JP5003263B2 - オーステナイト系ステンレス鋼板との溶接性に優れるフェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法 - Google Patents
オーステナイト系ステンレス鋼板との溶接性に優れるフェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP5003263B2 JP5003263B2 JP2007108785A JP2007108785A JP5003263B2 JP 5003263 B2 JP5003263 B2 JP 5003263B2 JP 2007108785 A JP2007108785 A JP 2007108785A JP 2007108785 A JP2007108785 A JP 2007108785A JP 5003263 B2 JP5003263 B2 JP 5003263B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- stainless steel
- steel sheet
- mns
- less
- ferritic stainless
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Active
Links
Landscapes
- Heat Treatment Of Sheet Steel (AREA)
Description
C≦0.012%
Cは、Crと結合して固溶Cr量を減じるため、耐食性を劣化させる。そのため、本願発明では、Nbを添加してCを炭窒化物として析出させるが、C量が0.012%を超えると、Nbの多量添加が必要になり、脆いCrとの金属間化合物などの硬質相が生成するため、C量は0.012%以下とする。
Siは、鋼の固溶強化元素であり、その量が0.3%を超えると、鋼が硬質低延性化するので、Si量は0.3%以下とする。
Mnは、MnSを形成して発錆の起点となって溶接部の耐食性を劣化させる。そのため、本願発明では、1μm以下の大きさのMnSの周辺にCuSを析出させて、MnSを起点とした発錆に起因する溶接部の耐食性の劣化を防止する。Mn量が0.1%未満では、FeSの生成による熱間脆性を回避できず、表面性状が劣化する。また、Mn量が0.3%を超えると、CuSの析出量が少なくなり、溶接部の耐食性の劣化を防止できない。このため、Mn量は0.1%以上0.3%以下とする。
Pは、鋼を固溶強化するとともに、粒界に偏析して鋼を脆化する。P量が0.04%を超えると、鋼の脆化が顕著に現れるので、P量の上限は0.04%とする。
Sは、耐食性を劣化させるMnSとそれを防止するCuSとして析出し、両者のバランスにより溶接部の耐食性の劣化が防止される。S量が0.01%を超えると、1μmを超える大きさの粗大なMnSの析出量が多くなり、CuSによる耐食性の劣化を防止できなくなる。このため、S量は0.01%以下とする。
Alは脱酸剤として働き、鋼の清浄度を向上させる。そのため、Al量は0.02%以上含有させることが望ましい。しかし、Al量が0.08%を超えると、AlNが微細に析出して鋼を硬質低延性化する。このため、Al量は0.08%以下とする。
Nは、Crと結合して固溶Cr量を減じるため、耐食性を劣化させる。そのため、本願発明では、Nbを添加してNを炭窒化物として析出させるが、N量が0.012%を超えると、Nbの添加量の増大や多量のAlNの析出を避けられず、鋼が硬質化する。このため、N量の上限は0.012%以下とする。
Tiは、TiSとして析出し、発錆起点となる。発錆が問題とならないようにするには、Ti量を0.01%以下とする必要がある。
上述したように、Nbは、C、Nと結合し炭窒化物を形成する。Nb量が0.35%未満だと、オーステナイト系ステンレス鋼板から拡散してくる多量のC、NをNbの炭窒化物として析出できず、Crの炭窒化物が生成して、耐食性が著しく劣化する。一方、Nb量が0.7%を超えると、Crとの金属間化合物が生成しやすくなり、鋼の脆化を招く。このため、Nb量は0.35%以上0.7%以下とする。
Crは、ステンレス鋼表面に不動態被膜を形成し、ステンレス鋼特有の耐食性を付与する元素である。例えば、SUS430に代表される通常のフェライト系ステンレス鋼板には、18%程度のCrが含有されるが、オーステナイト系ステンレス鋼板との溶接部では、多量のC、Nが存在するので、Cr量は20.5%以上とする必要がある。一方、Cr量が23.5%を超えると、NbとCrの金属間化合物が生成しやすくなり、鋼の脆化を招く。このため、Cr量は20.5%以上23.5%以下とする。
上述したように、Cuは、1μm以下の大きさのMnSの周辺にCuSとして析出し、MnSを起点とした発錆に起因する溶接部の耐食性の劣化を防止する。Cu量が0.3%未満だと、CuSの析出が起こりにくくなり、0.8%を超えると、鋼中にCuが析出して、鋼板を著しく硬質化する。このため、Cu量は0.3%以上0.8%以下とする。
上述したように、1μm以下の大きさのMnSの周辺にCuSを析出させると、MnSを起点とした発錆に起因する溶接部の耐食性の劣化が防止される。これは、次のように考えられる。すなわち、溶接部が腐食環境下に置かれると、そこに存在するMnSが最初に溶解し、発錆の起点となって、そこから孔食が生じ、不動態被膜の破壊へと進行し、耐食性の劣化を引き起こす。しかし、MnSの周辺にCuSが存在すると、CuSも腐食環境下で溶解し、Cuイオンを排出して、電気化学的に腐食の進行を食い止めることができる。なお、CuSを析出させるMnSの大きさが1μmを超えると、MnSを核としたCuSの析出が生じにくくなるばかりか、MnSを核として析出したCuSからのCuイオン排出による腐食進行の防止効果がなくなる。このため、溶接部の耐食性の劣化を防止できなくなるので、1μm以下とする必要がある。
上述したように、本発明のフェライト系ステンレス鋼板は、例えば、上記の成分組成を有するスラブを、1000℃以上に加熱後、仕上温度800℃以上1000℃未満で熱間圧延を行い、巻取温度400℃以上で巻取った後、熱延板焼鈍を行う、あるいは、その後さらに冷間圧延、再結晶焼鈍を行うことにより製造できる。
熱間圧延に先立つスラブの加熱温度が1000℃を下回ると、MnSが溶解しないまま熱間圧延されて、粗大に展伸したMnSが形成され、CuSが隣接しないMnSの部分が多くなり、耐食性の劣化を招く。このため、スラブの加熱温度は1000℃以上とする。
熱間圧延の仕上温度が800℃を下回ると、MnSが圧延方向に長く展伸しやすくなり、上記の場合と同様に、CuSが隣接しないMnSが多くなり、耐食性の劣化を招く。また、ロールと鋼板の摩擦力が大きくなり、表面性状も劣化して、ステンレス鋼特有の光沢と耐食性を具備する表面が得られにくくなる。一方、仕上温度が1000℃以上だと、熱間圧延中にMnSが粗大化しやすくなり、1μm以下のMnSが得られなくなる。このため、熱間圧延の仕上温度は800℃以上1000℃未満とする。
巻取温度は、CuSの析出制御に重要である。巻取温度が400℃を下回ると、CuSが析出しなくなり、CuSが核にしてまたは隣接して析出している1μm以下のMnS量が50%を下回り、耐食性の劣化を防止できなくなる。このため、巻取温度は400℃以上とする。なお、熱延板の形状が劣化しないように、巻取温度は450℃以上とすることが好ましい。
Claims (4)
- 質量%で、C≦0.012%、Si≦0.3%、0.1%≦Mn≦0.3%、P≦0.04%、S≦0.01%、Al≦0.08%、N≦0.012%、Ti≦0.01%、0.35%≦Nb≦0.7%、20.5%≦Cr≦23.5%、0.3%≦Cu≦0.8%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、かつCuSが1μm以下の大きさのMnSを核として、あるいは1μm以下の大きさのMnSに隣接して析出していることを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼板との溶接性に優れるフェライト系ステンレス鋼板。
- 質量%で、C≦0.012%、Si≦0.3%、0.1%≦Mn≦0.3%、P≦0.04%、S≦0.01%、Al≦0.08%、N≦0.012%、Ti≦0.01%、0.35%≦Nb≦0.7%、20.5%≦Cr≦23.5%、0.3%≦Cu≦0.8%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、かつ1μm以下の大きさのMnSのうち、50%以上のMnSにCuが検出されることを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼板との溶接性に優れるフェライト系ステンレス鋼板。
- 請求項1に記載の成分組成を有するスラブを、1000℃以上に加熱後、仕上温度800℃以上で熱間圧延を行い、巻取温度400℃以上で巻取った後、熱延板焼鈍を行うことを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼板との溶接性に優れるフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
- 熱延板焼鈍後、さらに冷間圧延、再結晶焼鈍を行うことを特徴とする請求項3に記載のオーステナイト系ステンレス鋼板との溶接性に優れるフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007108785A JP5003263B2 (ja) | 2007-04-18 | 2007-04-18 | オーステナイト系ステンレス鋼板との溶接性に優れるフェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007108785A JP5003263B2 (ja) | 2007-04-18 | 2007-04-18 | オーステナイト系ステンレス鋼板との溶接性に優れるフェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2008266696A JP2008266696A (ja) | 2008-11-06 |
JP5003263B2 true JP5003263B2 (ja) | 2012-08-15 |
Family
ID=40046576
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2007108785A Active JP5003263B2 (ja) | 2007-04-18 | 2007-04-18 | オーステナイト系ステンレス鋼板との溶接性に優れるフェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP5003263B2 (ja) |
Families Citing this family (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP5262029B2 (ja) * | 2007-09-11 | 2013-08-14 | Jfeスチール株式会社 | 伸びフランジ加工性に優れたフェライト系ステンレス鋼板 |
WO2014157578A1 (ja) * | 2013-03-27 | 2014-10-02 | 新日鐵住金ステンレス株式会社 | 研磨後の表面耐食性に優れるフェライト系ステンレス鋼及びその製造方法 |
RU2736309C2 (ru) * | 2016-03-30 | 2020-11-13 | Ниппон Стил Стэйнлесс Стил Корпорейшн | ЛИСТ ИЗ СОДЕРЖАЩЕЙ Nb ФЕРРИТНОЙ НЕРЖАВЕЮЩЕЙ СТАЛИ И СПОСОБ ЕГО ПРОИЗВОДСТВА |
Family Cites Families (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP3152576B2 (ja) * | 1995-01-19 | 2001-04-03 | 川崎製鉄株式会社 | Nb含有フェライト鋼板の製造方法 |
JP3422878B2 (ja) * | 1995-07-28 | 2003-06-30 | 新日本製鐵株式会社 | 大気中での耐食性に優れたフェライト系ステンレス鋼およびその製造方法 |
JP3448537B2 (ja) * | 2000-03-10 | 2003-09-22 | 新日本製鐵株式会社 | 溶接性に優れたフェライト系ステンレス鋼 |
JP4752621B2 (ja) * | 2005-06-09 | 2011-08-17 | Jfeスチール株式会社 | ベローズ素管用フェライト系ステンレス鋼板 |
-
2007
- 2007-04-18 JP JP2007108785A patent/JP5003263B2/ja active Active
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2008266696A (ja) | 2008-11-06 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP6801716B2 (ja) | 冷延鋼板 | |
JP4324072B2 (ja) | 延性に優れた軽量高強度鋼とその製造方法 | |
JP4317384B2 (ja) | 耐水素脆化、溶接性および穴拡げ性に優れた高強度亜鉛めっき鋼板とその製造方法 | |
JP3704306B2 (ja) | 溶接性、穴拡げ性および耐食性に優れた溶融亜鉛めっき高強度鋼板およびその製造方法 | |
JP2004332099A (ja) | 耐水素脆化、溶接性、穴拡げ性および延性に優れた高強度薄鋼板およびその製造方法 | |
WO2013121963A1 (ja) | 鋼板、めっき鋼板、及びそれらの製造方法 | |
KR101463526B1 (ko) | 인성이 우수한 고내식성 페라이트계 스테인레스 열연 강판 | |
JP2003193193A (ja) | 溶接性、穴拡げ性および延性に優れた高強度鋼板およびその製造方法 | |
JP6308334B2 (ja) | 高強度冷延鋼板 | |
WO2008084838A1 (ja) | 溶接部耐食性および鋼板の靭性に優れた温水器用フェライト系ステンレス鋼板 | |
KR102067154B1 (ko) | 페라이트계 스테인리스 강판 | |
WO2015002190A1 (ja) | 冷延鋼板、亜鉛めっき冷延鋼板及びそれらの製造方法 | |
JP6460239B2 (ja) | 鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、及び合金化溶融亜鉛めっき鋼板、並びにそれらの製造方法 | |
JP6988836B2 (ja) | 超低降伏比高張力厚鋼板およびその製造方法 | |
JP4414563B2 (ja) | 成形性並びに穴拡げ性に優れた高強度鋼板およびその製造方法 | |
JP2004332100A (ja) | 耐水素脆化、溶接性および穴拡げ性に優れた高強度薄鋼板及びその製造方法 | |
JP6460238B2 (ja) | 鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、及び合金化溶融亜鉛めっき鋼板、並びにそれらの製造方法 | |
JP4288146B2 (ja) | 溶接熱影響部の耐軟化性に優れたバーリング性高強度鋼板の製造方法 | |
JP2005089828A (ja) | 耐隙間腐食性を改善したフェライト系ステンレス鋼板 | |
JP5003263B2 (ja) | オーステナイト系ステンレス鋼板との溶接性に優れるフェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法 | |
WO2020196311A1 (ja) | 高強度鋼板及びその製造方法 | |
JP3895986B2 (ja) | 溶接性および穴拡げ性に優れた高強度鋼板およびその製造方法 | |
KR20200057760A (ko) | 페라이트계 스테인리스 강판 및 그의 제조 방법 | |
JP3269799B2 (ja) | 加工性、耐粒界腐食性および高温強度に優れるエンジン排気部材用フェライト系ステンレス鋼 | |
JP6892842B2 (ja) | 高強度冷延鋼板用の素材熱延鋼板およびその製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20100325 |
|
RD03 | Notification of appointment of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423 Effective date: 20120321 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20120327 |
|
RD04 | Notification of resignation of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424 Effective date: 20120327 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20120424 |
|
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20120507 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150601 Year of fee payment: 3 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 5003263 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |