JP4752621B2 - ベローズ素管用フェライト系ステンレス鋼板 - Google Patents
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Description
また、本発明は、C:0.05mass%以下、Si:0.2〜1mass%、Mn:0.5mass%以下、P:0.04mass%以下、S:0.01mass%以下、Cr:10〜25mass%、Ni:1.0mass%以下、N:0.05mass%以下、Ti:0.5mass%未満、Nb:1.0mass%未満、Mo:1.090〜4.0mass%およびCu:2.591〜4.0mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、降伏応力が300〜450MPa、表面粗さがRaで0.40μm以下であることを特徴とするベローズ素管用フェライト系ステンレス鋼板である。
また、本発明のベローズ素管用フェライト系ステンレス鋼板は、上記成分組成に加えてさらに、W:5.0mass%未満を含有することを特徴とする。
液圧成形において、素管からベローズを製造する場合の成形可能な最大山高さは、膨出した素管の管壁に割れが発生することで決まるのが普通である。そこで、素管の素材に要求される特性としては、均一伸び(一様伸び)が重要であると考えられる。何故ならば、成形時に一箇所でも不均一変形が起こると、局部的に液圧が上昇して割れの起点となるほか、例え割れに至らなくても、ベローズとしての耐久性能が著しく劣るものとなるからである。発明者らは、各種のフェライト系ステンレス鋼板について、液圧成形法でベローズ成形試験を行い、成形可能な最大山高さに影響を及ぼす要因を調査した。その結果、成形可能な最大山高さは、素管の素材となる鋼板の降伏応力YSならびに表面粗さRaとの間に強い相関関係があり、YSがある値以下かつRaがある値以下で成形可能な最大山高さが大きくなることがわかった。
ベローズの成形は、内部からの液圧による張り出し成形と軸押しによる座屈成形との複合成形であり、張り出し成形に対しては、材料の均一伸びUElが大きいことが、また、座屈成形に対しては、材料の降伏応力が小さいことが有利である。YSが高くなると、n値が小さくなり、加工歪の伝播が不均一となる結果、均一伸びが低下し、成形可能な最大山高さが低減する。また、表面粗さRaが小さくなると、鋼板表面の凹凸が小さくなり、加工時に割れの起点となる箇所が減少する結果、均一伸びが大きくなって、成形可能な最大山高さの増大がもたらされるものと考えられる。
降伏応力(YS):300〜450MPa
一般に、成形性は、素材の降伏応力YSが低いほど良好である。しかし、ベローズ素管の加工性に関しては、YSが低すぎると却って好ましくない。というのは、上述したように、YSが低いことは、変形し易いことを意味するが、ベローズを液圧成形する場合には、却ってバラツキ発生の原因となるからである。特に、降伏応力YSが300MPaを下回ると、バラツキが大きくなって、成形可能な最小外径も大きくなる傾向がある。一方、素材のYSが450MPaを超えて高くなり過ぎると、均一伸びが低下して成形可能な最大山高さの低下を招く他、ベローズの強度が高くなって柔軟性が損なわれる結果、ベローズとしての変位や振動を吸収する能力が低下する。よって、降伏応力YSは、300〜450MPaの範囲に制限する必要がある。
ベローズ加工性を決定するもう一つの因子である成形可能な最大山高さ、すなわち、割れることなく成形することができる最大山高さは、素材鋼板の表面粗さRaに大きく依存し、表面粗さが小さいほど、成形可能な最大外径は大きくなる。特に、素材の表面粗さを算術平均粗さRaで0.40μm以下とした場合には、均一伸びが向上し、割れの発生が抑制されて、成形可能な最大山高さが顕著に大きくなる。また、成形可能な最大山高さと最小山高さの差、すなわち、成形可能な山高さの範囲(幅)も、表面粗さRaが小さいほど広がる傾向がある。よって、表面粗さは算術平均粗さRaで0.40μm以下とする必要がある。なお、成形可能な寸法範囲を広げたり、光沢など製品の意匠性を向上したりする観点からは、表面粗さRaは0.2μm以下であることが好ましい。
Cr:10〜25mass%
Crは、耐食性を付与するために添加する必須の元素である。Cr含有量が10mass%未満では、ステンレス鋼としての耐食性を確保することができない。一方、Cr含有量が25mass%を超えて添加すると、脆性が劣化して製造性が低下することがある。なお、Crは高価な元素であり、原料コストを低減する観点から、Cr含有量は10〜18mass%の範囲とすることがより好ましい。
C:0.05mass%以下、N:0.05%mass%以下
CおよびNは、Crと化合物を形成して耐食性を劣化させる他、加工性にも悪影響を及ぼすため、少ないほどよい。よって、Cは0.05mass%以下、Nは0.05%mass%以下に制限することが好ましい。
Siは、耐酸化性や耐高温塩害特性の向上に有効な元素であり、また、鋼を硬質化し、延性を低下させる元素でもある。上記、耐酸化性や耐高温塩害特性の向上効果を得るためには、0.2mass%以上の添加することが好ましい。しかし、1mass%を超えて添加すると、硬質となり過ぎ、ベローズ加工性に悪影響を及ぼすようになるため、上限は1mass%とするのが好ましい。
Mnは、脱酸・脱硫および熱間加工性改善のために添加される元素である。しかし、Mn硫化物は、耐食性を劣化させるため、含有量は低い方が好ましい。そこで、製造コストと生産性を考慮して、Mnは0.5mass%以下とすることが好ましい。
Pは、粒界に偏析して靭性を低下させるため、低減することが好ましい。しかし、過度の脱Pは、製造コストの上昇を招くので、Pは0.04mass%以下が好ましい。
Sは、耐食性や耐酸化性に悪影響を及ぼす元素であり、特に、0.01mass%を超えると、その影響が顕著となるので、上限は0.01mass%とすることが好ましい。なお、Sは、低くてもベローズ特性に悪影響はなく、低いほど好ましい。
Niは、耐食性を向上させる元素である。しかし、1.0mass%を超えて添加すると、その効果が飽和するだけでなく、コスト上昇を招くだけであるので、Niは1.0%以下の範囲で添加することが好ましい。
TiおよびNbは、C,Nと反応して析出物を形成し、結晶粒を微細化して、均一伸びを向上する効果があるので、必要に応じて添加する元素である。しかし、過度に添加すると、析出物の増加による表面性状の劣化や、金属間化合物の生成による強度上昇とそれによる加工性の劣化を招く。よって、TiおよびNbの添加量は、それぞれTi:0.5mass%未満、Nb:1.0mass%未満とするのが好ましい。
また、TiおよびNbは、C,Nを析出物として固定し、冷延後焼鈍における再結晶粒の方位を改善し、r値を向上させる効果がある。その効果を発揮させるためには、2Ti+Nb≧16(C+N)を満たして添加することが好ましい。
MoおよびCuは、ともに耐食性を向上する効果がある。しかし、過剰に添加すると、脆化を起こして熱間圧延工程で表面傷を生じ、製品の表面品質を劣化させる。よって、これらの元素を添加する場合は、それぞれMo:4.0mass%以下、Cu:4.0mass%以下に制限することが好ましい。
Wは、鋼の強度を上昇させ、ベローズ管に要求される常温および高温での疲労耐久性の向上に有効な元素である。しかし、過度に添加すると、延性の低下をもたらし、成形性に悪影響を及ぼすようになるので、5.0mass%を超えない範囲で添加するのが好ましい。
表面粗さは、JIS B0651に準拠した触針式表面粗さ測定器を用いて、JIS B0601に準拠し、圧延方向に直角な方向の算術平均粗さRaを測定した。
また、引張試験は、圧延方向に直角な方向から、JIS13号B試験片を採取し、JIS Z2241に準拠して引張試験を行い、降伏応力YSおよび均一伸び(UEl)を求めた。さらに、上記冷延焼鈍板を素材として、外径50mmφの二重管(肉厚0.6mm)を製造し、これをベローズ素管として下記の成形試験に供した。
<ベローズ成形試験>
1山成形方式の液圧成形法により、ベローズ管の谷部外径を一定(50mmφ)とし、山部外径の目標値を20水準に変化させて、同一条件での連続10山成形し、その10山の各頂点の外径を測定して、φ(1)、φ(2)、φ(3)・・・φ(10)を得、それらのうちの最小値をφmin、最大値をφmax、それらの平均値をφavとした。そして、下記式;
0.98φav≦φmin≦φav≦φmax≦1.02φav
を満たすものを合格品とした。そして、その合格品のφavのうち、最小のものを成形可能最小外径ΦMIN、最大のものでかつ液圧成形時の割れが発生しなかったものを成形可能最大外径ΦMAXと定義した。なお、上記式は、山部外径のバラツキが小さい、すなわち成形安定性を示すものであり、特に、成形が不安定となりやすい成形可能最小外径ΦMINを評価するのに有効である。一方、成形可能最大外径ΦMAXは、通常、成形時の割れ発生により決まる値であり、山高さのバラツキの影響は小さい。
2:ロッド
3:クランプ金型
4:成形金型
5:シールパッキン
6:成形山
Claims (3)
- C:0.05mass%以下、Si:0.2〜1mass%、Mn:0.5mass%以下、P:0.04mass%以下、S:0.01mass%以下、Cr:10〜25mass%、Ni:1.0mass%以下、N:0.05mass%以下、Ti:0.5mass%未満、Nb:1.0mass%未満、Mo:2.571〜4.0mass%およびCu:0.540〜4.0mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、降伏応力が300〜450MPa、表面粗さがRaで0.40μm以下であることを特徴とするベローズ素管用フェライト系ステンレス鋼板。
- C:0.05mass%以下、Si:0.2〜1mass%、Mn:0.5mass%以下、P:0.04mass%以下、S:0.01mass%以下、Cr:10〜25mass%、Ni:1.0mass%以下、N:0.05mass%以下、Ti:0.5mass%未満、Nb:1.0mass%未満、Mo:1.090〜4.0mass%およびCu:2.591〜4.0mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、降伏応力が300〜450MPa、表面粗さがRaで0.40μm以下であることを特徴とするベローズ素管用フェライト系ステンレス鋼板。
- 上記成分組成に加えてさらに、W:5.0mass%未満を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のベローズ素管用フェライト系ステンレス鋼板。
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