JP6316683B2 - 銅微粒子およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、銅微粒子に関する。詳しくは、低温焼結が可能で、耐酸化性にも優れた銅微粒子に関する。また、かかる銅微粒子の製造方法に関する。
銅は電子伝導性や熱伝導性に優れるため、電子部品等の導体配線や放熱層の構成材料として広く用いられている。このような導体配線や放熱層は、例えば、銅微粒子を含む導体ペースト(スラリー、インクを包含する。以下同様。)を基材上に塗布して所定の温度で焼成することにより作製される。特許文献1〜10にはこのような用途に使用し得る銅微粒子やその製造方法、ならびに当該銅微粒子を含む銅ペーストが開示されている。例えば特許文献1には、表面が高分子保護膜で覆われた形態の銅微粒子を含んだ銅ペーストをアルミニウム基材上に塗布し、窒素雰囲気下において300℃で1時間焼成した後、2%の水素雰囲気下において500℃で1時間還元焼成することにより、導電性の被膜を形成することが記載されている。
特開2012−162807号公報 特開2010−150619号公報 特開2009−062598号公報 特開2013−091835号公報 特開2013−161544号公報 特開2008−142681号公報 特開2007−084930号公報 特開2008−075181号公報 特開2008−274408号公報 特開2013−133488号公報
ところで近年、電子部品の小型化や軽量化等の要求に伴って、有機フィルムやプラスチックといった高温に曝されると性能が低下してしまうような基材上に導体配線等を形成することが検討されている。これには、銅微粒子の焼結温度の低温化が必要である。そして、かかる焼結温度の低温化は例えば銅微粒子の微粒化によって実現することができる。すなわち、微粒子の粒径が小さくなるほど溶融温度が低下するため、低温での焼結が可能となる。しかしながら、かかる微粒化が進行するとそれに伴って比表面積が増加するため、微粒子の表面が酸化され易くなり、その結果、電子伝導性や熱伝導性が低下することがあり得る。このような事情から、上述の先行技術文献に記載される銅微粒子は、その多くが微粒子の表面に酸化銅膜または高分子保護膜を備え、還元焼成や高い焼結温度を必要とするものである。
本発明はこれらの事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、低温焼結が可能で、かつ耐酸化性にも優れた銅微粒子を提供することにある。関連する他の目的は、かかる銅微粒子を簡便かつ安定的に製造する方法を提供することにある。
本発明により、以下の(1)〜(3)の条件:(1)電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM;field emission-Scanning Electron Microscope)の観察画像に基づく個数基準の粒度分布において、60nm以下の粒子が80〜95個数%である;(2)窒素雰囲気下において150℃以下の温度で加熱すると焼結し、導電性を示す;(3)エタノール中に分散した状態で25℃・60RH%の環境下において3ヶ月間空気に曝した後であっても、粉末X線回折(XRD;X-Ray Diffraction)測定において酸化銅由来のピークが検出されない;をいずれも具備する銅微粒子材料が提供される。換言すれば、ここに開示される銅微粒子材料は、150℃以下で低温焼結が可能で、さらに耐酸化性や長期保存性にも優れることを特徴とする。
なお、銅微粒子材料の粒度分布は、例えば、以下のようにして把握することができる。すなわち、まず一般的なFE−SEMを用いて銅微粒子を適切な倍率(例えば5万倍〜10万倍)で観察し、1試料につき数枚(例えば4枚)のFE−SEM観察画像を取得する。次に、その観察画像において独立している(重なっていない)微粒子を500個以上(例えば500〜2000個)任意抽出し、各々の微粒子の輪郭をなぞった画像を作成する。次に、この画像をMedia Cybernetics社製の画像解析ソフト「Image Pro」で解析し、面積値から粒径(円相当径)を算出する。そして、横軸に粒径、縦軸に粒子の個数をとり、FE−SEMに基づく個数基準の粒度分布を表すことができる。
ここに開示される銅微粒子材料の好適な一態様では、上記個数基準の粒度分布を体積基準に換算して得られる粒径体積分布が二峰性を有している。そして、第1のピークトップが20nm以上55nm以下の範囲にあり、第2のピークトップが60nm以上100nm以下の範囲にある。これにより、焼結温度の一層の低温化を実現することができると共に、充填性が向上してより緻密な導体パターンを形成することができる。
ここに開示される銅微粒子材料の好適な一態様では、上記個数基準の粒度分布において、微粒子側から累積100個数%に相当するD100粒径が200nm以下である。換言すれば、実質的に200nm超の粒子を含まない。これにより、焼結温度の低温化を安定的に実現することができる。また微細な線幅の導体パターンを精度よく形成することができる。
ここに開示される銅微粒子材料の好適な一態様では、上記個数基準の粒度分布において、微粒子側から累積10個数%に相当するD10粒径が10nm以上20nm以下である。これにより、耐酸化性や長期保存性の一層の向上を実現することができる。
ここに開示される銅微粒子材料の好適な一態様では、窒素ガス吸着法(BET多点法)に基づくBET比表面積が10m/g以上20m/g以下である。これにより、低温焼結性と耐酸化性とをより高いレベルで両立することができる。
また、本発明の他の一の側面として、ワンポット反応で銅微粒子材料を製造する方法が提供される。かかる製造方法は、以下の(a)〜(d)の工程:(a)銅イオンと溶媒とを含むアルカリ性の原料混合液を調製する工程;(b)上記原料混合液に、第1の還元剤を添加する工程;(c)上記第1の還元剤を含む混合液に、保護剤を添加する工程;(d)上記保護剤を含む混合液に、第2の還元剤を添加する工程;を包含する。かかる製造方法によれば、上述のような性状を備えた銅微粒子材料を安定的に製造することができる。また、ワンポット反応が可能なため、高い生産性や生産コストの低減をも実現することができる。
上記第1の還元剤としては、例えば、ヒドラジンおよび/またはその誘導体を好適に用いることができる。また、上記第2の還元剤としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウムを好適に用いることができる。また、上記2種類の還元剤は、第1の還元剤の添加量と上記第2の還元剤の添加量のモル比(第1の還元剤/第2の還元剤)が10以上となるよう添加するとよい。
また、上記溶媒としては、環境負荷の低減や廃棄物削減の観点から、水系溶媒(例えば水)を好適に用いることができる。
また、上記全工程は室温環境下またはそれよりも低い温度環境下で行うことができる。このことは、生産性の向上やエネルギー削減、生産コスト低減の観点から有意義である。
一実施形態に係る製造方法を説明するためのフローチャートである。 例1の銅微粒子材料のFE−SEM観察画像であり、(a)は2万倍、(b)は10万倍の倍率で観察した画像である。 例2の銅微粒子材料のFE−SEM観察画像であり、(a)は2万倍、(b)は10万倍の倍率で観察した画像である。 例3の銅微粒子材料のFE−SEM観察画像であり、(a)は2万倍、(b)は10万倍の倍率で観察した画像である。 例4の銅微粒子材料のFE−SEM観察画像であり、(a)は2万倍、(b)は10万倍の倍率で観察した画像である。 例6の銅微粒子材料のFE−SEM観察画像であり、(a)は5万倍、(b)は1万倍の倍率で観察した画像である。 例1の銅微粒子材料のFE−SEM観察画像に基づく粒度分布を示すグラフであり、(a)は個数基準の粒度分布、(b)は個数基準の累積頻度分布、(c)は体積基準の粒径体積分布である。 例2の銅微粒子材料のFE−SEM観察画像に基づく粒度分布を示すグラフであり、(a)は個数基準の粒度分布、(b)は個数基準の累積頻度分布、(c)は体積基準の粒径体積分布である。 例3の銅微粒子材料のFE−SEM観察画像に基づく粒度分布を示すグラフであり、(a)は個数基準の粒度分布、(b)は個数基準の累積頻度分布、(c)は体積基準の粒径体積分布である。 例5の銅微粒子材料を含む溶液の動的光散乱法に基づく粒度分布を示すグラフである。 例1の銅微粒子材料の粉末X線回折測定の結果を示すチャートである。 例2の銅微粒子材料の粉末X線回折測定の結果を示すチャートである。 例3の銅微粒子材料の粉末X線回折測定の結果を示すチャートである。 例4の銅微粒子材料の粉末X線回折測定の結果を示すチャートである。 例6の銅微粒子材料の粉末X線回折測定の結果を示すチャートである。 例1の銅微粒子材料をエタノール中に分散した状態で25℃・60RH%の環境下において3ヶ月間空気に曝した後の粉末X線回折測定の結果を示すチャートである。 例2の銅微粒子材料のFE−SEM観察画像であり、(a)は加熱(焼結)前、(b)は窒素雰囲気下において150℃で加熱(焼結)した後の観察画像である。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項(例えば銅微粒子材料の性状や製造方法)以外の事項であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
≪銅微粒子材料≫
ここに開示される銅微粒子材料は、銅(Cu)を主体とする微粒子の集合体であり、以下の特徴(1)〜(3):
(1)FE−SEM観察画像に基づく個数基準の粒度分布において、60nm以下の粒子が80〜95個数%である;
(2)窒素雰囲気下において150℃以下の温度(例えば100〜150℃)で加熱すると焼結し、導電性を示す;
(3)エタノール中に分散した状態で25℃・60RH%の環境下において3ヶ月間空気に曝した後であっても、粉末X線回折測定において酸化銅由来のピークが検出されない;
をいずれも具備することによって特徴づけられる。したがって、その他の構成や性状については特に限定されず、種々の基準に照らして任意に決定することができる。
銅微粒子の活性度は、例えば当該微粒子の粒径や比表面積、あるいは表面の酸化度や表面に付着している有機物(保護剤)の量等によって決定される。ここに開示される銅微粒子材料は、上記(1)の特徴を満たすことで上記(2)ならびに(3)の性状を同時に具備し、低温焼結が可能であると共に優れた耐酸化性や保存性をも兼ね備えるものである。
すなわち、ここに開示される銅微粒子材料は、低温(150℃以下)での焼結に適した大きさ(粒径)であり、FE−SEM観察画像に基づく個数基準の粒度分布において60nm以下の粒子が80〜95個数%(例えば85〜95個数%)を占めている。
上記個数基準の粒度分布において、微粒子側から累積10個数%に相当するD10粒径は、10nm以上(例えば14nm以上)であって20nm以下(例えば16nm以下)であるとよい。これにより、微粒子材料の安定状態をより高いレベルで維持することができ、一層優れた耐酸化性や長期保存性をより安定的に実現することができる。また、微粒子材料の取扱性や作業性を向上することもできる。
上記個数基準の粒度分布において、微粒子側から累積50個数%に相当するD50粒径(平均粒径)は、通常、上記D10粒径より大きく、典型的には11nm以上(例えば15nm以上)であって50nm以下(例えば30nm以下)であるとよい。これにより、耐酸化性(空気中での保存性)と低温焼結性とを一層高いレベルで両立することができる。
上記個数基準の粒度分布において、微粒子側から累積90個数%に相当するD90粒径は、通常、上記D50粒径より大きく、典型的には45nm以上(例えば50nm以上)であって80nm以下(例えば75nm以下)であるとよい。これにより、焼結温度の一層の低温化や、ファインラインの精密な形成を実現することができる。
上記個数基準の粒度分布において、微粒子側から累積100個数%に相当するD100粒径は、通常、上記D90粒径より大きく、典型的には200nm以下、例えば190nm以下であるとよい。これにより、例えば銅微粒子材料の比表面積が増大して、焼結温度の一層の低温化を実現することができる。また、例えば線幅が10μm以下のファインラインの精密な形成をも好適に実現することができる。
さらに、ここに開示される銅微粒子材料では、粒度分布がある程度の広がりを持っていることが好ましい。換言すれば、上記D10粒径と上記D90粒径とが、以下の関係:(D10/D90)≦0.35(例えば0.15≦(D10/D90)≦0.3);を満たすとよい。なお、D10/D90値は、微粒子材料を構成する微粒子の粒径がほぼ等しい(粒径が揃っている)場合に≒1となり、粒度分布が広がりを持つほど0に近づいていく。上記(D10/D90)の範囲を満たすことで、粒度分布に適度な広がりを持たせることができる。これにより、微粒子材料が一層高密度に充填された導体パターンを形成することができ、優れた電子伝導性や熱伝導性を実現することができる。
上記個数基準の粒度分布を体積基準に換算することで、横軸に微粒子の粒径、縦軸に占有体積を表した粒径体積分布を得ることができる。ここに開示される銅微粒子材料において、かかる粒径体積分布は3つ以上(典型的には3つ)の変曲点を有していることが好ましく、特には、大まかに二峰性の分布を有していることが好ましい。これにより、焼成時に小さな粒子が溶融されて大きな粒子の隙間を埋めるように焼結し得、焼結温度の一層の低温化を実現することができる。また、大きな粒子と小さな粒子の混合物とすることで、小さな粒子の安定性が相対的に高まり、微粒子の凝集を抑制することができる。さらに、当該微粒子材料を用いることで、充填性(パッキング性)が高く緻密な導体パターンを形成することができる。その結果、好適には優れた電子伝導性や熱伝導性を実現し得る。
粒径体積分布が二峰性を有する場合、第1のピークトップ(極大点)は20nm以上であって55nm以下(例えば50nm以下、好ましくは30nm以下)の範囲にあるとよい。また、第2のピークトップ(極大点)は60nm以上であって100nm以下(例えば80nm以下)の範囲にあるとよい。さらに、2つのピークトップの間には、典型的には5nm以上(好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上)の開きがあることが好ましい。これにより、緻密性の一層向上した導体パターンを実現することができる。また、2つのピークトップの間には、典型的には谷(極小)となる点を有している。好適な一態様では、当該極小点の粒径以下の微粒子の割合が、微粒子全体の70個数%以上95個数%以下(好ましくは75個数%以上90個数%以下)を占める。溶融しやすい小粒子の混合比が70個数%以上(好ましくは75個数%以上)を占めることで、焼結温度の低温化を安定的かつ的確に実現することができる。
ここに開示される銅微粒子材料のBET比表面積は、5m/g以上(典型的には10m/g以上、例えば14m/g以上)であって30m/g以下(例えば20m/g以下)であるとよい。これにより、焼結温度の低温化を安定的に実現することができる。また、耐酸化性を一層高めることができ、例えば空気中で保管した場合であっても優れた長期保存性を実現することができる。
ここに開示される銅微粒子材料を構成する微粒子の形状は、典型的には、平均アスペクト比(長径/短径比)が凡そ1〜1.5(例えば1〜1.2)の球形状である。なお、「球形状」とは、全体として概ね球体(ボール)と見なせる形態であることを示し、幾何学的球状、楕円状、多角体状、円盤球状等を含み得る。すなわち、概念的な球状形態をも含み得る。かかる形状によれば、平滑性や均質性、充填性に優れた緻密な導体パターンを形成し易くなる。
ここに開示される技術において、銅微粒子材料を構成する銅微粒子は銅を主体とし、典型的には表面に保護剤、分散剤、安定化剤等といった各種添加剤が付着した(典型的には表面が添加剤で被覆された)態様である。これにより、銅微粒子の酸化や凝集を効率的に抑制することができ、耐酸化性や保存安定性に一層優れた銅微粒子材料を実現することができる。かかる添加剤としては、従来公知のもののなかから1種を単独で、または2種以上を組み合せて用いることができる。
なかでも、上記(2)の特徴(低温焼結性)を高いレベルで実現する観点からは、比較的低分子量の化合物と高分子量のものをいずれも含むことが好ましい。一好適例では、分子量が500未満の有機酸と、重量平均分子量が1000以上の高分子化合物と、を含み得る。より具体的には、乳酸、フタル酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、シュウ酸、コハク酸等の脂肪酸;グルコース、マンノース、スクロース、ラクトース等の糖類;グリシン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン等のアミノ酸;およびこれらの塩から選択される1種または2種以上の有機酸と、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンイミン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシドから選択される1種または2種以上の高分子化合物と、を含み得る。
≪銅微粒子材料の製造方法≫
このような銅微粒子材料は、例えば、反応系中に銅微粒子の原料となる銅イオンを混在させた状態で、標準還元電位の異なる2種類の還元剤を順番に添加して、二段階の還元反応を行うことで製造し得る。二段階の還元プロセスを適用することで、銅イオンの還元反応をワンポットで行うことができ、上述のような性状を備えた(低温焼結性と耐酸化性とを兼ね備えた)銅微粒子を高い生産性で製造することができる。
図1は、一実施形態に係る製造方法を説明するためのフローチャートである。図1に示す製造方法は、大まかに言って以下のステップ:
(a)銅イオンを含むアルカリ性の原料混合液を調製すること;
(b)上記原料混合液に、第1の還元剤を添加すること;
(c)上記第1の還元剤を含む混合液に、保護剤を添加すること;
(d)上記保護剤を含む混合液に、第2の還元剤を添加すること;
を包含する。以下、各工程を説明する。
a.原料混合液の調製
ここに開示される製造方法では、まず銅イオンを含むアルカリ性の原料混合液を用意する。原料混合液は、例えば、原料としてのCu源とpH調整剤とその他必要に応じて用いられる材料とを、典型的には不活性雰囲気下、室温(例えば25±5℃)で、所定の溶媒中に分散または溶解させて調製する。これら材料を添加する順序は特に限定されず、全ての材料を同時に混合してもよく、何度かに分けて(例えば1種の材料を溶媒中に分散または溶解させた後、他の材料を添加して分散または溶解させて)行ってもよい。図1に示す態様では、まず原料としてのCu源等を溶媒中に分散または溶解させ(工程1)、そこにpH調整剤を添加してアルカリ性溶液に調整している(工程3)。
溶媒としては、大まかに水系溶媒と有機溶剤とを考慮することができる。水系溶媒としては、水または水を主体とする混合溶媒が挙げられる。混合溶媒を構成する水以外の溶媒としては、水と均一に混合し得る低級アルコールや低級ケトン等が挙げられる。また、有機溶剤としては、アミド系溶剤、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アミン系溶剤、エーテル系溶剤、ニトリル系溶剤、環状エーテル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤等が挙げられる。
一好適例として、溶媒全体の80質量%以上(より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上)が水である水系溶媒が挙げられる。なかでも、環境保護や廃棄物削減の観点から、実質的に水からなる水系溶媒(例えば水)が好ましい。
Cu源としては、アルカリ性の溶媒中に均質に分散または溶解し得る銅塩を好ましく用いることができる。具体例として、酢酸銅、蟻酸銅、塩化銅、硝酸銅、炭酸銅、硫酸銅、およびこれらの水和物等が挙げられる。なかでも二価の銅イオン(Cu(II)イオン)を含む塩が好ましい。特には有機酸の塩である酢酸銅や蟻酸銅、例えば酢酸銅(II)一水和物((CHCOO)Cu・HO)や蟻酸銅(II)四水和物((HCOO)Cu・4HO)を好ましく用いることができる。
原料混合液に含まれる銅イオンの濃度は特に限定されないが、銅微粒子を効率的に合成する観点からは、例えば銅イオンの濃度が0.1mol/L以上(例えば0.2mol/L以上)となるように調製するとよい。また、上述の粒度分布を好適に実現する観点や銅イオンの凝集や沈殿を防止する観点からは、例えば銅イオンの濃度が1mol/L以下(例えば0.5mol/L以下)となるように調製するとよい。
pH調整剤としては、使用する溶媒に溶解してアルカリ性(すなわちpH>7、例えばpH9〜11)を呈するものであればよく、従来公知の塩基性物質を用いることができる。具体例として、アンモニア水、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物等が挙げられる。
その他、原料混合液に含まれ得る任意成分の一例としては、例えば、銅イオンの反応速度の調整や分散安定性の向上、銅微粒子の耐酸化性の向上等を目的とした添加剤が挙げられる。具体的には、いわゆる反応速度調整剤、粘度調整剤、分散剤、保護剤等を考慮することができる。これらの添加剤としては、従来公知のもののなかから1種を単独で、または2種以上を組み合せて用いることができる。
好適な一態様では、工程(c)で添加する保護剤よりも低分子の化合物を添加する。例えば、分子量が500未満(典型的には300以下、例えば50〜200)の有機酸を用いるとよい。具体例として、乳酸、フタル酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、シュウ酸、コハク酸等の脂肪酸、グルコース、マンノース、スクロース、ラクトース等の糖類、グリシン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン等のアミノ酸、およびこれらの塩が挙げられる。なかでも、カルボキシル基を有するヒドロキシ酸、特には乳酸を好ましく用いることができる。
本発明者らの知見によれば、原料混合液にこのような有機酸を添加することにより、後述の一連の還元反応(工程(b),(d))における反応速度(銅微粒子の核生成速度および粒成長速度)を好適に制御することができる。また、混合液中における銅イオンの安定性を高めたり、当該銅イオン間に適度な距離を保持して銅微粒子の粒径を制御したりするためにも役立ち得る。さらには、工程(c)における保護剤の添加量を削減することもでき、これによって優れた低温焼結性を実現することができる。その結果、上述のような性状の銅微粒子を一層安定的に得ることができる。
原料混合液中に任意成分として有機酸を添加する場合、有機酸の好適な濃度は当該有機酸の分子量等によっても異なり得るため特に限定されないが、例えば0.2〜10mol/L(好ましくは0.5〜5mol/L)とするとよい。また、他の好適な一態様では、銅イオン(例えばCu2+)1molに対して、有機酸の割合を例えば2〜10mol(好ましくは3〜7mol、より好ましくは4〜6mol)とする。これにより、本発明の効果を更に高いレベルで実現することができる。
原料混合液の調製に際しては、必要に応じて攪拌を行ってもよい。攪拌操作によれば、比較的短時間で均質な混合液を安定的に得ることができる。かかる攪拌操作は、例えばマグネチックスターラーや超音波等の適当な攪拌手段を用いて行うことができる。攪拌速度は、例えば100〜1000rpm程度とするとよい。
b.第1の還元剤の添加
ここに開示される製造方法では、次に、典型的には不活性雰囲気下、室温(例えば25±5℃)で、上記調製した原料混合液中に第1の還元剤を添加し、撹拌する。これにより、原料混合液中の銅イオンが比較的緩やかに還元され、溶液中にごく微小な粒子(一次粒子)が析出し得る。
第1の還元剤としては、後述する第2の還元剤に比べて相対的に還元力が弱いものを用いることができる。好適例として、ヒドラジン(HNNH)およびその誘導体が挙げられる。具体例として、無水ヒドラジンに加え、ヒドラジン一水和物(HNNH・HO)、モノ塩酸ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、ヒドラジン酢酸塩、ヒドラジン二臭化水素酸塩三水和物、ヒドラジン一臭化水素酸塩、ヒドラジン一塩酸塩、水酸化ヒドラジニウム、塩化ヒドラジニウム、臭化ヒドラジニウム等のヒドラジン化合物が挙げられる。なかでも、入手容易性等の観点から、ヒドラジン一水和物を好ましく用いることができる。
第1の還元剤の添加量は、上記銅イオンを還元するために十分な量であればよく特に限定されないが、銅イオン(例えばCu2+)1molに対して、通常2mol以上、典型的には2〜10mol、例えば2〜5mol程度とするとよい。
かかる還元反応においては、上記第1の還元剤の添加後から所定の時間(典型的には10分間〜10時間程度、例えば1〜5時間)、上記の反応条件を維持しておくとよい。また、撹拌操作は上記工程(a)と同様に適宜行うことができる。
c.保護剤の添加
ここに開示される製造方法では、次に、典型的には不活性雰囲気下、室温(例えば25±5℃)で、上記第1の還元剤を含む混合液中に保護剤を添加し、撹拌する。
保護剤としては特に限定されないが、上述の原料混合液に添加し得る化合物よりも相対的に分子量の大きな化合物を用いるとよい。例えば、重量平均分子量が1000以上(典型的には1万以上、例えば1万〜10万、好ましくは1万〜6万)の高分子化合物を用いるとよい。具体例として、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンイミン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド等が挙げられ、特にはPVPを好ましく用いることができる。なお、重量平均分子量Mwは、一般的なゲルクロマトグラフィー(GPC:Gel Permeation Chromatography)の手法によって測定することができる。
このような保護剤は、2段階目の還元反応(工程(d))において反応速度(銅微粒子の核生成速度および粒成長速度)を制御するために役立ち得る。また、混合液中における銅イオンの安定性を高めたり、当該銅イオン間に適度な距離を保持して銅微粒子の粒径を制御したりするために役立ち得る。さらに、製造した銅微粒子の耐酸化性や保存安定性をも維持向上し得る。その結果、上述のような性状の銅微粒子を一層安定的に得ることができる。
保護剤は、市販の状態(例えば粉体)のまま混合液中に添加してもよく、別途用意した溶媒中に予め溶解あるいは分散させた状態で混合液中に添加してもよい。また、保護剤の添加量は、例えば当該保護剤の分子量等によっても異なり得るため特に限定されないが、銅イオン1molに対して、通常5.0mmol以下、典型的には0.5〜5.0mmol、例えば1.0〜2.5mmol程度とするとよい。保護剤の添加量を5.0mmol以下と必要最小限に、極めて少なく抑えることで、銅微粒子の表面に形成される高分子保護膜の厚みを薄くすることができる。これにより、銅微粒子の焼結性を向上することができ、低温での焼結を好適に実現することができる。その結果、粒径が数ナノメートル〜数百ナノメートルサイズ(例えば1〜200nm)で、低温焼結性や耐酸化性に優れた銅微粒子を安定的に実現することができる。
なお、還元剤が還元作用を示すためには混合液のpHがアルカリ性(pH>7)を呈していることが必要である。このため、例えば保護剤の添加等によって混合液のpHが酸性側に偏っている場合(例えばpH<9の場合)等は、本工程で上述のpH調整剤を再度添加して、混合液をpH10程度(一例としてpH9〜11の範囲)に再調整するとよい。
撹拌操作は上記工程(a)と同様に適宜行うことができる。また、d.第2の還元剤の添加を室温以下の温度環境で行う場合には、撹拌と同時に混合液を冷却すると効率的である。混合液の冷却は、例えば温度制御恒温槽の温度設定の変更や氷冷によって行うことができる。
d.第2の還元剤の添加
ここに開示される製造方法では、次に、典型的には不活性雰囲気下、室温以下の温度(例えば0〜30℃)で、上記保護剤を含む混合液に第2の還元剤を添加し、撹拌する。これにより、例えば上記第1の還元剤の添加によって混合液中に析出した微粒子(一次粒子)の最表面が活性化されて合体成長し、混合液中に上記工程(b)で析出させた一次粒子よりも相対的に粒径の大きな微粒子が析出し得る。
第2の還元剤としては、上記第1の還元剤に比べて相対的に還元力が強いものを用いることができる。好適例として、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素亜鉛、水素化アルミニウムリチウム、水素化ビスアルミニウムナトリウム、次亜リン酸、亜リン酸等が挙げられる。なかでも、入手容易性等の観点から、水素化ホウ素ナトリウムを好ましく用いることができる。
第2の還元剤の添加量は、上記銅イオンを還元するために十分な量であればよく特に限定されないが、銅イオン1molに対して、例えば0.05〜0.25mol程度とするとよい。また、好適な一態様では、第2の還元剤の添加量に対する第1の還元剤の添加量のモル比(第1の還元剤の添加量/第2の還元剤の添加量)が、10以上(典型的には10〜40、例えば10〜20)となるよう添加量を調整する。これにより、銅微粒子材料の性状(例えば粒度分布や比表面積)を好適な範囲に制御することができ、低温焼結性と耐酸化性とを高度に兼ね備えた銅微粒子材料を安定的に得ることができる。
かかる還元反応においては、上記第2の還元剤の添加後から所定の時間(典型的には10分間〜10時間程度、例えば30分間〜2時間)、上記の反応条件を維持しておくとよい。さらに、銅微粒子を十分に析出させるために、例えば室温環境下で所定の時間(典型的には1〜48時間程度、例えば10〜24時間)保持してもよい。また、撹拌操作は、上記工程(a)と同様に適宜行うことができる。
そして、混合液中に析出した銅微粒子を回収する。回収方法としては、例えば当該銅微粒子を混合液(分散液)から分離して、洗浄、乾燥するとよい。これにより、上述のような性状を備えた銅微粒子材料を得ることができる。なお、分離操作としては、従来公知の手法(遠心分離、濾過、デカンテーション等)を適宜採用することができる。また、洗浄方法としては、例えば蒸留水で洗浄した後にエタノール等のアルコール類で洗浄するとよい。
好適な一態様では、上記一連の製造工程を全て不活性ガス(例えば、窒素(N)、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)等)の雰囲気下で行う。これにより、製造過程における銅の酸化を高度に抑制することができる。また、好適な他の一態様では、全工程を室温環境下(例えば25±5℃)またはそれよりも低い温度環境下(例えば0〜30℃)で行う。これにより、生産性の向上やエネルギー削減、低コスト化等を実現し得る。
≪銅微粒子材料の用途≫
ここに開示される銅微粒子材料は、粒径がナノメートルサイズであり、低温焼結が可能で、かつ耐酸化性にも優れることを特徴とする。例えば、粉体のまま(典型的には溶媒中で)保管や使用が可能であると共に、例えば印刷が可能なペースト状に調製して簡便に使用することができる。したがって、例えば、電極や導体配線、あるいは放熱層の形成用材料として好適に利用することができる。特には、高温に曝されると性能が低下してしまうような基材上に電極や配線パターンを形成する用途や、導体パターンの幅が10μm以下(例えば5μm以下、好ましくは1μm以下)のファインラインを形成する用途で好適に利用することができる。
以下、本発明に関する実施例を説明するが、本発明を以下の実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
〔銅微粒子の合成〕
例1〜4では、図1に示されるフローチャートに基づいて銅微粒子を作製した。
すなわち、まず、窒素雰囲気のグローブボックス内において、室温環境下で、Cu源としての酢酸銅(II)一水和物((CHCOO)Cu・HO)を0.998g(5.0mmol)秤量し、これを5.0mLの蒸留水と混合して混合液を調製した。そこに保護剤としての乳酸(分子量:90.08)を2.25g(25mmol)添加した(工程(1))。また、別途、pH調整剤として市販の28%アンモニア水(pH≒10)を5mL準備した(工程(2))。そして、上記工程(1)で調製した原料混合液と28%アンモニア水とを均質に溶解させ、原料混合液を調製した(工程(3))。なお、この原料混合液は銅の二価イオン(Cu2+)由来の濃青色を呈していた。
次に、第1の還元剤としてヒドラジン一水和物(HNNH・H O)を0.506g(10mmol)用意した(工程(4))。そして、上記工程(3)で調製した原料混合液をマグネチックスターラーで撹拌しながら第1の還元剤を添加した。この混合液を室温で2時間撹拌することで、茶色の溶液を得た(工程(5))。
次に、市販のポリビニルピロリドン(和光純薬工業株式会社製の「PVP k30」;重量平均分子量44000)を0.50g用意し、これを5.0mLの蒸留水に溶解させてPVPの水溶液を調製した(工程(6))。また、別途、pH調整剤として市販の28%アンモニア水(pH≒10)を5mL準備した(工程(6))。そして、上記工程(5)で調製した茶色の溶液をマグネチックスターラーで撹拌しながら、PVP水溶液と28%アンモニア水を添加した。これを撹拌しながら氷冷し、混合液の温度が6℃になるまで冷却し、当該温度で維持した(工程(7))。
次に、第2の還元剤として、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH を用意し、これを2種類の還元剤の添加量のモル比(第1の還元剤の添加量/第2の還元剤の添加量)が7〜40となるように表1に記載の量だけ秤量し、5.0mLの蒸留水に溶解させて水溶液を調製した(工程(8))。そして、上記工程(7)で6℃に維持した混合液をマグネチックスターラーで撹拌しながら第2の還元剤の水溶液を添加し、氷冷したまま(6℃に維持したまま)で1時間撹拌した(工程(9))。
そして、室温環境下で1日静置して混合液中から銅微粒子を十分に析出させた後、当該混合液を遠心分離器(5000rpm、15分)にかけて沈殿物を回収し、蒸留水で一回、エタノールで二回洗浄した。得られた粉末を室温で2時間減圧乾燥し、銅微粒子材料(例1〜4)を得た(工程(10))。この銅微粒子材料は金属光沢のある茶色の粉末状であった。
例5では、上記工程(5)において反応時間を24時間とし、当該工程(5)で得られた茶色の溶液から銅微粒子の回収を試みたが、粒子が細かすぎて回収できなかった。
例6では、水素化ホウ素ナトリウムのみで還元を行い、銅微粒子を作製した。すなわち、上記工程(4)・(5)を省いたこと以外は例1〜4と同様にして銅微粒子材料(例6)を作製した。
下表1に還元剤の添加量(mmol)とモル比を纏めた。
〔評価項目〕
得られた銅微粒子材料(例1〜4,6)について、以下の(a)〜(d)の項目について評価を行った。結果を表1に示す。
(A)FE−SEM観察
電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM:株式会社日立ハイテクノロジーズ製、S−4700)を用いて、銅微粒子材料を構成する銅微粒子の形状を観察した。結果を図2〜6に示す。
(B)粒径分布
FE−SEM画像を元に上述の方法で銅微粒子の粒度分布を測定した。具体的には、まず分散媒としてのエタノールに銅微粒子材料を分散させ、これをアルミニウム箔上に塗布することで観察用試料を作製した。次に、この試料をFE−SEMで観察し、得られたFE−SEM観察画像から少なくとも500個の銅微粒子について面積円相当径を算出し、粒度分布を求めた。結果を表1に示す。また、例1〜3に係る結果(グラフ)を図7〜9に示す。各図において(a)・(b)は個数基準であり、(c)は体積基準である。
なお、例4については微粒子の凝集が激しく、分散媒(エタノール)への分散が行えなかったため未測定である。また、例6についても微粒子の凝集が激しく、正確な粒径を測定することができなかった。また、粉体として銅微粒子を回収できなかった例5については、溶液状のまま動的光散乱法により個数基準の粒度分布を測定した。結果を表1および図10に示す。
(C)比表面積
吸着質として窒素(N)ガスを用いたガス吸着法(定容量式吸着法)によって銅微粒子材料のガス吸着量を測定し、得られた値をBET法(BET多点法)で解析することにより、比表面積を算出した。結果を表1に示す。
(D)XRD測定(酸化銅由来ピークの確認)
粉末X線回折装置(XRD:株式会社リガク製、Ultrax18‐TTR3−300)を用いて、2θ=5〜80°の範囲における銅微粒子材料の結晶性を評価した。例1〜4,6に係る結果(チャート)を図11〜15に示す。また、例1〜4,6の銅微粒子材料をエタノール中に分散させ、これを25℃・60RH%の環境下で3ヶ月間空気に曝した後、エタノールから取り出して同様にXRD測定を行った。一例として例1に係る結果(グラフ)を図16に示す。
これらの結果を纏めて表1の「XRD酸化銅ピーク」の欄に示す。当該欄において、「不検出」は、製造直後および3ヶ月放置後のいずれにおいても酸化銅由来のピークが検出されなかったことを、「検出」は、製造直後および/または3ヶ月放置後において酸化銅由来のピークが検出されたことを表している。
(E)焼結試験(導電性の評価)
例1〜3,6に係る銅微粒子材料と、2−ブトキシエタノールと、3−エトキシプロピルアミンとを、60:39.6:0.4の質量比で乳鉢を用いて混合し、ペースト状に調製した。これを20mm×5mmの長方形状のガラス板に帯状に塗布して、窒素雰囲気下においてホットプレート上で50℃・15分の条件で加熱し、続いて80℃・15分の条件で加熱し、乾燥させた。さらにホットプレートの温度を150℃まで上昇させ、1時間加熱することで導電性評価用の試料を得た。かかる試料に日置電機株式会社製のデジタルハイテスタを15mm間隔で接触させ、導電性を評価した。結果を表1の「150℃焼成後の導電性」の欄に示す。当該欄において、「○」は導電性が発現したことを、「×」は導電性が発現しなかったことを表している。また、一例として、例2の銅微粒子材料の加熱(焼結)前後をFE−SEMで観察した。結果を図17に示す。
〔評価結果〕
(A)FE−SEM観察
図2〜5に示すように、例1〜4に係る銅微粒子はいずれも球状であった。また、図6に示すように、例6に係る銅微粒子はミクロンサイズのいびつな形状の粒子であった。
(B)粒径分布
表1および図7〜9の(a)・(b)に示すように、例1〜3に係る銅微粒子材料は、個数基準の粒度分布において、以下の特徴を具備していた。
・D10粒径が5〜20nm(例えば14〜16nm)である。
・D50粒径が15〜30nm(例えば18〜27nm)である。
・D90粒径が50〜80nm(例えば55〜75nm)である。
・D100粒径が200nm以下(例えば120〜190nm)である。
・D10/D90が0.15〜0.35(例えば0.20〜0.30)である。
また、表1および図7〜9の(c)に示すように、例1〜3に係る銅微粒子材料は、体積基準の粒度分布において、いずれも二峰性の体積分布を示しており、以下の特徴を具備していた。
・第1(小粒径側)のピークトップが20〜55nm(例えば27〜50nm)の範囲にある。
・第2(大粒径側)のピークトップが60〜100nm(例えば61〜98nm)の範囲にある。
・2つのピークトップの間に30nm以上(例えば30〜75nm)の開きがある。
・2つのピークトップの間に存在する極小点の粒径以下の微粒子の割合が、微粒子全体の75〜95個数%(例えば79〜90個数%)を占める。
これらの結果から、2種類の還元剤のモル比を調整することで、銅微粒子の粒径および粒度分布を制御し得ることわかった。そして、上記のような性状の銅微粒子材料は、例えば第1の還元剤としてヒドラジンおよび/またはその誘導体を用い、上記第2の還元剤として水素化ホウ素ナトリウムを用いる場合において、上記第1の還元剤の添加量と上記第2の還元剤の添加量のモル比(第1の還元剤/第2の還元剤)を10以上(例えば10〜40)とすることで実現し得るとわかった。
なお、表1および図10に示すように、例4に係る銅微粒子材料のモード径は、4.2nmであった。
(C)比表面積
表1に示すように、例1〜3に係る銅微粒子材料の比表面積は、10〜20m/g(例えば14〜20m/g)だった。
(D)XRD測定(酸化銅由来ピークの確認)
例5に係る茶色の溶液は、空気に曝すと即座に酸化して銅(II)イオンを示す青色へと変化した。また、例6に係る銅微粒子材料では、製造直後の測定において酸化銅(I)由来のピークが観測された。さらに得られた粉末をエタノール中に分散させ、かかる分散液を25℃・60RH%の環境下において空気下に曝すと、一日で緑色に変色した。
一方、表1および図11〜16に示すように、例1〜4に係る銅微粒子材料では、製造直後の測定において金属銅由来のピークのみが観測された。また、得られた茶色の粉末をエタノール中に分散させ、かかる分散液を25℃・60RH%の環境下において3ヶ月間空気に曝したが、見た目もXRD測定結果も変化は認められなかった。以上の結果から、例1〜4に係る銅微粒子材料は耐酸化性や長期保存性に優れることがわかった。
(E)焼結試験(導電性の評価)
表1に示すように、例6に係る銅微粒子材料では、導電性が発現しなかった。
一方、例1〜3に係る銅微粒子材料では、加熱後に導電性が発現した。これは、焼結によって小さな粒子が好適に溶融し、例えば大きな粒子の間を埋めるように焼結したために、導体膜中に導電パスを形成することができたものと考えられる。すなわち、例1〜3に係る銅微粒子材料は150℃以下の低温で焼結して導電性を示すことがわかった。
以上、本発明を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、本発明はその主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。

Claims (9)

  1. 銅微粒子材料であって、以下の条件:
    (1)電界放出型走査電子顕微鏡の観察画像に基づく個数基準の粒度分布において、60nm以下の粒子が80〜95個数%である;
    (2)窒素雰囲気下において150℃以下の温度で加熱すると焼結し、導電性を示す;
    (3)エタノール中に分散した状態で25℃・60RH%の環境下において3ヶ月間空気に曝した後であっても、粉末X線回折測定において酸化銅由来のピークが検出されない;
    (4)前記個数基準の粒度分布を体積基準に換算して得られる粒径体積分布が二峰性を有しており、第1のピークトップが20nm以上55nm以下の範囲にあり、第2のピークトップが60nm以上100nm以下の範囲にある;
    をいずれも具備する、銅微粒子材料。
  2. 前記個数基準の粒度分布において、微粒子側から累積100個数%に相当するD100粒径が200nm以下である、請求項1に記載の銅微粒子材料。
  3. 前記個数基準の粒度分布において、微粒子側から累積10個数%に相当するD10粒径が10nm以上20nm以下である、請求項1または2に記載の銅微粒子材料。
  4. 窒素ガス吸着法に基づくBET比表面積が10m/g以上20m/g以下である、請求項1からのいずれか1項に記載の銅微粒子材料。
  5. ワンポット反応で銅微粒子材料を製造する方法であって、
    銅イオンと溶媒とを含むアルカリ性の原料混合液を調製する工程;
    前記原料混合液に、第1の還元剤を添加する工程;
    前記第1の還元剤を含む混合液に、保護剤を添加する工程;
    前記保護剤を含む混合液に、第2の還元剤を添加する工程;
    を包含し、
    前記第1の還元剤として、ヒドラジンおよびその誘導体のうちの少なくとも1つを用い、かつ、前記第2の還元剤として、前記第1の還元剤よりも還元力が強いものを用いる、銅微粒子材料の製造方法。
  6. 前記第1の還元剤の添加量と前記第2の還元剤の添加量のモル比(第1の還元剤/第2の還元剤)を10以上とする、請求項に記載の製造方法。
  7. 前記溶媒として水系溶媒を用いる、請求項またはに記載の製造方法。
  8. 前記全工程を室温環境下またはそれよりも低い温度環境下で行う、請求項からのいずれか1項に記載の製造方法。
  9. 記第2の還元剤として水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素亜鉛、水素化アルミニウムリチウム、水素化ビスアルミニウムナトリウム、次亜リン酸および亜リン酸のうちの少なくとも1つを用いる、請求項からのいずれか1項に記載の製造方法。
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