本発明は、時間の経過とともに反応パラメータを変化させることができる連続稼働システムを使用して、上述の従来のバッチベースの最適化手法と比較して、化学反応を最適化するのに要する時間を劇的に短縮する。図1Aは、自動制御される連続運転反応最適化システム110の機能要素を例示している。システムコントローラ148は、反応物質濃度の選択、および反応物質流量(flow rate)、溶媒流量、温度条件、圧力条件(圧力条件を変化させるように構成されているシステムの場合)、および滞留時間の制御を含めて、システムを制御するために使用される。システムコントローラ148は、コンピュータまたはその他のプログラム可能なコンピューティングデバイスを備えるのが好ましいが、特定用途向け集積回路(ASIC)を代わりにシステムコントローラに使用しても有益であることが理解されるであろう。システムコントローラ148は、(反応物質Aの流量を選択することに使われる)反応物質Aポンプ120、(反応物質Bの流量を選択することに使われる)反応物質Bポンプ116、(反応物質Aの濃度を制御することに使われる)溶媒A希釈ポンプ118a、(反応物質Bの濃度を制御することに使われる)溶媒B希釈ポンプ118b、(反応物質Aおよび反応物質Bが、熱的に条件調整され、混合される)反応モジュール122、(反応モジュール122の内部の熱条件を制御する)熱交換器150、複数の滞留槽弁133、134、136、および138(以下でさらに詳しく説明するように、これにより、直列分析ユニットは反応モジュールから、または特定の滞留槽/滞留ユニットから、流体を受け取ることができる)、出口弁140、廃液容器143、自動オンライン分析ユニット146(つまり、検出デバイス)、およびオプションの絞り弁142に、動作するように(コネクタAを介して)接続されている。必要ならば、追加の熱交換器152を使用して、システムコントローラ148がそれぞれの滞留槽内の温度を独立に制御するようにできる。
熱交換器150は、反応モジュール122と流体で通じるように結合され、温度調整流体(temperature-conditioned fluid)を使用して、化学反応装置内の温度を制御する。同様に、オプションの熱交換器152を使用する場合、これは、それぞれの滞留槽124、126、および128と流体で連絡するように結合され、温度調整流体を使用して、それぞれの滞留槽内の温度を制御する。それとは別に、熱交換器152からの温度調整流体は、さらに、それぞれの滞留槽と流体で通じるように結合し、温度調整流体を循環させることによって、滞留槽の温度を制御することができる。しかし、このような構成では、それぞれの滞留槽内の温度条件は、独立に変化させることは容易でない。特に、調べられる1つの最適化パラメータが、反応モジュールに対して滞留槽には異なる熱条件を与える場合に、それぞれの滞留槽内の熱条件を独立に制御できることが望ましく、これは、別の温度調節流体を使用して、(複数の)滞留槽内の温度を制御することにより実装することができる。
反応物質A供給源114および反応物質B供給源112の量は、溶媒供給源113の量とともに、最適化すべき反応の関数(functions)である。例えば、反応物質Aが2対し、反応物質Bを1として混合する必要がある場合、反応物質Bの約2倍が利用できなければならない。それぞれの最適化パラメータがテストされるまでシステム110が連続稼働するように、十分な量のそれぞれの反応物質および溶媒を用意し、必要な流体を再供給するためにシステムを停止しなくて済むようにできると好ましい。上記のように、最適化を必要とする多くの反応は、所望の生成物を生成する適切な条件の下で反応する2つの異なる反応物質を組み合わせることに基づく。しかし、ある反応は、所望の生成物を得るために、特定の条件下で触媒に一つの反応物質を触れさせることに基づき、他の反応は、所望の生成物を得るために、2つ以上の反応物質を組み合わせることに基づいている。当業者であれば、システム110は、図1Aに示されている2つの反応物質よりも少ない、または多い反応物質を必要とする反応に対して最適化反応を連続実行できるように簡単に修正できることが容易に理解できるであろう。そのため、本発明の重要な用途は、そのような反応の最適化での使用であると考えられるが、本発明は、2つの反応物質を使用する反応の最適化には限定されない。反応物質Aおよび反応物質Bは、一般に、液体であるが、反応物の一方または両方は、気体であってもよい。固体反応物質は、一般に、システム内での取り扱いおよび処理が容易になるように、液体中に溶解または懸濁され、その後、供給源112または供給源114内に置かれる。
使用される溶媒は、反応物質Aおよび反応物質Bと親和性がなければならない。ほとんどの利用法(application)では、反応物質Aおよび反応物質B両方について共通溶媒が存在し、単一の溶媒供給源を使用することができる。必要ならば、別々の溶媒供給源を用意して、第1の溶媒を反応物質Aの希釈に使用し、第1の溶媒と異なる第2の溶媒を、反応物質Bを希釈するために使用することができる。本発明において溶媒を使用することで、反応物質Aおよび反応物質Bの濃度を選択的に変化させ、反応物質の濃度を変化させることが生成物収量および品質に及ぼす影響を測定することができる。当業者であれば、特定の反応物質(または一組の反応物)に対し適切な溶媒を選択することは、当業者の技能の範囲内にあることを容易に理解するであろう。反応物質の相対濃度を変化させるために使用されることに加えて、この溶媒は、システムを洗浄するためにも使用できる。同じ試薬が複数の最適化実験において使用されるため、システムを実験毎に洗浄する必要はないといえるであろう。特に、多数の異なる最適化実験を必要とする最適化については、残留物が反応モジュール、滞留時間モジュール、および流体管路内に溜まることを最小限に抑えるために、システムを定期的に洗浄するのが望ましい場合がある。このような洗浄は、反応物質または生成物が比較的高い粘度を持つ場合に、より頻繁に実行するとよい。
ポンプ120は、反応物質Aの流量を制御し、ポンプ116は、反応物質Bの流量を制御する。特定の反応について最適化実験を行った場合、流量は、ときに、一定に保たれ(他のパラメータは変化するが)、流量は、ときに、変化するパラメータである。希釈ポンプ118aは、溶媒を、反応装置に入る反応物質Aの流れの中に導き入れることにより、反応物質Aの相対濃度を変化させるために使用される。希釈ポンプ118bは、同様に、溶媒を、反応装置に入る反応物質Bの流れの中に導き入れることにより、反応物質Bの相対濃度を変化させるために使用される。溶媒が反応物質の希釈のため加えられ、その反応物質の流量が一定に保持される場合、その反応物質の流量は、その溶媒に起因する流量の増大を相殺するのに必要な量だけ減らされるのが好ましい。さまざまな異なる種類のポンプを有益に使用できる。それぞれの熱交換器は、システムコントローラ148の制御の下で、温度調整熱媒体を反応モジュール(または滞留槽)に供給する、専用ポンプ(別々には示されていない)を組み込むのが好ましい。
図に示されてはいないが、状況に応じて、圧力センサおよびフィルタを、システム110内のそれぞれのポンプに関連して使用できることが予想される。圧力センサにより生成される信号は、システムコントローラ148に送られる、反応物質が流れているという確認となり、またフィルタは、反応物質A供給源114、反応物質B供給源112、溶媒供給源113、および/または熱伝導流体を汚染した可能性のある粒子状物質を濾過するために使用することができる。反応モジュールがマイクロ反応装置を組み込む好ましい一実施形態では、マイクロ反応装置内の流体チャネルはサイズが特徴的に非常に小さいので、このフィルタは特に重要である。そのため、比較的小さな粒子であっても、そのチャネルを詰まらせ、またマイクロ反応装置の効率を著しく損なう可能性がある。圧力変化がフィルタの詰まりを示している場合など、圧力センサがシステム内の圧力の変化を示した場合に、フィルタのチェックをユーザに警告するようにシステムコントローラ148をプログラムするのが好ましい。必要ならば、溶媒供給源を使用してシステムを洗浄するために、システム内の反応物質の流れを定期的に終了するように、システムコントローラ148を構成することができる。
上述のように、反応モジュール122は、それぞれの最適化実験に対し試薬が比較的少量のみで済むように、マイクロ反応装置として実装するのが好ましい。生成された生成物の量が正確な分析を可能にできる十分な量である限り、最適化実験時に大量の生成物を生成する必要はない。図1Aでは、反応モジュール122内の試薬の流体経路を例示しようとはしていないことに留意されたい。2つの反応物質は、反応モジュール122に送られ、単一の所望の化学生成物は、反応モジュール122から出るか、またはそれとは別に、混合され、部分的に反応した反応物質は、反応モジュールから出て、1つまたは複数の滞留槽に入り、反応が完了できるように一定時間の間ポンプで送り込まれる。そのため、反応モジュール122が少なくとも混合ユニットを備えること、および反応モジュール122内の熱条件が制御されることが理解されるだろう。
好ましい一実施形態では、反応モジュール122内の化学反応装置はマイクロ反応装置であるが、代替として、本発明では、マクロスケールの反応装置を使用することも可能であろう。マイクロ反応装置は、一般に、特に反応流体経路に関してサイズが1mm未満の流体構造を組み込むものとして特徴付けられる。しかし、本発明は、反応モジュールは流体構造のサイズがマイクロ反応装置に一般に関連するマイクロスケールの流体構造よりも大きいか、またはさらにかなり大きい化学反応装置を組み込むことができるとも考えられるので、マイクロ反応装置を含む反応モジュールには限定されない。
必要ならば、反応モジュール122は、選択された2つの反応物質の間の反応を促進するために必要な構造要素を含む。場合によっては、反応物質の1つを触媒に触れさせて、反応を開始させるか、または効率よく実行させる必要がある。他の反応は、電気化学的、光化学的、および/またはその他の形態の刺激を必要とする。本発明で使用する反応装置に組み込むと有益と考えられるプロセスパラメータとしては、磁気(magnetic)パラメータ、ピエゾ抵抗(piezoresistive)パラメータ、圧電(piezoelectric)パラメータ、形状記憶パラメータ、放射性(radioactive)パラメータ、触媒作用(catalytic)パラメータ、光学パラメータ、電磁気パラメータ、および静電気(electrostatic)パラメータがある。それぞれのこのようなパラメータは、システムコントローラ148により制御できることが好ましい。
(希釈ポンプ118aおよび118bを使用して、必要に応じて希釈された)一定量の反応物質Aと一定量の反応物質Bが、反応モジュール122内に導き入れられ、適切に混合され、熱調整された後、その混合された反応物質を、分析のために分析ユニット146に送り込むか、または弁133、134、136、および138のうちの適切な1つまたは複数を操作することにより滞留槽124、126、および/または128のうちの1つに導き入れることができる。以下で詳しく説明する図1B〜1Eは、滞留槽を通らずに反応モジュール122から分析ユニット146に流体を送る流れ経路(図1B)、反応モジュール122から滞留槽124に、次に分析ユニット146に流体を送る流れ経路(滞留槽126および128をバイパスする;図1C)、反応モジュール122から滞留槽124に、次に滞留槽126に、そして次に分析ユニット146に送る流れ経路(滞留槽128をバイパスする;図1D)、および、反応モジュール122から滞留槽124に、次に滞留槽126に、次に滞留槽128に、そして次に分析ユニット146に送る流れ経路(それによって、与えられた流量について最大の滞留時間を達成する;図1E)を例示している。当業者であれば、他の弁構成を使用して同じ機能(つまり、反応モジュールと分析ユニットとの間の流れ経路を選択し、滞留ユニットを望む数だけ使用できるようにする機能)を実現することができることを理解するであろう。ある他の構成では、それよりも少ない数のマルチポート弁を使用する。そのため、図に示されている特定の弁構成は、実施例を示すことを意図しており、本発明の範囲を限定することを意図していない。コントローラ148は、出口弁140により、流体を廃液容器143に導く、または生成物出口に導くことができる。コントローラ148は、任意選択の絞り弁142により、弁142の下流の(つまり、弁140に向かう)流量を低減することで、システム110内の圧力条件を選択的に変化させることができ、これにより、弁142の上流にあるポンプ(溶媒ポンプおよび試薬ポンプ)は、反応モジュールおよび使用される滞留槽内の圧力を高める。
滞留槽は、さまざまな方法で使用することができる。例えば、滞留槽は、反応が完了する前に反応モジュールから部分的反応試薬が放出される流量を選択することにより、より高いスループットを実現するために使用することができる。このような実施形態では、滞留槽は、並列で使用される。本発明の滞留槽は、さらに、順番に使用することもできる(つまり、物質が反応モジュールから出て、第1の滞留槽内に送られ、その後続いて、第1の滞留槽から直列に結合されている1つまたは複数の追加の滞留槽に送られ、最後に直列分析ユニットにより分析される)。システム110の弁機能は、滞留槽124のみを通過した後、滞留槽124および126を通過した後、または滞留槽124、126、および128を通過した後に、反応モジュール122から出てくる生成物/混合反応物質を分析ユニット内に送ることができる。滞留槽のうちの1つだけが使用される場合、反応モジュールから出る生成物/混合反応物質は、滞留槽124内に送られ、その後、分析ユニットに迂回されてから、その流体が追加の滞留ユニットに入る。他の実施例として、3つすべての滞留槽が使用される場合、反応モジュールから出る生成物/混合反応物質は、滞留槽124内に送られ、次に滞留槽126内に送られ、そして最後に、滞留槽128内に送られ、次に分析ユニットに迂回される。滞留槽を順番に使用することで、本発明は、滞留時間を反応パラメータの1つとして変化させ、データを収集し、最適な滞留時間を決定することができる。
上述のように、滞留槽を使用することで、反応モジュール122により単位時間当たりに処理できる反応を増やすことができる。試薬は、反応モジュール122内で混合され、熱的に調整され、その後、1つまたは複数の滞留槽に順次移動される。3つの滞留槽が示されているが、さらに他の滞留槽を使用できることが理解されるであろう。例えば、最適化される反応において、反応が完了するまでに5分を要し、混合および熱調整は反応モジュール122内で1分以内に実行できる場合、それぞれ定義済み流量で流体が滞留槽を通過するのに1分ほど要するような、十分な体積を持つ4つの滞留槽(1番〜4番)を使用して、試薬を反応モジュール内に連続的に導き入れることができる。第1の組の試薬(つまり、温度などのパラメータがテストされる場合、同一である可能性のある所定の量の試薬Aおよび試薬B)が反応モジュール122内に導き入れられ、混合され、熱的に調整され、滞留槽1に送られる。滞留槽1を出る流体は、2分間処理されており(反応モジュール内で1分、滞留槽1内で1分)、滞留槽2に送られる(さらに1分間の処理時間)。滞留槽2を出る流体は、滞留槽3に送られる(さらにもう1分の処理時間)。滞留槽3を出る流体は、必要な5番目の1分間の処理時間のために、滞留槽4に送られる。滞留槽1から初期流体が出た後、追加の流体が反応モジュールから出て、滞留槽1に入ることに注意されたい。この簡略化されたシナリオは、滞留槽(または反応モジュール)を充填し、空にするのに要する時間を含まないが、滞留槽を使用することで、反応モジュール自体が反応の完了に要する滞留時間を許容しない場合に、システムをどのように連続動作させることができるかを説明している。
滞留時間の調整は、試薬(および、試薬濃度を変化させるために使用される場合には、溶媒)の流量を修正することにより行うこともできる。ポンプは、一般的に、制限された範囲にわたって線形挙動を示すため、ポンプの速度を制御することにより定義済み範囲全体にわたってのみ、反応物質の流量を正確に変化させることができる。一般に、この範囲では、流量を少なくとも10倍ほどの大きさ(one order of magnitude)で変化させることができる。したがって、滞留時間の影響を、固定されたシステム容積に対し、10〜20倍について分析できる。
熱交換器152を使用して、反応モジュール122内に存在するのと同じ、滞留槽内の熱条件を維持するのが好ましい。上述のように、テスト可能なある最適化パラメータは、生成物収量および品質に対する様々な滞留槽温度の影響である。
本発明の一実施形態では、それぞれの滞留槽は、らせん状に巻かれた毛細管通路(capillary passage)を備え、毛細管通路の長さにより、滞留槽の反応物質の滞留時間を制御する。反応モジュール122がマイクロ反応装置を含む好ましい一実施形態では、毛細管通路は、毎分1ミリメートルの流量で45分の滞留時間を達成するのに十分な長さである。一般に、化学反応の大半が完了するのには、滞留時間が45分あれば十分である。しかし、異なる反応は、異なる滞留時間を必要とする場合があり、滞留槽は、最適化される反応の要求条件に一致していなければならない。さらに、毛細管通路は、有効な滞留槽として使用することができるが、それぞれの滞留槽の特定の設計は重要でないことが理解されるであろう。それぞれの滞留槽は、反応モジュールを出る反応物質の不完全反応混合物が、その反応が完了するまで残ることができるほどの十分な容積を持つ限り、その容積の特定の物理的構成は重要でない。
システム110では、圧力に依存するさまざまな反応を実行できる。例えば、容積の減少、沸点の上昇、または液相中の気体濃度の上昇を伴う反応は、圧力依存である。そのため、定義済み圧力で反応が起こることができるようにすることが望ましい場合がある。反応経路にそって圧力を高めるには、反応経路の遠位端に絞り弁が必要である。弁142が絞りとして働くのが好ましく、それにより、弁を部分的に閉じることで、ポンプ116、118a、118b、および120は、反応モジュール(および滞留槽)内に、より高い圧力を発生させ、流量を一定に保つ。圧力条件を変えられることは有益であるが、他の多くの最適化実験は圧力条件を変えずに(つまり、濃度、化学量論比、温度、および滞留時間などのパラメータを変化させることにより)実行できるため、弁142はオプションとして用意されることに注意されたい。
熱交換器150に関して、使用される熱伝導媒体は、流体的性質を持つものであることが好ましい。固相熱伝導媒体が当業では知られているが(シリカなど)、熱交換器内の小さな通路を通るような固相熱伝導媒体の連続的な流れを保証するのは困難な場合があり、一般に、本発明では流体的熱伝導媒体が好ましい。システム110は、約−80℃から約200℃の範囲で熱条件を制御(し、測定)することができると好ましい。図に別に示されていないが、反応モジュール122は、複数の温度センサが配置され、反応モジュール内のさまざまな選択された位置で温度条件を監視できるようになっていることが好ましい。同様に、温度センサを滞留槽内の複数の場所に据え付けることも望ましい。これらの温度センサは、さらに、反応モジュール122(および/または滞留槽)を出入りする熱交換媒体の温度を測定するためにも使用することができる。そのようなセンサを組み込む特に重要な場所は、反応速度論の結果としてエネルギーの放出または吸収源による変化および温度勾配が予測される、システム110内の場所を含む。
希釈ポンプ118aおよび118bは、システム110が連続稼働し、最適化反応を完了させるために、必要に応じてそれぞれの反応物質の相対濃度を変化させることができるようにするために非常に重要である。反応物質Aおよび反応物質Bの濃度は、希釈ポンプを使用して反応物質供給流内に混合する溶媒を加減することにより(希釈を介して)容易に変えられる。そのため、いずれの反応物質の濃度も、従来行っていたように、様々な試薬濃度の調合を手作業で行わなくても、プロセス実行時に自動的に調整できる。重要なのは、希釈ポンプを組み込むことにより、(さまざまな濃度の手作業で調合された溶液を反応モジュール内に導き入れることができるようにするために)試薬供給槽を切り換える必要があるという問題が解消されることである。従来のシステムでは、反応物質濃度を修正することは、実験を終了するか、または実験が完了するまで待ち、(複数の)異なる濃度反応物質を使用して新しい実験を開始することでしか可能でない。対照的に、コントローラ148は、最適化実験の実行中に、ランダムに、またはより好ましくは、定義済みの方法により、連続的に反応物質の濃度を変化させることができる。
次に、分析ユニット146を参照すると、当業者であれば、このコンポーネントに使用されうるさまざまな分析デバイスが用意されており、いくつかのデバイスは、特定の生成物を検出すること、または特定の品質の生成物を監視することについて、他のものよりも適していることを理解するであろう。明らかに、分析ユニット146は、最適化される反応の所望の生成物を検出することができ、それにより生成物の量および品質を測定できなければならない。定量的測定結果が得られるのが好ましいが、異なるレベルの品質を区別することができる定性的測定も有用であろう。(反応モジュール122または滞留槽のうちの1つからの)生成物は、測定セル上に渡され、測定装置内に導き入れられ、量子的粒子に触れさせられ、または選択された分析ユニットに適切に収集される。非破壊分析手法を選択することにより、第2の分析ユニット(図には別のものとして示されていない)は、より詳細な組成情報(例えば、所望の生成物内に存在する副産物)などの追加情報を判別するために使用することができる。以下の手法に基づく分析ユニットを使用すると有益であるが、本発明は、本明細書で説明されている手法にのみ限られるわけではないことは理解されるであろう。使用できる非破壊手法としては、赤外分光法(フーリエ変換法)、ラマン分光法、紫外線(UV)分光法、および核磁気共鳴(NMR)分光法がある。使用可能と思われる破壊検査手法としては、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)およびガスクロマトグラフィ(GC)を含む、質量分析および分離に基づく分析手法がある。
図1B〜1Eは、図1Aに基づいており、弁133、134、136、および138を操作することにより使用可能なさまざまな流れ経路を例示している。それぞれの図において使用可能な流れ経路は、太い線で示されている。図1Fは、滞留槽および反応モジュールの特に好ましい構成の詳細を示している。図1B〜1Eは溶媒の流れを示していないが、溶媒を使用して試薬Aまたは試薬Bを希釈しても、弁133、134、136、および138の操作による使用可能な流れ経路は影響を受けないことが理解されることに注意されたい。それぞれの弁(つまり、弁133、134、136、および138、さらに弁140および142)は、コントローラ148に制御可能な形で連結される。一実施形態では、コントローラ148は、それぞれ異なる滞留時間を持つ複数の最適化実験を行うため定義済みパターンに従って弁133、134、136、および138を選択的に作動させるように構成されている(以下で詳述する表1では、3つの滞留槽のみを使用して達成可能な滞留時間の比較的広い範囲にまたがる、11の最適化実験のそのような1つのパターンをまとめている)。図1Aに基づく作業モデルでは、容積2mlの反応モジュール、およびそれぞれ容積15mlの複数の滞留槽を使用する。この作業モデルでは、流量1ml/分に基づき、(滞留槽を使用しないで)最短2分間、または(3つの滞留槽すべてを使用して)最長47分間、反応物質AおよびBを処理することができる。追加の滞留時間の変化は、流量を変えることにより実現できる。例えば、流量10ml/分では、作業モデルの最短滞留時間は、0.2分(24秒)であり、作業モデルの最高滞留時間は、4.7分である。
図1A〜1Fの弁構成(つまり、弁133、134、136、および138)は、個々のプレートの開口部が流体チャネルを定める積層プレートにより、反応モジュールおよびそれぞれの滞留槽が実装される場合に使用するために、特に選択されていることに留意されたい。このような構成では、コンパクトなシステムを設計できるが、隣接する滞留槽間、および反応モジュールと滞留槽124との間への弁の配置が制限される。反応モジュール122および滞留槽124、126、および128は、図1Fに示されているように、このような実装で物理的に次々に積み上げられる。分離プレート123a〜cは、積み重ねられた反応モジュール/滞留槽間に配置される。それぞれの分離プレートは、隣接した要素を互いに流体で伝達できるようにする流体チャネルを備える。そのため、反応モジュール122の出口は、プレート123aを介して滞留槽124の入口と流体でつながり、滞留槽124の出口は、プレート123bを介して滞留槽126の入口と流体でつながり、滞留槽126の出口は、プレート123cを介して滞留槽128の入口と流体でつながっている。プレート123a内の流体チャネルは、弁133と流体で通じるように(in fluid communication)結合され、プレート123b内の流体チャネルは、弁134と流体で通じるように結合され、プレート123c内の流体チャネルは、弁136と流体で通じるように結合される。第1の最適化反応にシステムが使用される前に、システム全体を流体でいっぱいにする(つまり、反応モジュール、滞留槽、およびそのような要素を結合する流体管)。反応モジュールおよび滞留槽は、常に、流体で通じている。閉じた弁(弁133、134、136、および138)に対する圧力上昇の結果、溶媒ポンプおよび反応物質ポンプを介してシステム内に導き入れられる流体は、開いている流体経路(弁133、134、136、および138により定められる経路)のみを流れる。弁133、134、136、および138により使用可能にされているさまざまな流体経路の詳細な説明を以下に示す。他の弁構成および他の流体経路を使用して、反応モジュールから出る流体をそれぞれの滞留槽を通さずに分析ユニットに送れるようにする望ましい機能を実現し、それぞれの滞留槽から出る流体を分析ユニットに送れるようにすることができる。したがって、図1A〜1Fの弁構成は、実施例であり、本発明を限定する意図はない。
図1Bでは、弁133、134、136、および138は、反応モジュール122から出る流体がそれぞれの反応モジュールを迂回し、分析ユニット146に直接進むように操作される(図1B〜1Eのそれぞれは、流体を生成物出口へ送る弁140とともに、絞り弁として使用されていない弁142に基づく)。流量1ml/分、および、容積2mlの反応モジュール122に基づき、滞留時間2分が達成される。弁133は、2つのポートを備え、(図1Bのように)弁133が開いている場合には、反応モジュール122からの流体は、弁133を通り、弁134に進むことができる。弁133が閉じている場合、反応モジュール122からの流体は、反応モジュール122を弁133に結合している流体管内に流れ込むが、弁133を越えて流れることはできない。弁133が開いていようと閉じていようと、反応モジュール122は、滞留槽124と流体で通じている。弁133が開き、弁134、136、および138が適切な位置にあれば、反応モジュール122がそれぞれの滞留槽と流体で通じているとしても、流体が分析ユニット146に到達できるようにする唯一の経路は、(太線で示されているように)開いている弁133を通過する経路であって、滞留槽を通る流体経路ではない。
図1Cでは、弁134は、滞留槽124からの流体が弁136(続けて、分析ユニット146)に送られるように操作される。図1Cの弁136および138の状態は、図1Bのそれぞれの状態から変化することはなく、滞留槽126および128は迂回される。そのため、分析ユニットは、反応モジュール122および滞留槽124を通過したが、滞留槽126および128を通過しなかった流体を受け取る。弁134は、3つのポートを備え、どの時点においても、3つのポートのうち2つが流体で通じているように構成される。図1C〜1Eでは、弁134は、滞留槽124の出口と結合する流体管を弁136のポートと流体で通じるように構成されている(太線で示されている)。弁133の位置に関係なく、弁133からの流体、または滞留槽124の出口からの流体が弁136に送られるかどうかを決定するのは、弁134の位置であることに注意されたい。少なくとも一実施形態では、弁133は取り除かれ、弁134だけで、反応モジュール122の出口、または滞留槽124の出口からの流体が弁136に送られるかどうかが決まる。流量1ml/分、容積2mlの反応モジュール122、および容積15mlの各滞留槽に基づき、滞留時間17分が達成される。
図1Dでは、弁136は、滞留槽126から出る流体が弁138(続けて、分析ユニット146)に送られるように操作される。図1Dの弁138の状態は、図1Bおよび1Cの状態と変わらず、滞留槽128は迂回される。そのため、分析ユニットは、反応モジュール122、滞留槽124、および滞留槽126を通過したが、滞留槽128を通過しなかった流体を受け取る。弁136は、3つのポートを備え、どの時点においても、3つのポートのうち2つが流体で通じているように構成される。図1D〜1Eでは、弁136は、滞留槽126の出口と結合する流体管を弁138のポートと流体で通じるように構成されている(太線で示されている)。弁133および134の位置に関係なく、弁134からの流体、または滞留槽126の出口からの流体が弁138に送られるかどうかを決定するのは、弁136の位置であることに注意されたい。流量1ml/分、容積2mlの反応モジュール122、および容積15mlの各滞留槽に基づき、滞留時間32分が達成される。
図1Eでは、弁138は、滞留槽128を出る流体が分析ユニット146に送られるように操作され、迂回される滞留槽はない。弁138は、3つのポートを備え、どの時点においても、3つのポートのうち2つが流体で通じているように構成される。図1Eでは、弁138は、滞留槽128の出口と結合する流体管を分析ユニット146に流体で通じているように構成される。弁133,134および136の位置に関係なく、弁136からの流体、または滞留槽128の出口からの流体が分析ユニット146に送られるかどうかを決定するのは、弁138の位置であることに注意されたい。流量1ml/分、容積2mlの反応モジュール122、および容積15mlの各滞留槽に基づき、滞留時間47分が達成される。もちろん、追加の滞留時間(図1B〜1Eに関して)は、流量を操作することによっても(試薬ポンプおよび/または溶媒ポンプを操作することによるのと)同様に達成できる。
図1B〜1Eに基づき、実装できる有望な一連の最適化実験は以下のとおりである。第1に、適当な溶媒を使用し、可能な状態を通じてそれぞれの弁を操作することで、システム全体を洗浄する(そのため、溶媒は廃液容器143内に流れ込むとともに、分析ユニット146の下流にある生成物出口にも流れ込む)。これにより、(好ましい一実施形態では、赤外線(IR)分光光度計である)分析ユニットからの信号を不安定にするおそれのあるシステム内の気泡が減少する。システム弁を、図1Bに示されている構成を実現するように操作し(反応モジュールから出たものは、分析ユニット146に送られる)、様々な流量を使用して一連の実験を実施する(好ましくは、最高流量、したがって最低滞留時間から始める)。弁134は、図1Cに例示されている構成を実現するように操作され(つまり、滞留槽124が使用される)、様々な流量を使用して他の一連の実験が実施される(ここでも、最高流量から始めるのが好ましい)。弁136は、図1Dに例示されている構成を実現するように操作され(つまり、滞留槽124および126が使用される)、様々な流量を使用して他の一連の実験が実施される(ここでも、最高流量から始めるのが好ましい)。最後に、弁138は、図1Eに例示されている構成を実現するように操作され(つまり、すべての滞留槽が使用される)、様々な流量を使用して他の一連の実験が実施される(ここでも、最高流量から始めるのが好ましい)。滞留容量または流量が変化する毎に、次のパラメータが変えられる前に、(分析ユニットからの安定した信号により示されるように)システムを均衡化させることができるのが好ましい。
図2は、特定の化学反応について最適な反応パラメータを特定するために複数の異なる反応パラメータを連続的に変化させ、テストする図1Aのシステム110で使用されるロジック全体を示す流れ図210である。ブロック212において、第1の実験が実行される(つまり、試薬Aおよび試薬Bが、定義されている1組の反応パラメータの下で反応モジュール内に導き入れられる)。ブロック214において、その結果得られる生成物がテストされ、分析結果(例えば、生成物収量または品質)が記録される。ブロック216において、反応パラメータのうちの1つ(温度、反応物質Aの濃度、反応物質Bの濃度、流量、または滞留時間など)を変化させ、追加量の試薬Aおよび試薬Bが反応モジュール内に導き入れられる。ブロック218において、生成物が分析され、その結果が記録される。
判定ブロック220において、さらにパラメータを変化させる必要があるかどうかを判定する。変化させる必要があれば、ロジックはブロック216に戻る。必要がなければ、最適化実験は完了し、収集されたデータを検討して、1つまたは複数の最適なパラメータを決定することができる。
図2のプロセスは、あらかじめ、変化させる特定のパラメータを識別することに基づく。例えば、最適化手順を開始する前に、試薬Aおよび試薬Bの濃度を変化させて、±20%(または他の何らかの望ましいパーセンテージ)の濃度の範囲を、基準濃度から5%の増分単位(または他の何らかの望ましい増分単位)でテストすると決定することも可能であろう。温度条件も、同様に、基準温度から2度の増分単位(または他の何らかの望ましい増分単位)で±50度(または他の何らかの望ましい範囲)の範囲において変化させることができる。基準値は、第1の実験に対して選択された初期値に対応する。システムでは、選択された変数の可能なすべての組み合わせ、および順列(permutations)がテストされるまで、それぞれのパラメータを自動的に変化させる。
図3の流れ図310で説明されているプロセスは、図2に関して上述したロジックに基づいており、効率を高める修正を含んでいる。ブロック312において、基準パラメータを使用して、第1の実験が実行される。ブロック314において、生成物がテストされ、分析結果(例えば、生成物収量)が記録される。ブロック316において、反応パラメータのうちの1つを変化させ、さらに一定量の試薬Aおよび試薬Bを反応モジュールに導き入れる。ブロック318において、生成物が分析され、その結果が記録される。
判定ブロック320で、さらにパラメータを変化させる必要があるかどうかを判定する。必要なければ、最初の最適化実験は完了する。必要であれば、ブロック322において、収集されたデータの評価を行い、トレンドを特定する。例えば、収集されたデータは、温度条件が特定のレベル以下だと収量が落ちることを示す場合があり、そのようなトレンドが検出された場合、そのレベル以下の低い温度最適化実験をさらに実行する必要はない。そこで、ブロック324において、新しいテスト条件が定義され、ロジックはブロック316に戻り、新しいテスト条件に基づき追加の最適化実験を実行する。
図3で使用されるロジックは、最初の最適化が広い範囲にわたる場合に有用である。例えば、最初の最適化では、10度の増分単位で100度範囲にわたって温度を変化させるための、テストパラメータを定義することができる。この範囲の低端の温度をテストし、その後、この範囲の真ん中の温度をテストし、そしてこの範囲の高端の温度をテストする場合、これらの実験を比較して、どの温度(低、中、または高)で収量がよいのかを判定することができる。真ん中の範囲が最良である場合、温度に対する新しいテスト条件を、最初に特定された最良の温度に関して±25%の範囲(または元の定義済み範囲よりも狭い他の何らかの論理的範囲)で定義することができる。このアプローチは、必要な最適化実験回数を減らしやすいが、それは、元のテストパラメータの低端と高端の温度に基づく追加の最適化実験を実施する必要がないからである。
図4は、(複数の)パラメータが周期関数に従って変化するシステム110から、データを連続的に収集するために使用できる流れ図410を例示している。例えば、温度、反応物質濃度、および反応物質当量などのパラメータは、システムの連続稼働中に、周期関数に従って変化させることができる。反応物質等量(化学量論比)は、反応物質流量を変化させ、および反応物質濃度を変化させることにより、変化させることができる。例えば、反応物質Aが2に対し、反応物質Bを1で混合させる実験を実施したい場合、そのような比は、反応物質Bの溶液の2倍の濃度の反応物質Aの溶液を使用して得られるか(各反応物質は同じ流量を使用して与えられる)、または反応物質Bに使用される流量の2倍の大きさの流量を使用して反応物質Aの溶液を与えることにより得られる(各反応物質は同じ濃度を使用して与えられる)。データは、連続的に収集され、最適なパラメータは、蓄積されたデータから選択することができる。ブロック412では、周期関数が定義され、試薬が反応モジュール内に導き入れられる。データは、生成物が分析ユニット146(図1Aを参照)内に通るときに、ブロック414により示されているように、収集され、記憶される。ブロック416では、システムが周期関数に従って(複数の)パラメータを変化させられる十分な時間連続稼働した後、その結果を分析して、(複数の)パラメータの(複数の)最適な値を特定する。
図5は、線502で示されているような試薬当量、線504により示されているような温度、および線506により示されているような試薬濃度に対する周期関数のグラフを示している。これらのパラメータは、定義されている上限と下限との間で変動する。システムは、それぞれのパラメータが少なくとも1周期分を完了することができるまで運転される。このような周期関数ベースのテストは、使用される試験槽の個数または反応時間を変えることなく、両方の試薬の流量を同時に変化させることにより、周期的に変化する滞留時間にも適用可能である。
図6は、最高収量が得られるパラメータの値を明確に示すピーク602を含む、図5の周期関数を使用して収集された分析結果をグラフで示す。そのため、図6は、図5による動作条件の同時分析に基づく。
図7は、追加の最適化実験に対する変数の新しい範囲を特定するためにシステム110により収集されたデータをどのように評価できるかを示すグラフである。図7の部分702は、時間の経過とともに高値から低値に変化する温度パラメータを表す。図7の部分704は、同じ期間の分析ユニット146からの信号振幅を示す。信号振幅は、収量割合に対応することに注意されたい。つまり、信号振幅が高いほど、収量も高い。図7は、(図5の周期関数とは反対に)一次関数に基づいてパラメータの値を変化させることに基づいている。不連続性が確認された場合、より小さな増分単位で変化するパラメータ値を使用して、追加の最適化テストを実施できる。図7に例示されている線形変化は、温度についてのみ実現されることに限定されず、他のパラメータ(例えば、濃度および滞留時間)に対する値も、(上述のように周期的だけでなく)直線的に変化させることができる。
点706では、信号振幅の勾配が著しく変化し、また信号振幅は急激に降下する。点706は、部分702内の点708に対応する。そのため、温度710は、振幅の急激な減少の開始時に特定することができる。そこで、その温度は、新しい下限として選択され、追加の最適実験が、古い温度最大値および新しい温度最小値に基づいて実行される。
図2、3、および4に関して上述した方法に加えて、システム110は、従来の最適化方法の効率を高めるために使用することもできる。例えば、34の反応条件を1組として伴う実験計画最適化について考察する。従来技術では、別々の試験槽を必要とする反応物質のそれぞれの異なる濃度に対して、複数の異なる反応物質供給槽が必要になる。システム110を使用すると、反応物質毎に単一の反応物質供給槽があるだけでよいが、それは、反応物質の希釈を実行して反応物質の濃度を変化させられるように溶媒供給源が使用されるからである。システム110を使用すると、操作者は、オフラインの分析方法(例えば、GC、HPLC)、またはリアルタイムの分析方法(例えば、FT−IR、ラマン分光法)を実施することを選択できる。(図1Aの分析ユニット146により実施するため)リアルタイムの分析方法が選択された場合、反応の結果は、自動的に分析され、第2の最適化反応を、第1の34の反応から特定された最適なパラメータに基づいて定義することができる。
最適化のための従来の方法の1つは、それぞれの反応パラメータについて2つの値を選択し、その後、それぞれの変数(つまり、「背景技術」で説明されている2n+1個の実験計画)の平均値に基づく追加実験を実施することに基づいていた。システム110は、さらに、後述するようにそのような最適化プロセスの効率を高めるためにも使用できる。
このような変更形態では、システム110に(システムを洗浄するために)溶媒を満たし、システムを、高い値の温度パラメータで要求される動作範囲になるまで加熱する。リアルタイムの生成物分析(つまり、分析ユニット146を使用する)が実施される場合、滞留時間が最短である最適化実験のパラメータが使用され、それぞれの反応物質は、システム内に個別に通され、分析ユニットは、それぞれの原材料(つまり、それぞれの反応物質)に対応するデータを収集する。
システムを溶媒で洗浄し、溶媒できれいにした後、最高濃度の試薬(および最高過剰(highest excess)の試薬)を必要とする最適化実験がシステムに導入され、テストされる反応パラメータにおいて定義される最長滞留時間の間保持される。システムが平衡化された後、適切な弁を選択して、滞留時間が最短となる滞留槽を使用する。対応する生成物の分析後、弁を操作して、反応物質の最長滞留時間および最低濃度値の両方を選択する。システムは連続稼働しているため、高い値と低い値の間の値に対応するデータが自動的に収集される。
上述したように、パラメータをいくつかの方法で変更できる。パラメータの値は、直接設定できる(ステップ関数)。一次関数(図7に示される勾配)に基づくパラメータの古い値とパラメータの新しい値との間で一連の小さな変化をもたらすことにより、パラメータの新しい値を設定できる。(図5に示されているように)パラメータの値は、周期関数に基づいて連続的に変化させることができる。一連の相対的に小さな直線的変化に基づいてパラメータ値を変化させることで、直線的な不連続性(linear discontinuities)を調べることができる。このような直線的な不連続性は、物質の分解(温度を上げることで発生しうる)または副反応(過剰な試薬がこのような副反応に対し利用できる場合があるので、反応物質の化学量論比が変化したときに発生しうる)により発生することがある。このような直線的な不連続性が特定された場合には必ず、不連続点を中心に比較的小さな増分でパラメータを変化させる追加の最適化実験を実施し、そのような不連続性に関連する条件を適切に定義することができる。
動作パラメータに対する非線形な依存関係が予想されるシステムでは、本発明により与えられる最適化プロセスの連続的な性質は、システムが、パラメータの低い値からパラメータの高い値に進む(またはその逆に進む)間に、それぞれのパラメータの平均値を通るということ意味する。したがって、(線形性の仮定に基づく)2n+1個の実験計画と、(非線形性の仮定に基づく)3n個の実験計画の選択は、連続稼働システムはすでにパラメータの中間レベルで性能基準を得ているため、本発明のシステムが使用される場合には実際的意味はない。
システム110が反応物質の処理用に少なくとも2つの滞留槽を備える場合には、滞留時間に対し高、平均、および低の設定を効率よく決定できる。第1に、システムのリアルタイムの分析出力は、それぞれの滞留槽に逐次的に通される生成物に基づいて測定される。データが収集された後、最終滞留槽は、適切な弁を選択することにより迂回される。システムは、先行する滞留槽の生成物産出を評価し、滞留時間を滞留槽容積およびシステム総容積に関係する係数により短縮することにより応じる。分析信号はほとんど即座に更新されるため、このアプローチを使って滞留時間の全範囲を評価することができる。高−平均−低型の実験計画において、このようなことが可能であるということは、2つの弁を切り換え、3つすべての滞留時間に対する性能を非常に素早く評価するだけで、滞留時間に関する3つの値すべてを得ることができるということを意味する。他の変数(濃度、温度、および当量)については、高い値と低い値のうちの一方を選択し、システムを平衡化し、データを収集することにより平均値を得られる。その後、中間点の値が選択され(つまり、高い値と低い値との間の値)、システムが平衡化され、データが収集される。その後、高い値と低い値のうちの一方が選択され、システムが平衡化され、データが収集される。このようなプロセスは、上述の3n個の実験計画よりも極めて単純である。
連続運転システムからリアルタイムの分析データを収集することは、独特の利点を有する。パラメータの値が変化すると、選択されたそれぞれの個別の値についてだけでなく、選択された値の間にあるすべての値についてもデータが収集される。従来のバッチ・アプローチで使用される統計的アプローチに主要な問題、つまり、選択された範囲が狭すぎて大きな改善が認められない、あるいは選択された範囲が広すぎて反応が失敗する場合に改善が認められないという問題は、自動的に回避することができ、無用な実験を行うことなく最適化を実行できる。
ある値から他方の値へと連続的に反応パラメータが変化する場合には、どの特定の反応パラメータが、システムによって収集された特定のデータに対応しているかについての不確定性があるとしても、可能性のあるパラメータの範囲は、容易に決定できる。その後、その範囲に基づく新しい最適化を実施して、最適なパラメータをより具体的に特定することができる。
上述の統計的実験計画法に勝る有意義な改善は、2つの変数が上限値と下限値との間で変化し、その変化が、異なる周期で実行される場合に、少なくとも2つの変数が同時に変化すれば、リアルタイムの分析装置を備える連続運転システムで実現できる(図5を参照)。そのため、変数の可能なすべての順列に対する実験結果は、素早く得られる。時間依存性に関する(つまり、フーリエ変換分析を使用して)反応結果(望ましい生成物の収量、望ましくない生成物の量)を分析することで、結果に対する様々な変数の影響がわかる(図6を参照)。現在分析中の生成物によってわかる正確な反応条件が、周期的に変化する条件であるため正確にわからない場合(つまり、非定常システム内での反応条件である場合)でも、バラツキを制御する周期関数に基づき、およびシステムの流体構成(fluidic configuration)に関する知識に基づき、これらの条件の妥当と思われる近似値を特定することができる。その後、この近似値は、最適な反応のパラメータのさらによい値を効率よく出力する追加の最適反応の始点として使用できる。
従来の実験最適化手法では、複数の個別の反応槽を使用する。それぞれの反応槽は、異なる濃度を有する反応物質を含む。それぞれの反応槽は、与えられた持続時間の間運転され、それぞれの反応槽からの生成物が分析され、評価される。本発明では、単一の反応モジュールを使用して反応濃度を変えることができ、それぞれの試薬濃度を別々に準備する必要がなくなる。さらに重要なのは、本発明では、単一システム内において、与えられた反応物質濃度に対する温度変化の影響を分析する時間だけでなく、異なる滞留時間の影響を分析する時間をも短縮できるという点である。表1(以下参照)は、流量の変化がごく小さい場合の広い反応時間範囲にわたる流量および弁の設定を使用する、サンプル実験群をまとめたものである。重要なのは、本発明のシステムにより取得できる最適化データの量は、単一の従来技術のシステムで得ることが可能なデータの量よりも一桁大きいという点である。
本発明の他の重要な利点は、温度を変化させる従来技術のシステムは、比較的互いに近い位置に配置されている複数の反応槽を備えており、それぞれの反応槽は異なる温度で運転されるという事実に関係している。反応槽の間の温度差は、300℃程度になる可能性があり、システムが必要とする熱制御の複雑さが著しく増す。この問題は、わずかに複雑な反応でさえ、温度が変化することで、一連の副反応または連鎖反応の発生が開始し、または停止する可能性があるため重要である。したがって、温度制御は非常に重要である。
実験室で最適な反応パラメータを決定する1つの目標は、そうして決定されたパラメータを、望ましい生成物が実験室でのテスト時に生成される量よりも多く生成されるシステムにも適用可能であるようにすることである。スケールアップは複雑であるため、実験室において従来の最適化手法を使用して特定された最適な反応条件は、必ずしも、大規模反応装置内で実施される同じ反応にそのまま持ち越せ、または適用可能であるということはない。本発明のシステムを使用することで、同一システムを並列稼働させることにより比較的大量の物質を生成することが可能である。単一の大型反応装置を使用するのとは反対に、並列システムを使用して生成量を生み出すことで、比較的大きな反応装置において望ましい生成物を産出することについても適用できる最適な反応条件を、比較的小さな反応装置において決定するという問題が解消されるが、それは、並列生産反応装置が、最適なプロセス条件を決定するために本発明で使用される反応装置と同じだからである。
表1は、3つの滞留槽、および1から4ml/分の範囲(精密ポンプの線形領域)の流量を使用して得られる滞留時間を示している。11回の実験を行うだけで、比較的広い範囲の常に減少する滞留時間(47分から0.5分までの間)が得られることに注意されたい。コントローラは、上記の滞留時間が得られるようにするために必要な弁を自動的に切り換える。
本発明が、本発明を実施する好ましい形態およびその修正形態に関して説明されているが、当業者であれば、特許請求の範囲内で本発明にその他の多くの修正を加えられることを理解するであろう。したがって、本発明の範囲は、いかなる点においても上述の説明により限定されることを意図していないが、その代わりに請求項を参照することで全体に定められる。