JP2007031589A - 鉛筆芯 - Google Patents

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Abstract

【課題】 濃い筆跡と高い定着性を有する鉛筆芯を提供すること。
【解決手段】 焼成により得られる鉛筆芯の気孔に、IOB値が0.52以上0.81以下である脂肪酸エステルよりなる含浸成分を含浸させて、濃い筆跡と高い定着性を有する鉛筆芯を得た。
【選択図】 なし

Description

本発明は、焼成により得られる多数の気孔に、含浸成分を含浸させてなる鉛筆芯に関する。
一般的な鉛筆芯は、黒鉛、窒化ホウ素などの体質材と、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、尿素樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ブチルゴムといった有機結合材とを主材として使用し、必要に応じてフタル酸エステルなどの可塑剤、メチルエチルケトンなどの溶剤、ステアリン酸塩などの安定剤、ステアリン酸などの滑材、カーボンブラックなどの充填材を併用し、これらの配合材料をニーダー、3本ロールなどで混練し、細線状に押出成形した後、焼成温度まで熱処理を施して多数の細孔を形成し、この細孔に、必要に応じて、シリコン油、流動パラフィン、スピンドル油、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、モンタンワックス、カルナバワックスといった油脂類を含浸させて製造している。
鉛筆芯は、自己が摩耗することにより発生する摩耗粉などが、紙などの被筆記面に乗ることによって筆跡を形成するものである。上記のような油脂類を含浸させることによって、芯体中の体質材(黒鉛、窒化硼素、タルク等)表面に皮膜を形成し、濡れによる反射光の分散・吸収効果にて、主に黒鉛に起因する強い反射光を抑える効果が付与されたり、筆記時に黒鉛の結晶層間が容易に剥離・脱落したりすることによる摩耗の促進によって、濃い筆跡や運筆の滑らかさが得られるものと考えられる。
しかしながら、摩耗の促進により得られた濃い筆跡は、被筆記面に大量の着色成分が付与されていることとなり、手などによる擦過によって手に付着するとか、紙に広がったりする汚れが目立つようになってくる。これは紙面に付着した筆記摩耗粉が紙面に十分に定着していないことから生じるものと考えられる。
筆記摩耗粉の紙面への定着の向上を図った従来技術としては、マイクロクリスタリンワックスやモンタンワックスなどの固体状油状物を含浸させるものなどが知られている(特許文献1、特許文献2参照)。
特開平03−284996号公報 特開平05−009472号公報
しかしながら従来技術では、常温では十分な定着作用を得られない為に加熱して用いるものであったり(特許文献1)紙面への筆記では十分な筆記濃度が得られない為に製図フィルムに筆記するものであった(特許文献2)。
本発明は、一般的な紙への筆記条件においても、濃い筆跡濃度を得ながらも擦過時に紙に広がる汚れを低減した鉛筆芯を提供することが目的である。
即ち、本発明は、焼成による気孔に少なくとも脂肪酸エステルを含有し、IOB値が0.52以上0.81以下である含浸成分を含浸させてなる鉛筆芯を要旨とする。
IOB値とは、化学構造中の特定の基に決められた値の合計を無機性値として、これを化学構造中の炭素数を20倍して特定の分岐がある場合に決められた数値を引いた値を有機性値として、無機性値を有機性値で除した値であり、例えば、無機性基であるカルボキシル基は1つにつき150と決められており、有機性値については炭素1つにつき20と数値化されるものである。このIOB値は、分子内に占める極性の強さを表す指標となる。含浸成分のIOB値が0.52以上0.81以下の範囲とすることによって極性の強さは分子が紙面の表面水酸基との結びつきに最適な強さとなり、かつ気孔内へ十分に含浸していくものとすることができる。即ち、極性があると親水性である紙面と結びついて含浸成分の紙に対する定着性を向上させるが、極性が強すぎてしまうと疎水性の黒鉛で構成されている鉛筆芯の気孔内へ含浸成分が含浸し難くなり、濃い筆線濃度を得る事ができず、極性が弱すぎると紙面と筆記磨耗紛を結びつける効果が低減して擦過に対する磨耗紛の移動が抑制され難くなる。
ここで、極性が適切な強さであっても、その極性すなわち無機性基が分子内で偏在していると、紙の成分であるセルロース等の水酸基との水素結合による化学的な吸着作用に偏りが生じて、紙面と筆記磨耗紛を結びつける効果がでにくくなる。脂肪酸エステルの構造は、アルキレンユニットに無機性基が挟まれた構造であるので、無機性基は化合物内で偏在することなく満遍なく分布する。よって、含浸成分として脂肪酸エステルを使用すると共に、IOB値が0.52以上0.81以下とすることによって、濃い筆跡濃度と擦過時に紙に広がる汚れが低減する鉛筆芯を得ることができると推察される。
以下、詳述する。
含浸成分を含浸させる媒体となる焼成芯体は、従来用いられている構成材料及び製造方法を限定なく用いることができる。有機結合剤として、熱可塑性樹脂、なかでも含塩素樹脂が細孔形成の面からは特に好ましい。体質材には黒鉛やタルク、雲母、窒化硼素など公知のものを単独もしくは併用で問題なく使用できる。気孔形成材として、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ナイロン、ポリメチルメタクリレートなど、可塑剤として、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジブチル(DBP)などが使用でき、これに必要に応じて、滑剤としてステアリン酸、安定剤としてステアリン酸塩充填材としてカーボンブラックなどをメチルエチルケトンなどの媒体に混合して、ヘンシェルミキサーなどによる混合、ニーダー、3本ロールなどによる混練の後、細線状に押出成形を行ない、空気中で室温から300℃までの範囲を10時間かけて加熱処理を行なった後に、不活性雰囲気下で室温から1000℃まで3時間かけて昇温した後に1000℃で1時間保持するなどしてして焼成芯体を得ることができる。
焼成芯体の気孔中に含浸させる含浸成分としては、少なくとも脂肪酸エステルを使用する。
脂肪酸エステルとしては、ステアリン酸ブチル、オリーブ脂肪酸エチル、オレイン酸エチル、ミリスリン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、リノール酸エチル、ステアリン酸エチレングリコール、ステアリン酸ポリグリセリル、ミリスチン酸ポリグリセリル、ラウリン酸ポリグリセリル、パルミチン酸ポリグリセリル、カプリル酸プロピレングリコール、カプリン酸プロピレングリコールなどが挙げられるが、このようなエステル化物の中からIOB値0.5以上0.81以下であるものを使用する。市販の代表的なものとしては、モノカプリル酸プロピレングリコールとしてNIKKOL Sefsol−218(日光ケミカルズ(株)製)、イソステアリン酸ポリグリセリルとしてリソレックスPGIS21(高級アルコール工業(株)製)、ジイソステアリン酸ポリグリセリルとしてリソレックスPGIS32(高級アルコール工業(株)製)などが挙げられる。
脂肪酸エステルは単独でも使用することができるが、シリコーン油、スピンドル油、アルファオレフィンオリゴマー、スクワラン、流動パラフィン等と混合して用いることもできる。
焼成芯体に含浸成分を含浸させる方法としては、加熱した含浸成分中に芯体を浸漬し含浸させる方法が採用できる。含浸成分を攪拌すると含浸する速度を速めることができる。尚、含浸させる焼成芯体の組成材料及び焼成条件は任意で良い。含浸後は適宜、遠心分離機などで焼成芯体表面の余分な含浸成分を除去して鉛筆芯とすれば良い。
以下、実施例に基づき本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
ポリ塩化ビニル(結合材) 30重量部
黒鉛(体質材) 50重量部
カーボンブラック 2重量部
ジオクチルフタレート(可塑剤)10重量部
ステアリン酸塩(安定剤) 2重量部
メチルエチルケトン(溶剤) 30重量部
ポリエチレン(気孔形成材) 5重量部
上記配合を配合物として、ニーダー及び3本ロールにより十分に混練後、細線状に押し出し成形し、空気中で300℃まで10時間で加熱し、更に、不活性雰囲気で1100℃まで3時間かけて昇温後1時間保持し、呼び直径0.5mmの焼成芯体を得た。これを100℃に加熱したリソレックスPGIS21(イソステアリン酸ポリグリセリル、高級アルコール工業(株)製、IOB値=0.81)に10時間浸漬後、表面上の余分な含浸成分を除去して鉛筆芯を得た。
(実施例2)
実施例1においてリソレックスPGIS21の代わりにリソレックスPGIS32(ジイソステアリン酸ポリグリセリル、高級アルコール工業(株)製、IOB値=0.52)を使用した以外は、実施例1と同様にして鉛筆芯を得た。
(実施例3)
実施例1においてリソレックスPGIS21の代わりにNIKKOL Sefsol−218(モノカプリル酸プロピレングリコール、日光ケミカルズ(株)製、IOB値=0.73)を使用した以外は、実施例1と同様にして鉛筆芯を得た。
(実施例4)
実施例1において、リソレックスPGIS21を、リソレックスPGIS21 95部とダフニーオイルCP 68N(流動パラフィン、出光興産(株)製、IOB値=0)5部の混合物とした以外は、実施例1と同様にして鉛筆芯を得た。
(比較例1)
実施例1において、含浸成分をNIKKOL EGMS−70V(モノステアリン酸エチレングリコール、日光ケミカルズ(株)製、IOB値=0.40)とした以外は実施例1と同様にして鉛筆芯を得た。
(比較例2)
実施例1において、含浸成分をEMALEX GWIS−106(イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、日本エマルジョン(株)製、IOB値=0.84)とした以外は実施例1と同様にして鉛筆芯を得た。
(比較例3)
実施例1において、含浸成分をジオールHD(1、2−ヘキサンジオール、高級アルコール工業(株)製、IOB値=1.81)とした以外は実施例1と同様にして鉛筆芯を得た。
(比較例4)
実施例1において、含浸成分をE−503(ポリオキシエチレンオレイルエーテル、日本エマルジョン(株)製、IOB値=0.55)とした以外は実施例1と同様にして鉛筆芯を得た。
(比較例5)
実施例1において、含浸成分をオリーブスクワラン(スクワラン、高級アルコール工業(株)製、IOB値=0)とした以外は実施例1と同様にして鉛筆芯を得た。
上記各例により得られた鉛筆芯の筆跡濃度と定着性を測定した結果を表1に示す。
Figure 2007031589

Claims (1)

  1. 焼成による気孔に少なくとも脂肪酸エステルを含有し、IOB値が0.52以上0.81以下である含浸成分を含浸させてなる鉛筆芯。
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