JP2013089822A - ニッケル被覆誘電体粒子の製造方法 - Google Patents

ニッケル被覆誘電体粒子の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高温での焼成に際して、収縮開始温度が高く、その焼結挙動をセラミック誘電体に近づけたニッケル被覆誘電体粒子を製造する方法を提供する。
【解決手段】本発明によれば、表面に貴金属又はその塩を担持させた誘電体粒子とニッケル化合物を含むポリオール中において、上記ニッケル化合物を上記誘電体粒子の表面上で還元し、ニッケルを析出させることを特徴とするニッケル被覆誘導体粒子の製造方法が提供される。上記表面に貴金属を担持させた誘電体粒子は、好ましくは、誘電体粒子をその懸濁液中、上記貴金属の水溶性塩で処理した後、洗浄して、表面に上記貴金属塩を担持させた誘電体粒子を得、次いで、誘電体粒子の表面の上記貴金属塩を還元剤にて貴金属に還元して、得ることができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、ニッケル被覆誘電体粒子の製造方法に関し、詳しくは、高温における焼成に際して収縮開始温度が高く、従って、例えば、積層セラミックコンデンサの内部電極に好適に用いることができるニッケル被覆誘電体粒子の製造方法に関する。
ニッケル微粒子は、例えば、積層セラミックコンデンサの内部電極、ニッケル水素二次電池の多孔性電極、燃料電池の中空多孔質電極をはじめ、種々の電極を形成するための材料として注目されている。
従来、積層セラミックコンデンサは、誘電体グリーンシート上にパラジウム、白金等のような内部電極のための貴金属粉末とエチルセルロースのような有機バインダーとターピネオールのような有機溶媒を混練してなる導電ペーストを印刷し、乾燥して、上記誘電体グリーンシート上に内部電極層の前駆体を形成し、これと上記誘電体グリーンシートが交互に重なるように積層し、熱圧着し、次いで、このようにして得られた積層体を所定の寸法に裁断した後、250〜400℃程度に加熱して、上記有機バインダーを燃焼させて除去する脱バインダー処理し、この後、積層体を約1300℃の温度まで加熱し、焼成して、内部電極層とセラミック誘電体とを焼結させ、この後、銀等の外部電極を形成して、製造される。上記誘電体グリーンシートは、例えば、チタン酸バリウム等のセラミック誘電体粉末とポリビニルブチラールやエチルセルロースのような有機バインダーからなる。
このような積層セラミックコンデンサは、最近の電子部品の高性能化に伴って、小型化と高容量化が進んでおり、そのために、セラミック誘電体と内部電極の薄膜化と多層化が一層求められている。他方、コストへの配慮から、電極のための材料は、従来のパラジウム、白金等の貴金属から、より低廉なニッケル等の卑金属が多く用いられるようになってきている。
しかし、ニッケル微粒子を含め、一般に、金属からなる内部電極材料は、セラミック誘電体よりも焼結開始温度が低く、しかも、熱収縮が大きい。従って、セラミック誘電体と内部電極とは熱収縮の程度が異なるので、積層セラミックコンデンサの製造において、上述したように、導電性ペーストを印刷したセラミック誘電体グリーンシートを積層し、これを焼成する際に、その間に剥離やクラック等の構造欠陥が発生しやすいという問題がある。このような構造欠陥は、特に、近年の積層セラミックコンデンサの小型化と高容量化と共に顕著に発生する傾向がある。
このような問題に対処するために、一般に、導電ペーストに誘電体グリーンシートにおける誘電体と同じ誘電体の微粒子を配合して、導電ペーストの熱収縮挙動を誘電体グリーンシートのそれに近付けることができることが知られている(特許文献1参照)。しかしながら、近年のニッケル粒子の微粒子化に伴い、誘電体層と内部電極層の収縮特性の差異は大きくなる傾向にある。
そこで、積層セラミックコンデンサの更なる薄層化を実現するには、内部電極に用いるニッケル微粒子として、高温での焼成において、焼結挙動をセラミック誘電体に近づけて、急激な収縮が始まる温度(以下、単に収縮開始温度という。)の高いものが強く求められている。
このような要望に応えるために、例えば、ニッケル粒子の表面に酸化チタンやチタン酸バリウム等の酸化物被覆を施して、ニッケル粒子の収縮開始温度を高めることが提案されているが、未だ、その効果は十分とはいい難い(特許文献2参照)。
そこで、所謂ポリオール法を用いて、還元剤と反応溶媒を兼ねるエチレングリコールに所定の一次粒子径を有するチタン酸バリウム粒子と共に水酸化ニッケルを懸濁させた懸濁液中において、金属ニッケルを析出させることによって、母相としてのニッケル粒子内に複数のチタン酸バリウム粒子を含有していると共に、一部のチタン酸バリウム粒子が上記ニッケル粒子から突出している構造を有するニッケル粒子が提案されているが、依然として、収縮開始温度を十分に高めることは困難である(特許文献3参照)。
特開2001−291634号公報(段落0005) 特開平11−343501号公報 特開2008−063653号公報
本発明は、従来のニッケル微粒子の収縮開始温度に関わる問題を解決するためになされたものであって、高温での焼成に際して、その焼結挙動をセラミック誘電体に近づけて、収縮開始温度を高くしたニッケル被覆誘電体粒子を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明によれば、表面に貴金属又はその塩を担持させた誘電体粒子とニッケル化合物を含むポリオール中において、上記ニッケル化合物を上記誘電体粒子の表面上でニッケルに還元して析出させることを特徴とするニッケル被覆誘導体粒子の製造方法が提供される。
本発明によれば、上記方法における表面に貴金属塩を担持させた誘電体粒子は、誘電体粒子をその懸濁液中、上記貴金属の水溶性塩で処理して、得ることができる。
また、本発明によれば、上記方法における表面に貴金属を担持させた誘電体粒子は、誘電体粒子をその懸濁液中、上記貴金属の水溶性塩で処理して、表面に上記貴金属塩を担持させた誘電体粒子を得、次いで、誘電体粒子の表面の上記貴金属塩を還元剤にて貴金属に還元して、得ることができる。
本発明によれば、誘電体粒子の1つの好ましい例はチタン酸バリウム粒子であり、貴金属の1つの好ましい例はパラジウムであり、ポリオールの1つの好ましい例はエチレングリコールであり、ニッケル化合物の好ましい具体例は水酸化ニッケルである。
このような本発明の方法によって得られるニッケル被覆誘電体粒子は、高温での焼成に際して、収縮開始温度が高く、セラミック誘電体の焼結挙動に近いので、例えば、積層セラミックコンデンサの内部電極として好適に用いることができる。
実施例1において得られた本発明によるニッケル被覆チタン酸バリウム粒子のX線回折図である。 実施例1において得られた本発明によるニッケル被覆チタン酸バリウム粒子の温度に対する熱収縮率変化と比較例1において得られた粒子の温度に対する熱収縮率変化を示すグラフである。 実施例2において得られた本発明によるニッケル被覆チタン酸バリウム粒子のX線回折図である。 実施例2において得られた本発明によるニッケル被覆チタン酸バリウム粒子の温度に対する熱収縮率変化と比較例1において得られた粒子の温度に対する熱収縮率変化を示すグラフである。 実施例3において得られた本発明によるニッケル被覆チタン酸バリウム粒子のX線回折図である。 実施例3において得られた本発明によるニッケル被覆チタン酸バリウム粒子の温度に対する熱収縮率変化と比較例1において得られた粒子の温度に対する熱収縮率変化を示すグラフである。 比較例2において得られた粒子の粉末X線回折図である。 実施例1において得られた本発明によるニッケル被覆チタン酸バリウム粒子の温度に対する熱収縮率変化と比較例2において得られた粒子の温度に対する熱収縮率変化を示すグラフである。
本発明によるニッケル被覆誘導体粒子の製造方法は、表面に貴金属を担持させた誘電体粒子とニッケル化合物を含むポリオール中において、上記ニッケル化合物を上記誘電体粒子の表面上でニッケルに還元して析出させることを特徴とする。
本発明において、誘電体としては、ペロブスカイト構造を有する複合酸化物が好ましく、そのような誘電体として、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)、ジルコン酸カルシウム(CaZrO3)、チタン酸カルシウム(CaTiO3)、ジルコン酸バリウム(BaZrO3)、チタン酸ジルコン酸バリウムカルシウム(Ba,Ca)(Ti,Zr)O3等を挙げることができる。これらのなかで、チタン酸バリウムは、本発明において、誘電体として好ましく用いることができる1つである。
上記誘電体粒子は、その平均粒子径が0.01〜1.0μmの範囲内にあり、特に、0.03〜0.2μmの範囲にあることが好ましい。誘電体粒子の平均粒子径が0.01μmよりも小さいときは、その凝集性が強いために誘電体粒子に均一なニッケル被覆を施すことが困難となるおそれがある。
一方、誘電体粒子の平均粒子径が1μmよりも大きいときは、このような誘電体粒子にニッケル被覆を施してなる粒子を用いて積層セラミックコンデンサの内部電極を形成したときに、その表面平滑性が損なわれて、セラミック層との密着性が損なわれるおそれがある。
本発明によれば、このように、誘電体粒子の表面に貴金属又はその塩を担持させてなる一種の複合体(以下、貴金属(塩)担持誘電体粒子ということがある。)を調製し、これとニッケル化合物を含むポリオール中において、ポリオールを還元剤とする所謂ポリオール法にて上記ニッケル化合物を上記誘電体粒子の表面上でニッケルに還元して析出させ、かくして、ニッケル被覆誘導体粒子を得る。
上記ポリオール法とは、金属ナノ粒子の一般的な液相合成法としてよく知られており、還元剤を兼ねるポリオール溶媒中、金属塩を好ましくは加熱することによって、上記金属塩を還元して金属微粒子を得る方法である。
上記ポリオールとしては、例えば、脂肪族ポリオールが好ましく、例えば、具体例として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール1,5−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール等を挙げることができる。本発明においては、これらから選ばれる少なくとも1種が好ましく用いられる。なかでも、エチレングリコールは、比較的沸点が低い常温で液状の物質であるので、取り扱いやすく、好ましく用いられる。
本発明によれば、上記貴金属(塩)担持誘電体粒子における貴金属又はその塩は、誘電体粒子表面上でニッケル化合物を還元し、析出させるための触媒であり、従来、ニッケル化合物のニッケル金属への還元に用いられている貴金属触媒又は貴金属塩触媒であれば、いずれでも用いることができる。
上記貴金属触媒としては、例えば、パラジウム、銀、白金、金等を挙げることができ、上記貴金属塩触媒としては、上記貴金属の塩を挙げることができる。従って、上記貴金属塩触媒としては、例えば、塩化パラジウム、硝酸パラジウム、酢酸パラジウム、塩化アンモニウムパラジウム等のパラジウム塩、硝酸銀、乳酸銀、酸化銀、硫酸銀、シクロヘキサン酸銀、酢酸銀等の銀塩、塩化白金酸、塩化白金酸カリウム、塩化白金酸ナトリウム等の白金化合物、塩化金酸、塩化金酸ナトリウム等の金化合物を挙げることができる。これらのうち、塩化パラジウムや硝酸パラジウムのような水溶性パラジウム塩は、触媒性能にすぐれるために好ましく用いられる。
本発明によれば、誘導体粒子の表面にこのような貴金属塩を担持させるには、好ましくは、誘電体粒子をその懸濁液中、上記貴金属の水溶性塩で処理した後、洗浄することによって得ることができる。より具体的には、誘電体粒子を水中に懸濁させ、この懸濁液に上記貴金属の水溶性塩を加え、攪拌した後、水洗すればよく、このようにして、貴金属塩担持誘電体粒子を得ることができる。
このような貴金属塩担持誘電体粒子を得るために用いる上記貴金属の水溶性塩としては、上述したように、塩化パラジウム、硝酸パラジウム、酢酸パラジウム、塩化アンモニウムパラジウム等のパラジウム塩、硝酸銀、乳酸銀、酸化銀、硫酸銀、シクロヘキサン酸銀、酢酸銀等の銀塩、塩化白金酸、塩化白金酸カリウム、塩化白金酸ナトリウム等の白金化合物、塩化金酸、塩化金酸ナトリウム等の金化合物を挙げることができる。これらのうち、塩化パラジウムや硝酸パラジウムのような水溶性パラジウム塩は、触媒性能にすぐれるために好ましく用いられる。
一方、誘導体粒子の表面に貴金属を担持させるには、好ましくは、誘電体粒子をその懸濁液中、上記貴金属の水溶性塩で処理した後、洗浄して、表面に上記貴金属塩を担持させた誘電体粒子を得、次いで、誘電体粒子の表面の上記貴金属塩を還元剤にて貴金属に還元して、誘電体粒子の表面に上記貴金属を析出させる。より具体的には、誘電体粒子を水中に懸濁させ、この懸濁液に上記貴金属の水溶性塩を加え、攪拌した後、水洗して、表面に上記貴金属塩を担持させた誘電体粒子を得、次いで、誘電体粒子の表面の上記貴金属塩を還元剤にて貴金属に還元して、誘電体粒子の表面に上記貴金属を析出させた後、水洗すればよい。
このような貴金属担持誘電体粒子を得るために用いる上記貴金属の水溶性塩としても、上述したと同じく、塩化パラジウム、硝酸パラジウム、酢酸パラジウム、塩化アンモニウムパラジウム等のパラジウム塩、硝酸銀、乳酸銀、酸化銀、硫酸銀、シクロヘキサン酸銀、酢酸銀等の銀塩、塩化白金酸、塩化白金酸カリウム、塩化白金酸ナトリウム等の白金化合物、塩化金酸、塩化金酸ナトリウム等の金化合物等を挙げることができる。これらのうち、塩化パラジウムや硝酸パラジウムのような水溶性パラジウム塩は、触媒性能にすぐれるために好ましく用いられる。
上記貴金属担持誘電体粒子の調製において用いる前記還元剤には、例えば、ヒドラジン、ヒドラジン水和物、水素化ホウ素塩、次亜リン酸塩等が用いられるが、なかでも、反応後に残渣が生じないこと、比較的安全性が高いこと等から、ヒドラジン水和物の一種であるヒドラジン一水和物が好ましく用いられる。このような還元剤は、上述した貴金属塩、好ましくは、パラジウム塩に対して、通常、等量の割合で用いられる。
このようにして、誘電体粒子の表面に貴金属を担持させた後、得られた懸濁液を固液分離し、水洗して、貴金属担持誘電体粒子を得ることができる。
本発明によれば、このようにして、貴金属又はその塩を担持した誘電体粒子を調製し、これとニッケル化合物を含むポリオール中において、上記ニッケル化合物を上記誘電体粒子の表面上で還元し、ニッケルを析出させることによって、目的とするニッケル被覆誘導体粒子を得る。
本発明の方法において、誘電体粒子をその懸濁液中、水溶性の貴金属塩で処理して、誘電体粒子上に上記金属貴金属塩を付着、担持させた後、誘電体粒子を水洗しても、おそらくは誘電体粒子と上記貴金属塩の間に強い相互作用が生じる結果であるとみられるが、誘電体粒子上の上記貴金属塩はその表面から殆ど除去されない。同様に、誘電体粒子上に付着担持された貴金属塩をその懸濁液中、還元剤にて貴金属に還元した後、誘電体粒子を水洗しても、誘電体粒子上の上記貴金属は表面から殆ど除去されない。
かくして、本発明によれば、誘電体粒子上にこのようにして付着担持された貴金属又はその塩を核として、ニッケル化合物が還元されるので、誘電体粒子表面には効果的にニッケル被覆が形成され、その結果として、本発明によるニッケル被覆誘電体粒子は、熱収縮温度が大幅に高温側に移動するものとみられる。
上記貴金属(塩)担持誘電体粒子の調製において用いる上記水溶性の貴金属塩は、後述するように、得られる貴金属(塩)担持誘電体粒子の表面でニッケル化合物を還元し、ニッケルを析出させて、誘電体粒子の表面に所要量のニッケル被覆を形成させることできれば、特に、その使用量は制限されるものではないが、貴金属換算にて、通常、誘電体粒子100重量部当りに0.001〜0.1重量部程度であり、好ましくは、0.002〜0.05重量部程度である。
上記ニッケル化合物は、特に、限定されることはなく、例えば、水酸化ニッケル、炭酸ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、塩化ニッケル、臭化ニッケル、酢酸ニッケル等を挙げることができるが、これらのなかでは、例えば、水酸化ニッケルが好ましく用いられる。これらのニッケル化合物は、後述するように、得られるニッケル被覆誘電体粒子における誘電体粒子の割合が5〜20重量%の範囲となるように用いられる。
本発明において、ポリオール中、ニッケル化合物を還元し、貴金属(塩)担持誘電体粒子の表面にニッケルを析出させるに際して、好ましくは、ポリオール中に貴金属(塩)担持誘電体粒子とニッケル化合物と共に分散剤を存在させることが好ましい。この分散剤としては、有機ポリマーからなるものが好ましく、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリアクリルアミド、ポリ(2−メチル−2−オキサゾリン)、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。例えば、ポリビニルピロリドンは、好ましく用いることができる分散剤の1つである。
本発明において、前記ポリオールは、還元剤を兼ねる溶媒として用いられる。従って、その使用量は、上記ニッケル化合物の還元剤として足りる量であればよいが、好ましくは、通常、溶媒としての観点から、貴金属(塩)担持誘電体粒子とニッケル化合物と分散剤とポリオールの合計量の50重量%以上を占める割合にて用いられる。
上記貴金属(塩)担持誘電体粒子とニッケル化合物と分散剤を含むポリオールを加熱することによって、このポリオールを還元剤として上記ニッケル化合物を効率よく上記誘電体粒子の表面上で還元し、ニッケルを析出させることができる。上記加熱温度、即ち、反応温度は、通常、150〜210℃の範囲であり、好ましくは、160〜200℃の範囲であり、特に、180〜200℃の範囲である。反応温度が150℃よりも低いときは、還元反応が遅すぎて、工業的実用性に乏しい。しかし、反応温度が210℃よりも高いときは、望ましくない副反応が起こるようになるため好ましくない。
上記貴金属(塩)担持誘電体粒子とニッケル化合物を含むポリオールを加熱する時間、即ち、反応時間は、用いるポリオールや金属ニッケルの種類、反応温度等によるので、一概に定めることはできないが、通常、1〜10時間の範囲であり、好ましくは、3〜8時間の範囲である。
このようにして、ポリオール中、貴金属(塩)担持誘電体粒子の表面にニッケルを析出させた後、得られた懸濁液を室温まで降温させ、得られたニッケル被覆誘電体粒子を固液分離し、温水とエタノールでこの順序で洗浄し、例えば、110℃で乾燥すれば、本発明によるニッケル被覆誘電体粒子を得ることができる。
本発明においては、このようにして得られるニッケル被覆誘電体粒子において、誘電体粒子の割合は、通常、5〜20重量%の範囲である。ニッケル被覆誘電体粒子において、誘電体粒子の割合が5重量%よりも少ないときは、このようなニッケル被覆誘電体粒子を用いて、積層セラミックコンデンサの内部電極を形成すれば、収縮遅延効果が低いために、得られる積層セラミックコンデンサに層間剥離やクラック等の構造欠陥が生じるおそれがある。一方、ニッケル被覆誘電体粒子において、誘電体粒子の割合が20重量%よりも多いときは、このようなニッケル被覆誘電体粒子を用いて積層セラミックコンデンサの内部電極を形成すれば、電極層の電気抵抗が大きくなって、積層セラミックコンデンサとしての品質のばらつきが大きくなるおそれがある。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、出発物質チタン酸バリウム粒子と得られたニッケル被覆誘電体粒子の平均粒子径と、得られたニッケル被覆誘電体粒子の粉末X線回折と、得られたニッケル被覆誘電体粒子における誘電体の割合と収縮特性は次のようにして求め、又は評価した。
(出発物質チタン酸バリウム粒子およびニッケル被覆誘電体粒子の平均粒子径)
日本電子(株)製走査電子顕微鏡JSM−7000Fを用いて撮影したSEM写真像から平均粒子径を算出した。
(ニッケル被覆誘電体粒子の粉末X線回折)
(株)リガク製X線回折装置RINT−TTR IIIを用いて測定した。
(ニッケル被覆誘電体粒子における誘電体の割合)
(株)リガク製蛍光X線分析装置Primus IIを用いて求めた。
(ニッケル被覆誘電体粒子の収縮特性)
得られたニッケル被覆チタン酸バリウム粒子を2T/cm2で圧縮して、ペレットに成形し、このペレットを熱分析装置((株)リガク製TMA8310)を用いて、水素2%、残部窒素の雰囲気中、昇温速度5℃/分で加熱したときの収縮特性を測定した。
実施例1
100mL容量の広口のポリエチレン製の瓶に平均粒子径0.1μmのチタン酸バリウム (堺化学工業(株)製BT01) 20gとイオン交換水を入れて総量40mLの懸濁液とした。この懸濁液に直径1.5mmのジルコニアビーズ40mLを加え、200rpmにて15分間遊星ミルにて粉砕処理した。この粉砕処理の後、懸濁液から上記ビーズを分離し、得られた懸濁液を攪拌機にて300rpmで攪拌しながら、塩化パラジウム水溶液をパラジウム換算でチタン酸バリウム1g当り0.4mgとなるように10mL/分の割合で滴下した。塩化パラジウム水溶液の滴下終了後、60分間攪拌し、この後、水洗した。
次いで、得られたチタン酸バリウム粒子の懸濁液を攪拌しながら、これに80重量%濃度のヒドラジン水溶液をパラジウム量に対して当量滴下し、撹拌した後、水洗して、パラジウムを担持させたチタン酸バリウム粒子の懸濁液を得た。
ゲル状の水酸化ニッケルの懸濁液(水酸化ニッケルとして5.26g)にエチレングリコール100mLとポリビニルピロリドン水溶液20mL(ポリビニルピロリドンとして4g)を加え、攪拌した後、これに前記パラジウムを担持させたチタン酸バリウム粒子の懸濁液 (チタン酸バリウムとして0.5g)とエチレングリコール100mLを加え、185℃で4時間加熱して、水酸化ニッケルをチタン酸バリウム粒子上で還元し、かくして、ニッケル被覆チタン酸バリウム粒子を含む懸濁液を得た。
ニッケル被覆チタン酸バリウム粒子を含む懸濁液を室温まで降温し、ニッケル被覆チタン酸バリウム粒子を濾過によって集め、温水とエタノールでこの順序で洗浄した後、110℃で一晩乾燥した。
このようにして得られたニッケル被覆チタン酸バリウム粒子の平均粒子径は0.2μmであり、得られたニッケル被覆チタン酸バリウム粒子は、その粉末X線回折パターンを図1に示すように、ニッケル金属とチタン酸バリウムの回折線が観測された。更に、得られたニッケル被覆チタン酸バリウム粒子におけるチタン酸バリウム量は13重量%であった。得られたニッケル被覆チタン酸バリウム粒子の収縮特性を図2に示す。
実施例2
ゲル状の水酸化ニッケルの懸濁液(水酸化ニッケルとして5.26g)にエチレングリコール100mLとポリビニルピロリドン水溶液20mL(ポリビニルピロリドンとして4g)を加え、攪拌した後、これに実施例1におけると同じパラジウムを担持させたチタン酸バリウム粒子の懸濁液 (チタン酸バリウムとして0.77g)とエチレングリコール100mLを加え、180℃で5時間加熱して、水酸化ニッケルをチタン酸バリウム粒子上で還元し、かくして、ニッケル被覆チタン酸バリウム粒子を含む懸濁液を得た。
ニッケル被覆チタン酸バリウム粒子を含む懸濁液を室温まで降温し、ニッケル被覆チタン酸バリウム粒子を濾過し、温水とエタノールでこの順序で洗浄した後、110℃で一晩乾燥した。
このようにして得られたニッケル被覆チタン酸バリウム粒子の平均粒子径は0.2μmであり、得られたニッケル被覆チタン酸バリウム粒子は、その粉末X線回折パターンを図 3に示すように、ニッケル金属とチタン酸バリウムの回折線が観測された。更に、得られたニッケル被覆チタン酸バリウム粒子におけるチタン酸バリウム量は18重量%であった。得られたニッケル被覆チタン酸バリウム粒子の収縮特性を図4に示す。
実施例3
100mL容量の広口のポリエチレン製の瓶に平均粒子径0.05μmのチタン酸バリウム (堺化学工業(株)製BT005) 20gとイオン交換水を入れて総量40mLの懸濁液とした。この懸濁液に直径1.5mmのジルコニアビーズ40mLを加え、200rpmにて15分間遊星ミルにて粉砕処理した。この粉砕処理の後、懸濁液から上記ビーズを分離し、得られた懸濁液を攪拌機にて300rpmで攪拌しながら、塩化パラジウム水溶液をパラジウム換算でチタン酸バリウム1g当り0.4mgとなるように滴下した。塩化パラジウム水溶液の滴下終了後、攪拌し、水洗して、塩化パラジウムを担持させチタン酸バリウム粒子の懸濁液を得た。
ゲル状の水酸化ニッケルの懸濁液(水酸化ニッケルとして5.26g)にエチレングリコール100mLとポリビニルピロリドン水溶液20mL(ポリビニルピロリドンとして4g)を加え、攪拌した後、これに前記塩化パラジウムを担持させたチタン酸バリウム粒子の懸濁液 (チタン酸バリウムとして0.5g)とエチレングリコール100mLを加え、185℃で4時間加熱して、水酸化ニッケルをチタン酸バリウム粒子上で還元し、かくして、ニッケル被覆チタン酸バリウム粒子を含む懸濁液を得た。
ニッケル被覆チタン酸バリウム粒子を含む懸濁液を室温まで降温し、ニッケル被覆チタン酸バリウム粒子を濾過し、温水とエタノールでこの順序で洗浄した後、110℃で一晩乾燥した。
このようにして得られたニッケル被覆チタン酸バリウム粒子の平均粒子径は0.15μmであり、得られたニッケル被覆チタン酸バリウム粒子は、その粉末X線回折パターンを図5に示すように、ニッケル金属とチタン酸バリウムの回折線が観測された。更に、得られたニッケル被覆チタン酸バリウム粒子におけるチタン酸バリウム量は13重量%であった。得られたニッケル被覆チタン酸バリウム粒子の収縮特性を図6に示す。
比較例1
カルボキシメチルセルロースナトリウム0.098gを加熱、溶融させ、これに塩化ニッケル51.8gを溶解して、総容量を250mLとした。得られた塩化ニッケル溶液を攪拌しながら、80重量%濃度のヒドラジン水溶液と水酸化ナトリウム水溶液を加えた。これを60℃に加熱し、塩化ニッケルを還元して、ニッケル粒子を得た。得られたニッケル粒子を洗浄した後、110℃で一晩乾燥した。
このようにして得られた平均一次粒子径0.2μmのニッケル粒子に平均粒子径0.1μmのチタン酸バリウム粒子(堺化学工業(株)製BT01)13重量%加え、乳鉢にて混合した。得られた混合粉体を2T/cm2で圧縮し、ペレットに成形し、実施例1におけると同様にして、その収縮特性を測定した。結果を図2、図4及び図6に示す。
実施例1、実施例2及び実施例3によるニッケル被覆チタン酸バリウム粒子の収縮特性と上記比較例1によるニッケル粒子とチタン酸バリウム粒子との混合粉体からなる粒子の収縮特性を比較すれば明らかなように、本発明によるニッケル被覆チタン酸バリウム粒子は、高温での焼成において、収縮開始温度が大幅に高温側に移動しており、セラミック誘電体の焼結挙動に近い。
比較例2
100mL容量の広口のポリエチレン製の瓶に平均粒子径0.1μmのチタン酸バリウム (堺化学工業(株)製BT01) 20gとイオン交換水を入れて総量40mLの懸濁液とした。この懸濁液に直径1.5mmのジルコニアビーズ40mLを加え、200rpmにて15分間遊星ミルにて粉砕処理した。この粉砕処理の後、懸濁液から上記ビーズを分離して、チタン酸バリウム粒子の懸濁液を得た。
ゲル状の水酸化ニッケルの懸濁液(水酸化ニッケルとして5.26g)にエチレングリコール100mLとポリビニルピロリドン水溶液20mL(ポリビニルピロリドンとして4g)を加え、攪拌した後、これに上記チタン酸バリウム粒子の懸濁液(チタン酸バリウムとして0.5g)と塩化パラジウム水溶液(パラジウム換算でチタン酸バリウム1g当り0.4mg)とエチレングリコール100mLを加え、185℃で4時間加熱して、水酸化ニッケルを還元した。
得られた懸濁液を室温まで降温し、このように処理したチタン酸バリウム粒子を濾過して集め、温水とエタノールでこの順序で洗浄した後、110℃で一晩乾燥した。このようにして得られた粒子の平均粒子径は0.2μmであり、また、図7に示すように、得られた粒子の粉末X線回折において、ニッケル金属とチタン酸バリウムの回折線が観測された。更に、蛍光X線分析によって、得られた粒子におけるチタン酸バリウム量は13重量%であった。
得られた粒子を2T/cm2で圧縮して、ペレットに成形し、実施例1におけると同様にして、その収縮特性を測定した。結果を図8に示す。
実施例1によるニッケル被覆チタン酸バリウム粒子の収縮特性と上記比較例2による粒子の収縮特性を比較すれば明らかなように、本発明によるニッケル被覆チタン酸バリウム粒子は高温での焼成において、収縮開始温度が大幅に高温側に移動しており、セラミック誘電体の焼結挙動に近い。

Claims (9)

  1. 表面に貴金属又はその塩を担持させた誘電体粒子とニッケル化合物を含むポリオール中において、上記ニッケル化合物を上記誘電体粒子の表面上でニッケルに還元して析出させることを特徴とするニッケル被覆誘導体粒子の製造方法。
  2. 誘電体粒子をその懸濁液中、水溶性の貴金属塩で処理した後、洗浄して、表面に上記貴金属塩を担持させた誘電体粒子を得、次いで、これとニッケル化合物を含むポリオール中において、上記ニッケル化合物を上記誘電体粒子の表面上でニッケルに還元して析出させる請求項1に記載の方法。
  3. 誘電体粒子をその懸濁液中、水溶性の貴金属塩で処理した後、洗浄して、表面に上記貴金属塩を担持させた誘電体粒子を得、次いで、誘電体粒子の表面の上記貴金属塩を還元剤にて貴金属に還元して、表面に上記貴金属を担持させた誘電体粒子を得、次いで、これとニッケル化合物を含むポリオール中において、上記ニッケル化合物を上記誘電体粒子の表面上でニッケルに還元して析出させる請求項1に記載の方法。
  4. 誘電体粒子がチタン酸バリウム粒子である請求項1から3のいずれかに記載の方法。
  5. 貴金属がパラジウムである請求項1に記載の方法。
  6. 貴金属塩がパラジウム塩である請求項1に記載の方法。
  7. パラジウム塩が塩化パラジウム又は硝酸パラジウムである請求項6に記載の方法。
  8. ポリオールがエチレングリコールである請求項1に記載の方法。
  9. ニッケル化合物が水酸化ニッケルである請求項1に記載の方法。
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