JP7276301B2 - 反応解析装置、反応解析システム、および反応解析方法 - Google Patents
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Description
先ず、本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態に係る反応解析システム1の構成例を示すブロック図である。図1のように、反応解析システム1は、第1ポンプ11、送液管111、第2ポンプ12、送液管112、混合器13、反応管14(反応流路)、温度調整器15、温度測定部16、および反応解析装置20を備えている。温度測定部16は、第1の温度測定部161(温度測定部)、第2の温度測定部162(温度測定部)、第3の温度測定部163(温度測定部)、および第4の温度測定部164(温度測定部)を備えている。フローリアクタ10は、第1ポンプ11、送液管111、第2ポンプ12、送液管112、混合器13、および反応管14を備える。反応解析装置20は、CPU23(処理部)を備えている。
第1の温度測定部161は、混合器13の入力側に設置され、この第1の温度測定部161により、複数の反応物を混合させて得られる反応流体の初期温度(混合器13の排出口における反応流体の温度)を計測(推定)することができる。
第2の温度測定部162、第3の温度測定部163、および第4の温度測定部164は、混合器13の出力側の反応管14に設置され、これら第2の温度測定部162~第4の温度測定部164により、反応流体の流れ方向に沿う混合直後(反応開始直後)の反応流体の温度(温度分布)を計測することができる。なお、「反応開始直後」とは、反応流体が実際に反応を開始した直後の意味ではなく、反応が開始される状態に反応流体が置かれた直後(第1実施形態では、複数の反応物が混合された直後)の意味である。
送液管111、送液管112、混合器13および反応管14は、温度調整器15内に設置される。
反応解析システム1は、フロー合成型の化学反応装置における反応流体の反応状態を特定するものである。反応解析システム1は、反応前の温度と、反応後の複数箇所の温度とを計測し、計測した温度に基づいて反応パラメータを推定する。第1ポンプ11と第2ポンプ12に投入される反応物は、液体であっても気体であってもよい。反応パラメータは、反応流体の反応状態を示すものであって、後述するように、例えば化学反応場の温度分布に影響を及ぼすパラメータである。反応解析システム1によって生成される生成物は、例えばペプチド合成物である。
温度測定部16は、非接触型の、例えば光学式温度センサであってもよい。温度測定部16は、反応管14(反応流路)に沿う反応流体の温度分布を検出し、検出した温度を示す温度情報(実測温度分布)を反応解析装置20に出力する。なお、化学反応場は、混合器の下流側において混合された反応物の化学反応が生ずる領域である。
次に、位置xと温度の関係例を説明する。
図2は、位置と温度の関係および時間と温度の関係、具体的には反応管14における混合器13からの流路距離に対する反応流体の温度分布および混合器13による混合後の経過時間(反応時間)に対する反応流体の温度分布を示す図である。図2において、下の横軸は時間であり、上の横軸は位置であり、縦軸は温度(℃)である。
温度測定部16のうち、第1の温度測定部161は、反応前の位置(図1のp1)に取り付ける。第2の温度測定部162~第4の温度測定部164は、反応後の位置(図1のp2~p4)に位置に取り付ける。第2の温度測定部162~第4の温度測定部164を取り付ける位置は、図2のように、第1反応物Aと第2反応物Bとの反応熱による反応直後の反応流体の温度の変化を捉える箇所が好ましい。反応直後の反応流体の温度の変化とは、温度変化の最大値または極大値のように、短時間での温度変化である。反応直後においては、反応物の濃度が最も高いので、反応速度が大きく、単位時間当たりの発熱量が大きいことから、短時間での温度変化が生じやすい。また、反応直後の反応流体の温度の変化を捉える箇所とは、温度変化のピーク位置(最大値または極大値となる混合器13からの流路距離または混合後の経過時間の位置)を挟むような配置箇所であり、少なくとも温度変化のピーク値(最大値または極大値の温度値)に向けて昇温している箇所と温度変化のピーク値から降温している箇所とを含む。
このため、最大値の位置がL4の場合は、この位置の最大値の変化を捉える位置、例えばL3、L5、L6の位置に第2の温度測定部162~第4の温度測定部164を取り付けるようにする。
次に、反応場の温度分布から反応パラメータを算出する方法について説明する。
図3は、第1実施形態に係る反応場の温度分布から反応パラメータを算出する方法を説明するための図である。符号g1の領域の図は、パラメータ調整前またはパラメータ調整中の温度分布例である。符号g1の領域の図において、横軸は位置、縦軸は温度である。
推定値T1(p1)は、関数T1(x)による位置p1の温度の推定値である。推定値T1(p2)は、関数T1(x)による位置p2の温度の推定値である。推定値T1(p3)は、関数T1(x)による位置p3の温度の推定値である。推定値T1(p4)は、関数T1(x)による位置p4の温度の推定値である。
つまり、図3における符号g1の領域の図(関数T1(x)のグラフ)は、混合直後の反応流体の温度分布を推定することにより得られる推定温度分布を示している。
推定値Tn(p1)は、関数Tn(x)による位置p1の温度の推定値である。推定値Tn(p2)は、関数Tn(x)による位置p2の温度の推定値である。推定値Tn(p3)は、関数Tn(x)による位置p3の温度の推定値である。推定値Tn(p4)は、関数Tn(x)による位置p4の温度の推定値である。
つまり、図3における符号g1の領域の図(関数Tn(x)のグラフ)は、混合直後の反応流体の温度分布を推定することにより得られる推定温度分布を示している。
関数Tn(x)は、混合直後の反応流体の温度分布を推定する支配方程式の解であり、次式(1)のように、位置x、反応パラメータΔH、ΔG‡の関数である。
図4は、第1実施形態に係る反応解析の処理手順であって、反応流体の流れ方向に沿う混合直後の反応流体の温度分布に基づいて反応流体の反応状態を特定するためのフローチャートである。なお、以下の処理では、反応パラメータがΔH、ΔG‡である場合を説明する。
曲線g32は、混合後の第2反応物Bの時間と濃度の関係、位置と濃度の関係である。
曲線g33は、混合後の生成物の時間と収率の関係、位置と収率の関係である。
図5の例では、t1~t2で第1反応物Aの濃度がほぼ0になり、t1~t2で第2反応物Bの濃度が[B]xに収束し、t1~t2で生成物の濃度が[P]xに収束している。
また、濃度を推定することで、フローリアクタ中の任意の位置および任意の時間における生成物の収率を推定することができる。
次に、反応解析装置20の構成例を説明する。
図6は、第1実施形態に係る反応解析装置20の構成例を示す図である。図6のように、反応解析装置20は、外部記憶装置21、内部記憶装置22、CPU23、入力装置24、および出力装置25を備えている。外部記憶装置21は、実験データ記憶部211、流体物性データ記憶部212、反応器熱特性データ記憶部213、反応データ記憶部214、演算データ記憶部215、および反応解析プログラム記憶部216を備えている。
CPU23は、例えばパーソナルコンピュータであり、反応解析システム1の制御、データの取得、データの解析、推定を行う。
入力装置24は、例えばキーボード、マウス、表示装置上に設けられたタッチパネルセンサー等であり、利用者の操作を検出する装置である。
出力装置25は、液晶表示装置、有機EL(Electro Luminescence)表示装置、プリンタ等の出力装置である。
ここで、温度分布を表す関数Tn(x)の求め方の一例を説明する。
CPU23は、温度分布を表す関数Tn(x)を、下の3つの式を例えば空間一次元に近似して解いて求める。なお、CPU23は、近似の際、3つの式を例えば空間二次元以上に近似して解いて求めるようにしてもよい。
なお、上述した例では、第1反応物と第2反応物を混合した際に得られる生成物が1つの例を説明したが、生成物は2つ以上であってもよい。
第1実施形態によれば、流路状の反応器(フローリアクタ)の温度分布を計測することで、複数の実験を実施することなく短時間で化学反応の活性化自由エネルギー等の反応パラメータを算出することが可能になる。第1実施形態によれば、算出された反応パラメータを用いて反応シミュレーションを実施することで、濃度や温度等の運転条件やリアクタの構造を変更した場合においても反応中の任意の位置における生成物の生成速度や濃度を解析することが可能となる。
また、第1実施形態によれば、運動量保存則を含む流体シミュレーションを用いることで、流体そのものが反応物となる気体のように流速変化の大きい対象であっても対応できる。
また、第1実施形態によれば、流路状の任意の位置における生成物の濃度を数秒程度のリアルタイムに推定できるので、反応条件の最適化に要する工数が従来の1/100以下程度に短縮することが可能となる。なお、従来手法では、パラメータが多いため、トライアンドエラーを行う必要があったため、工数が多かった。
また、第1実施形態によれば、流路状の任意の位置における生成物の推定した濃度から収率に換算することで、最適な流路長さや反応器の流路内径・流路壁肉厚・材質等の熱的特性といった反応器のハード設計にも活用することができる。
ここで、収率に関し、第1反応物Aと第2反応物Bから1つの生成物Pが生じる場合の時間tにおける収率は、次式(9)のように表される。
第1実施形態の反応解析システム1は、例えば以下のような装置やシステムに適用可能である。
第1の応用例は、反応モニタリングのためのソフトセンサである。この応用例では、温度計測結果から反応物・生成物の濃度をリアルタイムに算出することが可能となる。
以下、本発明の第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
図8に示す反応解析システム1Aは、反応流体と触媒30との接触により反応流体の化学反応が進行するフローリアクタ10を備えている。フローリアクタ10は、送液管111、反応管14、排出管113、及び触媒30を備えている。
図9に示す反応解析システム1Bは、反応流体に対する電磁波31Aの照射により反応流体の化学反応が進行するフローリアクタ10を備えている。反応解析システム1Bは、電磁波照射装置31を備えている。電磁波照射装置31は、フローリアクタ10の反応流路に電磁波31Aを照射する。
図10に示す反応解析システム1Cは、図9に示す反応解析システム1Bと同様に、反応流体に対する電磁波31Aの照射により反応流体の化学反応が進行するフローリアクタ10を備えている。フローリアクタ10は、送液管111、螺旋状の反応管14、排出管113、及び電磁波照射装置31を備えている。
図11に示す反応解析システム1Dは、反応流体に対する加熱により反応流体の化学反応が進行するフローリアクタ10を備えている。反応解析システム1Dは、フローリアクタ10を流れる反応流体を加熱する加熱装置32(ヒーター)を備えている。加熱装置32は、フローリアクタ10の反応流路に沿って配置されている。
図12に示す反応解析システム1Eは、図11に示す反応解析システム1Dと同様に、反応流体に対する加熱により反応流体の化学反応が進行するフローリアクタ10を備えている。フローリアクタ10は、送液管111、螺旋状の反応管14、排出管113、及び加熱装置32を備えている。
図13に示す反応解析システム1Fは、反応流体に対する電流の通電により反応流体の化学反応が進行するフローリアクタ10を備えている。反応解析システム1Fは、フローリアクタ10を流れる反応流体に対して通電する通電装置33を備えている。通電装置33は、フローリアクタ10の反応流路を挟んで配置された一対の電極33aを備えている。
以下、本発明の第3実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
図14に示す反応解析システム1Gは、送液管111、反応管14、及び複数の排出管113A~113Dを備えている。また、反応管14には、上述した触媒30、電磁波照射装置31、加熱装置32、及び通電装置33のいずれか一つが設けられている。
制御部231は、図15に示すフローチャートに従って、反応流体の反応条件を制御する。なお、第3実施形態において、流体シミュレーションにおける支配方程式は、上述した式(8)を改良した、次式(10)に示すエネルギー保存式を用いる。
以上のような第3実施形態によれば、各種様々なフローリアクタ10における反応流体の反応状態を特定するのみならず、反応流体の副反応を抑制しつつ目標濃度の反応物が得られるように、フローリアクタ10における反応条件を制御することが可能となる。
Claims (17)
- フローリアクタを流れる反応流体の反応状態を特定する反応解析装置であって、
反応流体の流れ方向に沿う反応開始直後の反応流体の温度分布から得られる反応流体の反応状態を示す反応パラメータに基づいて、反応流体の反応状態を特定する処理部、
を備える反応解析装置。 - 前記処理部は、反応流体の温度を実測することにより得られる実測結果と、反応開始直後の反応流体の温度分布を推定することにより得られる推定温度分布とを比較することにより、前記反応パラメータを取得する、
請求項1に記載の反応解析装置。 - 前記推定温度分布は、反応開始直後の反応流体の温度分布を推定する支配方程式により求められるものであり、
前記支配方程式は、反応開始直後の反応流体の温度分布のピーク値に関連する第一の反応パラメータと、反応開始直後の反応流体の温度分布のピーク位置に関連する第二の反応パラメータとを有するものである、
請求項2に記載の反応解析装置。 - 前記第一の反応パラメータは、単位物質量当たりの発熱量を示すものであり、
前記第二の反応パラメータは、反応速度の温度依存性を示すものである、
請求項3に記載の反応解析装置。 - 前記処理部は、前記実測結果と前記推定温度分布との差が所定値以内になるように、前記第一の反応パラメータおよび前記第二の反応パラメータを調整し、調整された前記第一の反応パラメータおよび前記第二の反応パラメータを記憶部に記憶する、
請求項3または請求項4に記載の反応解析装置。 - 前記処理部は、前記記憶部に記憶された前記第一の反応パラメータおよび前記第二の反応パラメータに基づいて、反応流体の反応速度、複数の反応物の濃度、反応流体に含まれる生成物の濃度または収率の少なくとも一つを算出する、
請求項5に記載の反応解析装置。 - 前記処理部によって特定した反応流体の反応状態と、当該反応状態の目標値とを比較し、前記フローリアクタにおける反応流体の反応条件を制御する制御部を、備える、
請求項1~6のいずれか一項に記載の反応解析装置。 - 前記制御部は、前記フローリアクタの流路出口における前記反応状態を、前記目標値以上とする第1制御を行う、
請求項7に記載の反応解析装置。 - 前記制御部は、前記反応状態が前記目標値に達してから前記フローリアクタの流路出口までの、反応流体の滞留時間を最小化する第2制御を行う、
請求項8に記載の反応解析装置。 - フローリアクタを流れる反応流体の反応状態を特定する反応解析システムであって、
前記フローリアクタの反応流路に沿う反応流体の温度を実測する温度測定部と、
請求項1~9のいずれか一項に記載の反応解析装置と、を備え、
前記処理部は、前記温度測定部により得られる実測結果から得られる反応流体の反応状態を示す反応パラメータに基づいて、反応流体の反応状態を特定する、
反応解析システム。 - 前記温度測定部は、前記反応流路において、少なくとも反応流体の温度分布のピーク位置を挟むように設けられている、
請求項10に記載の反応解析システム。 - 前記フローリアクタは、
化学反応に供される複数の反応物をそれぞれ供給する複数の供給流路と、
前記複数の供給流路と接続されて複数の反応物を混合する混合器と、
前記混合器と接続されて複数の反応物が混合されて得られる反応流体が流通される反応流路と、を備える、
請求項10または請求項11に記載の反応解析システム。 - 前記フローリアクタは、反応流体の化学反応を進行させる触媒を備える、
請求項10または請求項11に記載の反応解析システム。 - 前記フローリアクタを流れる反応流体に対し、電磁波を照射する電磁波照射装置を備える、
請求項10または請求項11に記載の反応解析システム。 - 前記フローリアクタを流れる反応流体を加熱する加熱装置を備える、
請求項10または請求項11に記載の反応解析システム。 - 前記フローリアクタを流れる反応流体に対して通電する通電装置を備える、
請求項10または請求項11に記載の反応解析システム。 - フローリアクタを流れる反応流体の反応状態を特定する反応解析方法であって、
反応流体の流れ方向に沿う反応開始直後の反応流体の温度分布から得られる反応流体の反応状態を示す反応パラメータに基づいて、反応流体の反応状態を特定する、
反応解析方法。
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