JP2007016309A - ベローズ素管用フェライト系ステンレス鋼板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】Crを10〜25mass%含有し、降伏応力が300〜450MPa、降伏応力と均一伸びの積が5200(MPa・%)以上であることを特徴とするベローズ素管用フェライト系ステンレス鋼板。
【選択図】図5
Description
液圧成形において、素管からベローズを製造する場合の成形可能な最大山高さは、膨出した素管の管壁に割れが発生することで決まるのが普通である。そこで、素管の素材に要求される特性としては、均一伸び(一様伸び)が重要であると考えられる。何故ならば、成形時に一箇所でも不均一変形が起こると、局部的に液圧が上昇して割れの起点となるほか、例え割れに至らなくても、ベローズとしての耐久性能が著しく劣るものとなるからである。発明者らは、各種のフェライト系ステンレス鋼板について、引張試験と液圧成形によるベローズ成形を行い、引張特性と成形可能なベローズの最大山高さとの関係を調査した。その結果、成形可能な最大山高さは、均一伸びとの相関も認められるが、むしろ、降伏応力YSならびに降伏応力と均一伸びの積(YS×UEl)との間に強い相関があり、YSがある値以下でかつYS×UElがある値以上で成形可能な最大山高さが大きくなることがわかった。
YSが高くなり過ぎると、n値が小さくなり、加工歪の伝播が不均一となる結果、均一伸びが低下し、成形可能な最大山高さが低減する。また、ベローズの成形は、内部からの液圧による張り出し成形と軸押しによる座屈成形との複合成形であり、張り出し成形に対しては、材料の均一伸びUElが大きいことが、また、座屈成形に対しては、材料の降伏応力が小さいことが有利である。一方、UEl、YSが共に小さい材料は、一般に材料の破断強度であるTSも低いため、破断に達するまでの成形限界が低い。結果として、YS×UElがある値(5200MPa・%)以上のときに、成形可能な最大山高さが大きくなると考えられる。
本発明は、上記知見に基き完成したものである。
降伏応力YS:300〜450MPa
一般に、成形性は、素材の降伏応力YSが低いほど良好である。しかし、ベローズ素管の加工性に関しては、YSが低すぎると却って好ましくない。というのは、上述したように、YSが低いことは、変形し易いことを意味するが、ベローズを液圧成形する場合には、却ってバラツキ発生の原因となるからである。特に、降伏応力YSが300MPaを下回ると、バラツキが大きくなって、成形可能な最小外径も大きくなる傾向がある。一方、素材のYSが450MPaを超えて高くなり過ぎると、均一伸びが低下して成形可能な最大山高さの低下を招く他、ベローズの強度が高くなって柔軟性が損なわれる結果、ベローズとしての変位や振動を吸収する能力が低下する。よって、降伏応力YSは、300〜450MPaの範囲に制限する必要がある。
ベローズ加工性を決定するもう一つの因子である成形可能な最大山高さ、すなわち、割れることなく成形することができる最大山高さは、単なる全伸びや均一伸びとも弱い相関は認められるが、降伏応力と均一伸びの積(YS×UEl)に強く依存し、この値が大きいほど、成形可能な最大外径は大きくなる。特に、素管の素材が有するYS×UElが5200(MPa・%)以上で、成形可能な最大山高さが顕著に大きくなる。また、成形可能な最大山高さと最小山高さの差、すなわち、成形可能な山高さの範囲(幅)も、YS×UElが大きいほど、広がる傾向がある。よって、YS×UElは5200(MPa・%)以上とする必要がある。
Cr:10〜25mass%
Crは、耐食性を付与するために添加する必須の元素である。Cr含有量が10mass%未満では、ステンレス鋼としての耐食性を確保することができない。一方、Cr含有量が25mass%を超えて添加すると、脆性が劣化して製造性が低下することがある。なお、Crは高価な元素であり、原料コストを低減する観点から、Cr含有量は10〜18mass%の範囲とすることがより好ましい。
C:0.05mass%以下、N:0.05%mass%以下
CおよびNは、Crと化合物を形成して耐食性を劣化させる他、加工性にも悪影響を及ぼすため、少ないほどよい。よって、Cは0.05mass%以下、Nは0.05%mass%以下に制限することが好ましい。
Siは、耐酸化性や耐高温塩害特性の向上に有効な元素であり、また、鋼を硬質化し、延性を低下させる元素でもある。上記、耐酸化性や耐高温塩害特性の向上効果を得るためには、0.2mass%以上の添加することが好ましい。しかし、1mass%を超えて添加すると、硬質となり過ぎ、ベローズ加工性に悪影響を及ぼすようになるため、上限は1mass%とするのが好ましい。
Mnは、脱酸・脱硫および熱間加工性改善のために添加される元素である。しかし、Mn硫化物は、耐食性を劣化させるため、含有量は低い方が好ましい。そこで、製造コストと生産性を考慮して、Mnは0.5mass%以下とすることが好ましい。
Pは、粒界に偏析して靭性を低下させるため、低減することが好ましい。しかし、過度の脱Pは、製造コストの上昇を招くので、Pは0.04mass%以下が好ましい。
Sは、耐食性や耐酸化性に悪影響を及ぼす元素であり、特に、0.01mass%を超えると、その影響が顕著となるので、上限は0.01mass%とすることが好ましい。なお、Sは、低くてもベローズ特性に悪影響はなく、低いほど好ましい。
Niは、耐食性を向上させる元素である。しかし、1.0mass%を超えて添加すると、その効果が飽和するだけでなく、コスト上昇を招くだけであるので、Niは1.0%以下の範囲で添加することが好ましい。
TiおよびNbは、C,Nと反応して析出物を形成し、結晶粒を微細化して、均一伸びを向上する効果があるので、必要に応じて添加する元素である。しかし、過度に添加すると、析出物の増加による表面性状の劣化や、金属間化合物の生成による強度上昇とそれによる加工性の劣化を招く。よって、TiおよびNbの添加量は、それぞれTi:0.5mass%未満、Nb:1.0mass%未満とするのが好ましい。
また、TiおよびNbは、C,Nを析出物として固定し、冷延後焼鈍における再結晶粒の方位を改善し、r値を向上させる効果がある。その効果を発揮させるためには、2Ti+Nb≧16(C+N)を満たして添加することが好ましい。
MoおよびCuは、ともに耐食性を向上する効果がある。しかし、過剰に添加すると、脆化を起こして熱間圧延工程で表面傷を生じ、製品の表面品質を劣化させる。よって、これらの元素を添加する場合は、それぞれMo:4.0mass%以下、Cu:4.0mass%以下に制限することが好ましい。
Wは、鋼の強度を上昇させ、ベローズ管に要求される常温および高温での疲労耐久性の向上に有効な元素である。しかし、過度に添加すると、延性の低下をもたらし、成形性に悪影響を及ぼすようになるので、5.0mass%を超えない範囲で添加するのが好ましい。
<ベローズ成形試験>
1山成形方式の液圧成形法により、ベローズ管の谷部外径を一定(50mmφ)とし、山部外径の目標値を20水準に変化させて、同一条件での連続10山成形し、その10山の各頂点の外径を測定して、φ(1)、φ(2)、φ(3)・・・φ(10)を得、それらのうちの最小値をφmin、最大値をφmax、それらの平均値をφavとした。そして、下記式;
0.98φav≦φmin≦φav≦φmax≦1.02φav
を満たすものを合格品とした。そして、その合格品のφavのうち、最小のものを成形可能最小外径ΦMIN、最大のものでかつ液圧成形時の割れが発生しなかったものを成形可能最大外径ΦMAXと定義した。なお、上記式は、山部外径のバラツキが小さい、すなわち成形安定性を示すものであり、特に、成形が不安定となりやすい成形可能最小外径ΦMINを評価するのに有効である。一方、成形可能最大外径ΦMAXは、通常、成形時の割れ発生により決まる値であり、山高さのバラツキの影響は小さい。
2:ロッド
3:クランプ金型
4:成形金型
5:シールパッキン
6:成形山
Claims (2)
- Crを10〜25mass%含有し、降伏応力が300〜450MPa、降伏応力と均一伸びの積が5200(MPa・%)以上であることを特徴とするベローズ素管用フェライト系ステンレス鋼板。
- 板厚が0.5mm以下であり、外径が28〜80mmφの1重もしくは2重の自動車排気系ベローズの素管に用いるものであることを特徴とする請求項1に記載のベローズ素管用フェライト系ステンレス鋼板。
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