JP2007009275A - ニッケル粒子の製造方法及びその製造方法により得られたニッケル粒子並びにそのニッケル粒子を用いた導電性ペースト - Google Patents

ニッケル粒子の製造方法及びその製造方法により得られたニッケル粒子並びにそのニッケル粒子を用いた導電性ペースト Download PDF

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Abstract

【課題】微粒であり、粒度分布がシャープなニッケル粒子を提供すること、及び該ニッケル粒子を用いた導電性ペーストを提供すること。
【解決手段】上記課題を達成する事の出来るニッケル粒子を得るため、ニッケル塩及びポリオールを含む反応液を還元温度まで加熱して、該反応液中のニッケル塩を還元するニッケル粒子の製造方法であって、前記反応液を昇温加熱し前記還元温度に達する前の段階で、該反応液中にカルボキシル基及び/又はアミノ基を含むカルボン酸類又はアミン類、貴金属触媒を含有させることを特徴とするニッケル粒子の製造方法を採用する。そして、この製造方法を用いると、画像解析平均粒径が1nm〜300nmのニッケル粒子を得ることができる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ニッケル粒子及びその製造方法並びに導電性ペーストに関し、詳しくは、例えば、積層セラミックコンデンサの内部電極の形成に用いられるニッケルペーストの原料として用いられるニッケル粒子及びその製造方法、並びに、該ニッケル粒子を用いた導電性ペーストに関するものである。
ニッケル粒子は種々の用途に用いられており、例えば、これを含む導電性ペーストとして種々の電極や回路を形成する用途に用いられている。具体的には、積層セラミックコンデンサ(Multi−layer Ceramic Capacitor:以下、「MLCC」と称する。)の内部電極として一般的に用いられている。この内部電極は、ニッケル粒子を含む導電性ペーストをセラミック誘電体等に塗布し、焼成して得られるものである。
上記ニッケル粒子の製造方法としては、例えば、特許文献1(特開昭59−173206号公報)に、ニッケル等の水酸化物等の固体化合物を反応温度において液状のポリオール又はポリオール混合物に懸濁させた懸濁体を、少なくとも85℃の温度に加熱することにより、上記固体化合物をポリオールにより還元し、生成した金属析出物を単離する還元方法が開示されている。該方法によれば、簡単で経済的にニッケル粒子を得ることができる。
特開昭59−173206号公報
しかしながら、近年、MLCCの小型、大容量化の要請より、内部電極の薄型化及び電極表面の平滑化が求められており、このため、ニッケル粒子にも微粒であること、及びニッケル粒子同士の凝集が少なく、粒度分布がシャープであることが求められている。これに対し、上記特許文献1に記載の方法で、より微粒のニッケル粒子を製造しようとすると、還元析出時のニッケル粒子同士が凝集し易くなり、粗粒の発生が顕著になるという問題があった。
従って、本発明の目的は、粗粒が少ない微粒のニッケル粒子を提供すること、及び該ニッケル粒子を用いた導電性ペーストを提供することにある。
そこで、本発明者等は鋭意研究を行った結果、以下に説明する手段を採用することで、上記目的を達成出来ることに想到した。以下、本件発明を概説する。
ニッケル粒子の製造方法: 本件発明に係るニッケル粒子の製造方法は、ニッケル塩及びポリオールを含む反応液を還元温度まで加熱して、該反応液中のニッケル塩を還元するニッケル粒子の製造方法であって、前記反応液を昇温加熱し前記還元温度に達する前の段階で、該反応液中にカルボキシル基及び/又はアミノ基を含むカルボン酸類又はアミン類、貴金属触媒を含有させることを特徴とするものである。
そして、本件発明に係るニッケル粒子の製造方法で用いる前記反応液は、ニッケル100重量部に対して、カルボキシル基及び/又はアミノ基を含むカルボン酸類又はアミン類から選ばれた1種又は2種以上を0.1重量部〜30重量部含むことが好ましい。
そして、前記反応液は、ニッケル100重量部に対して、貴金属触媒を0.001重量部〜1重量部含ませることが好ましい。
本件発明に係るニッケル粒子の製造方法で用いる前記貴金属触媒は、白金、金、パラジウム、銀、銅から選ばれた1種又は2種以上であることが好ましい。
そして、前記反応液は、ニッケル100重量部に対して、分散剤を0.01重量部〜30重量部含むものとすることが好ましい。
本件発明に係るニッケル粒子: 本件発明に係るニッケル粒子は、上記の製造方法で得られたものであり、画像解析平均粒径が1nm〜300nmの微粒子であることを特徴とする。
導電性ペースト: 上記本件発明に係るニッケル粒子は、微粒且つ粒子分散性に優れたものである。従って、この本件発明に係るニッケル粒子を用いることで、高品質の導電性ペーストを得ることができる。
本発明に係るニッケル粒子の製造方法は、微粒且つ粗粒の少ないニッケル粒子の効率の良い製造が可能である。しかも、工程の安定性に優れるため、工業的生産プロセスとして好適である。
そして、この製造方法で得られたニッケル粒子は、微粒且つ粗粒の無いものであり、粒度分布が、従来の微粒ニッケル粒子と比べてシャープである。
従って、本件発明に係るニッケル粒子を用いて導電性ペーストを製造すると、導電性ペースト内でのニッケル粒子の分散性も高く、この導電性ペーストを用いて形成した塗膜を焼成して得られるニッケル膜厚さを、薄くすることができる。また、ニッケル粒子の粒子そのものが微粒且つ良好な粒度分布を備えるため、ニッケル膜表面を平滑化することができ、層間密着性を向上させることが出来る。このため、例えば、本発明に係る導電性ペーストを用いれば、MLCCの内部電極を薄層化することができると共に電極表面を平滑化することができ層間接続信頼性を向上させ、MLCCの小型、大容量化を図ることができる。
(本発明に係るニッケル粒子の製造方法)
本件発明に係るニッケル粒子の製造方法は、ニッケル塩及びポリオールを含む反応液を還元温度まで加熱して、該反応液中のニッケル塩を還元するニッケル粒子の製造方法であって、前記反応液を昇温加熱し前記還元温度に達する前の段階で、該反応液中にカルボキシル基及び/又はアミノ基を含むカルボン酸類又はアミン類、貴金属触媒を含有させることを特徴とするものである。
ここで、この反応液には、ニッケル塩、ポリオール、カルボキシル基及び/又はアミノ基を含むカルボン酸類又はアミン類、貴金属触媒を少なくとも含む必要があることが理解出来る。そして、本発明において、反応液中にカルボキシル基及び/又はアミノ基を含むカルボン酸類又はアミン類を含有させる方法として、反応液を昇温加熱し前記還元温度に達する前の段階で、カルボキシル基及び/又はアミノ基を含むカルボン酸類又はアミン類を添加する点に特徴を有する。
ここで、 「反応液を昇温加熱し前記還元温度に達する前の段階」とは、反応液を加熱して還元温度に達する前の段階であれば、どの時点で添加しても良いとの意である。従って、加熱前の成分調整時の添加、又は加熱を行いつつ昇温させている過程での添加の2つの添加のタイミングが含まれている。いずれの添加のタイミングを採用しても、従来のニッケル粒子と対比して考えると、シャープな粒度分布を持ち且つ微粒の粒子からなるニッケル粒子を得ることが可能である。しかしながら、加熱前の反応液の成分調整時に添加することが最も好ましい。加熱を開始して、その後にカルボキシル基及び/又はアミノ基を含むカルボン酸類又はアミン類を添加すると、添加する際の反応液温度によっては、添加した当該カルボン酸類又はアミン類の偏在が生じ、当該ニッケル粒子の還元析出が不均一に起こり、析出したニッケル粒子の凝集が顕著となる傾向が高くなる。
そして、当該カルボン酸類又はアミン類とその他の成分との混合順序に関しては、特に限定はない。即ち、カルボキシル基及び/又はアミノ基を含むカルボン酸類又はアミン類を含む反応液の調整における各成分の添加手順として、1)ポリオールと当該カルボン酸類又はアミン類とを混合した後に、ニッケル塩、貴金属触媒を添加する方法、2)ニッケル塩と当該カルボン酸類又はアミン類とを混合した後に、ポリオール、貴金属触媒を添加する方法、3)ポリオールとニッケル塩とを混合した後に、当該カルボン酸類又はアミン類、貴金属触媒を添加する方法、4)ニッケル塩、ポリオール、貴金属触媒及び当該カルボン酸類又はアミン類を同時に混合する方法、等のいずれを採用することも可能である。
本件発明で用いる反応液の調整をより具体的に言えば、上述のようにニッケル塩及びポリオールを含むものであり、例えば、水にニッケル塩及びポリオールを投入し攪拌し、混合することにより調製することができる。なお、反応液に、貴金属触媒を配合する場合に、貴金属触媒が硝酸パラジウム等のように水溶液として存在するときは、水なしでニッケル塩、ポリオール及び貴金属触媒を混合するだけで調製することができる。また、反応液は、ニッケル塩及びポリオールを混合し、さらに貴金属触媒を混合する場合において、例えば、ニッケル塩及びポリオールの一部、さらに貴金属触媒や後述の分散剤を予備混合してスラリーを調製し、該スラリーとポリオールの残部とを混合して反応液を調整する事も出来る。以下、これらの構成成分に関して順に説明する。
ニッケル塩: 本件発明で用いられるニッケル塩としては、特に限定されるものなく、例えば、水酸化ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、塩化ニッケル、臭化ニッケル及び酢酸ニッケル等が挙げられる。このうち、水酸化ニッケルが特に好ましい。MLCCの内部電極を焼成して形成する際に、ガス発生が少なく、形成されたニッケル膜の膜密度を良好に保ち、当該ニッケル膜の表面粗さを小さくできるからである。そして、本件発明において、上記ニッケル塩は、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることも可能である。
そして、このときの反応液中のニッケル塩濃度は、反応液中のニッケルとして0.1g/l〜50g/l濃度とする事が好ましい。ニッケル濃度が0.1g/l未満の場合には、ニッケル粒子の工業的生産性を満足しないばかりか、還元析出するニッケル粒子の粒度分布のバラツキが大きくなる傾向になり好ましくない。一方、ニッケル濃度が50g/lを超えると、ニッケル粒子の還元析出が速くなり、良好な粒度分布をもつニッケル粒子を得ようとしても困難となる傾向が生じる。
ポリオール: 本発明で用いられるポリオールは、炭化水素鎖及び複数の水酸基を有する物質をいう。該ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール1,5−ペンタンジオール、及びポリエチレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。このうちエチレングリコールは、沸点が低く、常温で液状であり取り扱い性に優れるため好ましい。本発明においてポリオールは、ニッケル塩に対する還元剤として作用すると共に、溶媒としても機能するものである。
そして、このポリオールの反応液中の含有量に関しては、還元剤という観点で考えれば、反応液中のニッケル量に応じて適宜調整されるものであるために、特段の限定を設ける必要性は無いものと考える。しかしながら、溶媒として機能させようとする場合には、反応液中のポリオール濃度により反応液の性状に変化をもたらすために、ある一定の適正な濃度範囲が存在する。本件発明で用いる反応液中で、反応液に対して、ポリオール濃度が50wt%〜99.8wt%の範囲となるように含ませることが好ましい。ポリオール濃度が50wt%未満の場合でも、上記ニッケル濃度の下限量を還元析出させるためには十分であるが、還元反応が起こる際の反応液の性状として、不均一還元が起きやすく、シャープな粒度分布を備えるニッケル粒子の製造が困難となる。一方、ポリオール濃度が99.8wt%を超えて添加しても、特段の問題はないが、上記ニッケル濃度範囲での還元剤としての必要量を超えるため、資源の無駄遣いとなる。
カルボン酸類又はアミン類: そして、本件発明に係るニッケル粒子の製造方法で用いる前記反応液は、ニッケル100重量部に対して、カルボキシル基及び/又はアミノ基を含むカルボン酸類又はアミン類を、通常0.1重量部〜30重量部、好ましくは1重量部〜10重量部含む。カルボキシル基及び/又はアミノ基を含むカルボン酸類又はアミン類の配合量が該範囲内にあると、得られるニッケル粒子が凝集し難く、粒度分布がシャープになり易く好ましい。即ち、上記配合量が0.1重量部未満であると、凝集抑制効果が小さいため好ましくない。また、該配合量が30重量部を超えると、凝集が顕著になり好ましくない。
本件発明に係るニッケル粒子の製造方法で用いる前記反応液に添加する前記カルボキシル基及び/又はアミノ基を含むカルボン酸類又はアミン類は、以下に述べる群から選ばれた1種又は2種以上を用いることが好ましい。
本件発明では、上記反応液を還元温度まで加熱して、該反応液中のニッケル塩を還元し、ニッケル粒子を製造するが、前記反応液を昇温加熱し前記還元温度に達する前の段階で、該反応液中にカルボキシル基及び/又はアミノ基を含むカルボン酸類又はアミン類を添加する。従って、本発明で用いられるカルボキシル基及び/又はアミノ基を含むカルボン酸類又はアミン類は、その沸点又は分解点が還元温度以上のものであればよく、特に限定は要さない。しかしながら、以下に述べる群より選択使用することが、製造工程の変動を受けにくく、安定した製造が可能となる。
カルボン酸類としては、芳香族カルボン酸類、脂肪族カルボン酸類に属するものを用いることが好ましい。より具体的に言えば、芳香族カルボン酸類としては、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフトエ酸、トルイル酸、ヒドロキシ安息香酸の使用が好ましい。また、脂肪族カルボン酸類としては、例えば、デカン酸、ドデカン酸、セバシン酸、オレイン酸、オレイン酸アミド、アスコルビン酸の使用が好ましい。なお、構造異性体が存在する場合には、これらを全て含む。
そして、上記カルボン酸類の場合に、芳香族カルボン酸類を用いると、還元析出したニッケル粒子の粒子同士の凝集を抑制する効果が高く好ましい。さらに、ベンゼン環にカルボキシル基が直接結合している芳香族カルボン酸類がパラ体のものも、粒子凝集を抑制する立体障害としての機能が大きくなり、粒子同士の凝集作用を抑制し、粒度分布がよりシャープになり好ましい。
本発明で用いられるアミン類としては、芳香族アミン、脂肪族アミンに属するものを用いることが好ましい。より具体的に言えば、芳香族アミンとしては、アニリン、トルイジン、ジアミノベンゼン、アミノベンズアミド、アミノフェノール、4−アミノベンゼンヒドラジド、アミノサリチル酸を用いることが好ましい。また、本発明で用いられる脂肪族アミンとしてはアミノデカン、アミノドデカン、オクチルアミン、オレイルアミンを用いることが好ましい。なお、構造異性体が存在する場合には、これらを全て含む。
そして、上記アミン類として芳香族アミンを用いると、還元析出したニッケル粒子の粒子同士の凝集を抑制する効果が高く好ましい。また、芳香族アミンの内、ベンゼン環にアミノ基が直接結合しているものである場合には、還元析出したニッケル粒子の粒子同士の凝集を抑制する効果が特に高く好ましい。更に、ベンゼン環にアミノ基が直接結合している芳香族アミンがパラ体のものであると、粒子凝集を抑制する立体障害としての機能が大きくなり、粒子同士の凝集作用を抑制し、粒度分布がよりシャープになり好ましい。
貴金属触媒: 本発明で用いる貴金属触媒は、上記反応液中において、ポリオールによるニッケル塩の還元反応を促進するものであり、前記反応液は、ニッケル100重量部に対して、貴金属触媒を0.001重量部〜1重量部含ませることが好ましい。貴金属触媒が0.001重量部未満の場合には、還元反応の促進が出来ず、貴金属触媒を用いる意義が没却する。そして、貴金属触媒が1重量部を超えるものとすると、反応液中のニッケル濃度等との関係において、還元反応を促進し向上させることは出来ず、資源の無駄遣いとなる。
そして、本件発明に言う貴金属触媒とは、A)塩化パラジウム、硝酸パラジウム、酢酸パラジウム、塩化アンモニウムパラジウム等のパラジウム化合物、B)硝酸銀、乳酸銀、酸化銀、硫酸銀、シクロヘキサン酸銀、酢酸銀等の銀化合物、C)塩化白金酸、塩化白金酸カリウム、塩化白金酸ナトリウム等の白金化合物、D)塩化金酸、塩化金酸ナトリウム等の金化合物等である。この内、硝酸パラジウム、酢酸パラジウム、硝酸銀又は酢酸銀は、原料コストが安価で製造コストを低く出来るため好ましい。そして、上記触媒は、反応液に、上記化合物の形態で又は当該化合物の溶解させた溶液の形態で添加して用いることができる。
その他添加剤: 以上に反応液の必須構成成分を述べてきた。その他、種々の添加剤を用いようとすれば反応液中に含ませることは可能である。しかしながら、その添加剤の中でも、分散剤を必要に応じて添加する事が好ましい。この分散剤は、反応液中に還元析出したニッケル粒子が、反応液中で自然に凝集し、粒度分布の劣化を防止するため、析出した粒子表面に吸着させ凝集防止バリアを形成するためのものである。
ここで言う分散剤としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリアクリルアミド、ポリ(2−メチル−2−オキサゾリン)等の含窒素有機化合物、及びポリビニルアルコールを用いることが可能である。中でも、ポリビニルピロリドンは、分散剤としての効果が顕著であり、得られるニッケル粒子の粒度分布をシャープに維持出来るため好ましい。
また、本発明において、上記分散剤は、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。そして、前記反応液は、ニッケル100重量部に対して、分散剤を0.01重量部〜30重量部含むものとすることが好ましい。分散剤の量が、0.01重量部未満の場合には、反応液中に還元析出したニッケル粒子の凝集防止効果を得ることが出来ない。一方、分散剤の量が、30重量部を超えものとして用いても、反応液中に還元析出したニッケル粒子の凝集防止効果は向上せず、むしろ析出したニッケル粒子の表面に多量の分散剤が残留するため不純物量が増加して、このニッケル粒子を用いて導電性ペーストを調整し、これで形成した導体膜の電気抵抗の上昇を引き起こす事になる。
還元温度: 本件発明に係るニッケル粒子の製造方法で用いる還元温度は、通常150℃〜210℃の範囲を採用する。還元温度が150℃未満であると、還元反応が遅くなり工業的生産性を満足しない。また、還元温度が210℃を超えると、還元速度のコントロールが不可能な範囲となり、同時に炭化ニッケルの析出が見られるため好ましくない。そして、より好ましくは160℃〜200℃、更に好ましくは180℃〜200℃の還元温度を採用することが好ましい。還元温度が該範囲内にあると、量産工程における温度、反応液組成等に若干の変動が存在しても、得られるニッケル粒子の品質変動が少なく、工程安定性に優れる。
そして、上記還元温度に到達した反応液は、還元が終了するまで還元温度で維持する。このときの維持時間は、反応液の組成や還元温度により適切な時間が異なるため一概に特定できないが、通常1時間〜10時間、好ましくは3時間〜8時間である。反応液を上記還元温度に維持する時間が該範囲内であると、ニッケル粒子の核の成長が適度に抑制され、同時にニッケル粒子の核が多数発生し易い反応系となる。従って、この系内でのニッケル粒子の粒成長が略均一となるため、得られるニッケル粒子が粗大粒子になったり凝集したりすることを抑制することができる。従って、上述の反応液組成及び還元温度範囲を採用することを前提として考えると、維持時間が1時間未満の場合には、還元が終了せず、廃液にニッケルが多量に残留し、廃液負荷が増大すると共に、資源としてのニッケルの無駄となる。一方、維持時間が10時間を超えるものとしても、それ以上にニッケルの還元析出は起こらず、反応液中のニッケル量も極微量まで減少し消費されている。しかし、工業的生産性を考慮し、提供製品としてのニッケル粒子の品質バラツキを最小限にするためには、維持時間を3時間〜8時間とすることが好ましい。なお、本発明では、上記還元温度及び維持時間を採用すれば、これ以後は、反応液の温度を上記還元温度の範囲外の温度にしてもよい。例えば、還元反応の速度を向上させるために、反応液の温度を上記還元温度を超える温度にしてもよい。以上に述べてきた反応液を用い、上述の工程を経て得られるニッケル粒子は、以下に記載する物性を備えたものとなる。
(本発明に係るニッケル粒子)
本発明に係るニッケル粒子は、上記本発明に係るニッケル粒子により製造されるニッケル粒子であって、粒子形状が略球形を呈する粉体である。本発明に係るニッケル粒子は、画像解析平均粒径が、通常1nm〜300nm、好ましくは50nm〜150nmである。画像解析平均粒径が、1nmは、一応の下限値であり、粒径1nm未満の範囲の粒子は、小さすぎて厳密な意味での観察が困難である。また、画像解析平均粒径が、300nmを超えると、該ニッケル粒子を含む導電性ペーストで形成したニッケル厚膜を十分に薄く且つ該ニッケル厚膜の表面の平滑性が悪くなり易いため好ましくない。本発明において、画像解析平均粒径とは、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察されるニッケル粒子の観察像(本件発明にかかるニッケル粒子の場合には倍率50000倍以上で観察するのが好ましい。)を画像解析することにより得られる平均粒径のことである。なお、本件明細書における走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察されるニッケル粒子の画像解析は、旭エンジニアリング株式会社製のIP−1000PCを用いて、円度しきい値10、重なり度20として円形粒子解析を行い、10視野分を測定し、これを平均して画像解析平均粒径を求めたものである。
また、本件発明に係るニッケル粒子の粒度分布の指標としては、一般的に用いられるレーザー回折散乱法で求められる累積体積粒径は、当該ニッケル粒子が1nm〜300nmの微粒であるため測定精度に問題があると考え使用しなかった。その代替え方法として、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM:5000倍)を用いて観察されるニッケル粒子の100視野分を直接観察して、そこにある1μm以上の粗粒の個数をカウントした。このカウント数を「粗粒個数」と称する。ここで言う粗粒とは、nmオーダーの粒径が多数凝集し1μm以上となった粗大粒を意味している。本件発明では、この粗粒と画像解析平均粒径とを併せて、粒度分布の状態を判断する指標として用いた。その結果、本件発明に係るニッケル粒子は、粗粒個数が0個〜2個の範囲となる。なお、現実に発生している粗粒は、nmオーダーの微粒子が大量に凝集したものであり、後述する比較例の図2を参照することで理解できる。
(本発明に係る導電性ペースト)
本発明に係る導電性ペーストは、上記本発明に係るニッケル粒子を含むものであり、ニッケル粒子以外に樹脂及び溶媒を含むものである。本発明で用いられる樹脂としては、例えば、エチルセルロース、ニトロセルロース等のセルロース類や、ブチルメタクリレート、メチルメタクリレート等のアクリル樹脂等が挙げられる。本発明において、上記樹脂は1種単独で又は2種以上混合して用いることができる。また、本発明で用いられる溶剤としては、例えば、ターピネオール、ジヒドロターピネオール等のテルペン類や、オクタノール、デカノール等のアルコール等が挙げられる。本発明において、上記溶剤は1種単独で又は2種以上混合して用いることができる。
本発明に係る導電性ペーストは、本発明に係るニッケル粒子の含有量が、通常40重量%〜70重量%、好ましくは50重量%〜60重量%である。上記ニッケル粒子の含有量が該範囲内にあると、ペーストが良好な導電性を有し、充填性が高く、耐熱収縮性が小さいものとなり易いため好ましい。
上記本発明に係るニッケル粒子は、例えば、導電性ペーストの製造に用いられる公知のペーストと混合することにより、ニッケル粒子の分散した導電性ペーストが得られる。該導電性ペーストは、例えば、積層セラミックコンデンサの内部電極の形成のために用いられるニッケルペーストとして使用することができる。
以下に実施例を示すが、本発明はこれらに限定されて解釈されるものではない。
タンクにエチレングリコール(三井化学株式会社製)445.3gを一定量として、水酸化ニッケル(OM Group株式会社製)、100g/l濃度の硝酸パラジウム水溶液(田中貴金属工業株式会社製)、ポリビニルピロリドンK30(和光純薬工業株式会社製)及びカルボキシル基及び/又はアミノ基を含むカルボン酸類又はアミン類を混合し、攪拌した状態を保ったまま加熱し、所定時間保持して、スラリー状態でニッケル粒子を得た。この製造時の濃度等の諸条件は、表1に列挙しており、実施例として6条件を採用した。従って、表中では、これらを実施例1〜実施例6と称する。
そして、このニッケルスラリーを吸引濾過して、80℃で5時間乾燥させ、ニッケル粒子を得て、これを電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて100000倍で観察し、その観察像を画像解析することにより画像解析平均粒径、画像解析平均粒径の標準偏差を求め、前述の5000倍の走査電子顕微鏡観察像の100視野から粗粒個数を測定した。実施例1〜実施例6に関する、この結果は、比較例と対比可能なように表2に纏めて示した。なお、実施例で得られた代表的なニッケル粒子の電子顕微鏡写真を図1に示す。
比較例
タンクにエチレングリコール(三井化学株式会社製)445.3gを一定量として、水酸化ニッケル(OM Group株式会社製)、100g/l濃度の硝酸パラジウム水溶液(田中貴金属工業株式会社製)、ポリビニルピロリドンK30(和光純薬工業株式会社製)を混合し、攪拌した状態を保ったまま加熱し、所定時間保持して、スラリー状態でニッケル粒子を得た。即ち、実施例との違いは、カルボキシル基及び/又はアミノ基を含むカルボン酸類又はアミン類を用いていないのである。この製造時の濃度等の諸条件は、表1に実施例と同時に掲載しており、比較例として2条件を採用した。従って、表中では、これらを比較例1及び比較例2と称する。
そして、この当該ニッケルスラリーを吸引濾過して、実施例と同様にして画像解析平均粒径、画像解析平均粒径の標準偏差を求め、前述の5000倍の走査電子顕微鏡観察像の100視野から粗粒個数を測定した。比較例1及び比較例2に関する、この結果は、実施例と対比可能なように表2に纏めて示した。なお、比較例で得られた代表的なニッケル粒子の電子顕微鏡写真を図2に示す。
<実施例と比較例との対比>
表2の実施例1〜実施例6の画像解析平均粒径から分かるように、58.3nm〜171nmの範囲で、種々の粒径の製品が得られている。そして、この実施例1〜実施例6の画像解析平均粒径の標準偏差は、14.2nm〜45.1nmである。一般に画像解析平均粒径が多くなる程、その標準偏差の値も大きくなるのであり、この点に関しての傾向は技術常識どおりである。なお、標準偏差とは、画像解析平均粒径を求める際に測定した個々の粒子の測定粒径を用いた換算値であるため、完全に現実の製品の粉体特性を反映させたものであるとは言えない。
そして、比較例1及び比較例2の画像解析平均粒径及び画像解析平均粒径の標準偏差を見るに、比較例1の画像解析平均粒径は91.8nm、標準偏差は20.9nm、比較例2の画像解析平均粒径は62.3nm、標準偏差は15.5nmである。従って、比較例1は実施例4と対比することが好ましく、比較例2は実施例5と対比することが好ましいと考えられる。
そこで、画像解析平均粒径及び画像解析平均粒径の標準偏差に関して、比較例1と実施例4、比較例2と実施例5、で対比してみたが、その数値においては、大きな差異があるとは言えない。
しかしながら、現実に観察される粗粒個数を見るに、比較例1と実施例4、比較例2と実施例5、のそれぞれに於いて全く異なる。比較例に関しての粗粒個数が10を超えるものとなり、実施例の粗粒個数(2未満)よりも顕著に多いことになる。
実施例の場合、実施例1〜実施例6の全ての場合に於いて、粗粒個数は2未満であり、粒径が大きくても、小さくても粗粒の存在割合が極めて少なくなると言える。
実際の実施例と比較例とで得られたニッケル粒子の粗粒の程度は、図1と図2とを対比することから明らかである。図2には、矢印で示したような粗粒が存在するが、図1には見られない。この図1及び図2のニッケル粒子の観察方法は、ニッケルスラリーを走査型電子顕微鏡用の試料台の上に滴下し、乾燥固化させることで、1粒子〜2粒子分の厚さの乾燥膜を形成し、これを走査型電子顕微鏡を用いて5000倍の倍率で観察したものである。図1の場合の表面状態は均一な状態で、何ら異常は見られない。これに対して、図2の場合の表面には、乾燥膜の上に矢印で示したような粗粒が確認され、その周囲には多数のクラックが確認される。これは、当該乾燥膜を形成する際に、粗粒が転がり、乾燥膜表面を荒らすためと考えられる。
本発明に係るニッケル粒子の製造方法は、微粒且つ粗粒の少ないニッケル粒子の効率の良い製造が可能である。従って、工程の管理コストも少なく、工業的生産プロセスとして安価で且つ高品質の微粒ニッケル粒子の提供に好適である。
そして、この製造方法で得られたニッケル粒子は、微粒且つ粗粒の少ないものであり、その粒度分布がシャープである。従って、本件発明に係るニッケル粒子を用いた導電性ペーストを用いれば、MLCCの内部電極を薄層化することができると共に電極表面を平滑化することができ層間接続信頼性を向上させ、MLCCの小型、大容量化を図ることができる。
本件発明に係るニッケル粒子の電子顕微鏡観察像である。 従来法で得られたニッケル粒子の電子顕微鏡観察像である。

Claims (7)

  1. ニッケル塩及びポリオールを含む反応液を還元温度まで加熱して、該反応液中のニッケル塩を還元するニッケル粒子の製造方法であって、
    前記反応液を昇温加熱し前記還元温度に達する前の段階で、該反応液中にカルボキシル基及び/又はアミノ基を含むカルボン酸類又はアミン類、貴金属触媒を含有させることを特徴とするニッケル粒子の製造方法。
  2. 前記反応液は、ニッケル100重量部に対して、カルボキシル基及び/又はアミノ基を含むカルボン酸類又はアミン類から選ばれた1種又は2種以上を0.1重量部〜30重量部含むことを特徴とする請求項1に記載のニッケル粒子の製造方法。
  3. 前記反応液は、ニッケル100重量部に対して、貴金属触媒を0.001重量部〜1重量部含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のニッケル粒子の製造方法。
  4. 前記貴金属触媒は、白金、金、パラジウム、銀、銅から選ばれた1種又は2種以上である請求項3に記載のニッケル粒子の製造方法。
  5. 前記反応液は、ニッケル100重量部に対して、分散剤を0.01重量部〜30重量部含むことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のニッケル粒子の製造方法。
  6. 請求項1〜請求項5のいずれかに記載の製造方法で得られたニッケル粒子であって、画像解析平均粒径が1nm〜300nmであることを特徴とするニッケル粒子。
  7. 請求項6に記載のニッケル粒子を含むことを特徴とする導電性ペースト。
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