JP2007042355A - 複合被覆銅線及び複合被覆エナメル銅線 - Google Patents

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Abstract

【課題】 近年の無鉛はんだでの接合によるはんだ細りを抑制でき、はんだ接合の信頼性を確保することができるコストパフォーマンスの優れた非磁性タイプの複合被覆銅線及び複合被覆エナメル銅線を提供する。
【解決手段】 銅又は銅合金からなる中心導体11と、中心導体11の外周上に形成されたカーボン複合めっき皮膜12と、最外層に形成されたはんだ付け可能なめっき皮膜13とを少なくとも有する。カーボン複合めっき皮膜12は、カーボンファイバー又はカーボンナノチューブと、銅、金及び銀の群から選ばれる金属を有する複合めっき皮膜である。複合被覆エナメル銅線は、さらにその外周に、はんだ付け可能な絶縁エナメル被膜、又は、はんだ付け可能な絶縁エナメル被膜と融着エナメル被膜が塗布焼付けされる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、複合被覆銅線及び複合被覆エナメル銅線に関し、更に詳しくは、電子機器等に用いられるコイル用線材に利用でき、はんだ付け作業の際に生じるはんだ細り現象を抑制できる非磁性タイプの複合被覆銅線及び複合被覆エナメル銅線に関するものである。
代表的な環境負荷物質として鉛(Pb)が知られている。鉛は、電子機器等のプリント基板や各種コイル部品等と配線材等とを接続する「はんだ」に含まれている物質であり、近年、電子機器・部品メーカーは、はんだに含まれている鉛を全廃する方向で動いている。反面、錫(Sn)と鉛とからなる共晶はんだ(Sn64−Pb36)等は、錫単体のものよりも融点が180℃と低く、低温でのはんだ付け作業を行うことができるという利点があると共に、はんだに含まれる鉛は、Sn−Cu相互拡散を抑制する金属として作用するので、作業性及び接合の信頼性には欠かせない存在となっていた。なお、無鉛化を実現したはんだ合金は、微小添加物として、Ag、Bi、Cu、Zn等の2元系又は3元系合金として既に上市されている。
上述した無鉛はんだ合金には、従来のはんだに含まれる鉛の有する機能が具備されておらず、コイル線材と基板等とを接続する際に、Sn−Cuの相互拡散が進行し、いわゆる“銅の溶食(銅のはんだ細り)”現象が如実に現れてしまう。その結果、そのはんだ細りに起因した製品歩留まりの悪化が生じるおそれがある。
こうした問題に対しては、下記特許文献1〜5でその対策が提案されている。特許文献1には、金属芯材外周に展延性のある靭軟な高純度鉄の電着鉄めっき層を形成させた鉄被覆複合材及びその製造方法について記載されており、その鉄めっき層によって銅のはんだ細りを抑制できることが記載されている。また、特許文献2,3には、銅導線の外周にニオブ又はテルルを真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーディング法のいずれかの方法によって被覆し、そのニオブ層又はテルル層によって銅のはんだ細りを抑制できることが記載されている。また、特許文献4には、下地銅線にFe、Ni又はFe30±2%Niの何れかのめっき層を形成し、そのめっき層によって銅のはんだ細りを抑制できることが記載されている。また、特許文献5には、下地銅線にニッケルめっき皮膜を形成した後、更にその外周に塑性加工が容易な単一金属を電析させ、その後塑性加工により細径化した複合被覆銅線が記載されており、そのニッケルめっき皮膜によって銅のはんだ細りを抑制できることが記載されている。
特開平01−017892号公報 特開平06−119815号公報 特開平07−176214号公報 特開2003−092029号公報 特開2005−85590号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載の鉄めっき層は熱処理を施すことによって展延性が改善されるものであることから、熱処理条件如何によっては細径化が困難であるという問題点があった。
また、上記特許文献2,3に記載のニオブ層又はテルル層は乾式プロセスで成膜されるので、所望の厚さにするのに長時間を要し、銅線の数十倍のコストになってしまう。その結果、実用レベルでの使用が困難であるという問題点があった。
また、上記特許文献4に記載のめっき層は卑な電位を有する金属で形成されているので、そのめっき層が最表面に形成されて大気に曝されると、そのめっき層は酸化によりはんだ濡れ性が阻害されるという問題点があった。また、そのめっき層が形成された銅線上にエナメル塗料を塗布焼付けしてマグネットワイヤを製造する場合には、めっき層がエナメル塗料をはじくという現象が生じ、ピンホール等の欠陥が発生するという問題点があった。また、めっき層を構成するFe、Ni等の金属は炭化物生成反応の標準自由エネルギーが高いため、ダイヤモンド製のダイを用いて塑性加工を施す際、ダイ孔が簡単に磨耗し、線引き加工中の断線、仕上がり外径の変動、線材の外形変形等のトラブルが生じ易いという問題があった。更には、はんだ細りを抑制するめっき層の厚さと、はんだ細り抑制効果との関係が明瞭に記載されてないため、その条件ではんだ溶食効果を見出せるものとは考え難いものである。また、上記特許文献5に記載の複合被覆エナメル銅線を用いて巻線コイルを作製した場合、ニッケルめっき皮膜が有する磁性が、コイルの動作特性に対して必ずしも好ましい結果をもたらさないと考えられる。
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、その目的は、特に近年の無鉛はんだでの接合によるはんだ細りを抑制でき、はんだ接合の信頼性を確保することができるコストパフォーマンスの優れた非磁性タイプの複合被覆銅線及び複合被覆エナメル銅線を提供することにある。
上記課題を解決するための本発明の複合被覆銅線は、銅又は銅合金からなる中心導体と、当該中心導体の外周上に形成されたカーボン複合めっき皮膜と、最外層に形成されたはんだ付け可能なめっき皮膜とを少なくとも有することを特徴とする。
この発明によれば、(1)中心導体上に形成されたカーボン複合めっき皮膜は、はんだの錫成分と中心導体の銅成分との間で起こるSn−Cu相互拡散の障害(バリア)として作用するので、特に無鉛はんだでのはんだ付け時のはんだ細り現象を抑制することができ、その結果、はんだ付け時の工程歩留まりや製品の信頼性を向上させることができる。また、(2)最外層のはんだ付け可能なめっき皮膜が銅、金、銀、錫等である場合は、はんだやエナメル塗料に対する濡れ性がよいので、はんだ付けやエナメル塗料の塗布を不具合なく行うことができる。(3)こうした本発明の複合被覆銅線は、全て非磁性材料で構成されているので、コイルの動作特性を向上させるはんだ細りのない線材として極めて有用である。
本発明の複合被覆銅線は、前記カーボン複合めっき皮膜が、カーボンファイバー又はカーボンナノチューブと、銅、金及び銀の群から選ばれる金属を有する複合めっき皮膜であることを特徴とする。
カーボンファイバーとカーボンナノチューブは、導電性、強度、摺動性(潤滑性)及び復元力に優れているが、それに加え、本発明者は、カーボンファイバー及びカーボンナノチューブの表面が化学的に安定で比表面積が小さく、はんだが非常に付着し難い特性を持つことを見出した。こうしたカーボンファイバー又はカーボンナノチューブを延展性のよい銅、金又は銀中に分散させたカーボン複合めっき膜は、はんだの錫成分と中心導体の銅成分との間で起こるSn−Cu相互拡散の障害(バリア)として作用するので、特に無鉛はんだでのはんだ付け時のはんだ細り現象を抑制することができ、その結果、はんだ付け時の工程歩留まりや製品の信頼性を向上させることができる。
本発明の複合被覆銅線は、前記カーボン複合めっき皮膜の厚さt(μm)が、0.7<t<1.6の範囲内にあることが好ましい。
この発明によれば、カーボン複合めっき皮膜の厚さを上記範囲内にしたので、はんだ付け時のはんだ細りを抑制できると共に、耐屈曲性や良好な加工性を確保することができる。
本発明の複合被覆銅線は、前記複合被覆銅線の切断強度(N)が、当該複合被覆銅線の中心導体と同じ種類の導体からなる同一径の銅線又は銅合金線と比較して、1.1倍を超え、1.3倍未満であることが好ましい。
この発明によれば、複合被覆銅線の中心導体と同じ種類の導体からなる同一径の銅線又は銅合金線とを比較したときの複合被覆銅線の切断強度が上記範囲内であるので、マグネットワイヤとした後にコイル部品に巻線加工する際に、工程中の断線を低減できると共に、はんだ付け部の接合強度を向上させることができる。また、スプリングバック現象が生じるのを防ぐことができる。その結果、完成部品のはんだ付け部の信頼性を高めることができる。なお、切断強度が極度に高すぎると巻線不良が発生し易いので、その上限値を設定することが好ましい。
本発明の複合被覆銅線は、前記はんだ付け可能なめっき皮膜が、塑性加工が容易で炭素との親和力が低い金属からなるものであり、前記複合被覆銅線が、塑性加工により細径化されてなるものであることを特徴とする。
この発明によれば、最外層のはんだ付け可能なめっき皮膜が、塑性加工が容易で炭素との親和力が低い金属(すなわち、炭化物生成反応の標準自由エネルギーが低い金属)で形成されているので、例えばダイヤモンド製のダイを用いて塑性加工を施した際に、ダイ孔が簡単には磨耗せず、線引き加工中の断線、仕上がり外径の変動、線材の外形変形等のトラブルが生じ難いという効果があり、細径化に有利である。めっき皮膜を構成する好ましい金属としては、銅、金、銀、錫等が挙げられる。なお、所定のめっき条件でめっきすることにより延展性のよいカーボン複合めっき皮膜が得られるので、従来技術のような熱処理を施さなくても、塑性加工可能なカーボン複合めっき皮膜を容易に形成することができる。その結果、製造工程中にノウハウを有する作業が無く、安定製造が可能となるので、歩留まり向上等の改善を図ることができ、コスト的にも有利となる。
上記課題を解決する本発明の複合被覆エナメル銅線は、上記本発明の複合被覆銅線の外周に、はんだ付け可能な絶縁エナメル被膜、又は、はんだ付け可能な絶縁エナメル被膜と融着エナメル被膜が塗布焼付けされていることを特徴とする。
この発明によれば、複合被覆銅線の外周にはんだ付け可能な絶縁エナメル被膜が塗布焼付けされているので、端末をはんだ付けすることができるコイル等の製造に好ましく利用できる。また、さらに融着エナメル被膜が塗布焼付されている場合には、コイル状に捲線した後に溶剤、通電又は熱風等により融着することができるので、自己支持型のコイル用線材として好ましく使用することができる。
本発明の複合被覆銅線及び複合被覆エナメル銅線によれば、特に無鉛はんだでのはんだ付け時のはんだ細り現象を抑制することができるので、はんだ付け時の工程歩留まりや製品の信頼性を向上させることができるコストパフォーマンスの優れたものとすることができる。また、最外層のはんだ付け可能なめっき皮膜が銅、金、銀、錫等である場合は、はんだやエナメル塗料に対する濡れ性がよいので、はんだ付けやエナメル塗料の塗布を不具合なく行うことができる。こうした本発明の複合被覆銅線は、全て非磁性材料で構成されているので、コイルの動作特性を向上させるはんだ細りのない線材として極めて有用である。
以下、本発明の複合被覆銅線及び複合被覆エナメル銅線について詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
図1は、本発明の複合被覆銅線の一例を示す概略断面図である。本発明の複合被覆銅線10は、銅又は銅合金からなる中心導体11と、その中心導体11の外周上に形成されたカーボン複合めっき皮膜12と、最外層に形成されたはんだ付け可能なめっき皮膜13とを少なくとも有している。この複合被覆銅線10は、最終製品線径となる中心導体上にカーボン複合めっき皮膜とはんだ付け可能なめっき皮膜とを形成したものであってもよいし、最終製品線径よりも太い線径の中心導体上に厚めのカーボン複合めっき皮膜と厚めのはんだ付け可能なめっき皮膜とを形成した後、塑性加工によって最終製品線径まで細径化したものであってもよい。後者の場合、塑性加工する前の母材の断面形態も図1と同様の形態となっている。
(中心導体)
中心導体11は、銅又は銅合金からなるものであり、具体的には、タフピッチ銅、無酸素銅等の銅材料や、銀入り銅等の銅合金材料を挙げることができる。中心導体11の直径は、はんだ細りが問題になる範囲であることが好ましく、例えば0.02〜0.40mm程度の範囲内である。なお、本発明の複合被覆銅線10が塑性加工により細径化されて製造される場合には、カーボン複合めっき皮膜等が形成される前の中心導体の直径は特に限定されず、通常は、0.1〜1.0mm程度の範囲を例示できる。
(カーボン複合めっき皮膜)
カーボン複合めっき皮膜12は、めっき金属21中にカーボン材料22が分散されている分散めっき皮膜である。このカーボン複合めっき皮膜12を構成するめっき金属21としては、例えば、銅、金及び銀の群から選ばれるいずれかを挙げることができる。いずれの材質を選択するかは、それぞれの特徴を考慮して選択され、例えば、導電性、耐食性、強度、等を考慮して選択される。さらに、これらのめっき金属21は、展延性がよいので屈曲や塑性加工にも優れており、例えば本発明の複合被覆銅線10が塑性加工により細径化されて製造される場合の塑性変形にも十分に追従できる。
めっき金属21中に含まれるカーボン材料22としては、カーボンファイバー及びカーボンナノチューブ等を挙げることができる。本発明においては、そうしたカーボン材料22がめっき金属21中に均一に分散されている。これらのカーボン材料22は、熱伝導性、導電性、強度、摺動性(潤滑性)、復元力(反発力)等に優れており、また、化学的に安定で比表面積が小さく、吸着水分量も極めて小さいという特徴があるが、それに加え、本発明者は、カーボンファイバー及びカーボンナノチューブの表面が化学的に安定で比表面積が小さく、はんだが非常に付着し難いという特性を見出し、そうしたカーボンファイバー又はカーボンナノチューブを上記めっき金属21中に分散させてカーボン複合めっき皮膜10を成膜した。こうして形成されたカーボン複合めっき皮膜10は、はんだの錫成分と中心導体の銅成分との間で起こるSn−Cu相互拡散の障害(バリア)として作用するので、特に無鉛はんだでのはんだ付け時のはんだ細り現象を抑制することができ、その結果、はんだ付け時の工程歩留まりや製品の信頼性を向上させることができる。
カーボン複合めっき皮膜に含まれるカーボンファイバーやカーボンナノチューブ等のカーボン材料22の含有量は、めっき金属21に対して、重量比で0.1〜5.0%の範囲内であることが好ましい。カーボン材料の含有量が0.1%未満では、はんだ細りの抑制効果が十分でないことがあり、カーボン材料の含有量が5.0%を超えると、カーボン複合めっき皮膜の展延性が低下して加工性(コイル巻線性や塑性加工性)に劣ることがある。なお、カーボンファイバーやカーボンナノチューブ等のカーボン材料22は、めっき金属11中でどのような態様で含まれていてもよく、例えばカーボンファイバーが「立つ」ように放射状に含まれていてもよいし、多方向に向くようにランダムに含まれていてもよい。
カーボン複合めっき皮膜12の厚さ(t)は特に限定されないが、塑性加工によって製造された複合被覆銅線の場合も含め、最終的な厚さ(t)として、0.7μmを超え、1.6μm未満であることが好ましい。カーボン複合めっき皮膜12の厚さが0.7μm以下の場合は、はんだ細りの抑制効果が小さくなる傾向がある。また、カーボン複合めっき皮膜の厚さが1.6μm以上の場合は、はんだ細りの抑制効果は奏するものの、中心導体11とカーボン複合めっき皮膜12との機械的強度の相違により、耐屈曲性等の機械的特性が阻害され易く、良好な加工性を確保することができないことがあると共に、塑性加工によって製造される場合には、断線等の問題を誘発させる要因となる。
なお、所定のめっき条件でめっきすることにより延展性がよいカーボン複合めっき皮膜12が得られるので、従来技術のような熱処理を施さなくても、塑性加工可能なカーボン複合めっき皮膜12を容易に形成することができる。その結果、製造工程中にノウハウを有する作業が無く、安定製造が可能となるので、歩留まり向上等の改善を図ることができ、コスト的にも有利となる。
(カーボン複合めっき皮膜の形成方法)
カーボン複合めっき皮膜は、めっき液中にカーボン材料を分散させた状態で中心導体に給電して形成することができる。めっき液としては、通常、上述しためっき金属の無機塩と、支持電解質と、カーボン材料とを少なくとも有する分散めっき液が用いられる。このめっき液には、必要に応じて、界面活性剤、光沢剤、塩素成分等の各種の添加剤が含有される。特に本発明における分散めっきは、多少の撥水性を有するカーボン材料22をめっき液中で均一に分散させておくことが重要であるので、界面活性剤を添加することが好ましい。めっき液中へのカーボン材料の分散量は、めっき液の性質やめっき皮膜中に含有させようとする量によって任意に設定される。
めっきは、中心導体を前処理し、めっき液中にカーボン材料を分散させた状態でその中心導体に給電して行われる。中心導体への前処理としては、金属一般に対して行われる前処理であればよく、特に限定されない。めっきは、電気めっきであっても無電解めっきであっても構わないが、密着性等の観点からは電気めっきが好ましい。無電解めっきの場合には還元剤を含有する。めっき条件についても、カーボン材料の含有量や、得られためっき金属の物性(硬さ、強度、耐食性)を考慮して任意の条件が設定される。そうした条件としては、例えば、電流密度、液温、撹拌強度等を挙げることができる。めっき後は、各種の洗浄工程が施される。
特に好ましいカーボン複合めっき液として、硫酸銅めっき液を挙げることができる。めっき条件として、硫酸銅220g/L、硫酸55g/L、塩酸50mg/L、カーボン材料(昭和電工株式会社、気相法炭素繊維、商品名:VGCF、繊維径150nm、繊維長10〜20μm)0.5〜2.0g/L、界面活性剤(和光純薬工業株式会社、商品名:PA5000)0.1g/Lを含有するめっき液を用い、液温30℃、陰極電流密度2〜4A/dmの範囲内で電解めっきすることが好ましい。こうした条件でカーボン複合めっき皮膜をめっきすることによって、熱処理を施さなくても容易に冷間塑性加工できる展延性に富んだカーボン複合めっき皮膜を得ることができる。そのため、製造工程中にノウハウを有する作業が無く、歩留まり向上等の改善が図られコストを極力押さえることが可能となる。
カーボン複合めっき皮膜が製品線径に塑性加工された後の中心導体上に形成される場合には、上記範囲内のめっき厚を形成するだけの電気量を通電させればよいが、めっき後の複合被覆銅線を塑性加工により細径化して製造する場合には、細径化した後のめっき厚が上記範囲内となるように所定厚さのめっき厚を形成することが必要である。なお、得られためっき線には必要に応じてアニールを施してもよい。
めっき装置については特に限定されないが、連続生産可能なめっき装置であることが好ましい。例えば、めっき液循環タンクを備えたオーバーフロー型のめっき槽を好ましく用いることができる。こうしためっき槽は、中心導体を連続して走らせることができると共に、分散材料であるカーボン材料の撹拌効果もあり、めっき液中のカーボンの分散状態を常に均一にすることができる。また、めっき液循環タンクに、連続製造中に徐々に減少するカーボン材料を、容易に補給することができる。なお、電解脱脂や酸洗い等の前処理工程や後処理工程についても、オーバーフロー型の処理槽とすることが便利である。
(はんだ付け可能なめっき皮膜)
はんだ付け可能なめっき皮膜13は複合被覆銅線10の最外層に形成されるが、その具体例としては、銅、金、銀、錫等を好ましく挙げることができる。これらの金属は、はんだやエナメル塗料に対する濡れ性がよいので、はんだ付けやエナメル塗料の塗布を不具合なく行うことができる。
また、そのはんだ付け可能なめっき皮膜13が銅、金、銀、錫等のように塑性加工が容易で炭素との親和力が低い金属(すなわち、炭化物生成反応の標準自由エネルギーが低い金属)である場合には、本発明の複合被覆銅線10を塑性加工により細径化して製造することができる。こうした金属でめっき皮膜13が形成されることにより、例えばダイヤモンド製のダイを用いて塑性加工を施した際に、ダイ孔が簡単には磨耗せず、線引き加工中の断線、仕上がり外径の変動、線材の外形変形等のトラブルが生じ難いという効果がある。
はんだ付け可能なめっき皮膜13の厚さは特に限定されないが、塑性加工によって製造された複合被覆銅線の場合も含め、最終的な厚さとして、0.1〜1.0μmの範囲内であることが好ましい。はんだ付け可能なめっき皮膜13の厚さが0.1μm未満の場合は、はんだ付けの際の濡れ性が不十分になる場合がある。また、はんだ付け可能なめっき皮膜13の厚さが1.0μmを超えると、無駄なコストがかかるという問題が生じる。
はんだ付け可能なめっき皮膜を形成するためのめっき液及びめっき条件は特に限定されず、上記の金属塩を含む市販の各種めっき液又は公知の組成に調整しためっき液及びそれぞれの最適なめっき条件を用いることができる。例えば、硫酸銅めっき液、シアン化金めっき液、シアン化銀めっき液、酸性錫めっき液等を例示できる。
(複合被覆銅線)
こうして得られた本発明の複合被覆銅線は、その切断強度(N)が、複合被覆銅線の中心導体と同じ種類の導体からなる同一径の銅線又は銅合金線と比較して、1.1倍を超え、1.3倍未満であることが好ましい。切断強度の上昇は、マグネットワイヤとした後にコイル部品に巻線加工する際に、工程中の断線を低減できると共に、はんだ付け部の接合強度を向上させることができる。その結果、完成部品のはんだ付け部の信頼性を高めることができる。なお、切断強度が極度に高すぎると、コイル巻線中にスプリングバック現象が生じて巻線不良が発生し易いので、その上限値を設定することが好ましい。
なお、本発明の複合被覆銅線は、カーボン複合めっき皮膜を有し、はんだ付け可能なめっき皮膜を最外層となるように形成すれば、非磁性材料からなるその他のめっき層を形成してもよい。例えば、中心導体とカーボン複合めっき皮膜との間に密着性を向上させることを目的とした層を形成してもよいし、カーボン複合めっき皮膜とはんだ付け可能なめっき皮膜との間に密着性を向上させることを目的とした層を形成してもよい。
以上、本発明の複合被覆銅線は、特に無鉛はんだでのはんだ付け時のはんだ細り現象を抑制することができるので、はんだ付け時の工程歩留まりや製品の信頼性を向上させることができるコストパフォーマンスの優れた線材である。また、最外層のはんだ付け可能なめっき皮膜が銅、金、銀、錫等である場合は、はんだやエナメル塗料に対する濡れ性がよいので、はんだ付けやエナメル塗料の塗布を不具合なく行うことができる。そして、こうした本発明の複合被覆銅線は、全て非磁性材料で構成されているので、コイルの動作特性を向上させるはんだ細りのない線材として極めて有用である。
本発明の複合被覆銅線は、(1)最終製品線径に線引きした後の中心導体上に、少なくともカーボン複合めっき皮膜とはんだ付け可能なめっき皮膜とを形成する方法、又は、(2)太めの中心導体の外周にカーボン複合めっき皮膜と塑性加工が容易な金属からなるめっき皮膜を形成して複合被覆銅母材を作製し、その後、その複合被覆銅母材を塑性加工により細径化する方法、のいずれかによって製造できる。すなわち、(1)の製造方法は、銅及び銅合金からなる中心導体の外周にカーボン複合めっき皮膜を形成する工程と、はんだ付け可能なめっき皮膜を最外層に形成する工程とを少なくとも有する方法であり、(2)の製造方法は、銅及び銅合金からなる中心導体の外周にカーボン複合めっき皮膜を形成する工程と、塑性加工が容易で炭素との親和力が低い金属からなるめっき皮膜(はんだ付け可能なめっき皮膜)を最外層に形成して複合被覆銅母材を作製する工程と、その複合被覆銅母材を塑性加工して所定の線径に細径化する工程とを少なくとも有する方法である。
こうした製造方法により、はんだ細りの抑制に効果のある複合被覆銅線を低コストに製造することができる。また、複合被覆銅母材を塑性加工して所定の線径に細径化する製造方法では、例えばダイヤモンド製のダイを用いて塑性加工を施した際に、ダイ孔が簡単には磨耗せず、線引き加工中の断線、仕上がり外径の変動、線材の外形変形等のトラブルが生じ難い。
(複合被覆エナメル銅線)
図2は、はんだ付け可能な絶縁エナメル被膜が形成された本発明の複合被覆エナメル銅線の一例を示す断面図であり、図3は、はんだ付け可能な絶縁エナメル被膜と融着エナメル被膜が形成された本発明の複合被覆エナメル銅線の一例を示す断面図である。本発明の複合被覆エナメル銅線20,30は、上記本発明の複合被覆銅線10の外周に、はんだ付け可能な絶縁エナメル被膜21、又は、はんだ付け可能な絶縁エナメル被膜21と融着エナメル被膜31が塗布焼付けされていることを特徴とする。はんだ付け可能な絶縁エナメル被膜21は、例えば汎用ポリウレタン、ポリウレタンナイロン等のはんだ付け可能なエナメル塗料を塗布焼付けして形成できる。また、更にその外周に形成する融着エナメル被膜31は、例えばナイロンやエポキシ等の融着エナメル塗料を塗布焼付けして形成できる。
絶縁エナメル被膜21と融着エナメル被膜31は、通常のエナメル線の製造装置を用いて製造できる。すなわち、ボビンに巻かれた複合被覆銅線を線材供線装置から繰出し、塗料槽にてエナメル塗料を塗布した後、その直後に設けたダイスやフェルト等の塗料絞り具で線材表面の塗布塗料を略均一厚さに扱き、その後その線材を電熱炉や熱風循環炉等の高温の焼付炉に導入し、炉内で線材上に塗布された塗料中の溶剤を揮発除去して塗料を反応硬化させ、硬化塗膜層を線材表面に形成して焼付炉から導出し、導出された線材を再び塗料槽、塗料絞り具及び焼付炉を通過させる工程を複数回繰り返し、線材表面に所望の厚さの絶縁エナメルを被覆した後、キャプスタン等の引取装置により引取りボビン等の巻取装置に巻き取って、複合被覆エナメル銅線が製造される。
こうした複合被覆エナメル銅線20,30は、複合被覆銅線10の外周にはんだ付け可能な絶縁エナメル被膜21が塗布焼付けされているので、端末をはんだ付けすることができるコイル等の製造に好ましく利用できる。また、さらに融着エナメル被膜31が塗布焼付されている場合には、コイル状に捲線した後に溶剤、通電又は熱風等により融着することができるので、自己支持型のコイル用線材として好ましく使用することができる。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
カーボン複合めっき皮膜形成用めっき液として、硫酸銅220g/L、硫酸55g/L、塩酸50mg/L、カーボン材料(昭和電工株式会社、気相法炭素繊維、商品名:VGCF、繊維径150nm、繊維長10〜20μm)10g/L、界面活性剤(和光純薬工業株式会社、商品名:PA5000)0.14g/Lを含有するものを用いた。また、はんだ付け可能なめっき皮膜形成用めっき液として、硫酸銅100g/L、硫酸100g/Lから構成される硫酸銅めっき液を用いた。
中心導体として、直径0.037mmにまで細径化したタフピッチ銅線を用い、その銅線を電解脱脂、酸洗いした後、上記のカーボン複合めっき皮膜形成用めっき液に供してカーボン複合めっきを行った。めっき条件は、4A/dm、30℃、撹拌条件下で、厚さ1.0μmとなるまでカーボン複合めっき皮膜を形成した。水洗後、さらに、上記硫酸銅めっき液に供して銅めっきを行った。めっき条件は、10A/dm、40℃、撹拌条件下で、厚さ0.5μmとなるまで銅めっき皮膜を形成した。その後、超音波洗浄、アルコール洗浄等を行った後に乾燥させて、線径0.040mmの複合被覆銅線を作製した。続いて、その複合被覆銅線にポリウレタンを10μm厚さに塗布焼付けし、実施例1の複合被覆エナメル銅線を作製した。
得られた複合被覆銅線の切断強度を引張試験機で測定したところ、その切断強度は0.395Nであり、直径0.040mmのタフピッチ銅線の切断強度0.33Nと比較して1.20倍であった。
(実施例2)
カーボン複合めっき皮膜形成用めっき液として、シアン化金カリウム8g/L、シアン化カリウム30g/L、カーボン材料(昭和電工株式会社、気相法炭素繊維、商品名:VGCF、繊維径150nm、繊維長10〜20μm)10g/L、界面活性剤(和光純薬工業株式会社、商品名:PA5000)0.14g/Lを含有するものを用い、0.3A/dm、60℃、撹拌条件下で、厚さ1.5μmとなるまでカーボン複合めっき皮膜を形成した他は、実施例1と同様にして、線径0.041mmの複合被覆銅線を作製した。続いて、その複合被覆銅線にポリウレタンを10μm厚さに塗布焼付けし、実施例2の複合被覆エナメル銅線を作製した。なお、得られた複合被覆銅線の切断強度は0.37Nであり、同一径のタフピッチ銅線の切断強度0.33Nと比較して1.12倍であった。
った。
(実施例3)
カーボン複合めっき皮膜形成用めっき液として、シアン化銀カリウム10g/L、シアン化カリウム25g/L、炭酸カリウム10g/L、カーボン材料(昭和電工株式会社、気相法炭素繊維、商品名:VGCF、繊維径150nm、繊維長10〜20μm)10g/L、界面活性剤(和光純薬工業株式会社、商品名:PA5000)0.14g/Lを含有するものを用い、0.3A/dm、30℃、撹拌条件下で、厚さ1.5μmとなるまでカーボン複合めっき皮膜を形成した他は、実施例1と同様にして、線径0.041mmの複合被覆銅線を作製した。続いて、その複合被覆銅線にポリウレタンを10μm厚さに塗布焼付けし、実施例3の複合被覆エナメル銅線を作製した。なお、得られた複合被覆銅線の切断強度は0.38Nであり、同一径のタフピッチ銅線の切断強度0.33Nと比較して1.15倍であった。
(実施例4)
カーボン複合めっき皮膜の厚さを0.71μmとした以外は、実施例1と同様にして、線径0.039mmの複合被覆銅線を作製した。続いて、その複合被覆銅線にポリウレタンを10μm厚さに塗布焼付けし、実施例4の複合被覆エナメル銅線を作製した。なお、得られた複合被覆銅線の切断強度は0.36Nであり、同一径のタフピッチ銅線の切断強度0.32Nと比較して1.13倍であった。
(実施例5)
カーボン複合めっき皮膜の厚さを1.59μmとした以外は、実施例1と同様にして、線径0.041mmの複合被覆銅線を作製した。続いて、その複合被覆銅線にポリウレタンを10μm厚さに塗布焼付けし、実施例5の複合被覆エナメル銅線を作製した。なお、得られた複合被覆銅線の切断強度は0.43Nであり、同一径のタフピッチ銅線の切断強度0.33Nと比較して1.30倍であった。
(実施例6)
はんだ付け可能なめっき皮膜形成用めっき液として、シアン化金カリウム8g/L、シアン化カリウム30g/Lからなるものを用い、0.3A/dm、60℃、撹拌条件下で、厚さ0.5μmとなるまで金めっき皮膜を形成した他は、実施例1と同様にして、線径0.040mmの複合被覆銅線を作製した。続いて、その複合被覆銅線にポリウレタンを10μm厚さに塗布焼付けし、実施例6の複合被覆エナメル銅線を作製した。なお、得られた複合被覆銅線の切断強度は0.38Nであり、同一径のタフピッチ銅線の切断強度0.33Nと比較して1.15倍であった。
(実施例7)
はんだ付け可能なめっき皮膜形成用めっき液として、シアン化銀カリウム10g/L、シアン化カリウム25g/L、炭酸カリウム10g/Lからなるものを用い、0.3A/dm、30℃、撹拌条件下で、厚さ0.5μmとなるまで銀めっき皮膜を形成した他は、実施例1と同様にして、線径0.040mmの複合被覆銅線を作製した。続いて、その複合被覆銅線にポリウレタンを10μm厚さに塗布焼付けし、実施例7の複合被覆エナメル銅線を作製した。なお、得られた複合被覆銅線の切断強度は0.39Nであり、同一径のタフピッチ銅線の切断強度0.33Nと比較して1.18倍であった。
(実施例8)
中心導体として、直径0.90mmのタフピッチ銅線を用い、その銅線を電解脱脂、酸洗いした後、実施例1のカーボン複合めっき皮膜形成用めっき液に供してカーボン複合めっきを行った。めっき条件は、4A/dm、30℃、撹拌条件下で、厚さ10μmとなるまでカーボン複合めっき皮膜を形成した。水洗後、さらに、実施例1の硫酸銅めっき液に供して銅めっきを行った。めっき条件は、10A/dm、40℃、撹拌条件下で、厚さ5μmとなるまで銅めっき皮膜を形成した。その後、超音波洗浄、アルコール洗浄等を行った後に乾燥させて、線径0.930mmの複合被覆銅母材を作製した。続いて、この複合被覆銅母材を冷間伸線機によってφ0.20mmに線引きし、更にφ0.20mmからφ0.04mmまで熱処理を施すことなく線引きして、複合被覆銅線を得た。その複合被覆銅線にポリウレタンを10μm厚さに塗布焼付けし、実施例6の複合被覆エナメル銅線を作製した。なお、得られたφ0.04mmの複合被覆銅線の切断強度は0.40であり、同一径のタフピッチ銅線の切断強度0.33Nと比較して1.21倍であった。
(実施例9)
カーボン複合めっき皮膜形成用めっき液として、シアン化金カリウム8g/L、シアン化カリウム30g/L、カーボン材料(昭和電工株式会社、気相法炭素繊維、商品名:VGCF、繊維径150nm、繊維長10〜20μm)10g/L、界面活性剤(和光純薬工業株式会社、商品名:PA5000)0.14g/Lを含有するものを用い、0.3A/dm、30℃、撹拌条件下で、厚さ10μmとなるまでカーボン複合めっき皮膜を形成した他は、実施例8と同様にして実施例9の複合被覆エナメル銅線を作製した。なお、得られた複合被覆銅線の切断強度は0.39Nであり、同一径のタフピッチ銅線の切断強度0.33Nと比較して1.18倍であった。
(実施例10)
はんだ付け可能なめっき皮膜形成用めっき液として、シアン化金カリウム8g/L、シアン化カリウム30g/Lからなるものを用い、0.3A/dm、60℃、撹拌条件下で、厚さ5μmとなるまで金めっき皮膜を形成した他は、実施例8と同様にして実施例10の複合被覆エナメル銅線を作製した。なお、得られた複合被覆銅線の切断強度は0.40Nであり、同一径のタフピッチ銅線の切断強度0.33Nと比較して1.21倍であった。
(比較例1)
φ0.04mmにまで線引きしたタフピッチ銅導体に、ポリウレタンを10μm厚さに塗布焼付けし、比較例1のエナメル銅線を作製した。
(比較例2)
カーボン複合めっき皮膜の厚さを0.60μmとした以外は、実施例1と同様にして、線径0.039mmの複合被覆銅線を作製した。続いて、その複合被覆銅線にポリウレタンを10μm厚さに塗布焼付けし、比較例2の複合被覆エナメル銅線を作製した。なお、得られた複合被覆銅線の切断強度は0.35Nであり、同一径のタフピッチ銅線の切断強度0.32Nと比較して1.09倍であった。
(比較例3)
カーボン複合めっき皮膜の厚さを1.70μmとした以外は、実施例1と同様にして、線径0.041mmの複合被覆銅線を作製した。続いて、その複合被覆銅線にポリウレタンを10μm厚さに塗布焼付けし、比較例3の複合被覆エナメル銅線を作製した。なお、得られた複合被覆銅線の切断強度は0.56Nであり、同一径のタフピッチ銅線の切断強度0.33Nと比較して1.69倍であった。
(実験及び結果)
図4は、実施例1の複合被覆エナメル銅線と、比較例1,2のエナメル被膜銅線とのはんだ溶食性について、千住金属工業KK製鉛フリーはんだ商品名:M705(Sn−3.0Ag−0.5Cu)の溶融はんだを400℃に加熱したはんだバス中に任意の時間浸漬させ、その後はんだを除去し、導体の線径をマイクロメーターにて測定し、耐はんだ溶食性を確認した。その結果、本発明に係る複合被覆エナメル銅線は、はんだ細りの抑制効果が顕著であった。また、実施例2〜8の複合被覆エナメル銅線も同様であった。特に、実施例8の複合被覆エナメル銅線は、複合被覆銅線をダイヤモンドダイスで線引き加工したにもかかわらず、ダイの摩耗の程度は通常のタフピッチ銅線を線引きする場合とあまり変わらなかった。
一方、比較例2の複合被覆エナメル銅線は、はんだ細りの抑制効果が十分ではなく、また、比較例3の複合被覆エナメル銅線は、コイル巻線中にスプリングバック現象が生じてコイル巻線に支障が生じた。なお、図5は、実施例1で得られた複合被覆銅線のめっき表面の電子顕微鏡写真であり、(a)はカーボン複合めっき皮膜形成後のめっき表面であり、(b)ははんだ付け可能なめっき皮膜形成後のめっき表面である。このとき、上段は5000倍の電子顕微鏡写真であり、下段は2000倍の電子顕微鏡写真である。
本発明の複合被覆銅線の一例を示す断面図である。 本発明の複合被覆エナメル銅線の一例を示す断面図である。 本発明の複合被覆エナメル銅線の他の一例を示す断面図である。 実施例1の複合被覆エナメル銅線と比較例1,2のエナメル銅線のはんだ溶食試験結果を示すグラフである。 実施例1で得られた複合被覆銅線のめっき表面の電子顕微鏡写真であり、(a)はカーボン複合めっき皮膜形成後のめっき表面であり、(b)ははんだ付け可能なめっき皮膜形成後のめっき表面である。
符号の説明
10 複合被覆銅線
11 中心導体
12 カーボン複合めっき皮膜
13 はんだ付け可能なめっき皮膜
20,30 複合被覆エナメル銅線
21 絶縁エナメル被膜
31 融着エナメル被膜

Claims (6)

  1. 銅又は銅合金からなる中心導体と、当該中心導体の外周上に形成されたカーボン複合めっき皮膜と、最外層に形成されたはんだ付け可能なめっき皮膜とを少なくとも有することを特徴とする複合被覆銅線。
  2. 前記カーボン複合めっき皮膜が、カーボンファイバー又はカーボンナノチューブと、銅、金及び銀の群から選ばれる金属を有する複合めっき皮膜であることを特徴とする請求項1に記載の複合被覆銅線。
  3. 前記カーボン複合めっき皮膜の厚さt(μm)が、0.7<t<1.6の範囲内にあることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合被覆銅線及び複合被覆エナメル銅線。
  4. 前記複合被覆銅線の切断強度(N)が、当該複合被覆銅線の中心導体と同じ種類の導体からなる同一径の銅線又は銅合金線と比較して、1.1倍を超え、1.3倍未満であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の複合被覆銅線。
  5. 前記はんだ付け可能なめっき皮膜が、塑性加工が容易で炭素との親和力が低い金属からなるものであり、前記複合被覆銅線が、塑性加工により細径化されてなるものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の複合被覆銅線。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の複合被覆銅線の外周に、はんだ付け可能な絶縁エナメル被膜、又は、はんだ付け可能な絶縁エナメル被膜と融着エナメル被膜が塗布焼付けされていることを特徴とする複合被覆エナメル銅線。
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