JP2008248295A - 潤滑性粒子を有するめっき材料、その製造方法およびそれを用いた電気・電子部品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】導電性基材1の表面に、銀または銀合金からなる表面めっき層2が形成され、当該表面めっき層2の少なくとも表層部に潤滑性粒子3を有するめっき材料を得る。好ましくは、前記表面めっき層2が、前記潤滑性粒子3を分散した複合めっき層を有する。また、このめっき材料を用いて、摺動型や回転型の接点、スイッチなどの電気・電子部品を得る。
【選択図】図1
Description
下地層がNiまたはNi合金からなる場合には、基材上のめっき皮膜の硬度を増加させて摺動性を良好とする効果もあり、下地めっきとして好適である。
この方法で形成されたAgめっき層の場合、Agの磨耗に伴い硬質粒子が表層に露出した際に、硬質粒子の導電性が低いために接触抵抗が大きく上昇する問題が生じる。
この方法で形成されたAgめっき層の場合、Agの磨耗に伴いグラファイトが表層に露出した際に、グラファイト自体の導電性は金属並みであるものの、めっき層中におけるグラファイトの配向が不規則であるため、接点における接触面積が減少することにより、接触抵抗が上昇してしまう。
更に、本発明は、上記しためっき材料の製造方法、およびそのめっき材料を用いた電気・電子部品、例えば摺動型や回転型の接点、スイッチの提供を目的とする。
すなわち、本発明は、
(1)導電性基材の表面に、AgまたはAg合金からなる表面めっき層が形成され、当該表面めっき層の少なくとも表層部に潤滑性粒子を有することを特徴とするめっき材料、
(2)前記表面めっき層が、前記潤滑性粒子を分散した複合めっき層を有することを特徴とする(1)項に記載のめっき材料、
(3)前記複合めっき層が、外表面に近いほど前記潤滑性粒子の分散濃度が高いことを特徴とする(2)項に記載のめっき材料、
(4)前記潤滑性粒子が、潤滑剤を内包するカプセルであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載のめっき材料、
(5)前記潤滑剤を内包するカプセルの粒径が、3μm以下であることを特徴とする(4)項に記載のめっき材料、
(6)前記潤滑剤を内包するカプセルの複合めっき層中における共析量が1〜30体積%であることを特徴とする(4)項記載のめっき材料、
(7)前記表面めっき層の表層部に、前記潤滑性粒子に加えて耐硫化性粒子を有することを特徴とする(4)〜(6)のいずれか1項に記載のめっき材料、
(8)前記導電性基材と前記表面めっき層の間に、少なくとも1層の下地層を有することを特徴とする(1)〜(7)のいずれか1項に記載のめっき材料、
(9)前記下地層は、銅、ニッケル、コバルト、もしくは鉄、またはこれらの元素を含む合金からなる層が少なくとも1層設けられて構成されたことを特徴とする(8)項に記載のめっき材料、
(10)前記下地層の厚さが0.1〜2μmであることを特徴とする(8)項記載のめっき材料、
(11)前記表面めっき層の厚さが0.5μm以上であることを特徴とする(1)〜(10)のいずれか1項に記載のめっき材料、
(12)銀または銀合金に潤滑性粒子を分散した複合めっき層を、電気めっきにより形成することを特徴とするめっき材料の製造方法、
(13)(1)〜(11)のいずれか1項に記載のめっき材料を用いて形成される、電気・電子部品、および
(14)(1)〜(11)のいずれか1項に記載のめっき材料を用いて形成される、摺動型または回転型の接点またはスイッチ
を提供するものである。
このような特性を有しているため、例えば電気・電子部品の摺動型や回転型の接点・スイッチの材料として好適なめっき材料である。
なお、導電性基材1と表面めっき2層との間には、図3の概略断面図に示すように必要に応じて下地層4を少なくとも1層形成してもよい。
また、導電性基材の形状としては、条材や線材などのいずれの形状でもよい。
表面めっき層の厚さは0.5μm以上であることが好ましく、1〜5μmであることがさらに好ましい。
このようなめっき材料は、例えば基材1に表面めっき層2を形成する際に、潤滑性粒子を分散したAgまたはAg合金めっき液中においてめっきを施すことにより、複合めっき層を形成して得られる。
このようなめっき材料は、例えば潤滑性粒子を分散したAgまたはAg合金めっき液中において基材1に表面めっき層2を施す際に、単一のめっき槽中で撹拌速度や電流密度などのめっき条件を連続的に変化させることや、潤滑性粒子の濃度が異なる複数のめっき槽を用いて連続的にめっきすることにより、潤滑性粒子3の分散濃度が異なる複合めっき層を形成して得られる。
潤滑性粒子3としては、潤滑剤を内包するカプセルが好ましい。潤滑剤を内包するカプセルを適用した場合、接点を摺動させるまでは潤滑剤はカプセル内で安定に保存されており、接点の摺動時に表面めっき層2が削れることでカプセルが表層に露出し、さらにカプセルが押し潰されて潤滑剤が放出されることにより、はじめて接点間の接触部に潤滑剤が供給される。
このため、表面めっき層2の表層全面に潤滑剤を塗布する場合と比べて、潤滑剤成分の経時的な品質劣化が抑制されるとともに、潤滑剤の供給量を制御して必要量の潤滑剤を摺動時にのみ放出することができる。
このような材料としては、例えば、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリスチレン系などの有機高分子が好適である。
このような潤滑剤としては、例えば、パラフィン系やオレフィン系の鉱物油や合成油、高級アルコールや多価アルコールやエーテル類、高級脂肪酸やそのエステル類、液状または固形ワックスなどから選ぶことができる。
めっき浴中に分散させるカプセルの粒径が大きくなると、めっき皮膜中に安定して分散させることが困難となり、かつ、めっき皮膜中に共析した場合に導電性などのめっき皮膜の特性が低下するため、カプセルの粒径は3μm以下であることが好ましい。
ただし、複合めっき層の厚さが3μmよりも薄い場合には、めっき皮膜中における分散状態やめっき皮膜特性への影響を考慮し、カプセル粒径を1μm以下とすることが特に望ましい。
また、上記のカプセルの粒径は、球状以外の形状のもの、例えば、楕円体状のものでは長径を意味する。
このうち、めっき皮膜への共析が用意となる微細なカプセルが得やすい、界面重合法や液中乾燥法が好適である。
本発明においては、複合めっき層中に共析されるカプセルの共析量は、めっき液中のカプセル濃度の他に、電流密度、撹拌速度、界面活性剤の濃度により調節することができる。
この耐硫化性粒子は、潤滑性粒子と別の粒子としてもよく、潤滑性と耐硫化性とを兼ね備えた一つの粒子としてもよい。また、潤滑性粒子と同様に、耐硫化性粒子も耐硫化剤を内包するカプセルとすることが望ましい。
このような耐硫化剤としては、例えば、メルカプタン類やイミダゾール類、チアゾール類のような含硫黄化合物があげられる。
高融点金属のうち、価格の点やめっき処理が行いやすい点などから、Cu、Ni、コバルト(Co)、鉄(Fe)が好適である。また、これらの元素を含む合金めっき層やめっき後に熱処理して合金化した化合物層も同様に有効であり、例えば、Cu−Sn、Ni−Sn、Ni−P、Co−P、Ni−Co、Ni−Co−P、Ni−Cu、Ni−Feなどをあげることができる。
このようなめっき材料では下地層と表面めっき層の密着性の向上が得られる。
上記した基材成分の表層側への拡散防止効果を十分に発揮させるためには、下地層4の厚さは0.25μm以上が望ましい。しかし、厚い場合には成型加工時に加工割れを起こす場合もあるため、加工性を考慮して厚みを1μm以下とすることが望ましい。
各実施例で作製した各めっき材料について、摩擦係数、接触抵抗、密着性、耐久性、曲げ加工性、耐硫化性の評価を実施した。評価方法は次の通りである。
バウデン型摩擦試験機を用いて、導電性基材の表面を摺動させた際の往復100回摺動後の動摩擦係数を評価した。測定条件は、荷重0.98N(100gf)、摺動距離10mm、摺動速度100mm/分とした。相手材は3mmRの鋼球プローブを用いた。
定電流通電時の電圧を測定することにより評価した。先端が5mmRのAgプローブを荷重0.49N(50gf)で接触させ、10mA通電時の電圧を測定し、n=10の平均値より接触抵抗を算出した。なお、測定は初期および350℃×1時間加熱後に実施した。
めっき表面からクロスカットを施し、テープピール試験により評価した。クロスカット後のめっき表面に、粘着テープ(寺岡製作所631S)を貼り付けて引き剥がした際に、めっき皮膜の剥離が見られないものを○、剥離が見られたものを×として評価した。
往復100回摺動後に、摺動部における基材または下地層の露出が見られるかを評価した。摺動部を450倍でマイクロスコープ観察し、基材や下地層の露出が見られないものを○、露出が見られたものを×として評価した。
導電性基材の圧延方向と直角に90°曲げ(0.2R)を施し、曲げ部におけるめっき皮膜の割れにより評価した。曲げ部について500倍でSEM観察し、めっき皮膜に割れが見られないものを○、割れが見られたものを×として評価した。
往復100回摺動後に硫化試験を行い、摺動部において表面めっき層の変色が見られるかを評価した。硫化試験後に摺動部を40倍で顕微鏡観察し、変色の見られないものを○、変色が見られたものを×として評価した。
本発明例1〜19、比較例1〜7
表1に示す化学成分組成の銅または銅合金を鋳造、圧延、焼鈍を行い厚さ0.2mmの純銅(C1020:基材A)、黄銅(C2600:基材B)、リン青銅(C5210:基材C)、コルソン系合金(Cu−Ni−Si:基材D)を作製した。これらの基材にめっき前処理として脱脂処理および酸洗処理を順次施し、その後必要に応じて下地層の形成を行い、表面めっき層および複合めっき層の形成を順次施して、めっき材料を作製した。各層を形成する際のめっき条件については表2に、作製しためっき材料については表3に示した。なお、本実施例では、潤滑性粒子を含有しない表面めっき層を単に「表面めっき層」と表記し、潤滑性粒子が分散された表面めっき層である「複合めっき層」とは区別して表記する。
潤滑性粒子としては、界面重合法によりポリアミド系の外壁を形成し、内部にパラフィン系潤滑剤を内包するカプセルを用いた。一部のカプセルでは、潤滑剤に加えて耐硫化剤(2−メルカプトベンゾイミダゾール)を合わせて内包するものとした。
これに対して、表層部に潤滑性粒子を有しない比較例1では、摩擦係数が高く、摺動性に劣るものであった。また、表面めっき層の厚さが薄すぎる比較例2では耐久性、加熱後の接触抵抗が劣るものとなった。マイクロカプセルの粒径が大きすぎる比較例3では接触抵抗値、密着性、耐久性に劣るものとなった。マイクロカプセルの共析量が少なすぎる比較例4では摩擦係数が高く、耐久性に劣るものとなった。マイクロカプセルの共析量が多すぎる比較例5では接触抵抗値、密着性、曲げ加工性に劣るものとなった。下地層の厚さが薄すぎる比較例6では熱処理後の接触抵抗値が下地層を形成しない場合と同程度であった。下地層の厚さが厚すぎる比較例7では曲げ加工性に劣るものであった。
本発明例21〜39、比較例11〜18
表1に示す化学成分組成の銅または銅合金を鋳造、圧延、焼鈍を行い厚さ0.2mmの純銅(C1020:基材A)、黄銅(C2600:基材B)、リン青銅(C5210:基材C)、コルソン系合金(Cu−Ni−Si:基材D)を作製した。これらの基材にめっき前処理として脱脂処理および酸洗処理を順次施し、その後必要に応じて下地層の形成を行い、表2に示したAgまたはAg合金のめっき浴に潤滑性粒子を添加しためっき浴中において電流密度を連続的に変化させてめっきを施し、図2に示す複合めっき材料を作製した。各層を形成する際のめっき条件については表2に、作製しためっき材料については表5に示した。
なお、めっき前処理や複合めっきの方法、カプセルの作製方法については実施例1と同様にした。
作製した各めっき材料について、実施例1と同様に摩擦係数、接触抵抗、耐久性、密着性の評価を実施した。一部のめっき材料においては、摺動後に硫化試験を行い、耐硫化性の評価を実施した。これらの評価結果を表6に示す。
これに対して、表層部に潤滑性粒子を有しない比較例11では、摩擦係数が高く、摺動性に劣るものであった。また、表面めっき層の厚さが薄すぎる比較例12では耐久性、加熱後の接触抵抗が劣るものとなった。マイクロカプセルの粒径が大きすぎる比較例13では接触抵抗値、密着性、耐久性に劣るものとなった。マイクロカプセルの共析量が少なすぎる比較例4では摩擦係数が高く、耐久性に劣るものとなった。マイクロカプセルの共析量が多すぎる比較例5では接触抵抗値、密着性、曲げ加工性に劣るものとなった。マイクロカプセルの共析量が表層および最下層で変わらない比較例16では、密着性、曲げ加工性が劣るものであった。下地層の厚さが薄すぎる比較例17では熱処理後の接触抵抗値が下地層を形成しない場合と同程度であった。下地層の厚さが厚すぎる比較例18では曲げ加工性に劣るものであった。
2 表面めっき層
3 潤滑性粒子
4 下地層
Claims (14)
- 導電性基材の表面に、銀または銀合金からなる表面めっき層が形成され、当該表面めっき層の少なくとも表層部に潤滑性粒子を有することを特徴とするめっき材料。
- 前記表面めっき層が、前記潤滑性粒子を分散した複合めっき層を有することを特徴とする請求項1に記載のめっき材料。
- 前記複合めっき層が、外表面に近いほど前記潤滑性粒子の分散濃度が高いことを特徴とする請求項2に記載のめっき材料。
- 前記潤滑性粒子が、潤滑剤を内包するカプセルであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のめっき材料。
- 前記潤滑剤を内包するカプセルの粒径が、3μm以下であることを特徴とする請求項4に記載のめっき材料。
- 前記潤滑剤を内包するカプセルの複合めっき層中における共析量が1〜30体積%であることを特徴とする請求項4記載のめっき材料。
- 前記表面めっき層の表層部に、前記潤滑性粒子に加えて耐硫化性粒子を有することを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載のめっき材料。
- 前記導電性基材と前記表面めっき層の間に、少なくとも1層の下地層を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のめっき材料。
- 前記下地層は、銅、ニッケル、コバルト、もしくは鉄、またはこれらの元素を含む合金からなる層が少なくとも1層設けられて構成されたことを特徴とする請求項8に記載のめっき材料。
- 前記下地層の厚さが0.1〜2μmであることを特徴とする請求項8記載のめっき材料。
- 前記表面めっき層の厚さが0.5μm以上であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のめっき材料。
- 銀または銀合金に潤滑性粒子を分散した複合めっき層を、電気めっきにより形成することを特徴とするめっき材料の製造方法。
- 請求項1〜11のいずれか1項に記載のめっき材料を用いて形成された電気・電子部品。
- 請求項1〜11のいずれか1項に記載のめっき材料を用いて形成された摺動型または回転型の接点またはスイッチ。
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