JP2012172065A - 鉛筆芯及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】強度が強く、滑らかな筆記感を有し、描線が濃く鮮やかな黒色となる鉛筆芯及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の鉛筆芯は、少なくとも黒鉛を含有する鉛筆芯において、グラフェンナノリボンが黒鉛のab面と接触していることを特徴とする。
上記特性の鉛筆芯は、例えば、少なくとも平面度が2μm以下のab面を持つa軸またはb軸とc軸のアスペクト比が5以上の鱗片状黒鉛に、黒鉛層2〜40枚、大きさはリボンの幅20〜300nm、長さは20〜30μm、端の形状ジグザグ端であるグラフェンナノリボンを接触後、固定させて複合した後、その複合黒鉛を用いて芯体を形成し、屈折率1.3〜1.5で25℃における粘度が7〜200mm/sとなる液体を含浸させることにより製造することができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、シャープペンシル用鉛筆芯、木軸用鉛筆芯などの鉛筆芯に関し、更に詳しくは、強度が強く、滑らかな筆記感を有し、描線が濃く鮮やかな黒色となる鉛筆芯及びその製造方法に関する。
一般に、鉛筆芯において、要求される重要特性としては、筆記感が良好で描線の発色性が良く、機械的強度が強いことである。
本願出願人は、鉛筆芯などの固形描画材中の油含浸可能な有効細孔容積や表面積を大きくし、圧縮強度を更に向上させると共に、書き味が滑らかで、十分な発色性及び描線濃度を有し、しかも、摩耗量が少なく、消去性が良く、描線を手でこすっても汚れにくい固形描画材及びその製造方法を提供するために、ナノ材料(ナノ粒子)を少なくとも含有する固形描画材用配合組成物を焼成処理又は非焼成処理してなる固形描画材芯体を形成し、該固形描画材芯体の気孔内に潤滑剤を充填してなることを特徴とする固形描画材を提案している(例えば、特許文献1参照)。
また、微粒子を高濃度に含有する厚い皮膜を筆記により形成できる押し出し成形芯体である鉛筆芯を製造する方法を提供することを目的として、平均粒径100nm以下の微粒子の一部又は全部を、予め板状体質材表面に付着させて微粒子付着板状体質材としてから芯体材料と混合し、混練した後、押出成形により成形する芯体の製造方法(例えば、特許文献2参照)も知られており、この技術は上記特許文献1の開示内容を含むものである。なお、この特許文献2に記載の皮膜の厚さは、単に下地を隠蔽する力を数値によって表現したにすぎず、見た目の色目(濃度)や書き味とは関連ないものである。
ところで、上記特許文献1における「書き味」あるいは「筆記感」と称している評価項目については、以下のような欠点が存在している。それは、被験者が、短い時間での筆記によって、あまりシャープペンシルの持ち替えなどを行わず、試験開始時の体勢のまま片減りした面によって描いた時の感覚を基に評価を行っていたことである。片減りした面は、摩耗した平滑な面であるため、描き始めから描き終わりまで、ほぼ摩耗した平滑な面での筆記ということとなる。
このため、最近、発売され好評を博している本願出願人による製品〔シャープペンシル、商品名「クルトガ」、三菱鉛筆社製(WO2007/142135、日本国特許第4240417号)〕に適用した場合、具体的には、筆記の度に芯体が回転して、常に新しい部分によって筆記されるタイプのシャープペンシルに試験すべき芯体を適用して試験を行った場合、これまでのような筆記感が再現されないという問題点が生じることが判った。
すなわち、上記特許文献1等に記載される技術により、単純にナノ粒子を混合し、固形描画材を形成しても、より優れた描線濃度、実筆記における書き味及びその代表的な指標となる静・動摩擦係数の好適な評価等を得ることはできないものであった。単純にナノ粒子を混合した固形描画材において、静・動摩擦係数を測定する場合、上記した「書き味」あるいは「筆記感」と称している評価項目について、芯体の製造方法、構成等によっては、必ずしも再現しない、という課題が発見されたのである。
一方、近年、ナノスケールサイズのカーボン材料の応用研究、用途開発等が行われている。本願出願人も、ナノスケールサイズのカーボンを使用した鉛筆芯として、例えば、曲げ強度が向上するにもかかわらず、滑らかな筆感を与える鉛筆芯として、結合剤と、着色剤と、体質剤および潤滑剤を用いる非焼成鉛筆芯において、フラーレン類を添加してなる鉛筆芯(例えば、特許文献3参照)や、硬度と書き味はそのままで、曲げ強度が向上した鉛筆芯として、黒鉛、カーボンブラックなどの体質材と、粘土、天然高分子、ピッチ、アスファルトなどの結合材とを主材とし、必要に応じて溶剤および/または可塑剤を添加して混練したものを押し出し成形、高温焼成する鉛筆芯の製造方法において、少なくとも体質材の一部として、カーボンナノチューブ(微細なチューブ状のグラファイト)を使用する焼成鉛筆芯の製造方法(例えば、特許文献4参照)を提案している。
しかしながら、これらのフラーレン類、カーボンナノチューブを使用する鉛筆芯においても、上述のナノ粒子を用いた鉛筆芯と同様に、より優れた描線濃度、実筆記における書き味及びその代表的な指標となる静・動摩擦係数の好適な評価等を得ることはできないものであった。単純にフラーレン類、カーボンナノチューブを混合した固形描画材において、静・動摩擦係数を測定する場合、上記した「書き味」あるいは「筆記感」と称している評価項目について、芯体の製造方法、構成等によっては、必ずしも再現しない、という課題がある。
以上のように、フラーレン類、カーボンナノチューブなどのナノ材料(ナノ粒子)を用いた鉛筆芯において、従来のシャープペンシル用、木軸用などに使用する場合の他に、筆記の度に芯体が回転して、常に新しい部分によって筆記されるタイプのシャープペンシルなどに使用される鉛筆芯であっても、更に、より良い滑らかな筆記感を有し、高い強度を有すると共に、描線が濃く鮮やかな黒色となる鉛筆芯及びその製造方法が切望されているのが現状である。
更に、最近、新しい次世代の高機能材料と期待される「グラフェン」と呼ばれる炭素材料(炭素原子が六角形のハチの巣のように広がった平面状の材料)、ナノスケールサイズのグラフェン(ナノグラフェン)の開発、研究が盛んに行われており、また、量子細線状の形状を有するグラフェンナノリボンの大量生産方法も知られているが(例えば、非特許文献1参照)、これらのナノグラフェン類は、未だ基礎研究段階であり、その応用研究、有用な用途開発(グラフェンをトランジスタや配線に応用、炭化ケイ素の基板に高品質グラフェンを作製、液晶パネル・太陽電池の透明電極向けに大面積化等)の研究開発等が行われ、電子デバイス等の産業分野での応用が期待されている。
特開2007−138031号公報(特許請求の範囲、実施例等) 特開2008−115211号公報(特許請求の範囲、実施例等) 特開平8−73797号公報(特許請求の範囲、実施例等) 特開平8−325504号公報(特許請求の範囲、実施例等)
NANO LETTERS 2008 Vol.8,No.9 2773−2778:sp2カーボンの新しい形態(結晶性グラフェンナノリボン)の大量生産
本発明は、上記従来技術の課題及び現状等に鑑み、これを解消しようとするものであり、少なくとも黒鉛を用いた鉛筆芯において、通常のシャープペンシル用、木軸用などに使用する場合の他に、筆記の度に芯体が回転して、常に新しい部分によって筆記されるタイプのシャープペンシルなどに使用される鉛筆芯であっても、更に、より良い滑らかな筆記感を有し、更に高い描線濃度を有する鮮やかな黒色となる鉛筆芯及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記従来の課題等に鑑み、鋭意研究を行った結果、黒鉛等により鉛筆芯の芯体を形成後、特定の含浸オイルに、グラフェンナノリボンを均一に分散させ、これを含浸させて鉛筆芯を製造すると、上述の各特許文献等に開示された鉛筆芯を上回る描線濃度、書き味、静・動摩擦抵抗の低い特性の鉛筆芯を得ることができ、また、少なくとも黒鉛及びグラフェンナノリボンを配合し焼成芯を形成後に特定の含浸オイルを含浸させても上記同様の効果等が得られる鉛筆芯及びその製造方法を得ることに成功し、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本発明は、次の(1)〜(12)に存する。
(1) 少なくとも黒鉛を含有する鉛筆芯において、グラフェンナノリボンが黒鉛のab面と接触していることを特徴とする鉛筆芯。
(2) 前記グラフェンナノリボンが、黒鉛層2〜40枚、大きさはリボンの幅20〜300nm、長さは20〜30μm、端の形状がジグザグ端であることを特徴とする上記(1)に記載の鉛筆芯。
(3) 前記黒鉛が鱗片状黒鉛であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の鉛筆芯。
(4) 前記鱗片状黒鉛は、平面度が2μm以下のab面を持つa軸またはb軸とc軸のアスペクト比が5以上であることを特徴とする上記(3)に記載の鉛筆芯。
(5) 前記グラフェンナノリボンによって黒鉛と黒鉛の間に生じた隙間に、屈折率1.3〜1.5で、25℃における粘度が7〜200mm/sとなる液体を含有させることを特徴とする上記(1)〜(4)の何れか一つに記載の鉛筆芯。
(6) JIS S 6005:2007に規定されている画線機を用いた画線方法における画線中の全摩擦力の平均値(n=10)を筆記荷重で割った、全摩擦係数が0.191〜0.218である上記(1)〜(5)の何れか一つに記載の鉛筆芯。
(7) 少なくとも黒鉛を含有する鉛筆芯の芯体を形成後、グラフェンナノリボンを、屈折率1.3〜1.5で25℃における粘度が7〜200mm/sとなる液体に分散させた後、該鉛筆芯体に含浸させることを特徴とする鉛筆芯の製造方法。
(8) 少なくとも黒鉛に、グラフェンナノリボンを接触後、固定させて複合した後、その複合黒鉛を用いて芯体を形成し、屈折率1.3〜1.5で25℃における粘度が7〜200mm/sとなる液体を含浸させることを特徴とする鉛筆芯の製造方法。
(9) 前記黒鉛にグラフェンナノリボンを静電力によって接触させることを特徴とする上記(8)に記載の鉛筆芯の製造方法。
(10) 少なくとも黒鉛と、グラフェンナノリボンを可塑剤及び/又は溶剤に均一に分散したものを混練後、該混練物から芯体を形成することを特徴とする鉛筆芯の製造方法。
(11) 前記黒鉛は、平面度が2μm以下のab面を持つa軸またはb軸とc軸のアスペクト比が5以上である鱗片状黒鉛であることを特徴とする上記(7)〜(10)の何れか一つに記載の鉛筆芯の製造方法。
(12) 前記グラフェンナノリボンが、黒鉛層2〜40枚、大きさはリボンの幅20〜300nm、長さは20〜30μm、端の形状がジグザグ端であることを特徴とする上記(7)〜(11)の何れか一つに記載の鉛筆芯の製造方法。
なお、本発明で規定する「JIS S 6005:2007」に規定されている画線機は、芯体を75度の角度に傾け、自転させながら描画させるものであり、前記した筆記の度に芯体が回転して、常に新しい部分によって筆記されるタイプのシャープペンシルの筆記時、描画時の態様に近いものである。そこで、JIS S 6005:2007に規定されている画線機を用いた画線方法における画線中の全摩擦力の平均値を筆記荷重で割った値(n=10)を、本願発明において、「動摩擦係数」、筆記初期の摩擦力を筆記荷重で割った値を「静摩擦係数」と称して評価項目とした。
本発明によれば、強度が強く、濃く、極めて滑らかであり、描線が擦過汚れしにくく、かつ消しゴムで消しやすい鉛筆芯となり、しかも、通常のシャープペンシル用、木軸用などに使用する場合の他に、筆記の度に芯体が回転して、常に新しい部分によって筆記されるタイプのシャープペンシルなどに使用される鉛筆芯であっても、より良い滑らかな筆記感を有し、更に高い描線濃度を有する鮮やかな黒色となる鉛筆芯及びその製造方法が提供される。
鱗片状天然黒鉛の平面度等を測定するための電子顕微鏡(SEM)画像に基づく説明図である。 グラフェンナノリボンの大きさ等を測定するための電子顕微鏡(SEM)画像に基づく説明図である。 グラフェンナノリボンの端の形状である「アームチェア端」を示す説明図である。 グラフェンナノリボンの端の形状である「ジグザグ端」を示す説明図である。
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。
本発明の鉛筆芯は、少なくとも黒鉛を含有する鉛筆芯において、グラフェンナノリボンが黒鉛のab面と接触していることを特徴とするものである。
また、本発明の鉛筆芯は、次の1)〜3)の何れかの製造方法により製造することができる。
1) 少なくとも黒鉛を含有する鉛筆芯の芯体を形成後、グラフェンナノリボンを、屈折率1.3〜1.5で25℃における粘度が7〜200mm/sとなる液体に分散させた後、該鉛筆芯体に含浸させることにより鉛筆芯を製造する(以下、「第1製造方法」という)。
2) 少なくとも黒鉛に、グラフェンナノリボンを接触後、固定させて複合した後、その複合黒鉛を用いて芯体を形成し、屈折率1.3〜1.5で25℃における粘度が7〜200mm/sとなる液体を含浸させることにより鉛筆芯を製造する(以下、「第2製造方法」という)。
3) 少なくとも黒鉛と、グラフェンナノリボンを接触後、前記グラフェンナノリボンを可塑剤または溶剤に均一に分散したものを混練後、該混練物から芯体を形成することにより鉛筆芯を製造する(以下、「第3製造方法」という)。
以下において、「本発明」というときには、上記鉛筆芯及び上記1)〜3)の製造方法の両方を含むものである。
本発明で用いる黒鉛としては、例えば、鱗片状黒鉛、鱗状(塊状)黒鉛、天然土状黒鉛、人造黒鉛、キッシュ黒鉛、膨張黒鉛、膨張化黒鉛などが挙げられ、これらは各単独又は2種以上を用いてもよいものである。
好ましくは、潤滑性に起因する書き味、アスペクト比に起因する構造力学的強度の点から鱗片状黒鉛、特に、鱗片状天然黒鉛の使用が望ましく、更に好ましくは、平面度が2μm以下のab面を持つa軸またはb軸とc軸のアスペクト比が5以上となるものが望ましく、特に好ましくは、書き味、筆記係数の点から、少なくとも平面度が0.05〜2μmのab面を持つa軸またはb軸とc軸のアスペクト比が5〜100である鱗片状天然黒鉛が望ましい。
また、用いる上記鱗片状天然黒鉛などの黒鉛は、強度と書き味の点から、体積平均径(mv値)が4〜10μmとなるものが望ましい。
なお、本発明(後述する実施例等を含む)における体積平均径(mv値)は、レーザー回折・散乱法における測定結果から体積で重みづけされた平均径をいい、例えば、鱗片状黒鉛では、マイクロトラック(日機装社製、3100II)を用いて乾式測定することができる。
本発明に用いるグラフェンナノリボンとは、黒鉛の層面が2枚から50枚程度三次元的に積層したものが、薄く二次元的リボン状に広がったナノスケールサイズのグラフェンである。用いるグラフェンナノリボンの大きさとしては、リボンの幅は5〜500nmと細いが、長さは10〜50μm程度のものが存在する。このグラフェンナノリボンの分子構造は炭素原子が六角格子を組んだ構造を持つため、端の形状がアームチェア端とジグザグ端と呼ばれる2種類の典型的端が存在する。
好ましくは、本発明の対象が鉛筆芯であるので、書き味、強度の点から、黒鉛層2〜40枚、大きさはリボンの幅20〜300nm、長さは20〜30μm、端の形状がジグザグ端であるグラフェンナノリボンが特に望ましい。
なお、本発明において、グラフェンナノリボンの端の形状が「アームチェア端」とは、図3に示される構造をいい、また、「ジグザグ端」とは図4に示される構造をいうものである。
本発明において、「グラフェンナノリボン」の大きさ、黒鉛層の層面数、端の形状等の確認は、走査型電子顕微鏡(SEM、FE−SEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて画面上で観察されるグラフェンナノリボン10個の幅、長さ、層を画面あるいは写真より目視にて求め、平均値を算出した。なお、その長さはグラフェンナノリボンが真直ではないため、凡その値である。
本発明において、用いるグラフェンナノリボンの製造方法としては、化学蒸着方法等が知られており、例えば、フェロセンとチオフェンのエタノール溶液を超音波でエアゾール化し、アルゴン気流中で高温加熱して生成させる方法等により、上記特性のグラフェンナノリボンを得ることができる。
本発明において、鉛筆芯中のグラフェンナノリボンの含有量としては、上記第1〜第3製造方法のいずれによっても、鉛筆芯全量に対して、好ましくは、0.01〜5質量%(以下、単に「%」という)、更に好ましくは、0.02〜1%、特に好ましくは、0.02〜0.5%とすることが望ましい。
このグラフェンナノリボンの含有量が0.01%未満であると、有効細孔容積が殆ど変化しなく、また、未添加の鉛筆芯との差が現れなくなる。一方、グラフェンナノリボンの含有量が5%を超えると、有効細孔容積は大きくなるが、鉛筆芯の構造が崩れて強度が低下してしまい、好ましくない。更に、下記各製造方法でのグラフェンナノリボンの含有形態及びその含有量等について詳述する。
本発明の鉛筆芯を上記第1製造方法により製造する場合は、初めに、上記黒鉛を用いて鉛筆芯形成用の芯体を形成する。この鉛筆芯形成用の芯体は、上記黒鉛、好ましくは、上記特性を有する鱗片状黒鉛を含有した鉛筆芯配合組成物を焼成処理又は非焼成処理することにより形成する。
本第1製造方法において、鉛筆芯形成用の芯体は、上記特性の鱗片状黒鉛等の黒鉛を含有した鉛筆芯配合組成物を用いるものであるが、該黒鉛以外の成分は鉛筆芯種等により、体質材、潤滑剤、熱可塑性合成樹脂などのバインダー成分、有機溶剤などの各成分を適宜選択して用いることができる。
例えば、鉛筆芯がシャープペンシル用焼成鉛筆芯では、鱗片状黒鉛等の黒鉛以外に、カーボンブラックとアモルファス炭素を少なくとも含有せしめることができ、また、シャープペンシル用や木軸用の非焼成鉛筆芯では、油脂とワックス類とを少なくとも含有することができ、更に、上記シャープペンシル用、木軸用などの焼成鉛筆芯では、更に体質材とセラミック結合材とを少なくとも含有することができる。
用いことができるカーボンブラックとしては、例えば、オイルファーネスブラック、ガスファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、及びこれらを黒鉛化した黒鉛化カーボンブラックなどが挙げられる。
また、体質材としては、従来の鉛筆芯に使用されているものであれば、特に限定されるものではなく、いずれも使用することができる。例えば、窒化ホウ素、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム等の白色系体質材や有色系の体質材も使用することができ、当然これら数種類の混合物も使用できる。特に、好ましくは、その物性、形状から窒化ホウ素、カオリン、タルクが挙げられる。
セラミック結合材としては、結晶質又は非晶質のSiO、Si、Al、ZrO、MgO、BN、B、AlNなどが挙げられ、これらは各単独又は2種以上を用いてもよいものである。
熱可塑性合成樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩素化塩化ビニル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエーテルエーテルケトンなどを挙げられる。
有機溶剤としては、上記熱可塑性合成樹脂を溶解し得るものが好ましく、具体的には、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、トリクレジルホスフェート、ジオクチルアジペート、ジアリルイソフタレート、プロピレンカーボネート、アルコール類、ケトン類、エステル類などを用いることができる。
また、シャープペンシル用焼成鉛筆芯では、その他の成分として、α−オレフィンオリゴマー、脂肪酸エステル、スピンドル油、ワックス類、窒化ホウ素、タルク、シリコーンオイル、シリカ微粒子、金属石鹸等を用いることができ、上記シャープペンシル用以外の非焼成鉛筆芯又は焼成鉛筆芯では、その他の成分として、シリコーンオイル、ラード、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、セルロイド及びその他の熱可塑性樹脂等を用いることができる。
本発明の第1製造方法では、上述の鉛筆芯用配合組成物、例えば、シャープペンシル用焼成鉛筆芯、シャープペンシル用や木軸用の非焼成鉛筆芯、上記シャープペンシル用以外の焼成鉛筆芯に用いる各成分(体質材、熱可塑性樹脂、有機溶剤など)を混練、成型、乾燥及び非酸化性雰囲気下で焼成処理、または、非焼成処理(50〜120℃で低温乾燥)してなる鉛筆芯用芯体を形成することができる。
この鉛筆芯用芯体を形成するために用いる上記特性の鱗片状黒鉛などの黒鉛の含有量は、鉛筆芯用配合組成物全量に対して、20〜80%とすることが好ましく、更に好ましくは、30〜70%とすることが望ましいが、硬度によって最適値は異なる。
この鱗片状黒鉛等の黒鉛の含有量が、20%未満であったり、80%を超えたりすると、硬度、書き味、強度のバランスが崩れる結果となり、好ましくない。
本発明の第1製造方法において、例えば、シャープペンシル用焼成鉛筆芯の製造では、好ましくは、強度、濃度、書き味の点から、鉛筆芯配合組成物全量に対して、(a)上記特性の鱗片状黒鉛等の黒鉛20〜80%、(b)熱可塑性合成樹脂30〜60%、(c)該熱可塑性合成樹脂を溶解し得る有機溶剤10〜30%を、ヘンシェルミキサーで分散混合し、加圧ニーダー、二本ロールで混練し、押出成型機により成型した後、電気炉で110〜250℃で乾燥し、次いで、非酸化性雰囲気下(窒素ガス雰囲気下、不活性ガス雰囲気下)で800〜1400℃、20〜40時間で焼成することによりシャープペンシル用の鉛筆芯形成用の芯体を形成することができる。
本発明の鉛筆芯は、上記で形成した鉛筆芯体に、グラフェンナノリボン、好ましくは、黒鉛層2〜40枚、大きさはリボンの幅20〜300nm、長さは20〜30μm、端の形状がジグザグ端であるグラフェンナノリボンを、屈折率1.3〜1.5で25℃における粘度が7〜200mm/sとなる液体に分散させた後、含浸させることにより得られる。
本発明の第1製造方法に用いる液体は、グラフェンナノリボンを鉛筆芯体の気孔内に含浸せしめ、鉛筆芯体を構成する鱗片状黒鉛のab面にグラフェンナノリボンを接触せしめる構造とするため、および濃度を高める目的と共に、潤滑剤として作用させるために用いるものであり、気孔への浸透しやすさと光の反射率の点から、屈折率1.3〜1.5、好ましくは、屈折率1.39〜1.46で、25℃における粘度が7〜200mm/sとなるものが挙げられる。
用いることができる液体としては、上記特性の液体であれば、特に限定されず、上記特性を有するジメチルシリコーンオイル、カルボキシメチルセルロース(CMC)液、トリメチルペンタフェニルトリシロキサン、流動パラフィン、脂肪酸エステル等の各単独又は2種以上の混合物が挙げられる。具体的には、市販されている、カネダ社製のハイコールMシリーズ、信越化学社製のKF−96シリーズなどが挙げられる。
なお、本発明(後述する実施例等を含む)における屈折率は、絶対屈折率をいい、また、動粘度はJIS K 2283およびJIS Z 8803の粘度測定法に基づいた単位〔mm/s〕の値をいい、例えば、「キャノンフェンスケ」、「ウベローデ」によって直接測定することができる。
これらの液体の屈折率が1.3を下回る場合や1.5を超える場合には、反射率低減に対する寄与が低く、描線にいわゆる「テカリ」が生じることとなる。また、粘度が7mm/sを下回る場合には、芯体内に液体を保持できず、経時的に流出するものとなり、一方、粘度が200mm/sを超える場合は、液体が細孔内へ均一に浸透しないものとなり、書き味の悪い鉛筆芯となってしまい、好ましくない。
これらの特性を有するグラフェンナノリボンの液体中への含有量としては、含浸処理により得られる鉛筆芯中にグラフェンナノリボンの含有量が、好ましくは、0.01〜5%、更に好ましくは、0.02〜1%、特に好ましくは、0.02〜0.5%となるように調整されるものである。
得られる鉛筆芯中に上記範囲のグラフェンナノリボンの含有量とするためには、鉛筆芯体の大きさ、細孔径と細孔容積などにより変動するが、含浸処理せしめる液体全量中に、グラフェンナノリボンが好ましくは、0.01〜10%、更に好ましくは、0.02〜2%、特に好ましくは、0.05〜0.5%とすることが望ましい。
この鉛筆芯中におけるグラフェンナノリボンの含有量が0.01%未満であると、有効細孔容積が殆ど変化しなく、また、未添加の鉛筆芯との差が現れなくなる。一方、グラフェンナノリボンの含有量が5%を超える芯とするためには有効細孔容積を大きくしなければならないが、それでは鉛筆芯の強度が著しく低下してしまう。また、含浸する分散液中のグラフェンナノリボン濃度を高める必要もあるが、それでは芯体内のグラフェンナノリボン配合分布量にバラツキが生じてしまい、好ましくない。
本発明の第1製造方法では、上記特性のグラフェンナノリボンを、上記特性の液体に分散せしめた分散液体に、鉛筆芯体をそのまま浸漬、または、加圧下(例えば、0.5〜5MPa)及び/又は加温下(例えば、液温60〜200℃)で浸漬処理等することにより、目的の鉛筆芯、すなわち、上記特性の鱗片状黒鉛などの黒鉛を含有する鉛筆芯において、該黒鉛に対してグラフェンナノリボンが、該黒鉛のab面と接触してなる鉛筆芯が得られるものとなる。
得られる鉛筆芯は、上記範囲でグラフェンナノリボンを含有し、上記第1製造方法により製造すると、好適な摩耗特性等を有する鉛筆芯となるものであり、更に好ましくは、JIS S 6005:2007に規定されている画線機を用いた画線方法における画線中の全摩擦力の平均値(n=10)を筆記荷重で割った、全摩擦係数(動摩擦係数)が0.191〜0.218となるものが望ましく、これにより、更に、芯体が回転する形態のシャープ芯においても、更に、滑らかな筆記が感じられる芯体を得ることができる。
これらの全摩擦係数は、用いる鱗片状黒鉛等の黒鉛の平面度、アスペクト比等の物性、その含有量、並びに、グラフェンナノリボンの大きさ等、更に、液体の種類などを好適に組み合わせることにより、調整することができる。
次に、本発明の鉛筆芯を上記第2製造方法により製造する場合は、初めに、上記特性の鱗片状黒鉛等の黒鉛に、上記特性のグラフェンナノリボンを接触後、該グラフェンナノリボンを固定させて複合した後、その複合黒鉛を用いて鉛筆芯形成用の芯体を形成する。この鉛筆芯形成用の芯体は、上記グラフェンナノリボンを固定させて複合した複合黒鉛を含有した鉛筆芯配合組成物を焼成処理又は非焼成処理することにより形成することができる。
本発明の第2製造方法において、鉛筆芯形成用の芯体を形成する前に、該鱗片状黒鉛等の黒鉛に、上記特性のグラフェンナノリボンを接触後、該グラフェンナノリボンを固定させた複合黒鉛とするのは、結果として芯全体へ分散させるためである。
グラフェンナノリボンを固定させた複合黒鉛とする方法等としては、例えば、前記黒鉛に前記グラフェンナノリボンを静電力によって接触(静電接着)させてグラフェンナノリボン固定複合黒鉛とすること、ファンデルワールス力により分散接着させて、グラフェンナノリボン固定複合黒鉛とすること、または、黒鉛を粉砕しながらグラフェンナノリボンを入れ、黒鉛のファンデルワールス力等による凝集力により、結果としてグラフェンナノリボンを接触する方法などが挙げられる。
上記静電接着は、グラフェンナノリボンと黒鉛との電子受け渡しで結合させる方法であり、また、上記ファンデルワールス力による分散接着は、黒鉛とグラフェンナノリボンの分極作用に起因する分子間力によって結合させる方法となるものである。
具体的には、上記鱗片状黒鉛等の黒鉛と上記グラフェンナノリボンを高速回転させたヘンシェルミキサーに投入してグラフェンナノリボン固定複合黒鉛としたり、上記グラフェンナノリボンの水分散液と上記鱗片状黒鉛等の黒鉛を高速回転させたヘンシェルミキサーに投入して粒子間摩擦力による発熱で水を蒸発させてグラフェンナノリボン固定複合黒鉛としたり、グラフェンナノリボンのNPA(n−プロピルアルコール)分散液中に黒鉛を投入して乾燥コーティングするなどの分散接着を行ったり、黒鉛にポリカチオン剤を塗布してグラフェンナノリボンを複合する等の静電接着を行ったり、振動ボールミルに黒鉛とグラフェンナノリボンを混合し、黒鉛を粉砕しながらグラフェンナノリボンを複合したりすることにより調製することができる。
好ましくは、接着力と潤滑効果の点から、上記特性の鱗片状黒鉛等の黒鉛に、前記特性のグラフェンナノリボンを静電力によって接触(静電接着)させてグラフェンナノリボン固定複合黒鉛となるものが望ましい。
この鉛筆芯用芯体を形成するために用いる上記特性の鱗片状黒鉛等の黒鉛は、芯体形成前に、グラフェンナノリボン固定複合黒鉛として用いるものであるが、その含有量としては、鉛筆芯用配合組成物全量に対して、20〜80%とすることが好ましく、更に好ましくは、30〜70%とすることが望ましいが、硬度によって最適値は異なる。
この鱗片状黒鉛等の黒鉛の含有量が、20%未満であったり、80%を超えたりすると、硬度、書き味、強度のバランスが崩れる結果となり、好ましくない。
また、上記特性を有するグラフェンナノリボンは、グラフェンナノリボン固定複合黒鉛として用いるものであるが、その含有量としては、上述と如く、鉛筆芯用配合組成物全量に対して、グラフェンナノリボン固定複合黒鉛処理により得られる鉛筆芯中にグラフェンナノリボンの含有量が、好ましくは、0.01〜5%、更に好ましくは、0.01〜1%、特に好ましくは、0.02〜0.5%となるように調整されるものである。
本発明の第2製造方法において、鉛筆芯形成用の芯体は、上記特性のグラフェンナノリボン固定の複合黒鉛を含有した鉛筆芯配合組成物を用いるものであるが、該グラフェンナノリボン固定の複合黒鉛以外の成分は鉛筆芯種等により、体質材、潤滑剤、熱可塑性合成樹脂などのバインダー成分、有機溶剤などの各成分を適宜選択して用いることができる。
例えば、鉛筆芯がシャープペンシル用焼成鉛筆芯では、鱗片状黒鉛等の黒鉛以外に、カーボンブラックとアモルファス炭素を少なくとも含有せしめることができ、また、シャープペンシル用や木軸用の非焼成鉛筆芯では、油脂とワックス類とを少なくとも含有することができ、更に、上記シャープペンシル用以外の焼成鉛筆芯では、体質材とセラミック結合材とを少なくとも含有することができる。なお、これらのカーボンブラック、アモルファス炭素油脂、ワックス類、体質材、セラミック結合材、潤滑剤、熱可塑性合成樹脂などのバインダー成分、有機溶剤などの各成分の詳細は、上記第1製造方法と同様であるのでその説明を省略する。
本発明の第2製造方法では、上述の鉛筆芯用配合組成物、例えば、シャープペンシル用焼成鉛筆芯、非焼成鉛筆芯、焼成鉛筆芯に用いる各成分(体質材、熱可塑性樹脂、有機溶剤など)を混練、成型、乾燥及び非酸化性雰囲気下で焼成処理、または、非焼成処理(50〜120℃で低温乾燥)してなる鉛筆芯用芯体を形成することができる。
本発明において、例えば、シャープペンシル用焼成鉛筆芯の製造では、好ましくは、強度、濃度、書き味の点から、鉛筆芯配合組成物全量に対して、(a)上記特性の鱗片状黒鉛等の黒鉛20〜80%、(b)上記特性のグラフェンナノリボン0.01〜5%を用いて上記特性の鱗片状黒鉛等の黒鉛に、上記特性のグラフェンナノリボンを接触後、該グラフェンナノリボンを固定させて複合した後、その他の成分である(c)熱可塑性合成樹脂30〜60%、(d)該熱可塑性合成樹脂を溶解し得る有機溶剤10〜30%を、ヘンシェルミキサーで分散混合し、加圧ニーダー、二本ロールで混練し、押出成型機により成型した後、電気炉で110〜250℃で乾燥し、次いで、非酸化性雰囲気下(窒素ガス雰囲気下、不活性ガス雰囲気下)で800〜1400℃、20〜40時間で焼成することによりシャープペンシル用の鉛筆芯形成用の芯体を形成することができる。
本発明の第2製造方法による鉛筆芯は、上記で形成した鉛筆芯体に、屈折率1.3〜1.5、好ましくは、屈折率1.39〜1.46で、25℃における粘度が7〜200mm/sとなる液体を含浸させることにより得られる。
この液体は、上記第1製造方法で用いた液体と同様であるのでその説明を省略する。
本発明の第2製造方法では、上記特性の液体に、鉛筆芯体をそのまま浸漬、または、加圧下(例えば、0.5〜5MPa)及び/又は加温下(例えば、液温60〜200℃)で浸漬処理等することにより、目的の鉛筆芯、すなわち、上記特性の鱗片状黒鉛を含有する鉛筆芯において、該黒鉛に対してグラフェンナノリボンが、該黒鉛のab面と接着してなる鉛筆芯が得られるものとなる。
本発明の第2製造方法により得られる鉛筆芯は、好適な摩耗特性等を有する鉛筆芯であり、更に好ましくは、JIS S 6005:2007に規定されている画線機を用いた画線方法における画線中の全摩擦力の平均値(n=10)を筆記荷重で割った、動摩擦係数が0.191〜0.218となるものが望ましく、これにより、更に、芯体が回転する形態のシャープ芯においても、滑らかな筆記が感じられる芯体を得ることができる。
これらの全摩擦係数は、用いる鱗片状黒鉛の平面度、アスペクト比等の物性、その含有量、ならびに、グラフェンナノリボンの大きさ及びその含有量、更に、オイル等の液体の種類などを好適に組み合わせることにより、調整することができる。
本発明の第3製造方法では、上記特性の鱗片状黒鉛等の黒鉛と、上記特性のグラフェンナノリボンを可塑剤または溶剤、或いは可塑剤及び溶剤に分散したものを混練後、該混練物となる鉛筆芯配合組成物を焼成処理又は非焼成処理することにより芯体を形成することができる。
本発明の第3製造方法において、用いる可塑剤としては、鉛筆芯の製造に用いられるものを用いることができ、例えば、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、トリクレジルホスフェート、ジオクチルアジペート、ジアリルイソフタレート、プロピレンカーボネート、ジオクチルアジペート、ジイソノニルアジペート、トリメリット酸トリオクチル、アセチルクエン酸トリブチルなどの少なくとも1種が挙げられる。
また、用いる溶剤としては、上記可塑剤を溶解し得るものが好ましく、具体的には、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、芳香族系炭化水素、脂肪族系炭化水素、シロキサン類などの少なくとも1種を用いることができる。
分散方法としては、例えば、ヘンシェルミキサーやボールミル、ビーズミル、ホモジナイザー、ナノマイザー、ハイビスミックスなど、溶媒と粉体を均一に分散できる装置を使用することが出来る。
この鉛筆芯用芯体を形成するために用いる上記特性の鱗片状黒鉛等の黒鉛の含有量としては、鉛筆芯用配合組成物全量に対して、20〜80%とすることが好ましく、更に好ましくは、30〜70%とすることが望ましいが、硬度によって最適値は異なる。
この鱗片状黒鉛の含有量が、20%未満であったり、80%を超えたりすると、硬度、書き味、強度のバランスが崩れる結果となり、好ましくない。
また、上記特性を有するグラフェンナノリボンの含有量としては、鉛筆芯用配合組成物全量に対して、分散処理等により得られる鉛筆芯中にグラフェンナノリボンの含有量が、上述の如く、好ましくは、0.01〜5%、更に好ましくは、0.01〜1%、特に好ましくは、0.02〜0.5%となるように調整されるものである。
上記可塑剤の含有量としては、成形性やグラフェンナノリボンの分散性、最終的な芯の品質の点から、混練物となる鉛筆芯用配合組成物全量に対して、好ましくは、5〜50%、更に好ましくは、10〜30%が望ましい。
また、上記溶剤の含有量としては、成形性やグラフェンナノリボンの分散性、最終的な芯の品質、可塑剤配合量の点から、混練物となる鉛筆芯用配合組成物全量に対して、好ましくは、1〜30%、更に好ましくは、10〜20%が望ましい。
本発明の第3製造方法において、鉛筆芯体は、上記特性の鱗片状黒鉛等の黒鉛と、上記特性のグラフェンナノリボンを可塑剤または溶剤、或いは可塑剤及び溶剤に分散したものを混練した鉛筆芯配合組成物を用いるものであるが、該グラフェンナノリボン、鱗片状黒鉛等の黒鉛、可塑剤、溶剤以外の成分は鉛筆芯種等により、体質材、潤滑剤などの各成分を適宜選択して用いることができる。
例えば、鉛筆芯がシャープペンシル用焼成鉛筆芯では、鱗片状黒鉛等の黒鉛以外に、カーボンブラックとアモルファス炭素を少なくとも含有せしめることができ、また、シャープペンシル用や木軸用の非焼成鉛筆芯では、油脂とワックス類とを少なくとも含有することができ、更に、上記シャープペンシル用以外の焼成鉛筆芯では、体質材とセラミック結合材とを少なくとも含有することができる。なお、これらのカーボンブラック、アモルファス炭素油脂、ワックス類、体質材、セラミック結合材、潤滑剤、熱可塑性合成樹脂などのバインダー成分、有機溶剤などの各成分の詳細は、上記第1及び第2製造方法と同様であるのでその説明を省略する。
本発明の第3製造方法では、上述の混練物となる鉛筆芯用配合組成物、例えば、シャープペンシル用焼成鉛筆芯、シャープペンシル用や木軸用の非焼成鉛筆芯、上記シャープペンシル用以外の焼成鉛筆芯に用いる各成分(体質材などの各成分)を混練、成型、乾燥及び非酸化性雰囲気下で焼成処理、または、非焼成処理(50〜120℃で低温乾燥)してなる鉛筆芯体を形成することができる。
本発明の第3製造方法において、例えば、シャープペンシル用焼成鉛筆芯の製造では、好ましくは、強度、濃度、書き味の点から、鉛筆芯配合組成物全量に対して、(a)上記特性の鱗片状黒鉛20〜80%、(b)上記特性のグラフェンナノリボン0.01〜5%、(c)可塑剤5〜50%、溶剤10〜30%、(d)熱可塑性合成樹脂30〜60%、を、ヘンシェルミキサーで分散混合し、加圧ニーダー、二本ロールで混練し、押出成型機により成型した後、電気炉で110〜250℃で乾燥し、次いで、非酸化性雰囲気下(窒素ガス雰囲気下、不活性ガス雰囲気下)で800〜1400℃、20〜40時間で焼成することによりシャープペンシル用の鉛筆芯形成用の芯体を形成することができる。
本発明の第3製造方法では、上記製法により鉛筆芯が得られるものであるが、好ましくは、濃度と書き味および消去性能の点から、芯体形成後、上記グラフェンナノリボンによって鱗片状黒鉛等の黒鉛と鱗片状黒鉛等の黒鉛の間に生じた隙間に、屈折率1.3〜1.5、好ましくは、屈折率1.39〜1.46で、25℃における粘度が7〜200mm/sとなる液体を含浸させることが望ましい。この特性の液体は、上記第1製造方法又は第2製造方法と同様であるので、その説明は省略する。
本発明方法では、上記特性の液体に、鉛筆芯体をそのまま浸漬、または、加圧下(例えば、0.5〜5MPa)及び/又は加温下(例えば、液温60〜200℃)で浸漬処理等することにより、更に好ましい鉛筆芯が得られるものとなる。
本発明の第3製造方法で得られる鉛筆芯は、好適な摩耗特性等を有する鉛筆芯であり、更に好ましくは、JIS S 6005:2007に規定されている画線機を用いた画線方法における画線中の全摩擦力の平均値(n=10)を筆記荷重で割った、全摩擦係数(動摩擦係数)が0.191〜0.218となるものが望ましく、これにより、更に、芯体が回転する形態のシャープ芯においても、更に、滑らかな筆記が感じられる芯体を得ることができる。
これらの全摩擦係数は、用いる鱗片状黒鉛等の黒鉛の平面度、アスペクト比等の物性、その含有量、並びに、グラフェンナノリボンの大きさ及びその含有量、更に、オイル等の液体の種類などを好適に組み合わせることにより、調整することができる。
このように構成される本発明方法において、第1製造方法では、少なくとも黒鉛からなる鉛筆芯に、グラフェンナノリボン、好ましくは、2枚から50枚程度三次元的に黒鉛の層面が積層し、幅は10〜500nm、長さは10〜50μmの薄く二次元的リボン状に広がったグラフェンナノリボンを含有せしめたオイル等液体を含浸すること、また、別の製法による第2製造方法においては、黒鉛に、2枚から50枚程度三次元的に黒鉛の層面が積層し、幅は10〜500nm、長さは10〜50μmの薄く二次元的リボン状に広がったグラフェンナノリボンを接触後、該グラフェンナノリボンを固定させて複合した後、その複合黒鉛を含有してなる鉛筆芯配合組成物を用いて芯体を形成し、該鉛筆芯用芯体にオイル等液体を含浸せしめることにより、更に別製法となる第3製造方法においては、黒鉛に、2枚から50枚程度三次元的に黒鉛の層面が積層し、幅は10〜500nm、長さは10〜50μmの薄く二次元的リボン状に広がったグラフェンナノリボンを接触後、該グラフェンナノリボンを固定させて複合した後、その複合黒鉛を含有してなる鉛筆芯配合組成物を用いて芯体を形成し、該鉛筆芯用芯体にオイル等液体を含浸せしめることにより、それぞれ上記特性の多孔質体の孔に、グラフェンナノリボンを浸入させた状態(黒鉛のab面にグラフェンナノリボンが接着している状態)として、鉛筆芯の多孔質構造の性質を通常のものとは変化した性質が得られることとなる。具体的には、上記特性のグラフェンナノリボンがサスペンションの役割を果たすので、グラフェンナノリボンを添加しないときや、球状あるいは粒状のナノ粒子(ナノダイヤモンド)を添加したときより、芯の潤滑が大幅に良くなり、鉛筆芯の潤滑性が大幅に向上する。また、芯体中にグラフェンナノリボンが入ることにより、平滑な描線が乱反射を起こすので、いわゆる「テカリ」が無くなり、結果として濃い色となる。しかも、上記特性の黒鉛自身の作用により、紙と黒鉛粒子、黒鉛粒子同士の摩擦が小さくなり、消去性も向上することとなる。更に、上記特性の黒鉛の配向を邪魔せずにグラフェンナノリボンを均一に分散することができるので、体質材としての効果もプラスされ、圧縮強度も向上することとなり、また、描線に乗っている黒鉛量も少なく手が汚れにくいものとなる。
更には、結合材に合成樹脂を用いると共に、ジグザグ端のグラフェンナノリボンを用いた場合、ジグザグ端のグラフェンナノリボンはエッジ状態と呼ばれる局在した非結合π電子の状態の箇所が非常に多く存在するため、該合成樹脂の炭素化において該ジグザグ端のグラフェンナノリボンのジグザグ端部分の触媒作用と推測されるが、異なる炭素状態となり、消しゴムへの吸着性、紙との密着性が優れ、その結果、消しゴムで消しやすく、また擦っても汚れにくい描線となる。
また、本発明では、更に、上記作用効果と共に、上記従来技術の欄で挙げた各特許文献に開示された鉛筆芯を上回る、描線濃度、書き味、静・動摩擦係数の低い鉛筆芯となるものであり、特に、筆記の度に芯体が回転して、常に新しい部分によって筆記されるタイプのシャープペンシルなどに使用される鉛筆芯であっても、より良い滑らかな筆記感を有し、更に高い描線濃度を有する鮮やかな黒色となる鉛筆芯及びその製造方法が得られるものとなる(この点に関しては、後述する実施例及び比較例で更に詳述する)。
次に、実施例及び比較例等により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例等に限定されるものではない。
〔実施例1〜5及び比較例1〜5〕
(グラフェンナノリボンの製造)
用いるグラフェンナノリボンは、下記化学蒸着方法により製造したものを用いた。
(1)グラフェンナノリボン
2.8gのフェロセンと0.266mLのチオフェンを含有した280mLのエタノール溶液を超音波でエアゾール化し、0.8L/分のアルゴン気流で950℃の加熱炉に流し、30分加熱後アルゴン気流は0.3L/分に減少して、炉を室温まで冷却したことにより、グラフェンナノリボンを得た。
また、用いる鱗片状天然黒鉛の平面度、アスペクト比等の物性、グラフェンナノリボンの大きさ等は、下記測定方法により測定した。
(平面度の測定方法)
a−b面が直角となってSEMで観察されている図1のような粒子に接し、且つ粒子長軸端部同士を結ぶ線分に平行な線の最大値を測定する。(n=10)
アスペクト比は、図1からc軸長を測定し、a−b面は観察画像から計測し、その比により算出した。
(グラフェンナノリボンの大きさ等の測定方法)
SEM(日立ハイテク社製、S−4700型)画面上で観察されるグラフェンナノリボン10個の幅、長さを画面あるいは写真より目視にて求め、平均値を算出した。なお、その長さはグラフェンナノリボンが真直ではないため、凡その値である。また、グラフェンナノリボンの端形状はジグザグ端であり、更に、上記幅、長さなどから黒鉛の層面が2枚から50枚程度三次元的に積層されていることを確認した。
(実施例1)
鱗片状天然黒鉛(mv値8μm、平面度0.2μmのab面、c軸の厚み1μm、アスペクト比8) 50質量部
ポリ塩化ビニル 50質量部
ステアリン酸 1質量部
ジオクチルフタレート 20質量部
上記材料をヘンシェルミキサーに投入して混合分散し、加圧ニーダー、ロールで混練し、成形後、ジオクチルフタレートを乾燥し、窒素雰囲気中にて1000℃、10時間で焼成処理することによって、直径0.564mm、長さ60mmの焼成鉛筆芯体を製造した。
次いで、この焼成鉛筆芯体に、端形状がジグザグ端グラフェンナノリボン(幅65nm、長さ25μm、、0.5質量%)を分散したジメチルシリコーンオイルKF96−100CS(動粘度100mm/s、屈折率1.403、信越化学社製)を1MPaで加圧含浸(含浸時間180分)し、直径0.564mm、長さ60mmのグラフェンナノリボン含有焼成鉛筆芯を得た。
(実施例2)
鱗片状天然黒鉛(mv値8μm、平面度0.2μmのab面、c軸の厚み1μm、アスペクト比8) 50質量部
ジグザグ端グラフェンナノリボン(幅65nm、長さ25μm) 0.1質量部
ポリ塩化ビニル 50質量部
ステアリン酸 1質量部
ジオクチルフタレート 20質量部
まず、グラフェンナノリボンとジオクチルフタレートをビーズミルで180分間分散させ、他の上記材料をヘンシェルミキサーに投入して混合分散し、加圧ニーダー、ロールで混練し、成形後、ジオクチルフタレートを乾燥し、N雰囲気中にて1000℃、10時間で焼成処理することによって、直径0.566mm、長さ60mmの焼成鉛筆芯体を製造し、最後にα−オレフィンオリゴマー(ライオン社製、リポループ20)中に浸漬せしめて直径0.566mm、長さ60mmのグラフェンナノリボン含有焼成鉛筆芯を得た。
(実施例3)
鱗片状天然黒鉛(mv値8μm、平面度0.2μmのab面、c軸の厚み1μm、アスペクト比8) 50質量部
ジグザグ端グラフェンナノリボン(幅65nm、長さ25μm) 0.1質量部
ポリ塩化ビニル 50質量部
ステアリン酸 1質量部
ジオクチルフタレート 20質量部
上記鱗片状黒鉛と上記グラフェンナノリボンを高速回転(2000rpm)させたヘンシェルミキサーに投入し、グラフェンナノリボン付着の鱗片状黒鉛を製造後(付着せしめる時間20分)、残りの材料をヘンシェルミキサーに投入して混合分散し、加圧ニーダー、ロールで混練し、成形後、ジオクチルフタレートを乾燥し、N雰囲気中にて1000℃、10時間で焼成処理することによって、直径0.565mm、長さ60mmの焼成鉛筆芯体を製造し、最後にジメチルシリコーンオイルKF96−30CS(動粘度30mm/s、屈折率1.401、信越化学社製)中に浸漬せしめて直径0.565mm、長さ60mmのグラフェンナノリボン含有焼成鉛筆芯を得た。
(実施例4)
鱗片状天然黒鉛(mv値8μm、平面度0.2μmのab面、c軸の厚み1μm、アスペクト比8) 70質量部
粘土 30質量部
アラビアガム 3質量部
精製水 100質量部
上記材料をミキサーに投入して混合分散、ロール混練し、成形後、水分乾燥し、N雰囲気中にて1100℃、2時間で焼成処理することによって、直径2.0mm、長さ185mmの焼成鉛筆芯体を製造し、最後にジグザグ端グラフェンナノリボン(幅65nm、長さ25μm、0.3質量%)を分散したジメチルシリコーンオイルKF96−30CS(動粘度30mm/s、屈折率1.401、信越化学社製)中に、上記焼成鉛筆芯体を1MPaで加圧含浸(含浸時間180分)し、直径2.0mm、長さ185mmのグラフェンナノリボン含有焼成鉛筆芯を得た。
(実施例5)
鱗片状天然黒鉛(mv値8μm、平面度0.2μmのab面、c軸の厚み1μm、アスペクト比8) 70質量部
ジグザグ端グラフェンナノリボン(幅65nm、長さ25μm) 0.1質量部
粘土 30質量部
アラビアガム 3質量部
精製水 100質量部
上記鱗片状黒鉛と上記グラフェンナノリボンを高速回転(2000rpm)させたヘンシェルミキサーに投入し、グラフェンナノリボン付着の鱗片状黒鉛を製造後(付着せしめる時間20分)、残りの材料と共にミキサーに投入して混合分散、ロール混練し、成形後、水分乾燥し、N雰囲気中にて1100℃、2時間で焼成処理することによって、直径2.0mm、長さ185mmの焼成鉛筆芯体を製造し、最後にラード中に浸漬せしめて直径2.0mm、長さ185mmのグラフェンナノリボン含有焼成鉛筆芯を得た。
(比較例1)
上記実施例1の直径0.564mm、長さ60mmの焼成鉛筆芯体をジメチルシリコーンオイルKF96−100CS(動粘度100mm/s、屈折率1.403、信越化学社製)中、1MPaで加圧含浸(含浸時間180分)し、直径0.564mm、長さ60mmの焼成鉛筆芯を得た。
(比較例2)
上記実施例1の直径0.564mm、長さ60mmの焼成鉛筆芯体をα−オレフィンオリゴマー(ライオン社製、リポループ20)中に浸漬して、直径0.564mm、長さ60mmの焼成鉛筆芯を得た。
(比較例3)
鱗片状天然黒鉛(mv値8μm、平面度0.2μmのab面、c軸の厚み1μm、アスペクト比8) 49質量部
ダイヤモンドナノ粒子(mv値50nm、住石マテリアル製) 0.1質量部
ポリ塩化ビニル 50質量部
ステアリン酸 1質量部
ジオクチルフタレート 20質量部
上記材料をヘンシェルミキサーで混合分散し、加圧ニーダー、二本ロールで混練し線状体に押出成形した後、残留する可塑剤を除去すべく空気中で熱処理して固化(乾燥)した後に、窒素ガス雰囲気中にて1000℃で焼成し、最後にジメチルシリコーンオイルKF96−30CS(動粘度30mm/s、屈折率1.401、信越化学社製)中に浸漬して直径が0.569mm、長さ60mmの焼成鉛筆芯を得た。
(比較例4)
上記実施例4の直径2.0mm、長さ185mの焼成鉛筆芯体をジメチルシリコーンオイルKF96−30CS(動粘度30mm/s、屈折率1.401、信越化学社製)中、1MPaで加圧含浸(含浸時間180分)し、直径2.0mm、長さ185mmの焼成鉛筆芯を得た。
(比較例5)
鱗片状天然黒鉛(mv値8μm、平面度0.2μmのab面、c軸の厚み1μm、アスペクト比8) 70質量部
粘土 30質量部
アラビアガム 3質量部
精製水 100質量部
上記材料をミキサーに投入して混合分散し、ロールで混練し、成形後、水分乾燥し、N雰囲気中にて1100℃、2時間で焼成処理することによって、直径2.0mm、長さ185mmの焼成鉛筆芯体を製造し、最後にラード中に浸漬させた。
上記実施例1〜5及び比較例1〜5で得られた各焼成鉛筆芯(シャープペンシル用鉛筆芯、木軸用鉛筆芯)について、下記各方法により、曲げ強度、圧縮強度(N)、摩耗量(mm)、濃度、消去率(%)、摩擦係数(静、動)、官能評価による筆記感、汚れ難さ、初期滑りの評価を行った。
これらの結果を下記表1に示す。
(曲げ強度の測定方法)
JIS S 6005:2007、JIS S 6006:2007に規定されている曲げ強さ試験で曲げ強度を測定した(n=100)。
(摩耗試験の試験方法)
筆記角度75°、荷重300gf、筆記距離6m筆記した際の芯の減少長を測定した(n=10)。
(濃度の測定方法)
摩耗試験で筆記した描線を濃度計(sakura DENSITOMETER PDA65)で測定した値である(n=10×4ヵ所)。
(消去率の測定方法)
摩耗試験で筆記した描線を消しゴム(三菱鉛筆製:EP−105E)で3往復させた後と、5往復させた後の描線消去率を求めた(n=10)
(摩擦係数の測定方法)
JIS S 6005:2007、JIS S 6006:2007に規定されている画線機を用いた画線方法における画線中の全摩擦力の平均値を筆記荷重で割った値(n=10)を動摩擦係数と呼び、摩擦の最大値を筆記荷重で割った値を静摩擦係数と呼ぶことにする。
〔筆記感、手の汚れにくさ(汚れ難さ)、初期滑りの評価方法〕
10人の被験者が400字詰め原稿用紙を1枚「三菱鉛筆」と繰り返し筆記し、当社既存品と比較して各項目の相対評価を行う。筆記感は、滑らかに感じるか否かで評価し、汚れ難さは400字筆記した後の手の汚れを比較評価し、初期滑りは1画1画がスムーズに滑りだすかどうかを下記評価基準(平均値)で評価した。
評価基準:
◎:非常に良い
○:既存品より良い
△:既存品と同等
×:既存品より悪い
上記表1においては、実施例1〜3及び比較例1〜3はシャープペンシル用芯、実施例4〜5及び比較例4〜5は木軸鉛筆用芯であり、芯径、測定条件等異なるため、評価結果や数値の比較は個別的に検討する必要がある。
上記表1の評価結果を個別的に見ると、本発明範囲の実施例1〜5の鉛筆芯は、本発明の範囲外となる比較例1〜5に較べて、曲げ強度に優れると共に、十分な発色性及び描線濃度を有し、しかも、摩耗が少なく、消去性が良く文字を消去する擦過回数が少なく、初期滑り、筆記感(書き味)が良く、汚れ難い結果となることが判明した。
これに対して、比較例を個別的にみると、ナノグラフェンリボンを含まない比較例1は対象となる実施例1より、比較例2は対象となる実施例2より、比較例4は対象となる実施例4より、比較例5は対象となる実施例5より、強度値を同等とした場合、摩耗量が硬く、濃度が薄い芯となった。摩耗と強度は相反する性質であり、同程度の摩耗量、濃度とすると、強度値がこれら実施例より比較例の方が劣ることになる。また、上記各比較例は、それぞれ対象となる実施例より消去率、摩擦係数、官能評価の点でも劣ることが判った。
比較例3はナノダイヤが配合され、優れた結果が得られたが、消去率に注目すると、ナノグラフェンリボン配合の実施例3より3往復消去率が劣ると言える。本発明範囲となる実施例3の方が少ない擦過回数で消去できることが判った。
シャープペンシル用鉛筆芯、木軸用鉛筆などに使用する場合の他に、筆記の度に芯体が回転して、常に新しい部分によって筆記されるタイプのシャープペンシルなどに使用される鉛筆芯であっても、更に、より良い滑らかな筆記感を有し、更に高い描線濃度を有する鮮やかな黒色となる鉛筆芯及びその製造方法が得られる。

Claims (12)

  1. 少なくとも黒鉛を含有する鉛筆芯において、グラフェンナノリボンが黒鉛のab面と接触していることを特徴とする鉛筆芯。
  2. 前記グラフェンナノリボンが、黒鉛層2〜40枚、大きさはリボンの幅20〜300nm、長さは20〜30μm、端の形状がジグザグ端であることを特徴とする請求項1記載の鉛筆芯。
  3. 前記黒鉛が鱗片状黒鉛であることを特徴とする請求項1又は2記載の鉛筆芯。
  4. 前記鱗片状黒鉛は、平面度が2μm以下のab面を持つa軸またはb軸とc軸のアスペクト比が5以上であることを特徴とする請求項3に記載の鉛筆芯。
  5. 前記グラフェンナノリボンによって黒鉛と黒鉛の間に生じた隙間に、屈折率1.3〜1.5で25℃における粘度が7〜200mm/sとなる液体を含有させることを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載の鉛筆芯。
  6. JIS S 6005:2007に規定されている画線機を用いた画線方法における画線中の全摩擦力の平均値(n=10)を筆記荷重で割った、全摩擦係数が0.191〜0.218である請求項1〜5の何れか一つに記載の鉛筆芯。
  7. 少なくとも黒鉛を含有する鉛筆芯の芯体を形成後、グラフェンナノリボンを、屈折率1.3〜1.5で25℃における粘度が7〜200mm/sとなる液体に分散させた後、該鉛筆芯体に含浸させることを特徴とする鉛筆芯の製造方法。
  8. 少なくとも黒鉛に、グラフェンナノリボンを接触後、固定させて複合した後、その複合黒鉛を用いて芯体を形成し、屈折率1.3〜1.5で25℃における粘度が7〜200mm/sとなる液体を含浸させることを特徴とする鉛筆芯の製造方法。
  9. 前記黒鉛にグラフェンナノリボンを静電力によって接触させることを特徴とする請求項8に記載の鉛筆芯の製造方法。
  10. 少なくとも黒鉛と、グラフェンナノリボンを可塑剤または溶剤に均一に分散したものを混練後、該混練物から芯体を形成することを特徴とする鉛筆芯の製造方法。
  11. 前記黒鉛は、平面度が2μm以下のab面を持つa軸またはb軸とc軸のアスペクト比が5以上である鱗片状黒鉛であることを特徴とする請求項7〜10の何れか一つに記載の鉛筆芯の製造方法。
  12. 前記グラフェンナノリボンが、黒鉛層2〜40枚、大きさはリボンの幅20〜300nm、長さは20〜30μm、端の形状がジグザグ端であることを特徴とする請求項7〜11の何れか一つに記載の鉛筆芯の製造方法。
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