JP4134602B2 - ニッケル粉末の製造方法、ニッケル粉末、導電性ペーストおよび積層セラミック電子部品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、ニッケル粉末の製造方法、この製造方法によって得られたニッケル粉末、このニッケル粉末を含む導電性ペースト、およびこの導電性ペーストを用いて構成された積層セラミック電子部品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
積層セラミックコンデンサなどの積層セラミック電子部品は、内部導体膜となる導電性ペーストからなる膜が印刷等により形成された複数のセラミックグリーンシートを積層し、これらを圧着した後、焼成することによって製造されている。ここで用いられる導電性ペーストは、導電成分として、ニッケル、銅またはAg/Pd等の粉末を用い、これに有機ビヒクル等を添加して作製される。
【0003】
このような積層セラミック電子部品において、小型化かつ高性能化を進めるためには、特に積層セラミックコンデンサにおいて、高容量化を進めるためには、内部導体膜の厚みをできるだけ薄くし、単位体積あたりの積層数を増大させることが要望される。この要望を満たすためには、導電性ペーストに含まれる金属粉末の粒径をできるだけ小さくすることが求められる。
【0004】
粒径の小さい金属粉末を有利に製造できる方法として、たとえば特開平12−87121号公報に記載されるように、液相中で還元剤と金属塩溶液とを混合して、金属を還元析出させる方法がある。
【0005】
しかしながら、粒径が小さくなるほど、粉末の比表面積が大きくなり、しかも、粒径の変化率の逆数の2乗の変化率をもって比表面積が大きくなる。粉末の比表面積が大きくなると、粉末の表面エネルギーが増大し、その金属粉末の焼結開始温度が低下する。したがって、導電性ペーストに含まれる金属粉末が微粒化されるに従って、焼成工程において、導電性ペーストによって形成された内部導体膜の焼結収縮開始温度が低温側にシフトし、セラミック層を与えるセラミックが収縮する前に、金属粉末の焼結が急峻に進行してしまい、焼成後の積層体において、デラミネーションやクラック等の構造欠陥が発生する原因となる。
【0006】
この問題を解決するため、特開平6−96997号公報および特開平11−185527号公報に記載されているように、パラジウムで被覆されたニッケル粉末を用いることにより、ニッケル粉末の焼結収縮を制御することが試みられているが、この方法では、ニッケルとパラジウムとが合金化するため、ニッケル粉末が、たとえば平均粒径100nm未満というように微粉化されたときには、十分な収縮抑制効果を発揮し得ず、そのため、過焼結による内部導体膜のカバレッジの低下やデラミネーションの問題を生じさせる。
【0007】
また、特開平5−55077号公報、特開平10−106351号公報および特開平11−283441号公報では、導電性ペースト中に酸化ニッケルを含ませることや、一部が酸化されたニッケル粉末の使用が提案されているが、このような粉末を用いた場合には、焼成中に酸化ニッケル中のニッケル成分がセラミック層へと拡散し、セラミック層を構成するセラミックの電気的特性や信頼性を低下させるという問題を招いたり、焼成工程において、酸化ニッケルを還元する還元性雰囲気が適用された場合には、添加された酸化ニッケルやニッケル粉末中の酸化ニッケルが還元してしまい、実質的な効果を発揮できないという問題を招いたりする。
【0008】
また、特開平11−343501号公報には、TiO2 等の酸化物で金属粉末の表面をコートすることによって焼結収縮を抑制する方法が記載されているが、表面コートは、均一に形成することが極めて困難であるため、不均一な場合が多く、コートが不均一な場合には、コートの破れ部分からネッキングが進み、焼結収縮を抑制する効果が十分に発揮されないという問題を招く。さらに、これを補うべくコート量を増やした場合、セラミック層を構成するセラミックの特性に影響を及ぼすという問題を招いてしまう。
【0009】
なお、上述の特開平11−343501号公報に記載された技術に関連して、一般に、セラミックと内部導体膜との熱収縮温度のミスマッチを緩和するために、セラミック材料を導電性ペーストに添加するということが行なわれているが、添加したセラミック材料にはネッキングを抑制する効果はなく、特に金属粉末の粒径が小さい場合には、内部導体膜を形成する導電性ペーストの焼成時の収縮量が大きくなるため、セラミックと内部導体膜との収縮挙動の差を緩和するには必ずしも十分でない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、この発明の目的は、上述したような問題を解決し得る、ニッケル粉末の製造方法およびこの製造方法によって得られたニッケル粉末を提供しようとすることである。
【0011】
この発明の他の目的は、上述したニッケル粉末を含み、積層セラミック電子部品の内部導体膜を形成するために有利に用いられる、導電性ペーストを提供しようとすることである。
【0012】
この発明のさらに他の目的は、上述した導電性ペーストを用いて構成される積層セラミック電子部品を提供しようとすることである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
この発明は、まず、ニッケル粉末の製造方法に向けられる。この発明に係るニッケル粉末の製造方法は、炭酸イオンおよび珪酸イオンの少なくとも一方と苛性アルカリと還元剤とを含む、還元剤溶液を準備する工程と、アルカリ土類金属塩を含む、塩化ニッケル溶液を準備する工程と、これら還元剤溶液と塩化ニッケル溶液とを混合する工程とを備え、アルカリ土類金属塩は、アルカリ土類金属として、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムのうちの少なくとも1種を含み、水酸化物、塩化物、硝酸塩およびカルボン酸塩のうちの少なくとも1種であり、ニッケル粉末は、金属ニッケルとアルカリ土類金属元素とを含み、アルカリ土類金属元素の含有量は、ニッケル100モルに対して0.15〜10モルであることを特徴としている。
【0014】
上述の還元剤としては、たとえば、ヒドラジン、ヒドラジン水和物、次亜リン酸塩または水素化ホウ素塩が有利に用いられる。
【0015】
また、炭酸イオンは、たとえば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩および炭酸ガスのうちの少なくとも1種を溶解して得られたものであり、珪酸イオンは、ナトリウム塩、カリウム塩およびアンモニウム塩のうちの少なくとも1種を溶解して得られたものであることが好ましい。
【0017】
還元性溶液および塩化ニッケル溶液の少なくとも一方は、水溶性有機溶剤を含むことが好ましい。
【0018】
また、塩化ニッケル溶液中には、ニッケル100モルに対して0.0001〜10モルの銅を含有させることが好ましい。
【0019】
この発明は、また、上述のような製造方法によって得られた、ニッケル粉末にも向けられる。この発明に係るニッケル粉末は、金属ニッケルとアルカリ土類金属元素と炭素および珪素の少なくとも一方の元素とを含むことを特徴としている。
【0023】
この発明は、また、上述したニッケル粉末と有機ビヒクルとを含む、導電性ペーストにも向けられる。
【0024】
さらに、この発明は、積層された複数のセラミック層およびセラミック層間の特定の界面に沿って延びる内部導体膜を備える、積層セラミック電子部品にも向けられる。この発明に係る積層セラミック電子部品は、内部導体膜が、上述した導電性ペーストの焼結体から構成されることを特徴としている。
【0025】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明にとって興味ある積層セラミック電子部品の一例としての積層セラミックコンデンサ1を図解的に示す断面図である。
【0026】
積層セラミックコンデンサ1は、積層体2を備えている。積層体2は、誘電体セラミックからなる積層された複数のセラミック層3と、複数のセラミック層3の間の特定の複数の界面に沿ってそれぞれ延びる複数の内部導体膜4および5とを備えている。
【0027】
内部導体膜4および5は、積層体2の外表面にまで到達するように形成される。より詳細には、積層体2の一方の端面6にまで引き出される内部導体膜4と他方の端面7にまで引き出される内部導体膜5とが、積層体2の内部において、セラミック層3を介して静電容量が得られるように互いに対向しながら交互に配置されている。
【0028】
上述の静電容量を取り出すため、積層体2の外表面上であって、端面6および7上には、内部導体膜4および5のいずれか特定のものに電気的に接続されるように、外部電極8および9がそれぞれ形成されている。
【0029】
このような積層セラミックコンデンサ1において、内部導体膜4および5は、導電性ペーストの焼結体から構成され、この導電性ペーストは、この発明に係る製造方法によって得られたニッケル粉末と有機ビヒクルとを含むものである。
【0030】
導電性ペーストに含まれるニッケル粉末は、炭酸イオンおよび珪酸イオンの少なくとも一方と苛性アルカリと還元剤とを含む、還元剤溶液を準備するとともに、アルカリ土類金属塩を含む、塩化ニッケル溶液を準備し、次いで、これら還元剤溶液と塩化ニッケル溶液とを混合することによって得られたものである。
【0031】
得られたニッケル粉末は、金属ニッケルとアルカリ土類金属元素とを含み、アルカリ土類金属元素の含有量は、ニッケル100モルに対して0.15〜10モルである。このようにアルカリ土類金属化合物を含むことにより、ニッケル粉末の平均粒径がたとえば0.2μm以下とされても、アルカリ土類金属元素の作用によって、焼結収縮開始温度を上昇させることができるとともに、収縮開始後の急峻な収縮を抑制することができる。
【0032】
そのため、このニッケル粉末を含む導電性ペーストを、たとえば、図1に示した積層セラミックコンデンサ1に備える内部導体膜4および5の形成のために用いれば、積層体2を得るための焼成工程において、クラックやデラミネーションを生じにくくすることができる。
【0033】
この発明に係る製造方法を実施したとき、ニッケル粉末にコーティングを施す方法と比較して、より均一に、ニッケル粒子の外部にアルカリ土類金属元素を析出させることができる。
【0034】
上述のように析出するアルカリ土類金属元素は、金属状態では存在し得ない。
【0035】
上述のようにニッケル粒子の外部に均一に析出したアルカリ土類金属元素は、ニッケル粒子同士のネッキングを抑制し、また、導電性ペーストにおけるニッケル粒子の分散性を良好にし、したがって、導電性ペースト中のニッケル粉末の充填密度を高めることができる。このことから、導電性ペーストの焼結収縮の度合いを低減することができる。
【0036】
また、アルカリ土類金属は、これが、たとえば積層セラミックコンデンサ1の内部導体膜4および5に含まれていたとしても、希土類元素やペロブスカイト型の複合酸化物と比較すれば、積層セラミックコンデンサ1の電気的特性や信頼性に対する影響がそれほどなく、また、現に、多くのセラミック電子部品において用いられているので、ニッケル粉末に含ませることについて格別な問題を引き起こすことはない。
【0039】
また、ニッケル粉末に含まれるアルカリ土類金属の元素量は、ニッケル100モルに対して0.15〜10モルとされる。このアルカリ土類金属の含有元素量が0.15モル未満では、十分な焼結収縮抑制効果が得られない。他方、含有元素量が10モルを超えると、セラミックの電気的特性および信頼性への影響を無視できなくなる場合がある。
【0040】
還元剤溶液に含まれる還元剤としては、炭酸塩や珪酸塩の化合物を共析させることを考慮して、金属ニッケルを中性からアルカリ性領域で還元析出できるものが好ましく、したがって、たとえば、ヒドラジン、ヒドラジン水和物、次亜リン酸塩または水素化ホウ素塩を有利に用いることができる。
【0041】
ヒドラジンまたはヒドラジン水和物は、これを還元剤として用いると、析出した金属ニッケルを主成分とするニッケル粒子に不必要な残留物が残らない点で好ましい。しかしながら、アルカリ土類金属の珪酸塩をニッケルとともに共析する場合には、珪素成分のニッケル粒子中への析出効率を上げる目的で、反応溶液中のpHを10以下にすることがある。
【0042】
このような場合には、水素化ホウ素ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、抱水ヒドラジンの順に好適である。実際には、水素化ホウ素ナトリウムや次亜リン酸ナトリウムを用いた場合、ニッケル粒子中に生成するホウ素成分やリン成分を少なくする目的で、水素化ホウ素ナトリウムまたは次亜リン酸ナトリウムと抱水ヒドラジンとの混合物を用いることが好都合である場合がある。また、水素化ホウ素ナトリウムの代わりに、ニッケル中に残留するホウ素成分を低減する目的で、ジメチルアミンボロンを用いることもできる。
【0043】
炭酸イオンおよび珪酸イオンの各々は、たとえば、ナトリウム塩、カリウム塩またはアンモニウム塩として供給可能であり、特に炭酸イオンの場合には、さらに、炭酸ガス曝気の方法によっても供給可能である。
【0044】
アルカリ土類金属塩としては、還元剤溶液や塩化ニッケル溶液に溶解し得るものが使用可能であり、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムの各々の水酸化物、塩化物、硝酸塩またはカルボン酸塩が用いられる。特に、塩化物は、溶解性が高い点で好ましい。また、カルボン酸塩の一種である酢酸塩は、生成したニッケル粒子中の塩素成分を少なくする目的で有利に用いられる。
【0045】
ニッケルの還元には、通常、水を溶媒として用いるが、より均一なニッケル粉末を作製するには、還元剤溶液および塩化ニッケル溶液の少なくとも一方における溶媒の少なくとも一部として、水溶性有機溶剤を用いることが好ましい。このように、水溶性有機溶剤を用いると、添加したアルカリ土類金属と炭酸イオンおよび/または珪酸イオンとから生成する塩の溶解度を調整することが容易であり、これら塩の過飽和度を調整することによって、微細な結晶を析出させ、均一なニッケル粉末の作製に寄与させることができるからである。
【0046】
水溶性有機溶剤としては、塩化ニッケルを溶解しやすいアルコール類を好適に用いることができる。特に、メタノール、エタノールまたはプロパノールなどをこの目的のために好適に用いることができる。
【0047】
得られたニッケル粉末は、好ましくは、0.2μm以下の平均粒径となるように制御される。これは、ニッケル粉末の平均粒径が0.2μm以下の場合において、この発明による効果が特に顕著となるためであるが、たとえば0.5〜1μmの平均粒径のニッケル粉末を得ようとする場合においても相当の効果が得られる。
【0048】
この発明に係るニッケル粉末の製造方法において、還元反応の安定化のため、ならびにそれによる生成粒子の安定化および微細化のため、塩化ニッケル溶液中に、銅を添加することが好ましい。この場合、銅の添加量は、ニッケル100モルに対して0.0001〜10モルの範囲に選ばれる。銅の添加量が0.0001モル未満では、ニッケル粒子の微細化の効果が得られず、他方、10モルを超えると、セラミックの電気的特性および信頼性に悪影響を及ぼすことがあるためである。
【0049】
以上のようにして得られたニッケル粉末を、有機バインダおよび有機溶剤からなる有機ビヒクルならびに必要な添加剤と混合して分散混合処理を行なうことによって、導電性ペーストが得られる。この導電性ペーストを内部導体膜4および5の形成のために用いて、図1に示すような積層セラミックコンデンサ1が次のようにして製造される。
【0050】
まず、セラミック層3となるべき、たとえばチタン酸バリウム系のような誘電体セラミックのための原料粉末を含むセラミックグリーンシートが用意され、セラミックグリーンシート上に、上述した導電性ペーストを用いて、所望のパターンを有する内部導体膜4および5のための導電性ペースト膜が印刷等によって形成される。
【0051】
次に、上述のように、導電性ペースト膜がそれぞれ形成されたセラミックグリーンシートを含む複数のセラミックグリーンシートが積層され、熱圧着されることによって、一体化された積層体2の生の状態のものが得られる。
【0052】
次に、生の積層体2は、焼成される。この焼成では、導電性ペースト膜がニッケルを含んでいるので、還元性雰囲気が適用される。このような焼成によって、セラミックグリーンシートは、焼結されて、セラミック層3となり、導電性ペースト膜は、焼結されて、内部導体膜4および5となる。
【0053】
次に、積層体2の端面6および7上に、それぞれ、外部電極8および9が形成される。外部電極8および9は、金属粉末およびガラスフリットを含む導電性ペーストを付与し、これを焼き付けることによって形成される。外部電極8および9上には、必要に応じて、ニッケル、銅、半田または錫などのめっきが施される。
【0054】
なお、以上の説明は、積層セラミックコンデンサについて行なったが、この発明に係る製造方法によって得られたニッケル粉末を含む導電性ペーストは、積層された複数のセラミック層およびセラミック層間の特定の界面に沿って延びる内部導体膜を備える積層セラミック電子部品であれば、積層セラミックコンデンサ以外の積層セラミック電子部品においても、内部導体膜を形成するために有利に用いることができる。
【0055】
次に、この発明を、以下の実験例に基づいて、より具体的に説明する。
【0056】
【実験例1】
実験例1では、各試料に係るニッケル粉末を製造するため、炭酸イオンを含有する還元剤溶液を用いた。
(実施例)
実施例としての表1および表2に示した試料1−1〜1−22、2−1〜2−22および3−1の各々に係る金属ニッケルとアルカリ土類金属元素とを含むニッケル粉末を製造するため、以下のようにして、塩化ニッケル溶液および還元剤溶液を作製した。なお、この明細書において、アルカリ土類金属元素の含有量がこの発明の範囲内か範囲外かに関わらず、ニッケル粉末が金属ニッケルとアルカリ土類金属元素とを含むものについては、後述する「比較例」との対比で、「実施例」と呼ぶことにする。
【0057】
1.試料1−1〜1−22
(1)塩化ニッケル溶液
180gの塩化ニッケルと、0.048g、0.08g、0.23g、3.1g、7.7g、15.4gおよび18.5gの各々の塩化マグネシウム6水和物とを、それぞれ、1180mlのイオン交換水に溶解したものに、0.417gの塩化銅を添加して、試料1−1、1−2、1−3、1−4、1−5、1−6および1−7の各々のための塩化ニッケル溶液を作製した。
【0058】
また、上述の塩化マグネシウムの代わりに、0.04g、0.11g、1.52g、3.8gおよび7.6gの各々の塩化カルシウム無水物を用いたことを除いて、試料1−1、1−2、1−3、1−4、1−5、1−6および1−7の場合と同様にして、試料1−8、1−9、1−10、1−11および1−12の各々のための塩化ニッケル溶液を作製した。
【0059】
また、塩化マグネシウムの代わりに、0.10g、0.30g、4.0g、10.1gおよび20.2gの各々の塩化ストロンチウム6水和物を用いたことを除いて、試料1−1、1−2、1−3、1−4、1−5、1−6および1−7の場合と同様にして、試料1−13、1−14、1−15、1−16および1−17の各々のための塩化ニッケル溶液を作製した。
【0060】
また、塩化マグネシウムの代わりに、0.09g、0.28g、3.7g、9.2gおよび18.5gの各々の塩化バリウム2水和物を用いたことを除いて、試料1−1、1−2、1−3、1−4、1−5、1−6および1−7の場合と同様にして、試料1−18、1−19、1−20、1−21および1−22の各々のための塩化ニッケル溶液を作製した。
【0061】
(2)還元剤溶液
139gの水酸化ナトリウムと、766gの80%抱水ヒドラジンと、上述した塩化ニッケル溶液に含まれるアルカリ土類金属塩化物の2倍のモル量の炭酸ナトリウムとを、それぞれ、612mlのイオン交換水に溶解して、試料1−1〜1−22の各々のための還元剤溶液を作製した。
【0062】
2.試料2−1〜2−22
(1)塩化ニッケル溶液
上述した試料1−1〜1−22のための塩化ニッケル溶液の作製において用いたイオン交換水の50%をエタノールで置き換えたことを除いて、試料1−1〜1−22のための塩化ニッケル溶液とそれぞれ同様の組成をもって、試料2−1〜2−22の各々のための塩化ニッケル溶液を作製した。
【0063】
(2)還元剤溶液
前述した試料1−1〜1−22のための還元剤溶液の作製において用いたイオン交換水の50%をエタノールで置き換えたことを除いて、試料1−1〜1−22のための還元剤溶液とそれぞれ同様の組成をもって、試料2−1〜2−22の各々のための還元剤溶液を作製した。
【0064】
3.試料3−1
(1)塩化ニッケル溶液
前述した試料1−4の場合と同様、180gの塩化ニッケルと3.1gの塩化マグネシウム6水和物とを、1180mlのイオン交換水に溶解したものに、0.417gの塩化銅を添加して、試料3−1のための塩化ニッケル溶液を作製した。
【0065】
(2)還元剤溶液
139gの水酸化ナトリウムと、766gの80%抱水ヒドラジンとを、612mlのイオン交換水に溶解し、得られた溶液に炭酸ガスを1ml/分の流量で30分間通気して、試料3−1のための還元剤溶液を作製した。
【0066】
このようにして得られた試料1−1〜1−22、2−1〜2−22および3−1の各々のための塩化ニッケル溶液および還元剤溶液を、それぞれ、液温60℃に調整し、還元剤溶液を回転数350rpmの攪拌羽根で攪拌しながら、その中に塩化ニッケル溶液を1000ml/分の流量で投入した。投入完了後、十分に反応が進行するまで、約30分間、回転数350rpmで攪拌を継続した。
【0067】
次に、ニッケル粉末が生成された後、これを分離・回収し、純水で洗浄し、その後、アセトンで置換脱水し、さらに、オーブン中で乾燥した。
【0068】
このようにして得られたニッケル粉末を、走査型電子顕微鏡で観察したところ、平均粒径が80〜100nmであった。
【0069】
また、得られたニッケル粉末について、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−AES)によって、ニッケル(Ni)とマグネシウム(Mg)とカルシウム(Ca)とストロンチウム(Sr)とバリウム(Ba)の各元素の量を求めるとともに、S−C計によって、炭素(C)の元素の量を求めた。その結果が表1および表2に示されている。表1および表2において、Mg、Ca、Sr、BaおよびCの各元素の量は、Ni100モルに対するモル数で示されている。
【0070】
また、得られたニッケル粉末について、熱機械分析(TMA)によって焼結挙動を評価し、焼結収縮開始温度および焼結収縮終了温度を求めた。その結果が表1および表2に示されている。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
次に、上述した各試料に係るニッケル粉末に、有機ビヒクルを加えて混合して、入念に分散混合処理を行なうことによって、良好に分散したニッケル粉末を含有する導電性ペーストを作製した。
【0074】
次に、この導電性ペーストを用いて、次のように積層セラミックコンデンサを作製した。
【0075】
まず、セラミック原料粉末として、平均粒径(D50)が0.5μmのチタン酸バリウム(BaTiO3 )粉末を用意した。次に、このBaTiO3 粉末に、適当な添加物を添加するとともに、有機ビヒクルを加えて混合し、セラミックスラリーを作製し、次いで、このセラミックスラリーをシート状に成形して、厚み1.4μmのセラミックグリーンシートを得た。
【0076】
次に、セラミックグリーンシート上に、前述した各試料に係るニッケル粉末を含む導電性ペーストをスクリーン印刷し、内部導体膜となる導電性ペースト膜を形成した後、これら導電性ペースト膜が形成された複数のセラミックグリーンシートを積層し、熱プレスして一体化し、その後、所定の寸法にカットすることによって、生の積層体を得た。
【0077】
次に、生の積層体を、窒素雰囲気中において400℃の温度に加熱し、バインダを分解させた後、酸素分圧9×10-12 MPaのH2 −N2 −H2 Oガスからなる還元性雰囲気中において、1200℃を最高焼成温度として3時間保持するプロファイルにて焼成し、焼結した積層体を得た。この焼結体において、有効セラミック層の数は100であり、1層あたりの内部導体膜の有効対向面積は17.8×10-6m2 であった。
【0078】
次に、焼結後の積層体の両端面上に、外部電極を形成し、試料となる積層セラミックコンデンサを完成させた。
【0079】
次に、得られた各試料に係る積層セラミックコンデンサについて、表3および表4にその結果が示されているように、「カバレッジ」、「クラック発生率」および「コンデンサ温度特性」をそれぞれ評価した。
【0080】
より詳細には、「カバレッジ」は、各試料に係る積層セラミックコンデンサを、内部導体膜に沿って剥離し、内部導体膜に穴が空いている様子を顕微鏡写真に撮り、これを画像解析処理することによって内部導体膜に覆われている程度を数値化したものである。
【0081】
また、「クラック発生率」は、各試料に係る積層セラミックコンデンサを樹脂に埋めて研磨を行ない、研磨面を顕微鏡で観察し、内部導体膜とセラミック層を含む積層部分およびその周辺にひびが発生しているものをクラックが発生しているものとし、このクラックが発生している試料の比率を求めたものである。
【0082】
「コンデンサ温度特性」は、各試料に係る積層セラミックコンデンサの静電容量−温度特性を求め、JIS規格のB特性を満足するか否かを評価し、満足するものを「○」とし、満足しないものを「×」として示したものである。
【0083】
【表3】
【0084】
【表4】
【0085】
(比較例)
1.比較例1
比較例1に係るニッケル粉末として、アルカリ土類金属化合物を含まない平均粒径100nmのニッケル粉末を用意した。
【0086】
2.比較例2
比較例2に係るニッケル粉末として、平均粒径100nmのニッケル粉末を、SnCl2 と塩酸とを含む溶液に浸漬し、それによって、パラジウムの付着を促進させる錫をニッケル粉末に吸着させ、次いで、PdCl2 を含む溶液に浸漬し、ニッケル100モルに対して2モルのパラジウムが表面に析出したニッケル粉末を得た。
【0087】
3.比較例3
比較例3に係るニッケル粉末として、平均粒径100nmのニッケル粉末を200℃の温度に設定されたオーブンに2時間放置し、表面が酸化されたニッケル粉末を得た。このニッケル粉末は、XPS解析により、その表面からニッケル金属が検出されないことを確認した。
【0088】
次に、比較例1〜3の各々に係るニッケル粉末について、実施例の場合と同様、熱機械分析(TMA)により焼結挙動を評価し、表5に示すように、焼結収縮開始温度および焼結収縮終了温度を求めた。
【0089】
【表5】
【0090】
次に、比較例1ないし3の各々に係るニッケル粉末を用いて、実施例の場合と同様の方法により、導電性ペーストを作製し、この導電性ペーストを用いて積層セラミックコンデンサを作製した。そして、比較例1ないし3の各々に係る積層セラミックコンデンサについて、表6にその結果が示されているように、実施例の場合と同様の方法により、「カバレッジ」、「クラック発生率」および「コンデンサ温度特性」をそれぞれ評価した。
【0091】
【表6】
【0092】
(考察)
実施例としての試料1−1〜1−22、2−1〜2−22および3−1と比較例1とを比較すると、アルカリ土類金属元素を含まない比較例1では、表5に示すように、焼結収縮開始温度および焼結収縮終了温度が、それぞれ、451℃および492℃というように比較的低く、そのため焼結が急峻に進むのに対し、実施例としての試料では、表1および表2に示すように、アルカリ土類金属の含有元素量が増えるに従って、焼結開始温度および焼結収縮終了温度がともに上昇し、焼結収縮が緩やかに生じるようになっている。
【0093】
たとえば、表1に示したMgを含む試料1−1〜1−7について見ると、Mgの含有元素量が0.03モルの試料1−1の場合には、焼結収縮開始温度が490℃であり、焼結収縮終了温度が530℃であるのに対し、Mgの含有元素量が2モルの試料1−4では、焼結収縮開始温度が741℃であり、焼結収縮終了温度が1160℃というように、それぞれ上昇していることがわかる。この含有量の増大による効果は、試料1−1〜1−7について見れば、含有元素量が2モルでほぼ飽和し、その後、12モルまで大きな変化はない。
【0094】
また、表3を参照すれば、Mgを含有する試料1−1〜1−7において、Mgの含有元素量の増大に伴い、カバレッジが上昇するとともに、クラック発生率が低下していることがわかる。ただし、Mgの含有元素量が12モルと多い試料1−7では、コンデンサ温度特性がJIS規格B特性を満たさなくなるという不具合が発生している。
【0095】
同様の傾向が、他の試料においても見られる。
【0096】
表1〜表6から、ニッケル粉末におけるアルカリ土類金属の元素量が、ニッケル100モルに対して0.15〜10モルであるとき、焼結収縮抑制効果に関して、比較例より優れていることがわかる。
【0097】
なお、実施例では、ニッケル粉末を製造するために用いたアルカリ土類金属塩として、塩化マグネシウムなどの塩化物を用いたが、これに限らず、水酸化物、硝酸塩またはカルボン酸塩であっても、同様の結果が得られることが確認されている。
【0098】
また、実施例では、アルカリ土類金属として、Mg、Ca、SrおよびBaの各々を単独で含有させたが、これらアルカリ土類金属の2種以上を同時に含有させても、同様の結果が得られることが確認されている。
【0099】
なお、比較例2および3について考察すると、比較例2では、表5に示すように、焼結収縮開始温度が660℃、焼結収縮終了温度が951℃というように比較的高く、また、表6に示すように、カバレッジ、クラック発生率およびコンデンサ温度特性についても、良好な評価結果が得られている。しかしながら、比較例2では、前述したように、平均粒径100nmのニッケル粉末が用いられたが、このニッケル粉末の粒径がより小さくなったときには、焼結収縮開始温度および焼結収縮終了温度がより低くなり、カバレッジがより低下することが考えられる。
【0100】
比較例3では、焼結収縮開始温度および焼結収縮終了温度が、それぞれ、472℃および508℃というように比較的低く、また、カバレッジの低下およびクラック発生率の増大を招いている。これは、表面が酸化されたニッケル粉末が、還元性雰囲気下での焼成で、還元され、表面の酸化による効果が失われたためであると考えられる。
【0101】
【実験例2】
上述の実験例1において作製した実施例としての試料3−1と比較例1との各々のニッケル粉末をそれぞれ用いて作製された各導電性ペーストを希釈して、約10μmの厚みを有する塗膜をそれぞれ形成した。
【0102】
次いで、上述の塗膜を、それぞれ乾燥した後、二次電子顕微鏡により観察し、凝集体サイズを求めることによって、粒子の分散状態を評価した。その結果が表7に示されている。
【0103】
【表7】
【0104】
表7から、アルカリ土類金属元素を含む実施例としての試料3−1によれば、このようなアルカリ土類金属元素を含まない比較例1に比べて、凝集体サイズが小さく、良好に分散していることがわかる。
【0105】
【実験例3】
表8に示した試料4−1〜4−9の各々に係るニッケル粉末を製造するため、以下のようにして、塩化ニッケル溶液および還元剤溶液を作製した。なお、実験例3では、各試料に係るニッケル粉末を製造するため、珪酸イオンを含有する還元剤溶液を用いた。
【0106】
1.試料4−1〜4−7
(1)塩化ニッケル溶液
45gの塩化ニッケルと、0.011g、0.019g、0.058g、0.770g、1.924g、3.85gおよび4.62gの各々の塩化マグネシウムとを、それぞれ、150mlのイオン交換水に溶解したものに、0.00032gの塩化銅を添加して、試料4−1、4−2、4−3、4−4、4−5、4−6および4−7の各々のための塩化ニッケル溶液を作製した。
【0107】
(2)還元剤溶液
22.5gの水酸化ナトリウムと、90gの80%抱水ヒドラジンと、0.005g、0.0083g、0.026g、0.348g、0.871g、1.742gおよび2.09gの各々のオルト珪酸ナトリウムとを、それぞれ、60mlのイオン交換水に溶解して、試料4−1、4−2、4−3、4−4、4−5、4−6および4−7の各々のための還元剤溶液を作製した。
【0108】
2.試料4−8
(1)塩化ニッケル溶液
上述した試料4−4の場合と同様の組成をもって、試料4−8のための塩化ニッケル溶液を作製した。
【0109】
(2)還元剤溶液
上述した試料4−4のための還元剤溶液の作製において用いた抱水ヒドラジンの代わりに、150gの次亜リン酸ナトリウムを用いたことを除いて、試料4−4のための還元剤溶液と同様の組成をもって、試料4−8のための還元剤溶液を作製した。
【0110】
3.試料4−9
(1)塩化ニッケル溶液
上述した試料4−4の場合と同様の組成をもって、試料4−9のための塩化ニッケル溶液を作製した。
【0111】
(2)還元剤溶液
上述した試料4−4のための還元剤溶液の作製において用いた抱水ヒドラジンの代わりに、33.5gの水酸化ホウ素ナトリウムを用いたことを除いて、試料4−4のための還元剤溶液と同様の組成をもって、試料4−9のための還元剤溶液を作製した。
【0112】
このようにして得られた試料4−1〜4−9の各々のための塩化ニッケル溶液および還元剤溶液を用いて、前述した実験例1における実施例としての試料1−1〜1−22、2−1〜2−22および3−1の場合と同様の操作を経て、ニッケル粉末を作製した。
【0113】
このようにして得られたニッケル粉末を、走査型電子顕微鏡で観察したところ、試料4−1〜4−7に係るニッケル粉末は平均粒径80〜100nmであり、試料4−8に係るニッケル粉末は60nmであり、試料4−9に係るニッケル粉末は50nmであった。
【0114】
また、得られたニッケル粉末について、実験例1の場合と同様の方法によって、ニッケル(Ni)とマグネシウム(Mg)と珪素(Si)の各元素の量を求めた。その結果が表8に示されている。表8において、MgおよびSiの各元素の量は、Ni100モルに対するモル数で示されている。
【0115】
また、得られたニッケル粉末について、実験例1の場合と同様の方法によって、焼結収縮開始温度および焼結収縮終了温度を求めた。その結果が表8に示されている。
【0116】
【表8】
【0117】
次に、上述した各試料に係るニッケル粉末を用いて、実験例1の場合と同様の方法によって、導電性ペーストを作製し、この導電性ペーストを用いて、積層セラミックコンデンサを作製した。そして、得られた各試料に係る積層セラミックコンデンサについて、実験例1の場合と同様の方法によって、カバレッジ、クラック発生率およびコンデンサ温度特性をそれぞれ評価した。これらの評価結果が表9に示されている。
【0118】
【表9】
【0119】
実施例としての試料4−1〜4−9と実験例1において記載した比較例1とを比較すると、比較例1では、焼結が急峻に進み、前述の表5に示すように、焼結収縮開始温度および焼結収縮終了温度が、それぞれ、451℃および492℃であるのに対し、実施例としての試料4−1〜4−9では、表8に示すように、アルカリ土類金属としてのMgの含有元素量が増えるに従って、焼結収縮が緩やかに進み、焼成収縮開始温度および焼成収縮終了温度が高温側へシフトしていることがわかる。
【0120】
たとえば、Mgの含有元素量が0.03モルの試料4−1の場合には、焼結収縮開始温度が511℃であり、焼結収縮終了温度が542℃であるのに対し、Mgの含有元素量が2モルの試料4−4では、焼結収縮開始温度が805℃であり、焼結収縮終了温度が1160℃というように、それぞれ上昇していることがわかる。この含有元素量の増大による効果は、試料4−1〜4−7について見れば、含有元素量が2モルでほぼ飽和し、その後、12モルまで大きな変化はない。
【0121】
また、表9を参照すれば、試料4−1〜4−7において、Mgの含有元素量の増大に伴い、カバレッジが上昇するとともに、クラック発生率が低下していることがわかる。ただし、Mgの含有元素量が12モルと多い試料4−7では、コンデンサ特性がJIS規格のB特性を満たさなくなるという不具合が発生している。
【0122】
表8および表9ならびに前傾の表5および表6から、ニッケル粉末におけるアルカリ土類金属化合物のアルカリ土類金属の含有元素量が、ニッケル100モルに対して0.15〜10モルであるとき、焼結収縮抑制効果に関して、比較例より優れていることがわかる。
【0123】
なお、試料4−1〜4−9では、ニッケル粉末を製造するために用いたアルカリ土類金属塩として、塩化マグネシウムを用いたが、これに限らず、マグネシウムの水酸化物、硝酸塩またはカルボン酸塩であっても、あるいは、マグネシウム以外に、カルシウム、ストロンチウムまたはバリウムを用いても、同様の結果が得られることが確認されている。
【0124】
また、この実験例3では、各試料に係るニッケル粉末を製造するため、珪酸イオンを含有する還元剤溶液を用いたが、実験例1において用いた炭酸イオンと珪酸イオンとの双方を含有する還元剤溶液を用いても、同様の結果が得られることが確認されている。
【0125】
【実験例4】
表10に示した試料5−1〜5−6の各々に係るニッケル粉末を製造するため、以下のようにして、塩化ニッケル溶液および還元剤溶液を作製した。この実験例4は、銅の含有による効果を確認するために実施したものである。
【0126】
(1)塩化ニッケル溶液
45gの塩化ニッケルと、0.771gの塩化マグネシウムと、0g(無添加)、0.00032g、0.0032g、0.0096g、0.032gおよび0.096gの各々の塩化銅とを、それぞれ、75mlのエタノールと75mlのイオン交換水との混合液に溶解して、試料5−1、5−2、5−3、5−4、5−5および5−6の各々のための塩化ニッケル溶液を作製した。
【0127】
(2)還元剤溶液
22.5gの水酸化ナトリウムと、90gの80%抱水ヒドラジンと、0.729gの炭酸ナトリウムとを、30mlのエタノールと30mlのイオン交換水との混合液に溶解して、試料5−1〜5−6の各々のための還元剤溶液を作製した。
【0128】
このようにして得られた試料5−1〜5−6の各々のための塩化ニッケル溶液および還元剤溶液を、それぞれ、液温42℃に調整し、実験例1の場合と同様の方法によって、これら塩化ニッケル溶液および還元剤溶液を混合し、ニッケル粉末を生成させ、このニッケル粉末を分離・回収し、純水で洗浄し、その後、アセトンで置換脱水し、さらに、室温で乾燥した。
【0129】
このようにして得られたニッケル粉末について、実験例1の場合と同様の方法により、銅(Cu)とマグネシウム(Mg)と炭素(C)の各元素の量を求めた。その結果が表10に示されている。表10において、Cu、MgおよびCの各元素の量は、Ni100モルに対するモル数で示されている。
【0130】
また、得られたニッケル粉末について、走査型電子顕微鏡で粒径を求めた。その平均粒径および粒径ばらつきが表10に示されている。
【0131】
また、得られたニッケル粉末について、実験例1の場合と同様の方法によって、焼結収縮開始温度を求めた。その結果が表10に示されている。
【0132】
【表10】
【0133】
表10から、塩化銅が添加されない試料5−1に比べて、塩化銅が添加された試料5−2〜5−6によれば、平均粒径が小さくなるとともに、粒径ばらつきの絶対値も小さくなっていることがわかる。また、試料5−2〜5−6の間での比較から、銅の添加量が増えると、平均粒径をより小さくすることができ、また、粒径ばらつきの絶対値も小さくなる傾向があり、安定してニッケル粉末が生成されていることがわかる。
【0134】
次に、実験例1の場合と同様の方法によって、各試料に係るニッケル粉末を用いて導電性ペーストを作製し、この導電性ペーストを用いて積層セラミックコンデンサを作製した。そして、得られた各試料に係る積層セラミックコンデンサについて、実験例1の場合と同様の方法によって、カバレッジおよびクラック発生率をそれぞれ評価した。この評価結果が表11に示されている。
【0135】
【表11】
【0136】
表11から、試料5−1〜5−6のいずれであっても、カバレッジおよびクラック発生率について好ましい結果が得られていることがわかる。
【0137】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、炭酸イオンおよび珪酸イオンの少なくとも一方と苛性アルカリと還元剤とを含む、還元剤溶液を準備するとともに、アルカリ土類金属塩として、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムのうちの少なくとも1種の水酸化物、塩化物、硝酸塩およびカルボン酸塩のうちの少なくとも1種を用いながら、このようなアルカリ土類金属塩を含む、塩化ニッケル溶液を準備し、これら還元剤溶液と塩化ニッケル溶液とを混合して、ニッケル粉末を製造するようにしているので、得られたニッケル粉末は、金属ニッケルと所定量のアルカリ土類金属元素とを含み、このアルカリ土類金属化合物が、ニッケル粉末の焼結収縮開始温度を上昇させる作用を果たし、収縮開始後の急峻な収縮を抑制することができる。
【0138】
したがって、この発明に係るニッケル粉末を含む導電性ペーストを、積層セラミック電子部品に備える内部導体膜の形成のために用いると、ニッケル粉末の粒径を小さくしても、焼結による急峻な収縮を抑制することができるので、デラミネーションやクラック等の構造欠陥を生じにくくしながら、内部導体膜の薄膜化を有利に図ることができる。
【0139】
また、この発明に係るニッケル粉末によれば、アルカリ土類金属元素が、ニッケル粒子同士のネッキングを抑制し、また、導電性ペーストにおけるニッケル粒子の分散性を良好にし、したがって、導電性ペースト中のニッケル粉末の充填密度を高めることができるので、導電性ペーストの焼結収縮の度合いを低減するのに効果的である。
【0140】
また、この発明に係るニッケル粉末の製造方法において、還元剤溶液および塩化ニッケル溶液の少なくとも一方が水溶性有機溶剤を含んでいると、塩化ニッケルやアルカリ土類金属塩の溶解度を調整することが容易となり、そのため、過飽和度を調整することにより、微細な結晶を析出させることができ、均一なニッケル粉末を有利に作製することができる。
【0141】
また、この発明に係るニッケル粉末の製造方法において、塩化ニッケル溶液中に、ニッケル100モルに対して0.0001〜10モルの銅を含有するようにされると、還元反応が安定し、生成粒子の安定化および微細化を有利に図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係るニッケル粉末を含む導電性ペーストを用いて構成される積層セラミック電子部品の一例としての積層セラミックコンデンサ1を図解的に示す断面図である。
【符号の説明】
1 積層セラミックコンデンサ
2 積層体
3 セラミック層
4,5 内部導体膜
Claims (8)
- 炭酸イオンおよび珪酸イオンの少なくとも一方と苛性アルカリと還元剤とを含む、還元剤溶液を準備する工程と、
アルカリ土類金属塩を含む、塩化ニッケル溶液を準備する工程と、
前記還元剤溶液と前記塩化ニッケル溶液とを混合する工程と
を備える、ニッケル粉末の製造方法であって、
前記アルカリ土類金属塩は、アルカリ土類金属として、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムのうちの少なくとも1種を含み、水酸化物、塩化物、硝酸塩およびカルボン酸塩のうちの少なくとも1種であり、
前記ニッケル粉末は、金属ニッケルとアルカリ土類金属元素とを含み、前記アルカリ土類金属元素の含有量は、ニッケル100モルに対して0.15〜10モルである、
ニッケル粉末の製造方法。 - 前記還元剤は、ヒドラジン、ヒドラジン水和物、次亜リン酸塩および水素化ホウ素塩のうちの1種である、請求項1に記載のニッケル粉末の製造方法。
- 前記炭酸イオンは、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩および炭酸ガスのうちの少なくとも1種を溶解して得られたものであり、前記珪酸イオンは、ナトリウム塩、カリウム塩およびアンモニウム塩のうちの少なくとも1種を溶解して得られたものである、請求項1または2に記載のニッケル粉末の製造方法。
- 前記還元剤溶液および前記塩化ニッケル溶液の少なくとも一方は、水溶性有機溶剤を含む、請求項1ないし3のいずれかに記載のニッケル粉末の製造方法。
- 前記塩化ニッケル溶液中に、ニッケル100モルに対して0.0001〜10モルの銅を含有する、請求項1ないし4のいずれかに記載のニッケル粉末の製造方法。
- 請求項1ないし5のいずれかに記載の製造方法によって得られた、ニッケル粉末であって、金属ニッケルとアルカリ土類金属元素と炭素および珪素の少なくとも一方の元素とを含む、ニッケル粉末。
- 請求項6に記載のニッケル粉末と有機ビヒクルとを含む、導電性ペースト。
- 積層された複数のセラミック層および前記セラミック層間の特定の界面に沿って延びる内部導体膜を備える、積層セラミック電子部品であって、
前記内部導体膜は、請求項7に記載の導電性ペーストの焼結体からなる、積層セラミック電子部品。
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