JP2004010408A - 粒状硫安の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】硫安母液から晶析装置を用いて粒状硫安を製造するに際し、硫安母液に媒晶剤として、(A)硝酸アンモニウムと、(B)クエン酸、シュウ酸及びリンゴ酸から選択される1種又は2種以上の有機酸を添加し、且つ、硝酸アンモニウムの添加量を硫安母液に対し0.025〜5wt%とし、有機酸の添加量を硫安母液に対し0.02〜5wt%として晶析することを特徴とする粒状硫安の製造方法。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コークス炉ガス等のアンモニア含有ガス又はアンモニア含有液体をを硫酸水溶液にて吸収又は反応させて得られた硫安母液より、粒状硫安を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アンモニア含有ガス又は液体から、粒状硫安を製造する方法としては、一般的に、アンモニア含有ガス又は液を硫酸水溶液と接触又は反応させて、硫安母液として吸収、回収し、次に硫安母液中の水分を蒸発させて硫安母液の濃度を高めたり、冷却して硫安の溶解度を低下させたりすることにより、その結果析出する結晶硫安を更に成長させ粒状化を図る方法にて実施されている。アンモニア含有ガス又は液としては、合成アンモニア又はアンモニアを含むガス又は液等があるが、コークス炉ガス等にも比較的多量に含まれているので、その回収が行われている。コークス炉ガス中のアンモニア分を回収する場合、飽和器にて遊離硫酸を含む母液と接触させ、硫安母液として吸収、回収し、次に晶析装置に送り、前記のような方法で硫安を析出させると同時に結晶硫安を更に成長させ粒状化を図る方法にて実施されている。
【0003】
上記工程にて製造した硫安結晶は、単肥又は混合肥料用として使用されるが、施肥を容易、且つ均一にするため、保存中の吸湿固結を防止するためなどの理由で所定の大きさの粒状であることが要求され、更に混合肥料用のものは、粒状のリン、カリ成分等とバラ状のまま配合しするため、粒が大きく、且つ球状に近い丸みを帯びた結晶形状が要求されている。
【0004】
そこで、所望の大きさ、形状を有する粒状の硫安を得るため、媒晶剤を添加する方法が提案されている。例えば、硫安母液から晶析装置を経て粒状硫安を製造する工程において、硫安母液に媒晶剤として、スルファミン酸又はスルファミン酸アンモニウムを添加する方法(特公昭60−38337号公報)、硝酸又は硝酸アンモニウムを添加する方法(特公昭60−38336号公報)、スルファミン酸又はスルファミン酸アンモニウムとスルファミン酸グアニジンを添加する方法(特開平7−61811号公報)等が知られている。
しかし、媒晶剤は硫安中に残存し、それが食用植物に吸収される可能性もある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、有機系又は肥料成分となり得る媒晶剤を使用して、比較的簡単、且つ容易に所望の結晶粒度及び形状を有する硫安の製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、硫安母液から晶析装置を用いて粒状硫安を製造するに際し、硫安母液に媒晶剤として、(A)硝酸アンモニウムと、(B)クエン酸、シュウ酸及びリンゴ酸から選択される1種又は2種以上の有機酸を添加して晶析することを特徴とする粒状硫安の製造方法である。ここで、硝酸アンモニウムの添加量が硫安母液に対し0.02〜5wt%であり、有機酸の添加量が硫安母液に対し0.02〜5wt%であることが好ましい。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。本発明は硫安母液から晶析装置を経て粒状硫安を製造する際、晶析装置中に特定の媒晶剤を存在させる。硫安母液としては、合成アンモニアと硫酸水溶液から生じるもの、排硫酸又は排アンモニア含有ガス又は液から回収されるものなど任意のものを使用することができるが、コークス炉ガス中のアンモニア分を硫酸にて吸収した硫安母液に適用することが望ましい。コークス炉ガス中のアンモニア分を硫酸にて吸収した硫安母液は、第二鉄イオン(Fe3+)を含み、硫安は針状結晶となりやすく、所望の粒度の硫安を得ることが困難であるため、本発明はその解決に有効であるからである。したがって、第二鉄イオンを含むその他の硫安母液にも有利に適用できる。
【0008】
以下、説明の理解を容易にするため、最も単純化された硫安製造の例をとって本発明を説明するが、実装置においては各種の公知の設備や操作が付加し得ることは当然である。
硫安製造工程は、硫酸酸性とされた硫安母液を含む母液槽にアンモニア含有ガスを吹き込み吸収させる工程、硫安母液を晶析装置に送る工程、晶析装置で硫安結晶を析出させる工程、析出した結晶を遠心分離等の手段で固液分離する工程及び分離された母液を母液槽に戻す工程を有する。また、本発明は、一旦硫安母液から固液分離して回収した粗製硫安を再度水に溶かし、これを晶析装置に添加して、粒状有化する方法にも適用可能である。
【0009】
媒晶剤の添加場所は晶析装置内の母液中で、所定の濃度が維持される場所であれば特に制限はない。例えば、媒晶剤は母液槽、晶析装置及び途中の配管等から装入可能であるが、晶析装置内において有効量となる所定の濃度を保つ必要がある。一例としては、母液槽において硫安母液に媒晶剤を添加して攪拌しつつ所定温度に保持し、母液槽の母液の一部を造粒装置である晶析装置に入れ、ここで攪拌しつつ、温度を下げたり又は減圧濃縮したりして過飽和度を上げて晶析を行い、生成した結晶スラリーを採り出して、固液分離し、固体を乾燥して粒状硫安を得て、必要によりこれを篩分けし、所望の粒度の硫安を得る方法がある。なお、篩分けで生じた微粉の硫安は、母液槽又は晶析装置に戻したりすることも可能である。
【0010】
本発明では媒晶剤として、(A)硝酸アンモニウムと、(B)クエン酸、シュウ酸及びリンゴ酸から選択される有機酸の組合せからなる媒晶剤を使用する。
(A)硝酸アンモニウムと組合せて使用する有機酸としては、クエン酸、シュウ酸及びリンゴ酸から選択される有機酸であり、これらは1種、2種又は3種を使用することができるが、いずれか1種で良好な結晶を与える。
ここで、アンモニウムイオンを多量に含む母液中では、硝酸アンモニウム及び上記有機酸は、硝酸やクエン酸等の酸の形で使用しても、これらのアンモニウム塩のような塩の形で使用しても、同等である。したがって、硝酸アンモニウムとして添加せず、例えば硝酸として添加しても差し支えないが、取り扱い上、硝酸アンモニウムとして添加することが有利である。また、クエン酸等の有機酸も、例えば有機酸のアンモニウム塩となっていても差し支えないが、取り扱い上、有機酸として添加することが有利である。
【0011】
硝酸アンモニウムの添加量は、硫安母液に対し0.02〜5wt%の範囲が好ましく、より好ましくは0.1〜3wt%の範囲であり、更に好ましくは0.5〜2wt%の範囲である。
クエン酸、シュウ酸及びリンゴ酸から選択される上記有機酸の添加量は、硫安母液に対し0.02〜5wt%の範囲が好ましく、より好ましくは0.1〜3wt%の範囲であり、更に好ましくは0.5〜2wt%の範囲である。
硝酸アンモニウムと上記有機酸の合計の添加量は、硫安母液に対し0.05〜6wt%の範囲が好ましく、より好ましくは0.2〜4wt%の範囲であり、更に好ましくは1〜3wt%の範囲である。また、硝酸アンモニウムと上記有機酸の使用割合は、10:5〜20(重量比)の範囲が好ましい。
【0012】
これらの媒晶剤の作用機構は明確ではないが、上記有機酸は鉄イオンをマスキングして結晶の針状化を防止する効果等のいくつかの効果を生じて、良好な硫安結晶が得られると考えられる。また、硝酸アンモニウムは結晶性状をより向上させる効果があると考えられる。なお、必要により媒晶剤として公知の媒晶剤を少量併用することもできる。
【0013】
母液槽の運転条件は、通常、pH2〜6.5程度の範囲がよく、遊離の硫酸濃度は硫酸に換算して2〜8wt%程度の範囲がよく、スラリー濃度は30〜50wt%程度の範囲がよく、温度は40〜7060℃程度の範囲がよい。母液槽から母液を晶析装置に送るに当たっては、活性炭処理等をして着色を改善したり、金属イオン等の結晶成長を阻害する成分を除去することも有利である。
【0014】
母液槽から母液の一部が晶析装置に送られ、この晶析装置では、撹拌しながら、冷却、減圧濃縮又は両者を組合せて、結晶を析出させる。冷却させる場合は温度を母液槽より3〜10℃程度下げることが有利である。減圧濃縮させる場合は、母液量(容積)が70〜90%程度になるまで濃縮させることが有利である。晶析装置で析出した結晶はスラリーとして下部から抜き出され、遠心分離され、母液は母液槽に戻し、硫安は乾燥し、篩分けし、所定の粒度の硫安を製品とする。
【0015】
【実施例】
以下に本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
実施例1
実験装置として、温度計、撹拌器及び真空装置につながるコンデンサーを備え、且つ結晶の対流が生じるようにするための円筒を内部に備えた1500mlの円筒型のガラス製容器を使用した。これを湯浴に入れて一定温度に保つことができるようにした。コークス炉ガス中のアンモニアを吸収した母液(pH6.5、鉄分1.0mg/l)1000mlを、活性炭ろ過して、微量金属を除き、これを試料として、ガラス製容器に装入した。また、種結晶として、実験1では28メッシュ程度の試薬硫安を添加し、実験2では実験1で得られた10〜60メッシュ程度の造粒試薬硫安(28メッシュ)を使用した。媒晶剤を添加しない場合と、母液に対し表1に示す添加率で加えた場合の実験を行った。
晶析装置の運転条件は、69℃、撹拌強度650rpm(上昇、下降流れを形成)とし、これを蒸発速度が15ml/hr程度でほぼ一定となる条件で減圧した。留出する水分はコンデンサーで冷却し、メスシリンダーでその量を連続的に測定し、200mlの水を留出した時点で終了させた。次いで、これをろ過し、乾燥し、篩分けして、各粒度の割合(重量%)を求めた。また、結晶形状は目視及び顕微鏡で調べた。
実験結果を表21に示す。表中、有機酸Aはクエン酸を、Bはシュウ酸を、Cはリンゴ酸を示す。
【0016】
【表1】
【0017】
本発明の媒晶剤を添加して得られた硫安結晶は、いずれも丸みを帯びた粒状であり、また粒の大きな硫安結晶となることが分かる。更に、硫安結晶の強度も十分に満足できるものであった。
【0018】
【発明の効果】
本発明によれば、針状結晶を生じ易い不純物を含む硫安母液においても、本発明の媒晶剤を有効量添加すれば、大きく球状に近い丸みを帯びた形状で、且つ優れた強度をもつ粒状硫安を製造することができる。また、本発明により製造した硫安結晶は、アンモニア性窒素含有量等各種の規格を充分に満足させるものであり、粒状硫安肥料として単肥又はバルク混合用としての市場に充分対応することができる。
Claims (2)
- 硫安母液から晶析装置を用いて粒状硫安を製造するに際し、硫安母液に媒晶剤として、(A)硝酸アンモニウムと、(B)クエン酸、シュウ酸及びリンゴ酸から選択される1種又は2種以上の有機酸を添加して晶析することを特徴とする粒状硫安の製造方法。
- 硝酸アンモニウムの添加量が硫安母液に対し0.025〜5wt%であり、有機酸の添加量が硫安母液に対し0.02〜5wt%である請求項1に記載の粒状硫安の製造方法。
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2002
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