JP2020100893A - 銅クラスター、混合粒子、導電性ペースト及び導電性インク - Google Patents

銅クラスター、混合粒子、導電性ペースト及び導電性インク Download PDF

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Abstract

【課題】低温焼結性に優れる銅焼結体の新たな原料を提供すること。【解決手段】本発明に係る混合粒子は、平均粒径が0.1nm以上1nm以下である銅クラスターと、平均粒径が1nm超20nm以下である銅酸化物粒子と、を含み、その銅酸化物粒子は、Cu64O粒子及び前記Cu8O粒子のうち少なくとも1つであることを特徴とするものである。【選択図】図1

Description

本発明は、銅クラスター、混合粒子、導電性ペースト及び導電性インクに関する。
従来、電子部品の配線材料や接合材料として、Ag粒子が最も広く用いられている。しかし、Ag粒子は高コストであり、またマイグレーションも起きやすいことから、代替材料としてCu粒子を用いることが検討されている。
一方、近年ではプリンテッドエレクトロニクスに注目が集まっている。このような分野では、PET等のプラスチック基板上の配線材料や接合材料の粒子を150℃以下の低温焼結させる技術が求められている。
これまで、低温焼結用のCu粒子として、様々な粒径や形態のものが検討されてきたが、150℃以下での低温焼結により、低い抵抗率を有する焼結体を構成するCu粒子は得られていない。この原因として、Cu粒子が酸化されて生成したCuOやCuOが粒子同士の焼結を阻害することや、例えば粒径が大きい場合にはナノサイズ効果による融点の降下の効果が得られないこと等が挙げられる。
特許文献1には、炭素数3〜6の1級アルコール、炭素数3〜6の2級アルコール及びこれらの誘導体が保護剤として被覆された微細な金属Cuナノ粒子を用いて低温焼結を行う技術が開示されている。また、非特許文献1には、このような金属Cuナノ粒子と粒径の異なるCu微粒子とを混合して低温焼結を行う技術が開示されている。しかしながら、このような方法で得られる金属Cuナノ粒子は、表面に存在する保護剤によりある程度酸化が抑制されているが、比表面積が大きいため大気中で酸化してCuOやCuOが生成し、焼結しようとする際に低温焼結を阻害するおそれがある。したがって、より低温で焼結体を得るためには、なお改良の余地がある。
国際公開第2015/129466号
ACS Appl.Mater.Interfaces,2017,9(24),20852−20858
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、低温焼結性に優れる銅焼結体の新たな原料を提供することを目的とする。
本発明者らは、上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、所定の平均粒径を有する銅クラスター、又は所定の平均粒径を有する銅クラスターと所定の平均粒径及び酸化状態を有する銅酸化物粒子とを含む混合粒子が低温焼結性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的に、本発明は、以下のものを提供する。
(1)本発明の第1の発明は、平均粒径が0.1nm以上1nm以下である、銅クラスターである。
(2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、アミン系化合物をさらに含む、銅クラスターである。
(3)本発明の第3の発明は、第2の発明において、前記アミン系化合物は、アルカノールアミン、ジアミン及びアミノカルボン酸からなる群から選択される1種以上である、銅クラスターである。
(4)本発明の第4の発明は、第2又は第3いずれかの発明において、前記アミン系化合物の含有量は、Cuの含有量に対し、モル比で0.05倍以上である、銅クラスターである。
(5)本発明の第5の発明は、第1乃至第4いずれかの発明において、150℃以下で焼結してCu焼結体を構成するための、銅クラスターである。
(6)本発明の第6の発明は、平均粒径が0.1nm以上1nm以下である銅クラスターと、平均粒径が1nm超20nm以下である銅酸化物粒子と、を含み、前記銅酸化物粒子は、Cu64O粒子及び前記CuO粒子のうち少なくとも1つである、混合粒子である。
(7)本発明の第7の発明は、第6の発明において、前記銅クラスター、前記Cu64O粒子及び前記CuO粒子のうち少なくとも1つは、アミン系化合物を含む、混合粒子である。
(8)本発明の第8の発明は、第7の発明において、前記アミン系化合物は、第7の発明において、アルカノールアミン、ジアミン及びアミノカルボン酸からなる群から選択される1種以上である、混合粒子である。
(9)本発明の第9の発明は、第7又は第8の発明において、前記アミン系化合物の含有量は、前記混合粒子に含まれるCuの含有量に対し、モル比で0.05倍以上である、混合粒子である。
(10)本発明の第10の発明は、平均粒径が0.1nm以上1nm以下である銅クラスターと、平均粒径が1nm超20nm以下である銅酸化物粒子と、平均粒径が20nm超1μm以下の金属銅粒子と、を含み、前記銅酸化物粒子は、Cu64O粒子及び前記CuO粒子のうち少なくとも1つである、混合粒子である。
(11)本発明の第11の発明は、第6乃至第10いずれかの発明において、150℃以下で焼結してCu焼結体を構成するための、混合粒子である。
(12)本発明の第12の発明は、第1乃至第5いずれかの発明に係る銅クラスターと、分散媒と、を含む、導電性インクである。
(13)本発明の第13の発明は、第6乃至第11いずれかの発明に係る混合粒子と、分散媒と、を含む、導電性インクである。
(14)本発明の第14の発明は、第1乃至第5いずれかの発明に係る銅クラスターと、分散媒と、バインダ樹脂と、を含む、導電性ペーストである。
(15)本発明の第15の発明は、第6乃至第11いずれかの発明に係る混合粒子と、分散媒と、バインダ樹脂と、を含む、導電性ペーストである。
(16)本発明の第16の発明は、第12又は第13の発明に係る導電性インクを塗布して塗布膜を形成し、該塗布膜を焼結する、銅焼結体の製造方法である。
(17)本発明の第17の発明は、第14又は第15の発明に係る導電性ペーストを塗布して塗布膜を形成し、該塗布膜を焼結する、銅焼結体の製造方法である。
(18)本発明の第18の発明は、第16又は第17の発明において、前記塗布膜を、膜厚30μm以上となるように形成し、該塗布膜を加熱焼結するに際し、昇温速度を2℃/分以下とする、銅焼結体の製造方法である。
本発明によれば、低温焼結性に優れる銅焼結体の新たな原料を提供することができる。
(a)、(b)試験例1において得られた試料のそれぞれ異なる視野のSTEM写真図である。 試験例6において得られた混合粒子のTEM写真図である。 試験例7において得られた混合粒子のTEM写真図である。 (a)、(b)試験例8において得られた混合粒子のTEM写真図である。 試験例9において得られた粒子のTEM写真図である。 試験例10において得られた混合粒子のTEM写真図である。 試験例1〜8において得られた試料のXRDパターンである。 試験例1及び試験例9において得られた試料のXRDパターンである。 試験例1及び試験例10において得られた試料のXRDパターンである。 試験例1において得られた混合粒子のTG−DTA分析結果である。 試験例1及び試験例4において得られた混合粒子、並びに銅箔の動径分布関数である。 試験例1及び試験例4において得られた混合粒子、並びに銅箔のNi−K吸収端のXAFSスペクトルである。 実施例3において得られた焼結膜のSEM写真図である。 実施例4において得られた焼結膜のSEM写真図である。 実施例5において得られた焼結膜のSEM写真図である。 実施例7において得られた焼結膜のSEM写真図である。 実施例8において得られた焼結膜のSEM写真図である。 実施例9において得られた焼結膜のSEM写真図である。 参考例1において得られた焼結膜のSEM写真図である。
以下、本発明の具体的な実施形態(以下「本実施の形態」という)について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において適宜変更を加えて実施することができる。
≪1.第1の態様の混合粒子≫
第1の態様の混合粒子は、平均粒径が0.1nm以上1nm以下である銅クラスターと、平均粒径が1nm超20nm以下である銅酸化物粒子と、を含むものである。このような混合粒子において、銅酸化物粒子はCu64O粒子及びCuO粒子のうち少なくとも1つである。
上述したような銅クラスターは、極めて小さい粒径を有することにより、高い焼結性を有している。一方で、銅酸化物粒子としてCu64O粒子及びCuO粒子も熱力学的に安定性が高いCuOやCuOと比較して酸化の程度が小さく、不安定な相である。また、この銅酸化物粒子も粒径が比較的小さく、比表面積が大きい。したがって、銅酸化物粒子も高い焼結性を有している。そして、これらの焼結性の高い銅クラスターの粒径と酸化銅粒子の粒径がそれぞれ異なることで、焼結体の銅充填率を高めることができ、より低抵抗な焼結体を得ることができる。
(銅クラスター)
銅クラスターは、平均粒径が0.1nm以上1nm以下である。このような銅クラスターは、通常、3〜6個程度の銅原子が集合して形成されるものである。
銅クラスターは、上述したように、極めて少ない数の原子の集合体であり、しかも極めて小さい粒径を有するものであるため、ナノサイズ効果により、融点が低い。したがって、このような銅クラスターは高い焼結性を有している。
銅クラスターの平均粒径としては、0.1nm以上1nm以下であれば特に限定されず、例えば0.15nm以上0.7nm以下であることが好ましく、0.17nm以上0.5nm以下であることがより好ましい。なお、本明細書において「平均粒径」とは、TEM又はSTEM写真図から無作為に選択した200個の粒子それぞれの端部から端部までの距離のうち最長の距離を平均したものをいう。
(銅酸化物粒子)
銅酸化物粒子は、平均粒径が1nm超20nm以下であり、Cu64O粒子及びCuO粒子のうち少なくとも1つである。
一般に、銅の酸化物としては、CuO、CuO、Cu、CuO及びCu64Oの5種が知られている。このうち、Cu64O及びCuOは、安定相であるCuOやCuOと比較して酸素原子の割合が少なく、安定性が低い。そしてこのようなCu64O及びCuOが酸素に接触すると、発熱するとともに酸化還元反応(自己酸化分解)が起こることで、Cu64OやCuOの表面の銅原子が動きやすくなり、焼結が促進される。したがって、このような焼結により、例えば150℃以下での低温焼結を達成することができる。なお、このような発熱はエネルギーが非常に高く、Cu64O及びCuOが金属Cu粒子やその他の銅酸化物(CuO、Cu)に僅少量混合されているだけでも、低温焼結を達成することができる。
ここで、銅酸化物粒子の平均粒径が20nm以下であると、酸素に接触する面積が特に大きくなる。また、一つの粒子を構成する原子全体に対する粒子表面に存在する原子の割合が増加する。粒子表面に存在する原子は結合が不飽和な状態であり、結合が飽和な状態にある粒子内部に存在する原子よりも高いエネルギーを有している。すなわち、平均粒径が20nm以下であると、粒子においてエネルギーの高い粒子表面の原子の割合が大きくなる。このように、本来高いエネルギーを有している銅酸化物粒子を微細化することにより、酸素との接触面積を増加させるとともに高いエネルギー状態の原子を増加させて発熱量を高め、低温焼結を可能とする。
銅酸化物粒子の平均粒径としては、20nm以下であれば特に限定されないが、例えば15nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましい。
また、銅酸化物粒子の平均粒径が1nm超であることにより、平均粒径が0.1nm以上1nm以下である銅クラスターと、平均粒径において差を設けることができる。そして、このようにして銅酸化物粒子の平均粒径と、銅クラスターの平均粒径の間で差を有することにより、焼結体の銅充填率を高めることができ、より低抵抗な焼結体を得ることができる。
ここで、銅酸化物粒子には、Cu64O粒子及びCuO粒子のいずれか一方が含まれていても、両者の混合物であってもよい。ただし、混合物であることにより、いずれか一方を含む場合に比べてより乱れを誘発し、化学反応が起きやすくなり、低温で焼結が進みやすくなると考えられる。また、Cu64Oよりも、CuOの方が化学的に安定であるため、Cu64Oのみよりも混合物の方が安定して存在させることができる。
銅酸化物粒子の平均粒径としては、1nm超であれば特に限定されないが、例えば1.5nm以上であることが好ましく、2nm以上であることがより好ましい。
(添加物)
銅クラスター、Cu64O粒子又はCuO粒子は、還元性を有する化合物を含有することが好ましい。
混合粒子の焼結時に生成した銅が、雰囲気中の酸素により酸化されるおそれがあるが、銅クラスター、Cu64O粒子又はCuO粒子が還元性を有する化合物を含有することにより、生成した銅の酸化を防止することができる。また、焼結時に、混合粒子が酸化されることにより生じたCuOやCuO等抵抗を高め得る酸化銅を還元し、このような酸化銅の含有を抑制することができる。
還元性を有する化合物の含有状態としては、特に限定されないが、銅クラスター、Cu64O粒子及びCuO粒子の少なくともいずれかの表面を被覆した状態であることが好ましい。このような有機物としては、例えばアミノ基を有する化合物(以下、「アミン系化合物」ということもある。)が挙げられる。これにより、銅の酸化による酸化銅の発生をより強く抑制するとともに、混合粒子の急速な焼結を防止することができる。
アミノ基を有する化合物としては、特に限定されず、例えばアルカノールアミン、ジアミン及びアミノカルボン酸等を用いることが好ましく、アルカノールアミンを用いることがより好ましい。アルカノールアミンとしては、例えば、2−アミノ−1−ブタノール、1−アミノ−2−プロパノール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ジアミノ−2−プロパノール、1−アミノ−2−ブタノール、2−アミノエタノール等が挙げられる。このように還元性基として、アミノ基を複数有しているか、アミノ基と他の還元性基を有していることにより、還元作用を高めることができる。中でも、PET等の高分子基板への焼結膜の密着性の観点から2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオールを用いることがより好ましい。
アミノ基を有する化合物の含有量としては、特に限定されないが、混合粒子に含まれるCuの含有量に対し、例えばモル比で0.05倍以上であることが好ましく、0.07倍以上であることがより好ましく、0.1倍以上であることがさらに好ましい。このような比であることにより、粒子の急速な反応をより適切に防止するとともに、保存時等における酸化銅(より酸化数が大きく安定なCuOやCuO)の発生をより強く抑制することができる。一方で、アミノ基を有する化合物の含有量としては、0.5倍以下であることが好ましく、0.3倍以下であることがより好ましい。
銅クラスター、Cu64O粒子又はCuO粒子に有機物を被覆する方法としては、特に限定されず、各種表面処理の手法を採用することができ、例えば銅クラスター、Cu64O粒子又はCuO粒子と、有機物を混合するだけで被覆することができる。また、具体的な一つの例は後述するが、例えば被覆する有機物を添加して、液相法により銅クラスター、Cu64O粒子又はCuO粒子を合成し、表面に有機物が被覆されたものを製造することもできる。
また、銅クラスター又は混合粒子には、例えば還元剤を添加することができる。上述したような、銅クラスター、Cu64O粒子又はCuO粒子に還元性を有する化合物を被覆することと同様に、銅の酸化による酸化銅の発生をより強く抑制するとともに、粒子の急速な焼結を防止する効果を得ることができる。
(製造方法)
このような銅クラスターと銅酸化物粒子の混合粒子の製造方法は、特に限定されず、銅クラスター、Cu64O粒子及びCuO粒子をそれぞれ、固相法や液相法等の公知の方法にて合成した後、混合して製造することができる。また、Cu64O及びCuOについては、それぞれ公知の方法にてバルク状態又はある程度の粒径を有する粒子として合成した後、粉砕等により微細化し混合して製造することができる。なお、この場合において、混合と粉砕の順は特に限定されず、例えばCu64O及びCuOをそれぞれ公知の方法にてバルク状又粗粒子状として合成して混合した後、粉砕等により微細化して製造することもできる。さらに、Cu64O及びCuOを、粗粒子状又はバルク状として同時に合成し、このようにして得たCu64O及びCuOを粉砕して、目的とする銅酸化物粒子を製造することができる。
銅クラスターと、平均粒径20nm以下のナノ粒子状のCu64O及びCuOとを同時に合成する方法としては、例えば銅イオンとアミン系化合物(表面処理剤)を含有する反応溶液に還元剤を添加する、液相還元法が挙げられる。
具体的に、このような液相還元法において反応溶液としては、銅イオンと、アミノ基を有する化合物とを反応溶媒に溶解させてなる溶液を用いる。この反応溶液中で、銅イオンは、アミノ基を有する化合物と錯体を形成している。このような反応溶液に還元剤を添加することで、銅イオンが還元されてより酸化数の低い銅クラスター、Cu64O及びCuOが生成する。
銅イオンの供給源としては、銅イオンを供給し得るものであれば特に限定されず、例えば硫酸銅、酢酸銅、酸化銅等を用いることができる。
反応溶媒としては、特に限定されず、例えばエチレングリコール等の多価アルコール類、メタノール、エタノール、2−プロパノール等の低級アルコール類、アセトン等のケトン類、水等を用いることができる。特に、環境への影響が小さく、廃液処理が容易であることから、水を用いることが好ましい。
還元剤としては、特に限定されず、ヒドラジン、塩酸ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、抱水ヒドラジン等のヒドラジン系還元剤、クエン酸、アスコルビン酸類、水素化ホウ素ナトリウム等の水素化ホウ素酸塩等を用いることができる。
アミン系化合物としては、添加剤として上述したアミン系化合物と同様のものを用いることができる。アミン系化合物の添加量としては、特に限定されないが、反応溶液に含まれる銅イオンの含有量に対し、例えばモル比で2倍以上であることが好ましく、2.5倍以上であることがより好ましく、3倍以上であることがさらに好ましい。このような比であることにより、粒子の急速な反応をより適切に防止するとともに、保存時等における酸化銅(より酸化数が大きく安定なCuOやCuO)の発生をより強く抑制することができる。
液相還元法におけるガス雰囲気としては、酸素ガス雰囲気下(例えば、反応時において、常に5体積%以上の酸素ガスを含む雰囲気)であることが好ましく、大気開放系であることがより好ましい。密閉系や窒素雰囲気下のように、酸素濃度が低い雰囲気で合成した場合は、銅に十分な酸素を供給することが困難になり、銅酸化物粒子が生成しない可能性がある。
上述の還元法によって得られた銅クラスターと銅酸化物粒子の混合粒子は、その後洗浄溶媒により精製することが好ましい。洗浄溶媒としては特に限定されないが、N,N−ジメチルアセトアミド、トルエン、ヘキサン等の有機溶媒を用いることができる。混合粒子は、例えば、遠心分離やろ過を用いて精製する。
以上のような銅クラスターと銅酸化物粒子の混合粒子によれば、その高い焼結性により例えば150℃以下の低温で焼結することができ、このようにして得られる焼結体は、CuOやCuO等抵抗を高め得る酸化銅の含有量が少ない。
≪2.第2の態様の混合粒子≫
第2の態様の混合粒子は、平均粒径が0.1nm以上1nm以下である銅クラスターと、平均粒径が1nm超20nm以下である銅酸化物粒子と、平均粒径が20nm超1μm以下の金属銅粒子と、を含むものである。このような混合粒子において、銅酸化物粒子は、Cu64O粒子及びCuO粒子のうち少なくとも1つである。すなわち、この第2の態様の混合粒子は、上述した第1の態様の混合粒子と比較して、さらに平均粒径が20nm超1μm以下の金属銅粒子を含むものである。
このような混合粒子は、上述した特定の金属銅粒子を含むことにより、銅クラスターと銅酸化物粒子によって焼結して生じる焼結体中において、大きな粒界(グレイン)を形成しそれが導電パスとなり、焼結体の導電性を高めることができる。
第2の態様の混合粒子において、銅クラスター及び銅酸化物粒子の詳細は、第1の態様の混合粒子と同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
(金属銅粒子)
金属銅粒子は、平均粒径が20nm超1μm以下である。金属銅粒子は、上述したとおり、焼結体中において、大きな粒界を形成しそれが導電パスとなり、焼結体の導電性を高めるものである。もっとも、第1の態様の混合粒子のように銅クラスター及び銅酸化物粒子だけでも十分な導電性を備える焼結体が得られるが、銅クラスター及び銅酸化物粒子は粒径が比較的小さいことから、それらのみで焼結を行うと粒界が多い焼結体となる。このようにして形成される粒界は、焼結体中で僅かではあるが抵抗を増加させる。したがって、粒界をより少なくする観点から、金属銅粒子の平均粒径を20nm超とする。一方で、焼結性を高める観点から、金属銅粒子の平均粒径を1μm以下とする。なお、銅酸化物粒子としてのCu64O粒子やCuO粒子は、高い焼結性を有しているため、銅粒子が混在していても十分に焼結を行うことができる。また、金属銅粒子がこのような範囲の平均粒径を有していることにより、銅クラスターや、Cu64O粒子及びCuO粒子との粒径の差が生じるため、焼結体の銅充填率を高めることができ、より低抵抗な焼結体を得ることができる。
金属銅粒子の平均粒径としては、50nm以上であることが好ましく、100nm以上であることがより好ましい。金属銅粒子の平均粒径が以上のような範囲であることにより、より粒界を大きくして、得られる焼結体の導電性を高めることができる。一方で、金属銅粒子の平均粒径としては、900nm以下であることが好ましく、800nm以下であることがより好ましい。金属銅粒子の平均粒径が以上のような範囲であることにより、焼結性を高めることができる。
(添加物)
第2の態様の混合粒子においては、銅クラスター、Cu64O粒子又はCuO粒子だけでなく、上述した金属銅粒子も同様にアミノ基を有する化合物で被覆することができる。すなわち、このような混合粒子においては、銅クラスター、Cu64O粒子、CuO粒子及び金属銅粒子のうち少なくとも1つは、アミノ基を有する化合物を含んでなることが好ましい。
また、アミノ基を有する化合物の種類、被覆する方法及びその他の添加物については、上述したことと同様である。また、アミノ基を有する化合物の含有量についても、上述したことと同様に混合粒子に含まれるCuの含有量に対し、例えばモル比で0.05倍以上であることが好ましく、0.07倍以上であることがより好ましく、0.1倍以上であることがさらに好ましい。一方で、アミノ基を有する化合物の含有量としては、0.5倍以下であることが好ましく、0.3倍以下であることがより好ましい。ただし、「混合粒子に含まれるCuの含有量」は、金属銅粒子を構成するCuの量をも含むものとする。このように、金属銅粒子がアミン基を有する化合物を有することにより、酸化銅(CuOやCuO)の生成を抑制することができる。
(製造方法)
このような混合粒子の製造方法は、上述した第1の態様の混合粒子の製造方法の具体例と、アミノ基を有する化合物の添加量以外は同様である。
アミノ基を有する化合物の添加量としては、反応溶液に含まれるCuイオンの含有量に対し、例えばモル比で2倍未満である。このような比であることにより、銅クラスター、Cu64O粒子及びCuO粒子以外に、金属銅粒子を生成させることができる。また、アミノ基を有する化合物の添加量としては、1.7倍以下であることがより好ましく、1.5倍以上であることがさらに好ましい。一方で、アミノ基を有する化合物の添加量としては、0.5倍以上であることが好ましく、0.6倍以上であることがより好ましく、0.7倍以上であることがさらに好ましい。
≪3.導電性インク及び導電性ペースト≫
本実施の形態に係る導電性インク又は導電性ペーストは、上述の銅クラスターと銅酸化物粒子の混合粒子を分散媒に分散してなるものである。ここで、「導電性ペースト」とは、銅クラスター及び銅酸化物粒子を含有する混合粒子と、分散媒と、バインダ樹脂とを含むものである。一方で、「導電性インク」とは、少なくとも銅クラスター及び銅酸化物粒子を含有する混合粒子と分散媒とを含むものである。すなわち、「導電性ペースト」と「導電性インク」との相違は、樹脂バインダを含むものか否かである。
銅クラスターと銅酸化物粒子の混合粒子の分散方法としては、特に制限されないが、例えば、撹拌、自転公転ミキサー等の方法を用いることができる。
分散媒としては、銅クラスターと銅酸化物粒子の混合粒子を分散させることができるものであれば特に制限されないが、分散安定性の観点から、極性分子であることが好ましい。具体的には例えば、水やアルコール等が挙げられる。上述の銅クラスターと銅酸化物粒子の混合粒子は、比較的親水性が高いため、これらの分散媒への分散性が高い。また、その他の分散媒としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ターピネオール等の有機分散媒を用いることができる。また、その分散媒の量は、特に限定されないが、スクリーン印刷やディスペンサー等の導電膜形成方法に適した粘度となるように、銅粉の平均粒径を考慮して添加量を調整することができる。
導電性インク又は導電性ペーストには、金属Cu粒子や、Cu64O及びCuO以外の酸化銅の粒子(CuO、CuO、Cu)を含有することができる。上述したように、特定の粒径の銅クラスター、Cu64O粒子及びCuO粒子から生じる発熱は、エネルギーが非常に高く、銅クラスター、CuO及びCu64Oが、金属Cu粒子やその他の銅酸化物(CuO、Cu)に僅少量混合されているだけでも、低温焼結を達成することができるからである。金属Cu粒子、酸化銅の粒子の平均粒径としては、特に限定されないが、例えば50nm以上800nm未満であることが好ましい。このような平均粒径とすることにより、銅クラスターや、Cu64O粒子及びCuO粒子との粒径の差が生じるため、焼結体の銅充填率を高めることができ、より低抵抗な焼結体を得ることができる。
導電性インク又は導電性ペーストには、構成成分として、上述した銅クラスターと銅酸化物粒子の混合粒子及び分散媒の他に、硬化後の導電性を改善するための酸化防止剤やカップリング剤等の添加剤を配合させることができる。
バインダ樹脂としては、特に限定されず、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、エチルセルロース樹脂等を用いることができる。
また、酸化防止剤としては、特に限定されず、例えばヒドロキシカルボン酸等を挙げることができる。より具体的には、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸等のヒドロキシカルボン酸が好ましく、銅への吸着力が高いクエン酸又はリンゴ酸が特に好ましい。その他にカップリング剤、粘度調整剤、分散剤、難燃剤、沈降防止剤等を使用することができる。
導電性インク又は導電性ペーストは、上述した構成成分を均一に分散させることができる限り、従来技術と同様の方法により製造できる。例えば各構成成分を、3本ロールミル等により均一に混練することにより製造できる。
≪4.銅焼結体の製造方法≫
本実施の形態に係る銅焼結体の製造方法は、上述した導電性インク又は導電性ペーストを塗布して塗布膜を形成し、塗布膜を焼結するものである。
このような塗布膜によれば、Cu64OやCuOを含むため高い焼結性を有し、例えば室温〜130℃の比較的低温でも十分に焼結された焼結体が得られる。
ところで、導電性インク又は導電性ペーストを塗布して形成した塗布膜では、その膜厚が30μm以上になると、得られる焼結体にクラックが生じそれに起因して導電性が低下するおそれがある。したがって、このような塗布膜を焼結する場合、昇温速度を2℃/分以下とすることが好ましく、1.5℃/分以下とすることがより好ましい。一方で、膜厚が30μm未満の場合、昇温速度は、例えば、20℃/分以下とすることができる。
導電性インク及び導電性ペーストを塗布する基板としては、アルミナ、ポリイミド、PET等を用いることができる。ポリイミドやPET基板を用いる場合、導電性インク及び導電性ペーストと基板との濡れ性を良くするために、オゾンや紫外線によってその表面を親水化処理することができる。オゾンや紫外線による処理を行うための装置としては、例えばフィルジェン製UVオゾンクリーナー(UV253)等を用いることができる。
導電性インクや導電性ペーストの印刷装置としては、例えばドクターブレードやバーコーターを用いることができる。
以下、実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら制限されるものではない。
〔混合粒子の合成条件の検討〕
[試料の調製]
以下に示す操作により、実施例1−1〜1−4及び比較例1−1〜1−4の試料を合成した。試薬として、酢酸銅(和光純薬工業株式会社製)、ヒドラジン一水和物(純正化学株式会社製)、エチレングリコール(純正化学株式会社製)、2−アミノ−1−ブタノール(東京化成工業株式会社製)、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール(関東化学)、1−アミノ−2−プロパノール(和光純薬工業)、N,N−ジメチルアセトアミド(関東化学株式会社製)、トルエン(関東化学株式会社製)及びヘキサン(純正化学株式会社製)を用いた。
(試験例1)
溶媒としてのエチレングリコール30mLと表面処理剤としての2−アミノ−1−ブタノール14.1mLとの混合溶液中に、銅原料である酢酸銅2.73gを添加し、超音波分散させて均一に混合し、Cu錯体を形成させ、錯体溶液を調製した。なお、このときのCuと表面処理剤のモル比は1:10である。次いで、この錯体溶液を1100rpmで撹拌しながら、還元剤であるヒドラジン一水和物7.3mLを投入した。その後、室温、大気下で24時間、1100rpmで撹拌保持した。得られた混合粒子分散液5.7mLに、N,N−ジメチルアセトアミド40mLを添加し懸濁液を調整し、6000rpmで5分撹拌した後、遠心分離を行い、上澄み液を除去し、沈殿物を採取した。採取した沈殿物をN,N−ジメチルアセトアミドで洗浄し、さらにトルエン、ヘキサンで洗浄・精製し、試料を調製した。
(試験例2)
溶媒として超純水(電気伝導率>18.2MΩcm、以下同じ。)を20mL、表面処理剤として2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール9.7gを用い、酢酸銅の添加量を1.82g、ヒドラジン一水和物の添加量を4.9mLに変更した以外は、試験例1と同様にして試料を調製した。なお、このときのCuと表面処理剤のモル比は1:8である。
(試験例3)
表面処理剤として2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール1.2gを用い、溶媒としてのエチレングリコールの添加量を20mLに変更した以外は、試験例2と同様にして試料を調製した。なお、このときのCuと表面処理剤のモル比は1:1である。
(試験例4)
表面処理剤として1−アミノ−2−プロパノール11.6mLを用いた以外は、試験例1と同様にして試料を調製した。なお、このときのCuと表面処理剤のモル比は1:10である。
(試験例5)
表面処理剤として1−アミノ−2−プロパノールの添加量を5.8mLに変更した以外は、試験例4と同様にして試料を調製した。なお、このときのCuと表面処理剤のモル比は1:5である。
(試験例6)
表面処理剤として1−アミノ−2−プロパノールの添加量を1.2mLに変更した以外は、試験例4と同様にして試料を調製した。なお、このときのCuと表面処理剤のモル比は1:1である。
(試験例7)
溶媒として超純水を使用した以外は、試験例4と同様にして試料を調製した。なお、容器の壁面や撹拌子への析出が多く、回収率が低かった。
(試験例8)
溶媒として超純水を使用し、表面処理剤としての1−アミノ−2−プロパノール添加量を23.2mLに変更した以外は、試験例4と同様にして試料を調製した。なお、容器の壁面や撹拌子への析出が多く、回収率が低かった。なお、このときのCuと表面処理剤のモル比は1:20である。
(試験例9)
ヒドラジン一水和物を投入した後、容器をゴム栓で密閉した以外、試験例1と同様にして試料を調製した。
(試験例10)
ヒドラジン一水和物を投入した後、容器をゴム栓で密閉した以外、試験例4と同様にして試料を調製した。
[試料の構造解析]
試験例1〜5において得られた試料について、走査型透過電子顕微鏡(STEM)観察を行った。STEM観察は、JEOL社製JEM−ARM−200Fを用いて、加速電圧200kVの条件で行った。図1(a)、(b)は、試験例1において得られた試料のそれぞれ異なる視野のSTEM写真図である。図1(a)においては、粒径が0.2nm程度のクラスターが確認された。また、図1(b)においては、凝集がなく、粒径が5nm程度の分散性の高い粒子が確認された。同様に、試験例2〜5の試料においては、粒径が0.2nm程度のクラスターと、粒径が5nm程度の分散性の高い粒子が確認された。
試験例6〜8において得られた試料について、透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行った。図2は、試験例6において得られた混合粒子のTEM写真図である。図2から、微細な5〜10nm程度の粒子に加えて、約200nmまで成長したコントラストが濃い粒子が確認された。図3は、試験例7において得られた混合粒子のTEM写真図である。図3から、100nm程度の粒径の大きな粒子が生成したことが分かった。図4は、試験例8において得られた混合粒子のTEM写真図である。図4から、400nm程度の粒子と5nmの粒子が混在していることが分かった。なお、試験例6〜8のいずれの試料でも、銅クラスターは確認されなかった。
試験例9〜10において得られた試料について、TEM観察を行った。図5は、試験例9において得られた粒子のTEM写真図である。図5から、粒径約100nmの粒子が確認された。図6は、試験例10において得られた混合粒子のTEM写真図である。図6から、粒径約100nmの粒子が確認された。
試験例1〜10において得られた混合粒子について、リガク社製MiniFlex2を用いてX線回折(XRD)測定を行った。測定は、CuKα線を用い、スキャン速度は20°min−1に設定した。図7は、試験例1〜8において得られた試料のXRDパターンである。試験例1〜5においては、Cu64O及びCuOのピークが観測されたことから、Cu64O及びCuOが生成していることが分かった。その一方で、試験例1、2、4及び5においては、金属Cuのピークは観測されなかった。また、試験例3においては、金属Cuのピークが僅かに観測された。なお、銅クラスターは、上述したように、3〜6個の銅原子が集合して形成されるものであるから、規則構造を有さないため、回折ピークを示さない。そのため、試験例3に由来するピークは、銅クラスターに起因するピークではなく、僅かに生成した銅粒子であると考えられる。
一方で、試験例6において得られた試料では、Cu64O及びCuOのピーク以外に、Cuのシャープなピークが観測された。上述したTEM観察の結果と合わせて考察すると、約200nmまで粒成長したCu粒子が混在していると考えられる。また、試験例7及び試験例8において得られた試料では、Cu64O及びCuOのピークが観測された。
図8は、試験例1及び試験例9において得られた試料のXRDパターンである。この図8から、試験例9においてはCuのシャープなピークのみが観測され、Cu64O及びCuOのピークは観測されなかった。このことから、密閉系で還元反応を行った場合、Cu64O及びCuOが形成できないことが分かった。
図9は、試験例1及び試験例10において得られた試料のXRDパターンである。この図9から、試験例10においてはCuのシャープなピークのみが観測され、Cu64O及びCuOのピークは観測されなかった。このことから、密閉系で還元反応を行った場合、Cu64O及びCuOが形成できないことが分かった。
得られた混合粒子について、島津製作所製DTG−60Hを用いて、熱重量・示差熱(TG−DTA)分析を行った。測定は、窒素雰囲気下、昇温速度5℃/分、ガス流量100mL/分で行った。図10は、試験例1において得られた混合粒子のTG−DTA分析結果である。図10より、試験例1において得られた混合粒子では、約18%の重量減少が観測された。この重量減少は、表面処理剤としての2−アミノ−1−ブタノールの脱離・分解によるものであると考えられる。この重量減少から求めたCuの総量に対する2−アミノ−1−ブタノールの量(2−アミノ−1−ブタノール/Cu)は、モル比で0.15であった。
試験例2、4及び6についても同様にして、TG−DTA分析を行った結果、それぞれ約25%(試験例2)、約17.1%(試験例4)、約13.6%(試験例6)の重量減少が確認された。この重量減少から求めたCuの総量に対する表面処理剤の量(表面処理剤/Cu)は、モル比でそれぞれ0.17(試験例2)、0.17(試験例4)、0.13(試験例6)であった。
試験例1及び試験例4において得られた混合粒子を溶媒(プロピレングリコールとグリセリンの1:1体積%混合溶液)に分散させた。このようにして得られた試料について、エックス線吸収微細構造(XAFS)分析を行った。XAFS分析は、高エネルギー加速器研究機構・物質構造科学研究所の放射光科学研究施設で行った。
図11は、試験例1及び試験例4において得られた混合粒子、並びに銅箔の動径分布関数である。この図11において、縦軸はフーリエ変換後の強度、横軸は銅原子間の距離を示している。試験例1において得られた混合粒子の動径分布関数から求めたCuの配位数は3.0、原子間距離は0.251nmであった。また、試験例4において得られた混合粒子の動径分布関数から求めたCuの配位数は2.9、原子間距離は0.251nmであった。面心立方格子のCu金属の場合は配位数が12である。よって、試験例1及び試験例4において得られた混合粒子では、配位数が少ないクラスターが多く含まれていると推測される。また、原子間距離がバルク状の銅の原子間距離0.255nmより短いことも、Cu原子がクラスターを構成していることを裏付けるものである。
図12は、試験例1及び試験例4において得られた混合粒子、並びに銅箔のNi−K吸収端のXAFSスペクトルである。得られた混合粒子のスペクトルは、CuOやCuOとはピーク位置が異なっている。また、銅箔のピーク位置とほぼ同等で、やや高エネルギー側にシフトしていることから、価数は0又は僅かに正であると考えられる。この結果から、金属銅より僅かに酸化した形態、すなわちCu64Oが含まれていることが示唆されていると考えられる。
〔自己焼結性評価〕
試験例1〜5において得られた混合粒子について、窒素フロー下で十分に乾燥させた後、大気中に取り出して、自己発熱による焼結性を評価した結果、発熱して焼結体が得られた。一方で、平均粒径約100nm、1μm、10μmの銅粒子について同様の操作を行ったが、いずれも発熱せず焼結体を得ることができなかった。このことから、試験例1〜5において得られた混合粒子は、極めて高い低温焼結性を有することが分かった。
〔焼結体の導電性評価〕
(実施例1)
試験例1において得られた混合粒子と溶媒(プロピレングリコールとグリセリンの1:1体積%混合溶液)を混合し、Cu濃度45質量%のナノインクを作製した。膜厚を10μmとして、アルミナ基板上に印刷後、焼結処理を行った。窒素雰囲気中、80℃で1時間乾燥した後、150℃で15分間焼結した。このときの昇温速度を3℃/分とした。得られた焼結膜の抵抗率は、4.6×10−3Ω・cmであった。
(実施例2)
試験例2において得られた混合粒子を用いた以外、実施例1と同様にして焼結膜を調製した。得られた焼結膜の抵抗率は、8.7×10−4Ω・cmであった。
(実施例3)
試験例4において得られた混合粒子を用いた以外、実施例1と同様にして焼結膜を調製した。得られた焼結膜の抵抗率は、5.2×10−4Ω・cmであった。
得られた焼結膜についてSEM観察を行った。図13は、実施例3において得られた焼結膜のSEM写真図である。この焼結膜においては、表面に僅かにクラックが確認された。
(実施例4)
焼結時の昇温速度を1℃/分に変更して焼結を行った以外、実施例3と同様にして焼結膜を調製した。得られた焼結膜の抵抗率は、5.2×10−4Ω・cmであった。
得られた焼結膜について、SEM観察を行った。図14は、実施例4において得られた焼結膜のSEM写真図である。この焼結膜においては、表面に僅かにクラックが確認された。
(実施例5)
焼結時の昇温速度を0.5℃/分に変更して焼結を行った以外、実施例3と同様にして焼結膜を調製した。得られた焼結膜の抵抗率は、9.4×10−4Ω・cmであった。
得られた焼結膜について、SEM観察を行った。図15は、実施例5において得られた焼結膜のSEM写真図である。この焼結膜においては、表面にクラックが確認された。
(実施例6)
処理を施したPET基板を用いた以外、実施例3と同様にして焼結膜を調製した。得られた焼結膜の抵抗率は、2.0×10−4Ω・cmであった。また、PET基材を用いても焼結体は剥がれることなく、高い密着性を有していた。
(実施例7)
膜厚を20μmとした以外、実施例3と同様にして焼結膜を調製した。得られた焼結膜の抵抗率は、1.6×10−3Ω・cmであった。
得られた焼結膜について、SEM観察を行った。図16は、実施例7において得られた焼結膜のSEM写真図である。この焼結膜においては、表面に少量のクラックが確認された。
(実施例8)
膜厚を40μmとした以外、実施例3と同様にして焼結膜を調製した。得られた焼結膜の抵抗率は、2.1×10−2Ω・cmであった。
得られた焼結膜について、SEM観察を行った。図17は、実施例8において得られた焼結膜のSEM写真図である。この焼結膜においては、表面に少量のクラックが確認された。
(実施例9)
膜厚を40μm、昇温速度を1℃/分とした以外、実施例3と同様にして焼結膜を調製した。得られた焼結膜の抵抗率は、3.6×10−4Ω・cmであった。
得られた焼結膜について、SEM観察を行った。図18は、実施例9において得られた焼結膜のSEM写真図である。この焼結膜においては、表面に僅かなクラックが確認された。
(参考例1)
試験例6において得られた混合粒子を用いた以外、実施例1と同様にして焼結膜を調製した。得られた焼結膜の抵抗率は、2.7×10−5Ω・cmであった。
得られた焼結膜について、SEM観察を行った。図19は、参考例1において得られた焼結膜のSEM写真図である。焼成膜中に約200nmの粒子が観察された。異なる粒径の粒子が存在し、焼成膜中の粒子の充填密度が高くなったために、低抵抗率となったと考えられる。
(参考例2)
焼結温度を100℃に変更した以外、参考例1と同様にして焼結膜を調製した。得られた焼結膜の抵抗率は、5.3×10−4Ω・cmであった。

Claims (18)

  1. 平均粒径が0.1nm以上1nm以下である銅クラスター。
  2. アミン系化合物をさらに含む
    請求項1に記載の銅クラスター。
  3. 前記アミン系化合物は、アルカノールアミン、ジアミン及びアミノカルボン酸からなる群から選択される1種以上である
    請求項2に記載の銅クラスター。
  4. 前記アミン系化合物の含有量は、Cuの含有量に対し、モル比で0.05倍以上である
    請求項2又は3に記載の銅クラスター。
  5. 150℃以下で焼結してCu焼結体を構成するための
    請求項1乃至4いずれか1項に記載の銅クラスター。
  6. 平均粒径が0.1nm以上1nm以下である銅クラスターと、
    平均粒径が1nm超20nm以下である銅酸化物粒子と、を含み、
    前記銅酸化物粒子は、Cu64O粒子及び前記CuO粒子のうち少なくとも1つである
    混合粒子。
  7. 前記銅クラスター、前記Cu64O粒子及び前記CuO粒子のうち少なくとも1つは、アミン系化合物を含む
    請求項6に記載の混合粒子。
  8. 前記アミン系化合物は、アルカノールアミン、ジアミン及びアミノカルボン酸からなる群から選択される1種以上である
    請求項7に記載の混合粒子。
  9. 前記アミン系化合物の含有量は、前記混合粒子に含まれるCuの含有量に対し、モル比で0.05倍以上である
    請求項7又は8に記載の混合粒子。
  10. 平均粒径が0.1nm以上1nm以下である銅クラスターと、
    平均粒径が1nm超20nm以下である銅酸化物粒子と、
    平均粒径が20nm超1μm以下の金属銅粒子と、を含み、
    前記銅酸化物粒子は、Cu64O粒子及び前記CuO粒子のうち少なくとも1つである
    混合粒子。
  11. 150℃以下で焼結してCu焼結体を構成するための
    請求項6乃至10いずれか1項に記載の混合粒子。
  12. 請求項1乃至5いずれか1項に記載の銅クラスターと、分散媒と、を含む
    導電性インク。
  13. 請求項6乃至11いずれか1項に記載の混合粒子と、分散媒と、を含む
    導電性インク。
  14. 請求項1乃至5いずれか1項に記載の銅クラスターと、分散媒と、バインダ樹脂と、を含む
    導電性ペースト。
  15. 請求項6乃至11いずれか1項に記載の混合粒子と、分散媒と、バインダ樹脂と、を含む
    導電性ペースト。
  16. 請求項12又は13に記載の導電性インクを塗布して塗布膜を形成し、該塗布膜を焼結する、銅焼結体の製造方法。
  17. 請求項14又は15に記載の導電性ペーストを塗布して塗布膜を形成し、該塗布膜を焼結する、銅焼結体の製造方法。
  18. 前記塗布膜を、膜厚30μm以上となるように形成し、該塗布膜を加熱焼結するに際し、昇温速度を2℃/分以下とする、請求項16又は17に記載の銅焼結体の製造方法。
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