JP4752572B2 - ベローズ素管用フェライト系ステンレス鋼板およびベローズ素管 - Google Patents

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Description

本発明は、ベローズ素管に用いられるフェライト系ステンレス鋼板に関し、特に、加工性に優れると共に高温疲労特性や高温塩害腐食特性に優れるベローズ素管用フェライト系ステンレス鋼板およびその鋼板を用いて製造されたベローズ素管に関するものである。
液体や気体或いは粉体等を取り扱う機械装置では、それらの輸送を、金属配管を介して行うことが一般的に行われている。そして、その配管の途中には、機械装置の振動や配管の熱膨張による歪や応力を吸収し、それらの影響を緩和するために、平行波型の壁をもつ蛇腹状の金属製の管であるベローズ(フレキシブルチューブとも称される)が設置されているのが普通である。
従来、ベローズに用いられる素材としては、銅やSUS304などに代表されるFCC金属やオーステナイト系ステンレス鋼板などが主に用いられてきた。その理由は、ベローズに加工することが、他の金属材料では困難であったためである。即ち、銅やオーステナイト系ステンレス鋼板は、常温付近での伸びやn値が他の金属材料に比べて大きく、そのため、伸び特性が要求されるバルジ成形に適しているからである。
しかし、オーステナイト系ステンレス鋼板は、ベローズへの加工は容易であるが、ベローズ内部を通過する気体や液体等が腐食性が強い場合や高温である場合には、酸化や高温腐食あるいは応力腐食割れが発生しやすいという問題があった。特に、自動車排気管のつなぎ部分に用いられているオーステナイト系ステンレス鋼板製のベローズは、使用中の温度が500〜750℃程度にまで上昇するため、融雪のため道路に散布される塩類が付着した場合には、素材自身が鋭敏化して、高温塩害腐食を起こしやすいという問題もあった。
このような背景から、各種のベローズ素管用フェライト系ステンレス鋼板が発明されている。例えば、特許文献1には、C,Si,Mn,S,Cr,Al,Ti,N,O量を特定の範囲に規定することにより、35%以上の伸びと1.5以上のr値を達成したベローズ加工性に優れたフェライト系ステンレス鋼板が、特許文献2には、C,Cr,Al,N,Si,Mn,Ti,Nb,Mo,Cu,Ni量を特定の範囲に規定し、さらに、結晶粒径を最適な範囲に限定することにより、ベローズ加工性に優れたフェライト系ステンレス鋼板が開示されている。また、特許文献3には、C,Cr,Al,N,Si,Mn,Ti,Nb,Mo,Cu,Ni量を特定の範囲に規定することにより、ベローズ加工性と高温疲労特性に優れたフェライト系ステンレス鋼板が、特許文献4には、C,Cr,N,Ti,Mo量を特定の範囲に規定するとともに、素材の表面粗さを最適な範囲に限定することによりベローズ加工性と高温塩害腐食性に優れたフェライト系ステンレス鋼板が開示されている。
特開平7−268560号公報 特開平8−176750号公報 特開平8−188854号公報 特開平9−125208号公報
しかしながら、上記技術によっても、フェライト系ステンレス鋼板を素材とした素管のベローズ加工性は、オーステナイト系ステンレス鋼板からなる素管に比べるとまだまだ不十分であり、厳しい形状にも適用可能なベローズ素管用フェライト系ステンレス鋼板は提供されていないのが実情である。さらに、自動車の燃費向上の観点から、自動車排気系部材等に要求される高温特性(高温塩害腐食性、高温疲労特性)は、ますます過酷化する傾向にあり、これらの特性を満足しつつ優れた加工性を有するベローズ素管用フェライト系ステンレス鋼板の開発が強く望まれている。
本発明の目的は、優れた加工性と優れた高温特性(耐高温塩害腐食と高温疲労特性)とを両立させたベローズ素管用フェライト系ステンレス鋼板とその鋼板を用いて製造されたベローズ素管を提供することにある。
発明者らは、上記目的を達成するために、素管の素材となるフェライト系ステンレス鋼板の成分組成と鋼板が有する諸特性に着目して鋭意検討を重ねた。その結果、ベローズ素管の加工性は、素材となるフェライト系ステンレス鋼板に微量のBを添加した上で、鋼板の表面粗さを適正範囲に制御することにより向上すること、一方、高温塩害腐食性と高温疲労特性の高温特性は、適正量のNbとMoを複合添加することにより向上することを知見し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、C:0.015mass%以下、Si:1.0mass%以下、Mn:1.0mass%以下、P:0.04mass%以下、S:0.010mass%以下、Cr:11〜19mass%、N:0.015mass%以下、Al:0.15mass%以下、Mo:1.25〜2.5mass%、Nb:0.3〜0.7mass%、B:0.0003〜0.003mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、表面粗さRaが0.4μm以下であることを特徴とするベローズ素管用フェライト系ステンレス鋼板である。
また、本発明は、上記フェライト系ステンレス鋼板を用いて製造されたことを特徴とするベローズ素管である。
また、本発明の上記ベローズ素管は、板厚が0.5mm以下であり、外径が28〜80mmφの1重もしくは2重のものであることを特徴とする。
本発明のフェライト系ステンレス鋼板は、均一伸びが高く、高温塩害腐食特性や高温疲労特性等に優れる特性を有する。そのため、本発明のフェライト系ステンレス鋼板を素材としたベローズ素管は、加工性と高温特性に優れるので自動車排気系に用いるベローズ素管に好適に用いることができる。
ベローズは、パイプ状の素管を、液圧バルジ成形して製造するのが一般的である。従って、素管の素材に要求される特性としては、伸び特性、特に、均一伸び(一様伸び)特性が重要であると考えられる。何故ならば、一箇所でも不均一変形が起こると、局部的に液圧が上昇して割れの起点となるほか、例え、割れに至らなくても、ベローズとしての寿命が著しく低下するからである。発明者らは、種々のフェライト系ステンレス鋼板について、液圧バルジ成形によるベローズ成形試験と、JIS13号B試験片を用いた引張試験を行い、ベローズ成形可能な最大山高さと引張試験における均一伸びとの関係を調査した。その結果では、両特性の間には、明瞭な関係が認められなかった。
そこで、引張試験片の形状を種々に変化させて均一伸びを測定し、これと成形可能な最大山高さとの関係を調べた。その結果、平行部の幅が150mm、平行部の長さが25mmの特殊な形状の引張試験片を用いて測定した均一伸びとベローズ成形可能な最大山高さとの間に、相関があることを見出した。これは、広い加工領域において、一箇所でも不均一変形が生ずれば、割れを起こすベローズの加工と相通ずるものであり、均一伸びの測定方法を工夫することでベローズ加工性を評価できることを示すものである。
そこで、発明者らは、フェライト系ステンレス鋼板の均一伸びに及ぼす各種添加元素および鋼板諸特性の影響について調査した。そのうち、均一伸びの改善効果が認められたB添加および鋼板表面粗さに関する実験について説明する。
<実験1>
C:0.008mass%−Si:0.41mass%−Mn:0.31mass%−P:0.03mass%−S:0.003mass%−Cr:14.5mass%−Al:0.03mass%−N:0.01mass%−Nb:0.47mass%−Mo:1.35mass%の基本成分組成を有し、B含有量を0.0001〜0.0040mass%の範囲で変化させた鋼を実験室的に溶製し、鋼塊とした後、この鋼塊を1170℃×1時間の加熱後、熱間圧延して板厚3.5mmの熱延板とし、その後、1070℃×30秒の焼鈍後、冷間圧延して板厚0.4mmの冷延板とした。この冷延板に1030℃×30秒の焼鈍を施して冷延焼鈍板とした後、この冷延焼鈍板から、上述した特殊な形状の引張試験片(平行部幅:150mm、平行部長さ:25mm)を圧延方向に平行に採取し、引張試験に供して均一伸びを測定した。
図1は、上記引張試験の均一伸びに及ぼすB含有量の影響を示したものである。図1から、Bを0.0003mass%以上含有させることにより高い均一伸びが得られる、即ち、ベローズ加工性が向上する、しかし、Bを0.0030mass%超え含有させた場合には、逆に、均一伸びが低下することがわかる。上記Bの効果の原因は、十分に明らかとはなっていないが、Bは、粒界に偏析し、粒界強度を高める元素であることから、Bを0.0003mass%以上添加した場合には、変形時における粒界での微小なクラックの生成を抑制するためと考えられる。また、Bを0.0030mass%超え添加した場合の均一伸びの低下は、過剰なBの添加により、多量のB化物が粒界に析出し、このB化物とマトリックスとの界面に微小なクラックが生成し、均一伸びの低下をもたらすためと考えられる。
<実験2>
実験1で製造したB含有量が8massppmの冷延焼鈍板の表面粗さを、冷間圧延ロールの表面粗度を変えることにより、算術平均粗さRaで0.1〜1.08μmの範囲で変化させた。そして、これらの冷延焼鈍板から、実験1と同じ特殊な引張試験片(平行部幅:150mm、平行部長さ:25mm)を圧延方向に平行に採取し、引張試験に供して均一伸びを測定した。
上記測定の結果を図2に示す。この図2の結果から、鋼板表面粗さが算術平均粗さRaで0.4μm以下であれば、ベローズ加工性の指標である均一伸びが増大することがわかる。この理由は、Raが0.4μmを超えて粗い場合には、表面の凹凸が引張試験における割れの起点となるため、均一伸びの低下を招くためであると考えられる。
次に、フェライト系ステンレス鋼板の高温特性(高温塩害腐食特性,高温疲労特性)を改善するために、各種添加元素の影響を調査した。そのうち、効果の認められた実験について説明する。
<実験3>
C:0.01mass%−Si:0.31mass%−Mn:0.34mass%−P:0.03mass%−S:0.005mass%−Cr:16mass%−Al:0.018mass%−N:0.01mass%−Mo:1.45mass%−B:0.0006mass%の基本成分組成を有し、Nb含有量を0.19〜0.74mass%の範囲で変化させた鋼を実験室的に溶製して鋼塊とした後、この鋼塊を1170℃×1時間の加熱後、熱間圧延して板厚3.5mmの熱延板とし、1070℃×30秒の焼鈍後、冷間圧延して板厚0.4mmの冷延板とした。この冷延板に1030℃×30秒の焼鈍を施して冷延焼鈍板とし、下記の高温塩害腐食試験と高温疲労試験に供した。
[高温塩害腐食試験]
冷延焼鈍板の試験片表面および端面を400番のエメリー紙で研磨した後、常温の飽和食塩水(26%NaCl水溶液)中に5分間浸漬し、大気中で750℃×2時間加熱後、室温まで冷却する工程を1サイクルとする腐食試験を25サイクル実施し、試験片表面に生成した腐食生成物をクエン酸アンモニウム水溶液で除去した後、板厚の減少量(腐食深さ)を測定して、耐高温塩害腐食性を評価した。
[高温疲労試験]
シェンク式の高温疲労試験機を用いて、750℃、22Hzの条件で、試験片に掛ける曲げ応力を種々変化させて両振高温疲労試験を行った。そして、100万回の曲げでも破断しない曲げ応力を疲労限として求めた。
<実験4>
C:0.01mass%−Si:0.31mass%−Mn:0.34mass%−P:0.03mass%−S:0.005mass%−Cr:16mass%−Al:0.018mass%−N:0.01mass%−Nb:0.47mass%−B:0.0006mass%の基本成分組成を有し、Mo含有量を0.65〜2.41mass%の範囲で変化させた鋼を実験室的に溶製して鋼塊とした後、実験2と同条件で、板厚0.4mmの冷延焼鈍板とし、高温塩害腐食試験と高温疲労試験に供した。
図3は、高温塩害腐食特性と高温疲労特性に及ぼすNb含有量の影響を示したものである。この図3から、Nbを0.3mass%以上含有させることにより、耐高温塩害腐食性と高温疲労特性に優れる鋼板が得られることがわかる。また、図4は、高温塩害腐食特性と高温疲労特性に及ぼすMo含有量の影響を示したものであるが、Moを1.25mass%以上含有させることにより、耐高温塩害腐食性と高温疲労特性に優れる鋼板が得られることがわかる。
本発明は、上記実験1〜4の結果に基き、開発されたものである。
次に、本発明に係るフェライト系ステンレス鋼板について説明する。
鋼板表面粗さRa:0.4μm以下
先述した実験2の結果から明らかなように、本発明のフェライト系ステンレス鋼板の表面粗さは、算術平均粗さRaで0.4μm以下に制御する必要がある。表面粗さRaを0.4μm以下とすることにより、表面の凹凸に起因する割れの発生を抑制して均一伸びを増大させ、ひいては、ベローズ加工性を改善することができる。鋼板の表面粗さをRa:0.4μm以下に調整する方法は、冷間圧延のワークロールの表面粗さを制御する方法、仕上焼鈍後、調質圧延を行い調整する方法等、いずれの方法を用いてもよい。なお、上記Raは、JIS
B 0601に準拠した方法で測定した算術平均粗さの値である。
次に、本発明のフェライト系ステンレス鋼板の成分組成について説明する。
C:0.015mass%以下
Cは、鋼板の延性や靭性を低下させる元素であり、特に、本発明の主眼とするベローズ加工性にも悪影響を及ぼすため、極力低減することが好ましく、Cの上限は0.015mass%とする。なお、本発明においては、C含有量が極微量であっても何ら悪影響を及ぼさないので、下限を規定する必要はない。
Si:1.0mass%以下
Siは、耐酸化性や耐高温塩害腐食性の改善に有効な元素であるが、鋼を硬質化し、延性の低下を招く元素でもある。特に、Siを1.0mass%超え添加すると、本発明の主眼であるベローズ加工性が顕著に低下し始めるので、Siの上限は1.0mass%とする。Siの下限は、特に限定しないが、耐酸化性や耐高温塩害腐食性を確保する観点からは、0.2mass%以上含有することが好ましい。
Mn:1.0mass%以下
Mnは、Nb添加フェライト系ステンレス鋼における溶接凝固割れ感受性を低下させる有効な元素である。しかし、Mnは、オーステナイト安定化元素であるため、多量の添加は、高温でのフェライト相の安定性を低下させ、場合によってはオーステナイト相が生成して耐酸化性の低下を招く。また、Mnは、固溶硬化により鋼を硬質化し、特に、1.0mass%を超えると、加工性の低下が顕著となるので、上限を1.0mass%とする。なお、Mnの下限は、特に設けないが、溶接凝固割れ感受性を低く抑える観点からは、0.3mass%以上含有することが好ましい。
P:0.04mass%以下
Pは、靭性と延性を低下させる元素である。特に、0.04mass%を超えて含有すると、靭性・延性の低下が顕著となるため、上限は0.04mass%とする。なお、Pの含有量は、低くても本発明の効果に悪影響を及ぼさないので、下限を限定する必要はない。
S:0.010mass%以下
Sは、耐食性・耐酸化性を低下させる元素である。特に、0.010mass%を超えると耐食性・耐酸化性の低下が著しくなるため、上限は0.010mass%とする。なお、Sの含有量は、低くても本発明の効果に悪影響を及ぼさないので、下限を限定する必要はない。
Cr:11〜19mass%
Crは、フェライト系ステンレス鋼板を構成する主要合金元素であり、耐食性・耐酸化性を向上させるために必須の元素である。その効果を得るためには、Crは11mass%以上添加する必要がある。一方、多量のCrの添加は、鋼の硬質化を招くばかりでなく、本発明の主眼であるベローズ加工性を低下させるので、Crの上限は19mass%とする。好ましくは、13〜19mass%の範囲である。
N:0.015mass%以下
Nは、靭性や延性を低下させる元素であり、その含有量は極力低減することが好ましい。特に、本発明の主眼であるベローズ加工性にも悪影響を及ぼすため、Nは0.015mass%以下に制限する。なお、N量は少なくても、ベローズとしての特性に何ら悪影響を及ぼさないので、下限値は限定しない。
Al:0.15mass%以下
Alは、強力な脱酸元素であり、精錬時の鋼中酸素低減のために添加される。また、耐酸化性の向上にも有効な元素である。しかし、Alは、過剰に添加すると、靭性・延性の低下を招き、特に、0.15mass%を超えるとその傾向が顕著となるため、0.15mass%以下に制限する。なお、下限は特に限定しないが、精錬時の脱酸を完全に行うためには、0.003mass%以上添加することが好ましい。
Nb:0.3〜0.7mass%、Mo:1.25〜2.5mass%
MoおよびNbは、高温特性を向上する元素であり、本発明においては重要な添加元素である。Nbは、上述した実験2から明らかなように、0.3mass%以上含有させることにより、耐高温塩害腐食性と高温疲労特性を改善する効果がある。しかし、Nb含有量が0.7mass%を超えると、靭性や延性の低下が顕著になる。よって、Nb含有量は、0.3〜0.7mass%の範囲とする。また、Moは、上述した実験3から明らかなように、1.25mass%以上含有させることにより、耐高温塩害腐食性と高温疲労特性を改善する効果がある。しかし、Moを2.5mass%超え含有させた場合には、延性や靭性の低下を招く。よって、Moの含有量は、1.25〜2.5mass%の範囲とする。
B:0.0003〜0.003mass%
Bは、ベローズ加工性の向上をもたらす重要な元素であり、本発明においては必須の元素である。上述した実験1の結果(図1)から明らかなように、Bを0.0003mass%以上含有させることにより均一伸びが向上し、優れたベローズ加工性が得られる。一方、Bは、0.0030mass%を超えて含有させた場合には、逆に、均一伸びの低下を招く。そのため、本発明においては、Bの含有量は、0.0003〜0.0030mass%の範囲とする。
なお、本発明のフェライト系ステンレス鋼板は、上記必須成分以外に、要求特性に応じて、下記の成分を添加することができる。
Cu:0.1〜0.6mass%、Ni:0.1〜0.6mass%およびCo:0.03〜0.6mass%のうちから選ばれる1種または2種以上
Cu,NiおよびCoは、靭性および耐食性の改善に有効な元素である。それらの効果を得るためには、Cu:0.1mass%以上、Ni:0.1mass%以上およびCo:0.03mass%以上のうちから選ばれる1種または2種以上を添加することが好ましい。しかし、過剰な添加は、鋼を硬質化するので、それぞれの上限は、Cu:0.6mass%、Ni:0.6mass%、Co:0.6mass%とすることが好ましい。
V:0.04〜1.0mass%、W:0.04〜5.0mass%、Ta:0.04〜1.0mass%およびTi:0.02〜1.0mass%のうちから選ばれる1種または2種以上
本発明のフェライト系ステンレス鋼板のように、Nbを多量に添加する鋼板では、V,W,TaおよびTiのうちから選ばれる1種または2種以上を添加することにより、生成する炭窒化物が微細に分散して結晶粒を微細化し、靭性を向上することができる。また、溶接時にCやNのコンタミがある場合には、これをV等の炭窒化物として固定し、Cr炭窒化物の生成を抑制することにより、Cr欠乏層の形成を防止できるので、溶接部の耐食性向上にも寄与する。これらの効果を得るには、Vは0.04mass%以上、Wは0.04mass%以上、Taは0.04mass%以上、Tiは0.02mass%以上添加することが好ましい。しかし、過度に多量の添加は、鋼板自身の靭性を低下させて製造性を低下させるので、それぞれ上限をV:1.0mass%、W:5.0mass%、Ta:1.0mass%およびTi:1.0mass%とすることが好ましい。
なお、本発明のフェライト系ステンレス鋼板は、板厚が0.5mm以下のものであることが好ましい。前述したように、ベローズは平行波型の蛇腹状に成形されており、熱膨張や振動による変位を吸収する機能を有するものである。上記変位は、ベローズに、曲げとして負荷されるが、このとき、板厚が大きいと材料の歪は大きくなる。そして、材料の弾性限界を超えた歪は塑性歪となり、ベローズ管の疲労破壊を引き起こす原因となる。したがって、疲労破壊を防止する観点からは、板厚は薄いほど好ましい。本発明では、素材となるステンレス鋼板の製造性や製造コストを考慮し、実質的に問題を生じない範囲として、板厚を0.5mm以下とすることが好ましい。
また、本発明のフェライト系ステンレス鋼板を素材とするベローズ素管は、外径が28〜80mmφの1重もしくは2重のものであることが好ましい。というのは、ベローズが吸収できる弾性限界範囲内の変位量は、その山高さによって決まるが、同じ山高さでも、素管外径が細いほど、山部の拡管率が大きくなり成形は困難となる。つまり、素管外径が細い場合には、成形可能な山高さは小さくなる。したがって、自動車排気系ベローズ用途において、所定の変位量を吸収できるようにするためには、その素管外径は28mmφ以上とすることが好ましい。一方、素管外径が大きく、薄肉の場合には、ベローズ自身の剛性不足のため、つぶれや座屈を生じやすく、実質的に使用が困難となる。そのため、素管外径は80mmφ以下とすることが好ましい。
なお、設計する上で、ベローズ管の剛性が必要な場合には、肉厚を大きくすることが考えられるが、上述したように、肉厚の増大は疲労破壊の要因となるため好ましくない。これを避けるためには、薄肉のものを重ねて多重管とすることで、剛性や強度を確保することができる。具体的には、2重管とすることが好ましく、3重管以上にすると製造性や製造コストの点で好ましくない。また、肉厚が同じであれば、2重管にした方が、剛性が低下し、柔軟性が増すため、疲労強度も向上するという効果もある。さらに、使用環境によっては、ベローズの内面と外面とで要求特性が異なる場合があり、その場合には、それぞれの要求に合わせた素材を用いた2重管とすることが好ましい。
表1に示す成分組成を有する各種鋼を高周波真空溶解炉で溶製して50kgの鋼塊とした後、1170℃で1時間加熱後、圧延終了温度を800℃とする熱間圧延を行い、板厚3.5mmの熱延板とした。その後、この熱延板に1040℃×30秒の焼鈍を施した後、鋼板表面に生成した酸化スケールを酸洗して除去し、冷間圧延して板厚0.4mmの冷延板とし、脱脂した後、1030℃×30秒の焼鈍を行って冷延焼鈍板とした。この際、鋼板の表面粗さを、冷間圧延時のワークロールの粗度を変えることにより変化させた。この冷延焼鈍板から、先述した特殊形状の引張試験片(平行部幅:150mm、平行部長さ:25mm)を採取して引張試験を行い、均一伸びを測定した。さらに、先述した高温塩害腐食試験および高温疲労試験にも供して、それぞれの特性を評価した。また、鋼板の表面粗さは、JIS B0651に準拠した触針式表面粗さ測定器を用いて、JIS B0601に準拠し、鋼板の圧延方向に直角方向の算術平均粗さRaを測定した。
Figure 0004752572
Figure 0004752572
Figure 0004752572
本発明フェライト系ステンレス鋼板は、熱交換器や燃料電池の分野をはじめとした高温特性が要求される用途、分野にも用いることができる。
B含有量が、均一伸びに及ぼす影響を示すグラフである。 鋼板表面粗さRaが、均一伸びに及ぼす影響を示すグラフである。 Nb含有量が、高温塩害腐食深さおよび高温疲労限に及ぼす影響を示すグラフである。 Mo含有量が、高温塩害腐食深さおよび高温疲労限に及ぼす影響を示すグラフである。

Claims (3)

  1. C:0.015mass%以下、Si:1.0mass%以下、Mn:1.0mass%以下、P:0.04mass%以下、S:0.010mass%以下、Cr:11〜19mass%、N:0.015mass%以下、Al:0.15mass%以下、Mo:1.25〜2.5mass%、Nb:0.3〜0.7mass%、B:0.0003〜0.003mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、表面粗さRaが0.4μm以下であることを特徴とするベローズ素管用フェライト系ステンレス鋼板。
  2. 請求項1に記載のフェライト系ステンレス鋼板を用いて製造されたことを特徴とするベローズ素管。
  3. 板厚が0.5mm以下であり、外径が28〜80mmφの1重もしくは2重のものであることを特徴とする請求項2に記載のベローズ素管。
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