JP5042553B2 - 耐すきま腐食性、成形性に優れたフェライト系ステンレス鋼 - Google Patents
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(1)質量%で、C:0.001〜 0.02%、N:0.001〜0.02%、Si:0.01〜1%、Mn:0.05〜1%、P:0.04%以下、S:0.01%以下、Ni:0.15〜3%、Cr:11〜22%、Mo:0.5〜3%、
Ti:0.01〜0.5%、Nb:0.08%未満、Al:0.1%を超え1%以下を含み、かつ、Cr、Ni、Mo、Alを下記(A)式および(B)式を満たす範囲で含み、残部がFeおよび不可避不純物からなることを特徴とする耐すきま腐食性、成形性に優れたフェライト系ステンレス鋼。
Al/Nb≧10 ・・・(B)
(2)Cu:0.1~1.5%、V:0.02〜3.0%の1種または2種を下記(A)´式を満たす範囲で含むことを特徴とする請求項1に記載の耐すきま腐食性、成形性に優れたフェライト系ステンレス鋼。
(3)Ca:0.0002〜0.002%、Mg:0.0002〜0.002%、B:0.0002〜0.005%のいずれかを1種または2種以上含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の耐すきま腐食性、成形性に優れたフェライト系ステンレス鋼。
C: 耐粒界腐食性、加工性を低下させるため、その含有量を低く抑える必要がある。しかしながら、過度に低めることは精練コストを上昇させるため、0.001〜0.02%とした。
N:耐孔食性に有用な元素であるが、耐粒界腐食性、加工性を低下させるため、その含有量を低く抑える必要がある。しかしながら、過度に低めることは精練コストを上昇させるため、0.001〜0.02%とした。
Si: 脱酸元素として有用であると共に、耐食性に有効な元素であるが、加工性を低下させるため、その含有量を0.01〜1%とした。望ましくは0.03〜0.3%である。
Mn:脱酸元素として有用であるが、過剰に含有させると耐食性を劣化させるので、0.05〜1%とした。望ましくは0.05〜0.5%である。
P: 溶接性、加工性を低下させるので、その含有量を低く抑える必要がある。しかし、過度に低めることは、原料コスト、精練コストを高める。そのため、Pの含有量は0.001〜0.04%が好ましい。
S: Sは、CaS、MnSといった溶解しやすい硫化物として存在すると、孔食あるいはすきま腐食の起点となりうる。そのため、0.01%以下とした。
Cr: 耐すきま腐食性を確保する上で基本となる元素であり、少なくとも11%以上必要である。含有量を増加させるほど耐すきま腐食性は向上するが、本発明で特に必要としている耐孔あき性において、すきま腐食発生後の進展速度を低減させる効果が大きくない。また、加工性、製造性を低下させるため、上限を22%とした。
望ましくは15〜22%である。
Ni:すきま部の耐孔あき性(耐すきま腐食性)において、すきま腐食発生後の進展速度を低減させるうえで、最も効果的な元素である。その効果を発現させるには少なくとも0.15%必要である。特にMoと複合させるとさらにその効果が高まる。含有量を増加させるほどその効果は高まるが、過剰に含有させると、応力腐食割れの感受性が増加すると共に、成形性を低下させる。また、コストアップ要因にもなるので上限を3%とした。望ましくは0.4〜3%である。
Mo:Moは特にすきま腐食の発生に対して効果的であること、Niとの組み合わせにより、すきま腐食発生後の進展速度抑制効果がより大きくなることで、すきま部の耐孔あき性(耐すきま腐食性)を向上させることができる。そのため、0.5%以上含有させることが必要となる。しかしながら、過剰の添加は、加工性を劣化させると共に、高価であるためコストアップにつながる。したがって、0.5〜3%とした。望ましくは0.5〜2.5%である。
Ti:C、Nを固定し、溶接部の耐粒界腐食性、加工性を向上させる上で有用な元素であり、少なくとも0.01%以上必要である。ここで、Tiは(C+N)の和の4倍以上含有させることが望ましい。しかしながら過剰の添加は、製造時の表面疵の原因となり、製造性を劣化させるため、上限を0.5%とした。望ましくは0.03〜0.3%である。
Nb:通常はC、Nを固定する元素としてTiと同様に扱われることが多い。本発明においては多量の添加は成形性並びに耐リシ゛ンク゛性を劣化させる。また後述のごとくAl/Nbの比を規定することが極めて重要であり、多量のNbを添加することはAl添加量の増加を招くため、上限を0.08%とした。原料コストの大幅な増加をもたらさずに製造するためには0.01%以下とすることが望ましい。なお、通常の量産製造工程においては、不可避不純物として0.001〜0.005%程度含まれることが多い。
Al:Alは脱酸効果等精練上有用な元素であることは知られており、数十ppm程度含有させることがある。本発明においては、さらにAl添加量を増加させたときに冷延鋼板の成形性が顕著に向上し、0.1%を超えて含有させた場合にその効果が認められた。しかしがながら過剰の添加は、逆に成形性を低下させるとともに、靭性を低下させるとので1%以下とした。望ましくは0.1%を超え0.5%以下である。Al添加による成形性向上効果のメカニズムは明確ではないが、Alはフェライト生成元素であるため、高温でのオーステナイト相の生成を抑制し、その結果、成形性に有利なフェライト相の集合組織を形成するためと考えられる。
Al/Nb:本発明者によってはじめて明らかになった指標であり、この値が10以上である場合に良好な成形性ならびに耐リジング性が得られる。この値はNb無添加の場合に極めて大きくなるので、上限は特に規定しない。Al/Nbを制御することで成形性ならびに耐リジング性が良好となる原因については明確ではないが、NbとAlの固溶強化力、炭窒化物生成能、再結晶速度への影響などの差が関与していると考えられる。
Cu:耐すきま腐食性を確保する上で、必要に応じて含有させることができる。Cuは、Niとの組み合わせにより、すきま腐食発生後の進展速度抑制効果がより大きくなることで、すきま部の耐孔あき性(耐すきま腐食性)を向上させることができる。そのため、含有させる場合には0.1%以上含有させることが望ましい。しかしながら、過剰の添加は、加工性を劣化させると共に、高価であるためコストアップにつながる。したがって、含有させる場合には0.1〜1.5%とするのが望ましい。
V: 耐すきま腐食性をさらに向上させる目的で、必要に応じて含有させることができる。Vは、Moと同様特にすきま腐食の発生に対して効果的であるが、過剰の添加はコストアップ要因となるので、0.02〜3.0%とした。
Ca:Caは、Alと同様脱酸効果等精練上有用な元素であり、必要に応じて0.0002〜0.002%の範囲で含有させることが望ましい。
Mg:Al、Caと同様脱酸効果等精練上有用な元素であり、また、組織を微細化し、加工性、靭性の向上にも有用であることから、必要に応じてMg:0.0002〜0.002%の範囲で含有させることが望ましい。
B:Bは2次加工性を向上させるのに有用な元素であり、必要に応じて含有させることができる。しかしながら過剰に含有させると、1次加工性を低下させるので、0.0002〜0.005%とした。
冷延鋼板より、幅60mm、長さ130mmと幅30mm、長さ60mmの試験片を切り出した後、エメリー紙にて#320まで湿式研磨を施した。その後、図1に示すような形状にスポット溶接を施し、幅60mm、長さ130mmの端面と裏面をシールテープにより被覆した。
この試験片を用いて、図2に示す条件にて乾湿繰り返し試験を行った。 180サイクル完了後、大小試験片を分離した。その後、腐食生成物を除去して、スポット溶接隙間部の侵食深さを光学顕微鏡焦点深度法により測定した。なお、ここに定めた試験条件以外については、自動車技術者協会規格の自動車用材料腐食試験方法であるJASO M609-91に規定される条件に準じた。10点以上測定した侵食深さの中から最大値を求め、その最大値が800μmを下回るものを○、800μm以下を超えるものを×とした。本発明で対象としているステンレス鋼の板厚は0.8〜2.0mmが主体であり、最も薄い板厚を基準とした。
成形性については円筒深絞り試験で評価した。成形条件は、ポンチ径:Φ50mm、ポンチ肩R:5mm、ダイス肩R:5mm、ブランク径:Φ100mm、しわ押さえ力:1トン、摩擦係数:0.11〜0.13とした。なお、この摩擦係数は、40℃で動粘度1200mm2/secの潤滑油を鋼板の表裏面に塗布することで得られるレベルである。上記条件で成形限界絞り比:2.20の深絞り成形ができるかどうかをもって成形性を評価した。すなわち成形できれば○、途中で成形割れが生じた場合は×とした。
耐リジング性については、冷延鋼板より圧延方向と平行方向に引張試験片を採取し、15%引張後に圧延方向と垂直方向の表面凹凸(うねり)を2次元粗度計にて測定した。凹凸の最大高さを持ってリジング高さと定義した。リジング高さが15μm未満である場合には○とし、15μm以上である場合は×とした。
これらの試験結果を表2に示す。
Claims (3)
- 質量%で、
C:0.001〜 0.02%、
N:0.001〜0.02%、
Si:0.01〜1%、
Mn:0.05〜1%、
P:0.04%以下、
S:0.01%以下、
Ni:0.15〜3%、
Cr:11〜22%、
Mo:0.5〜3%、
Ti:0.01〜0.5%、
Nb:0.08%未満、
Al:0.1%を超え1%以下を含み、かつ、
Cr、Ni、Mo、Alを下記(A)式および(B)式を満たす範囲で含み、残部がFeおよび不可避不純物からなることを特徴とする耐すきま腐食性、成形性に優れたフェライト系ステンレス鋼。
Cr+3Mo+6Ni≧23 ・・・(A)
Al/Nb≧10 ・・・(B) - Cu:0.1~1.5%、V:0.02〜3.0%の1種または2種を下記(A)´式を満たす範囲で含むことを特徴とする請求項1に記載の耐すきま腐食性、成形性に優れたフェライト系ステンレス鋼。
Cr+3Mo+6(Ni+Cu+V)≧23 ・・・(A)´ - Ca:0.0002〜0.002%、Mg:0.0002〜0.002%、B:0.0002〜0.005%のいずれかを1種または2種以上含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の耐すきま腐食性、成形性に優れたフェライト系ステンレス鋼。
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