和水溶液を確実に作成するため、過剰のリン酸二水素カリウム、および蒸留水100mLを200mL三角フラスコに加え、45℃で3時間攪拌させた。その溶液を40mL濾過採取して、50mLガラスビーカーに入れる。Al(III)濃度が4.3mg/Lとなるように晶癖修飾剤として硫酸アルミニウム16.5水和物をさらに加えてゴム栓で密閉し、約1時間攪拌させて溶解させた。
飽和温度45℃(TS)における飽和水溶液を確実に作成するため、過剰のリン酸二水素カリウム、および蒸留水100mLを200mL三角フラスコに加え、45℃で3時間攪拌させた。その溶液を40mL濾過採取して、50mLガラスビーカーに入れる。Al(III)濃度が4.3mg/Lとなるように晶癖修飾剤として硫酸アルミニウム16.5水和物をさらに加えてゴム栓で密閉し、約1時間攪拌させて溶解させた。
次いで、図8に示される{100}面を有するリン酸二水素カリウム結晶(関東化学株式会社製、鹿1級リン酸二水素カリウムの35℃飽和水溶液を密閉し、12時間程度かけて室温にて結晶を析出させた後、徐冷蒸発で24時間程度かけて粒径約6mmまで成長させたもの)をステンレスワイヤーに取り付けて固定し、これを先に調製したリン酸二水素カリウム飽和水溶液中に浸漬して、溶液温度44.3℃の条件下でAl(III)の吸着を開始させた。所定の吸着時間(tA)経過後、冷却速度0.3℃/分で水溶液を冷却させて、(100)面が成長を開始する溶液温度(TG)を測定した。なお、結晶成長開始の判断は、CCDカメラを通してモニター上で結晶表面を観察し、結晶表面のステップが前進を開始した時点とした。そして、飽和温度(Ts)から結晶成長開始温度(TG)を差し引いて、結晶成長開始過冷却度(ΔTG)を求めた(ΔTG=TS−TG)。この結晶成長開始過冷却度(ΔTG)を晶癖修飾剤吸着時間(tA)に対してプロットした結果を図9に示した。
図9から分かるように、{100}面を有するリン酸二水素カリウム結晶へのAl(III)の吸着時間に対する結晶成長開始過冷却度(ΔTG)は、4.5時間以降からほぼ一定(ΔTG=4.4℃)になった。したがって、{100}面を有するリン酸二水素カリウム結晶において、晶癖修飾剤吸着平衡時間(tAE)は4.5時間、晶癖修飾剤吸着平衡時間(tAE)での結晶成長開始温度(TGE)は40.6℃と求められた。
図9から分かるように、{100}面を有するリン酸二水素カリウム結晶へのAl(III)の吸着時間に対する結晶成長開始過冷却度(ΔTG)は、4.5時間以降からほぼ一定(ΔTG=4.4℃)になった。したがって、{100}面を有するリン酸二水素カリウム結晶において、晶癖修飾剤吸着平衡時間(tAE)は4.5時間、晶癖修飾剤吸着平衡時間(tAE)での結晶成長開始温度(TGE)は40.6℃と求められた。
以上のことから、Al(III)濃度が4.3mg/Lのリン酸二水素カリウム飽和水溶液の温度を40.6℃以下に冷却すれば、{100}面の成長が開始されることが分かる。したがって、40.6℃より高く45℃以下の水溶液温度で4.5時間以上保持することで結晶を成長させずに、種結晶へのAl(III)の吸着を行うことができ、次いで、水溶液を40.6℃以下に冷却することで種結晶を成長させることができる。
また、リン酸二水素カリウム種結晶およびAl(III)を含む飽和水溶液を調製するに先立ち、上述した式(2)および(3)に基づいて、飽和溶液100mL当たりのリン酸二水素カリウム種結晶添加量を7gと求めた。
実施例1と同様の晶析槽を用いて、Al(III)濃度58mg/L、45℃飽和のリン酸二水素カリウム水溶液400mLを晶析槽に加えた。飽和水溶液を44.0℃に設定し、リン酸二水素カリウム種結晶28g(飽和溶液100mL当たり7g)を添加して、4.5時間Al(III)を吸着させた。Al(III)を吸着させた後、水溶液を0.05〜0.02℃/分(最適冷却速度は0.025℃/分)で23℃まで冷却させた。吸着段階および冷却段階における水溶液の攪拌速度は、140rpmである。得られた結晶の光学顕微鏡写真を図10および図11に示した。図10および図11から分かるように、{100}面が成長した柱状のリン酸二水素カリウム結晶が得られた。
〔実施例4〕
Al(III)の吸着時間を4.5時間とし、Al(III)濃度を2.83〜43.08mg/Lで変えて、実施例3と同様にして、(100)面における結晶成長開始過冷却度(ΔTG)を測定した。(100)面における結晶成長開始過冷却度(ΔTG)をAl(III)濃度に対してプロットした結果を図12に示した。また、実験で得られたそれぞれの結晶成長開始過冷却度(ΔTG)を上述した式(1)に代入し、最小二乗法によりフィッティングさせ、図12に実線として示した。
上記で測定されていないAl(III)濃度C[mg/L]における実線上の結晶成長開始過冷却度(ΔTG)を用いて、実施例3と同様にして晶析実験を行ったところ、{100}面が成長したリン酸二水素カリウム結晶を得ることができた。このことから、Al(III)濃度を変えて結晶成長開始過冷却度(ΔTG)を何点か測定し、これを最小二乗法により式(1)にフィッティングさせておくことで、測定されていないAl(III)濃度における(100)面における結晶成長開始過冷却度(ΔTG)を知ることができ、さらにその値に基づいて晶析操作を行うことで目的とするリン酸二水素カリウム結晶が得られることが示唆された。
Al(III)の吸着時間を4.5時間とし、Al(III)濃度を2.83〜43.08mg/Lで変えて、実施例3と同様にして、(100)面における結晶成長開始過冷却度(ΔTG)を測定した。(100)面における結晶成長開始過冷却度(ΔTG)をAl(III)濃度に対してプロットした結果を図12に示した。また、実験で得られたそれぞれの結晶成長開始過冷却度(ΔTG)を上述した式(1)に代入し、最小二乗法によりフィッティングさせ、図12に実線として示した。
上記で測定されていないAl(III)濃度C[mg/L]における実線上の結晶成長開始過冷却度(ΔTG)を用いて、実施例3と同様にして晶析実験を行ったところ、{100}面が成長したリン酸二水素カリウム結晶を得ることができた。このことから、Al(III)濃度を変えて結晶成長開始過冷却度(ΔTG)を何点か測定し、これを最小二乗法により式(1)にフィッティングさせておくことで、測定されていないAl(III)濃度における(100)面における結晶成長開始過冷却度(ΔTG)を知ることができ、さらにその値に基づいて晶析操作を行うことで目的とするリン酸二水素カリウム結晶が得られることが示唆された。
1 予備測定用晶析槽、2 晶癖修飾剤を含む飽和溶液、3a,3b 収容部、4 目的とする結晶、5 固定部、6a,6b 攪拌部、7a,7b 温度調節部、8a,8b 温度測定部、9 結晶成長観察部、10 記憶部、11 回分晶析槽、12 種結晶および晶癖修飾剤を含む飽和溶液、13 制御部。
Claims (4)
- 晶癖修飾剤を含む飽和水溶液中で、目的とする結晶へ晶癖修飾剤を吸着させた後、飽和水溶液を冷却することによって、目的とする結晶の晶癖修飾剤吸着平衡時間(tAE)および晶癖修飾剤吸着平衡時間における結晶成長開始温度(TGE)を予め測定しておく工程と、
種結晶および晶癖修飾剤を含む飽和水溶液を、前記結晶成長開始温度(TGE)より高く飽和温度(Ts)以下で晶癖修飾剤吸着平衡時間(tAE)以上保持して、種結晶へ晶癖修飾剤を吸着させる工程と、
前記晶癖修飾剤が吸着された種結晶を含む飽和水溶液を、前記結晶成長開始温度(TGE)以下に冷却して種結晶を成長させ、目的とする結晶を得る工程と
を含むことを特徴とする晶析方法。 - 前記目的とする結晶は、{111}面が成長した塩化ナトリウムであり、かつ前記晶癖修飾剤は、クエン酸であることを特徴とする請求項1に記載の晶析方法。
- 前記目的とする結晶は、{100}面が成長したリン酸二水素カリウムであり、かつ前記晶癖修飾剤は、硫酸アルミニウムであることを特徴とする請求項1に記載の晶析方法。
- 目的とする結晶の晶癖修飾剤吸着平衡時間(tAE)および晶癖修飾剤吸着平衡時間における結晶成長開始温度(TGE)を測定する手段と、
種結晶および晶癖修飾剤を含む飽和水溶液を、前記結晶成長開始温度(TGE)より高く飽和温度(Ts)以下で晶癖修飾剤吸着平衡時間(tAE)以上保持する手段と、
前記晶癖修飾剤が吸着された種結晶を含む飽和水溶液を、前記結晶成長開始温度(TGE)以下に冷却する手段と
を備えていることを特徴とする晶析装置。
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CN101876574A (zh) * | 2009-04-29 | 2010-11-03 | 中国科学院福建物质结构研究所 | 一种吨级晶体生长槽磷酸二氢钾饱和溶液亚稳区宽度测量方法 |
JP2014088283A (ja) * | 2012-10-30 | 2014-05-15 | Rin Kagaku Kogyo Kk | リン酸第二鉄含水和物粒子粉末及びその製造方法 |
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- 2005-08-11 JP JP2005233008A patent/JP2007044639A/ja active Pending
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