JP3827986B2 - ステンレス鋼製フレキシブル管又はダクト管 - Google Patents

ステンレス鋼製フレキシブル管又はダクト管 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、従来のステンレス鋼素材では成形加工できなかった形状をもち、曲げ性,伸縮性に優れ圧縮・復元能が高いステンレス鋼製フレキシブル管やダクト管に関する。
【0002】
【従来の技術】
オフィスビル,マンション,アパート等の大型家屋の建築が進むにつれ、居住空間の空調・給排気設備の重要性が増加している。空調・給排気設備では、大量の空気を低圧損で給排気するため大径パイプが給排気ダクトに使用されている。給排気ダクトは大型家屋の建屋内に敷設されるために長尺であり、熱膨張に起因する変形量を緩衝する機能や空調機器との接続部で除振する機能を付与したフレキシブルダクトが知られている。フレキシブルダクトは、蛇腹状に加工された管壁をもち、変形や振動を弾性変形として吸収でき、容易に変形することから方向変更箇所にも適用されている。
また、給排気の直管部であるダクト管は、保持体等の構造を簡素化するために軽量化が要求される。従来、アルミニウム合金やめっき鋼管で作製された薄肉金属管の使用によって給排気ダクトの軽量化を図っているが、強度,耐食性の観点からステンレス鋼が使用され始めている。フレキシブル管についても、アルミニウム合金やめっき鋼板が従来から多用されているが、耐食性,耐熱性を考慮してステンレス鋼が使用され始めている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ステンレス鋼を素材としてフレキシブル管やダクト管を製造する場合、ステンレス鋼の非常に大きな変形抵抗のために金型寿命が短く、生産性が低い。特に、アルミニウム合金やめっき鋼板からフレキシブル管やダクト管を製造してきた従来設備では、曲げ加工に要する負荷が大きなことから工業的にはステンレス鋼を加工できない。特にフレキシブル管の場合には加工できたとしても、加工硬化が著しく、施工現場でフレキシブルに曲げて所望角度に調節できず、フレキシブルダクトの敷設に支障をきたす。
フレキシブルダクトは、長手方向に圧縮したコンパクトな状態で輸送すると輸送単価が軽減できることも長所である。しかし、従来のステンレス鋼製フレキシブルダクトは、輸送時に圧縮すると施工時の加工硬化が一層大きく、フレキシブルでなくなってしまう。そのため、ステンレス鋼製フレキシブルダクトは、コンパクトな圧縮状態での輸送に適さず、輸送コストが高くつく。しかも、従来のステンレス鋼を用いたダクト管では、カシメ部における曲げ加工が困難であり、加工できたとしても形状を十分に凍結できないことが欠点である。そのため、長尺に加工すると形状のズレが累積し、ついには平坦部が座屈して形状不良に至り、製品ができなくなる。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、軟質で加工硬化しがたいステンレス鋼をフレキシブル管やダクト管の素材に使用することにより、従来のステンレス鋼素材では成形加工できなかった形状への歩留良い加工を可能にし、しかも曲げ性,伸縮性に優れ、コンパクトな圧縮状態での輸送を可能にする圧縮・復元能の高いステンレス鋼製フレキシブル管やダクト管を提供することを目的とする。
【0005】
本発明のステンレス鋼製フレキシブル管は、その目的を達成するため、(C+N):0.06質量%以下,Si:1.7質量%以下,Mn:5質量%以下,Cr:15〜20質量%,Ni:5〜9質量%,Cu:1.0〜4.0質量%,S:0.005質量%以下を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなり、下記式(1)で定義されるオーステナイト安定指標Md30が−120〜−10に,下記式(2)で定義される積層欠陥難易度指数SFEが30以上になるように調整された成分組成を有するとともに、析出物に含まれるCuが1.0質量%以下に規制されることによりマトリックスの固溶Cuが1.0〜4.0質量%に維持されており、更に引張試験で求められる引張真応力−対数伸び歪曲線の勾配である加工硬化指数nが0.40〜0.55であり,0.2%耐力が300N/mm2以下である軟質オーステナイト系ステンレス鋼からなることを特徴とする。
Md30=551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−29(Ni+Cu)−13.7Cr−18.5Mo・・・・(1)
SFE=2.2Ni+6Cu−1.1Cr−13Si−1.2Mn+32 ・・・・(2)
【0006】
また、本発明のステンレス鋼製ダクト管は、(C+N):0.06質量%以下,Si:1.7質量%以下,Mn:5質量%以下,Cr:15〜20質量%,Ni:5〜9質量%,Cu:1.0〜4.0質量%,S:0.005質量%以下を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなり、下記式(1)で定義されるオーステナイト安定指標Md30が−120〜−10に,下記式(2)で定義される積層欠陥難易度指数SFEが30以上になるように調整された成分組成を有するとともに、析出物に含まれるCuが1.0質量%以下に規制されることによりマトリックスの固溶Cuが1.0〜4.0質量%に維持されており、更に引張試験で求められる引張真応力−対数伸び歪曲線の勾配である加工硬化指数nが0.40〜0.55であり,0.2%耐力が300N/mm2以下である軟質オーステナイト系ステンレス鋼からなることを特徴とする。
Md30=551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−29(Ni+Cu)−13.7Cr−18.5Mo・・・・(1)
SFE=2.2Ni+6Cu−1.1Cr−13Si−1.2Mn+32 ・・・・(2)
フレキシブル管及びダクト管の素材に使用されるステンレス鋼には、必要に応じてTi:0.5質量%以下,Nb:0.5質量%以下,Zr:0.5質量%以下,V:0.5質量%以下,Mo:3.0質量%以下,B:0.03質量%以下,REM(希土類金属):0.02質量%以下,Ca:0.03質量%以下の1種又は2種以上を含むことができる。
【0007】
【作用】
本発明者等は、オーステナイト系ステンレス鋼板の成形加工時に発生する割れが加工誘起マルテンサイトの生成及びオーステナイト相と加工誘起マルテンサイトとの変形抵抗差に起因するとの前提で、加工誘起マルテンサイトの生成傾向に及ぼす材質面の影響を調査検討した。
加工誘起マルテンサイトへの変態は、加工時に導入される歪によってオーステナイト相の結晶格子が変形すること,オーステナイト相に分散している各種析出物への応力集中が結晶格子の変形を促進させることに原因がある。この点、本発明者等による多数の実験結果から、前掲の式(1)で定義されるオーステナイト安定指標Md30が−120〜−10の範囲に入るようにステンレス鋼を成分設計すると、加工誘起マルテンサイトの生成が抑えられることが判った。
【0008】
しかし、過酷な成形加工を経て製品化される用途の場合、未変態のオーステナイト相であっても加工硬化するため、オーステナイト相の安定化だけでは依然として加工割れや硬質化を防止できない。このときの加工硬化挙動は、f.c.c.構造をとるオーステナイト相における転移の増殖形態に影響され、積層欠陥の生成難易度によって加工硬化量が定まる。
積層欠陥の生成傾向は、前掲の式(2)で定義される積層欠陥難易度指数SFEで表すことができる。なかでも、マトリックスにCuを固溶させておくと、積層欠陥難易度指数SFEが大きく上昇する。この点、Cuは、Ni代替による原料費のコストダウンに留まらず、加工硬化をより一層低下する上で有効な合金成分である。積層欠陥難易度指数SFEが小さいステンレス鋼では、僅かなエネルギーによって積層欠陥が生成し、転位の伝播が積層欠陥によって抑えられる。その結果、材料内部に転位が蓄積し、加工硬化が大きくなる。
【0009】
オーステナイト安定指標Md30及び積層欠陥難易度指数SFEは軟質ステンレス鋼の成分設計によって調整されるが、マトリックスに含まれる固溶Cuを1.0〜4.0質量%の範囲に維持することが積層欠陥難易度指数SFEの上昇に効果的である。具体的には、17Cr−12Ni−0.8Mnをベースとしたステンレス鋼の耐力及び引張強さに及ぼす各添加元素の影響を調査したISIJ International, Vol.34 (1991), No.9, p.766にも紹介されているように、1.0〜4.0質量%のCu含有量で0.2%耐力及び引張強さ共に大幅に低下する。
【0010】
Cuは、Niよりも大きな軟化効果を奏する。軟質化に及ぼすCu含有の影響を調査検討した結果、マトリックスに固溶しているCuが軟質化に効いており、ε−Cu等として析出しているCuでは却って加工性が低下することが判った。マトリックス及び析出物のCu濃度は、透過型電子顕微鏡観察サンプルをEDX分析することによって測定できる。
必要量の固溶Cuは、ステンレス鋼板製造時の圧延条件及び熱処理条件を制御することにより確保される。具体的には、熱延板,冷延板共に1000℃以上の材料温度で均熱0秒以上の加熱焼鈍を施すことにより必要量の固溶Cuが確保される。
【0011】
オーステナイト安定指標Md30を−120〜−10の範囲に維持して加工誘起マルテンサイトの生成を抑制し、積層欠陥難易度指数SFEを30以上とすることにより積層欠陥の生成が減少する。加えて固溶Cuを1.0〜4.0質量%の範囲に維持すると,加工誘起マルテンサイト生成に起因する硬質化及び転位蓄積に起因するオーステナイト相の硬質化がなく、良好な加工性及び軟質を維持したままで目標形状への加工が可能になる。
なかでも、オーステナイト安定指標Md30を−20以下に調整すると、加工誘起マルテンサイト変態挙動が外気温の低下や加工速度の上昇による影響を受けにくくなり加工性が安定する。また、オーステナイト安定指標Md30を−90以上に調整すると、高価なNi等のオーステナイト形成元素を必要にしないため、鋼材コストの上昇も抑えられる。
【0012】
更に、加工硬化指数nを0.40〜0.55,0.2%耐力を300N/mm2以下に調整すると、従来のステンレス鋼では得られなかった形状に成形加工でき、曲げ性,伸縮性に優れ軟質で低加工硬化特性のステンレス鋼製フレキシブル管が製造できる。加工硬化指数n及び0.2%耐力は、ステンレス鋼板を製造する段階で圧延条件,熱処理条件を調整することにより所定範囲に収められる。
加工硬化指数nは、圧延方向に直交する方向を長手方向としたサンプルを各ステンレス鋼板から切り出し、JIS Z2201に規定されている13B号定型試験片に加工し、引張試験の実測値から引張真応力−対数伸び歪曲線を作成し、当該曲線の勾配から求められる。0.2%耐力は、圧延方向に直交する方向を長手方向とした試験片をステンレス鋼板から切り出し、同じく引張試験で0.2%歪に対応する応力を測定することにより求められる。
【0013】
加工硬化指数n:0.40〜0.55,0.2%耐力:300N/mm2以下の軟質オーステナイト系ステンレス鋼を素材に使用するとき、成形加工で得られるフレキシブル管は形状凍結性にも優れているため高い寸法精度をもち、従来のステンレス鋼素材では不可能であったデザイン,形状への加工も可能である。しかも、積層欠陥が生成しがたい素材であるため、フレキシブル管成形後にも曲げ性が良好で伸縮自在であり、工事現場での施工性に必要な圧縮・復元能が高いフレキシブル管が得られる。
また、加工硬化指数n及び0.2%耐力を上記のように規定した軟質オーステナイト系ステンレス鋼を素材に使用するとき、形状精度の優れたダクト管が歩留りよく得られる。
【0014】
本発明が対象とする軟質ステンレス鋼には、(C+N):0.06質量%以下,Si:1.7質量%以下,Mn:5質量%以下,Cr:15〜20質量%,Ni:5〜9質量%,Cu:1.0〜4.0質量%,S:0.005質量%以下,残部がFe及び不可避的不純物の組成をもつオーステナイト系ステンレス鋼がある。軟質ステンレス鋼は、必要に応じてTi:0.5質量%以下,Nb:0.5質量%以下,Zr:0.5質量%以下,V:0.5質量%以下,Mo:3.0質量%以下,B:0.03質量%以下,REM(希土類金属):0.02質量%以下,Ca:0.03質量%以下の1種又は2種以上を含むことができる。当該組成をもつステンレス鋼自体は、本出願人が特開平9−263905号公報で紹介したものであるが、その中からオーステナイト安定指数Md30及び積層欠陥難易度指数SFEが本発明で規定した条件を満足する材料を選択することにより、フレキシブル管やダクト管に適した素材となる。
【0015】
以下、オーステナイト系ステンレス鋼の合金成分,含有量等を説明する。
(C+N):0.06質量%以下
C,Nは、多量に含まれると固溶強化により0.2%耐力や硬さを上昇させる合金成分である。また、加工誘起マルテンサイト相を過度に硬質化し、成形性や二次加工性に悪影響を及ぼす。過剰量のC,N含有は、フレキシブル管やダクト管の曲げ性,伸縮性を損なうことにもなる。C及びNに起因する欠陥は、合計含有量を0.06質量%以下に規制することによって抑制できる。
【0016】
Si:1.7質量%以下
製鋼段階で脱酸剤として添加される合金成分であるが、1.7質量%を超える過剰量のSiが含まれると材質が硬質化すると共に、加工硬化が大きくなり、二次加工性が低下する。なかでも、Si含有量を1.2質量%以下(好ましくは、0.8質量%以下)に規制すると、積層欠陥難易度指数SFEが35以上となり、固溶強化が抑制され、更なる軟質化が図られ、フレキシブル管やダクト管に要求される曲げ性,伸縮性が向上する。
他方、Si含有量が1.2質量%を越える領域では、加工性が若干低下するものの、耐応力腐食割れ性が向上する。この場合でも、積層欠陥難易度指数SFEが30以上となる合金設計を採用することにより、耐応力腐食割れ性及び曲げ性,伸縮性を両立させたフレキシブル管やダクト管が得られる。
【0017】
Mn:5質量%以下
Mn含有量の増加に応じて加工誘起マルテンサイト相が生成しがたくなり、0.2%耐力及び加工硬化率が低下し、曲げ性,伸縮性に優れたフレキシブル管やダクト管が得られる。しかし、5質量%を超える過剰量のMn含有は、製鋼時に耐火物損傷を促進させ、加工割れの起点となるMn系介在物を増加させる。
Cr:15〜20質量%
ステンレス鋼の耐食性を向上させる上で必須の合金成分であり、15質量%以上のCr含有で効果が顕著になる。Crの耐食性改善効果は、Niとの共存によって一層顕著になる。しかし、Cr含有量の増加に伴って硬質化し、フレキシブル管やダクト管の曲げ性,伸縮性が損なわれることから、Cr含有量の上限を20質量%に設定した。
【0018】
Ni:5〜9質量%
Crと複合添加することにより耐孔食性等の耐食性改善に有効な合金成分であり、5質量%以上のNi含有で効果が顕著になる。また、Ni含有量の増加に伴って軟質化し、加工誘起マルテンサイト相の生成に起因する加工硬化も抑えられ、フレキシブル管やダクト管の曲げ性,伸縮性が向上する。しかし、高価な元素であることから、経済性と加工性,フレキシブル管やダクト管の特性改善効果を勘案し、Ni含有量の上限を9質量%に設定した。
【0019】
Cu:1.0〜4.0質量%
加工誘起マルテンサイト相の生成に起因する加工硬化を抑制し、ステンレス鋼を軟質化することにより、フレキシブル管やダクト管の曲げ性,伸縮性を改善する合金成分であり、1.0質量%以上でCuの添加効果が顕著になる。鋼中のCuは固溶状態で存在していることが好ましく、Cu系析出物の増加に従って成形性が低下する傾向を示す。Cu系析出物の析出量は、製造工程で圧延条件,熱処理条件等を制御することにより調整できる。また、オーステナイト生成元素であることから、Cu含有量の増加に応じてNi含有量の設定自由度が増す。具体的には、2.0質量%以上のCuを含有させることにより、Niを下限値5質量%近くまで下げることができる。しかし、4.0質量%を超える過剰量のCuが含まれると、熱間加工性に悪影響が現れる。
【0020】
S:0.005質量%以下
0.005質量%を超える過剰量のSが含まれると、鋼板製造時の熱間加工性が低下すると共に、フレキシブル管やダクト管に成形加工する際に割れが発生しやすく、得られたフレキシブル管やダクト管の曲げ性,伸縮性も低下する。また、腐食の起点となるMnS系の硫化物が鋼中に多量に分散する結果、耐食性にも悪影響を及ぼす。なかでもMnSを低減する上で、S含有量を0.003質量%以下に規制することが好ましい。
【0021】
Ti,Nb,Zr,V:それぞれ0〜0.5質量%
必要に応じて添加される合金成分であり、C,N等の固溶強化元素を固定し、ステンレス鋼板の硬質化を抑え、ひいてはフレキシブル管やダクト管の曲げ性,伸縮性を向上させる作用を呈する。これら元素の添加効果は、0.5質量%で飽和し、それ以上添加しても増量に見合った効果が期待できない。
Mo:3.0質量%以下
必要に応じて添加される合金成分であり、耐食性を改善する作用を呈する。しかし、過剰量のMo添加はフレキシブル管やダクト管の曲げ性,伸縮性を損なう原因となるので、Moを添加する場合には上限を3.0質量%に規定する。
【0022】
B:0.03質量%以下
必要に応じて添加される合金成分であり、熱間加工性を向上させ、熱延時の割れ防止に有効である。しかし、過剰量のB含有は却って熱間加工性が低下することになるので、Bを添加する場合には上限を0.03質量%に規定する。
REM(希土類元素):0.02質量%以下
必要に応じて添加される合金成分であり、Bと同様に熱間加工性の改善に有効である。しかし、過剰に添加すると添加効果が飽和することに加え、硬質化を招きフレキシブル管やダクト管への加工が困難になり、フレキシブル管やダクト管の曲げ性,伸縮性も損なわれるので、REMを添加する場合には上限を0.02質量%に規定する。
Ca:0.03質量%以下
必要に応じて添加される合金成分であり、熱間加工性の改善に有効である。しかし、0.03質量%を超える過剰量のCaを添加しても、添加効果が飽和し、清浄度が低下する。
【0023】
【実施例1】
表1の組成をもつ各種ステンレス鋼を溶製し、連鋳スラブを得た後、抽出温度1230℃で熱間圧延することにより板厚3mmの熱延鋼帯を製造した。熱延鋼帯を1150℃×均熱1分で焼鈍した後、板厚0.8mmに冷間圧延した。次いで、冷延鋼帯を1050℃×均熱1分で焼鈍し、更に板厚0.1mmまで冷間圧延した後、1050℃×均熱1分で仕上げ焼鈍して酸洗することにより焼鈍・酸洗鋼帯を製造した。
【0024】
Figure 0003827986
【0025】
凹凸ロールを用いたロール成形法で各ステンレス鋼板を図1の断面形状に成形加工し、螺旋状に巻き取りながら隣接個所を溶接し、直管状のフレキシブル管(図2)を製造した。
製造されたフレキシブル管について、凹凸角度α(図1)を測定し、設計設定角度(60度)と製品の実測角度との角度差Δαを求めた。そして、角度差Δαが1度以下を良好,1度を超える場合を不良として形状精度を評価した。また、凹凸部の稜線を観察して割れの有無を調査し、割れの有無によって成形性を評価した。
【0026】
表2の調査結果にみられるように、オーステナイト安定指標Md30が−120〜−10,積層欠陥難易度指数SFEが30以上のステンレス鋼を素材としたフレキシブル管A1〜A5は,何れも曲げ角度差Δαが1度以下で、曲げ稜線に割れがない高品質の製品であった。
他方、オーステナイト安定指標Md30が−120未満のステンレス鋼を素材としたフレキシブル管Bでは、曲げ角度差Δαが1度以下と形状精度は良好であったが、曲げ稜線に割れが発生しており、製品としては不良であった。積層欠陥難易度指数SFEが30未満のステンレス鋼を素材としたフレキシブル管Cやオーステナイト安定指標Md30が−10を超えるフレキシブル管Dは、曲げ角度差でΔαが1度を超えており形状不良であった。オーステナイト安定指標Md30が−10を超え、積層欠陥難易度指数SFEが30未満のフレキシブル管Eは、1度を超える曲げ角度差Δαであり、曲げ稜線にも割れが発生していた。
【0027】
Figure 0003827986
【0028】
【実施例2】
実施例1で作成したフレキシブル管の曲げやすさを次の試験で評価した。長さ1mのフレキシブル管を用い、フレキシブル管の中間点を支点とし長さ50cmの部分を角度90度で曲げ加工した。曲げ加工後に曲げ力を解放した状態での戻り角βを測定し、戻り角度差Δβを算出した(図3)。角度差Δβにより曲げ加工性を評価し、角度差Δβ≦10度を曲げ性良好と判定した。
判定結果の曲げ性を、各素材の圧延方向に沿った加工硬化指数n及び0.2%耐力に対応させて表3に示す。
【0029】
表3にみられるように、A1〜A5のフレキシブル管(本発明例)は、素材の加工硬化指数nが0.45〜0.55、0.2%耐力が300N/mm2以下であり、何れも角度差Δβ≦10度と良好な曲げ性を示した。
これに対し、加工硬化指数nが0.40未満のBのフレキシブル管は、角度差Δβは良好であるものの、曲げ支点外側の稜線に沿った割れの開口面積が増大した。加工硬化指数nが0.55を超え、或いは更に0.2%耐力が300N/mm2を超えるC〜Eのフレキシブル管では、角度差Δβが10度を超え、曲げ性が不良であった。
【0030】
Figure 0003827986
【0031】
【実施例3】
実施例1で作成したフレキシブル管について、次の試験方法で伸縮性を調査した。長さL0=1mのフレキシブル管を長手方向に30cmまで圧縮した後、圧縮力を解放してフレキシブル管を弾性復元させた(図4)。弾性復元後の製品長さL1を測定し、次式に従って収縮性評価指数Cを算出した。収縮性評価指数Cが50%以上のとき、収縮・復元良好と評価した。
C=(L0−L1)/L0×100 (%)
【0032】
表4の調査結果にみられるようにA1〜A5のフレキシブル管(本発明例)は、何れも収縮性評価指数Cが50%以上であり、良好な収縮・復元能をもっていた。このことは、A1〜A5のフレキシブル管をコンパクトな形態で輸送,取り扱いできることを意味する。施工に際しては、圧縮したフレキシブル管を伸張させて施工現場に応じた長さに調節するが、この場合にも伸張後に割れ等の欠陥が発生しなかった。
他方、Bのフレキシブル管は、収縮性評価指数Cが50%を超えているものの、稜線の割れが広範囲にわたっており、製品形状を維持できなかった。C〜Eのフレキシブル管は、何れも収縮性評価指数Cが50%を下回っており、収縮・復元性に劣っていた。
【0033】
Figure 0003827986
【0034】
【実施例4】
実施例1〜3と同じステンレス鋼板を図5の断面形状に成形加工し、図6のダクト管を各鋼種ごとに100本製造した。得られたダクト管を長さ4mの製品に定寸切断した後、平坦部の座屈有無,カシメ部の割れの有無を調査し、成形性を評価した。
表5の調査結果にみられるように、オーステナイト安定指標Md30が−120〜−10,積層欠陥難易度指数SFEが30以上のステンレス鋼板を素材としたダクト管A1〜A5は、何れも平坦部に座屈がなく良好な製品であった。
【0035】
これに対し,オーステナイト安定指標Md30が−120未満のステンレス鋼板を素材としたダクト管Bでは、平坦部における座屈は発生していないものの、カシメ部の割れが100本中54本発生し、製品として不良であった。積層欠陥難易度指数SFEが30未満のステンレス鋼板を素材としたダクト管Cやオーステナイト安定指標Md30が−10を超えるダクト管Dは、平坦部の座屈が100本中それぞれ38本,62本発生しており、形状不良であった。オーステナイト安定指標Md30が−10を超え、積層欠陥難易度指数SFEが30未満のダクト管Eは、平坦部の座屈が100本中43本,カシメ部の割れが100本中72本発生していた。
【0036】
Figure 0003827986
【0037】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明のステンレス鋼製フレキシブル管及びダクト管は、加工誘起マルテンサイトの生成や積層欠陥が生じがたい素材を使用することによって過酷な加工条件下で加工された後でも十分な軟質性が維持される。そのため、ステンレス鋼本来の優れた耐食性,耐熱性が活用され、圧縮・復元能が大きなため施工性の良好なフレキシブル管やダクト管として給排気ダクト等に使用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 複数の凹凸をつけたステンレス鋼板の断面図
【図2】 凹凸形成後のステンレス鋼板を螺旋状に巻いて隣接部を溶接することにより製造したフレキシブル管を示す図
【図3】 フレキシブル管の曲げ試験を説明する図
【図4】 フレキシブル管の収縮性評価試験を説明する図
【図5】 ステンレス鋼板を成形加工した断面形状を示す図
【図6】 実施例4で製造したダクト管を示す図

Claims (4)

  1. ( C+N ): . 06質量%以下,Si : . 7質量%以下,Mn : 5質量%以下,Cr : 15〜20質量%,Ni : 5〜9質量%,Cu : . 0〜4 . 0質量%,S : . 005質量%以下を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなり、下記式 ( ) で定義されるオーステナイト安定指標Md 30 が−120〜−10に,下記式 ( ) で定義される積層欠陥難易度指数SFEが30以上になるように調整された成分組成を有するとともに、析出物に含まれるCuが1 . 0質量%以下に規制されることによりマトリックスの固溶Cuが1 . 0〜4 . 0質量%に維持されており、更に引張試験で求められる引張真応力−対数伸び歪曲線の勾配である加工硬化指数nが0 . 40〜0 . 55であり,0 . 2%耐力が300N/mm 2 以下である軟質オーステナイト系ステンレス鋼からなるステンレス鋼製フレキシブル管
    Md30=551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−29(Ni+Cu)−13.7Cr−18.5Mo・・・・(1)
    SFE=2.2Ni+6Cu−1.1Cr−13Si−1.2Mn+32 ・・・・(2)
  2. 軟質ステンレス鋼が更にTi : . 5質量%以下,Nb : . 5質量%以下,Zr : . 5質量%以下,V : . 5質量%以下,Mo : . 0質量%以下,B : . 03質量%以下,REM(希土類金属):0 . 02質量%以下,Ca:0 . 03質量%以下の1種又は2種以上を含む請求項1に記載のステンレス鋼製フレキシブル管
  3. ( C+N ): . 06質量%以下,Si : . 7質量%以下,Mn : 5質量%以下,Cr : 15〜20質量%,Ni : 5〜9質量%,Cu : . 0〜4 . 0質量%,S : . 005質量%以下を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなり、下記式 ( ) で定義されるオーステナイト安定指標Md 30 が−120〜−10に,下記式 ( ) で定義される積層欠陥難易度指数SFEが30以上になるように調整された成分組成を有するとともに、析出物に含まれるCuが1 . 0質量%以下に規制されることによりマトリックスの固溶Cuが1 . 0〜4 . 0質量%に維持されており、更に引張試験で求められる引張真応力−対数伸び歪曲線の勾配である加工硬化指数nが0 . 40〜0 . 55であり,0 . 2%耐力が300N/mm 2 以下である軟質オーステナイト系ステンレス鋼からなるステンレス鋼製ダクト管
    Md30=551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−29(Ni+Cu)−13.7Cr−18.5Mo・・・・(1)
    SFE=2.2Ni+6Cu−1.1Cr−13Si−1.2Mn+32 ・・・・(2)
  4. 軟質ステンレス鋼が更にTi:0.5質量%以下,Nb:0.5質量%以下,Zr:0.5質量%以下,V:0.5質量%以下,Mo:3.0質量%以下,B:0.03質量%以下,REM(希土類金属):0.02質量%以下,Ca:0.03質量%以下の1種又は2種以上を含む請求項3に記載のステンレス鋼ダクト管。
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